索道システム用のプーリー、及びベルト駆動装置を製造するためのプーリーのセット
【課題】鋳造作業によって製造されるプーリーの場合よりも簡単に製造可能なプーリーを提供する。
【解決手段】特に索道システムにおける、減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するベルト駆動装置を製造するためのプーリー61は、プーリーの中心領域において自身を駆動シャフトに接続するためのハブ64を有するとともに、プーリーの外周においては駆動ベルト等のための環状のベルト面、特に溝62を有するように形成される。このプーリーは鋼板から構成され、その外周に設けられたベルト面は、プーリーの縁部を分割することによって作られる。
【解決手段】特に索道システムにおける、減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するベルト駆動装置を製造するためのプーリー61は、プーリーの中心領域において自身を駆動シャフトに接続するためのハブ64を有するとともに、プーリーの外周においては駆動ベルト等のための環状のベルト面、特に溝62を有するように形成される。このプーリーは鋼板から構成され、その外周に設けられたベルト面は、プーリーの縁部を分割することによって作られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置、特に索道システムにおける減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するベルト駆動装置のためのプーリーに関する。このプーリーは、プーリー自身を駆動シャフトに接続するためのハブをプーリーの中心領域に有するとともに、その外周においては、駆動ベルト等のための少なくとも1つの環状のベルト面、詳しくは溝を有するように形成されている。
【0002】
さらに、本発明はベルト駆動装置用のプーリーを製造するためのセットにも関する。
【0003】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、米国特許法第119条に基づいて、2009年1月29日付けで出願されたオーストリア国特許出願第A158/2009号、及び2009年4月2日付けで出願されたオーストリア国特許出願第A528/2009号の優先権を主張するものであり、これら先行する特許出願は、本引用によりそのすべてが本明細書に包含される。
【背景技術】
【0004】
結合可能な車両を有する索道システムにおいては、駅を通過するように車両をガイドレールに沿って案内することが知られている。車両は、索道の駅の構内に進入する際に、例えば6m/秒の速度で移動する搬送・運搬ケーブルから結合解除される。このとき車両の速度は、減速ホイールによって搬送・運搬ケーブルの速度よりも低減される。この結果、車両は、運搬ホイールによって、例えば0.2m/秒〜1m/秒の一定の下車/乗車速度で下車及び/又は乗車領域を通過する。この際に乗客は車両から下車し、及び/又は車両に乗車する。その後に、車両は、加速ホイールによって搬送・運搬ケーブルの速度に加速される。このとき、車両は再度、搬送・運搬ケーブルに結合されるとともに、これによって索道の次の駅に移動することになる。
【0005】
索道の駅を通過するように車両を移動させる減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールは、プーリーの複数のペアによって駆動される。これらのプーリーの複数のペアは、車両の案内経路に沿って配列されるとともに、車両のランニングギアメカニズムと相互作用する減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールが配置されたシャフトを駆動するように接続されている。この場合に、2つのプーリーは、それぞれ駆動ベルトのための少なくとも1つのベルト面を有するように形成される。互いに割り当てられると共に車両の移動経路において互いに追随するこれらの2つのプーリーは、駆動ベルトによって互いに回転可能に結合されている。それぞれのケースにおいて望ましい運動シーケンスを実現するように、2つのプーリーのベルト面は、同一の、又は異なる直径を有する。第1プーリーが、第1プーリーに結合された第2プーリーよりも小さな直径を有する場合には、第2プーリーは第1プーリーよりも低速で回転する。この結果、これらのプーリーによって回転する車両用の駆動ホイールは減少する速度において回転し、つまりこれらの駆動ホイールは減速ホイールとして機能する。駆動ベルトによって結合された2つのプーリーが同一の直径を有する場合には、これらのプーリーによって回転する車両用の駆動ホイールは同一の速度で回転する。この結果、これらのプーリーによって回転する車両用の駆動ホイールは一定の速度で移動する。第1プーリーが、第1プーリーに結合された第2プーリーよりも大きな直径を有する場合には、第2プーリーは第1プーリーよりも大きな速度で回転する。この結果、これらのプーリーによって回転する駆動ホイールは増大する速度において移動し、つまりこれらのホイールは加速ホイールとして機能する。
