説明

索道装置

【課題】作業効率および汎用性を向上することができる索道装置を提供する。
【解決手段】索道装置10は、移動体28と、移動体28を第1方向X1に牽引する第1索30と、移動体28を第1方向X1とは反対の第2方向X2に牽引する第2索32と、第1索30を巻き取る第1ドラム80と第1ドラム80に回転力を付与する第1モータ82とを有する第1駆動部62と、第2索32を巻き取る第2ドラム90と第2ドラム90に回転力を付与する第2モータ92とを有する第2駆動部66と、第1駆動部62を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる第1発電部64と、第2駆動部66を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる第2発電部68と、第1発電部64および第2発電部68で発生した電気エネルギーを蓄電する二次電池とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に往復移動可能に設けられた移動体と、移動体を牽引する索とを備え、移動体で搬送対象物を吊り下げて運搬する、索道装置に関する。
【背景技術】
【0002】
林業の分野では、山林で伐倒した木材を集材拠点に集材するために、索道装置が一般に使用されており、特許文献1の図3には、従来の索道装置の一例が記載されている。この索道装置は、搬器(7)に接続された横行索(19)を横行用巻胴(17)で巻き取ることによって搬器(7)を第1方向に牽引するとともに、搬器(7)に接続された巻上索(20)を巻上用巻胴(18)で巻き取ることによって搬器(7)を第1方向とは反対の第2方向に牽引するように構成されている。
【0003】
ところで、従来、林業用の索道装置を駆動する駆動装置には、ディーゼルエンジン等の内燃機関が一般に使用されており、特許文献1に記載された索道装置においても、横行用巻胴(17)および巻上用巻胴(18)は、内燃機関で駆動されると考えられる。しかし、内燃機関では、(a)NO(窒素酸化物),PM(粒子状物質),CO(二酸化炭素)の排出が多い。(b)低速時や加速時の効率が悪いために作業効率の向上が困難である。(c)常時駆動しておく必要があるためにエネルギー効率が低い。(d)騒音が大きいために作業環境が悪い。といった様々な課題があった。
【0004】
このような課題を解決する手段として、特許文献2には、電動機(50)を用いた索道装置が記載されている。この索道装置は、移動体(20)に接続されたループ状の牽引ワイヤー(30)を電動機(50)で回動させることによって移動体(20)を斜面上方に向けて牽引するとともに、移動体(20)が自重により降下するときの運動エネルギーを回生制動によって電気エネルギーとして回収するように構成されている。
【0005】
なお、上記括弧内数字は、特許文献1,2のそれぞれに記載された参照番号に対応している。以下、同じ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3018708号(図3)
【特許文献2】特開2006−15962号(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された索道装置では、電動機(50)を用いているため、内燃機関を用いる場合の上記課題(a)〜(d)を或る程度解消できると考えられる。しかし、この索道装置では、移動体(20)が自重により降下するときにしか回生制動による発電ができないので、搬送対象物(木材等)を低所から高所に向けて搬送するときや、水平方向に向けて搬送するときには、運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができず、電池残量が急速に低下するおそれがあった。
【0008】
そのため、この索道装置を長時間にわたって稼動させるためには、他の電力源(商用電源等)を用いて電池を頻繁に充電しなければならず、作業効率が低いという課題があった。また、他の電力源を確保できない環境では、事実上、使用することができないため、汎用性が低いという課題もあった。特に、林業の分野では、送電線が配設されていない山林中での作業になるため、この索道装置を一般的に使用することは極めて困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、作業効率を向上することができるとともに、汎用性を向上することができる、索道装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る索道装置は、空中に往復移動可能に設けられた移動体と、前記移動体を第1方向に牽引する第1索と、前記移動体を前記第1方向とは反対の第2方向に牽引する第2索と、前記第1索を巻き取る第1ドラムと前記第1ドラムに回転力を付与する第1モータとを有する第1駆動部と、前記第2索を巻き取る第2ドラムと前記第2ドラムに回転力を付与する第2モータとを有する第2駆動部と、前記第1駆動部を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる第1発電部と、前記第2駆動部を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる第2発電部と、前記第1発電部および前記第2発電部で発生した電気エネルギーを蓄電する二次電池とを備える。
