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紡績糸および織編物
説明

紡績糸および織編物

【課題】抗ピル性、張り、腰感などの特性に優れ、かつ紫外線遮蔽、難透性にも効果のある紡績糸およびそれらからなる織編物を提供する。
【解決手段】酸化チタン含有率が2.0重量%以上であるポリエステル繊維が20重量%以上含まれているとともに、実質的に無撚りであることを特徴とする紡績糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性、接触冷感、抗ピル性、張りおよび腰感などの特性に優れる紡績糸および織編物(織物および編物を総称して織編物という)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパン織編物については、綿やウール等の天然繊維の他、ポリエステル、アクリル、あるいはナイロン等といった原料を主体とした合成繊維が広く使われてきた。特に優れたイージーケア性や安価なことからポリエステル繊維は広く一般的に使用されてきた。
【0003】
特にポリエステルは、紡績性や、染色性、加工性等の工程通過性も良好であり、汎用性も高いことから繊維製品には多く使用されている。
【0004】
また、近年では森林伐採、二酸化炭素の排出などの影響により地球表面を覆っているオゾン(O)層の破壊に伴うオゾンホール発生によって地球上に従前よりも多くの紫外線が降り注ぐ環境下に晒され、人体に大きな健康被害をもたらし、特に皮膚への影響が非常に高いことから、合成繊維に広く使用されているUVカット効果に優れる艶消し剤が見直されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この艶消し剤を多く添加すると、これに含まれるTiO(酸化チタン)が風合いを粗硬化させ、繊維の曲げ剛性を高めることになるため、通常のリング紡績した場合、折角糸構造内に撚り込まれるはずの毛羽先がTiOの作用により剛直なために、糸構造内に撚り込ませることができず、糸表面に現れてくる。この糸表面に現れている毛羽が布帛にした際、製品品位を悪くする他、布帛表面の毛羽同士が互いに干渉し合い、いわゆるピリングへと成長していくことになり、著しく衣料外観を損ねることとなっていた(艶消し剤添加のポリエステルを以下“フルダル”という)。
【0006】
また、これら毛羽感を解消するためにオープンエンド等に代表される結束精紡機を用いることが広く一般に知られているが、これら結束精紡機で得られる結束紡績糸では織編物にした際に粗硬感が強くなり、フルダルポリエステルが持ち得る上記の理由により更に粗硬感が強いものになってしまうため敬遠されていた。そのため、結果として満足のいくものが得られていないのが現状である。
【0007】
また従来、フルダルポリエステルを使用して紡績糸を製造するに際しては、繊維の剛直性、TiOの脱落により繊維の収束性不良や清掃の頻度UP等多くの問題を発生させていた。
【特許文献1】特開平5−148734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上述の従来技術では得ることのできなかった抗ピル性、張り、腰感などの特性に優れ、かつ紫外線遮蔽、難透性にも効果のある紡績糸およびそれらからなる織編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上述の課題を解決するために鋭意検討を実施した結果、以下の構成を有する。すなわち、
(1)酸化チタン含有率が2.0重量%以上であるポリエステル繊維が20重量%以上含まれているとともに、実質的に無撚りであることを特徴とする紡績糸。
【0010】
(2)さらにセルロース系繊維が混用されているとともに、該セルロース系繊維が、竹、リンターパルプ、またはコットンリンターのいずれかの原料からなることを特徴とする前記(1)に記載の紡績糸。
【0011】
(3)請求項1または2に記載の紡績糸を用いた、JIS L 1076 A法に定められているICI法による抗ピリング性が2.5級以上であることを特徴とする織編物。
【0012】
(4)前記(1)または(2)に記載の紡績糸が織編地表面の面積中の30%以上を占めるとともに、織編地の熱移動量が0.080W/cm以上であることを特徴とする前記(3)に記載の織編物。
【0013】
(5)緯編地、経編地または丸編地からなることを特徴とする前記(3)または(4)に記載の織編物。