【0006】
従来技術によるプーリーのペアは、それぞれの場合において、少なくとも2つのベルト面を有するように形成されるとともに鉄又はアルミニウムなどの金属から構成され、鋳造作業によって製造される。この場合、これらは機械加工する必要がある。異なる構造設計又は異なる運動シーケンスのために、個々のベルト面には種々に異なる直径が要求される。従って、このような従来技術のプーリーの製造は、そのサイズが種々に異なるために非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、空中索道設備用のベルトプーリーと、これを製造するためのセットと、を提供することである。これによって、汎用タイプの従来の既知の装置及び方法の前述した欠点を克服するとともに、鋳造作業によって製造されるプーリーの場合よりも簡単に製造可能なプーリーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の又はその他の目的に鑑み、本発明によれば、ベルト駆動装置用のプーリーが提供される。このプーリーは、鋼板から形成されたプーリー本体を有し、このプーリー本体は、プーリーの中心領域を形成する、プーリーを駆動シャフトに接続するためのハブと、プーリーの外周を形成する、駆動ベルトを係合するための環状のベルト面と、を備える。環状のベルト面は、V字溝などの溝等を形成するように鋼板の外周を縁部に沿って分割(split)することによって形成された、プーリー本体の分割縁部によって形成される。
【0009】
この新しいプーリーは、索道システムにおける減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するのに特に好適である。
【0010】
言いかえれば、前述の目的は、プーリーが鋼板から構成されるとともに、その外周に設けられるベルト面がプーリーの縁部を分割することによって製造される本発明によって達成される。
【0011】
プーリーの中心領域は、駆動シャフトの径方向フランジ上にプーリーを嵌合可能である隆起部を有するように形成されることが好ましい。この場合、隆起部の軸方向の深さは、駆動ベルトのためのベルト面の幅の約半分であると好ましい。ベルト駆動装置を形成するように、2つのプーリーは隆起部の横方向表面に沿って当接状態となるとともに、これらの隣接するプーリーは軸方向に向けられたボルトによって相互接続される。
【0012】
さらに、プーリーは、まずは貫通する開口部と、さらには隣接するプーリーの開口部を介して観察可能である銘刻(inscription)と、を有するように形成されると好ましい。
【0013】
索道システムにおけるベルト駆動装置を製造するためのプーリーのセットは、鋼板から製造された複数のプーリーから構成される。これらのプーリーは異なる直径を有するとともに、外周縁部を分割することによって製造されたベルト面を有するように形成されており、これらは任意選択的に相互接続することができる。
【0014】
本発明で特徴的であると考えられる他の特徴は、添付の請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゴンドラの形態である結合可能な車両を有する索道システムの駅の不等角投影図を示す。
【図2】索道の駅を通過する車両用のペアとして配列されたプーリーと、プーリー回転可能に接続された駆動ホイールの、車両の運動シーケンスを説明するための概略平面図である。
【図3A】プーリーの平面図である。
【図3B】図3Aの線C−Cに沿って得られるとともに矢印の方向において観察される断面図である。
【図3C】本発明によるプーリーの斜視図である。
【図4A】それぞれ1つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図4B】それぞれ1つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図4C】それぞれ1つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図5A】それぞれ2つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図5B】それぞれ2つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図5C】それぞれ2つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、本発明は索道システム用のプーリーとして実施されるとともに、これを製造するためのセットとして例示及び説明されている。しかしながら、本発明の精神を逸脱することなく、請求項の均等物の範囲及び領域内において様々な変更及び構造的な変形を実施可能であり、例示の詳細に限定することを意図したものではない。
【0017】
但し、本発明の構造及び動作の方法はその更なる目的及び利点とともに、添付の図面と結び付けて参照できる特定の実施例に関する以下の説明から、十分に理解することができるだろう。
