説明

紡績装置のためのファンネルユニット

【課題】スピンドル2の糸受容領域1を同心的に包囲し、糸をガイドするファンネル4を備えた紡績装置の、ファンネル支承プレート3に配置可能なファンネルユニットを改良して、比較的簡単かつコンパクトな構造を有し、摩耗が少なく、保守整備が簡単であって、できるだけ少ない消費エネルギーで高い回転数が得られる、駆動可能又は制動可能なファンネルを備えたものを提供する。
【解決手段】ファンネル支承プレート3に少なくとも間接的に結合可能な周壁13が、少なくとも軸受ケーシング11を同心的に半径方向で間隔を保って包囲していて、少なくとも半径方向及び軸方向に作用して間隔を保つ緩衝部材14a,14bを介して分離して軸受ケーシングに結合されており、それによって、少なくともファンネル4と軸6とロータ8と駆動装置ケーシング9とステータ10と軸受ケーシング11とが、周壁13及びファンネル支承プレート3に対して分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸受容領域を有する駆動可能なスピンドルを備えた紡績装置のための、ファンネル支承プレートに配置可能なファンネルユニットであって、糸受容領域を同心的に包囲するように構成され、糸をガイドすることができるファンネルが設けられており、該ファンネルに相対回動不能に結合されているか、又はファンネルと一体的に構成された、糸をファンネルに供給するための軸方向の糸ガイド孔を備えた軸が設けられており、該軸を介してファンネルが回転可能に片持ち式に支承されていて、駆動可能又は制動可能であって、ファンネルを駆動又は制動するための、軸に固定されたロータと、駆動装置ケーシングによって包囲されたステータとを備えた電気式の駆動装置が設けられており、駆動ケーシングに(特に接着剤によって)結合された軸受ケーシング内に軸受ユニットが配置されていて、該軸受ユニットは、ロータとファンネルとの間で軸に配置されていて、それによってファンネルとロータとが回転可能に片持ち式に支承されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において紡績(Spinnen)という概念は、撚りをかける(Zwirnen)という意味も含んでいる。糸に撚りをかける場合には、糸を受容する(巻取る)代わりに、ボビンから糸を引き取り、糸は、紡績糸(Garn)からも撚り合わせ糸(Zwirn)からも形成することができる。
【0003】
スピンドルの糸受容領域を同心的に包囲して形成された、糸をガイドすることができる、紡績装置のための電動モータ式に駆動されるファンネル(Trichter; funnel;漏斗状の集束装置)を備えたファンネルユニットは、種々異なる実施例のものが従来技術により公知であり、この場合、用いられた方法及び材料に関連して種々異なるファンネル幾何学形状が適していることが証明された。従ってファンネルとは、本発明の枠内で漏斗状の形だけではなく、キャップ形(釣り鐘形)、円筒形、円錐台形であってもよいし、またファンネル紡績法、キャップ精紡法、ループ紡績法又はこれと類似の紡績法、撚糸法又は巻き返し法を実施するために適した任意の形、又はいわゆる紡績フライヤー又は撚糸フライヤー(Spinn oder Zwirnfluegel)或いはバルーニングリミッター(Ballonbegrenzer)であってよい。ファンネルは、一般的に懸架された構造を有していて、大抵の場合、垂直に位置する駆動されるスピンドルを上から覆うようになっている。
【0004】
ファンネルの支承及び駆動に関しては、最近の紡績法の高いファンネル回転数(40000回転/分以上のファンネル回転数を目指している)を考慮すれば、特別な要求が課せられている。冒頭に述べた形式のものでは、ファンネルは、スピンドルの糸受容領域を完全に包囲することができるようにするために、細長い形状を有している。従って、方法の全エネルギー必要量をできるだけ少なく維持し、また同様に装置の製造コスト及び保守整備コストをできるだけ安価に維持するためには、ファンネルの内周面又は外周面に沿ってガイドされた糸に基づいて、及びファンネル内で繊維が左右非対称に積層される危険性に基づいて、高速で回転する縦長のファンネルを振動しないように支承することは、特に困難であり、しかも支承部における摩擦抵抗による損失及び過剰な騒音発生を最小に制限する必要がある。
【0005】
