説明

紫外線を用いるシミの分類方法

【課題】本発明は、UVカメラを採用する肌画像撮影システムを用い、異なる波長の紫外線を照射して撮像した画像に基づいて、シミを分類する方法を提供する。
【解決手段】肌のシミを分類する方法であって、1)被写体の顔の肌画像を少なくとも1つ以上の異なる波長の紫外線で撮像するステップと、2)該被写体の顔の肌画像を可視光で撮像するステップと、3)前記ステップ1)で撮像した肌画像を前記ステップ2)で撮像した肌画像と比較し、対象とするシミのコントラストの増減を判定するステップとよりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線(UV)を用いるシミの分類方法に係り、より詳細には、偏光フィルタを用いるUV(Ultra Violet)カメラを採用する肌画像撮影装置を用い、異なる波長の紫外線を照射して撮像した画像に基づいて、シミを分類する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康や美容に関心が高まっており、特に、女性の肌の健康や美容に対する関心が非常に高くなってきている。このような状況下で、美容皮膚・形成外科等では、紫外線によってできるシミやそばかすなどを施術する機会が格段に高まっている。例えば、美容医療分野では、IPLやレーザー施術などの光線治療によって、シミ(つまり、日光黒子(老人性色素斑))をなくす治療が行なわれている。
【0003】
しかしながら、シミには、一般的にシミと呼んでいる、日光黒子(老人性色素斑)以外にも、肝斑、雀卵斑、脂漏性角化症及び扁平母斑など様々な種類があり、すべてのシミに対して上述したIPLやレーザー施術を施しているわけではない。通常、肝斑患者にはIPLやレーザー施術などの光線治療を施さないが、肝斑の認識は肉眼や可視光での撮像に基づいた判定では困難であり、日光黒子が、認識が困難な肝斑(隠れ肝斑)と重なって存在する場合、IPL施術をこのような日光黒子に対して施すと、肝斑がさらに悪化するという問題がある。
【0004】
そこで、肝斑の存在を認識できるように、上述したシミの原因となる、メラニンの状態を詳細に観察分析して、UVカメラ画像から、隠れ肝斑を判定する方法及び装置が開示されており、実際に行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】根岸 圭他、「色素性病変治療におけるUVカメラの有用性」、日本美容外科学会会報、第25巻第3号(22〜27頁)別刷、平成15年9月25日発行.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には、非特許文献1で撮像したUV写真の写りが悪く、肝斑の存在を明確に観察することができずに、見落とすこともあり、未だに上述の問題が発生している。
【0006】
したがって、本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、UVカメラを採用する肌画像撮影システムを用い、異なる波長の紫外線を照射して撮像した画像に基づいて、シミを分類する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、波長の異なるUVによって撮像した肌画像では、シミの見えやすさが違うという見解に基づき本発明を開発するに到った。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、肌のシミを分類する方法であって、1)被写体の顔の肌画像を少なくとも1つ以上の異なる波長の紫外線で撮像するステップと、2)該被写体の顔の肌画像を可視光で撮像するステップと、3)前記ステップ1)で撮像した肌画像を前記ステップ2)で撮像した肌画像と比較し、対象とするシミのコントラストの増減を判定するステップとよりなることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、異なる波長の紫外線で撮像することによって、シミの見えやすさが異なる肌画像を取得することができる。これにより、複数種類のシミを容易且つ正確に分類することができる。