【0018】
添付図面の図、まずは特に図1を詳細に参照すると、搬送・運搬ケーブル1に接続可能な車両2とともに索道システムの駅の1つが示されており、ここで車両はゴンドラの形態である。駅は、例えば6m/秒の一定速度で移動する、ブルホイールとも呼ばれる、搬送・運搬ケーブル1のための偏向プーリー3を含む。搬送・運搬ケーブル1によって、矢印Aの方向に駅の構内へ進入した車両は、搬送・運搬ケーブル1から結合解除されて、駆動ホイール5によりガイドレール4に沿って駅を通過する。ホイール5は、減速ホイール5aのセット、運搬ホイール5bのセット、及び加速ホイール5cのセットを含む。減速ホイール5aによって、車両2は、搬送・運搬ケーブル1の速度から、例えば0.2m/秒〜1m/秒の速度に減速され、この速度で車両は運搬ホイール5bによって乗客の下車・乗車領域を通過する。車両が一定の速度で通過するこの領域において、乗客は車両2から下車するか、または車両2に乗車する。その後、車両2は加速ホイール5cによって搬送・運搬ケーブル1の速度に加速され、前述の搬送・運搬ケーブル1に再度結合され、ケーブル1によってこの索道の駅から外に、そして次の駅へと運搬される。
【0019】
図2は、駆動ホイール5、具体的には、減速ホイール5a、運搬ホイール5b、加速ホイール5cと、プーリー6のペアの概略図を示し、さらに概略的に索道の駅の構内の車両の速度Vを示す。
【0020】
駆動ホイール5は、プーリー6のペアの駆動シャフト51に取り付けられる。これらプーリー6のペアは、同一の、又は互いに異なる直径の2つのプーリーから形成され、それぞれ連続する2つのプーリー6のペアの間に提供される駆動ベルト7のための環状のベルト面を有する。この場合に、それぞれ車両の移動方向Aに配置された第1プーリー、すなわち上流側のプーリーは、それらに結合された第2プーリーよりも小さな直径を有している。その結果、それぞれ後続するプーリー6aのペア及びこれらによって回転される駆動ホイール5aは減少する速度により回転する。従って、これらの駆動ホイール5aは、車両用の減速ホイールとして機能することになる。それゆえ、索道の駅のこの領域内における車両の移動速度は、車両が前方に進むのに伴って減少する。
【0021】
プーリー6bのペアもまた設けられる。これらのプーリーは同一の直径を有するため、これらにより駆動される運搬ホイール5bは一定の速度において回転する。従って車両は、乗客が下車、乗車する乗客用の下車・乗車領域を一定速度で通過する。
【0022】
プーリー6cのペアもまた設けられる。これらのプーリーは再び異なる直径を有している。駆動ベルト7によって互いに結合されたプーリーの直径はそれぞれ後続のプーリーの直径よりも大きいため、これらのプーリー6cのペアと結合された車両用の駆動ホイール5cは増大する速度で回転する。その結果、これらは車両用の加速ホイールとして機能する。これらの駆動ホイール5cにより、車両は搬送・運搬ケーブルの速度に加速され、前述の搬送・運搬ケーブルに結合されるとともに、これにより索道の駅から外へと矢印Bの方向に運搬される。
【0023】
図1及び図2を参照して説明した構造的設計は、従来技術において既知である。従来技術の索道システムにおいては、個々のプーリーは鋳造作業によって製造されている。個々のプーリーは異なる複数の直径を有するため、複数の異なる方式で形成されたプーリーを製造する必要があり、このためには複数の鋳造金型が必要である。さらに、これらのプーリーは鋳造プロセスの後に機械加工が必要である。従って、このようなプーリーを廉価に製造するニーズが存在する。
【0024】
このニーズは、異なるサイズの直径を有するプーリーを鋼板から構成することにより達成される。プーリーの外周縁部を分割することによってベルト面が形成される。その結果、具体的にはV字形の溝が生成され、これによりベルト面が形成される。このように互いに接続された2つのプーリーは、ベルト駆動装置のためのプーリーのペアを形成する。このようなプーリーは図3A、3B、3Cに示されている。
【0025】
このプーリー61は、例えば6mmの厚さを有する鋼板の円形ディスクからパンチングによって形成されるとともに、そのエッジに沿ってV字形状の溝62を有するように構成される。このV字形の溝が、Vベルト用のベルト面として使用される。この溝62は、プーリーの外周縁部を分割することによって作られる。このプーリー61はその中心領域においては絞り又はプレス作業により、円形−円筒形の隆起部63又は凹部63aを有するように形成される。この隆起部又は凹部の深さは、隆起部63の外壁がV溝62の外部エッジと共に同一平面内に位置するように、V字溝62の幅の略半分である。隆起部63の中心において、プーリー61はハブ64を有するように形成されている。さらにこの隆起部63は、4つのボア65を有するように形成される。これらのボアは、ねじボルトのために設けられる。さらにプーリー61は、観察窓として機能するスロット66を有するとともに、両面に銘刻67を有するように形成される。この銘刻は、プーリー61のサイズに関する詳細を含む。
