説明

素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート

【課題】 素板ガラスと吸引機構の吸引パッドとの間に介在され、素板ガラスを吸引保持する素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを提供すること。
【解決手段】 スチレン系樹脂シート製の素板ガラス搬送用シートにおいて、スチレン系樹脂シートの発泡倍率が1.1〜5.0倍の範囲で発泡されたものであることを特徴とする、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを要旨とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートに関する。さらに詳しくは、素板ガラスを吸引機構の吸引パッドに吸引保持して所定位置に搬送するまでの間、素板ガラス表面と吸引機構の吸引パッドの吸着面との間に介在され、所定位置に搬送された後も素板ガラスの間に残されて開梱、素板ガラスが基板などの使用に供されるまでの間、素板ガラスの間に介在される素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
厚さが薄く、長尺、広幅とされた板状のガラスは、板ガラスメーカーで、ガラスタンク窯内のガラス融液を、成形用ロールによって連続した広幅の板状体として引き出されて製造される。板ガラスは、用途に応じた所定の厚さ、幅、長さに切断された素板ガラスとされる。素板ガラスの用途には、各種画像表示機器、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ基板などが挙げられる。
【0003】
上の用途に使用される素板ガラスは、板ガラスメーカーで製造されたあと、ディスプレイメーカー{素板ガラスの使用者(ユーザー)}などに、複数枚を一群として、梱包され搬送される。素板ガラスの厚さや大きさは用途により変わり、例えば、厚さが0.7mm程度の素板ガラスの場合には、300mm×400mm、550mm×650mm、680mm×680mm、1000mm×1850mmの大きさのものが実用化されており、さらに大面積化(大型化)される傾向にある。これら素板ガラスは、板ガラスメーカーで製造された後、梱包され、素板ガラスの使用者に運搬され、開梱されて、各種ディスプレイ基板などの用途に供される。
【0004】
これら素板ガラスは、薄肉化、大型化されるに伴って、梱包、運搬、貯蔵、開梱などの作業の際に欠け、擦り傷、割れなどが生じ易いという問題がある。梱包作業の際の欠け、擦り傷、割れなどは、完全に生じないようにする必要がある。従来、板ガラスメーカーで製造された素板ガラスを梱包する方法としては、素板ガラスの間に紙を介在させて複数枚の素板ガラスを梱包する方法、上面が開口した箱状の容器内に複数枚の素板ガラスを縦に並べて収納し、樹脂製のクッション用シートを介在させて搬送する方法(特許文献1参照)、一枚の素板ガラスを複数の吸引パッドを装備した吸引機構によって吸引保持し、吸引機構によって保持した状態で素板ガラス収納容器に移送して収納する方法などが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
素板ガラスの用途によっては、その表面に各種電子表示機能素子や薄膜が形成されることがある。この用途では、表面の清浄度が高くかつ傷がないことが要求される。このため、洗浄処理したあとの素板ガラスの表面に傷をつけず、吸引パッドの吸引跡もつけない移送技術が提案されている(特許文献3)。特許文献3で提案されている方法は、空気を通す領域が設けられた発泡樹脂シートを素板ガラスの上面に載置し、発泡樹脂シートの空気を通す領域に吸引パッドを重ね、吸引機構の吸引パッドに減圧を適用して素板ガラスを吸着面に吸引保持し、吸引保持した状態で所望の位置に移送する方法である。しかしながら、この提案方法によれば、発泡樹脂シートの所定箇所に、空気を通す領域を設ける作業が必要であるほか、実際に素板ガラスを所望の位置に移送する際に、素板ガラスの上面に載置された発泡樹脂シートの空気を通す領域の上に、吸引機構の吸引パッドを正確に合致させる必要でがあり、作業が煩雑になることは否めない。
【0006】
素板ガラスの間に配置される発泡樹脂シートは、素板ガラスの使用者(ユーザー)側において抜き取られる。発泡樹脂シートの摩擦抵抗が大きいと、これを介在させた素板ガラスの間から抜き取り難く、場合によっては破損し、素板ガラスの表面に付着したまま残り、次の作業工程で障害になることがある。また、発泡樹脂シートが帯電し易いと、素板ガラスの間から抜き取ったシートを再使用に供する際に、シートが取り扱われる雰囲気に浮遊している塵芥が付着し易いという問題もあった。さらに、シートに帯電防止剤を含有させても、シートを再使用するために塵芥などを洗浄する際に、洗い流されてしまうという問題もあった。
【特許文献1】特開2003−226354号公報
【特許文献2】特開2001−239488号公報
【特許文献3】特開2005−75482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記の従来技術に存在していた諸欠点を排除した技術を提供すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.素板ガラスの上側に載置されるシートであって、このシートの上から素板ガラスを吸引機構の吸引パッドで、素板ガラスを吸引保持できる素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを提供すること。
2.吸引機構の吸引パッドによる吸引保持作業が容易な、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを提供すること。
