説明

紫外線処理装置

【課題】 高い処理効果が得られ、かつ紫外線ランプを長寿命化することが可能な紫外線処理装置を提供する。
【解決手段】
実施形態の紫外線処理装置は、被処理水を流通可能な処理水槽1と、少なくとも一部が被処理水に接触するように配置された保護管2と、保護管2の内部に配置された紫外線ランプ5と、を具備する紫外線処理装置において、保護管2は内管21と外管22とを備え、内管21と外管22の間には保護管2の管軸方向に沿うように冷却媒体として冷却水4が循環されるとともに、内管21の肉厚をT1(mm)、外管22の肉厚をT2(mm)としたとき、T2>T1を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、水道水、温泉水、海水、下水等の殺菌に用いられる紫外線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水、温泉水、海水、下水等の殺菌に、紫外線処理装置が使用されている。この紫外線処理装置は、処理水槽の内部に保護管を配置し、その保護管の内部に紫外線ランプを配置することで、保護管を介して被処理水に紫外線を照射する構造になっている。
【0003】
この紫外線処理装置において、高出力な紫外線ランプが使用される場合がある。高出力な紫外線ランプを用いると、少ないランプ本数でより高い処理効果を得ることができるが、点灯中に高温になるために寿命が短くなってしまう。これまでの低圧紫外線ランプを搭載した紫外線処理装置の場合、被処理水により保護管の温度を下げることで、ランプの温度をある程度下げることができたが、高出力な紫外線ランプの場合、被処理水では十分には冷却できないことがわかった。特に、被処理水が温水等、温度が比較的高いものであると紫外線ランプの温度が十分に下がらず、短寿命となる問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−56413号公報
【特許文献2】特開2010−515559号公報
【特許文献3】特開平10−28967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い処理効果が得られ、かつ紫外線ランプを長寿命化することが可能な紫外線処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の紫外線処理装置は、被処理水を流通可能な処理水槽と、少なくとも一部が前記被処理水に接触するように配置された保護管と、前記保護管の内部に配置された紫外線ランプと、を具備する紫外線処理装置において、前記保護管は内管と外管とを備え、前記内管と前記外管の間には前記保護管の管軸方向に沿うように冷却媒体が循環されるとともに、前記内管の肉厚をT1(mm)、前記外管の肉厚をT2(mm)としたとき、T2>T1を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の紫外線処理装置について説明するための図である。
【図2】第1の実施形態の紫外線処理装置について説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態の紫外線処理装置の処理水槽について説明するための図である。
【図4】第1の実施形態の紫外線処理装置に搭載した紫外線ランプの分光分布特性について説明するための図である。
【図5】第2の実施形態の紫外線処理装置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の紫外線処理装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の紫外線処理装置について説明するための図、図2は、第1の実施形態の紫外線処理装置について説明するための断面図である。なお、図中の矢印は、液体の流れる方向を示している。
【0010】
図1、図2に示す紫外線処理装置は、水道水、温泉水、海水、下水等の殺菌に用いられる紫外線殺菌装置であり、主要部として処理水槽1を備えている。
【0011】
処理水槽1は、図3に示すような、ステンレスなどの金属からなる容器であり、シリンダー11とランプハウジング12とで構成されている。シリンダー11は、内部に形成された空間に被処理水を流通させることが可能な管である。空間の寸法は、例えば長さは550mm、内径は270mmである。シリンダー11の管軸方向の両端部には、他の装置の配管等とボルトによって接続するための穴を備えたフランジ111、112が設けられている。
【0012】
ランプハウジング12は、内部に空間を備えた管であり、シリンダー11と直交するように接続されている。空間の寸法は、例えば長さは400mm、内径は270mmである。その管軸方向の両端部には、穴を備えた一対のフランジ121が設けられている。このフランジ121には、円形の穴131を備える一対のフランジ13が、穴にボルト等を差し込むことで接続される。これら、シリンダー11、ランプハウジング12、フランジ13によって、処理水槽1の内部には空間14が形成される。この空間14には、フランジ111からフランジ112に向けて被処理水が流される。
【0013】