振動及び抵抗の小さい支承形式を得るための可能な支承及び駆動装置は、ファンネルを包囲する形の支承部としてファンネルを直接支承するように構成されている。この場合、駆動装置は同様にファンネルを包囲している。このような形式の装置は、レバーアーム(てこ腕)が短いので、場合によっては生じるアンバランスに基づくファンネルにおける振動が比較的小さい、という利点を有している。しかしながら支承部は、スピンドルを覆うために比較的大きい直径を有するファンネルを包囲して配置されているので、適当な支承部を選択することは非常に困難である。ファンネルを包囲する支承部は、水平方向で比較的大きいスペースを必要とする。これによってファンネル支承プレートに互いに並んで配置され得るファンネルの最大数は制限される。ファンネルの外周面上に沿って糸をガイドすることはできない。しかも、小さい直径を有する遮蔽部材、例えばスピンドル及び受容された糸を遮蔽するための遮蔽スリーブをファンネルに沿って移動させることは不可能である。
【0006】
例えばスイス国特許第681630号明細書及びヨーロッパ特許公開第0458154号明細書に開示されているように、ファンネルの外周面を包囲する、必然的に大きい支承部直径を有する従来の転がり軸受は、特に回転強度の不足、大きい摩擦抵抗、大きい騒音発生、大きい水平方向の必要スペースに基づいて、高回転数で駆動したいファンネルのためには適していない。特にドイツ連邦共和国特許第3047275号明細書により公知な、ファンネルの円筒形の上部部分を包囲する空気軸受(Luftlager)を使用すれば、駆動エネルギーを減少させ、ファンネルを40000回転/分以上の高回転数で駆動することができるが、このような形式の空気軸受は製造費用が高価であって、運転中に(特に繊維を含有する周囲空気に基づいて保守整備コストが高価であるので)各紡績部にそれぞれ圧縮空気を供給する必要があり、それによって全体的なエネルギー消費が上昇することになる。またファンネルを包囲する空気軸受のために必要とされる水平方向のスペースは大きい。ファンネル支承部のその他の解決策としてドイツ連邦共和国特許公開第4422420号明細書によれば、センサによってアクティブに制御される少なくとも1つの磁気軸受を使用することが提案されている。これによってファンネルは、自由に浮遊した状態で磁気的に支承される。磁気軸受は回転強度に対する要求を満たすと同時に、非常に小さい軸受摩擦抵抗を有しているが、転がり軸受と比較してアクティブな磁気軸受は構造が非常に複雑で、製造コストが非常に高価であり、しかも電流を供給しなければならず、コストのかかる電気制御を必要とする。しかしながら繊維機械は、もっぱら低賃金の国々で使用され、高度に熟練した保守整備作業員は限られているので、このような複雑に構成された、専門家だけが規則的に整備することができる解決策は、実際には殆ど実現不可であり、市販も不可能である。
【0007】
その他の可能な公知の支承及び駆動装置においては、ファンネルの支承も駆動も中空軸を介して行われるようになっており、この中空軸は、ファンネルの上端部に同軸的に接続されていて、この中空軸によって糸がファンネルにガイドされるようになっている。ファンネルは片持ち式に支承されて、自由にアクセス可能となっているので、ファンネルの内周面においてだけではなく、ファンネルの外周面においても糸のガイドが行われるようになっている。スピンドルを包囲するファンネルの直径よりも著しく小さい直径を有する中空軸を介して、支承及び駆動が行われるので、転がり軸受によって比較的高いファンネル回転数が得られる。しかしながら細長いファンネルは、軸受のために大きいてこ腕を形成するので、例えば汚れ又は糸緊張によって発生することがある、ファンネルにおける最小のアンバランスによっても、高い振動が生ぜしめられ、この振動によって、可能な最大ファンネル回転数が制限され、摩耗が著しく高くなる。回転する部分と定置の部分、特に電動機のロータ(回転子)とステータ(固定子)との間の接触はいずれにしても避けなければならない。何故ならば、回転する部分と定置の部分とが接触すると、これらの構成部分が破壊されることになるからである。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許公開第3400327号明細書には、駆動可能又は制動可能なキャップを備えたいわゆるキャップ精紡機について記載されており、キャップの外周面に糸が巻き付けられ、スピンドルに供給されるようになっている。キャップは、そのシャフトの上端部に接続された軸において、2つの単列転がり軸受(軸上に被せ嵌められ、その内レースが軸に固定されている)が、キャップ精紡機のフレームに定置に、かつ回転可能に支承されている。軸は、軸受の下でキャップのシャフトの上端部に設けられた出口開口を備えた、キャップの外周面に沿って糸をガイドするための長手方向通路を有している。キャップの駆動は電動モータを介して行われ、電動モータのロータは、軸の、ファンネルとは反対側の端部に固定されているので、キャップ、軸及びロータの支承は、ロータとファンネルとの間で行われる。駆動装置のステータは、繊維機械のフレームに結合されている。キャップは、小さいエアギャップを保って、ヒンジ接続された定置の周壁によって包囲されている。