【0014】
(6)緯編地、経編地または丸編地に多葉断面の長繊維糸条が交編されていることを特徴とする前記(5)に記載の織編物。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、抗ピル性、張り、腰感などの特性に優れ、かつ吸水性、速乾性、紫外線遮蔽、難透性にも効果のある紡績糸およびそれらからなる織編物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の紡績糸は、酸化チタン含有率が2.0重量%以上であるポリエステル繊維が20重量%以上含まれているとともに、実質的に無撚りであることを特徴とする。
また、さらに竹レーヨンなどのセルロース系繊維が混用されていることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる実質的に無撚りである紡績糸とは、残留トルク作用による撚り戻りの発生が50回/m以下が好ましく、より好ましくは30回/m以下である。この残留トルクが高いと、特に編成時に編み目が斜行し品位として満足できる物が得られないばかりか、残留トルクによってビリが発生し編み針、ガイド等に引っ掛かり糸切れを生じさせるため、作業性も大きく低下させることになる。
【0018】
すなわち、本発明の実質的に無撚りである紡績糸とは、一般的なリング紡績糸とは異なり、芯部を形成する繊維束と鞘部を形成する繊維束とからなり、芯部を形成する繊維束が長手方向にほぼ並行に配され、鞘部を形成する繊維束が芯部を形成する繊維束の周りにスパイラル状にほぼ一定の間隔で巻き付いた空気精紡機により得られる紡績糸であり、これにより、上述の残留トルクの少ない糸を提供でき、かかる特性・作業性を満足させることができる。
【0019】
さらには、一般的なリング紡績糸と異なり、単繊維間の撚りに伴う拘束が少なく、比較的外側に配された鞘部を形成する繊維束により、芯側の単繊維端を巻き込んだ状態にするため非常に毛羽の少ない糸構造を有しており、布帛にした際に毛羽による凹凸が少ない表面感を有していることから肌面に当たる面積も多くなり、高酸化チタン含有ポリエステル、竹レーヨンによる接触冷感性をより高めるとともに、毛羽も少ないことから抗ピル性に優れ、糸構造により適度な張り感、コシ感、ドライ感が得られる。
【0020】
また、ここでいう残留トルクの発生量は、JIS L 1095に定められているスナール指数の測定方法に基づき掴み間隔を50cmから0cmにした時の撚り戻り数を測定したものである。ただし、糊剤が付着していたり、熱セットを施している場合には撚りが固定されてしまっているので、これらの処理をする前の状態で測定するものとする。
【0021】
本発明の実質的に無撚りである紡績糸の製造に用いられる紡績設備としては、ローラードラフト機構を有する空気精紡機であることが好ましい。該空気精紡機は紡速を変化させることにより糸形態を変化させることができ、同時に風合いにも変化が生じる。
【0022】
紡績条件として紡績速度を下げれば鞘側繊維束比率が増加し、芯側繊維束に気流による撚りが加わるために糸拘束が強固になるため糸強力が安定し、ピリング性も向上するが、布帛にした際に粗硬感が強くなり、竹レーヨン混紡糸の持ち得るしなやかなドレープ性、張り腰感が損なわれるため好ましくない。逆に紡績速度を上げると、芯側繊維束の構成比率が多くなり、気流の影響が少ないため実撚りが殆ど加えられていないため風合いもソフトになり好ましいが、糸拘束の低下に伴う糸強力の低下、毛羽増加に伴うピリングの発生傾向にあるため、本発明の目的とする接触冷感性に優れ、かつ、抗ピル性を満足させる効果が得られにくくなることから、紡績速度は220m/分〜400m/分の範囲内にあることが望ましい。より好ましくは、250m/分〜350m/分の範囲内にあることである。
【0023】
本発明の紡績糸は、酸化チタン含有率が2.0重量%以上である酸化チタン高含有ポリエステル系短繊維を少なくとも用いる。すなわち、本発明に使用されるポリエステル繊維に含有される酸化チタンの含有量は2.0重量%以上とするものであり、4重量%以上含有していることがより好ましい。この酸化チタンの含有量が少ないと紫外線遮蔽効果、UPF、防透性効果が得られないばかりか、本発明の適度な張り腰感の風合いを有する織編物が得られないため好ましくない。また、繊維内の酸化チタン含有量を2重%以上にすることにより布帛表面の熱伝導が速くなり、衣服にした際の肌表面の熱を拡散させるため清涼感が得られるようになる。逆に酸化チタン含有量が10.0重量%を超えると繊維の剛直性が増し、風合いの面から好ましくないため、酸化チタン含有率は10.0重量%以下であることが好ましい。
