説明

紡績機

【課題】紡績機においてパッケージの装着を容易にする。
【解決手段】紡績機1を構成する紡績ユニット2においては、ドラフト装置11、空気紡績装置15、搬送ローラ16及び巻取装置17などが配置された機台10前方の作業者通路領域Rに、パッケージ装着ユニット12が配置されている。パッケージ装着ユニット12は、パッケージPが装着されるペグ44を備えており、ペグ44装着されたパッケージPは、その軸がほぼ水平となるように支持される。また、パッケージPから解舒された芯糸Cは、ペグ44の後方に配置された糸ガイドローラ14を経由して、ドラフト装置11のほぼ真上に配置された芯糸案内機構13に導入され、さらに、芯糸案内機構13からドラフト装置11に案内される。また、ペグ44は、前後方向に対する角度を調整可能となっているとともに、前後方向の位置も調整可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の紡績機においては、機台の背部に設けられたスライバケンスより引き出されたスライバが、ドラフト装置に供給されるとともに、ドラフト装置が配置された機台の上方に配置されたボビン(パッケージ)から解舒された芯糸が、芯糸供給装置によりドラフト装置(ミドルローラとフロントローラとの間)に案内されている。そして、ドラフト装置において延伸されたスライバと、ドラフト装置に案内された芯糸とが、ドラフト装置の下流側に配置された空気式紡績装置に送られるとともに、空気式紡績装置内に発生させた旋回気流によって、芯糸にスライバが巻き付けられた紡績糸が生成される。そして、生成された紡績糸は、巻取装置によってパッケージに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−101308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されているような紡績糸を生成するための紡績機においては、芯糸がなくなったときに、ボビン(パッケージ)の交換を行う必要があるが、上述したように、ボビンが機台の上方に配置されているため、機台の前方からボビンの交換作業を行おうとすると、ドラフト装置や芯糸供給装置などが邪魔となり、ボビンの交換作業を行いにくい。一方、機台の後方からボビンの交換作業を行おうとしても、機台の背部に配置されたスライバケンスや、スライバケンスからドラフト装置にスライバを搬送するためのクリールやガイドローラなどが邪魔となり、ボビンの交換作業は行いにくい。
【0005】
本発明の目的は、パッケージの交換作業を容易に行うことが可能な紡績機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る紡績機は、スライバを延伸させるドラフト装置と、芯糸が巻き取られたパッケージが装着されるパッケージ装着部と、前記パッケージ装着部に装着されたパッケージから解舒された芯糸と、前記ドラフト装置によって延伸されたスライバとから紡績糸を生成する紡績装置と、前記紡績装置によって生成された紡績糸をボビンに巻き取る巻取装置と、前記ドラフト装置、前記紡績装置及び前記巻取装置が、上流側からこの順に配置される機台とを備え、前記機台の前方は、作業者が作業を行うための作業者通路領域となっており、前記パッケージ装着部が、前記作業者通路領域に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、パッケージ装着部が、機台前方の作業者通路領域に配置されているので、機台の前方から、パッケージ装着部へのパッケージの装着を容易に行うことができる。
【0008】
第2の発明に係る紡績機は、第1の発明に係る紡績機において、前記機台の後方に、前記ドラフト装置に供給するためのスライバが貯留されたスライバケンスが配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、パッケージ装着部が、機台前方の作業者通路領域に配置されているため、機台の後方にスライバケンスが配置されている場合でも、機台の前方からパッケージの装着を行うことができ、パッケージの装着時にスライバケンスが邪魔になることがない。
【0010】