1実施例ではキャップの周壁と一体的に形成された別の周壁が、スピンドルを包囲している。2つの周壁は、特にヒンジ接続されていることによって、必要であれば、例えばボビンの糸切れを処理するために又は満管ボビンを空の巻管に交換するために、開放することができる。軸に軸受を配置したことによって、軸受直径は、ファンネルを包囲する軸受におけるよりも小さいので、キャップの高い回転数を得ることができる。しかしながら、片持ち式(カンチレバー式)に支承された細長いキャップを振動なしで確実に支承するために、軸が所定の最小直径を超えないようにする必要があるので、得ようとする回転数のために常に、被せ嵌められた単列式の転がり軸受の転動体走行軌道の直径は比較的大きくなり、また2つの単列軸受間の間隔は、所望のキャップ回転数を得るための妨害となる。さらに、摩耗が比較的大きく、これを避けるために、製作精度に対する要求が極端に高くなり、ひいては非常に高価な製造プロセスを必要とすることになる。保守整備のためにキャップ及び軸受を迅速に、かつ簡単に取り外すことは不可能である。何故ならば2つの単列軸受は、互いに緊張した状態で組み立てる必要があり、軸受の取り外し作業には高価な費用がかかるからである。各軸受は固有の潤滑室を形成しているので、2つの軸受はそれぞれ独立して潤滑する必要がある。さらにまた、ファンネルを取り外すためにロータを軸から取り除く必要がある。装置全体を効果的に振動減衰するための解決策については記載されていない。
【0009】
国際公開第2004/076727号パンフレットには、軸を形成する先細りした円筒形部分を備えたキャップ状のバルーニングリミッターを有する、ループ精紡機又は撚糸装置について開示されている。軸は、軸受ブロックを介して2つの軸受列によって回転可能に支承されている。2つの軸受列間には電気式の非同期電動機が配置されている。このような形式の軸受と駆動装置との組み合わせ構造は、実際の構造が著しく複雑である。何故ならば、支承部(軸受)と駆動装置とは強制的に組み合わされていて、2つの軸受を定置の駆動装置ケーシングを介して互いに緊締する必要があるからである。このような構造においては、規則的に実施したい転がり軸受の必然的な整備作業のためには、駆動装置を取り外す必要があるからである。これによって保守整備費用は著しく高価になる。各軸受は固有の潤滑室を形成しているので、2つの軸受はそれぞれ独立して別個に潤滑しなければならない。簡単な振動減衰のための効果的な手段については記載されていない。
【特許文献1】スイス国特許第681630号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第0458154号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許第3047275号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許公開第3400327号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/076727号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の紡績装置のためのファンネルユニットを改良して、比較的簡単かつコンパクトな構造を有し、摩耗が少なく、保守整備が簡単であって、できるだけ少ない消費エネルギーで高い回転数が得られるような、駆動可能又は制動可能なファンネルを備えたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決した本発明のファンネルユニットによれば、ファンネル支承プレートに少なくとも間接的に結合可能な、特に円筒形の周壁が、少なくとも軸受ケーシングを同心的に半径方向で間隔を保って包囲していて、軸受ケーシングに、少なくとも半径方向及び軸方向に作用して間隔を保つ緩衝部材を介して分離して(entkoppelt)結合されており、それによって、少なくともファンネルと軸とロータと駆動装置ケーシングとステータと軸受ケーシングとが、周壁及びファンネル支承プレートに対して分離されている。
【0012】
またこの課題を解決した本発明のファンネル構成部分によれば、軸受ユニットが2列の転がり軸受として構成されていて、該転がり軸受の外レースが、転動体をガイドするための2つの内側の溝を有する軸受スリーブによって形成されていて、該軸受スリーブの外径がロータの最大外径よりも大きい。
【0013】
本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ロータとファンネルとの間の軸受ケーシング内に軸受をコンパクトに配置したことによって、並びに、回転部分、定置の駆動部材及び軸受ケーシングを一緒に、ファンネルユニット、ファンネル支承プレート及び残りの定置の部分に対して、振動が伝達されないように分離したことによって、非常に良好な振動特性に基づいて、高いファンネル回転数が得られると共に、摩耗が少なく、消費エネルギーが少なく、しかもファンネルユニットの簡単な変形性が得られる、という認識に基づいている。