【0010】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記少なくとも1つ以上の異なる波長の紫外線は、UVAI、UVAII及びUVBからなる群から選択されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、複数の異なる紫外線を用いることで、各波長別に明瞭な肌画像を取得することができ、より容易且つ正確にシミを分類することができる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記シミは、肝斑、雀卵斑、日光性黒子、脂漏性角化症及び扁平母斑であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、各波長別の肌画像から、より正確なシミの分類をすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法を実施するための被写体の肌画像を撮像する肌画像撮影装置であって、所定の波長からなる紫外線を発光する光源から前記被写体の間に設けられるある特定の方向の光を通過させるための第1の偏光フィルタと、前記第1の偏光フィルタにより偏光され、前記被写体により反射された反射光を受光して肌画像を取得するための撮像手段と、前記被写体と前記撮像手段との間に前記反射光のうち前記第1の偏光フィルタと異なる方向の光を通過させるための第2の偏光フィルタとを有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、肌のテカリを防止して、より鮮明な肌画像を容易に取得することができる。これにより、複数種類のシミを容易且つ正確に分類することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、UVAI、UVAII及びUVBの異なる波長の紫外線を照射して肌を撮像することによって、各波長別に明瞭な肌画像を取得することができ、これに基づいて、可視光線で撮像した肌画像と比較して、容易且つ正確にシミを分類することができる。特に、UV画像の撮像時に偏光フィルタを用いるUVカメラシステムを採用することによって、肌のテカリが抑制され、従来よりも格段に優れた、明瞭なUV画像を得ることができ、容易かつ明確にシミを分類することができる。これによって、特に、隠れ肝斑を容易に分類することができ、ひいては、一般的にシミと呼んでいる、日光黒子(老人性色素斑)に対して上述したIPLやレーザー施術を適切に施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にしたがって実施した具体例を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、その細部については様々な態様が可能である。
【0018】
本発明を実施するにあたり、シミを分類するための具体的な方法として、UVカメラを用いた肌画像撮影システムによる方法を以下に説明する。
【0019】
測定の対象とするシミは、肝斑、雀卵斑、日光性黒子、脂漏性角化症及び扁平母斑とした。(図1参照)本発明では、特に、肝斑でも、隠れ肝斑を容易に分類することができる。
【0020】
被写体(つまり、被験者)に対し、肌画像撮影システムによる写真撮影を行い、撮像した画像の評価を行うことによってシミを分類した。以下に、本発明の方法及び装置を詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明で用いる肌画像撮影装置のシステム構成について説明する。
【0022】
<システム構成>
図2は、肌画像撮影システムの概略構成の一例を示す図である。図2に示す肌画像撮影システム10は、光源11−1,11−2と、撮像手段としてのカメラ12と、第1の偏光フィルタ13−1,13−2と、第2の偏光フィルタ14と、制御装置15とを有するよう構成されている。また、光源11、カメラ12、第1の偏光フィルタ13、及び第2の偏光フィルタ14は、肌画像撮影装置(ユニット)20として構成されている。
【0023】
光源11−1,11−2は、所定の波長からなる紫外線を発光する。なお、図2では、2つの光源11−1,11−2を有した構成となっているが、本考案における光源の数は2つ以上が好ましい。これにより、光量を多くすることができる。また、光源11−1,11−2は、カメラ12からの距離が等しく、被写体1の撮影位置(範囲)からの距離も等しい位置に配置される。なお、光源から発光する紫外線の種類や、光源11とカメラ12との配置関係についての詳細は後述する。
【0024】
なお、光源11は、紫外線を発するストロボ等の照明装置を用いることができる。具体的には、例えばサンパック社製の型番auto22SRやauto30SR、auto36SR等の市販のストロボを使用することができる。なお、紫外線カットフィルタを備えているストロボの場合には、紫外線カットフィルタを除去した仕様のストロボを使用する。
【0025】
また、カメラ12は、光源11−1,11−2からの紫外線が第1の偏光フィルタ13−1,13−2を介して被写体1に照射され、そこから得られる反射光を第2の偏光フィルタ14を介して受光して撮影を行う。