【0011】
第1駆動部の第1ドラムで第1索を巻き取ることによって移動体を第1方向に牽引すると、第2駆動部の第2ドラムから第2索が引き出される。このとき、第2発電部によって第2駆動部を制動する制動力を発生させることができるので、第2索に張力を与えて、第2索の弛みを防止することができる。また、第2発電部によって電気エネルギーを発生させて、これを二次電池に蓄電することができる。
【0012】
一方、第2駆動部の第2ドラムで第2索を巻き取ることによって移動体を第2方向に牽引すると、第1駆動部の第1ドラムから第1索が引き出される。このとき、第1発電部によって第1駆動部を制動する制動力を発生させることができるので、第1索に張力を与えて、第1索の弛みを防止することができる。また、第1発電部によって電気エネルギーを発生させて、これを二次電池に蓄電することができる。
【0013】
したがって、移動体を高所から低所に向けて移動させる場合は勿論、低所から高所に向けて移動させる場合や、水平方向に向けて移動させる場合にも、運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
【0014】
前記第2索の張力を検出する張力検出部と、前記張力が設定値となるように前記第1発電部または前記第2発電部を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0015】
この構成では、第2索の張力を一定に保持することが可能であり、少なくとも第2索の弛みを確実に防止することができる。
【0016】
前記第1発電部は前記第1モータに対して一体的に組み込まれており、前記第2発電部は前記第2モータに対して一体的に組み込まれていてもよい。
【0017】
この構成では、第1発電部および第2発電部のそれぞれが、第1モータおよび第2モータに対して一体的に組み込まれているので、装置を小型化することができる。
【0018】
少なくとも前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御装置と、前記制御装置に対して各種のデータを無線通信により入力する無線入力装置とを備えていてもよい。
【0019】
この構成では、索道装置を遠隔操作することができるので、オペレータの行動範囲を広げて、作業効率をより向上することができる。
【0020】
内燃機関で駆動される発電装置を有する車両装置を備え、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第1発電部、前記第2発電部および前記二次電池は、前記車両装置に搭載されており、前記発電装置は、前記二次電池に充電可能なように構成されていてもよい。
【0021】
この構成は、車両装置が一般に備える発電装置を用いて二次電池を充電できるようにしたものである。
【0022】
前記第1索は、空中に架け渡された主索部と、前記主索部の一方端部で折り返された折返し部とを有しており、前記移動体は前記主索部に往復移動可能に取り付けられており、前記折返し部が前記移動体に固定されていてもよい。
【0023】
空中に移動体を往復移動可能に設けるためには、当該移動体を空中で支持する支持手段が必要であるが、この構成では、第1索の一部である「主索部」が支持手段となっている。
【0024】
前記第1索および前記第2索とは独立して空中に架け渡された主索を備えており、前記移動体は前記主索に往復移動可能に取り付けられていてもよい。
【0025】
この構成では、第1索および第2索とは独立した「主索」が移動体を支持する支持手段となっている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上記構成により、作業効率を向上することができるとともに、汎用性を向上することができ、林業の分野においても広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、第1実施形態に係る索道装置の構成を示す概念図である。
【図2】図2は、架設ユニットの要部の構成を示す拡大図である。
【図3】図3は、駆動ユニットおよび車両装置の構成を示す正面図である。
【図4】図4は、駆動ユニットの主要部の構成を示す正面図である。