3.素板ガラスの間から抜き取る際に破損し難い、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを提供すること。
4.再使用に適した、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、スチレン系樹脂シート製の素板ガラス搬送用シートにおいて、スチレン系樹脂シートが、三層のうち少なくとも一層の発泡倍率が1.1〜5.0倍の範囲で発泡されたものであることを特徴とする、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に詳細に説明するとおりであり、次のような特別に優れた効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、通気細孔の透気度が適切な範囲とされている場合は、素板ガラスの上側に載置して、その上から吸引機構の吸引パッドで吸引保持することができる。
2.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、通気細孔を素板ガラス搬送用シートの全面に亘って穿孔されている場合は、吸引機構の吸引パッドによる素板ガラスの吸引保持作業が容易である。この際、特許文献3で提案されているような吸引機構を、そのまま使用できる。
3.上記1、2の態様を用いる本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを使用すると、吸引機構の吸引パッドが素板ガラスの表面に直接接触しないので、素板ガラスの表面に吸引パッド跡が残らない。
4.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを、ゴム成分を含有するスチレン系樹脂シートによって調製したときは、剛性(弾性率)に優れているので破損し難く、再使用することができる。
5.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを、スチレン系樹脂シートが少なくとも一方向に延伸されたもので調製すると、剛性が一層優れており、好適である。
6.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、表面抵抗値(JIS K6911)が10〜1012Ωとされている場合は、再使用する際に雰囲気中に浮遊している塵芥が付着し難く、表面が汚染され難いので再使用するのに好適である。
7.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを、ゴム成分を含有する発泡スチレン系樹脂シートによって調製すると、クッション性に優れ、素板ガラス表面が効果的に保護される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、ゴム成分(C)を20質量%以下で含有するスチレン系樹脂シートによって構成されるのが好ましい。スチレン系樹脂(A)は、ゴム成分を含有していなくてもよいし、20質量%まで含有させることができる。ゴム成分(C)を含有するシートは、含有しないシートに比較して柔軟性が向上するので好ましい。ゴム成分(C)の含有量が20質量%を超えると、シートが柔らかくなり過ぎ、素板ガラスの間に介在させた状態から引抜く際に伸びることがあり、再使用には不適となるので、好ましくない。シートに含まれるゴム成分(C)の特に好ましい範囲は、15質量%以下である。
【0011】
ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(B)は、芳香族ビニル化合物(B1)を主成分とし、場合により、芳香族ビニル化合物(B1)に、他の共重合性ビニル化合物(B2)を、単量体全量に対して50質量%以下の量で混合し、単量体を重合または共重合させることによって、製造することができる。芳香族ビニル化合物(B1)としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどのアルキルスチレン類、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンなどのα−アルキルスチレン類が挙げられる。芳香族ビニル化合物(B1)は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。
【0012】
他の共重合性ビニル化合物(B2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系化合物(酢酸ビニルなど)、ヒドロキシル基含有化合物{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1〜4アルキル(メタ)アクリレートなど}、グリシジル基含有化合物{グリシジル(メタ)アクリレートなど}、カルボキシル基含有化合物{(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸など}、イミド系化合物(マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど)などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。他の共重合性ビニル化合物(B2)は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。
【0013】
スチレン系樹脂(A)にゴム成分(C)を含有させるには、(イ)ゴム成分に芳香族ビニル化合物をグラフトさせてグラフト重合体(D)とする方法、(ロ)グラフト重合体(D)にゴム成分を含まないスチレン系樹脂(B)をブレンドする方法、(ハ)ゴム成分(C)にゴム成分を含まないスチレン系樹脂(B)をブレンドする方法、のいずれかの方法に依って調製することができる。製造コスト、得られるスチレン系樹脂の物性などの観点から、(ロ)の方法に依るのが好ましい。