第3の発明に係る紡績機は、第1又は第2の発明に係る紡績機において、前記パッケージ装着部が、装着されたパッケージを、その軸がほぼ水平になるように支持しており、前記パッケージ装着部の後方に、前記パッケージ装着部に装着されたパッケージから解舒された芯糸を前記ドラフト装置に案内するための糸ガイドが配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によると、パッケージ装着部に装着されているパッケージが、その軸がほぼ水平となるようにパッケージ装着部に支持されている場合に、パッケージから解舒された糸を、一旦後方に引き出してから、パッケージ装着部よりも後方の機台に配置されたドラフト装置に案内することが可能となる。
【0012】
第4の発明に係る紡績機は、第3の発明に係る紡績機において、前記糸ガイドが、前記パッケージ装着部に装着されたパッケージの軸の延長線上に配置されていることを特徴とする。
【0013】
パッケージ装着部に装着されたパッケージから芯糸が解舒されるときには、糸ガイドを支点とするバルーンが発生するが、本発明では、パッケージの軸の延長線上に糸ガイドが配置されているため、バルーンに偏りができず、解舒される芯糸に張力のばらつきが生じにくい。
【0014】
第5の発明に係る紡績機は、第4の発明に係る紡績機において、前記パッケージ装着部は、前記筒体の内径の異なる複数種類のパッケージのいずれかが選択的に挿通されることで、これら複数種類のパッケージが選択的に装着される、前記筒体の内径よりも径の小さいペグによって構成されたものであって、前記ペグの前後方向に対する角度、及び、上下の位置の少なくともいずれか一方が変更可能となっていることで、前記複数種類のパッケージのいずれが装着されたときにも、パッケージの軸の延長線上に前記糸ガイドがくるように、ペグの位置調整をすることができるようになっていることを特徴とする。
【0015】
パッケージ装着部が、パッケージが挿通されることでパッケージが装着されるペグによって構成されている場合、パッケージの筒体の内径に応じて、ペグに挿通された状態でのパッケージの軸の向きが変わる。しかしながら、本発明によると、パッケージ装着部の前後方向に対する角度及び上下の位置の少なくともいずれか一方を調整することにより、装着されるパッケージの種類によらず、糸ガイドがパッケージの軸の延長線上にくるようにすることができる。
【0016】
第6の発明に係る紡績機は、第3〜第5のいずれかの発明にに係る紡績機において、前記パッケージ装着部は、前後に移動可能となっていることで、前後方向に関する前記糸ガイドとの距離を変更可能となっていることを特徴とする。
【0017】
パッケージから芯糸が解舒されるときには、糸ガイドを支点とするバルーンが生じるが、パッケージの位置が変化しないとすると、芯糸の解舒速度が速くなるほどバルーンの膨らみが大きくなってしまう。しかしながら、本発明では、パッケージ装着部が前後に移動可能となっているので、芯糸の解舒速度が速い場合ほど、パッケージ装着部を前方に移動させて、バルーンの支点となる糸ガイドから離すことにより、バルーンの膨らみが大きくなりすぎてしまうのを防止することができる。
【0018】
第7の発明に係る紡績機は、第1〜第6のいずれかの発明に係る紡績機において、前記パッケージ装着部が、前記ドラフト装置への芯糸の供給を行うための供給位置と、前記供給位置よりも下方の、パッケージの装着を行うための装着位置との間で移動可能となっていることを特徴とする。
【0019】
本発明によると、パッケージ装着部を、ドラフト装置への芯糸の供給を行うときよりも下方に移動させた状態で、パッケージ装着を行うことができるので、パッケージ装着部へのパッケージの装着をさらに容易に行うことができる。
【0020】
第8の発明に係る紡績機は、第1〜第7のいずれかの発明に係る紡績機において、前記パッケージ装着部の下方に配置されており、パッケージから解舒されて前記ドラフト装置に供給される芯糸を保護する保護部材をさらに備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明によると、作業者の体の一部が、パッケージから糸が解舒されるときに発生するバルーンに接触してしまうことなどを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パッケージ装着部が、機台前方の作業者通路領域に配置されているので、機台の前方から、パッケージ装着部へのパッケージの装着を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る紡績機の外観を示す側面図である。