【0026】
ここで、カメラ12は、1280×960、640×480(TVフォーマット)、1344×1024、4256×2848等の解像度を有する市販のUVデジタルカメラ(例えば、ソニー株式会社製の型番XCD−SX900UV、XCD−SX910UV、XC−EU50、浜松ホトニクス株式会社製の型番C8484−16C、BT−CCDカメラC8000等を用いることができる。更に、カメラ12に設けられるレンズ21は、市販の紫外線用レンズを使用することができ、例えば、ペンタックス株式会社製の型番H2520−UVM(焦点距離25mm、絞り値F2.0−16)、B2580−UV(焦点距離25mm、絞り値F2.8−16)、B7838−UV(焦点距離77.55mm、絞り値F3.8−16)等を使用することができる。
【0027】
第1の偏光フィルタ13−1,13−2は、ストロボの発光部等のそれぞれの光源11−1,11−2からの光をある特定の方向に偏光させるためのフィルタである。また、第2の偏光フィルタ14は、第1の偏光フィルタ13−1,13−2を通過したある特定の方向の光が被写体1により反射し、反射した散乱光のうち、ある特定の方向の反射光のみを通過させる。
【0028】
なお、第1の偏光フィルタ13−1,13−2は、それぞれ偏光の方向を同一にし、更に第1の偏光フィルタ13−1,13−2における偏光の向きと、第2の偏光フィルタ14の偏光の向きはお互い異なる方向にする。
【0029】
ここで、図2に示すように、肌画像撮像システム10は、光源11−1,11−2から発光された所定の紫外線を第1の偏光フィルタ13−1,13−2を通して特定の偏光面を有する光とし、その光を被写体1の顔等所定の位置に照射する。被写体1の所定の位置に照射された光は、皮膚表面で反射して表面反射光となる。また、表面反射光は、皮膚表面の凹凸情報を有し、更に皮膚の表面で散乱吸収を繰り返して、再び皮膚表面から出射して肌内部反射光となる。この肌内部反射光は、表皮のシミやそばかす等の肌内部情報を有するものとなる。
【0030】
したがって、上述したように第1の偏光フィルタ13−1,13−2、及び第2の偏光フィルタ14の偏光方向をお互いに異ならせることにより、表面反射光をカットし、内部反射光を通過させることで、シミやそばかす等の状態を明瞭に取得することができる。
【0031】
更に、第1の偏光フィルタ13−1,13−2における偏光の向きと、第2の偏光フィルタ14の偏光の向きはお互いに十字(クロス、90度ずらした)方向になるようにする。これにより、表面反射光を最大限カットすることができるため、テカリを防止して明瞭な肌画像を容易に取得することができる。
【0032】
なお、第1の偏光フィルタ13及び第2の偏光フィルタ14は、具体的には、例えば株式会社ルケオ製の近赤外偏光板(例えば、POLAX−30IR(波長領域850nm〜2000nm:平均透過率30%±3%))等を使用することができる。また、第1の偏光フィルタ13及び第2の偏光フィルタ14の材質は、石英を含む材質であることが好ましく、例えば合成石英等を用いることができる。これにより、安価が材料で、高精度な偏光を実現することができる。なお、偏光板の代わりに拡散板を複数枚組み合わせてある特定の方向のみを通過させる構成にすることもできるが、そうした場合には複数の拡散板を所定の方向に組み合わせるため構成が複雑になり、コストもかかる。更に偏光板と同程度以上にテカリを消すことはできない。
【0033】
また、肌画像撮影装置20は、複数の異なる波長の紫外線(UV)を照射する機能を有し、波長別に撮影した肌画像を取得することができる。例えば、カメラ12は、UVAI(波長が約360〜400nm)、UVAII(波長が約320〜360nm)、UVB(波長が約280〜320nm)、及びViolet(波長が約400〜450nm)の波長別画像を取得することができる。
【0034】
この場合、波長別画像の取得方法は、例えば波長別のバンドパスフィルタを光源11若しくはカメラ12の前に設置して所定の波長の画像のみを取得してもよく、また光源11において、予めUVAI、UVAII、UVB、及びVioletの4種類をそれぞれ発光する光源を設けておき、それを必要に応じて選択してストロボ発光させてもよい。
【0035】
また、制御装置15は、光源11による所定の波長の発光制御や、カメラ12の撮影制御、カメラ12で撮影した肌画像を制御装置15が備えるメモリや補助記憶装置等の蓄積手段に蓄積したり、からの取得した肌画像を制御装置15が備えるディスプレイ等の表示手段に表示したりするための制御を行う。これにより、テカリを防止した明瞭な肌画像を容易に確認することができる。