【0026】
このようなプーリー61は、V字形の溝が幅及びサイズが同一であるが直径が異なるプーリーの組として多数製造され、在庫品として保存される。
【0027】
図4A、4B、4Cを参照して以後述べるように、プーリー6のペアを製造するために、それぞれのケースにおいて2つのプーリー61が互いに組み合わされるとともに、駆動ホイール5用の駆動シャフト51に嵌合される。
【0028】
図4Aは、プーリーの第1のペア6を示している。これは2つのプーリー61a及び61bから構成され、溝62aを有するプーリー61aの直径は、溝62bを有するプーリー61bの直径よりも格段に大きい。
【0029】
図4Bにおいては、同一の直径を有するとともに溝62cを有する2つのプーリー61cが相互に組み合わせられている。
【0030】
図4Cにおいては、溝62a及び62bを有する2つのプーリー61a及び61bが互いに組み合わせられている。プーリーの直径は、図4Aのプーリーのペア6のものと同一であるが、プーリー61bは、駆動ホイール5とは反対側に配置されている。
【0031】
従って、プーリーのペアを製造するには、このような2つのプーリー61を互いに隆起部63の外部表面においてそれぞれ接合するとともに、駆動シャフト51に嵌合する。この駆動シャフトはフランジ52を有するように形成されており、フランジ52は凹部63a内に配置されるように構成されている。2つのプーリー61は、フランジ52を貫通するねじボルト68により駆動シャフト51に固定されている。この場合、2つのプーリー61の相互の向きは、1つのプーリー61の観察窓66が、もう1つのプーリー61の銘刻67の上方に配置されるように選択される。この例のプーリー61に設けられている横方向の隆起部63は、隣接するプーリー61の間のスペーサとして使用されている。それぞれVベルト7によって互いに接続されたこの種の2つのプーリー61の連続するペアは駆動ホイール5のためのベルト駆動装置を形成し、それぞれが、減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールとして機能する。
【0032】
さらに、プーリー61は、約20の異なる直径を有していてもよいことを指摘しておく必要があるだろう。
【0033】
図5A、5B、5Cでさらに示されているように、このようなプーリー61を使用して、それぞれデュアル駆動ベルト用のベルト駆動装置のためのプーリーのペアを製造することも可能である。4つのプーリー61を互いに組み合わせる場合には、プーリー61の2つのペアの間に環状のスペーサ69を挿入する必要がある。
【0034】
このような鋼板プーリーのセットにより、ベルト駆動装置のための多様なプーリーを製造することができる。その結果、ベルト駆動装置のためのプーリーの製造を相当に単純化することができる。
【0035】
プーリーを鋼板から製造することにより、鋳造作業による製造と比較して、材料使用量の大幅な低減と、更には製造の単純化及びコスト低減などの利点が実現される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置、特に索道システムにおける減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するベルト駆動装置のためのプーリーに関する。このプーリーは、プーリー自身を駆動シャフトに接続するためのハブをプーリーの中心領域に有するとともに、その外周においては、駆動ベルト等のための少なくとも1つの環状のベルト面、詳しくは溝を有するように形成されている。
【0002】
さらに、本発明はベルト駆動装置用のプーリーを製造するためのセットにも関する。
【0003】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、米国特許法第119条に基づいて、2009年1月29日付けで出願されたオーストリア国特許出願第A158/2009号、及び2009年4月2日付けで出願されたオーストリア国特許出願第A528/2009号の優先権を主張するものであり、これら先行する特許出願は、本引用によりそのすべてが本明細書に包含される。
【背景技術】
【0004】
結合可能な車両を有する索道システムにおいては、駅を通過するように車両をガイドレールに沿って案内することが知られている。車両は、索道の駅の構内に進入する際に、例えば6m/秒の速度で移動する搬送・運搬ケーブルから結合解除される。このとき車両の速度は、減速ホイールによって搬送・運搬ケーブルの速度よりも低減される。この結果、車両は、運搬ホイールによって、例えば0.2m/秒〜1m/秒の一定の下車/乗車速度で下車及び/又は乗車領域を通過する。この際に乗客は車両から下車し、及び/又は車両に乗車する。その後に、車両は、加速ホイールによって搬送・運搬ケーブルの速度に加速される。このとき、車両は再度、搬送・運搬ケーブルに結合されるとともに、これによって索道の次の駅に移動することになる。
【0005】