【0014】
グラフト重合体(D)に含まれるゴム成分(C)としては、ポリブタジエン(BR)、ブタジエン−スチレン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリクロロプレン(CR)、ポリイソプレン(IR)、イソプレン−スチレン共重合体(ISR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリルゴムなどが挙げられる。これらゴム成分の中でも好ましいのはポリブタジエンであり、シス−1,4構造の含有率の高いハイシス型が、シス−1,4構造の含有率の低いローシス型より、熱安定性の観点から好ましい。グラフト重合体(D)に含有されるゴム成分(C)は、グラフト重合体(D)をゴム成分の濃厚物(コンセントレート)としての観点からは、ゴム成分の含有量は高いほど好ましいが、ゴム成分(C)濃度が高くなり過ぎると製造が困難になるので、3〜50重量%の範囲とするのが好ましい。ゴム成分(C)は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。
【0015】
グラフト重合体(D)を製造する際に使用される単量体は、上記ゴム成分を含まないスチレン系樹脂(B)を製造する際の単量体として挙げたものと、同種の芳香族ビニル化合物(B1)、同種の他の共重合性ビニル化合物(B2)であってもよい。
【0016】
ゴム成分を含まないスチレン系樹脂(B)およびグラフト重合体(D)の製造法としては、従来から知られている、塊状重合法、塊状−懸濁重合法(重合の初期を塊状重合法、後期を懸濁重合法で行なう方法)、懸濁重合法、乳化重合法、乳化−塊状重合法(重合の初期を乳化重合法、後期を懸濁重合法で行なう方法)、溶液重合法などが挙げられる。中でも、得られる樹脂に不純物を含まないので、塊状連続重合法が好適である。
【0017】
スチレン系樹脂(A)は、押出成形法によってシート化が容易で、得られたシートが実用的な物性を有していることが必要である。スチレン系樹脂(A)は、例えば、メルトフローレート(MFR)が、温度200℃、荷重5kgの測定条件で0.5〜20g/10分の範囲の流動性を有するものが好ましい。MFRが0.5g/10分未満であると流動性が悪くシート化が困難であるし、MFRが20g/10分を超えるとシート化は可能であるが、このシートを二次加工した製品の物性が低く、実用性のある製品が得られないので、いずれも好ましくがない。MFRは、上記範囲の中では、2〜10g/10分の範囲が特に好ましい。
【0018】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、上記スチレン系樹脂(A)を原料としてシート化されたものであるが、得られるシートに帯電防止性を付与する目的で、スチレン系樹脂(A)に帯電防止剤(E)を配合する。本発明で使用できる帯電防止剤(E)は、スチレン系樹脂(A)と相溶性があり、シート化する際の溶融温度で熱分解しない、スチレン系樹脂シートに含有させた後、ブリードアウトせずシート表面を汚染しない、スチレン系樹脂シートを再使用する際の洗浄操作で洗い流され難い、スチレン系樹脂シートを再使用する期間変色しない、などの特性を備えたものを選ぶ必要がある。このような特性を備えた帯電防止剤(E)としては、高分子型帯電防止剤が好適である。具体的には、ポリエーテルエステル系高分子型帯電防止剤(ノニオン系高分子型帯電防止剤)、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーや、ポリスチレンスルホン酸系高分子型帯電防止剤(アニオン系高分子型帯電防止剤)、ポリアクリルエステル系高分子型帯電防止剤(カチオン系高分子型帯電防止剤)などが挙げられる。
【0019】
スチレン系樹脂(A)に配合する帯電防止剤(E)の配合量は、帯電防止剤(E)の種類、本発明に係る素板ガラス搬送用シートに付与する帯電防止性の程度などによるが、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜50質量部の範囲で選ばれる。帯電防止剤(E)の配合量が0.5質量部未満であると、シートに十分な帯電防止性を付与することができず、帯電防止剤(E)の配合量が50質量部を超えると、シート化が困難となるばかりでなく、シート化できてもシート表面からブリードアウトが起こり易く、いずれも好ましくない。上記配合比率の中では、5.0〜30質量部が特に好ましい。帯電防止剤(E)は、あらかじめマスターバッチとして調整し、スチレン系樹脂(A)に配合することができる。本発明に係る素板ガラス搬送用シートが、後記するように三層で構成されている場合は、帯電防止剤(E)は表層のみに配合するのが、その使用量を少なくすることができるので、好ましい。
【0020】
スチレン系樹脂(A)には、シートを発泡させる目的で発泡剤(G)を配合することができる。スチレン系樹脂(A)に発泡剤(G)を配合することによって、本発明に係る素板ガラス搬送用シートにクッション性を付与することができる。本発明で使用できる発泡剤(G)としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの低沸点炭化水素類、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アゾ化合物類(アゾビスブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ジアゾジアミノベンゼンなど)、スルホニルヒドラジド化合物類(ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシ−4,4’−ビススルホニルヒドラジドなど)の分解型発泡剤、二酸化炭素、窒素ガスなどの気体、水などが挙げられる。発泡剤は、二種類以上を組合せてもよい。発泡剤(G)の使用量は、シートを発泡させる倍率によって適宜選ぶことができる。本発明に係る素板ガラス搬送用シートはシート全体を発泡させることができるし、後記するように三層で構成されている場合は、表層のみまたは芯層(中間層)のみを発泡させることができる。