フランジ13の穴131には、シリンダー11の管軸と直交するように保護管2が配置されている。保護管2の外周部には、金属リング3が設けられている。金属リング3はフランジを備えており、そのフランジ部分とシリンダー11とを溶接することで、被処理水が穴131を介して処理水槽1の外部に漏れることを防止している。保護管2と金属リング3の間にゴムパッキンなどの部材を設けるとなお良い。また、後述する紫外線ランプから紫外線が外部に漏れることを防止すべく、フランジ13の周辺に保護管2を覆うカバーをさらに設けても良い。
【0014】
保護管2は、石英ガラス等の紫外線透過性に優れた材料からなるもので、肉厚がT1の内管21を備えている。内管21には、その管軸方向全域を覆うように、肉厚がT2(>T1)の外管22が同軸配置されている。内管21と外管22とは両端が側壁23により閉じられている。すなわち、保護管2は、内部に空間24を備えた二重管構造の管となっている。この保護管2の一端側には導入管25、他端側には導出管26が設けられている。なお、導入管25と導出管26は配管を介してチラー(図示なし)と接続され、空間24には常に低温に保たれた冷却水4が冷却媒体として循環される。冷却水4は、例えば超純水であり、25℃における比抵抗が15MΩ・cm以上、望ましくは18MΩ・cm以上である。また、有機物量が100ppb以下、望ましくは50ppb以下である。なお、比抵抗は比抵抗法、有機物量は紫外線酸化分解導電率分解方式などの方法で測定可能である。
【0015】
保護管2を構成する内管21の内側の空間には、長尺な紫外線ランプ5が保護管2の管軸に沿って配置されている。紫外線ランプ5は、図4に示すような、313nmおよび365nmに強い発光を示す中圧ロングアークランプであり、主要部として例えば長さが480mmのガラス管51を備えている。
【0016】
ガラス管51は、石英ガラス等の紫外線透過性に優れた材料からなるもので、管状部511とシール部512により構成されている。管状部511は、例えば外径が22mmの中空の管であり、その内部には水銀や希ガスなどの放電媒体が封入されている。シール部512は、例えばシュリンクシールにより管状部511の両端に形成されている。シール部512の内部には、例えばモリブデンからなる金属箔52が封着されている。金属箔52の一端には、例えばタングステンを主体とする電極53が接続されている。電極53の他端である先端側は、電極間距離Lが150mm以上となるように、管状部511の内部空間に配置されている。金属箔52の他端には、リード線54の一端が接続され、リード線54の他端はシール部512から外部に管軸に沿って導出されている。
【0017】
このように構成されたランプは、電極53間におけるガラス管51の内容積をV(mm)、ランプ電力をW(W)としたとき、その関係W/Vが0.010W/mm以上を満足する。このような関係を満足するランプは、紫外線の出力が非常に大きいため、一本のランプでも被処理水を十分に殺菌することが可能である。従来使用されていたW/V=0.0003W/mm程度の低圧紫外線ランプでは、同様の殺菌を行うのに10本以上の配置を必要としていたことを考慮すると、出力が大きく異なることがわかる。ただし、W/Vが大きすぎると点灯中に温度が高くなりすぎて長寿命化を実現するのが困難になるため、W/Vは0.14W/mm以下であるのが望ましい。
【0018】
紫外線ランプ5のシール部512には、例えばセラミックからなるベース6が接続されている。このベース6は、外径が内管21の内径とは同程度で、管状部511の外径よりは大きい。そのため、このベース6により、内管21と管状部511との距離を所定、例えばD=3mm程度維持した状態で、紫外線ランプ5内に保護管2を配置することが可能となる。
【0019】
ここで、内管21の肉厚T1=1mm、外管22の肉厚T2=2mm、冷却水4として0℃の超純水を循環させる保護管2の内部に、内径R=20mm、電極間距離L=300mm、つまり電極53間における内容積V=94200mmとした紫外線ランプ5を配置し、ランプ電力W=3000W、電圧=450V、ランプ電流=6.7Aで点灯した。その結果、紫外線ランプ5は、W/Vが0.032W/mmを満たすような、点灯中に温度が高くなるランプであっても、3000時間以上の寿命を実現できるとともに、ランプを一本しか使用しなくても十分に被処理水の殺菌を行うことができることが確認された。また、被処理水として、40℃程度の温水を供給しても、紫外線ランプ5の寿命が極端に短くなることはないことが確認された。また、冷却水4として超純水を循環させた場合、水道水を循環させる場合と比較して、被処理水の殺菌効果が高くなることが確認された。
【0020】
このように、外管22の肉厚T2(mm)>内管21の肉厚T1(mm)とすることで、保護管2の耐圧性、冷却水4の保冷効果および紫外線ランプ5に対する冷却効果を高めることができる。つまり、外管22を比較的肉厚とすることで、被処理水によりガラスに加わる圧力、例えば1.0MPa以上の水圧に耐え、かつ被処理水が温水である場合などに冷却水4に与える温度上昇の影響を小さくできるため、冷却水4を低温に保つことができる。また、内管21を比較的肉薄とすることで紫外線ランプ5を冷却水4によって効率よく冷却することができるようになる。また、有機物量が100ppb以下、25℃における比抵抗が15MΩ・cm以上を満たすような超純水は、紫外線の透過率が優れるため、冷却水4を循環させても殺菌効果の低下を抑制することができる。
