説明

紫外線吸収性のベンゾトリアゾール系(共)重合体及びこれを含む塗料並びに該塗料がコーティングされたフィルム

【課題】太陽光の紫外線部分の分光放射照度分布に対応可能な300〜400nmの広範囲な波長領域、特に積算エネルギーの高い波長領域330〜400nmの紫外線吸収性能に優れるベンゾトリアゾール系(共)重合体を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるセサモール型または一般式(2)で表されるレゾルシノール型のベンゾトリアゾール系単量体を含む単量体組成物を共重合してなるベンゾトリアゾール系(共)重合体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収性能を有し、広範囲波長領域の紫外線を吸収するベンゾトリアゾール系(共)重合体とそれを含む塗料およびその塗料がコーティングされたフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線の吸収および遮断、塗膜からの紫外線吸収成分の溶出やブリードアウト防止、塗膜中での紫外線吸収成分の結晶化防止、塗膜の耐候性の向上、他の樹脂や配合材料との相溶性の向上を目的として用いられている紫外線吸収性の(共)重合体としては、アルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体を1種または複数種含む単量体組成物を共重合してなるベンゾトリアゾール系共重合体が主に用いられている(例えば、特許文献1〜12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−276831号公報
【0004】
【特許文献2】特開平8−039946号公報
【0005】
【特許文献3】特開2006−021402号公報
【0006】
【特許文献4】特開平9−003133号公報
【0007】
【特許文献5】特開平9−003134号公報
【0008】
【特許文献6】特開平9−003394号公報
【0009】
【特許文献7】特開平9−003395号公報
【0010】
【特許文献8】特開平9−003396号公報
【0011】
【特許文献9】特開平10−053681号公報
【0012】
【特許文献10】特開2006−264312号公報
【0013】
【特許文献11】特開2000−034464号公報
【0014】
【特許文献12】特開平9−003135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、これらの公報に記載されたアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系重合体の紫外線吸収波長領域は300nm〜360nm付近を中心とした比較的短い領域に存在し、波長400nm付近の吸収性能が低いため、地上における太陽から到達する太陽光の分光放射照度分布の紫外線波長領域300nm〜400nm全領域を吸収するには不十分である。このため、これらを用いた塗料およびその塗料がコーティングされたフィルムの紫外線吸収性能および紫外線遮断性能については十分であるとはいえなかった。
【0016】
また、塗料および、それがコーティングされたフィルムに紫外線波長領域300nm〜400nm全領域を吸収する紫外線吸収性単量体を添加し配合状態で使用したとしても、塗膜からの紫外線吸収成分の溶出やブリードアウト、塗膜中での紫外線吸収成分の結晶化や他の配合材料との相溶性の問題があった。
【0017】
そこで本発明における課題は、地上における太陽から到達する太陽光の紫外線部分の分光放射照度分布に対応可能な300〜400nmの広範囲な波長領域、特に積算エネルギーの高い波長領域330〜400nmの紫外線吸収性能に優れるベンゾトリアゾール系(共)重合体とそれを含む塗料およびその塗料をコーティングしたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために本発明者は、紫外線吸収性のベンゾトリアゾール系共重合体、それを含む塗料、更にはその塗料をコーティングしたフィルムについて検討した結果、従来のベンゾトリアゾール系単量体とは異なる新規な分子構造を有するベンゾトリアゾール系単量体を含む原料単量体を重合または共重合してなるベンゾトリアゾール系(共)重合体を見出し、本発明に至った。
【0019】
すなわち、本発明は、一般式(1)〔化1〕で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または一般式(2)〔化2〕で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む原料単量体を共重合してなるベンゾトリアゾール系紫外線吸収性重合体であることを最も主要な特徴とする。
【0020】
【化1】

・・・・・一般式(1)
【0021】
【化2】

・・・・・一般式(2)
【0022】
さらには、前記原料単量体が、更に一般式(3)〔化3〕で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含むものであり、これを共重合してなるベンゾトリアゾール系紫外線吸収性重合体とすることが好ましい。
【化3】