【0036】
更に、肌画像撮影装置20は、被写体1における顔や手等の所定の撮影範囲をカメラ12からの所定の位置で固定して肌画像を取得することができるように、固定部材としてのフレーム部材22を設けてもよい。レンズの位置から所定距離にあるフレーム部材22に顔や手等の画像取得対象の部位を固定することで、高精度な肌画像を取得することができる。なお、フレーム部材22は、例えば顔を撮影する場合、フレーム部材22の固定台にあごを乗せて固定する。このとき、カメラ方向に対して真正面だけでなく所定の角度傾いた位置で顔を固定することもできる。これにより、左右の頬や目尻、おでこ等といった局部の画像を取得することができる。
【0037】
図2に示すような肌画像撮影システム10の構成を有することにより、テカリを防止して明瞭な肌画像を容易に取得することができる。これにより、複数種類のシミを容易且つ正確に分類することができる。
【0038】
これにより、シミの種類として存在する日光黒子(老人性色素斑)や肝斑、雀卵斑、脂漏性角化症及び扁平母斑等の様々な種類の分類を高精度に行うことができる。つまり、テカリを防止した明瞭な肌画像を制御装置15に設けられたディスプレイ等の表示手段によりその取得した画像を表示させることで、被写体1の撮影部分の肌状態を正確に把握することができ、シミの種類を高精度に分類、評価することができる。
【0039】
<偏光フィルタの取り付け例>
ここで、上述した第1の偏光フィルタ13−1,13−2及び第2の偏光フィルタ14の取り付け例について図を用いて説明する。
【0040】
図3は、肌画像撮影装置(ユニット)における偏光フィルタの取り付けの一例を示す図である。図3(a)に示すように、肌画像撮影装置20に含まれる光源11−1、11−2及びカメラ12において、光源11に存在する発光部31、及びカメラ12のレンズ部21に対して、図3(b)に示すような偏光フィルタを設置する。
【0041】
具体的には、図3(b)に示すように光源11からの光に対してある特定の方向へ光を通過させる第1の偏光フィルタ13−1及び13−2を、発光部31全体を覆うような大きさに形成し、図3(c)に示すように取り付ける。
【0042】
なお、図3(b)に示すように、光源からの光を通過させて被写体に照射する場合には縦方向に偏光させ、また照射して得られる反射光を通過させてカメラ12に受光させる場合には横方向に偏光させている。つまり、上述したように、第1の偏光フィルタ13−1,13−2における偏光の向きと、第2の偏光フィルタ14の偏光の向きはお互いに十字(クロス、90度ずらした)方向になるようにする。これにより、表面反射光を最大限カットすることができるため、テカリを防止して明瞭な肌画像を容易に取得することができる。
【0043】
なお、第1の偏光フィルタ13及び第2の偏光フィルタ14を取り付ける場合には、発光部31−1,31−2やレンズ21に対して直接接着等により取り付けてもよく、また発光部31及びレンズ21に対して偏光フィルタを上下にスライドさせるスライド機構を設けてもよく、更にマグネット等により着脱が容易な構成にしてもよい。更に、第1の偏光フィルタ13及び第2の偏光フィルタ14の取り付け位置は、発光部31−1,31−2やレンズ21に対して所定の間隔を設けた位置に設置してもよい。
【0044】
<光源11とカメラ12との配置関係について>
次に、光源11とカメラ12との配置関係等について図を用いて説明する。図4は、光源とカメラとの配置関係を説明するための一例を示す図である。図4に示すように、複数の光源がある場合には、被写体の撮影部分に均一な紫外線光が照射されるようにカメラ12からの位置が等しい距離となるように調整する。したがって、図4に示すカメラ12と光源11−1,11−2のそれぞれの距離d1,d2は同一(d1=d2)とすることが好ましい。
【0045】
更に、被写体1に照射される光の強さも左右均一にすることが好ましいため、光源11−1及び11−2から被写体1までのそれぞれの距離d3,d4も同一(d3=d4)とする。なお、本実施形態では、例えばd1(d2)を5〜10cm、d3(d4)を50〜100cmとする。また、レンズ21から被写体1までの距離d5は、約50〜100cmとするが、本考案においてd1〜d5の距離については特に制限されるものではなく、カメラやレンズの性能(解像度、画角等)、光源の強さ等に応じて任意に調整することができる。
【0046】
次に、上述した肌画像撮影装置を用いて撮像した肌画像からシミを分類する方法を説明する。
【0047】