【0024】
ポリエステル系繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート繊維等を使用することができる。
【0025】
このような酸化チタン高含有ポリエステル繊維を用いることにより、本発明の重要な特徴である速乾性が得られるとともに、大量の発汗時によるベト付き感がなくなり、また、熱伝導率の低下、難透性、紫外線遮蔽などの効果も得られる。
【0026】
また、本発明の織編物は前記フルダルポリエステルを含んだ織編物片面の熱移動量(q−max)が0.080W/cm以上であることが重要であり、0.090W/cm以上、0.150 W/cm以下であるとより好ましい。かかる織編物のq−maxが0.080W/cmを下回ると着用者が充分に冷感を感じることができなくなり、0.150W/cmを上回ると冷感が強くなり過ぎ着心地を悪化させることになるため好ましくない。
【0027】
また、上記ポリエステル系繊維の他に、他の繊維を混用することも可能である。他の繊維としてセルロース系繊維が混用されていることが好ましい。また、セルロース系繊維は、竹、リンターパルプ、またはコットンリンターのいずれかの原料からなるものであることが好ましいが、竹由来のセルロース繊維であることがより好ましい。竹由来のセルロース繊維などのセルロース繊維の他にパルプ由来セルロース、大豆繊維等のレーヨン系半合繊素材は勿論のこと、綿、ポリ乳酸、ウール、麻等の天然繊維を用いても良く、ウォッシャブル性を考慮し、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリアミド、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成繊維を使用しても良い。
【0028】
本発明の紡績糸を構成する酸化チタン高含有ポリエステル系短繊維の単繊維繊度は0.5〜6.6デシテックスの範囲にあるものが好ましい。より好ましくは、0.8〜3.3デシテックスの範囲内にあるものである。単繊維の繊度が0.5デシテックス未満になると紡績カード工程においてネップが発生し、紡績糸、布帛での品位を大きく損なう原因となる。反面、6.6デシテックスよりも太くなると紡績糸を構成する繊維本数が少なくなり、絡合性不良や番手制約が生じ、さらには布帛時に風合いに粗硬感が出るなど製品にする際にも用途等の制約を大きく受けることになるため好ましくない。
【0029】
また、本発明に用いる繊維の繊維長は25〜51mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは31〜44mmの範囲にあるものである。繊維長が25mm未満あるいは51mmを超えると短繊維同士を拘束し難く、糸強力低下や操業性を著しく悪化させることになるため好ましくない。
【0030】
また、本発明の紡績糸として好ましい番手は、英式番手15s〜60sが好ましく、より好ましくは生産性や品位の安定的に20s〜50sである。
【0031】
本発明に使用される実質的に無撚りである紡績糸には、酸化チタン高含有ポリエステル短繊維が20重量%以上、より好ましくは30重量%含まれるものであり、100重量%であるものであっても良い。該紡績糸の酸化チタン高含有ポリエステル繊維の割合が20重量%を下回ると、本発明の重要な特徴である速乾性が得られにくくなるばかりか、大量の発汗時によるベト付き感が生じる、また、熱伝導率の低下、難透性、紫外線遮蔽などの効果も得られなくなるため好ましくない。
【0032】
セルロース系繊維を混用する場合、酸化チタン高含有ポリエステル繊維80重量%/セルロース系繊維20重量%〜酸化チタン高含有ポリエステル繊維20重量%/セルロース系繊維80重量%の範囲にあることが好ましい。
【0033】
本発明の織編物を形成する際、酸化チタン高含有ポリエステル繊維短繊維を含む実質的に無撚りである紡績糸が織編物表面の面積中の30%以上、より好ましくは40%以上を占めるような織り、編み設計されることが重要である。該紡績糸が織編物表面積中の占める割合が30%未満であると、該紡績糸の持ち得る特有な風合いが得られないばかりか、本発明の要件の一つである吸水性が得られにくくなるため好ましくない。なお、この実質的に無撚りである紡績糸は芯側繊維束の繊維間の空隙が水分を含んだ時に毛細管現象を発現させるために高い吸水性と表裏水分拡散性に優れる特徴を有する。