【図5】図5は、駆動ユニットの主要部の構成を示す平面図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る索道装置を用いた搬送方法を示す工程図であり、(A)は、移動体を第1索に沿って高所から低所に向けて搬送する工程を示す図、(B)は、搬送対象物に向けて第2索の一方端部を引き出す工程を示す図、(C)は、搬送対象物を移動体に吊下げる工程を示す図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係る索道装置を用いた搬送方法を示す工程図であり、(D)は、移動体を第1索に沿って低所から高所に向けて搬送する工程を示す図、(E)は、搬送対象物を降ろす工程を示す図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係る索道装置の構成を示す概念図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係る索道装置の構成を示す概念図である。
【図10】図10は、第4実施形態に係る索道装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る索道装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を、林業で用いる「集材システム」に適用しているが、本発明は、建築現場、土木作業現場および工場等において資材等を搬送する「搬送システム」にも適用可能である。
【0029】
(第1実施形態)
[索道装置の全体構成]
図1は、第1実施形態に係る索道装置10の構成を示す概念図である。
【0030】
図1に示すように、索道装置10は、山林A中で伐倒した「搬送対象物」としての木材Wを、木材Wが位置する地点よりも高所に位置する集材拠点Bに集材する「集材システム」を構成するものであり、架設ユニット12と、架設ユニット12を駆動する駆動ユニット14と、駆動ユニット14を搭載する車両装置16とを備えている。
【0031】
[架設ユニットの構成]
図2は、架設ユニット12の要部の構成を示す拡大図である。
【0032】
図1に示すように、架設ユニット12は、互いに間隔を隔てて立設された第1支柱18および第2支柱20と、第1支柱18に対して上下2段に取り付けられた第1滑車22および第2滑車24と、第2支柱20に対して取り付けられた第3滑車26と、第1支柱18と第2支柱20との間の空中に往復移動可能に設けられた移動体28と、第1滑車22と第3滑車26との間に架け渡され、移動体28を移動可能に支持する第1索30と、第2滑車24に掛けられ、移動体28を牽引する第2索32とを有している。
【0033】
第1支柱18は、第1滑車22および第2滑車24と、これらに掛けられた第1索30および第2索32とを所定の高さで支持する棒状部材であり、集材拠点Bまたはその近傍に立設されている。第2支柱20は、第3滑車26と、これに掛けられた第1索30とを所定の高さで支持する棒状部材であり、第1支柱18が位置する地点よりも低所に立設されている。第1支柱18および第2支柱20の長さや、滑車22,24,26の取付位置は、山林Aの「地形」や、木材Wの「長さ」や、木材Wの「吊下げ態様」等に応じて適宜設計されており、本実施形態では、木材Wを起伏のある地面Gから完全に離間した状態で吊り下げることができるように設計されている。
【0034】
なお、木材Wの「吊下げ態様」としては、木材Wをその一端が地面Gに接触した状態で吊り下げる態様が採用されてもよく、この場合には、第1支柱18および第2支柱20の長さがより短く設計されてもよいし、滑車22,24,26の取付位置がより低く設計されてもよい。
【0035】
図2に示すように、移動体28は、板状またはブロック状の本体36を有しており、本体36に対して、2個の走行ローラ38a,38bと、案内ローラ40と、第1把持装置42と、第2把持装置44とが取り付けられている。
【0036】
走行ローラ38a,38bは、第1索30に沿って走行する「車輪」となる部材であり、走行ローラ38a,38bが、第1索30における第1滑車22と第3滑車26との間に架け渡された部分(以下、「主索部」という。)30aに掛けられている。そして、第1索30における第3滑車26で折り返された部分(以下、「折返し部」という。)30bが本体36における幅方向(すなわち走行方向)の一方端部に固定されている。案内ローラ40は、第2索32を引き出したり巻き上げたりする際の「ガイド」となる部材であり、案内ローラ40に掛けられた第2索32の一方端部32aが案内ローラ40から垂れ下がっている。
【0037】
第1把持装置42は、第1索30を走行ローラ38a,38bの間で把持する「把持状態」と、把持状態を解除した「把持解除状態」とを選択にとり得るものであり、第1固定片46と、第1可動片48と、第1固定片46に対して第1可動片48を近接または離間する方向に移動させる第1駆動部50とを有している。
【0038】