上述したように、複数の異なる波長の紫外線(UV)を照射する機能を有し、波長別に撮影した肌画像を取得する。また、使用したカメラ12は、メラニンモノマーの吸収波長別UVデジタルカメラを含む偏光紫外線カメラを使用した。なお、メラニンモノマーは、シミの原因であるメラニンになる前段階の前躯体であり、紫外線を十分に吸収するものである。この波長別UVデジタルカメラでは、UVAI、UVAII、UVB及びVioletの波長別画像の撮像が可能であるが、本発明では、UVAI、UVAII及びUVBの3種類の波長別画像を撮像し、さらに、可視光線で撮像した肌画像、つまりカラー画像を取得して、それらの波長別画像とカラー画像とを比較することで、対象とするシミのコントラストの増減を判定する。
【0048】
より具体的に説明すると、カメラ12で、UVAI(波長が約360〜400nm)、UVAII(波長が約320〜360nm)、及びUVB(波長が約280〜320nm)の波長別画像を撮像する。この場合、波長別画像の取得方法は、例えば光源11において、予めUVAI、UVAII及びUVBの3種類をそれぞれ発光する光源を設けておき、それを必要に応じて選択してストロボ発光させてもよく、またカメラ12やレンズ21により特定の波長のみを受光し、他の波長をカットするカットフィルタ等を用いてもよい。なお、これらの画像はすべて偏光フィルタを介して撮像した。さらに、光源11を用いないで(可視光線で)、比較のための被写体の肌の通常のカラー画像を撮影する。
【0049】
図5(a)は、被写体のカラー画像の一例を示し、図5(b)は、UVAIで撮影した場合の被写体の画像の一例を示し、図5(c)は、UVAIIで撮影した場合の被写体の画像の一例を示し、図5(d)は、UVBで撮影した場合の被写体の画像の一例を示す。
【0050】
また、図5における撮影は、通常の室内環境下で、被写体1のあごをフレーム部材22等の固定台に乗せ、閉眼させて行った。また、カメラ12のフォーカスは、一定に保たれている。また、室内灯等の照明器具の明度による影響はない。
【0051】
このようにして撮影したUVAI、UVAII、及びUVBの3種類の波長別画像と、カラー画像とを比較して、対象とするシミのコントラストの増減を判定した。(図6)
図6に、上述した波長別画像と、カラー画像とを比較して、対象とするシミのコントラストの増減を判定した結果を示す。
【0052】
図6から分かるように、肝斑の場合は、UV波長の長さに関係なく、UVAI、UVAII及びUVBのいずれにおいても、高いコントラストが得られた。特に、波長がより長い波長帯域の方が明確に肝斑を識別することができ、好ましくは、UVAI、UVAII及びUVBの順に識別力が高いことが分かった。
【0053】
また、雀卵斑の場合は、長波長のUVAIにおいて高コントラストが得られ、雀卵斑に対する識別力が高いことが分かるが、短波長側のUVAII及びUVBでは、UVAIに比べると、コントラストは低く、特に、UVBで肌を撮影した場合は十分な識別力が無いことが分かる。
【0054】
また、日光性黒子の場合は、十分とは言えないが、短波長側のUVAII及びUVBと比較して、長波長のUVAIで高コントラストが得られた。短波長側のUVAIIではわずかなコントラストしかなく、より短波長側のUVBでは、コントラストは低く、識別力が無いことが分かる。
【0055】
また、脂漏性角化症も、短波長側のUVAII及びUVBと比較して、長波長のUVAIでコントラストが増加したが、短波長側のUVAII及びUVBでは、識別するだけのコントラストはなく、十分な識別力が無いことが分かる。なお、扁平母斑も脂漏性角化症と同様に、各波長別画像とカラー画像を比較することによって、十分に識別できる結果ではなく、特に、長波長のUVAIでコントラストの増加と低下が均衡していることから、UVAIでも十分に識別力が高まった結果ではなかった。
【0056】
表1にシミの種類別で判別した結果を示す。なお、表中の矢印は上向きだとコントラストの増加を示し、下向きだとコントラストの低下を示す。また矢印の数は、コントラストの増減の程度を示す。
【0057】
【表1】

このように、UVAI、UVAII及びUVBの各波長別で撮影した紫外線画像をカラー画像と比較することによって、シミを正確に判別して分類することができる。
【0058】
特に、肝斑の場合は、UV波長の長さに関係なく、UVAI、UVAII及びUVBのいずれにおいても、カラー画像に対して、高いコントラストが得られることで、他のシミに対して、明確に分類することができる。好ましくは、波長の長い紫外線を用いて撮影した画像と、カラー画像を比較することで、よりコントラストが高くなり、容易で正確に肝斑を識別して分類することができる。
【0059】