【0021】
スチレン系樹脂(A)には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分の他に、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色材などの樹脂添加剤を配合することができる。
【0022】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを製造するには、原料のスチレン系樹脂(A)、帯電防止剤(E)を所定量秤量し、必要があれば、さらに発泡剤(G)、その他の樹脂添加剤を秤量し、混合機(例えば、タンブラー型ブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサーなど)を使用して混合し、T−ダイを装備した押出機で混練して、T−ダイからシート状に押出す方法に依ればよい。
【0023】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、以下に説明するとおり、多層であってもよく、多層シートを構成するスチレン系樹脂は同種でもよく、層ごとに種類を変えてもよい。多層シートの場合、ゴム成分の含有量は、多層シート全体に含まれる値を意味する。ゴム成分の含有量は、製品シートから分析用試料を採取し、1995年1月12日、紀伊国屋書店発行、日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、「新版 高分子分析ハンドブック」、1995年度版、第659頁に記載の方法によって定量することができる。
【0024】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、単層シートでも、多層シートでもよい。単層シートまたは多層シートとも、発泡シートとすることができる。多層シートは、二台の押出機を使用し、配合成分が相違する二種類のスチレン系樹脂組成物を別々に溶融させ、二台の押出機からの溶融樹脂を合流・積層するフィードブロック、または共押出用T−ダイ内で重ねて、二層または三層としてシート状に押出す方法によって製造できる。二層シートの場合、両層の厚さ比率は、1:1〜1:9の範囲で選ぶことができる。二層シートの場合は、一方の層のみに発泡剤を配合して発泡させることができる。また、帯電防止剤(E)は、薄い層に配合するのが好ましい。三層シートの場合は、表面層と芯層の厚さの比率は、1:98:1〜3:4:3の範囲で選ぶことができる。三層シートの場合は、両表面層に発泡剤を配合して発泡させることができるし、芯層(中間層)のみに発泡剤を配合して発泡させることもできる。帯電防止剤(E)は、両表面層に配合するのが好ましい。
【0025】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、上記のとおり、単層シート、多層シートのいずれであってもよく、かつ、延伸されていてもよく、延伸されていなくてもよい。延伸されている場合は、少なくとも一方向に3.0倍まで延伸されているのが好ましい。二軸方向に延伸する場合は、二軸ともに3.0倍以下の範囲で選ぶことができる。延伸倍率が3.0倍で延伸による機械的特性の向上が飽和するので、これを超えて延伸しても意味がない。二軸に延伸する場合の好ましい倍率は、1.5〜2.8倍の範囲である。
【0026】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートを発泡させる場合は、発泡倍率が1.1〜5.0倍の範囲とする。発泡倍率が1.1未満であると、シートの柔軟性、緩衝性が低下し好ましくない。発泡倍率が5.0倍を超えると、シートの機械的物性が低下して好ましくない。上記発泡倍率の配合量の中で好ましいのは、1.4〜3.0倍である。発泡倍率は、発泡剤の種類、使用量、シート化の温度条件、延伸条件などを組合せて調節することができる。また、シートの発泡倍率(P)は、JIS K7222に準拠して測定した発泡シートの密度(Q)と、JIS K7112のD法に準拠して測定した、同じ原料を使用して発泡させていない状態の密度(R)より、P=R/Qにより算出することができる。
【0027】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、厚さが0.05〜0.5mmの範囲で選ぶのが好ましい。シートの厚さが0.05mm未満であると、シート自体の剛性や自立性が不足し、シートを再使用する場合に折れや皺が発生し易くなり、好ましくない。シートの厚さが0.5mmを超えると、シートを積み重ねた際の嵩、素板ガラスの間に介在させた場合の嵩が大きくなり、好ましくない。上記シートの厚さで特に好ましいのは、0.1〜0.3mmの範囲である。
【0028】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、このシート全面に亘って通気細孔を穿孔するのが好ましい。シート全面に亘って通気細孔が穿孔することによって、吸引機構の吸引パッドによる素板ガラスの吸引保持する位置が制限されない。素板ガラス搬送用シートは、シート全面に亘って通気細孔が穿孔し、透気度(JIS P−8117に準拠)が60秒/100ml以下とする。透気度が60秒/100mlを超えると、このシートを上側に載置した状態で素板ガラスを吸引パッドに吸引保持することが困難となり、好ましくない。中でも好ましい透気度は3〜30秒/100mlである。