【図2】図1を矢印IIの方向から見たときの、パッケージ装着ユニットの図である。
【図3】図1のパッケージ装着ユニットの斜視図である。
【図4】パッケージ装着ユニットの、左右方向に関する略中央部における断面図であり、(a)が運転時、(b)がペグへのパッケージの装着時の状態を示している。
【図5】ペグの角度調整を説明するための図である。
【図6】ペグの前後の位置調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る紡績機の外観を示す側面図である。図2は、図1を矢印IIの方向から見たときの、後述するパッケージ装着部などを示す図である。なお、以下では、図1、図2に示すように、互いに直交する前後方向、左右方向及び上下方向を規定して説明を行う。
【0026】
紡績機1は、左右方向にほぼ等間隔に配列された複数の紡績ユニット2、これら複数の紡績ユニット2の前方で左右に移動するブローユニット3などによって構成されている。
【0027】
各紡績ユニット2は、図1〜図3に示すように、機台10に配置された、ドラフト装置11、パッケージ装着ユニット12、芯糸案内機構13、糸ガイドローラ14、空気紡績装置15、搬送ローラ16、巻取装置17などを備えている。また、機台10のすぐ前方には、作業台9が配置されており、作業者Wは、作業台9の上に載って、後述するパッケージPの交換などの作業を行う。すなわち、機台10の前方は、図1に示すように作業者Wが作業を行う作業者通路領域Rとなっている。ここで、作業者通路領域Rとは、作業台9の上方の領域だけを指しているのではなく、機台10前方の作業者Wが作業を行うための領域全体を指している。なお、作業台9は省略可能である。
【0028】
ドラフト装置11は、バックローラ8a、サードローラ8b、ミドルローラ8c及びフロントローラ8dの、4対のドラフトローラなどによって構成されており、機台10の後方に配置されたスライバケンス21から、クリール22、ガイドローラ23などを介してドラフト装置11に供給されたスライバSを、これらのドラフトローラ8a〜8dによって延伸させつつ下流側(図1の前下側)に搬送する。なお、ドラフト装置11の構成は、従来の紡績機と同様であるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0029】
パッケージ装着ユニット12は、紡績糸Yの芯糸Cが巻き取られたパッケージPが装着されるペグ44(本発明に係るパッケージ装着部に相当する)、ペグ44を回動させるための回動機構41、ペグ44の角度を調整するための角度調整部材42、ペグ44をパッケージ装着ユニット12に取り付けるための取り付け部材43、ペグ44に装着されたパッケージPから解舒された芯糸Cが作業者Wに接触してしまうのを防止するための保護部材45などによって構成されており、機台10前方の作業者通路領域Rに配置されている。なお、パッケージ装着ユニット12の各部分の構成については、後ほど詳細に説明する。
【0030】
芯糸案内機構13は、ドラフト装置11のほぼ真上に配置されており、図示しないローラなどによって、ペグ44に装着されたパッケージPから解舒された芯糸Cをドラフト装置11(ミドルローラ8cとフロントローラ8dとの間)に案内する。
【0031】
糸ガイドローラ14は、ペグ44の後方に配置されており、その左右両端部が、機台10の上面から上方に延びた2本の支柱34に回転自在に支持されている。パッケージPから解舒された芯糸Cは、一旦後方に引き出され、糸ガイドローラ14を経由して芯糸案内機構13に導入される。
【0032】
空気紡績装置15は、ドラフト装置11の下流側に配置されている。空気紡績装置15は、その内部に、ドラフト装置11によって延伸されたスライバSと、ドラフト装置11に案内された芯糸Cとが導入された状態で旋回流を発生させるによって、芯糸Cの周囲にスライバSを巻き付け、これにより、紡績糸Yを生成する。
【0033】
