説明

紫外線吸収剤含有ハードコートフィルム及びこれを備えたディスプレイ用光学フィルタ

【課題】凹凸を有する表面に形成されていても、透明性が高く、十分な表面硬度、及び十分な紫外線吸収効果を有し、且つ形成不良や外観ムラが生じ難いハードコート層を有する、生産性に優れたハードコートフィルム。
【解決手段】一方の表面に凹凸が形成された透明プラスチックフィルム12、及びその凹凸が形成された表面に、紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、及び紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物から形成されるハードコート層14を備えるハードコートフィルムであって、ハードコート層14の層厚が、6.5〜9.5μmであり、前記光重合開始剤が、波長360〜420nmの吸光度が平均0.5以上で、且つ波長450nm以上の吸光度が0.01以下の光重合製開始剤であり、且つ前記紫外線吸収剤が、波長390〜440nmの透過率が平均80%以上で、且つ波長280〜360nmの透過率が1%以下の紫外線吸収剤であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車両及び建築物の窓、ショーケース、ディスプレイ等のガラスの表面保護及びその他の機能を付与するために貼り合せられるハードコートフィルムに関し、特に、紫外線吸収剤を含むことにより、耐候(光)性が改善されたハードコートフィルムに関する。更に、そのハードコートフィルムを備えた、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ等のディスプレイの画像表示部に有利用いられるディスプレイ用光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードコートフィルムは、自動車、鉄道車両及び建築物の窓、ショーケース及びPDP等のディスプレイの画像表示部等のガラスの表面に貼り合せて、耐衝撃性、耐擦傷性、耐貫通性等の表面保護、及びさらに反射防止性、電磁波シールド性等の有用な機能を付与するため、多方面で使用されている。ハードコートフィルムは、一般に、ポリエステル等の透明プラスチックフィルム上に紫外線硬化樹脂等の硬化性樹脂のハードコート層が設けられた構造を含む。
【0003】
近年、ハードコートフィルムの内側に存在する色素等の紫外線に劣化されやすい物質を保護するため、紫外線吸収剤を含有するハードコートフィルムが開発されている(特許文献1〜3)。特に、PDP等のディスプレイ用光学フィルタに使用する場合は、近赤外線吸収層等の色素を含む層を形成する場合が多く、その需要が高い。紫外線吸収剤はベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、ヒドロキシベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系など多くの種類がある。
【0004】
紫外線吸収剤含有ハードコートフィルムには、上記のような紫外線吸収剤を透明プラスチックフィルムに含有させたもの(特許文献1)、又はハードコート層に含有させたもの(特許文献2、3)が開発されており、両者を組み合せたものも可能である。
【0005】
ここで、紫外線吸収剤を透明プラスチックフィルムに含有させたものの場合は、ハードコート層が透明プラスチックフィルムの外側にあるため、透明プラスチックフィルムとハードコート層の間には紫外線に影響を受けやすい材料による層を形成することができず、ハードコート層自体の紫外線による劣化も防止することができないという問題がある。さらに、透明プラスチックフィルムの材料や加工条件によっては、高い熱が加えられることがあり、紫外線吸収剤の耐熱性が要求され、含有させる紫外線吸収剤の種類が制限される場合もある。
【0006】
一方、紫外線吸収剤をハードコート層に含有させたハードコートフィルムの場合は、紫外線吸収剤の含有量を過剰にすると、硬化阻害により、ハードコート層の表面硬度を維持することができなくなるため、紫外線吸収剤の含有量が制限される問題があった。
【0007】
その問題を解決するため、特許文献4では、紫外線吸収剤をハードコート層に含有させたハードコートフィルムについて、紫外線吸収剤の含有量、ハードコート層の層厚、基材フィルムの膜厚等を適正化したハードコートフィルムが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−189553号公報
【特許文献2】特開平11−71458号公報
【特許文献3】特開2008−90067号公報
【特許文献4】特開2010−99835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4のハードコートフィルムで規定する範囲内であっても、紫外線吸収剤の含有量を多くすると、ハードコート層の硬化工程における、紫外線照射強度や照射積算時間に伴う紫外線照射量によっては、ハードコート層の内部の硬化が不十分になり、基材フィルムと剥がれたり、浮きが生じたりする場合がある。特に、メッシュ状の導電層等の凹凸が形成された表面にハードコート層を形成する場合は内部硬化不良による外観ムラが生じ易い。その対策のため、紫外線照射強度を上げ過ぎると基材の熱収縮による変形が生じる場合があり、照射積算時間を上げる(ライン速度を低速にする)と生産効率が低下するという問題が生じる。
【0010】
従って、本発明の目的は、一方の表面に凹凸が形成された透明プラスチックフィルムの、その凹凸が形成された表面に設けられた、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化樹脂組成物から形成されるハードコート層を含むハードコートフィルムにおいて、透明性が高く、十分な表面硬度、及び十分な紫外線吸収効果を有し、且つ形成不良や外観ムラが生じ難いハードコート層を有する、生産性に優れたハードコートフィルムを提供することにある。
更に、本発明の目的は前記ハードコートフィルムの機能を有するディスプレイ用光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ハードコート層を凹凸が形成された表面(「凹凸を有する表面」ともいう)に形成する場合、内部硬化不良により外観ムラを生じ易くなる原因として、凹凸を有する表面に紫外線硬化性樹脂組成物を塗工した場合、場所によって硬化前の塗工層の深さに差が生じるため、深い部分では紫外線照射等による光重合の際に十分に硬化されない場合が生じることにあると考えた。そして、ハードコート層を形成するための種々の条件を検討した結果、本発明に至った。
【0012】