【0029】
透気度は、通気細孔の直径と穿孔密度とを組合せて上記範囲に調節することができる。通気細孔の直径は50〜100μmの範囲、穿孔密度は20〜50個/1cmの範囲で選ぶことができる。シート全面に亘って通気細孔を穿孔するには、例えば、針植設板を使用する方法、針植設ロールを使用する方法、レーザー穿孔法などに依ることができる。板またはロールに植設される細い針は、長さ方向に直角に切断した面を円形とし、先端を細くしたものが好ましい。通気細孔の直径は、細い針の直径、針をシートに刺す深さを変える、などにより調節することができる。
【0030】
針植設板を使用する方法は、平板の片面に面に対して直角に多数の細い針を植設した針植設板を使用する方法であり、針植設板を、広幅長尺のシートと同じ速度で移動させつつ、装備した自動駆動機構によって接近・後退可能に配置し、接近させた際に穿設させる方法である。複数枚の針植設板を一セットとし、シート上に複数セット準備することによって、シートに切れ目なく通気細孔を穿孔することができる。シートへの穿孔密度を調節するには、針植設板の針の数を増やす、針の数を増やし難い場合には、上の手順による穿孔操作を複数回繰り返せばよい。繰り返す際に、シートを裏返しにして穿孔することもできる。針植設ロールを使用する方法は、長尺の円形ロールの曲面状表面の切線に対して直角に、多数の細い針を植設した針植設ロールを、シートの移動速度と同じ線速度で回転させ、針植設ロールの針によってシートに穿孔する方法である。シートへの穿孔密度を調節するには、穿設したシートを裏返し、針植設ロールの針による穿孔操作を繰り返す方法に依ることができる。通気細孔の仕上がり状態は、針植設板および/または、針植設ロールを加熱する方法によって調節することができる。
【0031】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、表面抵抗値(JIS K6911に準拠)を10〜1012Ωの範囲とするのが好ましい。表面抵抗値を10Ω未満とするには帯電防止剤の使用量を多くする必要があり、帯電防止剤の過度の使用は帯電防止剤自体が素板ガラスを汚染する原因となり好ましくない。
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートの表面抵抗値を上の範囲とするには、前記したとおり、シート化用原料のスチレン系樹脂(A)に帯電防止剤を配合する。帯電防止剤を多量使用する必要があるが、帯電防止剤がシート表面にブリードアウトし、シート表面を汚染するので、表面抵抗値を10612Ω未満とする量とするのが好ましい。表面抵抗値が1012Ωを超えると帯電し易くなり、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートが使用される雰囲気に浮遊している塵芥が付着し易くなるので好ましくない。シート表面の表面抵抗値は、帯電防止剤の種類や配合量に依存するので、帯電防止剤の種類や配合量を変えた事前の実験によって、確認することができる。
【0032】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、素板ガラスとの静摩擦係数(ASTM−D1894に準拠)が1.0以下とするのが好ましい。素板ガラスとの静摩擦係数が1を超えると、シートが素板ガラスから剥離し難く、素板ガラスの間に挟まれた状態からの抜き取りが難しく、シートが破損し易くなり好ましくない。
【0033】
本発明に係る素板ガラス搬送用シートスチレン系樹脂は、衝撃強度(JIS P8134に準拠)が100kg・cm/cm以上、引裂強度(試験法は後記する)が2.0N/mm以上、好ましくは3.0N/mm以上、耐折強度(JIS P8115に準拠)が300回以上、などの特性を具備させるのが好ましい。これら特性を具備しないシートは、素板ガラスの間に挟まれた状態から抜き取る際に、シートに折れや皺が生じ易く、また、破損し易くなり、好ましくない。シートにこれら特性は、原料のスチレン系樹脂(A)の種類、ゴム成分(C)の含有量、スチレン系樹脂(A)のMFR、シートの発泡倍率、シートの延伸倍率などを変えたシートを試作し、特性を評価して最適の組合せを確認することができる。
【0034】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、素板ガラスと吸引機構の吸引パッドとの間に介在され、吸引パッドに真空を適用することによって、素板ガラスを吸着面に吸引保持して、吸着保持した状態で所定位置に搬送するまでの間、所定位置に搬送された後も素板ガラスの間に残されて開梱、素板ガラスがディスプレイ基板などの使用に供されるまでの間、素板ガラスの間に介在される。吸引パッドは、自動駆動機構を装備した吸引機構によって素板ガラス表面に対して前進・後退可能とされ、素板ガラスを吸引保持した状態で回転・移動可能とされる。素板ガラスを吸引保持した状態で、梱包用容器の位置に搬送し、真空の適用を解いて素板ガラスを梱包用容器の所定の位置に並べる。複数枚の素板ガラスを収納した梱包容器は、素板ガラスの使用者(ユーザー)側に搬送される。
【0035】
梱包容器は素板ガラスの使用者(ユーザー)で開梱され、素板ガラスはディスプレイ基板などの用途に供される。素板ガラス搬送用シートは、素板ガラスの使用に伴って素板ガラスの表面から一枚ごとに剥離されるか、または、素板ガラスの間に挟まれた状態から強制的に抜き取られる。この際、シートの表面抵抗値、静摩擦係数が前記範囲に調節されているので、素板ガラスから容易に剥離され、または、素板ガラスの間から容易に抜き取ることができる。また、シートの機械的特性が特定の値以上にされているので、抜き取る際に破損することがない。剥離され、または、抜き取られたスチレン系樹脂シートは積み重ねられ、梱包されて再使用に供される。再使用に供される前にシートは洗浄されるが、積み重ねられた状態からの剥離は容易であり、また、シートに含有している高分子型帯電防止剤は洗い流されることがないので、優れた帯電防止性を維持する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下に記載の例で使用した原材料は、以下の特性を有する市販品を使用した。スチレン系樹脂シートの評価項目と評価方法は、以下に記載したとおりである。