搬送ローラ16は、空気紡績装置15の下流側に配置されており、空気紡績装置15において生成された紡績糸Yを下方に搬送する。巻取装置17は、搬送ローラ16の下方に配置されており、搬送ローラ16によって搬送されてきた紡績糸Yを、ボビンBに巻き取る。
【0034】
なお、以上に説明した、芯糸案内機構13、空気紡績装置15、搬送ローラ16及び巻取装置17の構成は、従来の紡績機のものと同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0035】
次に、図1〜図4を用いてパッケージ装着ユニット12の構成について詳細に説明する。図3はパッケージ装着ユニット12の斜視図である。図4は、パッケージ装着ユニット12の左右方向に関する略中央部における断面図であり、(a)が、紡績機1により、パッケージPからドラフト装置11に芯糸Cが供給されているとき(以下、運転時とする)の状態、(b)がパッケージPの交換時の状態をそれぞれ示している。
【0036】
図1〜図4に示すように、各紡績ユニット2に設けられた複数のパッケージ装着ユニット12は、左右方向に延びた1つの略円筒形状の支持部材31によってまとめて支持されている。支持部材31は、その両端部が、それぞれ、取り付け部材32によって、前後方向に延びた2本のガイドバー33に取り付けられている。取り付け部材32は、図示しないボルトによってガイドバー33に固定可能となっているとともに、ボルトを緩めた状態では、ガイドバー33に沿って前後方向に移動可能となっている。また、2本のガイドバー33は、それぞれ、その後端部が支柱34に固定されている。
【0037】
パッケージ装着ユニット12は、上述したように、回動機構41、角度調整部材42、取り付け部材43、ペグ44、保護部材45などを備えている。回動機構41は、フレーム51、固定部材52、レバー53、スプリング54などからなる。フレーム51は、内部に空間のある略直方体形状の部材であり、支持部材31に回動自在に支持されている。固定部材52は、フレーム51の内部空間に配置された略円柱形状の部材であり、ボルト55により支持部材31に固定されている。また、支持部材31には、その前端部に凹部52aが形成されている。
【0038】
レバー53は、図4(a)に示す運転時の状態で、フレーム51の前側の壁を貫通することで、フレーム51の内部と外部とにまたがって略前後方向に延びた棒状の部材であって、フレーム51の内部に位置するその後端部が、固定部材52の凹部52aに挿通されているとともに、フレーム51の外部まで延びたその前端部が、後述するパッケージPの交換時に作業者Wが把持するつまみ53aとなっている。また、レバー53のフレーム51の内部に配置されている部分のうち、凹部52aに挿通されている部分のすぐ前方の部分にはバネ支持部53bが設けられている。ここで、レバー53にはスプリング54に挿通されており、バネ支持部53bは、このスプリング54を支持している。
【0039】
そして、このような構成の回動機構41においては、レバー53の後端部が凹部52aに挿通された状態では、図4(a)に示すように、フレーム51及びレバー53が、固定部材52に固定された状態となっている。
【0040】
一方、図4(a)に示す、レバー53が凹部52aに挿通された状態で、つまみ53aを把持してレバー53を前方に引っ張ると、図4(b)に示すように、レバー53が凹部52aから抜け、フレーム51及びレバー53が支持部材31に対して回動自在となる。
【0041】
角度調整部材42は、略L字の板状体であって、支持部材31に挿通されることで、支持部材31に回動自在に支持されている。また、角度調整部材42は、ボルト56によってフレーム51の右側の側面と連結されているとともに、ボルト57によってフレーム51の上面と連結されている。ここで、フレーム51の上面と角度調整部材42との間には隙間があり、ボルト57を締めるあるいは緩めることによって上下に移動させると、角度調整部材42が支持部材31として回動する。なお、角度調整部材42においては、ボルト56が挿通される貫通孔42aがボルト56よりも上下に長く延びており、上記角度調整部材42の回動がボルト56によって妨げられないようになっている。
【0042】
取り付け部材43は、その前端部が、2つのボルト58によって角度調整部材42の上面に連結されているとともに、これよりも後方の部分において、約90°ずつ交互に3回屈曲された板状体である。
