説明

紫外線を使用する方法によって作製される表面架橋超吸収性ポリマー粒子を含む吸収性物品

本発明は、超吸収性ポリマー(SAP)粒子を含む吸収性物品に関し、SAP粒子は紫外線照射によって超吸収性ポリマー粒子を表面架橋する方法によって製造される。本方法は、中空ドラム及び照射源を含む、いわゆるドラム反応装置の中で実施される。ドラムは長手軸及び断面を有する。ラジカル形成剤分子は超吸収性ポリマー粒子の表面に適用される。超吸収性ポリマー粒子はドラムの中に供給され、その長手軸の周りを回転するドラム内で移動している間に照射される。照射源から放出された放射線が上記ドラム内の超吸収性ポリマー粒子に到達できるように照射源が設けられる。本発明の方法で使用する照射源は、201nm〜400nmの波長の紫外線を放出可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面架橋超吸収性ポリマー(SAP)粒子を含む吸収性物品に関し、SAP粒子は紫外線(UV)照射を用いた方法及びドラム反応装置の中で実施される方法で製造される。
【背景技術】
【0002】
超吸収性ポリマー(SAP)は当該技術分野において周知である。SAPは一般に、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁製品及び女性用ケア製品などの吸収性物品において、製品の吸収能力を増大させ、一方でそれらの全体容量を低下させる目的で適用する。SAPは、その重量の何倍もの量に等しい水性流体を吸収、保持する機能を備えている。
【0003】
SAPの商業生産は1978年に日本で始まった。初期の超吸収体は、架橋デンプン−g−ポリアクリレートであった。SAPの商業生産においては、部分的に中和させたポリアクリル酸が最終的に初期の超吸収体に取って代わり、SAPにおいて主要なポリマーとなっている。SPAは多くの場合細かい粒子の形態で適用される。SAPは一般に、部分的に中和させ、僅かに架橋させたポリマー網状組織から成り、このポリマー網状組織は親水性であり、水又は生理食塩水などの水溶液に浸漬させると膨張する。ポリマー鎖間の架橋によって、SAPが水に溶解しないようにする。
【0004】
水溶液の吸収後、膨潤したSAP粒子は非常に柔らかくなり、簡単に変形する。変形により、SAP粒子間の空隙が封鎖され、これにより、液体に対する流動抵抗が劇的に増大する。これは一般に「ゲルブロッキング」と呼ばれている。ゲルブロッキング状態において、液体は拡散によってしか膨張したSAP粒子の間を通って移動することができず、これはSAP粒子間の隙間を流動するよりもはるかに遅い。
【0005】
ゲルブロッキングを低減するために一般的に適用される方法の1つは粒子をより堅くすることであり、それによって膨張したSAP粒子が元の形状を保持し、したがって粒子間に空隙を作り出すか維持するかすることができる。剛性を高める周知の方法は、SAP粒子の表面上に露出しているカルボキシル基を架橋することである。この方法は一般に表面架橋と呼ばれている。
【0006】
当該技術分野は、例えば、表面架橋され、界面活性剤をコーティングされた吸収性樹脂粒子、及びそれらの調製方法に関する。表面架橋剤は、SAP粒子の表面上にあるカルボキシル基と反応する少なくとも2つのヒドロキシル基を含むポリヒドロキシル化合物であり得る。一部の技術分野では、表面架橋は、150℃以上の温度で行われる。
【0007】
また、水溶性ペルオキシドラジカル反応開始剤も、表面架橋剤として知られている。その表面架橋剤が含まれている水溶液をポリマーの表面上に適用する。表面架橋反応は、ペルオキシドラジカル反応開始剤を分解させるが、ポリマーは分解させないような温度まで加熱することによって達成される。
【0008】
ごく最近では、表面架橋剤として使用するオキセタン化合物及び/又はイミダゾリジノン化合物の使用が開示されている。表面架橋反応は加熱下で行われることができ、温度は、好ましくは60℃〜250℃の範囲である。或いは、表面架橋反応を、好ましくは紫外線を使用する光照射処理によって達成することもできる。
【0009】
一般には表面架橋剤はSAP粒子の表面上に適用する。したがって、反応は、好ましくはSAP粒子の表面上で起こり、その結果、粒子のコアには実質的な影響を及ぼすことなく、粒子の表面上に改善された架橋がもたらされる。ゆえに、SAP粒子がより堅くなり、ゲルブロッキングが低減される。
【0010】
上述した工業用表面架橋プロセスの欠点は、比較的長時間、一般には少なくとも約30分間かかることである。しかし、表面架橋プロセスに必要な時間が長いほど、より多くの表面架橋剤がSAP粒子内に浸透し、結果として粒子内部の架橋が増加し、SAP粒子の能力に悪影響を及ぼす。したがって、表面架橋プロセスの時間が短いことが望ましい。さらに、経済的なSAP粒子製造プロセス全体という点でも、短いプロセス時間が望ましい。
【0011】
一般的な表面架橋プロセスの別の欠点は、それらがたいてい約150℃以上の比較的高い温度の下でしか行われないということである。これらの温度では、表面架橋剤がポリマーのカルボキシル基と反応するだけでなく、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間で隣接するカルボキシル基の無水物形成、及びSAP粒子に組み込まれたアクリル酸二量体の二量体開裂などの他の反応も活性化される。それらの副反応もコアに影響を及ぼし、SAP粒子の能力を低下させる。さらに、高温への曝露により、SAP粒子の色の劣化を導く可能性がある。ゆえに、これらの副反応は一般に望ましくない。
【0012】
当該技術分野において既知のSAPは、通常、例えば水酸化ナトリウムによって、部分的に中和される。しかしながら、中和は、表面架橋に対する必要性との調和を慎重に保たなければならず、また、当該技術分野で既知の表面架橋剤は、ポリマー鎖に含まれる遊離カルボキシル基と比較的高速で反応し、中和されたカルボキシル基とはゆっくりと反応するだけである。このように、所与のカルボキシル基を表面架橋又は中和のいずれかに適用することが可能であるが、両方には適用できない。当該技術分野において既知の表面架橋剤は、好ましくは化学基カルボキシル基(the chemical group carboxyl groups)と反応し、脂肪族基とは反応しない。
【0013】
SAP粒子を製造するプロセスでは通常、遊離カルボキシル基の中和を初めに実施し、その後、表面架橋を行う。実際、中和工程は、モノマーを重合かつ架橋させてSAPを形成させる前に、プロセスの一番初めに行うことが多い。このようなプロセスは「プレ中和プロセス」と名づけられている。或いは、SAPを重合の途中又は重合後に中和することもできる(「ポスト中和」)。さらに、これらの代替形態の組み合わせも可能である。
【0014】
SAP粒子の外側表面上の遊離カルボキシル基の全体的な数は上述の中和によて制限されるが、遊離カルボキシル基は均質に分布しないとも考えられる。ゆえに、均一に分布された表面架橋を有するSAP粒子を得るのは現在のところ困難である。反対に、SAP粒子は幾分密集した表面架橋領域、即ち表面架橋の多い領域、及びまばらな表面架橋の領域を有すること多い。この不均等性は、SAP粒子の所望の全体的な剛性への悪影響となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、均一に分布している均一な表面架橋を備えたSAP粒子の製造方法を用意することである。
【0016】
さらに、ゲルブロッキングを回避する十分な剛性(場合によって「ゲル強度」と言う)と十分な膨張容量(場合によって「ゲルボリューム」と言う)の両方を有するSAP粒子を得ることは困難である。典型的には、SAP粒子のゲル強度を増加することはゲルボリュームに負の影響を及ぼし、逆もまた同様である。
【0017】
したがって、容量の減少を最小とするため、表面架橋をSAP粒子のまさに表面だけに制限することが本発明のさらなる目的である。このように、SAP粒子のコアには大幅な影響を及ぼしてはならず、コアに導入される追加的な架橋は最小限にとどめるべきである。
【0018】
さらに、本発明の目的は、SAP粒子の表面架橋の方法を用意することであり、該方法の効果を高めるために迅速に行なうことが可能である。
【0019】
本発明の更なる目的は、無水物形成及び二量体開裂などの望ましくない副反応を低減すべく、中程度の温度で行うことができる、SAP粒子の表面架橋の方法を用意することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、表面架橋超吸収性ポリマー粒子を含む吸収性物品に関し、該超吸収性ポリマー粒子が、
a)超吸収性ポリマー粒子を用意し、かつ前記超吸収性ポリマー粒子の上に適用されるラジカル形成剤分子を用意する工程と、
b)ドラムを備える反応装置を用意する工程。前記ドラムは長手軸を有し、さらに断面を有する。照射源によって放出される放射線が前記ドラム内の超吸収性ポリマー粒子に到達できるように、及び前記照射源が201nmと400nmとの間の波長の紫外線を放出可能なものである、前記照射源が設けられ、
c)前記ラジカル形成剤分子がその上に添加された前記超吸収ポリマー粒子を、前記ドラムの中に供給する工程と、
d)前記ドラムをその長手軸の周りに回転させて、前記ドラムの中の前記ラジカル形成剤分子がその上に添加された前記超吸収ポリマー粒子を、移動させる工程と、
e)前記粒子を前記ドラム内で移動させながら、前記照射源で前記ラジカル形成剤分子がその上に添加された前記超吸収ポリマー粒子を、照射する工程、及び
f)前記ドラムから出る超吸収ポリマー粒子を収集する工程と
を含む方法によって製造されたものである、吸収性物品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明によるSAPは、好ましくは、部分的に中和されたα,β−不飽和カルボン酸のホモポリマー、又は部分的に中和されたα,β−不飽和カルボン酸がそれらと共重合可能なモノマーとともに共重合されたコポリマーを含む。さらに、好ましくはSAPに含まれるホモポリマー又はコポリマーは脂肪族基を含み、ここで、前記脂肪族基のうち少なくともいくつかはSAP粒子の表面に少なくとも部分的に含まれている。
【0022】
SAP類は、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの置換及び非置換の天然及び合成ポリマー;ポリビニルアルコール及びポリビニルエーテル類などの非イオン型;ポリビニルピリジン、ポリビニルモルフォリニオン、そしてN,N−ジメチルアミノエチル又はN,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート類及びメタクリレート類、並びにそれらの各第四級塩などの陽イオン型を包含する、様々な化学的形態で入手可能である。典型的には、本明細書において有用なSAP類は、スルホン酸のような複数の陰イオン性官能基、及びより典型的にはカルボキシル基を有する。本明細書で使用するのに好適なポリマー類の例としては、重合可能な不飽和の酸含有モノマー類から調製されるものが挙げられる。したがって、こうしたモノマー類には、少なくとも1つの炭素−炭素オレフィン性二重結合を含有するオレフィン性不飽和酸類及び無水物類が包含される。さらに具体的には、このようなモノマー類はオレフィン性不飽和カルボン酸類及び酸無水物類、オレフィン性不飽和スルホン酸類、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0023】