第1駆動部50は、無線入力装置52から与えられた「第1把持信号」または「第1解除信号」を受信するとともに、これらの信号に基づいて第1可動片48を駆動するものであり、「第1把持信号」が与えられたときには、第1可動片48を第1固定片46に近接する方向に移動させ、「第1解除信号」が与えられたときには、第1可動片48を第1固定片46から離間する方向に移動させるように構成されている。したがって、「第1把持信号」が与えられたときには、第1固定片46と第1可動片48とで第1索30が把持された状態(把持状態)となり、第1索30に対して移動体28が固定される。一方、「第1解除信号」が与えられたときには、第1固定片46および第1可動片48の把持状態が解除された状態(把持解除状態)となり、第1索30に対する移動体28の移動が許容される。
【0039】
第2把持装置44は、第2索32を案内ローラ40の近傍で把持する「把持状態」と、把持状態を解除した「把持解除状態」とを選択にとり得るものであり、第2固定片56と、第2可動片58と、第2固定片56に対して第2可動片58を近接または離間する方向に移動させる第2駆動部60とを有している。
【0040】
第2駆動部60は、無線入力装置52から与えられた「第2把持信号」または「第2解除信号」を受信するとともに、これらの信号に基づいて第2可動片58を駆動するものであり、「第2把持信号」が与えられたときには、第2可動片58を第2固定片56に近接する方向に移動させ、「第2解除信号」が与えられたときには、第2可動片58を第2固定片56から離間する方向に移動させるように構成されている。したがって、「第2把持信号」が与えられたときには、第2固定片56と第2可動片58とで第2索32が把持された状態(把持状態)となり、第2索32の引出し長さ(すなわち垂れ下がった部分の長さ)が固定される。一方、「第2解除信号」が与えられたときには、第2固定片56および第2可動片58の把持状態が解除された状態(把持解除状態)となり、第2索32の引出し長さの変動が許容される。
【0041】
なお、本実施形態では、第1可動片48を第1固定片46の下方に配置するとともに、第2可動片58を第2固定片56の下方に配置しているが、第1可動片48を第1固定片46の上方に配置してもよいし、第2可動片58を第2固定片56の上方に配置してもよい。また、第1固定片46に対して第1可動片48を水平方向に並べて配置してもよいし、第2固定片56に対して第2可動片58を水平方向に並べて配置してもよい。さらに、第1固定片46を第1可動片48に対して近接または離間する方向に移動可能な可動片(図示省略)に変更してもよいし、第2固定片56を第2可動片58に対して近接または離間する方向に移動可能な可動片(図示省略)に変更してもよい。
【0042】
第1索30は、移動体28を移動可能に支持する主索部30aと、移動体28に固定された折返し部30bとを有しており、第1索30における折返し部30bとは反対側の端部が第1ドラム80に固定されている。一方、第2索32は、第1索30の主索部30aと平行に延びて配置されており、第2索32の一方端部32aが案内ローラ40から垂れ下がっており、第2索32の他方端部が第2ドラム90に固定されている。したがって、図1に示すように、第1ドラム80によって第1索30を巻き取ると、その折返し部30bは、高所から低所に向かう第1方向X1に移動され、これにより移動体28が第1方向X1に牽引される。一方、第2把持装置44を「把持状態」にした後、第2ドラム90によって第2索32を巻き取ると、その一方端部32aは、第1方向X1とは反対の第2方向X2に移動され、これにより移動体28が第2方向X2に牽引される。
【0043】
[駆動ユニットの構成]
図3は、索道装置10に含まれる駆動ユニット14および車両装置16の構成を示す正面図であり、図4は、駆動ユニット14の主要部の構成を示す正面図であり、図5は、駆動ユニット14の主要部の構成を示す平面図である。
【0044】
図3に示すように、駆動ユニット14は、第1駆動部62と、第1発電部64と、第2駆動部66と、第2発電部68と、張力検出部70と、電池72と、制御装置74と、操作盤76と、受信アンテナ78と、無線入力装置52とを有している。
【0045】
図4および図5に示すように、第1駆動部62は、第1索30を巻き取る第1ドラム80と、回転力を発生させる第1モータ82と、第1モータ82の回転力を減速して第1ドラム80に与える第1減速機84と、第1モータ82および第1減速機84の少なくとも一方を制動する第1電磁ブレーキ86と、第1ドラム80を制動する手動ブレーキ88(図5)とを有している。そして、第1モータ82に対して、第1発電部64が取り付けられている。
【0046】