【0034】
本発明における、織編物表面を構成する紡績糸の1mm以上の毛羽数は1000個/10m以下が好ましく、より好ましくは800個/10m以下である。毛羽数が800個/10m以上になると編地表面での毛羽密度が高くなり、毛羽同士が互いに干渉し合うため毛玉ができ、いわゆるピリングが悪くなるため好ましくない。
【0035】
本発明の織編物の抗ピル性は、JIS L 1076 A法に定められているICI法における抗ピリング性が2.5級以上であることを特徴としている。該測定法によって測定された結果、ピリング性が2.0級以下である場合、一般的なリング紡績糸を使用した編地の様に長期に及ぶ着用によりピリングが多く発生し、製品の外観を悪化させるものである。
【0036】
また、本発明においては、前記紡績糸と合成繊維フィラメント糸条とを交編、交織して使用することも好ましい。交編、交織に使用する合成繊維フィラメント糸条としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリルニトリル系、ポリプロピレン系などの従来から衣料用に汎用されているものであれば良く、肌面のベトツキ感をより軽減させるためには吸湿性のある合成繊維、半天然繊維よりも疎水性のある合成繊維を使用することがより好ましい。
【0037】
また、合成繊維フィラメント糸条の断面については特に限定されるものではなく、一般的な丸断面、三角断面、扁平、多葉、中空などの他、十字断面、Y断面などどのような断面構造を有している繊維を使用しても良く特に限定されるものではないが、編地に多葉断面の長繊維糸条が交編されていることが好ましい。
【0038】
合成繊維フィラメント糸条の単繊維繊度としては、0.6〜7.0デシテックスの範囲が好ましく、より好ましくは0.8〜3.0デシテックスの範囲内である。単繊維繊度が0.6デシテックス未満であると布帛にした際に風合いが非常にソフトになるものの、発汗時に肌面の汗を保持しベトツキ感が増加し、乾燥速度も遅くなる。逆に、単繊維繊度が7.0デシテックスよりも太くなると肌離れ、ベトツキ感が軽減されるものの風合い面で粗硬感が生じることになるため好ましくない。
【0039】
これらの合成繊維フィラメント糸条は未延伸糸、延伸糸、捲縮加工糸、混繊糸などいづれであってもよく、特に限定されるものではない。
【0040】
本発明の織編物に更なる吸水性、速乾性を付与する場合、該織編物表面層の裏面層に対する吸水表裏保水率比が2.0倍以上で、かつ吸水表裏拡散面積比が2.0倍以上である吸水性を有していることが好ましい。
【0041】
これらの各比率、つまりは吸水表裏保水率および吸水表裏拡散面積比は、3.0倍以上が好ましく、より好ましくは4.0倍以上である。かかる比率が2.0倍未満の場合、肌面にてベタツキ感を感じるため好ましくない。一方で20倍よりも大きくなる場合、発汗時の生地表面でウエット感が増加し不快感を生じることになるため好ましくない。
【0042】
本発明にかかる、合成繊維フィラメント糸条の混用比率は30重量%以上である方が好ましい。混率が30%未満であると、適度な風合いや吸水性が望めないため好ましくない。
【0043】
このことから、該織編地表面層に実質的に無撚りである紡績糸を配置し、裏面層に合成繊維フィラメント糸条を30重量%以上配置することにより、紡績糸とフィラメント糸条との繊維間空隙量の差、すなわち織編地表面の空隙が編地裏面の空隙より小さくなり、その密度差により毛細管現象を発現させ、吸水拡散性が促進されスポーツ時などの激しい発汗にも即座に対応でき、特にスポーツシーンなどに好適な衣料分野に用いることができる。
【0044】
さらに、紫外線遮蔽率が85%以上、UPF(紫外線保護指数)による数値が40(good)以上であること織編物であることが好ましい。
【0045】
また、本発明の織編物に関し、紫外線透過率は10%以下であることが好ましいが、この数値は夏季の著しい紫外線の強い環境下で5HR連続着用し、肌が紫外線を被曝し赤くならないことを前提としている。
【0046】
近年では、環境汚染などの影響を受けオゾンホールの拡大が確認され地球に降り注ぐ紫外線量は年々増加の一途を示している。
【0047】