索道の駅を通過するように車両を移動させる減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールは、プーリーの複数のペアによって駆動される。これらのプーリーの複数のペアは、車両の案内経路に沿って配列されるとともに、車両のランニングギアメカニズムと相互作用する減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールが配置されたシャフトを駆動するように接続されている。この場合に、2つのプーリーは、それぞれ駆動ベルトのための少なくとも1つのベルト面を有するように形成される。互いに割り当てられると共に車両の移動経路において互いに追随するこれらの2つのプーリーは、駆動ベルトによって互いに回転可能に結合されている。それぞれのケースにおいて望ましい運動シーケンスを実現するように、2つのプーリーのベルト面は、同一の、又は異なる直径を有する。第1プーリーが、第1プーリーに結合された第2プーリーよりも小さな直径を有する場合には、第2プーリーは第1プーリーよりも低速で回転する。この結果、これらのプーリーによって回転する車両用の駆動ホイールは減少する速度において回転し、つまりこれらの駆動ホイールは減速ホイールとして機能する。駆動ベルトによって結合された2つのプーリーが同一の直径を有する場合には、これらのプーリーによって回転する車両用の駆動ホイールは同一の速度で回転する。この結果、これらのプーリーによって回転する車両用の駆動ホイールは一定の速度で移動する。第1プーリーが、第1プーリーに結合された第2プーリーよりも大きな直径を有する場合には、第2プーリーは第1プーリーよりも大きな速度で回転する。この結果、これらのプーリーによって回転する駆動ホイールは増大する速度において移動し、つまりこれらのホイールは加速ホイールとして機能する。
【0006】
従来技術によるプーリーのペアは、それぞれの場合において、少なくとも2つのベルト面を有するように形成されるとともに鉄又はアルミニウムなどの金属から構成され、鋳造作業によって製造される。この場合、これらは機械加工する必要がある。異なる構造設計又は異なる運動シーケンスのために、個々のベルト面には種々に異なる直径が要求される。従って、このような従来技術のプーリーの製造は、そのサイズが種々に異なるために非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、空中索道設備用のベルトプーリーと、これを製造するためのセットと、を提供することである。これによって、汎用タイプの従来の既知の装置及び方法の前述した欠点を克服するとともに、鋳造作業によって製造されるプーリーの場合よりも簡単に製造可能なプーリーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の又はその他の目的に鑑み、本発明によれば、ベルト駆動装置用のプーリーが提供される。このプーリーは、鋼板から形成されたプーリー本体を有し、このプーリー本体は、プーリーの中心領域を形成する、プーリーを駆動シャフトに接続するためのハブと、プーリーの外周を形成する、駆動ベルトを係合するための環状のベルト面と、を備える。環状のベルト面は、V字溝などの溝等を形成するように鋼板の外周を縁部に沿って分割(split)することによって形成された、プーリー本体の分割縁部によって形成される。
【0009】
この新しいプーリーは、索道システムにおける減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するのに特に好適である。
【0010】
言いかえれば、前述の目的は、プーリーが鋼板から構成されるとともに、その外周に設けられるベルト面がプーリーの縁部を分割することによって製造される本発明によって達成される。
【0011】
プーリーの中心領域は、駆動シャフトの径方向フランジ上にプーリーを嵌合可能である隆起部を有するように形成されることが好ましい。この場合、隆起部の軸方向の深さは、駆動ベルトのためのベルト面の幅の約半分であると好ましい。ベルト駆動装置を形成するように、2つのプーリーは隆起部の横方向表面に沿って当接状態となるとともに、これらの隣接するプーリーは軸方向に向けられたボルトによって相互接続される。
【0012】
さらに、プーリーは、まずは貫通する開口部と、さらには隣接するプーリーの開口部を介して観察可能である銘刻(inscription)と、を有するように形成されると好ましい。
【0013】
索道システムにおけるベルト駆動装置を製造するためのプーリーのセットは、鋼板から製造された複数のプーリーから構成される。これらのプーリーは異なる直径を有するとともに、外周縁部を分割することによって製造されたベルト面を有するように形成されており、これらは任意選択的に相互接続することができる。
【0014】
本発明で特徴的であると考えられる他の特徴は、添付の請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゴンドラの形態である結合可能な車両を有する索道システムの駅の不等角投影図を示す。