即ち、上記目的は、一方の表面に凹凸が形成された透明プラスチックフィルム、及びその凹凸が形成された表面に、紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、及び紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物から形成されるハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコート層の層厚が、6.5〜9.5μmであり、前記光重合開始剤が、濃度0.1体積%、光路長1cmの条件下において、波長360〜420nmの吸光度が平均0.5以上で、且つ波長450nm以上の吸光度が0.01以下の光重合製開始剤であり、且つ前記紫外線吸収剤が、濃度0.01体積%、光路長1cmの条件下において、波長390〜440nmの透過率が平均80%以上で、且つ波長280〜360nmの透過率が1%以下の紫外線吸収剤であることを特徴とするハードコートフィルムによって達成される。
【0013】
ハードコート層の層厚が上記の範囲であって、紫外線硬化樹脂組成物に含有される光重合開始剤が、上記の吸光度特性を示し、紫外線硬化樹脂組成物に含有される紫外線吸収剤が、上記の透過率特性を示すことにより、光重合開始剤による重合反応が、紫外線吸収剤により阻害されず、紫外線硬化性樹脂組成物の塗工層の深部まで速やかに且つ十分に進行する。これにより、凹凸を有する表面に形成されていても、外観ムラが生じ難く、十分な硬度のハードコート層を備える、生産性が高いハードコートフィルムとすることができる。また、光重合開始剤が、波長450nm以上の可視光線をほとんど吸収しないことにより、高い透明性が得られ、ディスプレイ用光学フィルタ等の高い透明性が求められる用途に有利に使用できるハードコートフィルムとすることができる。更に、ハードコート層に含有される紫外線吸収剤が、波長280〜360nmの紫外線をほとんど透過しないことにより、十分な紫外線吸収効果を有するハードコートフィルムとすることができる。
【0014】
本発明に係るハードコートフィルムの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記光重合開始剤が、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことにより、上記吸光度特性を有する、好ましい光重合開始剤とすることができる。
(2)前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドからなる群より選択された少なくとも1種である。これらの化合物が特に有用なアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である。
(3)前記光重合開始剤の含有量が、前記紫外線硬化性樹脂組成物固形分に対して、3〜10質量%である。これにより、重合反応が、更に速やかに且つ十分に進行するので、外観ムラが生じ難く、十分な硬度のハードコート層を備える、より生産性が高いハードコートフィルムとすることができる。
(4)前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群より選択された少なくとも1種である。これらの紫外線吸収剤が、上記透過率特性を有する、好ましい紫外線吸収剤である。
(5)前記紫外線吸収剤の含有量が、前記紫外線硬化性樹脂組成物固形分に対して、2〜5質量%である。これにより、十分な紫外線吸収効果を有するハードコートフィルムとすることができる。
(6)前記凹凸が形成された表面が、メッシュ状の導電層により形成された表面である。このような導電層は凹凸が微細であり、特に内部硬化不良による外観ムラが生じ易いため、本発明が特に有効である。
【0015】
また、上記目的は、本発明のハードコートフィルムを備えているディスプレイ用光学フィルタによって達成される。本発明のハードコートフィルムはハードコート層の透明性が高いので、ディスプレイ用光学フィルタに好ましく利用できる。
【0016】
本発明に係るディスプレイ用光学フィルタの好ましい態様は以下の通りである。
(1)プラズマディスプレイパネル用フィルタである。本発明のディスプレイ用光学フィルタは、メッシュ状の導電層を含むプラズマディスプレイパネル用の光学フィルタに好ましく利用できる。
(2)前記ハードコート層のディスプレイ側に近赤外線吸収層を備えていることを特徴とする。本発明のハードコートフィルムを備えているので、十分な紫外線吸収効果により、近赤外線吸収層に含まれる色素の劣化が効果的に防止されたディスプレイ用光学フィルタとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハードコートフィルムによれば、紫外線硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤による光重合反応が、紫外線吸収剤により阻害されず、速やかに且つ十分に進行する。これにより、凹凸を有する表面に形成されていても、外観ムラが生じ難く、十分な硬度のハードコート層を備える、生産性が高いハードコートフィルムとすることができる。また、光重合開始剤が、波長450nm以上の可視光線をほとんど吸収しないことにより、高い透明性が得られ、ディスプレイ用光学フィルタ等の高い透明性が求められる用途に有利に使用できるハードコートフィルムとすることができる。更に、ハードコート層に含有される紫外線吸収剤が、波長280〜360nmの紫外線をほとんど透過しないことにより、十分な紫外線吸収効果を有するハードコートフィルムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のハードコートフィルムの代表的な1例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のディスプレイ用光学フィルタの代表的な1例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のハードコートフィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のハードコートフィルムの代表的な1例を示す概略断面図である。
【0020】
図示の通り、ハードコートフィルム20においては、一方の表面にメッシュ状の導電層13からなる凹凸が形成された矩形状の透明プラスチックフィルム12の凹凸が形成された表面全域に紫外線硬化樹脂組成物のハードコート層14が形成されている。ハードコート層14は、紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、及び紫外線吸収剤が含有された紫外線硬化性樹脂組成物から形成されている。
【0021】
本発明では、ハードコート層14の層厚Dが、6.5〜9.5μmである。また、光重合開始剤が、濃度0.1体積%、光路長1cmの条件下において、波長360〜420nmの吸光度が平均0.5以上で、且つ波長450nm以上の吸光度が0.01以下の光重合製開始剤である。そして、紫外線吸収剤が、濃度0.01体積%、光路長1cmの条件下において、波長390〜440nmの透過率が平均80%以上で、且つ波長280〜360nmの透過率が1%以下の紫外線吸収剤である。
【0022】
本発明において、吸光度及び透過率は、各光重合開始剤及び紫外線吸収剤をトルエンに溶解し、分光光度計(U−4100(日立ハイテク社製))を用いて測定した。
【0023】