第1発電部64は、第1駆動部62を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる装置であり、本実施形態では、第1発電部64が第1モータ82に対して一体的に組み込まれており、第1モータ82に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるように構成されている。
【0047】
なお、第1発電部64は、第1駆動部62に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるものであればよく、たとえば、第1減速機84に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるように構成されてもよいし、第1ドラム80に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるように構成されてもよい。モータに対する制動力を電気エネルギーとして取り出す装置は「回生制動装置」として知られている。
【0048】
図4および図5に示すように、第2駆動部66は、第2索32を巻き取る第2ドラム90と、回転力を発生させる第2モータ92と、第2モータ92の回転力を減速して第2ドラム90に与える第2減速機94と、第2モータ92および第2減速機94の少なくとも一方を制動する第2電磁ブレーキ96と、第2ドラム90を制動する手動ブレーキ98(図5)と、第2ドラム90の回転軸90aに取り付けられたエンドレスドラム100(図5)とを有している。そして、第2モータ92に対して、第2発電部68が取り付けられている。
【0049】
第2発電部68は、第2駆動部66を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる装置であり、本実施形態では、第2発電部68が第2モータ92に対して一体的に組み込まれており、第2モータ92に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるように構成されている。
【0050】
なお、第2発電部68は、第2駆動部66に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるものであればよく、たとえば、第2減速機94に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるように構成されてもよいし、第2ドラム90に対する制動力を電気エネルギーとして取り出せるように構成されてもよい。
【0051】
図4および図5に示すように、張力検出部70は、第2索32の張力を検出するものであり、第2索32に対して同じ方向から当接される2本の固定ローラ102a,102bと、2本の固定ローラ102a,102bの間に配置され、第2索32に対して固定ローラ102a,102bとは反対の方向から移動可能に当接される可動ローラ104と、可動ローラ104に連結棒106を介して取り付けられ、第2索32の張力を可動ローラ104の変位量として検出する張力センサ108とを有している。
【0052】
図3に示すように、電池72は、第1発電部64および第2発電部68で発電された電力を、第1モータ82および第2モータ92で使用するために蓄電する「二次電池」である。このような「二次電池」としては、特に限定されるものではなく、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池および鉛電池等を適宜選択して用いることができる。
【0053】
図3に示すように、制御装置74は、索道装置10の運転に関する各種の制御を実行するものであり、図示していないが、各種の演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶装置(ROM、RAM)と、第1発電部64および第2発電部68で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、電池72に蓄電された直流電力を交流電力に変換するインバータとを有している。そして、第1モータ82、第1電磁ブレーキ86、第1発電部64、第2モータ92、第2電磁ブレーキ96、第2発電部68、張力センサ108、電池72、操作盤76および受信アンテナ78等が、電気配線を介して制御装置74に接続されており、これらの機器から与えられたデータに基づいて、各種の制御が実行される。
【0054】
操作盤76は、制御装置74に対して各種のデータを入力する第1の入力装置であり、無線入力装置52は、制御装置74に対して各種のデータを無線通信により入力する第2の入力装置であり、無線入力装置52から送信された各種のデータが、受信アンテナ78で受信されて制御装置74に与えられる。したがって、オペレータMは、操作盤76を操作することによって、或いは、無線入力装置52を操作することによって、索道装置10を運転することができる。
【0055】
[車両装置の構成]