【0037】
[原材料]
1.GPPS:温度200℃、荷重5kgの条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が、3.5g/10分のゴム成分を有しない一般用ポリスチレン(PSジャパン社製、商品名:HH102)である。
2.HIPS:上と同じ条件下で測定したMFRが、3.0g/10分の耐衝撃性ポリスチレン(PSジャパン社製、商品名:HT478、ゴム成分含有量:9質量%)である。
【0038】
3.帯電防止剤−1:アイオノマー状の高分子型帯電防止剤(三井デュポンポリケミカル社製、商品名:ENTIRA AS MK400)である。
4.帯電防止剤−2:アイオノマー状の高分子型帯電防止剤(三井デュポンポリケミカル社製、商品名:ENTIRA AS SD100)である。
5.帯電防止剤−3:ポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤(三洋化成工業社製、商品名:ペレスタット NC6321)である。
6.発泡剤:ポリスチレンをベースとし、分解温度が155℃の発泡剤を40質量%含有するマスターバッチ(永和化成工業社製、商品名:ポリスレンES405)である。
【0039】
[シートの評価項目]
(1)透気度(ガーレ透気度)(単位:秒/100ml):以下に記載の例で得られた二軸延伸シートから、大きさが100mm×100mmの試験片を5枚作成し、23℃、50%RHで24時間状態調整した。このあと、JIS P8117に準拠し、23℃、50%RHの条件下、東洋精機社製の「ガーレ式デンソメータ」を使用して測定した(単位:秒/100ml)。得られた5枚の試験片の平均値を算出し、この値をシートの透気度とした。この値が60秒/100ml以下のものを透気度が「良好」と判定して「○」と表示し、60秒/100mlより大きいものを「劣る」と判定して「×」と表示した。
【0040】
(2)表面抵抗値(単位:Ω):以下に記載の例で得られた二軸延伸シートから、大きさが100mm×100mmの試験片を5枚作成し、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整した。このあと、JIS K6911に準拠し、23℃、50%RHの条件下、三菱化学社製の「ハイレスターUP MCP−450型(JボックスUタイプ)」を使用し、印加電圧500V、測定時間60秒の条件で表面抵抗値(単位:Ω)を測定し、5枚の試験片の平均値を算出した。この平均値をシートの表面抵抗値とした。さらに、これら5枚の試験片を60℃の流水で3分間洗浄し、清浄な紙で水分を拭き取り、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整したあと、洗浄前と同じ条件で表面抵抗値を測定し、その平均値を算出して、洗浄後の表面抵抗値とした。この値が10〜1012範囲のものを帯電防止性が「良好」と判定して「○」と表示し、1012を超えたものを「劣る」と判定して「×」と表示した。
【0041】
(3)静摩擦係数:以下に記載の例で得られた二軸延伸シートから、大きさが100mm×100mmの試験片を5枚作成し、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整した。このあと、試験片と無アルカリガラス(中心線平均粗さ0.01μm以下)との静摩擦係数を、ASTM D1894に準拠した東洋精機社製の「TR型摩擦測定機」を使用して、荷重0.2kgf、引張り速度15cm/minの条件下で測定した。5枚の試験片の平均値を算出し、この平均値をシートの静摩擦係数とした。この値が1.0未満のものを静摩擦係数が「良好」と判定して「○」と表示し、1.0以上のものを「劣る」と判定して「×」と表示した。
【0042】
(4)衝撃強度(単位:kg・cm/cm):以下に記載の例で得られた二軸延伸シートから、大きさが100mm×100mmの試験片を5枚作成し、JIS P8134に準拠した東洋精機社製「パンクチャーテスタ(先端が12.7mm丸球面ヘッドを使用)」を使用して、試験片の破壊に要したエネルギー量(衝撃強度:kg・cm)を、パンクチャーテスタの目盛板より読み取った。このエネルギー量を、シート厚さ(cm)で除した値を衝撃強度(パンクチャー衝撃強度、単位:kg・cm/cm)とし、5個の試験片の平均値を算出した。この平均値をシートの衝撃強度とした。この値が100kg・cm/cm以上のものを衝撃強度が「良好」と判定して「○」と表示し、100kg・cm/cm未満のものを「劣る」と判定して「×」と表示した。
【0043】
(5)引裂強度(単位:N/mm):以下に記載の例で得られた二軸延伸シートから、大きさが50mm×64mmの試験片を、各シートのMD(シートの押出方向)を長辺として5枚、TD(シートの押出方向と直角方向)を長辺として5枚作成した。これら試験片の短辺(50mm)側の中央端から長辺と平行に13mmの切れ込みを刻設し、東洋精機社製「軽荷重引裂試験機」を使用して、引裂いた時の指示値を読み取り、この指示値から初期試験片の厚さ(mm)で除した値を引裂強度(単位:N/mm)とした。MDおよびTDについて、各々長辺とした5個の試験片での平均値を算出し、両者の平均値から全平均値を計算した。この値が2.0N/mm以上のものを引裂強度が「良好」と判定して「○」と表示し、2.0N/mm未満のものを「劣る」と判定して「×」と表示した。