SAP類を調製する際、幾つかの酸性ではないモノマー類が、通常は微量で包含される可能性もある。こうした酸性ではないモノマー類としては、例えば、酸を含有するモノマー類の水溶性又は水分散性のエステル類、並びにカルボン酸基又はスルホン酸基を全く含有しないモノマー類を挙げることができる。したがって、任意の酸性ではないモノマー類には、次の種類の官能基:カルボン酸又はスルホン酸エステル類、ヒドロキシル基類、アミド基類、アミノ基類、ニトリル基類、第四級アンモニウム塩基類、アリル基類(例えば、スチレンモノマーに由来するようなフェニル基類)を含有するモノマー類を包含することができる。これらの酸性ではないモノマー類は、周知の材料であり、例えば米国特許第4,076,663号及び米国特許第4,062,817号により詳細に記載されている。
【0024】
オレフィン性不飽和のカルボン酸及びカルボン酸無水物のモノマー類には、アクリル酸自体で代表されるアクリル酸類、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、β−ステリルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン及びマレイン酸無水物が挙げられる。
【0025】
オレフィン性不飽和スルホン酸モノマー類には、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸及びスチレンスルホン酸などの脂肪族又は芳香族のビニルスルホン酸類;スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアクリル及びメタクリルスルホン酸が挙げられる。
【0026】
本発明による好ましいSAP類は、カルボキシル基を含有する。これらのポリマー類は、加水分解デンプン−アクリロニトリルのグラフトコポリマー類、部分的に中和された加水分解デンプン−アクリロニトリルのグラフトコポリマー類、デンプン−アクリル酸のグラフトコポリマー類、部分的に中和されたデンプン−アクリル酸のグラフトコポリマー類、鹸化された酢酸ビニル−アクリル酸エステルのコポリマー類、加水分解されたアクリロニトリル又はアクリルアミドのコポリマー類、前述のコポリマーのいずれかの僅かに網状架橋されたポリマー類、部分的に中和されたポリアクリル酸、及び部分的に中和されたポリアクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー類、部分的に中和されたポリメタクリル酸、及び部分的に中和されたポリメタクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー類を含む。これらのポリマー類は、単独で、又は2つ以上の異なるコポリマー類の混合物の形態で使用されることができ、混合物として使用されるときには、各々が部分的に中和される必要はないが、結果として生じるポリマーが部分的に中和されていなければならない。これらのポリマー材料の例は、米国特許第3,661,875号、米国特許第4,076,663号、米国特許第4,093,776号、米国特許第4,666,983号、及び米国特許第4,734,478号に開示されている。
【0027】
本発明で使用される最も好ましいポリマー素材は、部分的に中和されたポリアクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー類、部分的に中和されたポリメタクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー類、それらのコポリマー類及びそれらのデンプン誘導体である。最も好ましくは、SAP類は、部分的に中和され、僅かに網状架橋されたポリアクリル酸(即ち、ポリ(アクリル酸ナトリウム/アクリル酸))を含む。好ましくは、SAPは、少なくとも50mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、より好ましくは少なくとも75mol%及びより好ましくは75mol%〜95mol%中和させる。網状架橋は、ポリマーを実質的に非水溶性にし、ヒドロゲルを形成する吸収性ポリマー類の吸収能力を決定するという一面もある。前記ポリマーを網状架橋するための方法及び典型的な網状架橋剤は、米国特許第4,076,663号により詳細に記載されている。
【0028】
α,β−不飽和カルボン酸モノマー類を重合するための好適な方法は水溶液重合であり、これは当該技術分野において周知である。α,β−不飽和カルボン酸モノマー類と、重合反応開始剤が含まれている水溶液は、重合反応させる。この水溶液にはまた、さらに、α,β−不飽和カルボン酸モノマー類と共重合可能であるモノマー類を含めてもよい。少なくとも、α,β−不飽和カルボン酸は、モノマー類の重合前、重合中、又は重合後に、部分的に中和させなければならない。
【0029】
水溶液中のモノマー類は、標準的な遊離ラジカル技法により、一般には紫外線(UV)活性剤などの活性化用の光開始剤を用いて重合させる。或いは、レドックス反応開始剤を使用してもよい。しかしながらこの場合、高い温度が必要になる。
【0030】
吸水性樹脂は、好ましくは、非水溶性にするために僅かに(lightly)架橋させる。望ましい架橋構造は、選択した水溶性モノマーと、分子単位で少なくとも2つの重合可能二重結合を備えた架橋剤との共重合により形成させてもよい。架橋剤は、水溶性ポリマーを架橋するのに効果的な量で含有させる。好ましい架橋剤の量は、所望の吸収能力の程度及び吸収された流体を保持するのに望ましい力、即ち、負荷下での所望の吸収性によって決まる。通常架橋剤は、使用される100重量部のモノマー(α,β−不飽和カルボン酸モノマー類及び可能なコモノマー類を含む)当たり、0.0005〜5重量部の範囲の量で使用される。100重量部につき5重量部を超える量の架橋剤を用いると、結果として生じるポリマー類の架橋密度は非常に高く、吸収能力が低下し、吸収された流体を保持する力が増大する。100重量部につき0.0005重量部未満の量で架橋剤を用いると、ポリマーの架橋密度は非常に低く、吸収すべき流体と接触すると、粘着性と水溶性が高くなり、特に負荷下では吸収性能が低下する。架橋剤は、典型的には水溶性である。
【0031】
架橋剤をモノマーと共重合させる代わりに、重合後に別個のプロセス工程にてポリマー鎖を架橋することも可能である。
【0032】
重合、架橋及び部分的な中和の後、粘性を有するSAPを脱水(即ち、乾燥)し、乾燥したSAPを生成させる。脱水工程は、粘性を有するSAPを約1〜2時間、強制空気オーブン内で約120℃まで加熱するか、又は粘性を有するSAPを約60℃で一晩中加熱することによって行うことができる。乾燥後のSAP内の残留水の含有量は、主に乾燥時間及び乾燥温度に左右される。本発明によると「乾燥SAP」は、乾燥SAPの重量で0.5%から乾燥SAPの重量で50%まで、好ましくは、乾燥SAPの重量で0.5%〜45%、さらに好ましくは0.5%〜30%、またさらに好ましくは0.5%〜15%、及び最も好ましくは0.5%〜5%の残留水分含有量を有するSAPを表す。特に明記されていない場合、以下において「SAP粒子」という用語は乾燥SAP粒子を表す。
【0033】
SAP類は多数の形状の粒子に変換され得る。「粒子」という用語は、顆粒、繊維、フレーク、球体、粉末、小板、並びにSAPの当業者に既知のその他の形状及び形態のことを指す。例えば、粒子を、粒径約10〜1000μm、好ましくは約100〜1000μmを有する顆粒又はビーズの形態とすることができる。他の実施形態では、SAP類を、繊維の形状、即ち、細長い針状SAP粒子とすることができる。こうした実施形態において、SAP繊維は、約1mm未満、普通は約500μm未満、好ましくは250μm未満から50μmまでの小さい寸法(即ち、繊維の直径)を有する。繊維の長さは好ましくは約3mm〜約100mmである。本発明において使用されることは好ましくないが、繊維は織ることのできる長いフィラメントの形状であることも可能である。
【0034】
しかしがなら、本発明の方法はドラム反応装置において実施されるので、SAP粒子は、反応装置ドラムの内側表面に沿ってドラム反応装置を貫流することが可能なように、自由流する十分な能力を有していなければならない。自由流する能力は、SAP粒子が、例えば物理的もつれの影響により、SAP粒子表面への均一な紫外線照射を著しく妨げるであろう粒塊を互いに形成しないような自由流する能力でなければならない。
【0035】
本発明のSAP粒子はコア及び表面を有する。本発明によると、乾燥SAPは表面架橋プロセス工程を受ける。即ち、粒子がそれらの表面において架橋される一方、粒子のコアにおける架橋の数は本発明の方法によって実質的に増加しない。
【0036】
「表面」という用語は、粒子の外側に面した境界のことを指す。多孔質SAP粒子に関しては、内部露出面も表面とみなしてもよい。本発明では、SAP粒子の「表面」は完全で連続的に外側に向いている乾燥SAP粒子の6%容量を言い、一方「コア」は容量の94%であり、乾燥SAP粒子の内部領域を含む。
【0037】
表面架橋SAP粒子は当該技術分野で既知である。先行技術の表面架橋の方法においては、表面架橋はSPA粒子の表面に施される。表面架橋SAP粒子において、SAP粒子表面の架橋レベルはSAP粒子のコアの架橋レベルより大幅に高い。
【0038】
一般に適用される表面架橋剤は、熱活性化可能な表面架橋剤である。用語「熱活性化可能な表面架橋剤」は、典型的には約150℃の高温にさらすことによってのみ反応する表面架橋剤を指す。従来技術において既知の熱活性化可能な表面架橋剤は、例えば、SAPのポリマー鎖間に更なる架橋を構築することができる二官能剤又は多官能剤である。典型的な熱活性化可能な表面架橋剤としては、例えば、二価アルコール若しくは多価アルコール、又は二価アルコール若しくは多価アルコールを形成できるそれらの誘導体が挙げられる。このような表面架橋剤の代表は、アルキレンカーボネート、ケタール、及びジ−又はポリグリシジルエーテルである。さらに、(ポリ)グリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド、ポリオール、及びポリアミンも、また、周知の熱活性化可能な表面架橋剤である。架橋は、例えばカルボキシル基(ポリマーに含まれる)とヒドロキシル基(表面架橋剤に含まれる)との間のエステル化反応によって形成される。典型的には、ポリマー鎖のカルボキシル基の比較的大部分が重合工程前に中和されるので、一般には、当該技術分野において既知のこの表面架橋プロセスのためには、ほんの僅かなカルボキシル基しか利用できない。例えば、70%中和させたポリマーでは、共有表面架橋結合のために、10個のカルボキシル基のうちたった3個しか利用できない。