図3に示すように、車両装置16は、荷室110を有する自動四輪車であり、荷室110の内部には、駆動ユニット14、温度調節装置(すなわちエアコン)112およびオペレータMが座る椅子(図示省略)等が配設されている。したがって、荷室110の内部温度を、オペレータMが作業をするのに適した温度に調整することが可能であり、駆動ユニット14の動力源(第1モータ82、第2モータ92)が低騒音であることと相俟って、快適な作業環境を得ることができる。
【0056】
また、車両装置16は、内燃機関(エンジン)114によって駆動される発電装置116と、発電装置116で発電された電力を蓄電する電池118とを有している。発電装置116は、駆動ユニット14の電池72に充電可能なように構成されており、電池118は、駆動ユニット14の第1モータ82および第2モータ92に給電可能なように構成されている。したがって、発電装置116で発電された電力で電池72の残量を常に一定レベル以上に保持することができる。また、万一、電池72の残量が無くなった場合でも、電池118によって駆動ユニット14を動作させることができる。
【0057】
[索道装置の動作]
図6および図7は、第1実施形態に係る索道装置10(図1)を用いた木材Wの搬送方法を示す工程図であり、図6(A)は、移動体28を第1索30に沿って高所から低所に向けて搬送する工程を示す図、図6(B)は、木材Wに向けて第2索32の一方端部32aを引き出す工程を示す図、図6(C)は、木材Wを移動体28に吊下げる工程を示す図である。また、図7(D)は、移動体28を第1索30に沿って低所から高所に向けて搬送する工程を示す図、図7(E)は、木材Wを降ろす工程を示す図である。
【0058】
以下には、オペレータMが操作盤76または無線入力装置52を操作したときに、制御装置74によって実行される索道装置10の動作について説明する。
【0059】
図6(A)に示すように、移動体28を集材拠点Bから低所に位置する木材Wの近傍に移動させる際には、まず、第2把持装置44を「把持状態」にして第2索32に対して移動体28を固定するとともに、第2電磁ブレーキ96(図3)を作動させて第2ドラム90からの第2索32の繰り出しを禁止する。また、第1把持装置42を「把持解除状態」にして第1索30に対する移動体28の移動を許容する。そして、第1モータ82(図3)を駆動して第1ドラム80で第1索30を巻き取っていく。
【0060】
すると、第1索30で移動体28が第1方向X1に引かれることによって、移動体28に固定された第2索32に張力が発生し、張力検出部70(図3)で検出された張力が設定値に達すると、制御装置74(図3)によって第2電磁ブレーキ96による制動が解除され、第2ドラム90が回転されて第2索32が繰り出される。これにより、移動体28が第1索30に牽引されて第1方向X1に移動される。
【0061】
この移動の際には、第2発電部68(図3)による回生制動によって第2索32の張力が設定値に維持されるとともに、運動エネルギー(制動エネルギー)が電気エネルギーに変換されて電池72に蓄電される。第2発電部68による回生制動によっても、張力が設定値に達しない場合には、張力検出部70(図3)からの出力に基づいて、制御装置74によって第2電磁ブレーキ96が作動され、第2索32の張力が設定値に維持される。
【0062】
移動体28が「搬送対象物」たる木材Wの近傍に到達すると、第1モータ82(図3)を停止させるとともに、第2索32の張力を設定値に維持しながら第2電磁ブレーキ96(図3)を作動させて、第2ドラム90からの第2索32の繰り出しを禁止する。また、第1電磁ブレーキ86(図3)を作動させて、第1ドラム80からの第1索30の繰り出しを禁止する。
【0063】
図6(B)に示すように、木材Wに向けて第2索32の一方端部32aを引き出す際には、まず、第1把持装置42を「把持状態」にすることによって、第1索30に対して移動体28を固定するとともに、第2把持装置44を「把持解除状態」にすることによって、第2索32の一方端部32aの引き出しを可能にする。そして、オペレータMまたは他の作業者が第2索32の一方端部32aを手で持って、これを木材Wに向けて引っ張っていく。
【0064】
すると、第2索32には、その引張力に応じた張力が発生し、その張力が設定値に達すると、制御装置74(図3)によって第2電磁ブレーキ96による制動が解除され、第2ドラム90が回転されて第2索32が繰り出される。これにより、第2索32の一方端部32aが木材Wに向けて引き出される。この引き出しの際には、第2発電部68による回生制動によって第2索32の張力が設定値に維持されるとともに、運動エネルギー(制動エネルギー)が電気エネルギーに変換されて電池72に蓄電される。
【0065】
なお、この工程では、第2索32の一方端部32aの引き出しを容易にするために、張力の設定値を下げるようにしてもよいし、第2発電部68による回生制動を解除するようにしてもよい。また、第2モータ92(図3)を駆動して第2ドラム90から第2索32を繰り出すようにしてもよい。