【0043】
ペグ44は、運転時の状態で略前後方向に延びた、パッケージPの筒体Tの内径よりも径の小さい棒状の部材であって、その前端部が、取り付け部材43の角度調整部材42と連結された部分のすぐ後方に位置する上下方向に延びた部分に取り付けられている。ペグ44には、パッケージPの筒体Tが挿通され、これにより、ペグ44にパッケージPが装着される。このとき、ペグ44に装着されたパッケージPは、その軸Aがほぼ水平となるように、ペグ44に支持されている。ここで、ペグ44には、筒体Tの内径の異なる複数種類のパッケージPのいずれかが選択的に装着される。
【0044】
保護部材45は、略U字形状の部材であって、その両端部が、ペグ44より下方に位置する、取り付け部材43の後端部の上下方向に延びた部分に取り付けられている。これにより、運転時においては、ペグ44に装着されたパッケージPと、機台10の前方にいる作業者Wとの間に保護部材45が介在することとなり、パッケージPから芯糸Cが解舒されているときに、解舒された芯糸Cが作業者Wの体の一部に接触してしまうのを防止することができる。
【0045】
次に、パッケージPの交換作業の手順について説明する。上述したように、紡績機1の運転時には、図4(a)に示すように、レバー53が固定部材52の凹部52aに挿通された状態となっており、フレーム51、レバー53が支持部材31(固定部材52)に固定されている。そして、フレーム51に対して固定された、角度調整部材42、取り付け部材43、ペグ44、保護部材45も、支持部材31に固定されている。なお、図4(a)に示す、運転時のペグ44の位置が、本発明に係る供給位置に相当する。
【0046】
パッケージPの芯糸CがなくなったときなどパッケージPの交換を行う際には、作業台9に載っている作業者Wが、つまみ53aを把持してレバー53を前方に引っ張るとともに、引っ張ったレバー53を上方に軽く押し上げる。すると、パッケージ装着ユニット12の固定部材52を除いた部分が、レバー53が凹部52aから抜けることで支持部材31に対して回動自在となるとともに、自重やパッケージPの重みによって図4の時計回り方向に回動し、図4(b)に示すように、ペグ44が下方に移動してくる。なお、このとき、スプリング54は、バネ支持部53bとフレーム51の前側の壁とに挟まれて圧縮された状態となっている。
【0047】
この状態で、ペグ44から、芯糸CがなくなったパッケージPを抜き取るとともに新しいパッケージPをペグ44に挿通することで、パッケージPの交換を行う。なお、本実施の形態では、図4(b)に示す、パッケージPの交換を行う際のペグ44の位置が、本発明に係る装着位置に相当する。
【0048】
そして、パッケージPの交換を行った後、パッケージPを上方に押し上げることにより、パッケージ装着ユニット12を反時計回りに回動させて、図4(a)に示す位置まで戻す。すると、圧縮されていたスプリング54が元に戻ろうとする力によって、レバー53が自動的に凹部52aに挿通され、再び、ペグ44などが、図4(a)に示す位置で支持部材31に固定される。そして、この後、パッケージPから解舒した糸を糸ガイドローラ14に取り付けるなどしてから、紡績ユニット2の運転を再開する。
【0049】
ここで、本実施の形態では、ペグ44を含むパッケージ装着ユニット12が、機台10前方の作業者通路領域Rに配置されているため、パッケージPの交換作業を行う際に、作業者通路領域Rにいる作業者Wにとってドラフト装置11が邪魔とならず、容易にパッケージPの交換を行うことができる。
【0050】
さらに、パッケージ装着ユニット12を回動させることによって、ペグ44を、運転時よりも下方に移動させた状態でパッケージPの交換を行うことができるので、パッケージPの交換をさらに容易に行うことができる。
【0051】
次に、角度調整部材42を回動させることによる、ペグ44の角度調整について説明する。図5は、角度調整部材42を回動させることによって位置調整が行われた後の、ペグ44などの状態を示す図である。
【0052】
