説明

紡績糸用素材、紡績糸、紡績糸の製造方法及びジーンズ用織物

【課題】ワインやビールを製造する過程で発生する絞りかすなどの酒類製造中に生ずる産業廃棄物の有効利用を提供する。
【解決手段】酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕して生成して紡績糸用素材2とし、紡績糸用素材2を重量比30〜50%混合して梳綿上がりスライバー6とし、さらに紡績糸用素材2の重量比が20〜30%となるように前記梳綿上がりスライバー6を綿スライバー7で包み込んで練条上がりスライバー8を生成して綿と混合させて紡績糸とし、前記紡績糸を緯糸にしてジーンズ用織物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物であるワイン、ビールの絞りかすを再利用した紡績糸用素材、紡績糸、紡績糸の製造方法及びジーンズ用織物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然繊維を使用した衣料素材を製造する必要条件としては、一定以上の太さ(0.1dtex〜50dtex)、長さ(5mm以上)強力(0.5g/d以上)を有することが必要であり、綿、麻等が一般衣料用の繊維素材として使われているが、環境保全やロハス志向から、産業廃棄物の利用が種々、提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1において、産業廃棄物であるバナナの茎を原料とする平均長10mm〜50mmのバナナ繊維を他の衣料用繊維と紡糸してなるバナナ繊維混紡糸として織布又は編物の衣料素材への利用が提案されている。
【0004】
また、特許文献2において、産業廃棄物となることの多い植物の絞り粕を、その中に多く存在する柔細胞より得られる微細な繊維の特徴を活かして不織布の製造において用いられるバインダーなどへの利用が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−52176号公報
【特許文献2】特開2005−307401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の提案では、バナナ繊維の繊維長は10mm以上の物を使用しており、本発明の酒類製造中に生ずる廃棄物、例えばワインで有ればブドウの絞りかすのように繊維長10mm以下の繊維状をなしていない物は衣料用素材として利用できないという問題があり、特許文献2の提案では、サトウキビやサトウダイコン等の絞りかすを不織布のバインダーとして利用しており、紡績糸用素材としては使用するものではない。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点を解消し、酒類製造中に生ずる産業廃棄物として捨てられていたワインかすの柔軟性と色合い、ビールかすのかさ高性と色合いに着目し、綿と混ぜ合わせることにより衣料素材として活用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、ワイン、ビール製造中に出る絞りかすは産業廃棄物として大量に発生しており、一部は飼料として利用されているが、衣料用の原料とする為に、それを水洗し、乾燥させ、粉砕機で粉砕し、紡績工程で綿繊維に混ぜ込む事により衣料用原料として利用することに成功した。
【0009】
すなわち、本発明の紡績糸用素材は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した事を特徴とする。
【0010】
本発明の紡績糸用素材は、ワイン製造時のブドウの絞りかすを水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した事を特徴とする。
【0011】
本発明の紡績糸用素材は、ビール製造中の麦芽、ポップなどの絞りかすを水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した事を特徴とする。
【0012】
本発明の紡績糸は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した紡績糸用素材を綿と混合させて糸状とした事を特徴とする。
【0013】
本発明のジーンズ用織物は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した紡績糸用素材を綿スライバーで包み込んだ紡績糸を緯糸とした事を特徴とする。
【0014】
本発明の紡績糸の製造方法は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕して紡績糸用素材を生成する紡績糸用素材生成工程と、前記紡績糸用素材生成工程で生成した紡績糸用素材を綿に対して重量比30〜50%混合して梳綿上がりスライバーを生成する梳綿上がりスライバー生成工程と、紡績糸用素材の重量比が20〜30%となるように前記梳綿上がりスライバー生成工程で生成した梳綿上がりスライバーを重量比で20〜30%とし綿スライバーで包み込んで練条上がりスライバーを生成する練条上がりスライバー生成工程と、前記練条上がりスライバー生成工程で生成した練条スライバーを使用して糸状とする紡糸工程とからなる事を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した紡績糸用素材を重量比で20〜30%として綿スライバーで包み込んで糸状とするので、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を有効に利用ですることが出来る。
【0016】