本発明において、ハードコート層の層厚が、上記の範囲であり、ハードコートを形成する紫外線硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤が、波長360〜420nmの光を良く吸収し、紫外線硬化性樹脂組成物に含有される紫外線吸収剤が、波長390〜440nmの光を良く透過するので、光重合開始剤による重合反応が、紫外線吸収剤によりほとんど阻害されず、紫外線硬化性樹脂組成物の塗工層の深部まで速やかに且つ十分に進行する。これにより、内部硬化不良が生じ難く、外観ムラが生じ難いハードコート層が得られ、生産性が高いハードコートフィルムとすることができる。
【0024】
光重合開始剤の、波長360〜420nmの吸光度(濃度0.1体積%、光路長1cm)が0.5より小さい場合や、紫外線吸収剤の、波長390〜440nmの透過率(濃度0.01体積%、光路長1cm)が80%以下の場合は、光重合反応が、速やかに進行せず、光照射量を増加させる必要が生じ、生産性が低下したり、外観ムラや十分な表面高度が得られなかったりする場合がある。
【0025】
また、ハードコート層に含有される光重合開始剤が、波長450nm以上の光をほとんど吸収しないことにより、高い透明性を有するハードコート層とすることができる。これにより、ディスプレイ用光学フィルタ等の高い透明性が求められる用途に有利に使用できるハードコートフィルムとすることができる。光重合開始剤の、波長450nm以上の吸光度(濃度0.1体積%、光路長1cm)が、0.01より大きい場合は、ハードコートフィルムの透明性が損なわれる。
【0026】
更に、ハードコート層に含有される紫外線吸収剤が、波長280〜360nmの光をほとんど通さないことにより、十分な紫外線吸収効果を有するハードコートフィルムとすることができる。これにより、近赤外線吸収層等の色素を含む層等の紫外線により劣化する機能層を紫外線から保護することができる。紫外線吸収剤の、波長280〜360nmの透過率(濃度0.1体積%、光路長1cm)が1%より大きい場合は、ハードコート層の紫外線吸収効果が不十分になる。
【0027】
また、ハードコート層の層厚Dは、図1に示したように、凹凸が形成された透明プラスチックフィルム表面からハードコート層の表面までの距離をいう。層厚Dが6.5μm未満であると、紫外線吸収剤との関係で十分な紫外線吸収効果が得難く、9.5μmを超えると、紫外線硬化性樹脂組成物の塗工層の深部で内部硬化不良が生じ、外観ムラが生じ易くなる。
【0028】
なお、本発明において、「十分な表面硬度」とは、スチールウール試験(スチールウール#0000、200g荷重×10往復)で傷がつかない硬度を言い、「十分な紫外線吸収効果」とは、280nm〜360nmの紫外線透過率が2%以下となる紫外線吸収効果をいう。
【0029】
図1においてはメッシュ状の導電層13により凹凸が形成されているが、凹凸はどのような層で形成されていても良く、透明プラスチックフィルムに直接切削されたものでも良い(この場合、ハードコート層の層厚Dは凹凸の最下部からハードコート層の表面までの距離をいう)。本発明においては、微細な凹凸で、特に内部硬化不良が生じ易く、外観ムラが問題となる、図1に示したようなメッシュ状の導電層で凹凸が形成されている場合に特に有効である。ハードコート層の層厚は、凹凸の高さに応じて調節することができ、通常、凹凸の高さより大きくする。凹凸の高さは1〜7μmが好ましく、3〜5μmが更に好ましい。
【0030】
[ハードコート層]
次に、本発明のハードコートフィルム20のハードコート層14について詳述する。ハードコート層14を形成する紫外線硬化性樹脂組成物は、一般に、一般にフェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂等の紫外線硬化性樹脂を主成分とする。これらの樹脂に上述のように光重合開始剤及び紫外線吸収剤等を混合したものである。
【0031】
(紫外線硬化性樹脂)
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0032】
特に、より十分な表面硬度を得るために、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0033】
(光重合開始剤)
本発明において、光重合開始剤としては、上述のような吸光度特性、即ち、濃度0.1体積%、光路長1cmの条件下において、波長360〜420nmの吸光度が平均0.5以上で、且つ波長450nm以上の吸光度が0.01以下という吸光度特性を有するものであれば、どのような光重合開始剤を用いても良い。光重合開始剤は、単独の化合物でも良く、複数の化合物を組合せても良い。複数の化合物を組合せた場合は、光重合開始剤混合物として、上記の吸光度特性を有していれば良い。
【0034】
吸光度特性を上記の範囲にするために、光重合開始剤は特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことが好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、他の光重合開始剤に比べて、長波長領域に吸光度特性があり、光照射によってアシルラジカルとフォスフィノイルラジカルを生じるので効率良く重合反応を進行させることができる。
【0035】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化1】

【0037】
(但し、式中、Rはフェニル基又は置換されたフェニル基を表し、Rは炭素原子数1〜5個のオキシアルキル基、フェニル基又は置換されたフェニル基を表し、Rはフェニル基、置換されたフェニル基、ベンゾイル基又は置換されたベンゾイル基を表す。)
【0038】
、R及びRにおける、置換されたフェニル基又は置換されたベンゾイル基の置換基はハロゲン原子、アルキル基等が挙げられ、1個又は2個以上あっても良い。置換基は炭素原子数1〜5個のアルキル基が好ましい。
【0039】
本発明において、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの光重合開始剤を1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0040】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))からなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましい。特に、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))が好ましい。
【0041】
また、光重合開始剤としては、上記のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、他の光重合開始剤を組合せたものを用いるのが好ましい。これにより、表面硬化性を高め、より十分な硬度を有するハードコート層とすることができる。他の光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルメチルケタール系光重合開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル)]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[4−(メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル)]−1−ブタノン等のα−アミノアルキルフェノン系等の光重合開始剤が挙げられる。これらの他の光重合開始剤も1種又2種以上を組合せて用いることができる。