【0021】
したがって、外管22の肉厚T2(mm)>内管21の肉厚T1(mm)とすることで、被処理水の処理効果を高め、かつ長寿命化することができる。この効果は、内管21の肉厚T1は0.5mm〜2mm、外管22の肉厚T2は1mm〜7mmをさらに満たすようにすれば、特に得られやすいことが確認されている。なお、このような保護管2は、ガラス管内に、それよりも管径が小さく、かつ肉厚の薄いガラス管を同心状に配置したのち、両端の開口を他のガラス等で封じることにより作成可能である。
【0022】
第1の実施形態においては、保護管2を内管21と外管22とで構成し、内管21と外管22の間に保護管2の管軸方向に沿うように冷却媒体4を循環させるとともに、内管21の肉厚をT1(mm)、外管22の肉厚をT2(mm)としたとき、T2>T1を満たすようにしたことで、殺菌効果は高くなるが、点灯中に高温になる傾向のあるランプを用いても、高い処理効果を得るながら、紫外線ランプを長寿命化することができる。その際、紫外線ランプは、電極53間におけるガラス管51の内容積をV(mm)、電極53に供給されるランプ電力をW(W)としたとき、その関係W/Vを0.010(W/mm)以上を満足する中圧紫外線ランプとするとともに、冷却媒体を、有機物量が100ppb以下、25℃における比抵抗が15MΩ・cm以上を満足する超純水とすることで、少ないランプ本数でも高い処理効果を得つつ、ランプを長寿命にすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の紫外線処理装置について説明するための図である。この第2の実施形態の各部について、第1の実施形態の紫外線処理装置の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0024】
第2の実施形態では、保護管2内の空間24に、冷却媒体としてガス、例えば低温の窒素を循環させるようにしている。
【0025】
また、内管21と外管22とを金属部材7で封じる構造としている。また、導入管や導出管もその金属部材と一体的に構成された金属管71、62で構成している。この構造であれば、空間24を形成しやすくなるため、容易に二重管構造の保護管2を得ることができる。
【0026】
この実施形態においても、第1の実施形態と同様に、高い処理効果を得ることができるとともに、紫外線ランプを長寿命化することができ、さらに冷却媒体として液体を使う場合と比較して、装置を小型かつ安価にすることができる。また、保護管2を容易に構成することができる。なお、冷却媒体としては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンやそれらの混合ガスなどを用いることができるが、最適には大気よりも熱伝導率に優れ、かつ紫外線透過性にも優れたガスを用いることが望ましい。
【0027】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0028】
例えば、処理水槽1の内部に被処理水の温度を測定する温度センサーを設け、温度センサーの温度測定結果に基づいて冷却媒体の温度を調整するようにしてもよい。つまり、被処理水が温水等、温度の高い液体である場合は冷却媒体の温度を低くするようにチラーを動作させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 処理水槽
2 保護管
21 内管
22 外管
4 冷却水
5 紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を流通可能な処理水槽と、少なくとも一部が前記被処理水に接触するように配置された保護管と、前記保護管の内部に配置された紫外線ランプと、を具備する紫外線処理装置において、
前記保護管は内管と外管とを備え、前記内管と前記外管の間には前記保護管の管軸方向に沿うように冷却媒体が循環されるとともに、
前記内管の肉厚をT1(mm)、前記外管の肉厚をT2(mm)としたとき、T2>T1を満たすことを特徴とする紫外線処理装置。
【請求項2】
前記紫外線ランプは、ガラス管とその両端に配置された一対の電極を備え、前記電極間における前記ガラス管の内容積をV(mm)、前記電極に供給されるランプ電力をW(W)としたとき、その関係W/Vが0.010(W/mm)以上を満足する中圧紫外線ランプであるとともに、前記冷却媒体は、有機物量が100ppb以下、25℃における比抵抗が15MΩ・cm以上を満足する超純水であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52375(P2013−52375A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193852(P2011−193852)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】