【0039】
本発明の方法は、SAP粒子の表面架橋に使用される。ゆえに、SAP粒子に含まれるポリマー鎖は、分子単位内に少なくとも2つの重合可能な二重結合を含む当該分野で既知の架橋剤で既に架橋されている。
【0040】
本発明の方法により、異なるポリマー鎖の主鎖内に含まれる炭素原子間の直接共有結合を超吸収性ポリマー粒子の表面上に形成させる。
【0041】
本発明による「直接共有結合」は、架橋分子に含まれている原子などの中間原子のない共有結合のみによってポリマー鎖が相互に結合される共有結合である。それとは反対に、ポリマー鎖間の既知の架橋反応は、常にこれらのポリマー鎖間に共有結合をもたらし、架橋分子の反応生成物がポリマー鎖間に組み込まれる。ゆえに、既知の表面架橋反応は、直接共有結合をもたらさず、架橋分子の反応生成物を含む間接共有結合をもたらす。直接共有結合は、第1のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子と、第2のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子との間に形成される。結合は、SAP粒子内で微粒子内に形成され、より具体的には、結合は、SAP粒子の表面上に形成されるが、SAP粒子のコアは、そのような直接共有結合を実質的に含まない。
【0042】
ポリマー鎖の「主鎖」は、ポリマー鎖を直ちに形成するこれら炭素原子を表す。主として、反応がポリマー鎖の主鎖の部分である炭素原子の除去という結果に終わった場合、この反応はまた、この炭素原子が前もってポリマー鎖に形成された場所のポリマー鎖の破断という結果になるであろう。
【0043】
所望により、表面架橋分子もまた本発明の方法で使用されてもよい。表面架橋分子がSAP粒子に添加されるかかる実施形態では、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の間に更なる共有結合が形成される。これらの更なる共有結合には、前記表面架橋分子の反応生成物が含まれている。
【0044】
本発明の異なるポリマー鎖の架橋は、異なるSAP粒子を互いに結合することを意図しない。したがって、本発明の方法は、異なるSAP粒子間の感知できるほどの粒子間結合を導くのではなく、結果として、SAP粒子内部に粒子内の直接共有結合のみをもたらす。存在する場合、かかる粒子間の直接共有結合は、それゆえに、更なる粒子間架橋材料を必要とする。
【0045】
2つの炭素原子間の共有結合によってポリマー鎖を相互に直接結合させる本発明の方法は、従来の表面架橋の代わりに、又は従来の表面架橋に加えて、SAP粒子を表面架橋するために適用することができる。
【0046】
放射活性化可能なラジカル形成剤分子
本発明では、架橋反応を開始するためにラジカルフォーマー分子を与える。放射線活性化可能ラジカル形成剤分子は、SAP粒子表面に含まれるポリマー鎖のポリマー主鎖に位置する炭素中心ラジカルを形成することができる。反応は紫外線照射によって始まる。異なるポリマー鎖に含まれるこれら炭素中心ラジカルの2個が互いに反応し、これによりポリマー鎖間に直接共有結合を形成する。
【0047】
照射により、第1の工程でラジカル形成剤分子の一部が典型的には酸素中心である中間体ラジカルを形成し、第2の工程でSAP粒子表面のポリマー主鎖に含まれる炭素原子と反応してポリマー主鎖に炭素中心ラジカルを形成する。
【0048】
原則として、ビニルモノマー類の重合を開始するために通常使用される任意の光開始剤を、本発明による表面架橋のためのラジカル形成剤として適用することができる。かかる光開始剤は、ビニルモノマー類のラジカル連鎖重合を誘引する働きをする。光開始剤を紫外線で照射して形成される反応中間体種は、SAP粒子表面のポリマー鎖のポリマー主鎖に含まれるC原子のC−H結合から水素原子を取り去ることが可能であると考えられる(それをもって本発明の架橋を開始する)。
【0049】
最も好ましくは、放射線活性化可能ラジカル形成剤分子は、紫外線照射によって均一に切断される(いわゆる光分解)ペルオキソ架橋(peroxo bridge)(O−O)を含む。
【0050】
しかしながら、反応中間体種はまた、紫外線照射によって短寿命のいわゆる励起三重項状態に変換されたケトンであってもよい。三重項状態のケトンはまたポリマー主鎖に含まれるC原子のC−H結合から水素原子を取り去ることが可能であり、それによりケトンはアルコールに変換(いわゆる光還元)される。
【0051】
本発明のラジカル形成剤は水溶性であることが特に好ましい。水溶性ラジカル形成剤は、25℃で少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の水への溶解度特性を示さなければならない。
【0052】
当初水溶性でないラジカル形成剤は、例えば、カルボン酸塩又はアンモニウムのような分子構造に荷電群を導入するなどによって誘導体化することにより水溶性にすることができる。一つの例として、ベンゾフェノンは簡単に安息香酸に誘導化され得る。しかしながら、ラジカル形成剤は本質的に水溶性である、即ちラジカル形成剤を水溶性にするために官能基を導入する必要がないことが好ましい。典型的な本質的に水溶性放射線活性化ラジカル形成剤は、アルカリ金属又はその他の無機ペルオキソ二硫酸或いは誘導体化されたペルオキソ二硫酸のような過酸化物である。水溶性のアゾ系反応開始剤もまた使用することができる(例えば、市販のV−50又はVA−086、ワコー・スペシャルティ・ケミカルス社(Wako Specialty Chemicals))。無機過酸化物は典型的には水溶性の要件を満たすが、有機化合物は典型的には誘導体化が必要である。最も好ましい水溶性のラジカル形成剤はペルオキソ二硫酸ナトリウムである。
【0053】
ラジカル形成剤を水溶液に用意することの利点は(したがって、水溶性ラジカル形成剤を使用する利点)二点ある。一つは、水溶液はSAP粒子表面の効率的な湿潤を容易にすることである。したがって、ラジカル形成剤分子は実際に粒子表面に送達され、そこで表面架橋反応が開始される。
【0054】
他方では、SAP粒子表面の効果的な湿潤はSAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の鎖運動性を強化する。このことは、ポリマー主鎖に含まれる炭素原子と、照射によってラジカル形成剤が変化してできる反応中間体種との間の二分子反応を容易にする。この効果は、実際に今日最も広く用いられているSAP粒子である、ポリ(メチル)アクリル酸に含まれるSAP粒子にとって特に有利である。ポリアクリル酸のガラス転移温度は106℃であり、ポリアクリル酸のナトリウム塩は中和度100%で200℃超のガラス転移温度を有し、一方本発明の表面架橋は通常100℃より低い温度で実施される。水の存在により、部分的に中和されたポリアクリル酸のガラス転移温度を有意に引き下げることができる。例えば、中和度65%のポリアクリル酸ナトリウムのガラス転移温度は、5重量%の水の存在下での約150℃から、35重量%の水の存在下では室温より低くまで引き下げることができる。しかしながら、この効果を活用するためには、SAP粒子のまさに表面の実際の局所濃度が重要である。
【0055】
本発明の架橋が実際にSAP粒子の表面に限定されることを確実にするため、水が分散によって全粒子容量にわたって均一に送達されることを防がなければならない。したがって、紫外線照射の工程は、ラジカル形成剤を含む水溶液がSAP粒子に適用された後1時間以内に、より好ましくは10分以内に、最も好ましくは1分以内に行なわれなければならない。
【0056】
有機溶媒は通常水より高価であり、環境問題を考えると問題も多いので、水溶性ラジカル形成剤が非常に好ましい。しかしながら、上述の誘導体化を通じて水溶性とされていない有機ラジカル形成剤もまた使用してもよく、水ではなく有機溶媒に適用することができる。例としては、紫外線を照射した時に光還元反応を起こすことで知られているベンゾフェノン又は任意のその他の好適なケトンがある。さらなる例は、紫外線を照射した時にフォトフラグメンテーションを起こすことで知られているジベンゾイルペルオキシド又は任意のその他の有機過酸化物である。
【0057】
本発明の方法では、ラジカル形成剤はSAP粒子の25%未満の量、より好ましくは15%未満の量、最も好ましくは1%〜5%の量で好ましくは適用される。ラジカル形成剤は典型的には水溶液に適用される。或いは、あまり好ましくはないが、ラジカル形成剤と水を2つの工程で加えられることができるが、放射の間両方が表面に存在しなければならない。水の量は、好ましくはSAP粒子の25%未満、より好ましくは15%未満、最も好ましくは5%〜10%の間である。経済的な理由から、表面架橋の後の乾燥工程を短くする又は完全に回避するために、添加する水の量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0058】
表面架橋分子
表面架橋分子は、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に位置する上記の炭素中心ラジカルと反応可能な官能基を少なくとも2個有する任意の化合物である。炭素中心ラジカルを有する表面架橋分子の官能基の反応により新しい共有結合が形成され、架橋分子をポリマー主鎖上に融合させる。
【0059】
表面架橋分子の官能基は、好ましくはC=C二重結合である。より好ましくは、架橋している分子は2つ以上のC=C二重結合を含む。或いは、官能基はCH−X部分であってもよく、Xはヘテロ原子である。CH−X部分の好ましい例はエーテル、CH−O−Rであり、Rはアルキル残基である。
【0060】
本発明の好ましい架橋分子は、多官能アリル及びアクリル化合物であり、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチルプロパントリクリレート(trimethylpropane tricrylate)又は他のトリアクリレートエステル類、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラアリルオルトシリケート、ジペンタエリスリトールペンタアシラレート(di-pentaerythritol pentaacyralate)、ジペンタペンタエリスリトールヘキサアシラレート(di-pentaerythritol hexaacyralate)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルアミン、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシトレート、又はトリアリルアミンである。