【0042】
本発明において、光重合開始剤は、上記のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を含むことが好ましい。α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン(イルガキュア127(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))が好ましく、酸素阻害を受け難く、表面硬化性が高いことから2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン(イルガキュア127(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))が特に好ましい。
【0043】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤の混合比率は特に制限は無いが、質量比で、1:10〜10:1が好ましく、1:3〜3:1が特に好ましい。ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドと、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンの1:3混合物(イルガキュア1800((チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))等の市販の混合物も使用できる。
【0044】
これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のような安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種又は2種以上を任意の割合で混合して使用しても良い。
【0045】
光重合開始剤の含有量は特に制限は無いが、紫外線硬化性樹脂組成物固形分に対して一般に0.1〜10質量%である。重合反応を、更に速やかに且つ十分に反応させ、外観ムラが生じ難く、十分な表面硬度のハードコート層とするため、紫外線硬化性樹脂組成物固形分に対して、3〜10質量%が好ましく、4〜6質量%が更に好ましい。
【0046】
(紫外線吸収剤)
本発明において、紫外線吸収剤としては、上述のような透過率特性、即ち、濃度0.01体積%、光路長1cmの条件下において、波長390〜440nmの透過率が平均80%以上で、且つ波長280〜360nmの透過率が1%以下という透過率特性を有するものであれば、どのような紫外線吸収剤を用いても良い。更に、紫外線吸収剤の透過率特性は、上記条件下において、波長420nm以上の透過率は95%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤は、単独の化合物でも良く、複数の化合物を組合せても良い。複数の化合物を組合せた場合は、紫外線吸収剤混合物として、上記の透過率特性を有していれば良い。
【0047】
透過率特性を上記の範囲にするため、紫外線吸収剤はトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ビス[ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン 、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン −2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン −2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物等が挙げられる。
【0049】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5,5'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0050】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 としては、例えば、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等、あるいは2,2'−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(ヒドロキシメチル)フェノール〕、2,2’;−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、3,3−{2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}プロパン、2,2−{2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}ブタン、2,2'−オキシビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルフィド、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホキシド、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホン、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕アミン等が挙げられる。
【0051】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシベンゾエート 系紫外線吸収剤としては、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート 等が挙げられる。
【0053】
上記の透過率特性を満たす紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましい。特に、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤の含有量は、特に制限は無いが、紫外線硬化性組成物固形分に対して、一般に0.1〜10質量%である。ハードコート層の十分な紫外線吸収効果を得るとともに、光重合開始剤の反応を阻害しないように、紫外線硬化性組成物固形分に対して、2〜5質量%が好ましく、3〜5質量%が更に好ましい。
【0055】
[透明プラスチックフィルム]
