説明

紫外域にピーク発光を示すX線増感紙

【構成】 本発明の増感紙は、支持体、及びX線を吸収することができ、そして320〜380nmの範囲にピーク強度を有する電磁放射線を発することができ、正方晶系灰重石(scheelite)構造のチタン非含有結晶からなる燐光体を含有する蛍光層を含んでなる増感紙であって、前記燐光体が、酸素及び関係式:(Hf1-z Zrz 1+x Ge1-x前記式中、xは0.15〜−0.10であり、zは少くとも4×10-4〜0.5未満の範囲内である、を満す金属から実質的になることを特徴とするものである。
【効果】 本発明によれば、320〜380nmのスペクトル範囲にピーク強度を有する電磁放射線を発することができるX線増感紙が得られる。このスペクトル範囲は、ハロゲン化銀が高い固有感度を有するスペクトル範囲であり、また増感紙を構成するのに通常用いられる有機材料が低レベルの吸収を示すスペクトル範囲である点で最適である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なX線増感紙に関する。更に詳細には、本発明はX線の画像パターンを吸収し、そしてハロゲン化銀放射線写真要素の画像様露光用に、より長波長の電磁放射線の対応パターンを発するのに用いられるタイプの蛍光板に関する。
【0002】
【従来の技術】以下は関連する従来技術である:Research Disclosure,184巻、1979年8月、Item 18431、特に第IX節及び第XI節。Research Disclosure は、Kenneth Mason Publications, Ltd.Emsworth, Hampshire PO10 7DD, Englandが発行したものである。
【0003】James の Theory of the Photographic Process 、第4版、Macmillan, New York,1977、第1.16図、39頁は、波長の関数としての、代表的な写真有用ハロゲン化銀の相対吸収を示している。
【0004】Kroger等の米国特許第2,542,336号。L.H.Brixnerの "Structure and Luminescent Properties of theLn2Hf2O7-type Rare Earth Hafnates", Mat. Res. Bull. 第19巻、143〜149頁、1984年。Bryan等の米国特許第4,988,880号。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】X線増感紙は可視光線を発する。放射線写真要素のハロゲン化銀乳剤層を、可視光線に応答するように形成することができるが、しかしこのようにすると画像形成システムが複雑になる。
【0006】本発明の目的は、ハロゲン化銀は高レベルの固有感度を示すが、増感紙及びハロゲン化銀放射線写真要素に含まれる有機バインダー及びビヒクルは比較的透明であるような電磁放射線の紫外線領域内にピーク発光強度を有するX線増感紙を提供することである。
【0007】本発明の他の目的は、画像鮮鋭度を向上させる程度まで、放射線写真要素のハロゲン化銀乳剤層単位により吸収される可能性がある波長の電磁放射線を発するX線増感紙を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】一態様において、本発明は、支持体、及びX線を吸収することができ、そして主としてハロゲン化銀が固有感度を示すスペクトル範囲の電磁放射線を発光することができる燐光体を含有する蛍光層からなる増感紙に向けられている。この増感紙は、X線を吸収することができ、そして320〜380nmの範囲にピーク強度を有する電磁放射線を発することができ、正方晶系灰重石構造のチタン非含有結晶からなる燐光体に特徴があり、前記燐光体が、酸素及び関係式:(Hf1-z Zrz 1+x Ge1-x
【0009】前記式中、xは0.15〜−0.10であり、zは少くとも4×10-4〜0.5未満の範囲内である、を満す金属から実質的になることを特徴とする。
【0010】族及び周期表示についての元素への言及は、すべて米国化学会に採用されている元素周期率表に指定されている表示法に基づいている。
【0011】ヒト組織をX線を用いて検査するための典型的配置を図1に具体的に示す。放射線写真により検査すべき組織1は(この場合、乳房(胸))を露光圧縮装置(exposure and compression arrangement)3と露光グリッド5の間に配置する。グリッドの下に露光記録アセンブリ7を配置する。