【0044】
(6)耐折強度(単位:回):以下に記載の例で得られた二軸延伸シートから、大きさが15mm×150mmの試験片を、各シートのMDを長辺として5個、TDを長辺として5枚作成した。これらの試験片につき、JIS P8115に準拠した東洋精機社製「MIT耐揉疲労試験機」を使用し、折り曲げ角±90°、折り曲げ速度175rpm、荷重1kgの条件下で、破断するまでの折り曲げ回数を計測し、この回数を耐折強度(単位:回)とした。MD及びTDについて各5回の平均値を求め、両者の平均値から全平均値を求めた。この値が300回以上のものを耐折強度が「良好」と判定して「○」と表示し、300回未満のものを「劣る」と判定し「×」と表示した。
【0045】
[実施例1]
二台の押出機(プラ技研社製、ベント式65mmφ型押出機、および池貝鉄工製、タンデム115mmφ押出機)と、それぞれの押出機先端に装着された接続用管を介して、2種3層用フィードブロック&分配ブロック(プラ技研社製)から面長が850mmのT−ダイ(プラ技研社製、コートハンガー型)を準備し、これらを三層シートが得られるように組立てた。GPPSとHIPSとの組合せ、両者の割合を表−1、表−2に記載したとおりとし、リボンブレンダーによって均一に混合してドライブレンド物を得た。二台の押出機のシリンダー温度を190℃に設定してドライブレンド物を溶融し、表−1、表−2に記載したシート構成となるように三層の未延伸シートとして押出し、80℃に設定した冷却ロールで急冷し、両外層が発泡層で内層も発泡層からなり、両外層に帯電防止剤−1が配合された未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.35mm、発泡倍率1.66の二軸延伸発泡シートとし、ロール状に巻き取った。
【0046】
巻き取ったシートをリワインダーによって巻き替える際に、直径が600μm、長さが4.0mmの針が、30本/cmの密度で植設された針植設ロールによって、通気細孔を穿孔した。得られたシートの構成、シート全体のゴム含有率、厚さ、発泡倍率、および、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−1に記載した。
【0047】
[実施例2]
実施例1に記載の例おいて、両外層に配合される帯電防止剤を帯電防止剤−2に変更した他は、同例に記載したのと同様の手順で、厚さ0.34mm、発泡倍率1.66の二軸延伸発泡シートを得た。
【0048】
[参考例1]
実施例1に記載の例において、リワインダーせず、針植設ロールによって通気細孔を穿孔しなかった厚さ0.35mm、発泡倍率1.66の二軸延伸発泡シートについて、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−1に記載した。
【0049】
[実施例3]
両外層形成用樹脂に、帯電防止剤−1を配合したが発泡剤を配合せず、内層形成用樹脂に発泡剤を配合し、実施例1で使用したと同じ二台の押出機を使用し、内層用の押出機シリンダー温度を190℃に、外層用の押出機シリンダー温度を220℃に設定して溶融させ、実施例1に記載の手順で内層が発泡した三層の未延伸シートとして押出し、80℃に設定した冷却ロールで急冷し、両外層が非発泡層で内層が発泡層からなり、両外層に帯電防止剤−1が配合された未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.13mm、発泡倍率2.43の二軸延伸発泡シートとし、ロール状に巻き取った。巻き取ったシートをリワインダーによって巻き替える際に、実施例1で使用したのと同じ針植設ロールによって、通気細孔を穿孔した。得られたシートの構成、シート全体のゴム含有率、厚さ、発泡倍率、および、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−1に記載した。
【0050】
[参考例2]
実施例3に記載の例において、リワインダーせず、針植設ロールによって通気細孔を穿孔しなかった厚さ0.13mm、発泡倍率2.43の二軸延伸発泡シートについて、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−1に記載した。
【0051】
[実施例4]
実施例3に記載の例において、両外層に配合される帯電防止剤を帯電防止剤−3に変更し、二台の押出機の押出量を調節して、三層の樹脂押出し量比を外層/内層/外層=5/90/5と変更し、内層用の押出機のシリンダーを210℃に設定変更した他は、実施例3に記載したのと同様の手順で未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸発泡シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.22mm、発泡倍率4.05の二軸延伸発泡シートとし、ロール状に巻き取った。巻き取ったシートをリワインダーによって巻き替える際に、実施例1で使用したのと同じ針植設ロールによって、通気細孔を穿孔した。得られたシートの構成、シート全体のゴム含有率、厚さ、発泡倍率、および、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−2に記載した。
【0052】
[実施例5]
両外層形成用樹脂に、帯電防止剤−1と発泡剤とを配合し、内層形成用樹脂には帯電防止剤も発泡剤も配合せず、実施例1で使用したと同じ二台の押出機を使用し、内層用の押出機のシリンダーを220℃に設定し、外層用のそれは190℃に設定して溶融させ、実施例1に記載の手順で外層が発泡した三層の未延伸シートとして押出し、80℃に設定した冷却ロールで急冷し、両外層が発泡層で内層が非発泡層からなり、両外層に帯電防止剤−1が配合された未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.11mm、発泡倍率2.40の二軸延伸発泡シートとし、ロール状に巻き取った。巻き取ったシートをリワインダーによって巻き替える際に、実施例1で使用したのと同じ針植設ロールによって、通気細孔を穿孔した。得られたシートの構成、シート全体のゴム含有率、厚さ、発泡倍率、および、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−2に記載した。
