紫外線処理装置
【課題】微生物が再活性化する光回復現象の抑えを図る。
【解決手段】紫外線照射による被処理水中の殺菌・不活化の水処理を行う場合に、高圧水銀ランプが生成する250〜280nmの波長帯分光スペクトルのピークエネルギー値Xと350〜380nmの波長帯分光スペクトルのピークエネルギー値Yが、それぞれのピークエネルギー値を、X<Yの関係として紫外線照射を行った。これにより、光回復の抑制効果が高く、再活性化による微生物数を減少させることが可能となり、紫外線処理後に被処理水が可視光に照射されたとしても殺菌・不活化効果を高く維持することが可能となる。
【解決手段】紫外線照射による被処理水中の殺菌・不活化の水処理を行う場合に、高圧水銀ランプが生成する250〜280nmの波長帯分光スペクトルのピークエネルギー値Xと350〜380nmの波長帯分光スペクトルのピークエネルギー値Yが、それぞれのピークエネルギー値を、X<Yの関係として紫外線照射を行った。これにより、光回復の抑制効果が高く、再活性化による微生物数を減少させることが可能となり、紫外線処理後に被処理水が可視光に照射されたとしても殺菌・不活化効果を高く維持することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線ランプを用いて例えば被処理水中の殺菌・不活化などの水処理を行う紫外線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の被処理水中の殺菌・不活化などの水処理を行う紫外線処理装置は、紫外線光源として、一般に254nmの殺菌線を含む300nm以下の波長帯を有する紫外線ランプが用いられている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−156352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、300nm以下の波長の殺菌・不活化原理は、紫外線が直接微生物の遺伝子に作用し、異常な遺伝子配列を作り出すことで、増殖能力を失わせることが知られている。
【0005】
しかしながら、微生物種によっては、紫外線照射後に近紫外〜可視光域の波長300〜500nmが照射されることで、異常な遺伝子配列が回復し、再活性化する光回復現象が問題とされている。
【0006】
この発明の目的は、微生物が再活性化する光回復現象を抑えることのできる紫外線処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線処理装置は、紫外線ランプから照射される紫外線により被処理水中の殺菌・不活化等の水処理を行う紫外線処理装置において、前記紫外線ランプは、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Xとし、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Yとしたとき、前記ピークエネルギー値X,Yは、X<Yの関係が成り立つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、光回復の抑制効果が高く、結果的に再活性化する微生物数を減少させ、紫外線処理後に被処理水が可視光に照射されたとしても殺菌・不活化効果の高い維持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の紫外線処理装置に関する一実施形態について説明するための概略的なシステム構成図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図2のI−I’線の側断面図である。
【図4】図1で用いる高圧水銀ランプの概念的な分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図5】図1で用いる高圧水銀ランプの一例について説明するための構成図である。
【図6】この発明に用いる高圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図7】この発明と従来の紫外線照射処理後における大腸菌の光回復について説明するための説明図である。
【図8】この発明の紫外線処理装置に関する他の実施形態について説明するための概略的なシステム構成図である。
【図9】この発明に用いる低圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図10】この発明のUV−LEDの分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図11】図9に示す分光スペクトルと図10に示す発光スペクトルとを合成した場合の相対エネルギーについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1〜図5は、この発明の紫外線処理装置に関する一実施形態について説明するための、図1は概念的な斜視図、図2は図1の側断面図、図3は図2の一部を断面で示したI−I’線の側断面図、図4は図1で用いる高圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図、図5は図1の高圧水銀ランプの構成図である。
先ず、図1〜図3において、100は、例えば水道水に紫外線を照射させて殺菌処理を行うランプハウス10および処理容器20から構成される紫外線照射装置である。ランプハウス10は、下面に近い側に開口部101が設けられて箱状に形成される。このランプハウス10内には、250〜280nmの波長帯と350〜380nmの波長帯の分光スペクトルを有する紫外線を発光させる高圧水銀ランプ11とが併設の状態で配置される。
【0012】
開口部101と対向する位置には、リフレクター102が配置され、開口部101とは反対側に放射された高圧水銀ランプ11からの紫外線を、開口部101に反射させている。