【0066】
図6(C)に示すように、木材Wを移動体28に吊下げる際には、第1把持装置42の「把持状態」と、第2把持装置44の「把持解除状態」と、第1電磁ブレーキ86の「制動状態」とを維持しつつ、第2モータ92(図3)を駆動して第2ドラム90で第2索32を巻き取っていく。すると、第2索32の一方端部32aが移動体28に向けて移動され、一方端部32aに固定された木材Wが移動体28に吊下げられる。
【0067】
図7(D)に示すように、移動体28を第1索30に沿って低所から集材拠点Bに移動させる際には、まず、第2把持装置44を「把持状態」にして第2索32に対して移動体28を固定する。そして、第2モータ92(図3)を駆動して第2ドラム90で第2索32を巻き取っていく。すると、第2索32で移動体28が第2方向X2に引かれることによって、第1索30および第2索32に張力が発生し、張力検出部70(図3)で検出された張力が設定値に達すると、制御装置74(図3)によって第1電磁ブレーキ86による制動が解除され、第1ドラム80が回転されて第1索30が繰り出される。これにより、移動体28が第2索32に牽引されて第2方向X2に移動される。
【0068】
この移動の際には、第1発電部64(図3)による回生制動によって第1索30および第2索32の張力が設定値に維持されるとともに、運動エネルギー(制動エネルギー)が電気エネルギーに変換されて電池72に蓄電される。第1発電部64による回生制動によっても、張力が設定値に達しない場合には、張力検出部70(図3)からの出力に基づいて、制御装置74によって第1電磁ブレーキ86が作動され、第1索30および第2索32の張力が設定値に維持される。
【0069】
移動体28が集材拠点Bに到達すると、第2モータ92を停止させるとともに、第1索30および第2索32の張力を設定値に維持しながら第1電磁ブレーキ86を作動させて、第1ドラム80からの第1索30の繰り出しを禁止する。
【0070】
図7(E)に示すように、集材拠点Bで木材Wを降ろす際には、まず、第1把持装置42を「把持状態」にすることによって、第1索30に対して移動体28を固定するとともに、第2把持装置44を「把持解除状態」にすることによって、第2索32の一方端部32aの引き出しを可能にする。そして、第2電磁ブレーキ96による制動を解除するとともに、第2発電部68による回生制動を実行しながら、木材Wをその自重により地面Gに降ろす。
【0071】
本実施形態によれば、移動体28を高所から低所に向けて搬送する工程(図6(A))だけでなく、低所から高所に向けて搬送する工程(図7(D))、第2索32を引き出す工程(図6(B))、および木材Wを降ろす工程(図7(E))においても、電気エネルギーを回収することができる。したがって、電池72の残量が急速に低下するのを防止することができ、長時間にわたって稼動させるときの作業効率を飛躍的に向上することができる。また、他の電力源を確保できない環境においても、長時間にわたって連続的に稼動させることができるので、汎用性を向上することができ、林業においても広く用いることができる。さらに、張力検出部70等によって第1索30および第2索32の張力を設定値に維持するようにしているので、第1索30および第2索32の弛みを防止することができる。
【0072】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る索道装置120の構成を示す概念図である。
【0073】
図8に示すように、第2実施形態に係る索道装置120では、第1支柱18が、集材拠点Bまたはその近傍に立設されるとともに、第2支柱20が、第1支柱18が位置する地点よりも高所に立設されている。そして、木材Wを集材拠点Bに搬送する際には、移動体28および木材Wが、これらの重量を利用して搬送されるようになっている。
【0074】
この索道装置120においても、移動体28を高所から低所に向けて搬送する工程(図8)、低所から高所に向けて搬送する工程、第2索32を引き出す工程、および木材Wを降ろす工程において、電気エネルギーを回収することができるので、作業効率および汎用性を向上することができる。
【0075】
(その他の実施形態)
図9に示すように、第3実施形態に係る索道装置130は、第1支柱18と第2支柱20との間に架け渡された主索132を、第1索30および第2索32とは独立して備えており、この主索132に対して移動体28の走行ローラ38a,38bが掛けられている。そして、第1把持装置42で主索132を把持できるように構成されている。
【0076】
図10に示すように、第4実施形態に係る索道装置140は、第1支柱18と第2支柱20との間に架け渡された主索142を、第1索30および第2索32とは独立して備えており、この主索142に対して移動体28の走行ローラ38a,38bが掛けられている。そして、第1駆動部62と第1発電部64とが、第2支柱20の近傍に配置されており、第2駆動部66と第2発電部68とが、第1支柱18の近傍に配置されている。