特に地球上に降り注ぐ波長の中で、皮膚のシミ、シワの原因になり老化を促進させるA波(320〜380nm)、皮膚が紅斑をもたらし、腫れや炎症を引き起こすB波(280〜320nm)とがあり、このことから、本発明に関しては特に夏季の過酷な環境下に晒されても紫外線の影響を受けにくく、高濃度酸化チタンの効果により清涼性を持ち得、抗ピリング性にも優れることから様々なシーンに展開することが可能である。
【0048】
本発明の実質的に無撚りである紡績糸が編地表面の3割以上を占め、実質的に無撚りである酸化チタン高含有ポリエステル紡績糸を用いることにより、清涼感が得られ、さらには優れた抗ピリング性のみでなく、適度な風合いと吸水速乾性能を有し、かつ、夏場の過酷な紫外線に晒される環境下においても紫外線遮蔽、高いUPFを併せ持ち、様々な衣料、衣料資材などの用途に好適に用いることができる。
【0049】
本発明の抗ピリング性に優れる、吸水速乾、防透け、紫外線遮蔽、UPFに優れた織編物は特に用途限定されるものではないが、衣料用途でピリングが大きな問題になる用途や多くの発汗がある用途などに好適に用いることができ、例えば、スポーツアウター、スポーツインナー、肌着、ホームウェア、アウターウェア、靴下に好ましく使用できる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に特に限定されるものではない。
【0051】
実施例、比較例中での品質評価は次の方法によるものである。
【0052】
1.紡績糸、合成繊維フィラメントの表面(裏面)含有率
(1)本発明の布帛表面(裏面)を、株式会社キーエンス社製「CV−500」画像センサー(0.1画素単位)により2値化し、面積比を測定。
【0053】
2.紡績糸表面における毛羽長1mm以上の毛羽数
(1)編地表面を構成している紡績糸をランダムに5カ所から採取する。
【0054】
(2)リーダープリンター用の枠(5×5cm)に採取した紡績糸5本を等間隔でセットする。
【0055】
(3)セットした試料をリーダープリンター「MicroSP 3000」(ミノルタ株式会社製)で倍率10倍にて撮影し、採取した各紡績糸2cmあたりの1mm長以上の毛羽数を計測する。
【0056】
(4)各紡績糸(5本)の毛羽数を合計した数値を糸長10cmあたりの1mm長以上の毛羽数とする。
【0057】
3.抗ピル性試験(ICI 5HR法)
JIS−1076A法に基づいて評価を実施。
評価結果は以下の通り5段階にて級判定を行い、各級の中間レベルの場合は3−4級(3級と4級の中間レベル)のように表示。
【0058】
5級:ピリング発生が殆どないもの
4級:ごくわずかなピリング発生が認められるもの
3級:多少のピリング発生があるもの
2級:かなり多くのピリングが発生しているもの
1級:著しく多くのピリングが発生しているもの
4.吸水表裏保水率比
(1)ガラス板上に蒸留水1.0ccを滴下し、その上にサンプルサイズ10cm×10cmの編地裏面を下に、すなわち蒸留水に接する側にしてのせる。
【0059】
(2)その後、60秒間放置し、別のガラス板上に移動し同一サイズにカットした濾紙2枚にて、この編地を挟み込み、5g/cmの荷重下で60秒間放置する。
【0060】
(3)その後、元の編地重量と吸水後の編地重量との差から編地の保水重量および表面と裏面に接した各々の濾紙の含水重量から、編地の表面、裏面の保水率を算出する。
【0061】
(4)これらの試験をn=3にて同様に実施し、この値より保水率比(表面の保水率/裏面の保水率)を算出する。
【0062】
保水率の大小は、汗に見立てた蒸留水の吸収状態を示すものであり、表面の保水率が大きく、かつ前記保水率比が大きいものは滴下された蒸留水を効率よく表面側に移動する、すなわち、透水能力に優れていることを示すものであり、着用時にベタツキ感がより少ないものである。
【0063】
5.吸水表裏拡散面積比
(1)ガラス板上に市販のインクを水で2倍に希釈した液を0.1cc滴下し、その上に編地裏面を下に、すなわちインク液と接する状態でのせる。
【0064】
(2)その後、60秒間放置し、インク液を吸収させた後、次に別のガラス板上に移動させ、ここでも裏面を下にしてそのまま3分間放置する。
【0065】
(3)上記試験をn=3にて同様に行い、得られた編地の表面、裏面のインク液の拡散面積を測定し、その測定値により面積比(表面の拡散面積/裏面の拡散面積)を算出する。
【0066】
拡散面積の大小はインク液の吸収状態を示すものであり、表面の拡散面積が大きく、かつ、前記面積比が大きいものは滴下されたインク液を効率よく表面側に移動する、いわゆる吸水、透水、拡散能力に優れていることを示すものである。