【0012】露光圧縮装置は、X線入射窓9(X線発生管の出射窓)及びX線出射窓11(対象物へのX線供給用入射窓)からなり、これらの窓は各々X線に対し実質的に透明である。出射窓は圧縮要素として作用するので、乳房は検査中十分に圧縮された状態に保たれる。X線に対し低透過性の材料で作成されている壁13は、入射窓と接続し、焦点15から発するように図示されている、管又は他の通常の発生源から発するX線域を入射窓と共に限定している。
【0013】入射窓、出射窓及び組織を通ってグリッドまで到達する非散乱X線を実線の矢印17で示す。組織内でX線が物体と衝突すると、一部ではX線が吸収され、一部ではX線の方向を変える。方向が変えられた、すなわち、散乱されたX線は点線矢印19により図示する。
【0014】グリッドには方向制御板(vane)21を配備し、これらの方向制御板はX線に対し比較的非透過性であり、そして非拡散X線に対し並行に配置されている。これらの方向制御板は、ほとんどすべての非拡散X線を妨害することなくグリッド中を通過させることが可能である。僅かに方向変換されたX線もまたグリッド中を通過することができるが、しかし高度に拡散されたX線は、もしそのままでは、画像鮮鋭性が大巾に低下するであろうが、方向制御板が遮ぎりそして偏光する。方向制御板の厚さ及び間隔は理解しやすくするために図1では拡大している。方向制御板の構造及び間隔により露光記録アセンブリに供給されるX線の減衰と画像鮮鋭性間のバランスを望ましいものにすることができる。X線減衰を最少にするためには、グリッドを完全に排除することができるが、鮮鋭性を向上させるためにはグリッドは通常好ましいものである。適切な露光グリッドが知られておりかつ市販されている。
【0015】図2には、露光記録アセンブリを更に詳細に示す。アセンブリの要素を圧縮して密着させるために用いる通常のケースもしくはカセットは図示されていない。アセンブリは3つの別々の要素、すなわち、二重被覆ハロゲン化銀放射線写真要素23、放射線写真要素と露光X線源との間に配置されるよう意図されている前方増感紙25及び後方増感紙27からなる。
【0016】図示したように、二重被覆放射線写真要素は支持体29を含み、支持体には反対側の主面上にそれぞれ被覆された下塗り層31及び33が含まれる。ハロゲン化銀乳剤層35及び37は、それぞれ下塗り層31及び33の上に配置されている。オーバーコート層36及び39は、それぞれ乳剤層35及び37の上に配置されている。
【0017】図示したように、前方増感紙は、基板部41及び介在層部43からなる支持体、蛍光層45並びにオーバーコート層47からなる。同様に、図示した後方増感紙は、基板部49及び介在層部51からなる支持体、蛍光層53並びにオーバーコート層55からなる。カール防止層57及び59は、それぞれ前方増感紙及び後方増感紙の基板部41及び49の主要面で蛍光層とは反対側の面上にある。
【0018】使用に当っては、X線は前方増感紙のカール防止層57及び基板部41を通過し、蛍光層45まで妨害されることなく通過して画像記録アセンブリに入射する。X線の一部は前方増感蛍光層に吸収される。残りのX線はオーバーコート層47及び36を通過する。僅かな部分のX線はハロゲン化銀乳剤層35に吸収され、それにより乳剤層の潜像形成に直接寄与する。しかしながら、乳剤層35により受容されるX線の大部分は、支持体29及びそれに結合した下塗り層31及び33を通過して他方のハロゲン化銀乳剤層37まで達する。再び、僅かな部分のX線が他方のハロゲン化銀乳剤に吸収され、それによりこの乳剤層中の潜像の形成に直接寄与し、そして再び、乳剤層37により受容されるX線の大部分は、オーバーコート層39及び55を通過して後方増感紙の蛍光層53まで達する。後方増感紙蛍光層に達したX線の大部分はこの層で吸収される。
【0019】露光X線は、主として蛍光層45及び53で吸収され、そして蛍光層により紫外(以下UVと称す)電磁放射線として再発光され、この紫外電磁放射線はハロゲン化銀放射線写真要素23により容易に吸収される。前方増感紙蛍光層45により発せられる紫外線放射線は隣接するハロゲン化銀乳剤層35を露光する。後方増感紙の蛍光層53により発せられるUV放射線は隣接ハロゲン化銀乳剤層37を露光する。これらのUV露光が、主にハロゲン化銀乳剤層に形成される潜像の原因となる。
【0020】以上より、蛍光層53より上のすべての層は少くともある程度までX線を透過することができなければならない。ハロゲン化銀乳剤層は幾分かのX線を有効に吸収するが、X線を有効に吸収する他の層は前方増感紙蛍光層のみである。したがって、後方増感紙上に重ねられる支持体及びオーバーコート及び下塗り層は、露光X線に対してほぼ透明であるように選択する。
【0021】前方増感紙の蛍光層とそれに隣接する乳剤層を区切るオーバーコート層36及び47並びに後方増感紙の蛍光層とそれに隣接する乳剤層を区切るオーバーコート層39及び55は、発光紫外線に対して透明であることが好ましいこともまた明らかである。X線及びUV線の両者に対して透明であるので、オーバーコート層36,47,39及び55は画像形成用には必要ではなく(他の理由のために好ましいが)、したがって省略することができる。