【0061】
或いは、表面架橋分子は、スクアレン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、イコサ−ペンタエン酸、ソルビン酸、又はビニル末端シリコーンから成る群より選択する。
【0062】
アリル基の二重結合を有する化合物はアクリル二重結合を有する化合物より一般により好ましい。本発明の最も好ましい架橋分子はジアリルジメチル塩化アンモニウムである。
【0063】
表面架橋分子を適用する場合には、例えば、不活性溶媒(任意に蒸発させることができる)が含まれている溶液中での噴霧適用により、SAP粒子が本発明のドラム反応装置に入る前に表面架橋分子を添加すべきである。表面架橋分子は、適用後直接蒸発するジクロロメタンなどの有機溶媒中で適用できる。SAP粒子を湿らせる実施形態では、表面架橋分子を水と共に懸濁液として、又は、架橋分子が水溶性の場合は水溶液として適用することも可能である。
【0064】
さらに、表面架橋分子を適用する場合、表面架橋分子のラジカル形成剤に対するモル比は、好ましくは0.2〜5の範囲、さらに好ましくは0.33〜3、最も好ましくは1〜3である。
【0065】
表面架橋化合物は好ましくは水溶性であり、(ラジカル形成剤を使用する場合には)ラジカル形成剤とともに水溶液に適用することができる。もしも好ましくない水溶性の表面架橋分子を適用する場合は、任意のラジカル形成剤を含む水溶液に乳化させる若しくは懸濁させる、又は別途適用する。水溶性表面架橋分子はまた、適用後直接蒸発するジクロロメタンなどの有機溶媒中で適用できる。
【0066】
流動床スプレーチャンバを用いて表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤をSAP粒子にスプレーしてもよい。同様に、乾燥を完了させるために赤外線照射してもよい。代わりに、赤外線と組み合わせて、乾燥工程においてあらゆる従来の乾燥装置を使用することができる。しかしながら、本発明の特定の実施形態では、例えば、ほんの少量の表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤が適用されて、少量の溶液に溶解される場合など、ほとんど又は全く乾燥を必要としない。
【0067】
本発明の方法によると、ドラム反応装置の中での照射の前に、ドラム反応装置の外で表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤をSAP粒子に常に適用する。
【0068】
ラジカル形成剤及び任意の表面架橋分子による反応機構:
光分解されるラジカル形成剤分子は不安定な結合を含む。以下これらを一般にR−Rと表す。紫外線照射で不安定な結合は破断し、2つのラジカル(R及びR)が式1にしたがって形成される。
式1:
【数1】

【0069】
この均一開裂は、ラジカル形成剤分子(いわゆる、前駆体分子)に含まれる不安定な結合が当該分子を2つの同一部分に分割する場合、結果として2つの同一ラジカルをもたらす場合がある。或いは、均一開裂は、結果として2つの異なるラジカルをもたらす場合がある。
【0070】
形成されたラジカルは、SAP粒子の表面のポリマー鎖主鎖に含まれる脂肪族C−H基と反応して、式2にしたがってこのポリマー鎖主鎖に炭素中心ラジカルを形成することができる。かかる2つの炭素中心ラジカルは互いに反応し、ポリマー主鎖に含まれる炭素原子間に直接共有結合を形成することができる。
式2:
【化1】

【0071】
炭素原子をポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素−水素結合から取り出す代わりに、完全なカルボキシル基をポリマー鎖から取り去る(脱炭酸化)ことも基本的には可能である。この反応の結果、炭素中心ラジカルがSAP粒子表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に形成される。
【0072】
所望により、本発明の方法に表面架橋分子を追加的に使用することができる。かかる実施形態では、ラジカル形成剤分子から形成されたラジカルは、架橋分子に含まれるC=C二重結合の1つと反応して、式3にしたがって、架橋分子と初期のラジカルとの反応生成物から成るラジカルを形成することができる。
式3:
【化2】

【0073】
式2の反応で形成されるポリマー鎖セグメント内の炭素中心ラジカルは、式3で形成されるラジカルと反応することができる。この反応の反応生成物はポリマー鎖であり、ラジカル形成剤分子と架橋分子の反応生成物は式4にしたがってポリマー主鎖の炭素原子に共有結合する。
式4:
【化3】

【0074】
その後、式1においてラジカル形成剤分子から形成されたラジカルは、式4の反応生成物中に含まれる架橋分子の2つ目のC=C二重結合と反応することができる。この反応を式5に表す。
式5:
【化4】

【0075】
2つのポリマー鎖の間に架橋を形成するために、式3の反応生成物中に含まれる炭素中心ラジカルが、式6で示すように同じSAP粒子表面の別のポリマー鎖に含まれる別の炭素中心ラジカルと結合する。
式6:
【化5】

【0076】
照射時に光分解されるラジカル形成剤分子を用いる場合、網状反応は2つのポリマー鎖セグメント間の架橋の形成であり、架橋は2つのC=C二重結合を有する1つの架橋分子と2つのラジカル形成剤分子との反応生成物を含む。網状反応を式7に表す:
式7:
【化6】

【0077】
架橋分子の追加使用により反応時間がより短くなるため、反応効率をさらに高めることができる。理論に束縛されるものではないが、表面架橋分子の非存在下で表面架橋反応が開始される紫外線照射の律速段階は、2つの炭素中心ラジカルのいわゆる再結合であり、2つの異なるポリマー鎖内に含まれる2つの炭素原子間の直接共有結合を形成すると考えられる。この再結合は二次速度法則に従う。即ち、反応速度は互いに乗じた両方の反応生成物(即ち、結合する2つの炭素中心ラジカル)の濃度に比例する。
【0078】
しかし、表面架橋分子を添加する場合、表面架橋分子から形成されたラジカルとポリマー鎖内に含まれる炭素中心ラジカルとの間の反応は疑似一次速度式の法則にしたがって起こると考えられる。即ち、第2の反応相手である表面架橋分子から形成されたラジカルの濃度が、反応を通して一定であるとみなすことができるほど非常に高いため、反応速度は、炭素中心ラジカルの濃度のみに比例する。疑似一次速度式の反応は二次速度式の動力学的に好ましい対反動であることが知られており、即ち、より速い反応速度を有する。
【0079】
光分解されるラジカル形成剤分子に代わるものとして、カルボニル基を含む、光還元を受けるラジカル形成剤分子を使用することも可能である。本発明の好ましい実施形態では、かかるラジカル形成剤分子はケトン類である。
【0080】
紫外線照射により、この種のラジカル形成剤分子は「励起状態」(三重項状態)に移動する。そのため、これらはもうラジカルには変換されないが、照射前よりも非常に反応性が高い。
【0081】
次の工程では、励起状態のラジカル形成剤分子はSAP粒子表面のポリマー鎖の主鎖に含まれる脂肪族C−H基と反応して水素ラジカルを取り去り、このポリマー鎖に炭素中心ラジカル及びケチルラジカルを式8にしたがって形成する。
式8:
【化7】

【0082】
ケチルラジカルは、今度は架橋分子のC=C結合の一つと反応することが可能である。ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素中心ラジカルに関しては、主として、図3〜7に図示されるのと同じ反応が起きる。
【0083】
或いは(又は表面架橋分子を使用しない実施形態に限っては)、2つのケトルラジカルが互いに再結合して反応開始剤であるベンゾフェノンのいわゆるピナコール(例えばベンゾピナコール(benzpinacol))を形成する。
【0084】
光分解されるラジカル形成剤分子を適用する場合、ラジカル形成剤分子の一部しかポリマー鎖間の架橋に含まれないが、光還元されるラジカル形成剤分子の場合、その還元形態(ヒドロキシル基に還元されるカルボニル基を含む)ではラジカル形成剤分子全体が、ポリマー鎖間の架橋によって含まれることに留意すべきである。
【0085】
したがって、光分解されるラジカル形成剤分子の場合、ポリマー鎖間の架橋に含まれる反応生成物は、初期のラジカル形成剤分子のほんの一部(典型的には、初期の前記分子の半分)である。
【0086】
光還元されるラジカル形成剤分子の場合、ポリマー鎖間の架橋に含まれる反応生成物は、その還元形態(ヒドロキシル基に還元されるカルボニル基を含む)のラジカル形成剤分子全体である。
【0087】
表面架橋分子の反応生成物は、両方の種類のラジカル形成剤分子に関して、初期の架橋分子であり、ここで、これらC=C二重結合は、ラジカル形成剤分子から形成されたラジカルと反応して(又はポリマー鎖セグメント内に形成された炭素中心ラジカルと直接反応して)、C−C一重結合に転化される。
【0088】
本発明の両方の種類のラジカル形成剤分子に関する好ましい実施形態では、表面架橋分子は、2つを超えるC=C二重結合を含む−これら実施形態では、2つを超えるポリマー鎖セグメントが、上述の反応機構にしたがって互いに架橋され得る。これら実施形態では、架橋に含まれるラジカル形成剤分子の反応生成物の数は、架橋分子に含まれるC=C二重結合の数と等しい。
【0089】
理論的に、放射活性化可能なラジカル形成剤分子から形成されるラジカルは、照射時に、ポリマー鎖セグメントに含まれるカルボキシル基と反応する場合もある。しかしながら、ラジカルは脂肪族C−H結合を反応する可能性が高く、カルボキシル基は強力に偏極されているので、熱力学的に及び動力学的に、ラジカルがカルボキシル基に含まれるO−H結合から水素ラジカルを取り去ることができる可能性はむしろ低い。
【0090】
基本的に、ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素−水素結合から水素原子を取り去る代わりに、ポリマー鎖から完全なカルボキシル基を取り去る(脱炭酸化)ことも可能である。この反応の結果は水素原子を取り去るのと同じであり、即ち、炭素中心ラジカルがSAP粒子表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に形成される。
【0091】
本発明によると、架橋分子の1種のみを使用してもよく、或いは、2つ以上の化学的に異なる架橋分子を適用することができる。同様に、1種の放射活性化可能なラジカル形成剤分子のみを使用してもよく、或いは、2つ以上の化学的に異なる放射活性化可能なラジカル形成剤分子を適用することができる。
【0092】