【0015】
本発明は基本的に、前記課題を有する紡績機にもまた撚糸機にも使用される。以下に記載された紡績機及び紡績過程は、撚糸機及び撚糸過程にも関するものである。当業者にとっては、このような過程は基本的に例えば、撚糸(Zwirn)、仮撚り(Scheinzwirnen)、コアヤーン(Coregarn)又はコア撚り、装飾糸(Effektgarn)又は装飾撚糸及びその他の方法と共に、前記材料流れ方向でも、またそれとは逆の材料流れ方向でも実施することができることが知られているので、本発明の枠内で糸の受容とは、糸の引き渡しも意味する。
【0016】
ファンネル精紡又はこれと類似の方法について、文献では種々異なる概念が用いられている。例えば釣り鐘形精紡、バルーニングリミッターを備えた紡績、キャップ精紡、フライヤー紡績及びその他の種々異なる概念が用いられている。しかしながら本発明は、ファンネル精紡だけに限定されるものではなく、糸をガイドすることができる、ほぼ回転対称的で回転可能な糸ガイド部材又はバルーニングリミッターが、紡績、撚り又は巻き返しのための同様に回転するスピンドルの糸巻取り領域又は糸引き渡し領域(以下では糸受容領域と称呼されている)を含んでいる、一般的な紡績装置、糸撚り装置又は巻き返し装置に関するものである。
【0017】
本発明による、糸受容領域を有する駆動可能なスピンドルを備えた紡績装置のためのファンネルユニットは、紡績装置のファンネル支承プレートに配置可能又は予め配置されている。ファンネルユニットは、糸受容領域を同心的に包囲するように構成されたファンネルを有しており、このファンネルは、糸を有利には内方に又は場合によって外方にガイドすることができ、しかも回転可能に支承され、かつ駆動可能であり、この場合、ファンネルは漏斗状の形状の他の任意の形状を有していてよい。ファンネルに相対回動不能に結合されているか、又はファンネルと一体的に構成された、糸をファンネルに供給するための軸方向の糸ガイド孔を備えた軸が設けられており、該軸を介してファンネルが回転可能に片持ち式(カンチレバー式)に支承され、駆動可能であるか又は制動可能である。この軸及びファンネルは、それぞれ適当な異なる材料より成っていてよい、互いに結合された2つの部分より形成されているか、又は一体的に構成されている。ファンネルの駆動又は制動は、電気式の駆動装置を介して行われる。この駆動装置のロータ(回転子)は軸に特に接着又は収縮ばめによって固定されていて、ステータ(固定子)が駆動装置ケーシングによって包囲されている。電気式の駆動装置は例えば非同期電動機又は同期電動機として構成されている。軸受ユニットは、駆動装置ケーシングに結合された軸受ケーシング内に配置されていて、しかもファンネルとロータとが回転可能に片持ち式に支承されるように、駆動装置のロータとファンネルとの間で軸に配置されている。軸受ユニットとは、軸を少なくとも半径方向で、有利には軸方向で支承するための部材のことである。例えば閉じた特に円筒形のケーシングの形状又は鉗子状のホルダの形状を有する軸受ケーシングは、一般的に軸受ユニットのホルダを形成している。本発明の実施態様によれば、軸受ユニットは2列の転がり軸受として構成されており、該転がり軸受の内レースが、転動体をガイドするための2つの外側の溝を有する軸によって形成されている。この実施例において、軸は、転動体ガイドのために適した材料より製造されている。転動体は、軸の溝内で直接走行するようになっているので、2つの転動体軌道の直径は、軸上に被せ嵌められた転がり軸受と比較して著しく小さいので、より強い軸受の高回転耐久性が得られ、しかも摩擦抵抗が少ない。本発明の別の実施態様によれば、2列の転がり軸受の外レースが、特に円筒形の細長い軸受ケーシングとして構成されており、この軸受スリーブが転動体をガイドするための2つの内側の溝を有している。軸受スリーブは、軸受ケーシングによって包囲されていて、この軸受ケーシングに特に解除可能に結合されている。軸受スリーブと軸受ケーシングとの間の結合を分離することによって、ファンネルと軸とを、軸受ユニット全体と共に、残りのファンネルユニットから分離することができる。これは、本発明の実施態様に記載されているように、軸受スリーブの外径が、ロータの最大外径よりも大きく、ロータが軸受ケーシングを貫通してガイドされるようになっており、ファンネルと軸とロータと軸受ユニットとが1つの共通のファンネル構成部分として、ファンネルの延在方向で軸方向に摺動させることによって、残りのファンネルユニットから分離可能となっている限りは、軸からロータを取り外すことなしに行うことができる。