【図2】索道の駅を通過する車両用のペアとして配列されたプーリーと、プーリー回転可能に接続された駆動ホイールの、車両の運動シーケンスを説明するための概略平面図である。
【図3A】プーリーの平面図である。
【図3B】図3Aの線C−Cに沿って得られるとともに矢印の方向において観察される断面図である。
【図3C】本発明によるプーリーの斜視図である。
【図4A】それぞれ1つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図4B】それぞれ1つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図4C】それぞれ1つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図5A】それぞれ2つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図5B】それぞれ2つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【図5C】それぞれ2つのベルト面を有するプーリーのペアの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、本発明は索道システム用のプーリーとして実施されるとともに、これを製造するためのセットとして例示及び説明されている。しかしながら、本発明の精神を逸脱することなく、請求項の均等物の範囲及び領域内において様々な変更及び構造的な変形を実施可能であり、例示の詳細に限定することを意図したものではない。
【0017】
但し、本発明の構造及び動作の方法はその更なる目的及び利点とともに、添付の図面と結び付けて参照できる特定の実施例に関する以下の説明から、十分に理解することができるだろう。
【0018】
添付図面の図、まずは特に図1を詳細に参照すると、搬送・運搬ケーブル1に接続可能な車両2とともに索道システムの駅の1つが示されており、ここで車両はゴンドラの形態である。駅は、例えば6m/秒の一定速度で移動する、ブルホイールとも呼ばれる、搬送・運搬ケーブル1のための偏向プーリー3を含む。搬送・運搬ケーブル1によって、矢印Aの方向に駅の構内へ進入した車両は、搬送・運搬ケーブル1から結合解除されて、駆動ホイール5によりガイドレール4に沿って駅を通過する。ホイール5は、減速ホイール5aのセット、運搬ホイール5bのセット、及び加速ホイール5cのセットを含む。減速ホイール5aによって、車両2は、搬送・運搬ケーブル1の速度から、例えば0.2m/秒〜1m/秒の速度に減速され、この速度で車両は運搬ホイール5bによって乗客の下車・乗車領域を通過する。車両が一定の速度で通過するこの領域において、乗客は車両2から下車するか、または車両2に乗車する。その後、車両2は加速ホイール5cによって搬送・運搬ケーブル1の速度に加速され、前述の搬送・運搬ケーブル1に再度結合され、ケーブル1によってこの索道の駅から外に、そして次の駅へと運搬される。
【0019】
図2は、駆動ホイール5、具体的には、減速ホイール5a、運搬ホイール5b、加速ホイール5cと、プーリー6のペアの概略図を示し、さらに概略的に索道の駅の構内の車両の速度Vを示す。
【0020】
駆動ホイール5は、プーリー6のペアの駆動シャフト51に取り付けられる。これらプーリー6のペアは、同一の、又は互いに異なる直径の2つのプーリーから形成され、それぞれ連続する2つのプーリー6のペアの間に提供される駆動ベルト7のための環状のベルト面を有する。この場合に、それぞれ車両の移動方向Aに配置された第1プーリー、すなわち上流側のプーリーは、それらに結合された第2プーリーよりも小さな直径を有している。その結果、それぞれ後続するプーリー6aのペア及びこれらによって回転される駆動ホイール5aは減少する速度により回転する。従って、これらの駆動ホイール5aは、車両用の減速ホイールとして機能することになる。それゆえ、索道の駅のこの領域内における車両の移動速度は、車両が前方に進むのに伴って減少する。
【0021】
プーリー6bのペアもまた設けられる。これらのプーリーは同一の直径を有するため、これらにより駆動される運搬ホイール5bは一定の速度において回転する。従って車両は、乗客が下車、乗車する乗客用の下車・乗車領域を一定速度で通過する。
【0022】
プーリー6cのペアもまた設けられる。これらのプーリーは再び異なる直径を有している。駆動ベルト7によって互いに結合されたプーリーの直径はそれぞれ後続のプーリーの直径よりも大きいため、これらのプーリー6cのペアと結合された車両用の駆動ホイール5cは増大する速度で回転する。その結果、これらは車両用の加速ホイールとして機能する。これらの駆動ホイール5cにより、車両は搬送・運搬ケーブルの速度に加速され、前述の搬送・運搬ケーブルに結合されるとともに、これにより索道の駅から外へと矢印Bの方向に運搬される。
【0023】