【0022】一対の増感紙と共に用いる二重被覆放射線写真要素を図2に示したが、単一の増感紙及び単一のハロゲン化銀乳剤層を含む放射線写真要素を用いて画像を形成できることは明らかである。例えば、前方増感紙25及び支持体29上にある放射線写真要素の層を省略することができる。この簡略化された配置のものは、乳房検査用に現在最も広く用いられている配置である。しかしながら、大部分の胸部検査及び腹部検査では図2に示したような、完全なアセンブリ7を用いている。
【0023】本発明においては、X線を吸収することができ、そしてハロゲン化銀が固有感度を示す範囲の紫外線領域にピーク強度を有する電磁放射線を発光することができる増感紙を配備する。更に、ピーク発光強度が、より長い波長(この波長に対し、フィルム及び増感紙を構成するのに用いる通常の有機バインダー、ポリマー及びビヒクルは実質的に透明である)でおこるようにピーク発光強度を紫外域にする。すなわち、本発明の増感紙はX線の画像様パターンを吸収することができ、そして320〜380nm、好ましくは330〜360nmの近紫外にピーク波長を有する対応する画像パターンを発光することができる。これらの波長範囲では、ハロゲン化銀の固有感度は可視スペクトル内のものよりはるかに高く、その上増感紙及び放射線写真フィルムの通常の有機成分による吸収度は比較的低く、通常は全く無視できる程度である。320〜380のピーク発光波長範囲でのハロゲン化銀の吸収は十分に高いので、放射線写真要素に通常用いられる銀被覆量では、ハロゲン化銀乳剤層単位に供給される紫外線光はほとんど完全に吸収される。したがって、二重被覆要素のクロスオーバー露光は限定され、通常は無視することができるので、紫外線を吸収する目的のために、フィルムに何らかの他の構造を導入することなく鮮鋭像を得ることが可能となる。
【0024】本発明は、X線を吸収することができ、そしてスペクトルの320〜380(好ましくは330〜360)nmの範囲にピーク強度を有する光を発光することができる、蛍光層を有する増感紙を配備することにより可能となった。具体的には、本発明は、高発光効率を示すように、第4族ホスト金属のゲルマニウムに対する比を適切に選択すると、チタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体は、320〜380(好ましくは330〜360)nmの電磁スペクトル範囲内でピーク発光をすることができるという知見に向けられている。発光は、実際、燐光体として、チタン非含有ゲルマニア(GeO2 )を用いて得られるものより長波長であり、燐光体として、第4族(ハフニウム及びジルコニウム)ホスト金属のゲルマニウムに対する比が1.35を超えるチタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネートを用いて得られるものよりハロゲン化銀固有感度の範囲内でより長波長である。換言すれば、第4族ホスト金属のゲルマニウムに対する比を特定範囲に限定したチタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体によれば、所望の320〜380nmのピーク発光スペクトルが得られ、同時に優れた発光強度を示すことが認められ、この事実は全く予期せざることであった。
【0025】320〜380nmの範囲のスペクトルを主として発光することができ、そしてこのスペクトル範囲に増強された発光を示すことができるチタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体は、以下の関係式:(I) (Hf1-z Zrz 1+x Ge1-x前記式中、xは0.15〜−0.10であり、zは4×10-4〜<0.5である、を満すものであるとの知見を全く予期せざることであるが得た。更に、xは最も好ましくは0.1までであり、最適には0.05であり;zは最も好ましくは少くとも1×10-3であり、最適には少くとも2×10-3であり、最も好ましくは0.40までであり、最適には0.30までである。燐光体はチタン非含有正方晶系灰重石結晶の状態で存在する。
【0026】本発明の好ましい態様において、燐光体は実質的にゲルマニウム、ハフニウム、ジルコニウム及び酸素からなる。ハフニウム、ジルコニウム及びゲルマニウムは各々+4酸化状態で燐光体中に存在するので、このために存在するこれらの金属の各原子には2個の酸素原子がある。したがって、本発明の特に好ましい態様では、燐光体の組成は関係式:(II) (Hf1-z Zrz 1+x Ge1-x 4前記式中、x及びzは先に示した値のいずれかであってよい、を満す。燐光体は正方晶系灰重石結晶の状態で存在する。