本発明の方法を用いることで、SAP粒子の表面架橋が可能な反応部位の数が、当該技術分野において既知の表面架橋と比べて大幅に増加する。したがって、当該技術分野において既知の表面架橋に比べて、はるかに均一かつ一様な表面架橋を達成可能である。表面架橋がSAP粒子表面に均質に分布しているので、全体的なSAP粒子の剛性及びゲル強度を向上させるために、当該技術分野において周知の表面架橋の場合のように必ずしも全体的な表面架橋の数を増加させなくてもよい。
【0093】
一様に分布した表面架橋を備えるSAP粒子を得ることを確実にするため、ラジカル形成分子及び任意の表面架橋分子をSAP粒子上に一様に分布させなければならない。そのため、表面架橋剤は、好ましくはSAP粒子上に噴霧することにより適用される。
【0094】
また、従来技術において既知である表面架橋と比較すると、本発明による表面架橋ははるかに迅速である高温下で行われる従来技術の表面架橋反応は通常、最長45分かかる。時間がかかるこのプロセス工程では、SAP粒子の製造プロセスが望ましいほど経済的にならない。反対に、本発明による架橋プロセスは典型的には数分以内という有意に短い反応時間内で実施されることが可能であり、したがって、SAP粒子の製造時間の全体的な改善が可能となる。これによりエネルギーコストが下がり処理量が増加する。
【0095】
さらに、表面架橋反応が迅速に進行するため、SAP粒子の表面上に適用されたラジカル形成剤分子及び、所望により、表面架橋分子がSAP粒子の内部に浸透する時間は少ない。したがって、先行技術の表面架橋と比較して、SAP粒子表面への表面架橋を実際に制限してSAP粒子のコアにおける望ましくないさらなる架橋反応を回避することが容易である。
【0096】
本発明の他の利点は中和の工程を参照する。多くの場合α,β−不飽和カルボン酸モノマー類は重合プロセスの前に中和される(事前中和(pre-neutralization))。モノマーの酸性基を中和するのに有用な化合物は、典型的には、重合プロセスに有害な影響を及ぼさずに酸性基を十分に中和するものである。前記化合物としてはアルカリ金属の水酸化物類、炭酸及び重炭酸のアルカリ金属塩類が挙げられる。好ましくは、モノマー類の中和に使用する材料は水酸化ナトリウム又はカリウム、若しくは炭酸ナトリウム又はカリウムである。結果として、ポリマーのα,β−不飽和カルボン酸が含むカルボキシル基が少なくとも部分的に中和される。水酸化ナトリウムを使用する場合、中和によってアクリル酸ナトリウムが生じ、これが水中でマイナスに帯電したアクリル酸モノマーとプラスに帯電したナトリウムイオンとに解離する。当該技術分野で既知の表面架橋剤はポリマーのカルボキシル基と反応するので、中和の程度は表面架橋の必要性と平衡を保たせなければならない。何故なら、両方の工程がカルボキシル基を使用するからである。
【0097】
水溶液を吸収した後の最終的なSAP粒子が膨張状態にある場合、ナトリウムイオンはSAP粒子内を自由に移動することができる。おむつ又はトレーニングパンツなどの吸収性物品において、SAP粒子は典型的には尿を吸収する。蒸留水と比較して、尿には、少なくとも部分的に解離した形態で存在する塩が比較的多く含まれている。尿に含まれる解離した塩のために、液体はSAP粒子内に吸収されにくくなる。それは、解離した塩のイオンに起因する浸透圧に逆らって液体を吸収しなければならないからである。SAP粒子内で自由に移動することができるナトリウムイオンは浸透圧を低下させるので、液体が粒子内に吸収されるのを大きく促進する。したがって、高程度の中和は、概して、SAP粒子の能力及び液体吸収速度を大いに高めることができる。
【0098】
さらに、高程度の中和は通常材料費を削減し、その結果SAP粒子の全体的な製造コストもまた削減する。ポリマーを中和するために一般に使用される水酸化ナトリウムは、今日のSAPの最も好ましいポリマーであるアクリル酸と比較して安価である。したがって、中和の程度を高くすると所定量のSAP含まれる水酸化ナトリウムの量が増加する。その結果、SAPの製造に必要なアクリル酸の量が少なくなる。
【0099】
本発明のさらなる利点は、表面架橋プロセス中の望ましくない副反応の低減である。従来技術から知られている表面架橋は、通常約150℃以上の高温を必要とする。これらの温度では、表面架橋反応が達成されるだけでなく、例えば、ポリマー内での無水物形成又はアクリル酸モノマー類によって先に形成された二量体の二量体開裂などの多数の他の反応も起こる。これらの副反応は、能力の低下したSAP粒子をもたらすので、きわめて望ましくない。
【0100】
本発明による表面架橋プロセスは、必ずしも高温を必要とするわけではなく中温でも実施できるので、前記の副反応は大幅に軽減する。本発明によると、望ましくない副反応を回避するため、表面架橋反応を100℃未満の温度で実施することができるのが好ましい。
【0101】
さらに、従来技術から知られている表面架橋プロセスにおいて一般的に適用される約150℃以上の高温では、SAP粒子の色が白色から黄味がかった色へと変化することがある。本発明の方法においては表面架橋に必要な温度が引き下げられるため、SAP粒子の色の劣化の問題が大幅に減少する。
【0102】
好ましくはないが任意で、例えば1,4−ブタンジオールなどの当該技術分野で既知の熱活性化可能な表面架橋剤の1以上と共に、本発明の方法による表面架橋を実施することが可能である。しかしながらこの場合、紫外線と上昇した温度(典型的には140℃を超える)の両方が必要である。これら実施形態では、結果として得られるSAP粒子の表面はさらに熱活性化可能な表面架橋剤の反応生成物を含む。
【0103】
本発明の方法は、未反応の表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤分子を洗い流すため、或いは副反応によって形成された分子を洗い流すために任意の洗浄工程をさらに含んでいてもよい。
【0104】
紫外線照射
本発明では、SAP粒子を紫外線(UV)照射に暴露する。電磁スペクトルのUV領域は100nm〜380nmに規定されており、次の範囲に分けられる:UV−A(315nm〜400nm)、UV−B(280nm〜315nm)、UV−C(200nm〜280nm)、及び真空UV(VUV)(100nm〜200nm)。
【0105】
UV−A、UV−B、又はUV−Cの範囲内の紫外線照射は、光開始剤の存在、濃度、及び性質よって左右され、市販の水銀アーク又はメタルハライド照射源が使用できる。照射源の選択はラジカル反応開始剤の吸収スペクトル及び使用される反応装置の形状に依存する。UV−Bの範囲が上記の好ましい開始剤と組合せにおいて最も好都合であることが証明された。
【0106】
照射源は任意でガスを用いて冷却することが可能であり、その目的のために照射源を冷却スリーブに埋め込んでも、又は照射源が冷却スリーブを包含してもよい。
【0107】
ドラム反応装置及び方法
本発明の表面架橋の方法を実施する本発明の光化学反応装置は、図1に図示されるようなドラム反応装置である。
【0108】
ドラム反応装置10は、好ましくは円形(round)(例えば丸(circular))若しくは楕円形の断面を有する中空ドラム20を含む。ドラム20の断面はまた、多角形、例えば三角形、四角形、又はさらに角の数が多くてもよい。しかしながら、多角形の実施形態において、角の数は多い方が好ましく、好ましくは角の数が>4、さらに好ましくは>6、より好ましくは>8である。ドラムは、例えばガラス、プレキシグラス(商標)のような合成材料、又は金属などのあらゆる種類の材料から製造することができる。材料が不透明か透明かは本発明にとって重要ではない。ドラム29は長手軸30を有する。ドラムの長手方向延伸部は一般に断面より長い。楕円形の直径を有するドラムでは、長手方向の延伸部は一般に最も大きい直径よりも大きい。ドラムは、下部長手軸部分120及び上部長手軸部分130をさらに含む(しかしながら、ドラムは使用中は回転するので、上部及び下部長手軸部分は常にドラムの異なる物理的部分となる)。
【0109】
紫外線照射源40は、好ましくはドラム20内に実装され、より好ましは長手軸30に沿って、長手軸30と平行に、又は長手軸30に対してわずかに傾斜されてのいずれかで実装される。しかしながら、好ましくはないが、照射源40をドラムの外側に設置することも可能であり、その場合照射がドラム内のSAP粒子に到達できるように設置しなければならない。照射源がドラム内に設置される実施形態において、ドラム20内の組立を容易にするように照射源40の寸法を適宜選択されなければならない。ドラム20の寸法及びドラム内でのSAP粒子の意図される流量に応じて、1つの照射源又は2つ以上の照射源のいずれかが必要である可能性がある。棒状体の照射源40は、棒状体でない照射源40に比べて本発明のドラム20での使用が容易であるので、好ましい。
【0110】
ドラム20は水平に位置付けることも可能であるが、ドラム20は傾斜した様態で設置されるのが好ましい。即ち、長手軸30は水平でなくαの角度で傾斜する(水平な実施形態では、角度αはゼロである)。傾斜した実施形態では、ドラム20の一方の末端部は上部末端部50であり、反対の末端部は下部末端部60である。
【0111】
反応装置はSAP粒子をドラム20に供給する手段をさらに含む。供給手段70はドラムの一方の末端部に設けられる。傾斜した実施形態では、供給手段70が設けられた末端部は上部末端部50である。供給手段70は、例えば移送用スクリュー又は任意のその他の好適な手段であってもよい。
【0112】
SAP粒子の乾燥は、好ましくはSAP粒子がドラム反応装置に供給される前に行われる。SAP粒子が粒塊する傾向が大幅に軽減されるので、乾燥したSAP粒子をドラム反応装置を通して移送する方が膨張したSAP粒子を移送するよりも容易である。
【0113】
それでも本発明の表面架橋をSAP粒子に施した後に乾燥が行われる場合には、流動性エンハンサーを使用することにより粒塊の可能性を軽減させることができる。
【0114】
反応装置は収集手段80をさらに含む。収集手段80は、ドラム20のSAP粒子供給手段70と反対側の末端部に設けられるのが好ましく、表面架橋された後でドラム20から出ていくSAP粒子を収集する。傾斜した実施形態では、収集手段80が設置される末端部は好ましくは下部末端部60である。収集手段80は、例えばじょうご又はその他任意の好適な手段であり得る。
【0115】
或いは、照射源40がドラム20の全長手方向延伸部に沿って設けられていない実施形態では、収集手段はまたドラム内に下部末端部60に向かって設置されてもよく、この場合下部末端部60は、粒子がドラムから出られるように開放されておらず、閉鎖されている。かかる実施形態では、SAP粒子は連続的又は不連続的にドラム20に供給され、ドラム内を移動する間に照射され、ドラムの中の下部末端部60に向かう部分に堆積する。照射源が設置されていない又は照射源が遮蔽されている場合にはドラム部分の中のSAP粒子は照射されない。一定量のSAP粒子が堆積するとドラムの下部末端部が開き、SAP粒子はドラムから出ていくことができる。