上述したように、ボルト57を締めるあるいは緩めると、角度調整部材42が支持部材31を中心として回動するが、このとき、取り付け部材43を介して角度調整部材42に取り付けられたペグ44も支持部材31を中心として回動する。そして、本実施の形態では、角度調整部材42を回動させることによって、ペグ44に挿通されたパッケージPの軸Aの延長線上に糸ガイドローラ14がくるように、ペグ44の前後方向に対する角度を調整する。
【0053】
より詳細に説明すると、ペグ44に挿通されたパッケージPは、図5に示すように、筒体Tの後上端部と前下端部とがペグ44によって支持されるため、その軸Aの向きは、ペグ44に対して傾いているが、図5(a)と図5(b)とを比較すればわかるように、筒体Tの内径が大きい場合ほど、軸Aのペグ44に対する傾きが大きくなる(筒体Tの内径によって、ペグ44に挿通された状態での軸Aの向きが変わる)。
【0054】
ここで、ペグ44に装着されたパッケージPから芯糸Cが解舒される際には、糸ガイドローラ14を支点とするバルーンが発生するが、バルーンに偏りがあると、芯糸Cの張力が変動してしまう。
【0055】
そこで、本実施の形態では、ペグ44に装着されるパッケージPの筒体Tの内径が大きい場合ほど、角度調整部材42を時計回りに大きく回動させることによって、パッケージPの軸Aの延長線上に糸ガイドローラ14がくるように、ペグ44の前後方向に対する角度を調整している。したがって、パッケージPから芯糸Cが解舒されたときには、糸ガイドローラ14を支点として均等にバルーンが発生する。そして、これにより、芯糸Cに、上述したような張力の変動が生じてしまうのを防止することができる。
【0056】
次に、ペグ44の前後の位置調整について説明する。図6は、前後の位置調整がされたペグ44の状態を示す図であり、(a)がペグ44と糸ガイドローラ14とが前後方向に関してある距離だけ離れている状態、(b)がペグ44を、(a)の状態よりも距離dだけ前方に移動させた状態を示している。なお、図6(a)と図6(b)とで、パッケージPから芯糸Cが解舒される速度は同じである。
【0057】
本実施の形態では、上述したように、取り付け部材32が、ガイドバー33に沿って前後に移動可能となっており、取り付け部材32を前後に移動させることによって、支持部材31、及び、これに支持された複数のパッケージ装着ユニット12をまとめて前後移動させ、これにより、ペグ44の前後の位置を調整することが可能となっている。
【0058】
ここで、パッケージPから芯糸Cを解舒したときには、糸ガイドローラ14を支点とするバルーンが発生するが、このバルーンは、糸ガイドローラ14とパッケージPとの距離が一定であるとすると、芯糸Cが解舒される速度が速い場合ほど大きく膨らむ。
【0059】
そこで、本実施の形態では、パッケージPから芯糸Cが解舒される速度が速い場合ほど、ペグ44が前方にくるように、すなわち、前後方向に関して糸ガイドローラ14から離れるように、ペグ44の前後の位置調整を行う。
【0060】
これにより、パッケージPからの芯糸Cの解舒速度が速い場合に、バルーンの支点である糸ガイドローラ14とパッケージPが装着されたペグ44とが大きく離れることとなり、バルーンの膨らみを小さくすることができる。なお、ペグ44の前後の位置を変更した場合には、装着されているパッケージPの軸Aの位置が変わるため、ペグ44の前後の位置調整を行った後で、上述のペグ44の角度調整を行うことが好ましい。
【0061】
ブローユニット3は、ダクト61と複数のエア吐出口62とを備えている。ダクト61は、紡績ユニット2のうちの前方から上方を覆うように設けられているとともに、図示しないレールなどに沿って左右方向に移動可能となっている。そして、ブローユニット3は、左右方向に移動しつつ、複数のエア吐出口62から空気を噴射することによって、紡績時に発生した風綿が機台10に堆積してしまうのを防止する。
【0062】
このとき、本実施の形態では、パッケージPが装着されるペグ44を含むパッケージ装着ユニット12が機台10前方の作業者通路領域Rに配置されているため、エア吐出口62によりペグ44に装着されたパッケージPに空気を噴射することにより、パッケージPに付着した風綿を除去することができる。
【0063】
次に、本実施の形態に、種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0064】