本発明のハードコートフィルム20の透明プラスチックフィルム12の材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はない。プラスチックの例としては、ポリエステル[例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート]、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが加工性に優れているので好ましい。
【0056】
透明プラスチックフィルム12の表面には各機能層の密着性を良くするための易接着層を設けても良い。易接着層は、例えば、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のみ、又はそれらの樹脂に、SiO、ZrO、TiO、Al等の金属酸化微粒子、好ましくは平均粒径1〜100nmの金属酸化微粒子を配合して、屈折率を調整したものが用いられる。
【0057】
透明プラスチックフィルム12の膜厚は一般に1μm〜5mm、25〜250μmが好ましく、更に100〜200μmが好ましい。
【0058】
本発明のハードコートフィルムの透明プラスチックフィルムの一方の表面に形成された凹凸は、上述の通り、どのように形成されても良く、フライス加工による切削やプレス加工により透明プラスチックフィルムに直接形成しても、印刷やエッチング加工により凹凸を有する層を透明プラスチックフィルム表面上に形成しても良い。本発明においては、特に、微細な凹凸で、特に内部硬化不良が生じ易く、外観ムラが問題となる、メッシュ状の導電層により凹凸が形成された表面であることが好ましい。
【0059】
本発明のハードコートフィルムのハードコート層以外のフィルム構成層としては、上記の導電層の他、反射防止層(低屈折率層、高屈折率層)、近赤外線吸収層、調色層等が挙げられ、その組合せに特に制限はなく、用途によって自由に構成することができる。
【0060】
図2は本発明のハードコートフィルムの別の代表例を示す概略断面図である。図示の通り、ハードコートフィルム30においては、矩形状の透明プラスチックフィルム22の表面全域に導電層23が形成され、その表面に紫外線硬化樹脂組成物から形成されたハードコート層24が形成され、その上に反射防止層として、高屈折率層25及び低屈折率層26が形成されている。また、透明プラスチックフィルム22のハードコート層24が形成された面の他面上には、近赤外線吸収層27及び粘着剤層28が形成されており、ハードコートフィルム30は粘着剤層28を介して、ガラス31に張り付けられている。
【0061】
透明プラスチックフィルム22とハードコート層24については、図1の場合の透明プラスチックフィルム12とハードコート層14と同様である。反射防止層は、高屈折率層25と低屈折率層26と組み合わせた層でも良く、高屈折率層25、低屈折率層26のいずれかのみでも良い。
【0062】
近赤外線吸収層27は用途に応じて形成される。本発明のハードコートフィルムは十分な紫外線吸収効果を有するので、紫外線により劣化しやすい色素を含む近赤外線吸収層を形成するハードコートフィルムとして適している。粘着剤層28は無くても良いが、一般に、ハードコートフィルムはガラスに接着して使用されるため、設けられているのが好ましい。
【0063】
[導電層]
導電層23は、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□のとなるように設定される。導電層23は、図2で示したようなメッシュ状の導電層、或いは気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。
【0064】
メッシュ状の導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。
【0065】
メッシュ状の導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなる線径1μm〜1mm、開口率40〜95%のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は50〜95%である。メッシュ状の導電層において、線径が1mmを超えると電磁波シールド性が向上するが、開口率が低下し両立させることができない。1μm未満では、メッシュとしての強度が下がり取扱いが困難となる。また開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難であり、40%未満では光透過性が低下し、ディスプレイからの光量も低下する。
なお、メッシュの開口率とは、当該メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0066】
導電層のメッシュの透明基材表面からの高さは1〜7μmが好ましく、更に3〜5μmが好ましい。
【0067】
メッシュ状の導電層を構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素又はこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0068】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0069】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0070】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなる。
【0071】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0072】
上記の他に、メッシュ状の導電層として、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状の導電層を用いても良い。
【0073】
導電層上に、さらに金属メッキ層を、導電性を向上させるためは設けても良い(特に、上記溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成する方法の場合)。金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0074】
また、防眩性能を付与させても良い。この防眩化処理を行う場合、(メッシュ)導電層の表面に黒化処理を行っても良い。例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等を行うことができる。
【0075】
透明プラスチックフィルムと導電層との間に中間層を形成しても良い。その場合、中間層の材料として、主として、ポリエステル樹脂を用いる。ポリエステル樹脂は、一般にグリコールと多価(一般に二価)のカルボン酸との重縮合により得られる。グリコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールを挙げることができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールが好ましい。
【0076】
多価(一般に二価)のカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸が好ましい。