【0013】
ここで、高圧水銀ランプ11は、図4において概念的に示した、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値をXとし、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値をYとした場合に、X<Yの条件を充たしたものを使用する。
【0014】
図5を参照し、高圧水銀ランプ11についてさらに説明する。高圧水銀ランプ11は、紫外線透過性を有する石英ガラス製で放電空間111を形成する発光管112の長手方向両端の内部には、例えばタングステン製の電極113,114が配置される。発光管112は、例えば、発光長Lが1500mm程度の一重管で構成される。
【0015】
電極113,114は、それぞれインナーリード115,116を介してモリブデン箔117,118の一端に溶接される。モリブデン箔117,118の他端には、図示しないアウターリードの一端を溶接する。モリブデン箔117,118の部分は発光管112のインナーリード115,116からアウターリードの一端までの発光管112を加熱して封止する。
【0016】
モリブデン箔117,118は、発光管112を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適したものとしてモリブデンを使用する。モリブデン箔117,118に一端がそれぞれ接続されたアウターリードには、例えばセラミック製のソケット119,120の内部で電気的に接続された給電用のリード線121,122を絶縁封止するとともに図示しない電源回路に接続される。
【0017】
発光管112内には、アーク放電を維持させるための希ガスである十分な量のアルゴンガスが10±1Torrで、水銀が2.64mg/ccでそれぞれ封入されている。
【0018】
このように構成することにより、図6で示すような相対エネルギーを有する高圧水銀ランプを実現することができる。この場合、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値に対し、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値の約3倍となり、図4に示すランプの条件である、X<Yを満足している。
【0019】
再び図1〜図3において、20は、腐食性の例えばステンレスで形成された処理容器である。処理容器20は、三角柱の一つの頂点を下にし、内部空間に処理部201が形成される。処理容器20の三角柱の上面にあたる側面には、処理部201に送り込む処理対象の水を取り込む給水口202が形成される。三角柱の底面にあたる側面には、処理部201で処理された水を送り出す排水口203が形成される。給水口202には図示しない被処理水を流し込むパイプが、排水口203には図示しない処理部201で処理された処理水を送り出すためのパイプがそれぞれ取り付けられる。
【0020】
ところで、給水口202は、処理容器20の底部204に近い側に、排水口203は、処理容器の上部205に近い側にそれぞれ形成される。これにより、給水口202に取り込まれた被処理水は、深い位置と浅い位置の何れの位置も通過し排水口203から送り出されることとなる。
【0021】
処理容器20の三角柱の頂点と対向する側面にあたる部分には、ランプハウス10の開口部101と合わさるような大きさの窓部206が形成される。この窓部206には、紫外線透過性の機能を備えた、例えば石英ガラス製の紫外線透過材12が取り付けられる。処理部201には、紫外線透過材12を介して高圧水銀ランプ11からの紫外線が照射可能となる。
【0022】
このように構成された紫外線照射装置では、高圧水銀ランプ11から放射された紫外線は直接、紫外線透過材12を介して処理部201に照射される分とリフレクター102で反射させ、紫外線透過材12を介して処理部201に照射される分とにより、処理部201に給水口202から取り込まれる被処理水に紫外線を照射させている。
【0023】
図7は、図6の分光スペクトルを有するこの発明の高圧水銀ランプと従来の低圧水銀ランプを紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った場合における大腸菌の光回復について説明するための説明図である。
【0024】
すなわち、低圧水銀ランプの254nm紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った場合における大腸菌生残率は、図7の(a)に示すように0.03%になる。しかし、この場合の光回復後の大腸菌生残率は、図7の(b)に示ように10%近くになり、殺菌効果が著しく低下することになる。
【0025】
図6の分光スペクトルを有する高圧水銀ランプの254nm紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った場合における大腸菌生残率は、図7の(c)に示すように、低圧水銀ランプと同じような値の0.03%になる。この場合の光回復後の大腸菌生残率は、図7の(d)に示ように0.3%であり、光回復が生じたものの、高圧水銀ランプは、低圧水銀ランプよりも光回復抑制効果が高いことになる。
【0026】
高圧水銀ランプの光回復抑制効果が高かった考えられる理由としては、低圧水銀ランプからはほとんど放射されてない300nm以上の光エネルギーが作用していると考えられる。これは、一般的に殺菌・不活化に作用するといわれる254nmの紫外線照射量を同一としたにも関わらず、高圧水銀ランプの光回復抑制効果が高かったためである。
【0027】