また、本発明は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した紡績糸用素材を綿と混合させた紡績糸を緯糸とすることにより、従来の綿100%のジーンズ用織物と比べると、ワイルド感があり、ワイン、ビールの色合いを持つ織物を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図を参照して、以下説明する。
【0018】
酒類製造中に生ずる産業廃棄物として、ワイン製造時のブドウの絞りかすやビール製造中の麦芽、ポップなどの絞りかすがある。これら酒類製造中に生ずる産業廃棄物を綿に混ぜ込むために、絞りかすを十分に水洗し、乾燥させ、高速度粉砕機(図示せず)を使用して、約5,000rpmで、1〜2mmに粉砕した粉状の紡績糸用素材2を用意する。この場合、これら絞りかすは、酵母や糖分を除去するために流水で十分に水洗することが望ましい。
【0019】
次に、図1および図3において、1〜2mmに粉砕した粉状の紡績糸用素材2をホッパー1に入れ、30〜50%の重量比割合を保ちながら、梳綿機ドッファー3から梳綿機のカレンダーローラー5に供給される綿のウエッブ4に一定量散布混入させて、綿に均等量混ぜ込んだ梳綿上がりスライバー6を生成する。このように紡績用素材2は1〜2mmに粉砕した粉状であるため、綿のウエッブ4から抜け落ちる可能性を少なくしている。
【0020】
次に、紡績糸用素材2を糸にしっかり混合させるために、練条機(図示せず)で、上記繊維素材混入した梳綿上がりスライバー6を中心に、且つ綿スライバー7を外層にして、紡績糸用素材2が重量比20〜30%になるように、梳綿上がりスライバー6を包み込むようにして練条上がりスライバー8(図2参照)を生成する。
【0021】
前記練条上がりスライバー8を使用して、6〜10番手の紡績糸を生成する。
【0022】
以上のように、本発明の紡績糸の製造は、酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕して紡績糸用素材2を生成する紡績糸用素材生成工程と、前記紡績糸用素材生成工程で生成した紡績糸用素材2を綿に対して重量比30〜50%混合して梳綿上がりスライバー6を生成する梳綿上がりスライバー生成工程と、紡績糸用素材2が重量比で20〜30%となるよう前記梳綿上がりスライバー生成工程で生成した梳綿上がりスライバー6を綿スライバー7で包み込んで練条上がりスライバー8を生成する練条上がりスライバー生成工程と、前記練条上がりスライバー生成工程で生成した練条スライバー8を使用して糸状とする紡糸工程を経て紡績糸を製造するのである。
【0023】
このようにして製造した紡績糸を緯糸にして織物に打ち込んでデニム生地を得る。これによって得られた生地は、例えばシャツ、パンツ、ジャケットなどに使用されるが、好ましくはジーンズ用の布帛にすると、ワイン色の絞りかす又はビールの絞りかすが撚り込まれており、綿100%デニムに比べると、ワイルド感、ビンテージ感の有る風合いを持ったジーンズを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の梳綿上がりスライバーの断面図である。
【図2】本発明の練条上がりスライバーの断面図である。
【図3】本発明の梳綿上がりスライバーを生成する概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ホッパー
2 紡績糸用素材
3 梳綿機ドッファー
4 ウエッブ
5 カレンダーローラー
6 梳綿上がりスライバー
7 綿スライバー
8 練条上がりスライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した事を特徴とする紡績糸用素材。
【請求項2】
前記産業廃棄物がワイン製造時のブドウの絞りかすであることを特徴とする請求項1に記載の紡績糸用素材。
【請求項3】
前記産業廃棄物がビール製造中の麦芽、ポップなどの絞りかすであることを特徴とする請求項1に記載の紡績糸用素材。
【請求項4】
酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した紡績糸用素材を綿と混合させて糸状とした事を特徴とする紡績糸。
【請求項5】
酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕した紡績糸用素材を重量比で20〜30%として綿スライバーで包み込んだ紡績糸を緯糸とした事を特徴とするジーンズ用織物。
【請求項6】
酒類製造中に生ずる産業廃棄物を水洗し乾燥して1〜2mmに粉砕して生成する紡績糸用素材を生成する紡績糸用素材生成工程と、前記紡績糸用素材生成工程で生成した紡績糸用素材を綿に対して重量比30〜50%混合して梳綿上がりスライバーを生成する梳綿上がりスライバー生成工程と、紡績糸用素材の重量比が20〜30%となるように前記梳綿上がりスライバー生成工程で生成した梳綿上がりスライバーを綿スライバーで包み込んで練条上がりスライバーを生成する練条上がりスライバー生成工程と、前記練条上がりスライバー生成工程で生成した練条スライバーを使用して糸状とする紡糸工程とからなる事を特徴とする紡績糸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−150716(P2008−150716A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336756(P2006−336756)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(595119866)大正紡績株式会社 (2)
【出願人】(306044375)吉河織物株式会社 (2)
【Fターム(参考)】