これによって、高価な作業費用をかけることなしに短時間で軸受全体を保守整備又は交換することができる、という利点が得られる。例えば紡績機を別の紡績方法に変更するために、ファンネル構成部分を別のファンネル構成部分に交換することも、短時間で可能である。2列の転がり軸受は1つの閉じたユニットを形成するので、2つの転がり軸受は外部に対してシールされた1つの共通の潤滑室に分割され、これによって保守整備が著しく軽減される。残りのファンネルユニットからファンネル構成部分を分離することは、例えば、軸受ケーシング内で半径方向に軸に向かって設けられたねじによって行われる。このねじは外部からアクセス可能(接近可能)であって、軸受スリーブに形成された受容部に係合し、それによって、ねじを締結する際に残りのファンネルユニットに対してファンネル構成部分が軸方向で摺動又は回転することは阻止される。受容部として、例えば軸受スリーブを溝内で堅固に包囲するプラスチックリング(このプラスチックリング内にねじが係合する)が用いられる。
【0018】
本発明によれば、ファンネルユニットが、ファンネル支承プレートと少なくとも間接的に結合可能又は結合された(特に円筒形の)周壁を有しており、この周壁が少なくとも軸受ケーシングを同心的に半径方向で間隔を保って包囲している。周壁は、少なくとも半径方向及び軸方向に作用して間隔を維持する緩衝部材を介して軸受ケーシングに結合されており、この場合、少なくともファンネルと軸とロータと駆動装置ケーシングとステータと軸受ケーシングとが、装置のその他の部分特に周壁及びファンネル支承プレートに対して、振動が伝達されないか又は振動が一部しか伝達されないように、分離(entkoppeln)されている。これによって、ファンネルユニットの振動特性が著しく改善され、より高いファンネル回転数が得られ、消費エネルギーは低下され、プロセスの信頼性が高められる。緩衝部材は例えば2つの緩衝部材として構成されていて、これらの緩衝部材が、軸受ケーシングを、2つの転動体列のほぼ軸方向の高さ位置で環状に包囲している。緩衝部材としては、振動を減衰するゴム金属部材又はその他の弾性的な緩衝部分例えばゴム、プラスチック又は発泡材リングが適している。リングの代わりに、軸受ケーシングを巡って環状に分配された複数の個別部材を使用してもよい。特にファンネル、軸、ロータ、軸受ユニットノブ分によって形成される回転部材と、これらの回転部材と直接相互作用する定置の部分、特に駆動装置のステータと、このステータに結合された軸受ケーシングとは、互いに結合された、できるだけ小さく軽量な振動ユニットを形成しているので、回転する部分と前記定置の部分との間の相対的な振動は避けられるので、不都合な振動に基づくステータ内でのロータの半径方向運動、或いは駆動装置を破壊するようなロータとステータとの接触は避けられる。この振動ユニットと、分離された定置の支持ユニットとは、軸受ケーシングと、ファンケル支承プレートに接続された周壁との間に配置された緩衝部材を形成している。周壁は、緩衝部材とファンケル支承プレートとの間のインターフェースとしてだけ用いられるか、又は本発明の実施態様に記載されているように、周壁がファンネルに沿って長手方向に延在していて、ファンネルのほぼ全長を同心的に包囲していることによって、間接的に又は直接的に別の機能、有利には遮蔽機能を有している。周壁は、例えば円筒形の外周面と、ファンネルの外周面の形状に少なくとも部分的に合致した内周面とを有している。円筒形の外周面は、円筒形の遮蔽部材のための受容部として用いられる。この遮蔽部材は、スピンドルを遮蔽するために周壁上でスピンドルに向かって摺動可能である。周壁は、一体的に構成されているか又は複数の部材より成っていて、例えばファンネルを包囲する領域内で被せ嵌め可能に構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による装置の実施例が以下に図面を用いて詳しく説明されている。
【0020】
図1は、緩衝部材及び取り外し可能なファンネル構成部分を備えた本発明によるファンネルユニットの実施例、
図2は、ファンネル、軸、ロータ及び軸受ユニットから構成された、ファンネルユニットのファンネル構成部分を示す。
【0021】