【0027】前記の本発明によるチタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体は、本発明の組成物要件を満すようにいったん形成されると、任意の他の慣用タイプの増感紙を形成するのに用いることができる。その好ましい構成では、増感紙は支持体を含み、支持体上には微粒子状のチタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体及び燐光体粒子用のバインダーを含有する蛍光層が被覆されている。チタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体は、任意の慣用の粒子サイズ範囲及び分布で蛍光層に用いることができる。鮮鋭性の高い画像は平均粒子サイズがより小さい粒子により得られると一般に理解されている。本発明のチタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体にとって好ましい平均粒子サイズは0.5μm〜40μm、最適には1μm〜20μmの範囲である。
【0028】チタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体粒子は、必要に応じて、他の慣用の燐光体粒子とブレンドして、特定の用途として最適特性を有する増感紙を形成することができることが当然のことながら認められている。1個より多くの燐光体含有層を含む増感紙構造も可能であり、チタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体粒子は1個より多くの燐光体を含有する層に存在する。
【0029】蛍光層は、チタン非含有ハフニウムジルコニウムゲルマネート層に構造上の凝集性を付与するのに十分なバインダーを含有する。蛍光層に用いるバインダーは増感紙に通常用いるものと同じであってよい。このようなバインダーは、X線及び発光放射線に対して透明である有機ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール)のナトリウム oロースルホベンゾアルデヒドアセタール;クロロスルホン化ポリ(エチレン);高分子ビスフェノールポリ(カルボネート)類の混合物及びビスフェノールカルボネート及びポリ(アルキレンオキシド)からなる共重合体;水性エタノール溶解性ナイロン;ポリ(アルキルアクリレート及びメタクリレート)並びにアルキルアクリレート及びメタクリレートのアクリル酸及びメタクリル酸との共重合体;ポリ(ビニルブチラール);並びにポリ(ウレタン)エラストマーである。これら又は他の有用なバインダーは米国特許第2,502,529号;第2,887,379号;第3,617,285号;第3,300,310号;第3,300,311号;及び第3,743,833号並びにResearch Disclosure, 154巻、1977年2月、Item 15444、及び182巻、1979年6月に開示されている。特に好ましい増感紙バインダーはポリ(ウレタン)、例えば:Goodrich Chemical Co. から商標Estaneの下に市販されているもの、ICI Ltd.のPermuthane Division からの商標Permuthane並びにCargillからの商標Cargillの下に市販されているものである。
【0030】蛍光層がその表面上に被覆される支持体は任意の慣用タイプのものであってよい。最も普通には、支持体はフィルム支持体である。画像鮮鋭性を最高レベルにするためには、支持体は典型的に、黒色又は透明であるように選択されそして黒色バッキングを用いて、露光用カセット中に載置する。スピードを最高にするためには、白色支持体、例えば、チタニアもしくは硫酸バリウムを積載もしくは被覆した支持体を用いる。スピードと鮮鋭性の最適バランスを与える特に好ましい反射性支持体は、Roberts等の米国特許第4,912,333号により開示される反射ミクロレンズを含有するものである。
【0031】オーバーコート、下塗り層等の、前記特性と両立しうる慣用の増感紙特性の1つ又は組合せは当然のことながら用いることができる。慣用に放射線要素及び増感紙の構成の両者は、先に引用したResearch Disclosure, Item 18431に開示されており、その開示及びそこに引用されている特許は引用することにより本明細書中に包含する。Research Disclosureは、Kenneth Mason Publications, Ltd., Emsworth, Hampshire PO10 7DD, England より発刊されている。