特に、肝斑と日光性黒子との分類において、肝斑がUV波長の長さに関係なく、UVAI、UVAII及びUVBで撮影した画像とカラー画像との高コントラストで識別できるのに対し、日光性黒子はUVAIの場合でのみ十分な識別ができることで、隠れ肝斑を容易且つ正確に判別することができ、日光性黒子のレーザー施術等に応用することができる。つまり、被写体をUVAI、UVAII又はUVBで撮影した画像と、カラー画像とを適宜比較することによって、隠れ肝斑と日光性黒子との相対的な位置関係、大きさ、シミの程度を正確に確認することができ、日光性黒子に対して、適切な処置をすることができる。
【0060】
この肝斑と日光性黒子における波長別画像とカラー画像とのコントラストの違いは、肝斑のメラニンは表皮層にあり、日光性黒子のメラニンは真皮細胞の奥にあることを考えると、波長の長いUVAIは、皮膚の奥まで到達することができるが、波長が短くなるUVAII及びUVBは、皮膚の奥まで到達することができないためと考えられる。
【0061】
この結果から、一般的に、長波長帯域のUVAIは、いずれの種類のシミを識別する場合にも利用できることが分かる。
【0062】
さらに、本発明では、UV画像の撮影時に偏光フィルタを用いるUVカメラシステムを採用することによって、従来よりも肌のテカリが抑制されて、格段に優れたUV画像を得ることができ、肝斑、雀卵斑、日光性黒子、脂漏性角化症、及び扁平母斑等のシミを正確に把握して、より容易で、かつ的確にシミを分類することができる。
【0063】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】シミの種類を示す図である。
【図2】肌画像撮影システムの概略構成の一例を示す図である。
【図3】肌画像撮影装置(ユニット)における偏光フィルタの取り付けの一例を示す図である。
【図4】光源とカメラとの配置関係を説明するための一例を示す図である。
【図5】異なるUV波長及び可視光線下で撮像した肌画像であり、(a)は、被写体のカラー画像の一例を示し、(b)は、UVAIで撮影した場合の被写体の画像の一例を示し、(c)は、UVAIIで撮影した場合の被写体の画像の一例を示し、(d)は、UVBで撮影した場合の被写体の画像の一例を示す。
【図6】各波長別画像と、カラー画像とを比較して、対象とするシミのコントラストの増減を判定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 被写体(被験者)
10 肌画像撮影システム
11 光源
12 カメラ(撮像手段)
13 第1の偏光フィルタ
14 第2の偏光フィルタ
15 制御装置
20 肌画像撮影装置
21 レンズ部
22 フレーム部材
31 発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌のシミを分類する方法であって、
1)被写体の顔の肌画像を少なくとも1つ以上の異なる波長の紫外線で撮像するステップと、
2)該被写体の顔の肌画像を可視光で撮像するステップと、
3)前記ステップ1)で撮像した肌画像を前記ステップ2)で撮像した肌画像と比較し、対象とするシミのコントラストの増減を判定するステップと
よりなることを特徴とする肌のシミを分類する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つ以上の異なる波長の紫外線は、UVAI、UVAII及びUVBからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シミは、肝斑、雀卵斑、日光性黒子、脂漏性角化症及び扁平母斑であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法を実施するための被写体の肌画像を撮像する肌画像撮影装置であって、
所定の波長からなる紫外線を発光する光源から前記被写体の間に設けられるある特定の方向の光を通過させるための第1の偏光フィルタと、
前記第1の偏光フィルタにより偏光され、前記被写体により反射された反射光を受光して肌画像を取得するための撮像手段と、
前記被写体と前記撮像手段との間に前記反射光のうち前記第1の偏光フィルタと異なる方向の光を通過させるための第2の偏光フィルタとを有することを特徴とする肌画像撮影装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−237243(P2008−237243A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77747(P2007−77747)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】