【0053】
[参考例3]
両外層形成用樹脂に、帯電防止剤−1を配合したが発泡剤は配合せず、内層形成用樹脂には帯電防止剤も発泡剤も配合せず、実施例1で使用したのと同じ二台の押出機を使用し、双方の押出機のシリンダー温度を約220℃の条件で溶融させ、実施例1に記載の手順で両外層、内層とも非発泡の三層の未延伸シートとして押出し、80℃に設定した冷却ロールで急冷し、両外層に帯電防止剤−31が配合された未延伸発泡シートを作製した。得られた未延伸シートを、ロール方式縦延伸機で縦方向に約2.5倍、続いてテンター横延伸機によって横方向に約2.5倍延伸し、厚さ0.11mm、非発泡の二軸延伸シートとし、ロール状に巻き取った。巻き取ったシートをリワインダーによって巻き替える際に、実施例1で使用したのと同じ針植設ロールによって、通気細孔を穿孔した。得られたシートの構成、シート全体のゴム含有率、厚さ、および、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−2に記載した。
【0054】
[比較例1]
実施例3に記載の例において、内層用の押出機のシリンダーを230℃に設定変更した他は、同例に記載したのと同様の手順で、厚さ0.33mm、発泡倍率5.10倍の二軸延伸非発泡シートについて、得られたシートの構成、シート全体のゴム含有率、厚さ、発泡倍率、および、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価結果を、表−2に記載した。
【0055】
[比較例2]
本発明に係る素板ガラス搬送用シートと同じ用途に市販されている、発泡ポリエチレン樹脂シート(ジェイエスピー社製、商品名:ミラマット)につき、上記(1)〜(6)の物性評価項目についての評価し、評価結果を表−2に記載した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表から、次のことがわかる。
1.本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、衝撃強度、引裂き強度が高く破れ難いという優れた特性を発揮する(実施例1〜実施例5参照)。
2.比較例2のシートは、透気性がなく、静摩擦係数が大きくガラスとの滑り性に劣り、衝撃強度、引裂き強度が低く破れ難さに劣り、表面抵抗値が高く帯電防止性が劣り、素板ガラス面との静摩擦係数が大きく、滑り性が劣り梱包、開梱包作業性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シートは、素板ガラスと吸引機構の吸引パッドの吸引面との間に介在させ、吸引パッドに真空を適用することによって、素板ガラスを吸引パッドに吸引面に吸引保持して所定位置に搬送するまでの間、所定位置に搬送された後も素板ガラスの間に残されて梱包、輸送、貯蔵、開梱され、および、素板ガラスの使用者(ユーザー)側でディスプレイ基板などの用途に供されるまでの間、素板ガラスの間に配置される。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂シート製の素板ガラス搬送用シートにおいて、スチレン系樹脂シートの発泡倍率が1.1〜5.0倍の範囲で発泡されたものであることを特徴とする、素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項2】
スチレン樹脂シートの厚さが0.05〜0.3mmであることを特徴とする請求項1記載に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項3】
スチレン系樹脂シートが、少なくとも一方向に3.0倍まで延伸されたものである、請求項1ないし請求項2に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項4】
スチレン系樹脂シートが、三層より構成されている請求項1ないし請求項3に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項5】
スチレン系樹脂シートが、三層より構成されてなり、表面層に帯電防止剤が含有されてなる、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項6】
スチレン系樹脂シートが、ゴム成分の含有量が20質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項7】
素板ガラスが、フラットパネルディスプレイ基板用素板ガラスである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。
【請求項8】
シート全面に亘って通気細孔が穿孔されて透気度(JIS P8117)が60秒/100ml以下とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項7に記載の素板ガラス搬送用スチレン系樹脂シート。












【公開番号】特開2010−13167(P2010−13167A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176586(P2008−176586)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】