この実施形態では、高圧水銀ランプの250〜280nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値に対し、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値の大きいものを、被処理水中の殺菌・不活化などの水処理に使用したことにより、殺菌や不活性等の処理に効果的に寄与する。
【0028】
図8〜図11は、この発明の紫外線処理装置に関する他の実施形態について説明するための、図8は概念的な断面図、図9は低圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図、図10はUV−LEDの分光スペクトルについて説明するための説明図、図11は図9に示す分光スペクトルと図11に示す発光スペクトルとを合成した場合の相対エネルギーの状態について説明するための説明図である。
【0029】
81は、250〜280nmの波長帯にピークエネルギー値Xを有する紫外線を発光させる低圧水銀ランプである。低圧水銀ランプ81は、例えば高圧水銀ランプと同じような構成をしており、ランプの発光管内には、アーク放電を維持させるための希ガスである十分な量のアルゴンガスが0.49±0.1Torrで、水銀が100mg±5mg/Pでそれぞれ封入されている。
【0030】
図9は、低圧水銀ランプ81の分光スペクトルを示している。このスペクトルからもわかるように、低圧水銀ランプ81は250〜280nm波長帯の254nm付近にピークエネルギーがあるが、350〜380nmの波長帯にある分光スペクトルのピークエネルギーは、250〜280nm波長帯に比べて1/18倍程度に低いものである。
【0031】
このため、図4の関係である250〜280nmの波長帯のピークエネルギー値Xと、350〜380nmの波長帯のピークエネルギー値Yが、X<Yの条件を充たしていないことになる。
【0032】
30は、紫外線透過性の例えば石英ガラス製の内管301と外管302の二重管で構成された処理容器である。低圧水銀ランプ81は、処理容器30の内管301内に配置される。
【0033】
350〜380nmの波長帯にピークエネルギー値Yを有する紫外線を発光させる光源としては、UV−LED15を用いる。UV−LED15は、処理容器30の外管302の外周に、満遍なく配置する。図8では、断面しか示されていないが、処理容器30の長手方向にも満遍なく配置される。
【0034】
低圧水銀ランプ81で照射された紫外線は、処理容器30の内管301を介して処理容器30の被処理水が通過される処理部303に照射される。また、UV−LED15で照射された紫外線は、処理容器30の外管302を介して処理容器30の被処理水が通過される処理部303に照射される。
【0035】
図10は、UV−LED15の発光スペクトルを表している。この図で示されるように、365nm付近にピークを有する分光スペクトルを得ていることがわかる。
【0036】
図11は、図9に示す低圧水銀ランプ81の分光スペクトルと図10に示すUV−LED15の発光スペクトルとを合成した場合の相対エネルギーの状態を示している。これからわかるように、350〜380nmの波長帯においては、低圧水銀ランプ11の分光スペクトルに比べてUV−LED15の発光スペクトルは、数倍のエネルギーを有することになる。
【0037】
これは、図4に示す250〜280nmの波長帯のピークエネルギー値Xと、350〜380nmの波長帯のピークエネルギー値Yが、X<Yの関係である条件を満足していることになる。
【0038】
ここで、低圧放電ランプ11とUV−LED15との紫外線を被処理水に対して紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った後の光回復による生残率は、図7に示すのと同様に、低圧水銀ランプで2桁以上確認されたのに対し、1桁にとどまった。これより、UV−LED15と低圧水銀ランプを組み合わせ、図4に示す条件を満足させることにより、高い光回復抑制能力を得ることができる。
【0039】
この実施形態においても、一実施形態と同様に光回復抑制能力の高いシステムを実現することが可能となる。
【0040】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば図1〜図7で説明した一実施形態では、処理容器の外側に高圧水銀ランプを配置する、いわゆる外照式の紫外線処理装置について説明したが、処理容器20の処理部201に直接、高圧水銀ランプを配置する内照式の紫外線処理装置であっても構わない。
【0041】
また、図8〜図11で説明した他の実施形態では、UV−LED15は処理容器30の外管302の外側に、低圧水銀ランプ81は処理容器30の内管301内に配置するようにしたが、低圧水銀ランプ81は、処理容器30の処理部303内に配置する内照式の紫外線処理装置であっても構わない。
【符号の説明】
【0042】
100 紫外線照射装置
10 ランプハウス
101 開口部
102 リフレクター
11 高圧水銀ランプ
20,30 処理容器
201,303 処理部
202 給水口
203 排水口
204 底部
205 上部
206 窓部
301 内管
302 外管
15 UV−LED
151 LED
81 低圧水銀ランプ
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線ランプを用いて例えば被処理水中の殺菌・不活化などの水処理を行う紫外線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の被処理水中の殺菌・不活化などの水処理を行う紫外線処理装置は、紫外線光源として、一般に254nmの殺菌線を含む300nm以下の波長帯を有する紫外線ランプが用いられている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−156352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、300nm以下の波長の殺菌・不活化原理は、紫外線が直接微生物の遺伝子に作用し、異常な遺伝子配列を作り出すことで、増殖能力を失わせることが知られている。