図1及び図2を参照して説明した構造的設計は、従来技術において既知である。従来技術の索道システムにおいては、個々のプーリーは鋳造作業によって製造されている。個々のプーリーは異なる複数の直径を有するため、複数の異なる方式で形成されたプーリーを製造する必要があり、このためには複数の鋳造金型が必要である。さらに、これらのプーリーは鋳造プロセスの後に機械加工が必要である。従って、このようなプーリーを廉価に製造するニーズが存在する。
【0024】
このニーズは、異なるサイズの直径を有するプーリーを鋼板から構成することにより達成される。プーリーの外周縁部を分割することによってベルト面が形成される。その結果、具体的にはV字形の溝が生成され、これによりベルト面が形成される。このように互いに接続された2つのプーリーは、ベルト駆動装置のためのプーリーのペアを形成する。このようなプーリーは図3A、3B、3Cに示されている。
【0025】
このプーリー61は、例えば6mmの厚さを有する鋼板の円形ディスクからパンチングによって形成されるとともに、そのエッジに沿ってV字形状の溝62を有するように構成される。このV字形の溝が、Vベルト用のベルト面として使用される。この溝62は、プーリーの外周縁部を分割することによって作られる。このプーリー61はその中心領域においては絞り又はプレス作業により、円形−円筒形の隆起部63又は凹部63aを有するように形成される。この隆起部又は凹部の深さは、隆起部63の外壁がV溝62の外部エッジと共に同一平面内に位置するように、V字溝62の幅の略半分である。隆起部63の中心において、プーリー61はハブ64を有するように形成されている。さらにこの隆起部63は、4つのボア65を有するように形成される。これらのボアは、ねじボルトのために設けられる。さらにプーリー61は、観察窓として機能するスロット66を有するとともに、両面に銘刻67を有するように形成される。この銘刻は、プーリー61のサイズに関する詳細を含む。
【0026】
このようなプーリー61は、V字形の溝が幅及びサイズが同一であるが直径が異なるプーリーの組として多数製造され、在庫品として保存される。
【0027】
図4A、4B、4Cを参照して以後述べるように、プーリー6のペアを製造するために、それぞれのケースにおいて2つのプーリー61が互いに組み合わされるとともに、駆動ホイール5用の駆動シャフト51に嵌合される。
【0028】
図4Aは、プーリーの第1のペア6を示している。これは2つのプーリー61a及び61bから構成され、溝62aを有するプーリー61aの直径は、溝62bを有するプーリー61bの直径よりも格段に大きい。
【0029】
図4Bにおいては、同一の直径を有するとともに溝62cを有する2つのプーリー61cが相互に組み合わせられている。
【0030】
図4Cにおいては、溝62a及び62bを有する2つのプーリー61a及び61bが互いに組み合わせられている。プーリーの直径は、図4Aのプーリーのペア6のものと同一であるが、プーリー61bは、駆動ホイール5とは反対側に配置されている。
【0031】
従って、プーリーのペアを製造するには、このような2つのプーリー61を互いに隆起部63の外部表面においてそれぞれ接合するとともに、駆動シャフト51に嵌合する。この駆動シャフトはフランジ52を有するように形成されており、フランジ52は凹部63a内に配置されるように構成されている。2つのプーリー61は、フランジ52を貫通するねじボルト68により駆動シャフト51に固定されている。この場合、2つのプーリー61の相互の向きは、1つのプーリー61の観察窓66が、もう1つのプーリー61の銘刻67の上方に配置されるように選択される。この例のプーリー61に設けられている横方向の隆起部63は、隣接するプーリー61の間のスペーサとして使用されている。それぞれVベルト7によって互いに接続されたこの種の2つのプーリー61の連続するペアは駆動ホイール5のためのベルト駆動装置を形成し、それぞれが、減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールとして機能する。
【0032】
さらに、プーリー61は、約20の異なる直径を有していてもよいことを指摘しておく必要があるだろう。
【0033】
図5A、5B、5Cでさらに示されているように、このようなプーリー61を使用して、それぞれデュアル駆動ベルト用のベルト駆動装置のためのプーリーのペアを製造することも可能である。4つのプーリー61を互いに組み合わせる場合には、プーリー61の2つのペアの間に環状のスペーサ69を挿入する必要がある。
【0034】
このような鋼板プーリーのセットにより、ベルト駆動装置のための多様なプーリーを製造することができる。その結果、ベルト駆動装置のためのプーリーの製造を相当に単純化することができる。
【0035】
プーリーを鋼板から製造することにより、鋳造作業による製造と比較して、材料使用量の大幅な低減と、更には製造の単純化及びコスト低減などの利点が実現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板から形成されたプーリー本体を有する、ベルト駆動装置のプーリーであって、
前記プーリー本体は、
前記プーリーの中心領域を形成する、前記プーリーを駆動シャフトに接続するためのハブと、