【0077】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は一般に1000〜50000の範囲、特に2000〜20000の範囲が好ましい。また、数平均分子量は一般に1000〜50000の範囲、特に2000〜20000の範囲が好ましい。
【0078】
ポリエステル樹脂以外の樹脂成分として、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等を使用しても良い。
【0079】
中間層形成用の塗工液は、上記ポリエステル樹脂、各種添加剤を有機溶剤に混合、溶解させることにより得ることができる。そして、得られた塗工液を公知の塗工法により、塗工、乾燥することにより中間層を得ることができる。この塗工液は、通常、硬化剤を含んでいないので、塗工後、溶剤を蒸発させることにより中間層を形成することができる。
【0080】
[反射防止層]
反射防止層の高屈折率層25は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb,SbO,In,SnO,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0081】
反射防止層の低屈折率層26は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0082】
[近赤外線吸収層]
近赤外線吸収層27は、一般に、基板フィルムの表面に色素等を含む層が形成されることにより得られる。近赤外線吸収層は、例えば上記色素及びバインダ樹脂等を含む塗工液を塗工、必要により乾燥、そして硬化させることにより得られる。或いは上記色素及びバインダ樹脂等を含む塗工液を塗工、そして単に乾燥させることによっても得られる。フィルムとして使用する場合は、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば色素等を含有するフィルムである。色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素又、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。バインダ樹脂の例としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。近赤外線吸収層の層厚は、0.5〜50μmが一般的である。
【0083】
近赤外線吸収層27には、ネオン発光の吸収機能(ネオンカット機能)を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層(ネオンカット層)を設けても良いが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。
【0084】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0085】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種組み合わせる場合、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応ある場合、耐熱性、耐湿性等の低下が認められる場合には、すべての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させても良い。また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0086】
[粘着剤層]
粘着剤層28は、一般に透明であり、ガラス基板に接着する接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤及び接着剤等も用いることができる。
【0087】
その層厚は、一般に5〜500μm、特に10〜100μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に圧着することにより装備することができる。
【0088】
前記粘着剤層の材料として、EVAを使用する場合、EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0089】
架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジーt−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0090】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度など)改良のために、各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物を添加することができる。この目的で用いられる化合物としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0091】
その例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル又はメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜5質量部用いられる。
【0092】
EVAを光により架橋する場合、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0093】
また、接着促進剤としてシランカップリング剤が併用される。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0094】
シランカップリング剤は、一般にEVA100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部の割合で1種又は2種以上が混合使用される。
【0095】
なおEVAの透明接着層には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0096】
上記粘着剤層は、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。
【0097】
粘着剤層上に設けられる剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0098】
[ディスプレイ用光学フィルタ]
図2のハードコートフィルムは、本発明のディスプレイ用光学フィルタとして好ましく使用できる。ディスプレイ用光学フィルタとして使用する場合、導電層23から外部への導通を図り、良好な電磁波遮蔽機能を得るため、光学フィルタの周囲のハードコート層等の機能層をレーザー照射等により除去して導電層を露出させたり、導電性粘着テープを導電層に挟みこんだりすることで外部に接地させる構造が含まれる(図示していない)。
【0099】
このような構造のディスプレイ用光学フィルタは、特に、画像表示の発光部に高周波パルス放電を行っており、不要な電磁波の輻射があるプラズマディスプレイパネル用光学フィルタに適している。
【0100】