【0077】
これらの索道装置130,140においても、第1駆動部62、第1発電部64、第2駆動部66および第2発電部68の基本的な動作は、第1実施形態に係る索道装置10(図1)と同様であり、したがって、上記と同様に作業効率および汎用性を向上することができる。
【符号の説明】
【0078】
A… 山林
B… 集材拠点
G… 地面
M… オペレータ
W… 木材
10… 索道装置
12… 架設ユニット
14… 駆動ユニット
16… 車両装置
18… 第1支柱
20… 第2支柱
22… 第1滑車
24… 第2滑車
26… 第3滑車
28… 移動体
30… 第1索
32… 第2索
36… 本体
38a,38b… 走行ローラ
40… 案内ローラ
42… 第1把持装置
44… 第2把持装置
52… 無線入力装置
62… 第1駆動部
64… 第1発電部
66… 第2駆動部
68… 第2発電部
70… 張力検出部
72… 電池(二次電池)
74… 制御装置
76… 操作盤
78… 受信アンテナ
80… 第1ドラム
82… 第1モータ
84… 第1減速機
86… 第1電磁ブレーキ
90… 第2ドラム
92… 第2モータ
94… 第2減速機
96… 第2電磁ブレーキ
100… エンドレスドラム
114… 内燃機関
132,142… 主索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に往復移動可能に設けられた移動体と、
前記移動体を第1方向に牽引する第1索と、
前記移動体を前記第1方向とは反対の第2方向に牽引する第2索と、
前記第1索を巻き取る第1ドラムと前記第1ドラムに回転力を付与する第1モータとを有する第1駆動部と、
前記第2索を巻き取る第2ドラムと前記第2ドラムに回転力を付与する第2モータとを有する第2駆動部と、
前記第1駆動部を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる第1発電部と、
前記第2駆動部を制動する制動力を発生させるとともに、その制動力を利用して電気エネルギーを発生させる第2発電部と、
前記第1発電部および前記第2発電部で発生した電気エネルギーを蓄電する二次電池とを備える、索道装置。
【請求項2】
前記第2索の張力を検出する張力検出部と、
前記張力が設定値となるように前記第1発電部または前記第2発電部を制御する制御装置とを備える、請求項1に記載の索道装置。
【請求項3】
前記第1発電部は前記第1モータに対して一体的に組み込まれており、
前記第2発電部は前記第2モータに対して一体的に組み込まれている、請求項1または2に記載の索道装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御装置と、
前記制御装置に対して各種のデータを無線通信により入力する無線入力装置とを備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の索道装置。
【請求項5】
内燃機関で駆動される発電装置を有する車両装置を備え、
前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第1発電部、前記第2発電部および前記二次電池は、前記車両装置に搭載されており、
前記発電装置は、前記二次電池に充電可能なように構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の索道装置。
【請求項6】
前記第1索は、空中に架け渡された主索部と、前記主索部の一方端部で折り返された折返し部とを有しており、
前記移動体は前記主索部に往復移動可能に取り付けられており、
前記折返し部が前記移動体に固定されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の索道装置。
【請求項7】
前記第1索および前記第2索とは独立して空中に架け渡された主索を備えており、
前記移動体は前記主索に往復移動可能に取り付けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の索道装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−219226(P2011−219226A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90450(P2010−90450)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(505398974)株式会社先端技術研究所 (2)
【出願人】(596060631)株式会社フレイン (1)