【0116】
本発明の方法によると、ドラム20は長手軸20の周りを回転する。したがって、ドラム反応装置10にはドラム20の回転を駆動する駆動手段が用意される(図1には図示されず)。駆動手段は、例えばモーターなどの当該技術分野で既知の好適な任意の手段であってよい。さらに、ドラム20を安定させるために例えば支持ロール90のような支持手段が任意で設けられてもよい。典型的には、ドラムはフレーム内に実装される(図1には図示されず)。ドラムが回転するが、本方法が実施されている間ドラム内紫外線照射源は回転する必要はない。
【0117】
照射源40がドラム20内に設置されている実施形態では、ドラム反応装置10はまたスクリーン100も備えているのが好ましく、スクリーン100は好ましくは放物面鏡である。スクリーン100はドラム20内の紫外線照射源の上に設けられる。紫外線照射源と同様に、スクリーンもまたドラムが回転している時に紫外線照射源の周りを回転しない。
【0118】
本発明の方法は連続的なプロセスで実施される、即ち、SAP粒子が連続的にドラム反応装置に供給され、また連続的にドラムを出て行くのが好ましい一方で、本方法はまたバッチプロセスにおいて不連続的に実施されることも可能である。この場合、一定量のSAP粒子がドラム20に供給され、回転しているドラム20の中で照射され、次のSAP粒子のバッチがドラム20に入る前に取り出される。
【0119】
本発明の方法によると、SAP粒子は供給手段70を介してドラムに供給される。SAP粒子がドラム20を通って移動するとき、ドラムは軸の周りを回転し、これによりSAP粒子を静かに攪拌する。ドラムを通る間、SAP粒子は照射源40によって紫外線を照射され、これにより表面架橋反応が開始される及び反応が起こる。ドラム20の末端部において、SAP粒子はドラムから出て収集手段80によって収集される。
【0120】
SAP粒子は通常粒径分布を有し、典型的には10μm〜1000μmの範囲である。本方法の再現性(reproducibility)を増加させるため、照射の間に生じてもよい粒径識別の影響は回避される。特に、大きな粒子が反応装置を速く通過し、このため受ける照射量が小さな粒子よりも少なくなることは避けなければならない。
【0121】
理論に束縛されるものではないが、何千もの共有結合が連鎖反応機構を介して吸収された光子ごとに作り出される重合反応に反し、本発明の反応は一般に、紫外線の化学量論的光子の量を必要とすると考えられる。ではあるが、表面に均一な架橋構造を得るためには、全粒子の表面領域の完全な暴露が達成される必要がある。
【0122】
ドラム20反応装置の重要な運転パラメーターは、傾斜角度α、ドラム20内の照射源40の位置、ランプに対する任意のスクリーンの位置、ドラム20内のガス雰囲気の組成物、ドラム20の回転速度、及び(ランプのパワーに応じた)照射源の放出強度(emittance)である。さらに重要なパラメーターはドラムの壁の内側表面の特徴である。スクリーン100を使用する場合、照射源40に対するスクリーン100の位置はさらに可変的である。追加の過熱は典型的には必要ない。
【0123】
傾斜角αはドラムの水平な線と長手軸30との間の角度である。ドラム20の傾斜角αはSAP粒子の動きに対する重力のインパクトを決定する。傾斜角度は0°〜80°であり得る。好ましい実施形態において傾斜角度は0°を超過し、さらに好ましくは傾斜角度は0.5°〜45°、及びなおさらに好ましくは1°〜30°である。
【0124】
好ましくは、SAP粒子の移動の一次駆動力(primary driving force)は重力である。しかしながら、傾斜角度を0まで下げることも可能である。これらの実施形態では、SAP粒子はドラム反応装置に供給され、「壁」がドラム反応装置の供給側に設けられてSAP粒子を最初に正しい方向に移動する。一旦粒子がドラムの内側に入ると、SAP粒子がドラムに供給される規定された方向への動きと共に、ドラムの回転がSAP粒子をらせん形通路の中に移動させ、SAP粒子がドラムを通って運ばれる。
【0125】
傾斜角度が0°のドラムがバッチプロセスで使用される場合、回転が始まる前にSAP粒子がドラムの長さに沿って均一に広がることも可能である(初めに規定された方向ではない)。これら実施形態のSAP粒子はドラムの回転中にドラムの中に供給されないので、SAP粒子はらせん形通路の中に押し進められない。SAP粒子は紫外線照射された後ドラムから取り出される。
【0126】
ドラム20内の照射源40の位置が、SAP粒子と照射源との間の距離を決定する。ドラム内を移動するSAP粒子は、ドラムの内側表面の全体にわたって均一に分布せず、重力によって主にドラムの下側部分に沿って移動する。このように、ほとんどのSAP粒子はドラム内のらせん状通路全体をたどらず、部分的にらせん状通路をたどるだけであり、ドラムの「壁」を登っている時に一定の「高さ」に一旦達すると、SAP粒子は重力によって落ちて戻ってくる。
【0127】
したがって、照射源40がドラムの下部120に向かって配置されると(回転していない状態のドラムを参照のこと)、照射源とSAP粒子との間の距離は比較的小さくなる。もしも照射源がドラムの上部130に向かって配置されると(回転していない状態のドラムを参照のこと)、照射源とSAP粒子との間の距離は大きくなる。
【0128】
本発明では、紫外線ランプの電力は、ドラム反応装置の寸法、及び所与の時間間隔でドラムを通って移動するSAP粒子の意図される量に大きく左右される。小さな貫流の小さなドラム反応装置では、1kW〜2kWの電力のUVランプが使用されてよい。しかしながら、比較的大きなドラム反応装置では、最大24kWまでの、又はそれ以上の電力のUVランプが好ましい。ドラム反応装置内での照射時間は、好ましくは1分〜30分、さらに好ましくは2分〜15分、より好ましくは2分〜5分である。UVランプと架橋されるSAP粒子との間の距離は、好ましくは1cm〜15cmの間で変化する。
【0129】
一般に、ドラムの回転が個々のSAP粒子を、ドラムを一直線に回転するよりある程度らせん状の通路(quasi helical path)に従うように移動させる。したがって、回転速度を速くすることによって、ドラムの中のSAP粒子の滞留時間を長くすることが可能である。しかしながら、ドラムの回転速度は、遠心力がSAP粒子をドラムの内側表面に沿って均一に分布するような程度まで、回転を速くするようには意図されていない。回転はSAP粒子のらせん状の動きに基本的に有利に働くが、回転速度はSAP粒子のほとんどがドラムの下部に留まるように調節されなければならず、内側表面の「登り(climbing up)」は制限される。
【0130】
ドラムの回転はSAP粒子の緩やかなせん断運動を容易にし、これにより、SAP粒子が回転してSAP粒子の表面全部が均質に紫外線に暴露されることが達成することを確実にする。同時に、SAP粒子は、SAP粒子表面の新しく引き起こされた架橋を破壊する可能性のある、最小限の磨耗を被る。
【0131】
好ましくは、ドラムの回転速度は1rpm(0.1rad/秒)〜180rpm(18.8rad/秒)、より好ましくは5rpm(0.5rad/秒)〜100rpm(10.5rad/秒)、さらに好ましくは10rpm(1.05rad/秒)〜60rpm(6.3rad/秒)である。しかしながら、適切な回転速度はドラムの断面に大きく左右される。
【0132】
ドラムの中のSAP粒子の滞留時間は、ドラムの内側表面の粗さによってさらに調節される。ドラムの内側表面が比較的粗い場合は、比較的平坦な内側表面と比較して、SAP粒子はゆっくり移動する(所与の回転速度で)。表面が粗いほど、所与の回転速度でのSAP粒子のらせん側の動きは(helical side movement)激しくなる。さらに、ドラムの内側表面の一定の部分に隆起した又は低くなった障害物を導入することにより、SAP粒子のドラム内の滞留時間をさらに長くすることが可能である。これは、特にドラムの傾斜角度αが比較的大きい場合に、ドラムを通るSAP粒子の動きを減速させるためになされてもよい。
【0133】
一つの可能な障害物の実施形態は、ドラム内のらせん形状の障害物(図1には図示されず)である。らせん形状の障害物は、ドラムの内側表面と密着させて配置される。障害物はドラムの内側表面に刻み込まれることができ、或いは、ドラムの表面の上に隆起させてもよい。らせん形状の障害物はドラムの回転とともに回転することが可能であり(例えば、ドラムの内側表面上に固定されている、又はドラムの内側表面に刻み込まれている実施形態において)、又は、より好ましくはらせん形状の障害物はドラムの回転方向と反対方向に回転することが可能である(これは、らせん形状の障害物がドラムの内側表面に刻み込まれている実施形態では明らかに有効でない)。さらに、らせん形状の障害物は、ドラムの回転中に全く回転しないように構成することも可能である(今回も、らせん形状の障害物がドラムの内側表面に刻み込まれている実施形態では不可能である)。らせん形状の障害物は、SAP粒子のドラム内での滞留時間が、らせん形状の障害物のない同様のドラムと比べて長くなるように構成されることができる。
【0134】
好ましくはないが、らせん形状の障害物を含み、ドラムが傾斜したやり方で(α>0°)配置されている実施形態では、SAP粒子をドラムの下部末端部60に供給してSAP粒子を内側表面に沿ってドラムの上方に移動させることができる。かかる実施形態では、らせん形状の障害物はドラムと同じ方向に回転しなければならない。らせん形状の障害物は、SAP粒子がらせん状通路に沿ってドラム全体に移動することを確実にする。紫外線照射の後、SAP粒子は、収集手段80が設置されているドラムの上部末端部50でドラムから出る。これらの実施形態では、SAP粒子の運搬は、らせん形状の障害物を介して重力に逆らって促進される。ドラム内の上述のらせんは、勿論>0°の傾斜角度を有する実施形態の反応装置にも用いることができる。
【0135】
また、不連続なプロセスが用いられ、ドラムが傾斜したやり方(α>0°)で設けられている場合は、SAP粒子を下部末端部60でドラムの中に供給し、ドラム内に設置されたらせん形状の障害物によって粒子が照射されている間に粒子は上方に移動することが可能であり、粒子はまた下部末端部を通ってドラムから出ることが可能である。続いて、SAP粒子の次のバッチを下部末端部60でドラムの中に供給することができる。かかる実施形態では、供給手段70と収集手段80の両方がドラムの同じ(下部)末端部に設置される。
【0136】
しかしながら、SAP粒子が互いに重なると下にある粒子の受ける紫外線照射が少なくなるので、ドラムの中のSAP粒子の層の数は、干渉効果を最小限にするために少なめに保たなければならない。反対に、経済的な理由では高生産性が望ましい。所与の反応装置の形状にとっては、各SAP粒子がほぼ同じ紫外線照射量を受けるように、ドラムの中でSAP粒子が十分に混ぜ合わせられることを確実にすることによって、技術/商業効率の向上をはかることができる。この目的を達成するため、全てのSAP粒子が十分に照射されて所望の表面架橋を得ることを確実にするために、ドラムの長さを延伸することが望ましい場合がある。