【0005】
しかしながら、微生物種によっては、紫外線照射後に近紫外〜可視光域の波長300〜500nmが照射されることで、異常な遺伝子配列が回復し、再活性化する光回復現象が問題とされている。
【0006】
この発明の目的は、微生物が再活性化する光回復現象を抑えることのできる紫外線処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線処理装置は、紫外線ランプから照射される紫外線により被処理水中の殺菌・不活化等の水処理を行う紫外線処理装置において、前記紫外線ランプは、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Xとし、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Yとしたとき、前記ピークエネルギー値X,Yは、X<Yの関係が成り立つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、光回復の抑制効果が高く、結果的に再活性化する微生物数を減少させ、紫外線処理後に被処理水が可視光に照射されたとしても殺菌・不活化効果の高い維持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の紫外線処理装置に関する一実施形態について説明するための概略的なシステム構成図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図2のI−I’線の側断面図である。
【図4】図1で用いる高圧水銀ランプの概念的な分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図5】図1で用いる高圧水銀ランプの一例について説明するための構成図である。
【図6】この発明に用いる高圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図7】この発明と従来の紫外線照射処理後における大腸菌の光回復について説明するための説明図である。
【図8】この発明の紫外線処理装置に関する他の実施形態について説明するための概略的なシステム構成図である。
【図9】この発明に用いる低圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図10】この発明のUV−LEDの分光スペクトルについて説明するための説明図である。
【図11】図9に示す分光スペクトルと図10に示す発光スペクトルとを合成した場合の相対エネルギーについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1〜図5は、この発明の紫外線処理装置に関する一実施形態について説明するための、図1は概念的な斜視図、図2は図1の側断面図、図3は図2の一部を断面で示したI−I’線の側断面図、図4は図1で用いる高圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図、図5は図1の高圧水銀ランプの構成図である。
先ず、図1〜図3において、100は、例えば水道水に紫外線を照射させて殺菌処理を行うランプハウス10および処理容器20から構成される紫外線照射装置である。ランプハウス10は、下面に近い側に開口部101が設けられて箱状に形成される。このランプハウス10内には、250〜280nmの波長帯と350〜380nmの波長帯の分光スペクトルを有する紫外線を発光させる高圧水銀ランプ11とが併設の状態で配置される。
【0012】
開口部101と対向する位置には、リフレクター102が配置され、開口部101とは反対側に放射された高圧水銀ランプ11からの紫外線を、開口部101に反射させている。
【0013】
ここで、高圧水銀ランプ11は、図4において概念的に示した、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値をXとし、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値をYとした場合に、X<Yの条件を充たしたものを使用する。
【0014】
図5を参照し、高圧水銀ランプ11についてさらに説明する。高圧水銀ランプ11は、紫外線透過性を有する石英ガラス製で放電空間111を形成する発光管112の長手方向両端の内部には、例えばタングステン製の電極113,114が配置される。発光管112は、例えば、発光長Lが1500mm程度の一重管で構成される。
【0015】
電極113,114は、それぞれインナーリード115,116を介してモリブデン箔117,118の一端に溶接される。モリブデン箔117,118の他端には、図示しないアウターリードの一端を溶接する。モリブデン箔117,118の部分は発光管112のインナーリード115,116からアウターリードの一端までの発光管112を加熱して封止する。
【0016】
モリブデン箔117,118は、発光管112を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適したものとしてモリブデンを使用する。モリブデン箔117,118に一端がそれぞれ接続されたアウターリードには、例えばセラミック製のソケット119,120の内部で電気的に接続された給電用のリード線121,122を絶縁封止するとともに図示しない電源回路に接続される。
【0017】
発光管112内には、アーク放電を維持させるための希ガスである十分な量のアルゴンガスが10±1Torrで、水銀が2.64mg/ccでそれぞれ封入されている。
【0018】