前記プーリーの外周を形成する、駆動ベルトを係合するための環状のベルト面と、を備え、
前記環状のベルト面は、前記鋼板の外周を縁部に沿って分割することにより形成された前記プーリー本体の分割縁部によって形成されるプーリー。
【請求項2】
前記分割縁部は環状の溝に形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項3】
前記中心領域は、前記駆動シャフトの径方向のフランジに嵌合するように構成された隆起部を有するよう形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項4】
前記隆起部の軸方向における深さは、前記駆動ベルト用の前記ベルト面の幅の略半分である請求項3記載のプーリー。
【請求項5】
前記隆起部の横方向表面に沿って当接状態である2つのプーリーによりベルト駆動装置が形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項6】
軸方向に向けられたボルトによって互いに接続された2つの隣接するプーリーによりベルト駆動装置が形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項7】
前記プーリー本体は、貫通して形成された開口部と、銘刻と、を有し、
前記銘刻は、隣接するプーリーの前記開口部を介して可視状態にある請求項1記載のプーリー。
【請求項8】
索道システムにおいて、減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するように構成された請求項1記載のプーリー。
【請求項9】
索道システムにおけるベルト駆動装置を製造するためのプーリーのセットであって、
それぞれ請求項1記載の鋼板プーリーを複数有し、
前記プーリーは互いに異なる直径を有するとともに、任意選択的に相互接続されるよう構成される、プーリーのセット。
【請求項1】
鋼板から形成されたプーリー本体を有する、ベルト駆動装置のプーリーであって、
前記プーリー本体は、
前記プーリーの中心領域を形成する、前記プーリーを駆動シャフトに接続するためのハブと、
前記プーリーの外周を形成する、駆動ベルトを係合するための環状のベルト面と、を備え、
前記環状のベルト面は、前記鋼板の外周を縁部に沿って分割することにより形成された前記プーリー本体の分割縁部によって形成されるプーリー。
【請求項2】
前記分割縁部は環状の溝に形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項3】
前記中心領域は、前記駆動シャフトの径方向のフランジに嵌合するように構成された隆起部を有するよう形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項4】
前記隆起部の軸方向における深さは、前記駆動ベルト用の前記ベルト面の幅の略半分である請求項3記載のプーリー。
【請求項5】
前記隆起部の横方向表面に沿って当接状態である2つのプーリーによりベルト駆動装置が形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項6】
軸方向に向けられたボルトによって互いに接続された2つの隣接するプーリーによりベルト駆動装置が形成される請求項1記載のプーリー。
【請求項7】
前記プーリー本体は、貫通して形成された開口部と、銘刻と、を有し、
前記銘刻は、隣接するプーリーの前記開口部を介して可視状態にある請求項1記載のプーリー。
【請求項8】
索道システムにおいて、減速ホイール、運搬ホイール、及び加速ホイールを駆動するように構成された請求項1記載のプーリー。
【請求項9】
索道システムにおけるベルト駆動装置を製造するためのプーリーのセットであって、
それぞれ請求項1記載の鋼板プーリーを複数有し、
前記プーリーは互いに異なる直径を有するとともに、任意選択的に相互接続されるよう構成される、プーリーのセット。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【公開番号】特開2010−175072(P2010−175072A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−259916(P2009−259916)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(500579431)インノヴァ・パテント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259916(P2009−259916)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(500579431)インノヴァ・パテント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (31)
【Fターム(参考)】
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