【0137】
親水性非晶質シリカなどの、当該分野で広く知られている、例えばデグサ社(Degussa Corp)から市販されている流動性エンハンサーを、例えばSAP粒子の水分含有量が比較的高い場合に粒塊の形成を回避するために、ドラムの中のSAP粒子に任意で添加することができる。流動性エンハンサーは通常SAP粒子の重量の0.1重量%〜SAP粒子の重量の10重量%の範囲で適用される。
【0138】
もしもSAP粒子の処理量が増加する場合は、全てのSAP粒子が効率的に照射されて所望の表面架橋を得ることを確実にするために、ランプの電力及び/又はランプの数を適宜調節すべきである
本発明の好ましい実施形態では、もしも照射源がドラム20内に設けられる場合は、照射源40の上部に設けられるスクリーン100がドラムに設置される。
【0139】
スクリーンは、スクリーンの上方領域内の照射源40を外から見えないようにする。したがって、ドラム130の上方部、ひいてはドラム130の上方部の表面に沿って異動するSAP粒子も照射されない。SAP粒子が照射されるのをどの程度防止するかは、スクリーンの寸法を適宜選択することによって調節することができる。ドラムに供給されるSAP粒子が大きな粒径分布を有している場合は、大きい粒子より小さい粒子の方が一般にドラムの内側表面に付着する及びドラムを通ってらせん状の通路をたどる傾向が大きい。その結果、小さなSAP粒子は大きいSAP粒子に比べてドラム内での滞留時間が長い。小さなSAP粒子は「壁を登る」時に影で覆われるので、スクリーンは、壁に付着する小さなSAP粒子が過度な割合の高いUV照射量を受けるのを防止する。
【0140】
好ましい実施形態では、スクリーンは放物面鏡から成る。照射吸収ガスがない場合、鏡はドラム20の下側部分を移動するSAP粒子の流れに照射を反射することができ、これにより照射の効率が増加する。
【0141】
また、スクリーン100は内側表面の上側部分130から落ちてくる粒子から照射源を保護する。
【0142】
本発明の方法はコスト削減のため通常大気の下で行われるのが好ましい。また、理論に束縛されるものではないが、バイラジカルである酸素は、照射された時に中間体ペロキシルラジカルの形成よって反応気機構に関与することができるので、通常大気は改善された表面架橋の結果を得ることを可能にすると考えられる。したがって、利用できるラジカルの数が増えてSAP粒子の表面のポリマー鎖のポリマー主鎖の中の炭素中心ラジカルの形成を可能にする。水分子はUV−A、−B又は−C照射を吸収しないので、湿度の程度は本発明の紫外線照射にとって重要ではない。
【0143】
本発明の方法が通常大気下で実施される場合は、所望のガス環境を用意及び維持するための手段110(例えば、窒素又は強化された水蒸気圧)が用意される。ドラムだけを所望の雰囲気下で保持すること、或いはまた図1に示されるように、反応装置10又はドラム20を含む反応装置の一部を手段110によりガス相を制御することが可能な容器内に設置することにより、反応装置10全体又は少なくともドラム20及びそのすぐ周辺を不活性雰囲気下に保持することが可能である。
【0144】
ドラム20の中の温度は、好ましくは20℃〜99℃、さらに好ましくは20℃〜77℃、最も好ましくは20℃〜50℃である。
【0145】
現状技術の表面架橋方法で必要とされる装置と比べ、本発明の方法に使用されるドラム反応装置は軽量であり必要なスペースも少ない。さらに、装置は安価である。
【0146】
本発明のドラム反応装置の代替物として、棒状体照射源を中心に有する放射状対称的配置(radial symmetric geometry)の流動床反応装置が検討されてもよい。本発明のドラム反応装置とは対照的に、流動床反応装置はガスの生成を必要とする。
【0147】
流動床反応装置の不利な点は、大きな直径の(即ち、重さが大きい)SAP粒子はより速く沈殿し、したがって小さいSAP粒子と比べて少ない放射量の照射に暴露される点である。異なる寸法のSAP粒子へのかかる不均一な紫外線照射は、異なる寸法のSAP粒子の表面架橋に対するばらつきが比較的大きくなる可能性がある。同じ議論が、紫外線への暴露を容易にするための振動板の使用にも当てはまる。
【0148】
これに対し、本発明のドラム反応装置はドラムの中のSAP粒子の高度に再現可能な滞留時間を可能とする。ドラムの内部でのSAP粒子の逆混合(back-mixing)はほんのわずかであり、似たような寸法のSAP粒子はドラム内で極めて類似した滞留時間を有する。さらに、もしも大きく異なる寸法のSAP粒子が使用されるときは、スクリーンの干渉効果(shadowing effect)を利用すれば全てのSAP粒子がその寸法に関わらず同様の紫外線照射量に暴露されることができる。
【0149】
本発明のドラム反応装置と比較して流動床反応装置のさらなる不利な点は、流動床反応装置はガス流量の制御のために高価な投資を必要とすることである。
【0150】
また、力強い攪拌と比べて剪断運動が穏やかなため、ドラム反応装置は流動床反応装置と比べて磨耗が少なくて済む。
【0151】
一つのパラメーターの変化が少なくとも一つの他のパラメーターの変化及び調節を必要とする場合があるように、上記の様々な関連パラメーターは多くの場合互いに関係しあっている。例えば、紫外線ランプの電力は本方法に必要な紫外線ランプの数全体に影響を及ぼす。さらに、紫外線ランプの寸法及び全体の数はドラムの直径及び長さに影響を及ぼす可能性がある。ドラムの長さ、傾斜角度、及び回転速度の全てがSAP粒子のドラム内での滞留時間に影響を与えるので、ドラムの長さはドラムの所要の傾斜角度及び回転速度に影響を与える可能性がある。このように、本方法の所望の変化を得るために、一つのパラメーター又はその他のパラメーターを代替的に変える、若しくは1以上のパラメーターを変えることが可能である。
【0152】
しかしながら、様々なパラメーターを定期的に調節することにより、本発明の方法により得たSAP粒子が所望の程度の表面架橋を有するまで、本発明の方法を容易に及び比較的迅速に最適化することが可能である。
【0153】
吸収性物品
本発明の方法により製造されたSAP粒子は、吸収性物品の吸収性コア内に適用される。本明細書で使用する時、吸収性物品とは、液体を吸収して収容する道具を指し、より具体的には、着用者の身体に接触させたり隣接させたりして、身体から排泄される様々な排出物を吸収して収容する道具を指す。吸収性物品としては、おむつ、成人用失禁ブリーフ、おむつホルダー及びおむつライナー、生理用ナプキン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
本発明の好ましい吸収性物品はおむつである。本明細書で使用する時、「おむつ」とは、一般に乳幼児及び失禁者が胴体下部の周囲に着用する吸収性物品を指す。
【0155】
本発明に特に好適な吸収性物品は、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、一般には前記トップシートとバックシート間に配置した吸収性コアを備えた外側カバーから典型的には構成される。吸収性コアは、概ね圧縮性で、体型に合いやすく、着用者の皮膚に対して非刺激性で、尿及び他の特定の身体滲出物のような液体を吸収して保持できる、いずれの吸収性材料も含んでよい。吸収性コアには、本発明のSAP粒子に加え、使い捨ておむつと他の吸収性物品で通常使用される、一般にエアフェルトと呼ばれる粉砕木材パルプなどの多種多様の液体吸収性材料を含有させてもよい。
【0156】
吸収性アセンブリとして使用するための代表的な吸収性構造については、1992年8月11日にヘロン(Herron)らに付与された米国特許第5,137,537号、名称「個別のポリカルボン酸架橋木材パルプセルロース繊維を含有する吸収性構造(Absorbent Structure Containing Individualized, Polycarboxylic Acid Crosslinked Wood Pulp Cellulose Fibers)」、1992年9月15日にヤング(Young)らに付与された米国特許第5,147,345号、名称「失禁管理のための高効率吸収性物品(High Efficiency Absorbent Articles For Incontinence Management)」、1994年8月30日にロウ(Roe)に付与された米国特許第5,342,338号、名称「低粘性の糞便物質のための使い捨て吸収性物品(Disposable Absorbent Article For Low-Viscosity Fecal Material)」、1993年11月9日にデマレ(DesMarais)らに付与された米国特許第5,260,345号、名称「水性体液のための吸収性フォーム材料及び該材料を含有する吸収性物品(Absorbent Foam Materials For Aqueous Body Fluids and Absorbent Articles Containing Such Materials)」、1995年2月7日にダイアー(Dyer)らに付与された米国特許第5,387,207号、名称「水性体液のための薄いユニット状湿潤吸収性フォーム材料及びそれらの製造プロセス(Thin-Until-Wet Absorbent Foam Materials For Aqueous Body Fluids And Process For Making Same)」、1995年3月14日にラボン(LaVon)らに付与された米国特許第5,397,316号、名称「拡張可能な吸収性材料で形成された、水性体液のためのスリット付き吸収性部材(Slitted Absorbent Members For Aqueous Body Fluids Formed Of Expandable Absorbent Materials)」、並びに米国特許第5,625,222号、名称「水性流体のための吸収性フォーム材料(Absorbent Foam Materials For Aqueous Fluids Made From high In al.、1997年7月22日)に記載されている。
【0157】
試験方法
SAP粒子の容量は多くの場合遠心分離機保持容量値(CRC)に換算して表される。CRCの試験方法はEDANA方法(EDANA method)441.2−02に記載されている。
【0158】
一定の圧力下でのSAP粒子の性質を説明するために一般に用いられるパラメーターはAAP(加圧下吸収倍率(absorbency against pressure))である。AAPはEDANA方法(EDANA method)441.2−02にしたがって測定される。