このように構成することにより、図6で示すような相対エネルギーを有する高圧水銀ランプを実現することができる。この場合、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値に対し、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値の約3倍となり、図4に示すランプの条件である、X<Yを満足している。
【0019】
再び図1〜図3において、20は、腐食性の例えばステンレスで形成された処理容器である。処理容器20は、三角柱の一つの頂点を下にし、内部空間に処理部201が形成される。処理容器20の三角柱の上面にあたる側面には、処理部201に送り込む処理対象の水を取り込む給水口202が形成される。三角柱の底面にあたる側面には、処理部201で処理された水を送り出す排水口203が形成される。給水口202には図示しない被処理水を流し込むパイプが、排水口203には図示しない処理部201で処理された処理水を送り出すためのパイプがそれぞれ取り付けられる。
【0020】
ところで、給水口202は、処理容器20の底部204に近い側に、排水口203は、処理容器の上部205に近い側にそれぞれ形成される。これにより、給水口202に取り込まれた被処理水は、深い位置と浅い位置の何れの位置も通過し排水口203から送り出されることとなる。
【0021】
処理容器20の三角柱の頂点と対向する側面にあたる部分には、ランプハウス10の開口部101と合わさるような大きさの窓部206が形成される。この窓部206には、紫外線透過性の機能を備えた、例えば石英ガラス製の紫外線透過材12が取り付けられる。処理部201には、紫外線透過材12を介して高圧水銀ランプ11からの紫外線が照射可能となる。
【0022】
このように構成された紫外線照射装置では、高圧水銀ランプ11から放射された紫外線は直接、紫外線透過材12を介して処理部201に照射される分とリフレクター102で反射させ、紫外線透過材12を介して処理部201に照射される分とにより、処理部201に給水口202から取り込まれる被処理水に紫外線を照射させている。
【0023】
図7は、図6の分光スペクトルを有するこの発明の高圧水銀ランプと従来の低圧水銀ランプを紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った場合における大腸菌の光回復について説明するための説明図である。
【0024】
すなわち、低圧水銀ランプの254nm紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った場合における大腸菌生残率は、図7の(a)に示すように0.03%になる。しかし、この場合の光回復後の大腸菌生残率は、図7の(b)に示ように10%近くになり、殺菌効果が著しく低下することになる。
【0025】
図6の分光スペクトルを有する高圧水銀ランプの254nm紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った場合における大腸菌生残率は、図7の(c)に示すように、低圧水銀ランプと同じような値の0.03%になる。この場合の光回復後の大腸菌生残率は、図7の(d)に示ように0.3%であり、光回復が生じたものの、高圧水銀ランプは、低圧水銀ランプよりも光回復抑制効果が高いことになる。
【0026】
高圧水銀ランプの光回復抑制効果が高かった考えられる理由としては、低圧水銀ランプからはほとんど放射されてない300nm以上の光エネルギーが作用していると考えられる。これは、一般的に殺菌・不活化に作用するといわれる254nmの紫外線照射量を同一としたにも関わらず、高圧水銀ランプの光回復抑制効果が高かったためである。
【0027】
この実施形態では、高圧水銀ランプの250〜280nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値に対し、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルがピークエネルギー値の大きいものを、被処理水中の殺菌・不活化などの水処理に使用したことにより、殺菌や不活性等の処理に効果的に寄与する。
【0028】
図8〜図11は、この発明の紫外線処理装置に関する他の実施形態について説明するための、図8は概念的な断面図、図9は低圧水銀ランプの分光スペクトルについて説明するための説明図、図10はUV−LEDの分光スペクトルについて説明するための説明図、図11は図9に示す分光スペクトルと図11に示す発光スペクトルとを合成した場合の相対エネルギーの状態について説明するための説明図である。
【0029】
81は、250〜280nmの波長帯にピークエネルギー値Xを有する紫外線を発光させる低圧水銀ランプである。低圧水銀ランプ81は、例えば高圧水銀ランプと同じような構成をしており、ランプの発光管内には、アーク放電を維持させるための希ガスである十分な量のアルゴンガスが0.49±0.1Torrで、水銀が100mg±5mg/Pでそれぞれ封入されている。
【0030】
図9は、低圧水銀ランプ81の分光スペクトルを示している。このスペクトルからもわかるように、低圧水銀ランプ81は250〜280nm波長帯の254nm付近にピークエネルギーがあるが、350〜380nmの波長帯にある分光スペクトルのピークエネルギーは、250〜280nm波長帯に比べて1/18倍程度に低いものである。
【0031】
このため、図4の関係である250〜280nmの波長帯のピークエネルギー値Xと、350〜380nmの波長帯のピークエネルギー値Yが、X<Yの条件を充たしていないことになる。
【0032】
30は、紫外線透過性の例えば石英ガラス製の内管301と外管302の二重管で構成された処理容器である。低圧水銀ランプ81は、処理容器30の内管301内に配置される。
【0033】