上述の実施の形態では、ペグ44の下方に略U字形状の保護部材45が配置されていたが、作業者Wの体の一部がパッケージPから解舒された芯糸Cに接触してしまうのを防止することができるものであれば、保護部材45は、略U字以外の形状を有するものであってもよい。
【0065】
さらには、運転時のペグ44の位置が、作業者Wよりもはるかに高い位置にあり、パッケージPから解舒された芯糸Cが作業者Wに接触しにくい場合などには、保護部材45は設けられていなくてもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態では、回動機構41を回動させることによって、ペグ44を、供給位置と、供給位置よりも下方の装着位置との間で移動させることができるようになっていたが、ペグ44を移動させるための機構はこれには限られない。例えば、ペグ44を上下に平行移動させる機構など、他の機構によってペグ44を運転時の位置(供給位置)と、パッケージPの装着させるための位置(装着位置)との間で移動させてもよい。
【0067】
さらには、ペグ44が、このように移動させることができるようになっておらず、ペグ44が、運転時と同じ位置にある状態で、パッケージPの装着を行ってもよい。この場合でも、ペグ44を含むパッケージ装着ユニット12が、機台10前方の作業者通路領域Rに配置されているため、パッケージPを装着させる際に、ドラフト装置11などが邪魔にならず、容易にパッケージPの装着を行うことができる。
【0068】
また、上述の実施の形態では、複数のパッケージ装着ユニット12が1つの支持部材31にまとめて支持されており、取り付け部材32を前後に移動させることによって、複数のパッケージ装着ユニット12がまとめて前後に移動可能となっていたが、すなわち、複数のパッケージ装着ユニット12におけるペグ44の前後の位置をまとめて調整可能となっていたが、これには限られない。例えば、各パッケージ装着ユニット12が個別に支持されていることで、独立して前後に移動可能となっており、各パッケージ装着ユニット12におけるペグ44の位置を個別に調整可能となっていてもよい。
【0069】
さらには、例えば、常に一定の速度でパッケージPから芯糸Cが解舒される場合や、ペグ44が、元々、糸ガイドローラ14が大きく離れており、芯糸Cが解舒されたときにバルーンが大きく膨らんでしまうことがないような場合などには、ペグ44は前後に移動できないようになっていてもよい。
【0070】
また、上述の実施の形態では、角度調整部材42の回動により、ペグ44の前後方向に対する角度を変更することで、パッケージPの軸Aの延長線上に糸ガイドローラ14がくるようにしたが、これには限られない。例えば、ペグ44を上下に平行移動させる機構が設けられており、ペグ44を上下に移動させることによって、パッケージPの軸Aの延長線上に糸ガイドローラ14がくるようにしてもよい。あるいは、ペグ44の前後方向に対する角度及び上下方向の位置の両方を変更することができるようになっていてもよい。
【0071】
さらに、上述の実施の形態では、各パッケージ装着ユニット12の角度調整部材42を回動させることにより、複数のパッケージ装着ユニット12におけるペグ44の角度を個別に変更することができるようになっていたが、これには限られず、各パッケージ装着ユニット12におけるペグ44の前後方向に対する角度をまとめて変更することができるようになっていてもよい。
【0072】
また、ペグ44に1種類のパッケージPのみが装着される場合など、筒体Tの内径が同じパッケージPのみがペグ44に装着される場合には、ペグ44の位置は変更できないようになっていてもよい。
【0073】
また、上述の実施の形態では、パッケージPが装着される本発明に係るパッケージ装着部が、パッケージPが挿通されるペグ44によって構成されたものであったが、パッケージ装着部は、ペグ44によって構成されたものであることには限られず、パッケージPを装着可能な別の構成であってもよい。
【0074】
また、上述の実施の形態では、ペグ44の後方に糸ガイドローラ14が配置されていたが、ローラ以外の糸ガイドが配置されていてもよい。
【0075】