【0159】
SAP粒子に含まれるジェルベッドの透過性は、一般に塩水流伝導度(SFC)として測定される。SFCを測定するための試験方法は、1996年19月8日にゴールドマン(Goldman)らに付与された米国特許第5,562,646号に記載されている。本発明では米国特許第5,562,646号の試験方法を改良し、ジャイコ溶液(Jayco solution)の代わりに0.9%NaClを使用した。
【実施例】
【0160】
ベースポリマー:
ベースポリマーとして、国際公開特許WO2005/014066A1(名称「コーティングされた水膨潤性材料を含む吸収性物品(Absorbent articles comprising coated water-swellable material)」、2005年2月17日出願)の実施例1.2に記載の水膨潤性ポリマーを使用した。しかしながら、MBAAの量は、実施例と同様にCRC値が37.5g/gのSAP粒子を得るために、定期的に適宜調節しなければならない。国際公開特許WO2005/014066A1の実施例1.2に記載されているCCRC法(CCRC way)と同じやり方でCRC値を調節することが基本的に可能であることに留意されたい。
【0161】
実施例で使用されるドラム反応装置は、長さ40cm、直径11cmである。ラムはガラスで製造され、ドラムの内側表面はわずかに粗くレンダリングした。粗さの程度は、SAP粒子のドラム内での滞留時間が1分になるように調節する。ドラムの内側表面には一様に配置された粗さを設ける、即ち、ドラム内には、異なる粗さの程度を有する異なる領域がないようにする。
【0162】
ドラム内に、長さ40cmのロッドタイプの2kW中圧水銀ランプ(TQ2024.100、ヘレウス・ノーブルライト社(Heraeus Noblelight))を実装する。照射源はドラムの長手軸に設置する。ドラムは1°の傾斜角度αでフレーム内に実装される。
【0163】
5部のラジカル形成剤ペルオキソ二硫酸ナトリウム、8部の水、及び5部の親水性非晶質シリカの混合物を用意し、次にこの溶液をベースポリマーから成る100部のSAP粒子(=10g)に強く攪拌しながら加える。次に、サンプルを10分間放置した。調製は通常(周囲)大気下で20℃で行われる。その後、ドラムを11rpm(1.15rad/秒)の速度で回転させながら、アルキメデス・スクリュー(Archimedes screw)を介して、20.2g/分の速度で、混合物を全てドラムの上部末端部に供給する。この回転速度は、SAP粒子の紫外線照射の間一定に保つ。表面架橋分子は使用しない。
【0164】
SAP粒子を、ドラム内で雰囲気下で照射する。SAP粒子のドラム内での平均滞留時間が1分になるように測定した。
【0165】
SAP粒子のドラム内での平均滞留時間は、反応装置に供給されるSAP粒子に着色されたSAP粒子を加え、着色された粒子がドラムから出て行くまでにかかる時間を測定することによって決定する。この試験を5回行い、平均時間を計算する。ドラムの長さが照射源の長さと同じであるとき、平均滞留時間は平均照射時間と等しい。
【0166】
ドラム内の温度は20℃に保つ。SAP粒子は、下部末端部においてドラムから出て行く際に収集する。
【0167】
SAP粒子を連続して5回ドラムを通して供給し、サンプルの全てのSAP粒子がドラムから出た後すぐに、再度SAP粒子をドラムに供給する。したがって、SAP粒子は合計5分照射される。
【0168】
最初のSAP粒子(即ち、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、水、及び親水性非晶質シリカと混合される前、及び紫外線照射の前のSAP粒子)のCRC、AAP、及びSFC値、及び紫外線照射後のSAP粒子を、上述の試験方法にしたがって測定した。結果を表1に要約する。
【表1】

【0169】
表面架橋していないSAP粒子(したがって、ベースポリマーからのみ成る)では、SAP粒子の表面に導入した架橋に起因してSAP粒子の膨張が制限されていないので、CRC値は高めである。表面架橋の後、SAP粒子のCRC値は減少する。
【0170】
これに対し、非表面架橋SAP粒子のSFC及びAAPの値は非常に低い(値は0まで低くなることが可能である)。SAP粒子は非常に柔軟であるので印加された圧力を十分に吸収せず(低AAP)ゲルブロッキングが生じ、非常に低いSFC値となる。
【0171】
一般に、ベースポリマーからのみ成る非表面架橋SAP粒子と比べ、CRC値の減少と共に増加するSFC及びAAP値は、表面架橋が実際に起こっていることを間接的に証明している。
【0172】
したがって、当該実施例は、本発明の方法によりベースポリマーが実際に表面架橋されたことを示している。
【0173】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれているが、いかなる文献の引用も、それが本発明に対する従来技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0174】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、この発明の要旨及び範囲を逸脱せずに様々なその他の変更及び修正が可能であることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0175】
本明細書にて値が規定されたそれぞれの寸法は、技術寸法であって、これは本発明の背景において、文字通りには解釈されるべきでない。ゆえに、本明細書に規定される寸法と機能的に等価な寸法を有する全ての実施形態は、本発明の範囲で扱われることを意図し、例えば「40mm」の寸法は「約40mm」を意味すると解釈されるべきである。
【0176】
本明細書は、本発明を指摘しかつ明白に請求する特許請求の範囲で完結するが、本発明は、同類の構成要素が同じ参照番号を与えられている添付の明細書と併せて、以下の図面によってさらによく理解できると考えられている。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明によるドラム反応装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋超吸収性ポリマー粒子を含む吸収性物品であって、前記超吸収性ポリマー粒子が、
a)超吸収性ポリマー粒子を用意し、かつ前記超吸収性ポリマー粒子上に適用されるラジカル形成剤分子を用意する工程と、
b)長手軸(30)を有し、断面をさらに有するドラム(20)を備えた反応装置(10)を用意する工程であって、照射源(40)によって放出された放射線が前記ドラム(20)内の超吸収性ポリマー粒子に到達できるように前記照射源(40)が設けられ、前記照射源(40)が201nm〜400nmの波長の紫外線を放出可能なものである、工程と、
c)前記ラジカル形成剤分子がその上に添加された前記超吸収性ポリマー粒子を、前記ドラム(20)内に供給する工程と、
d)前記ドラム(20)をその長手軸(30)の周りに回転させることにより、前記ラジカル形成剤分子がその上に添加された前記超吸収性ポリマー粒子を、前記ドラム(20)内に移動させる工程と、
e)前記超吸収性ポリマー粒子が前記ドラム(20)の中を移動している際に、前記ラジカル形成剤分子がその上に添加された前記超吸収性ポリマー粒子が、前記照射源(40)によって照射される工程と、
f)前記ドラム(20)から出る前記超吸収性ポリマー粒子を収集する工程と
を含む方法によって製造されたものである、吸収性物品。
【請求項2】
前記方法における前記照射源(40)が、前記ドラム(20)内に配置される、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記方法における前記照射源(40)が、前記長手軸(30)に沿って、前記長手軸(30)と平行に、又は前記長手軸(30)に対して傾斜した向き若しくは弧をなして配置される、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記方法における前記照射源(40)とドラム内の前記超吸収性ポリマー粒子との間の距離が1cm〜15cmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記方法における前記ドラム(20)が、円形若しくは楕円形、又は角の数が6を超える多角形である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記方法におけるスクリーン(100)が、前記照射源(40)の上方に設けられる、請求項2〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記方法における前記ドラム(20)が、1rpm(0.1rad/秒)〜180rpm(18.8rad/秒)の速度で回転する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記方法における前記紫外線照射が20℃〜99℃の温度で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記方法における前記紫外線照射が通常大気下で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記方法における前記ラジカル形成剤が、水溶性であり、水溶液に適用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記方法における前記ラジカル形成剤が、ペルオキソ二硫酸ナトリウムである、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記方法における追加の表面架橋分子が、紫外線照射の前に前記超吸収性ポリマー粒子上に適用され、前記表面架橋分子が、C=C二重結合であるか又はヘテロ原子であるXを有するCH−X部分である少なくとも2つの官能基を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記方法における前記超吸収性ポリマー粒子が、連続的に前記ドラム内に供給され、前記超吸収性ポリマー粒子が連続的に前記ドラムから出る、請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504353(P2009−504353A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527226(P2008−527226)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/032886
【国際公開番号】WO2007/024927
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】