【0032】別々のハロゲン化銀乳剤層含有放射線写真要素と共に用いることが意図されている、本発明要件を満す増感紙を具体的に示す、本発明の特に好ましい態様では、前記の燐光体を、Luckey, Roth等の米国特許第4,710,637号の前方増感紙又は後方増感紙(その開示は引用することにより本明細書に包含する)のいずれに用いられる慣用の燐光体と置き換えることができる。以下の特許に開示されている任意の慣用の増感紙の同様の修正も意図している:DeBoer等の米国特許第4,637,898号;Luckey, Cleare等の米国特許第4,259,588号;Luckeyの米国特許第4,032,471号;及び先に引用したRoberts等の特許。
【0033】燐光体の利用については、X線増感紙を特に引用してきたが、燐光体は必要に応じて他の最終用途に適応できることが理解される。
【0034】<例>本発明は、以下の具体的例を参照することにより、より良好に理解することができる。数字と添字Eで示す例は本発明の好ましい実施態様を表し、一方数字と添字Cで示す例は比較の目的のために包含する。
【0035】用いた測定操作についての記載燐光体粉末をアルミニウムプランシェット(2mmの高さ×24mmの直径)中に約1g/cm2 の被覆量で充填し次いで試料をフィルター化X線で露光することにより、燐光体粉末の相対ルミネッセンス応答を測定した。X線源は、28kVp 及び30mAで作動するXRD6(商標)発生機中のタングステンターゲット管であった。フィルターは1.31mmのアルミニウム及び0.05mmのモリブデンからなる。ルミネッセンス応答は、500VバイアスでIP−28(商標)光電子増倍管を用いて測定した。光電子増倍管からの電圧をKeithley(商標)高インピーダンス電位計を用いて測定したが、試料の総光出力と比例する。
【0036】発光スペクトルは、Instruments S. A. Model HR320(商標)格子分光計がPrinceton Applied Research Model 1421(商標)増強線形ダイオードアレー検出器と組合わされた測定器を用いて得た。データの取得及び操作は、Princeton Applied Research Model 1460 OMA III(商標)光学多チャンネル分析器により調整した。スペクトルは、検出器−スペクトログラフコンビネーションの光学応答について補正した。試料を前記のようにプランシェット中に載置し、次いで28kVp 及び30mAで作動するXRD6(商標)発生器中のタングステン−ターゲット管からの非フィルター化X線を用いて試料を照射した。
【0037】例1〜5(Hf0.9975Zr0.0025)GeO4例1〜5は非ドーピング化(チタン非含有)HfGeO4 の分光発光特性及びルミネッセンス応答を示すものである。異なるフラックスの効果もまたこれらの例において述べる。
【0038】含水ハフニウムジルコニウムゲルマニウム前駆体を以下のように調製した:RGSHfOCl2 ・8H2 O(Teledyne Wah Chang Albany ; 0.25モル%Zr)78.3gを蒸留水500mLに溶解した。GeO2 (KBI,99.999%)20gを蒸留水165mLに入れ次いでNH4 OH(Eastman Kodak Company,ACS試薬)6mLを添加しながら溶解した。これらの2種類の溶液を微流として三角フラスコ中の迅速撹拌蒸留水335mLに同時に添加した。この溶液を次に、蒸留水1000mL中のNH4 OH 23.75mLの撹拌溶液に滴加した。ゼラチン性沈澱が直ちに生成した。完全に添加後、真空ろ過によりブフナーロートを用いてゲルを収集した。収集物質を100℃で一晩対流炉で乾燥した。乾燥ゲル64.4gを蒸留水161mLで1時間洗浄し、真空ろ過によりブフナーロートを用いて収集し、次いで対流炉中100℃で一晩乾燥した。
【0039】前駆体の一部の5gをめのう製モルタル中で以下のフラックスの1種と共に粉砕した:24重量%のLi2 SO4 (Alfa,99.7%)、7重量%のLiBO2 (Johnson Matthey, 99.9%)、11重量%のLi2 MoO4 (Aesar 99%)及び6.5重量%のNa2 MoO4 (Aesar、試薬)。別の5gの試料をフラックスを用いずに粉砕した。粉砕物質を10mLのアルミナるつぼに入れ、アルミナの蓋で被った。LiBO2 フラックス試料以外のすべての試料を6時間1100℃でボックス炉中で焼成した。LiBO2 フラックス試料は6時間950℃でボックス炉中で焼成した。冷却後、各試料を蒸留水150mLで洗浄し、収集し、95℃で乾燥した。
【0040】各試料の相対ルミネッセンス(Rel.I)応答、並びに分光特性を表Iに示す。発光ピーク位置は、強度極大の波長として定義し、ピーク巾は強度極大ピークの半分での巾として定義する。
【0041】