図2は、見やすくするために図1の一部を取り出して示したものである。従って図1及び図2について以下に一緒に説明する。図1には、紡績装置のための本発明によるファンネルユニット(漏斗状の集束ユニット)の可能な実施例が概略的に示されている。この紡績装置は、糸受容領域1で糸を受容する(巻取る)ための、個別に駆動可能なスピンドル2を有している。これに対して図2には、その他のファンネルユニットから分離されたファンネル構成部分21が概略的に示されている。スピンドル2とファンネルユニットとは、公知の形式で互いに軸方向運動を行う。スピンドル2の糸受容領域1は、例えばスピンドル2の、(図1に示されているような)巻取り完成された糸27によって少なくとも部分的に取り囲まれる外周面によって形成される。図示の実施例では、糸は、スピンドル2に被せ嵌められたスリーブ26上にコップの形で巻取られる。ファンネルユニットは、円筒形の基本形状と円錐形に広がった端部とを有するファンネル(漏斗)4を有している。選択的に、共通のファンネル4を円筒形又は円錐形に構成するか、又はファンネル4に、紡績方法を実施するために適した別の形状を与えてもよい。ファンネル4は軸6に相対回動不能に(つまり一緒に回転するように)結合されている。軸6には、中央の真っ直ぐに延びる糸ガイド孔5が形成されており、この糸ガイド孔5を通って糸がファンネル4内に達し、回転するファンネル4の内周面で、例えばアイ(eye)として構成された糸ガイド28に達し、ファンネル4の円錐形の広がった端部の下縁部でガイドされる。詳しく図示していない選択的な実施例では、糸は例えば適当な箇所に形成された貫通孔を通って外部にガイドされるか、又はファンネル下縁部を介してループ(loop)を形成する。これによって公知の形式で、ファンネル4をスピンドル2に同心的に被せ嵌めることによって、糸の受容(巻取り)が行われる。ファンネル4と軸6とは、図示の実施例では共通の部分として示されている。しかしながら、軸6とファンネル4とを2つの部分(それぞれ適当な材料より成る)より構成してもよい。軸6は、軸受ユニット12を介して回転可能に半径方向及び軸方向に支承されていて、電動モータとして構成された駆動装置7(この駆動装置7のロータ8が軸6上に相対回動不能に結合されている)を介して駆動される。軸6とロータ8との結合は例えば接着によって行われる。軸受ユニット12は、2つの転動体列23a,23bと、2つの内側の溝17を有する円筒形の軸受スリーブ16と、軸6を直接切削して形成された外側の溝15(この溝15内で2つの転動体列23a,23bがそれぞれ転動する)とから構成されている。それによって、軸6は内レースとして働き、軸受スリーブ16は外レースとして働く。何故ならば支持軌道は軸6若しくは軸受スリーブ16に直接切削によって形成されているからである。転動体のガイドは軸6上で行われるので、軸受直径は可能な限り小さく、従って高い軸受回転数(軸受速度)が可能である。前記軸受ユニット12を、軸6の、ロータ8が取付られている区分と、ファンネル4に隣接する区分との間に配置したことによって、ファンネル4及びロータ8は片持ち式に支承されている。軸受スリーブ16は、同様にスリーブ状の軸受ケーシング11によって、隙間ばめ又は滑りばめ(Spiel-oder Uebergangspassung)で包囲されている。軸受スリーブ16及びひいては軸6が軸受ケーシング11に対して軸方向で摺動するのを阻止するために、軸受ケーシング11内に解除可能な結合部有利には緊締ねじ24が軸6に向かって設けられており、この緊締ねじ24は、軸受スリーブ16に形成された中央の環状溝に固定されたリング22(適当な材料例えばPOMより成る)に係合し、それによってこのリング22が変形しないようになっている。駆動装置7のステータ(固定子)10は、駆動装置ケーシング9内に位置しており、この駆動装置ケーシング9を介してステータ10が軸受ケーシング11に結合されている。図示の実施例では駆動装置ケーシング9と軸受ケーシング11とは一体的に構成されているが、これらは、複数の部分より構成されていてもよい。
【0022】
軸受ユニット12は、半径方向、軸方向及び周方向に働く2つの緩衝部材14a,14bによって包囲されており、これらの緩衝部材14a,14bは、駆動装置ケーシング9(ステータ10を含む)と軸受ケーシング11と軸受スリーブ16とを、少なくとも軸受ケーシング11を同心的に半径方向で間隔を保って包囲する円筒形の周壁13に分離して(entkoppelt)接続している。緩衝部材14a,14bは、例えばゴム弾性的な緩衝リングによって形成されていて、2つの転動体列23a,23bのほぼ軸方向高さ位置に設けられている。図示の実施例では、周壁13は円筒形の外周面18を有していて、ファンネル4をほぼその全長Lに亘って僅かなエアギャプを保って同心的に包囲していて、ファンネル4の下縁部の近くで終わっている。周壁13の内周面20は、ファンネル4の外周面19の形状に少なくとも部分的に合致している。ファンネル4を周壁13によってカプセル状に包囲することによって、ファンネル4における空気抵抗モーメントが減少され、ひいてはエネルギー必要量が減少される。外部から緊締ねじを解除することができるように、緊締ねじ24の領域で周壁13に孔が設けられている。周壁13は、軸受ユニット12近傍の上部区分で緊締装置のファンネル支承プレート3に結合されており、それによってファンネル支承プレート3と緩衝部材14a,14bとの間のインターフェース機能も、ファンネル4のための遮蔽機能も得られる。しかしながら択一的に、周壁13が軸受ケーシング11だけをスリーブ状に包囲し、この軸受ケーシング11に緩衝部材14a,14bを介して分離して接続されていて、ファンネル4を包囲せず、ファンネル4のための遮蔽機能を有していないような実施例も可能である。この場合、周壁13は、ファンネル支承プレートと間接的又は直接的に接続された短いケーシングとして構成されている。