【0067】
また、表面側の拡散面積が大きいと、大気との接触機会が高くなるので乾燥性にも優れていることを示す。
【0068】
本発明においては、吸水表裏保水率と吸水表裏拡散面積比との両値は、それぞれ2.0倍以上であることが好ましいが、必ずしも同一比率であることは必要とせず、肌面のベタツキ感軽減には、吸水表裏保水率の大小が大きく影響する。一方で、速乾性には吸水表裏拡散面積比の大小が大きく影響する。
【0069】
6.紫外線遮蔽率
分光光度計を使用し、紫外線波長280〜400nmの紫外線を試料に向けて照射し、先の波長の紫外線をどれだけ遮蔽しているか測定し、算出する。
【0070】
紫外線遮蔽率(%)=(1−Ta/To)×100
Ta=試料挿入時の透過量、 To=試料なし時の透過量
7.UPF(紫外線保護指数)
オーストラリア、ニュージーランド規格(AS/NZS4399)で定められている方法を用い、分光光度計を光源として、波長290〜400nmの遮蔽率を5nm間隔で測定し次式にて係数を算出し、日焼けを防止する能力を次のランク付けにて評価を実施。
【0071】
UPFの数値については、次式の通りに算出される。
【0072】
【数1】

【0073】
Eλ=スペクトルの有効相対紅斑度
Sλ=日光スペクトル放射(W・m−2・nm−1
Tλ=試料の分光透過率
Δλ=波長幅(nm)
λ=波長(nm)
Excellent:UPF50+
Very Good:UPF30〜50+
Good:UPF15〜30
8.風合い(官能評価)
織物の風合いを下記官能評価した。
【0074】
×:張り、腰、ソフト感不良
△:張り、腰、ソフト感やや良好
○:張り、腰、ソフト感良好
9.織編物の熱移動量(q−max)
カトーテック(株)製精密迅速熱物性測定装置KES−F7(THERMO LABO II TYPE)を使用し、面積9cm、質量9.79gの純銅板(熱容量0.41855J/℃)に熱を蓄え、これが試料測定面に接触した直後、蓄えられた熱量が低温側の試料物体に移動する熱量のピーク値(q−max)を測定し、試験片5枚の平均値を測定値とした。q−maxは純銅板の初期温度と試料温度の差(ΔT)接触圧(P)に大きく影響されるためΔT=10.0℃、P=980Paとした。
【0075】
(実施例1)
東レ(株)製フルダル(酸化チタン8.0重量%含有)ポリエステル原綿(1.7dtex×38mm)50重量%、竹レーヨン繊維50重量%を用い、通常の紡績方法を用いて2.36g/mの太さのスライバーを作成した。このスライバーをローラー方式のドラフト機構を有する村田機械製Murata-Vortex-Spinner(以下「MVS」という)空気精紡機に仕掛け、MVS精紡機のドラフト率を120倍に設定して、紡速を350m/分として綿式番手40sの紡績糸を得た。紡績性は良好であり、糸切れもなかった。
なお、用いたMVS精紡機の糸形成部は中空のエアーノズルを有し、エアーノズル内の旋回気流によって、鞘部の無撚り芯鞘短繊維束に鞘部の芯鞘短繊維束が一定間隔で結束することで無撚りである紡績糸を形成する機構となるものである。
この無撚紡績糸を用いて、28Gシングル丸編機で天竺編地を編成した。
次にこの編地を染色工程において、精練、リラックス後、液流染色機を用いて通常のポリエステル/レーヨン染色同様染色加工を実施した。
その後、仕上げ後の目付が145g/mの編地を得た。
この編地における無撚紡績糸の表面を占める割合は100%であり、使用されている無撚紡績糸の糸長10cmあたりの長さ1mm以上の毛羽数は12個、ピリング性は4級、吸水表裏保水率比が0.9、吸水表裏拡散面積比が1.8、紫外線遮蔽率が94%、UPF値は50+(Excellent)であった。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様に東レ(株)製フルダル(酸化チタン8.0重量%含有)ポリエステル原綿(1.7dtex×38mm)50重量%、パルプレーヨン繊維50重量%を用い、通常の紡績方法を用いて2.36g/mの太さのスライバーを作成した。このスライバーをローラー方式のドラフト機構を有するMVS空気精紡機に仕掛け、MVS精紡機のドラフト率を120倍に設定して、紡速を350m/分として綿式番手40sの紡績糸を得た。
次に22Gダブル丸編機でスムース編地を編成した。