そして、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、本発明のハードコートフィルムを備えるものであり、外観ムラが生じ難く、十分な表面硬度及び十分な紫外線吸収効果を示し、高い透明性を示すハードコート層を有する、生産性が高いディスプレイ用光学フィルタである。
【0101】
なお、ディスプレイ用光学フィルタとする場合、近赤外線吸収層27における近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を、20%以下、さらに15%以下とするのが好ましい。またネオン発光の選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。特に前者の場合には、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者の場合は、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させる効果がある。
【0102】
近赤外性吸収層27等はなくても良いが、本発明のディスプレイ用光学フィルタはハードコート層に十分な紫外線吸収効果を有するので、紫外線により劣化し易い色素を含む近赤外線吸収層27がハードコート層よりパネル側(視聴者側と反対側)に備えられたディスプレイ用光学フィルタに適している。
【0103】
[ハードコートフィルムの製造]
本発明のハードコートフィルタ(又はディスプレイ用光学フィルタ)は公知の方法で製造することができる。例えば、上述のような導電層等により凹凸が形成された透明プラスチックフィルムの表面全域にハードコート層を形成し、必要に応じて、反射防止層を形成する。反射防止層形成工程後、必要に応じて、透明プラスチックフィルムのハードコート層が形成された面の他面上に近赤外線吸収層及びその上に粘着剤層を形成する。
【0104】
上記のように枚葉に加工しても良いが、以下のように連続的に形成することも可能である。即ち、長尺状の透明プラスチックフィルムにハードコート層等を形成させ、さらにその他面上に近赤外線吸収層等を連続的に形成した後、必要な長さで裁断する。
【0105】
各層を形成するには、例えば、紫外線硬化性樹脂組成物をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等により透明プラスチックフィルムにコーティングし、次いで乾燥した後、紫外線照射して硬化すればよい。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜でき、密着性の向上、膜の硬度の上昇という利点がある。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。連続加工の場合各層の塗工後に硬化をしないと、塗工面に傷が付く場合があるので、各層を1層ずつ塗工し硬化するのが好ましい。
【0106】
紫外線硬化の光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0108】
1.ハードコートフィルム(ディスプレイ用光学フィルタ)の作製
(実施例1)
(1)ハードコート層用塗工液の調製
(i)紫外線硬化性樹脂組成物
(a)紫外線硬化性樹脂(ジペンタエリスリトールトリアクリレート;50質量部、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(エチレンオキサイド(EO);4モル付加);50質量部)。
(b)重合開始剤(イルガキュア1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドと、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンの1:3混合物)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製));5.6質量%(組成物固形分中)。光重合開始剤の吸光度特性は表1に示す。なお、吸光度は、光重合開始剤を0.1体積%の濃度で、トルエンに溶解し、分光光度計(U−4100(日立ハイテク社製))を用いて測定した。
(c)紫外線吸収剤(チヌビン460(2,4−ビス[ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製));4質量%(組成物固形分中)。紫外線吸収剤の透過率特性は表1に示す。なお、吸光度は、紫外線吸収剤を0.01体積%の濃度で、トルエンに溶解し、分光光度計(U−4100(日立ハイテク社製))を用いて測定した。
(ii)塗工液の調製
2-プロパノールとシクロヘキサノンを5:5の質量比で混合したものを溶剤とし、上記組成物と溶剤を4:6の割合で混合したものに対し、平滑化剤としてKF96−200CS(信越シリコーン社製)を0.02質量%添加し、室温で1時間攪拌することで、ハードコート層用塗工液を調製した。
【0109】
(2)ディスプレイ用光学フィルタの作製
(i)メッシュ状導電層の形成
表面に易接着層(ポリエステルポリウレタン;厚さ20nm)を有する厚さ100μmの長尺状ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの易接着層上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液をドット状に印刷した。ドット1個の大きさは1辺が250μmの正方形状であり、ドット同士間の間隔は20μmであり、ドット配列は正方格子状である。印刷厚さは、乾燥後で約5μmである。
【0110】
その上に、銅を平均膜厚5μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることによりドット部分を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥し、さらに、酸化処理による黒化処理を行い、PETフィルムの全面にメッシュ状導電層を形成した。
【0111】
このフィルム表面の導電層は、正確にドットのネガパターンに対応した正方格子状のものであり、平均線幅は20μm、平均ピッチが250μmであった。また、導電層(黒化層を含む)のメッシュの平均高さは5μmであった。
(ii)ハードコート層の形成
上記メッシュ状導電層上に、上記ハードコート層用塗工液を卓上バーコーターで塗布し、オーブンにて120℃、30秒間乾燥した後、積算光量600mJ/cm(1倍とする)の紫外線を照射して硬化させ、層厚8.0μmのハードコート層を形成した。また、短時間硬化の影響を評価するため、紫外線照射の積算光量を1/2、1/3とし、同様にハードコート層を形成した。得られたディスプレイ用光学フィルタは十分な表面硬度及び十分な紫外線吸収効果を示した。
【0112】
(実施例2)
実施例1の光重合開始剤を、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))と、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))とを、1:3で混合したものに変更し、これを5.6質量%(組成物固形分中)配合した以外は、実施例1と同様にディスプレイ用光学フィルタを作製した。光重合開始剤の吸光度特性は表1に示す。得られたディスプレイ用光学フィルタは十分な表面硬度及び十分な紫外線吸収効果を示した。