350〜380nmの波長帯にピークエネルギー値Yを有する紫外線を発光させる光源としては、UV−LED15を用いる。UV−LED15は、処理容器30の外管302の外周に、満遍なく配置する。図8では、断面しか示されていないが、処理容器30の長手方向にも満遍なく配置される。
【0034】
低圧水銀ランプ81で照射された紫外線は、処理容器30の内管301を介して処理容器30の被処理水が通過される処理部303に照射される。また、UV−LED15で照射された紫外線は、処理容器30の外管302を介して処理容器30の被処理水が通過される処理部303に照射される。
【0035】
図10は、UV−LED15の発光スペクトルを表している。この図で示されるように、365nm付近にピークを有する分光スペクトルを得ていることがわかる。
【0036】
図11は、図9に示す低圧水銀ランプ81の分光スペクトルと図10に示すUV−LED15の発光スペクトルとを合成した場合の相対エネルギーの状態を示している。これからわかるように、350〜380nmの波長帯においては、低圧水銀ランプ11の分光スペクトルに比べてUV−LED15の発光スペクトルは、数倍のエネルギーを有することになる。
【0037】
これは、図4に示す250〜280nmの波長帯のピークエネルギー値Xと、350〜380nmの波長帯のピークエネルギー値Yが、X<Yの関係である条件を満足していることになる。
【0038】
ここで、低圧放電ランプ11とUV−LED15との紫外線を被処理水に対して紫外線照射量30mJ/cm2の紫外線照射処理を行った後の光回復による生残率は、図7に示すのと同様に、低圧水銀ランプで2桁以上確認されたのに対し、1桁にとどまった。これより、UV−LED15と低圧水銀ランプを組み合わせ、図4に示す条件を満足させることにより、高い光回復抑制能力を得ることができる。
【0039】
この実施形態においても、一実施形態と同様に光回復抑制能力の高いシステムを実現することが可能となる。
【0040】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば図1〜図7で説明した一実施形態では、処理容器の外側に高圧水銀ランプを配置する、いわゆる外照式の紫外線処理装置について説明したが、処理容器20の処理部201に直接、高圧水銀ランプを配置する内照式の紫外線処理装置であっても構わない。
【0041】
また、図8〜図11で説明した他の実施形態では、UV−LED15は処理容器30の外管302の外側に、低圧水銀ランプ81は処理容器30の内管301内に配置するようにしたが、低圧水銀ランプ81は、処理容器30の処理部303内に配置する内照式の紫外線処理装置であっても構わない。
【符号の説明】
【0042】
100 紫外線照射装置
10 ランプハウス
101 開口部
102 リフレクター
11 高圧水銀ランプ
20,30 処理容器
201,303 処理部
202 給水口
203 排水口
204 底部
205 上部
206 窓部
301 内管
302 外管
15 UV−LED
151 LED
81 低圧水銀ランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプから照射される紫外線により被処理水中の殺菌・不活化等の水処理を行う紫外線処理装置において、
前記紫外線ランプは、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Xとし、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Yとしたとき、前記ピークエネルギー値X,Yは、X<Yの関係が成り立つことを特徴とする紫外線処理装置。
【請求項2】
X<Yの関係が成り立つ前記紫外線ランプは、高圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1記載の紫外線処理装置。
【請求項3】
X<Yの関係が成り立つ前記紫外線ランプは、250〜280nmの波長帯のピークエネルギー値Xを低圧水銀ランプで生成し、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Yを有するUV−LEDで生成したことを特徴とする請求項1記載の紫外線処理装置。
【請求項1】
紫外線ランプから照射される紫外線により被処理水中の殺菌・不活化等の水処理を行う紫外線処理装置において、
前記紫外線ランプは、250〜280nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Xとし、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Yとしたとき、前記ピークエネルギー値X,Yは、X<Yの関係が成り立つことを特徴とする紫外線処理装置。
【請求項2】
X<Yの関係が成り立つ前記紫外線ランプは、高圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1記載の紫外線処理装置。
【請求項3】
X<Yの関係が成り立つ前記紫外線ランプは、250〜280nmの波長帯のピークエネルギー値Xを低圧水銀ランプで生成し、350〜380nmの波長帯の分光スペクトルのピークエネルギー値Yを有するUV−LEDで生成したことを特徴とする請求項1記載の紫外線処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−45808(P2011−45808A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194818(P2009−194818)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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