この生地を通常のT(ポリエステル)/R(レーヨン)編地の染色加工方法に準じ、リラックス、精練、染色、乾燥、仕上げセットを行った結果、目付が200g/mの編地を得た。この編地における本発明の無撚紡績糸の表面を占める割合は100%、使用されている無撚紡績糸の糸長10cmあたりの1mm以上の毛羽数は28個、抗ピル性は3級、吸水表裏保水比は1.3、吸水表裏拡散面積は2.1、紫外線遮蔽率が91%、UPF値は50+(Excellent)であった。
【0077】
(実施例3)
実施例1と同様に作成した実質的に無撚りの紡績糸40sと東レ株式会社製多葉断面ポリエステルフィラメント167デシテックス×48フィラメント加工糸(セオα(登録商標))、東レ株式会社製ポリエステルフィラメント84デシテックス×72デシテックス加工糸とを配した交編にて22Gダブル編機で表面に無撚紡績糸と異形ポリエステルフィラメント加工糸(セオα(登録商標))を1:2に、裏面にポリエステルフィラメント加工糸を配したリバーシブル編地を編成した。この編地を通常のT100%編地の染色加工方法に準じ、リラックス、精練、染色、乾燥、仕上げセットを行い、目付が180g/mである編地を得た。この編地における本発明の無撚紡績糸の表面を占める割合は35%、使用されている無撚紡績糸の糸長10cmあたりの1mm以上の毛羽数は14個、抗ピル性は3−4級、吸水表裏保水比は3.5、吸水表裏拡散面積は4.9、紫外線遮蔽率が93%、UPF値は50+(Excellent)であった。
【0078】
(比較例1)
実施例1,2と同様にブライト(酸化チタン0.2重量%含有)ポリエステル原綿(1.1デシテックス×38mm)を使用し、竹レーヨン繊維との混紡を施し、通常の前紡工程を経て、同様の混率T50/Rの太さが0.6g/mの粗糸を作成し、リング精紡機に仕掛け、35.0倍のドラフト倍率、撚係数3.4で設定し、40s番手の一般的なリング紡績糸を得た。
その後、実施例1,2と同様にして天竺編機編成し、目付142g/mである編地を得た。この紡績糸の糸長10cmあたりの1mm以上の毛羽数は72個、抗ピル性は1−2級、吸水表裏保水比は0.7、吸水表裏拡散面積は1.2、紫外線遮蔽率が83%、UPF値は40(good)であった。
【0079】
(比較例2)
比較例1同様に、通常の前紡工程、リング工程を経て、コットン100%の太さが0.6g/mの粗糸を作成し、リング精紡機に仕掛け、35.0倍のドラフト倍率、撚係数3.4で設定し、40s番手の一般的なリング紡績糸を得た。
その後、比較例1と同様にして天竺編機編成し、目付138g/mである編地を得た。この紡績糸の糸長10cmあたりの1mm以上の毛羽数は68個、抗ピル性は1−2級、吸水表裏保水比は0.9、吸水表裏拡散面積は1.4、紫外線遮蔽率が80%、UPF値は35(good)であった。
以上5点のスパン編物について評価した結果を表1に示した。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン含有率が2.0重量%以上であるポリエステル繊維が20重量%以上含まれているとともに、実質的に無撚りであることを特徴とする紡績糸。
【請求項2】
さらにセルロース系繊維が混用されているとともに、該セルロース系繊維が、竹、リンターパルプ、またはコットンリンターのいずれかの原料からなることを特徴とする請求項1に記載の紡績糸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の紡績糸を用いた、JIS L 1076 A法に定められているICI法による抗ピリング性が2.5級以上であることを特徴とする織編物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の紡績糸が織編地表面の面積中の30%以上を占めるとともに、織編地の熱移動量が0.080W/cm以上であることを特徴とする請求項3に記載の織編物。
【請求項5】
緯編地、経編地または丸編地からなることを特徴とする請求項3または4に記載の織編物。
【請求項6】
緯編地、経編地または丸編地に多葉断面の長繊維糸条が交編されていることを特徴とする請求項5に記載の織編物。

【公開番号】特開2010−13760(P2010−13760A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174250(P2008−174250)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】