さらには、上述の実施の形態では、パッケージPから引き出した芯糸Cを後方から芯糸案内機構13に導入させることができるように糸ガイドローラ14が設けられていたが、芯糸案内機構13が、後方以外の方向から芯糸Cを導入させることができるようになっている場合などには、ペグ44の後方に糸ガイドが設けられていなくてもよい。
【0076】
また、上述の実施の形態では、糸が上方から下方に向けて走行する紡績ユニット2を備えた紡績機1に本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、上述の実施の形態とは逆に、糸が下方から上方に向けて走行する紡績ユニットを備えた紡績機など、上述の実施の形態とは糸の走行方向が異なる紡績機に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 紡績機
10 機台
11 ドラフト装置
14 糸ガイドローラ
15 空気紡績装置
17 巻取装置
44 ペグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライバを延伸させるドラフト装置と、
芯糸が巻き取られたパッケージが装着されるパッケージ装着部と、
前記パッケージ装着部に装着されたパッケージから解舒された芯糸と、前記ドラフト装置によって延伸されたスライバとから紡績糸を生成する紡績装置と、
前記紡績装置によって生成された紡績糸をボビンに巻き取る巻取装置と、
前記ドラフト装置、前記紡績装置及び前記巻取装置が、上流側からこの順に配置される機台とを備え、
前記機台の前方は、作業者が作業を行うための作業者通路領域となっており、
前記パッケージ装着部が、前記作業者通路領域に配置されていることを特徴とする紡績機。
【請求項2】
前記機台の後方に、前記ドラフト装置に供給するためのスライバが貯留されたスライバケンスが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記パッケージ装着部が、装着されたパッケージを、その軸がほぼ水平になるように支持しており、
前記パッケージ装着部の後方に、前記パッケージ装着部に装着されたパッケージから解舒された芯糸を前記ドラフト装置に案内するための糸ガイドが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紡績機。
【請求項4】
前記糸ガイドが、前記パッケージ装着部に装着されたパッケージの軸の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の紡績機。
【請求項5】
前記パッケージ装着部は、
前記筒体の内径の異なる複数種類のパッケージのいずれかが選択的に挿通されることで、これら複数種類のパッケージが選択的に装着される、前記筒体の内径よりも径の小さいペグによって構成されたものであって、
前記ペグの前後方向に対する角度、及び、上下の位置の少なくともいずれか一方が変更可能となっていることで、前記複数種類のパッケージのいずれが装着されたときにも、パッケージの軸の延長線上に前記糸ガイドがくるように、ペグの位置調整をすることができるようになっていることを特徴とする請求項4に記載の紡績機。
【請求項6】
前記パッケージ装着部は、前後に移動可能となっていることで、前後方向に関する前記糸ガイドとの距離を変更可能となっていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の紡績機。
【請求項7】
前記パッケージ装着部が、前記ドラフト装置への芯糸の供給を行うための供給位置と、前記供給位置よりも下方の、パッケージの装着を行うための装着位置との間で移動可能となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紡績機。
【請求項8】
前記パッケージ装着部の下方に配置されており、パッケージから解舒されて前記ドラフト装置に供給される芯糸を保護する保護部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−226031(P2011−226031A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98431(P2010−98431)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】