【0023】
軸受ユニット12及び駆動装置7を、周壁13及びファンネル支承プレート3に対して、緩衝部材14a,14bを介して振動技術的に分離することによって、ファンネルユニットの振動特性は著しく改善されるので、高いファンネル回転数、低い振動及び少ないエネルギー必要量が得られる。
【0024】
軸受スリーブ16の外径D16は、ロータ8の最大外径Dよりも大きいので、ロータ8は軸方向で軸受ケーシング11を貫通ガイドされる。緊締ねじ24を解除することによって軸方向で解除可能な、軸受スリーブ16と軸受ケーシング11との間の結合によって、ファンネル4と軸6とロータ8と軸受ユニット12とは、1つの共通のファンネル構成部分21として、ファンネル4を方向25で軸方向に摺動させることによって、簡単な形式でその他のファンネルユニットから分離させることができる。これは特に、軸受ユニット12又は駆動装置7を規則的に保守整備するために、ファンネル4を洗浄するために、又は例えば紡績方法を切り替える際にファンネル構成部分21全体を交換するために特に有利である。何故ならば1つの緊締ねじ24を解除することによってファンネル構成部分21全体を取り出すことができるからである。これによって紡績装置の不必要な運転停止時間は避けられるので、高いファンネル回転数が得られることによる生産能力の増大と共に、整備に必要なコストの削減が得られる。
【0025】
ファンネルユニットは、ファンネル4が駆動及び軸受ユニット6,8,9,10,11(軸6とロータ8とケーシング9とステータ10と軸受ケーシング11とから成る)と共に、緩衝部材14a,14bを介して周壁13に接続若しくは結合され、それによってこの周壁13内で弾性的に支承されている、ことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】緩衝部材及び取り外し可能なファンネル構成部分を備えた本発明によるファンネルユニットの1実施例の概略的な断面図である。
【図2】ファンネル、軸、ロータ及び軸受ユニットから構成された、ファンネルユニットのファンネル構成部分の概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 糸受容領域、 2 スピンドル、 3 ファンネル支承プレート、 4 ファンネル、 5 糸ガイド孔、 6 軸、 7 駆動装置、 8 ロータ、 9 駆動装置ケーシング、 10 ステータ、 11 軸受ケーシング、 12 軸受ユニット、 13 周壁、 14a,14b 緩衝部材、 15 軸6の外側の溝、 16 軸受スリーブ、 17 軸6の内側の溝、 18 周壁13の外周面、 19 ファンネル4の外周面、 20 周壁13の内周面、 21 共通のファンネル構成部分、 22 リング、 23a,23b 転動体列、 24 緊締ねじ、 25 方向、 26 スリーブ、 27 巻き取られた糸、 28 糸ガイド、 L ファンネル4の長さ、 D ロータ8の最大外径、 D16 軸受スリーブ16の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸受容領域(1)を有する駆動可能なスピンドル(2)を備えた紡績装置のための、ファンネル支承プレート(3)に配置可能なファンネルユニットであって、
糸受容領域(1)を同心的に包囲するように構成され、糸をガイドすることができるファンネル(4)が設けられており、
該ファンネル(4)に相対回動不能に結合されているか又はファンネル(4)と一体的に構成された、糸をファンネル(4)に供給するための軸方向の糸ガイド孔(5)を備えた軸(6)が設けられており、該軸(6)を介してファンネル(4)が回転可能に片持ち式に支承されていて、駆動可能又は制動可能であって、
ファンネル(4)を駆動又は制動するための、軸(6)に固定されたロータ(8)と、駆動装置ケーシング(9)によって包囲されたステータ(10)とを備えた電気式の駆動装置(7)が設けられており、
駆動ケーシング(9)に結合された軸受ケーシング内に軸受ユニット(12)が配置されていて、該軸受ユニット(12)は、ロータ(8)とファンネル(4)との間で軸(6)に配置されていて、それによってファンネル(4)とロータ(8)とが回転可能に片持ち式に支承されている形式のものにおいて、