【0113】
(実施例3)
実施例1の光重合開始剤を、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))と、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン(イルガキュア127(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))とを、1:3で混合したものに変更し、これを5.6質量%(組成物固形分中)配合した以外は、実施例1と同様にディスプレイ用光学フィルタを作製した。光重合開始剤の吸光度特性は表1に示す。得られたディスプレイ用光学フィルタは十分な表面硬度及び十分な紫外線吸収効果を示した。
【0114】
(比較例1)
実施例1の光重合開始剤を、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))に変更し、これを5.6質量%(組成物固形分中)配合した以外は、実施例1と同様にディスプレイ用光学フィルタを作製した。光重合開始剤の吸光度特性は表1に示す。得られたディスプレイ用光学フィルタは十分な表面硬度及び十分な紫外線吸収効果を示した。
【0115】
(比較例2)
実施例1の光重合開始剤を、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))に変更し、これを5.6質量%(組成物固形分中)配合した以外は、実施例1と同様にディスプレイ用光学フィルタを作製した。光重合開始剤の吸光度特性は表1に示す。得られたディスプレイ用光学フィルタは十分な表面硬度及び十分な紫外線吸収効果を示した。
【0116】
2.評価方法
(1)透明性
300Lxの照度下において、白無地背景で、比較例1を基準として目視で各サンプルを比較した。比較例1と透明性に差が無い場合を○、透明性が低い場合を×とした。
(2)外観ムラ
200Lxの照度下において、白無地背景、及び黒無地背景で、外観ムラがないか目視観察した。外観ムラが認められない場合を○とし、認められた場合×とした。
【0117】
結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
表1に示す通り、実施例1〜3のハードコートフィルム(ディスプレイ用光学フィルタ)は、紫外線照射の積算光量が1/3としても、外観ムラが生じていない。一方、比較例1のハードコートフィルムは紫外線照射の積算光量が1/2、1/3の場合は外観ムラが認められ、短時間の硬化時間では生産できないものであった。また、比較例2のハードコートフィルムは、紫外線照射の積算光量が1/3でも外観ムラは生じないが、透明性が低く、ディスプレイ用光学フィルタとして不適であった。
【0120】
以上により、本発明のハードコートフィルムは、透明性が高く、微細な凹凸を有する表面に形成したハードコート層であっても、短時間の硬化時間で外観ムラなく形成されたハードコート層を有する、生産性に優れたハードコートフィルムであることが示された。
【0121】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明により、自動車、鉄道車両及び建築物の窓、ショーケース及びPDP等のディスプレイの画像表示部等のガラスの表面に貼り合せて、耐擦傷性、耐貫通性等の表面保護、及び反射防止や電磁波シールド性等の有用な機能を付与するハードコートフィルムであって、透明性が高く、生産性に優れたハードコートフィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0123】
12、22 透明プラスチックフィルム
13、23 導電層
14、24 ハードコート層
25 高屈折率層
26 低屈折率層
27 近赤外線吸収層
28 粘着剤層
20、30 ハードコートフィルム
31 ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に凹凸が形成された透明プラスチックフィルム、及びその凹凸が形成された表面に、紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、及び紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物から形成されるハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層の層厚が、6.5〜9.5μmであり、
前記光重合開始剤が、濃度0.1体積%、光路長1cmの条件下において、波長360〜420nmの吸光度が平均0.5以上で、且つ波長450nm以上の吸光度が0.01以下の光重合製開始剤であり、且つ
前記紫外線吸収剤が、濃度0.01体積%、光路長1cmの条件下において、波長390〜440nmの透過率が平均80%以上で、且つ波長280〜360nmの透過率が1%以下の紫外線吸収剤であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記光重合開始剤が、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドからなる群より選択された少なくとも1種である請求項2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記光重合開始剤の含有量が、前記紫外線硬化性樹脂組成物固形分に対して、3〜10質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤の含有量が、前記紫外線硬化性樹脂組成物固形分に対して、2〜5質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
前記凹凸が形成された表面が、メッシュ状の導電層により形成された表面である請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを備えているディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項9】
プラズマディスプレイパネル用光学フィルタである請求項8に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項10】
前記ハードコート層のディスプレイ側に近赤外線吸収層を備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載のディスプレイ用光学フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−118305(P2012−118305A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268105(P2010−268105)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】