【表1】


【0042】すべての試料が強い長波長紫外線発光を示し、320〜380nmの範囲にピーク発光があった。リチウムメタボレート試料及びリチウムサルフェート試料は強いルミネッセンス応答を示す。リチウムサルフェートを用いて調製した試料は、リチウムメタボレートを用いて調製した試料について認められるものと比較して、より短波長へ発光がシフトしているので好ましい。リチウムサルフェートフラックスの存在下で調製した試料の発光プロフィルを図3に示す。
【0043】例6〜10(Hf0.9975Zr0.0025(1+x) Ge(1-x) 4(x=−0.1〜0.30)
例6〜10は、ハフニウム(ジルコニウム)のゲルマニウムに対する比を変化させたハフニウムジルコニウムゲルマネート燐光体のルミネッセンス応答を示すものである。
【0044】例8〜10では、GeO2 (薬品等級、99.999%)2.500gを用いて調製した。例6及び例7では、GeO2 を0.125g及び0.375g用いた。GeO2 を95〜100℃の蒸留水500mLに溶解した。各x値に対し適切なモル量のRGS HfOCl2 ・8H2 O(Teledyne Wah Chang Albany,Zr=0.25モル%)を蒸留水100mL中に溶解した。ハフニルクロライド溶液をろ過した後、熱GeO2 溶液に添加した。
【0045】必要な塩基のモル数を、各x値についてのHf及びGeの合計モル数の2倍として測定した。各塩基溶液を、算出モル量の濃NH4 OH(Baker、試薬)を添加して40mLの蒸留水までとすることにより調製した。
【0046】塩基を、激しく撹拌しながら熱ハフニルクロライド/GeO2 溶液に滴加した。添加後、ゲル溶液を撹拌し、次いで95〜100℃で45分間加熱し、次に熱いうちに真空ろ過によりブフナーロートを用いて収集した。収集ゲルを一晩95℃で乾燥した。各試料4gを蒸留水10mLを用いて30分間洗浄し、次に90℃で3時間対流炉で乾燥した。乾燥、洗浄した試料を10mLのアルミナるつぼに入れ、アルミナ蓋で覆いそして1200℃で6時間ボックス炉内で焼成した。
【0047】各試料の相対ルミネッセンス応答並びにスペクトル特性を表IIに示す。発光ピークの位置、並びにピーク巾は先に定義したとおりである。
【0048】
【表2】


【0049】X線回析分析によれば、
【数1】


の場合は正方晶系灰重石構造が保持されていることが判明した。しかしながら、xが0.20及び0.30の値では、発光のピーク強度は380nmの好ましい最高波長より僅かに上に移動していた。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、320〜380nmのスペクトル範囲にピーク強度を有する電磁放射線を発することができるX線増感紙が得られる。このスペクトル範囲は、ハロゲン化銀が高い固有感度を有するスペクトル範囲であり、また増感紙を構成するのに通常用いられる有機材料が低レベルの吸収を示すスペクトル範囲である点で最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置の略図である。
【図2】二重被覆放射線写真要素及びアセンブリを形成する一対の増感紙の略図である。
【図3】発光波長に対して相対発光強度をプロットしたものである。
【符号の説明】
1…検査すべき組織
3…露光圧縮装置
5…グリッド
7…記録アセンブリ
9…X線入射窓
11…X線出射窓
13…壁
15…焦点
17…非散乱X線
19…散乱X線
21…方向制御板
23…放射線写真要素
25…前方増感紙
27…後方増感紙
29…支持体
31…下塗り層
33…下塗り層
35…乳剤層
37…乳剤層
36…オーバーコート
39…オーバーコート
41…基板部
43…介在層部
45…蛍光層
47…オーバーコート層
49…基板部
51…介在層部
53…蛍光層
55…オーバーコート層
57…カール防止層
59…カール防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体、及びX線を吸収することができ、そして320〜380nmの範囲にピーク強度を有する電磁放射線を発することができ、正方晶系灰重石(scheelite)構造のチタン非含有結晶からなる燐光体を含有する蛍光層を含んでなる増感紙であって、前記燐光体が、酸素及び関係式:(Hf1-z Zrz 1+x Ge1-x前記式中、xは0.15〜−0.10であり、zは少くとも4×10-4〜0.5未満の範囲内である、を満す金属から実質的になることを特徴とする増感紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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