ファンネル支承プレート(3)に少なくとも間接的に結合可能な周壁(13)が、少なくとも軸受ケーシング(11)を同心的に半径方向で間隔を保って包囲していて、少なくとも半径方向及び軸方向に作用して間隔を保つ緩衝部材(14a,14b)を介して軸受ケーシング(11)に分離して結合されおり、それによって、少なくともファンネル(4)と軸(6)とロータ(8)と駆動装置ケーシング(9)とステータ(10)と軸受ケーシング(11)とが、周壁(13)及びファンネル支承プレート(3)に対して分離されていることを特徴とする、紡績装置のためのファンネルユニット。
【請求項2】
軸受ユニット(12)が2列の転がり軸受として構成されており、該転がり軸受の内レースが、転動体をガイドするための2つの外側の溝(15)を有する軸(6)によって形成されている、請求項1記載のファンネルユニット。
【請求項3】
軸受ユニット(12)が2列の転がり軸受として構成されており、該転がり軸受の外レースが、軸受ケーシング(11)によって包囲され、かつこの軸受ケーシング(11)に解除可能に結合された軸受スリーブ(16)によって形成されており、該軸受スリーブ(16)が転動体をガイドするための2つの内側の溝(17)を有している、請求項1又は2記載のファンネルユニット。
【請求項4】
軸受スリーブ(16)の外径(D16)が、ロータ(8)の最大外径(D)よりも大きく、ロータ(8)が軸受ケーシング(11)を貫通してガイドされるようになっており、
軸受スリーブ(16)と軸受ケーシング(11)との結合が軸方向で解除可能に構成されていて、それによってファンネル(4)と軸(6)とロータ(8)と軸受ユニット(12)とが1つの共通のファンネル構成部分(21)として、ファンネル(4)が延在する方向(25)で軸方向に摺動させることによって、残りのファンネルユニットから分離可能となっている、請求項3記載のファンネルユニット。
【請求項5】
緩衝部材が2つの緩衝部材(14a,14b)として構成されていて、これらの緩衝部材が、軸受ケーシング(11)を、2つの転動体列(23a,23b)のほぼ軸方向の高さ位置で環状に包囲している、請求項2から4までのいずれか1項記載のファンネルユニット。
【請求項6】
周壁(13)がファンネル(4)に沿って長手方向に延在していて、ファンネル(4)のほぼ全長(L)を同心的に包囲している、請求項1から5までのいずれか1項記載のファンネルユニット。
【請求項7】
周壁(13)が、円筒形の外周面(18)と、ファンネル(4)の外周面の形状に少なくとも部分的に合致した内周面(20)とを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のファンネルユニット。
【請求項8】
請求項4記載のファンネルユニットのためのファンネル構成部分(21)であって、
スピンドル(2)の糸受容領域(1)を同心的に包囲するように構成された、糸をガイドするためのファンネル(4)が設けられており、
該ファンネル(4)に相対回動不能に結合されているか、又はファンネル(4)と一体的に構成された、糸をファンネル(4)に供給するための軸方向の糸ガイド孔(5)を有する軸(6)が設けられていて、該軸(6)を介してファンネル(4)が回転可能に片持ち式に支承可能、駆動可能又は制動可能であって、
ファンネル(4)及びロータ(8)を回転可能に片持ち式に支承するための、ロータ(8)とファンネル(4)との間で軸(6)に配置された軸受ユニット(12)が設けられている形式のものにおいて、
軸受ユニット(12)が2列の転がり軸受として構成されていて、該転がり軸受の外レースが、転動体をガイドするための2つの内側の溝(17)を有する軸受スリーブ(16)によって形成されていて、該軸受スリーブ(16)の外径(D16)がロータ(8)の最大外径(D)よりも大きいことを特徴とする、ファンネル構成部分。
【請求項9】
2列の転がり軸受として構成された軸受ユニット(12)の内レースが、転動体をガイドするための2つの外側の溝(15)を有する軸(6)によって形成されている、請求項8記載のファンネル構成部分。
【請求項10】
ファンネル(4)が駆動及び軸受ユニット(6,8,9,10,11)と共に緩衝部材(14a,14b)を介して周壁(13)に結合されていて、それによってこの周壁に弾性的に支承されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のファンネルユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−225836(P2006−225836A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32847(P2006−32847)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】