・・・・・一般式(3)
【0023】
なお、式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基または炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のオキシアルキレン基を表す。Rは炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。Xは水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。
【発明の効果】
【0024】
前記一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は、ベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にセサモールを結合させた化合物からの誘導体であり、ベンゾトリアゾール環のベンゼン部位に重合性2重結合を導入した分子構造を有する。最大吸収波長λmaxは365nm以上であり、波長領域300〜400nmを包括する広い範囲の紫外線吸収スペクトルを有し、400nm付近の長波長領域まで紫外線吸収能力を有する。
【0025】
前記一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体は、ベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にレゾルシノールを結合させた化合物からの誘導体であり、ベンゾトリアゾール環のベンゼン部位に重合性2重結合を導入した分子構造を有する。最大吸収波長λmaxは350nm以上であり、300〜400nmを包括する広い範囲の紫外線吸収スペクトルを有し、400nm付近の長波長領域まで紫外線吸収能力を有する。
【0026】
したがって、本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体およびそれを含む塗料およびそれがコーティングされたフィルムは、地上における太陽光の紫外線部分の分光放射照度分布に対応可能な300〜400nmの広範囲波長領域、特に積算エネルギーの高い波長領域330〜400nmの紫外線吸収性能に優れ、それを含む塗料およびその塗料がコーティングされたフィルムは、紫外線吸収性能および紫外線遮断性能に優れる。
【0027】
前記一般式(3)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体は、ベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にアルカノールフェノールを結合させた化合物からの誘導体であり、アルカノールフェノール部位に重合性2重結合を導入した分子構造を有する。現在、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性重合体に一般的に用いられている既存公知のベンゾトリアゾール系単量体であり、代表的な工業製品は2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールである。最大吸収波長λmaxは338nm、250〜380nmを包括する範囲の紫外線吸収スペクトルを有するが、380nm以上の長波長領域の紫外線吸収能力は極端に低い。
【0028】
したがって、本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体の好ましい様態においては、原料単量体として一般式(1)〔化1〕で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または一般式(2)〔化2〕で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体のみならず、前記一般式(3)〔化3〕で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体が含まれた原料単量体で共重合されることにより、250〜400nmのさらに広範囲の紫外線領域において吸収性能に優れ、それを含む塗料およびその塗料がコーティングされたフィルムは、紫外線吸収性能および紫外線遮断性能にいっそう優れる。
【0029】
また、本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体は、高分子であるが故にそれ自体で塗膜形成が可能である。したがって塗膜からの紫外線吸収成分の溶出やブリードアウトの問題が生じない。更に重合体を構成する紫外線吸収性単量体以外の単量体を適時選択し、共重合体とすることにより、高分子極性を自由に変化させることが可能になる。したがって、塗膜中での紫外線吸収成分の結晶化や、他の樹脂や配合材料との相溶性の問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明実施例1の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図2】本発明実施例2の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図3】本発明実施例3の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図4】本発明実施例4の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図5】本発明実施例5の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図6】本発明実施例6の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図7】本発明実施例7の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図8】本発明実施例8の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図9】比較例1の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図10】比較例2の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図11】比較例3の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図12】比較例4の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図13】比較例5の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【図14】比較例6の化合物の紫外線吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の詳細を説明する。本発明のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性重合体は前記一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または前記一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む単量体組成物を重合または共重合してなる。また、上記の単量体組成物に更に前記一般式(3)で表されアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む単量体組成物を共重合してなる。なお、上記の単量体組成物には必要に応じてそれ以外の単量体を含んでもよい。
【0032】
前記一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は式中、Rで表される置換基が水素原子またはメチル基で構成され、Rで表される置換基が炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基または炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のオキシアルキレン基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0033】
上記のセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体としては特に制限されるものではないが、具体的な物質名としては、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルアクリレート、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]プロピルメタクリレート、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]プロピルアクリレート、4−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]ブチルメタクリレート、4−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]ブチルアクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、4−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、4−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]ブチルアクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチル2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5カルボキシレート、2−(アクリロイルオキシ)エチル2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、4−(メタクリロイルオキシ)ブチル2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、4−(アクリロイルオキシ)ブチル2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート等を挙げることができる。また、これらセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は1種類で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0034】
前記一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体は式中、Rで表される置換基が水素原子またはメチル基、Rで表される置換基が炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基、Rで表される置換基が水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0035】
上記のレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体としては特に制限されるものではないが、具体的な物質名としては、2−[2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアタクリレート、2−[2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、2−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、2−[2−(4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタアクリレート、2−[2−(4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、4−[2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、4−[2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルアクリレート、4−[2−(4−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、4−[2−(4−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルアクリレート、4−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、4−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルアクリレート、4−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、4−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルアクリレート、4−[2−(4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、4−[2−(4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルアクリレート等を挙げることができる。また、これらレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体は1種類で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0036】
前記一般式(3)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体は式中、Rで表される置換基が水素原子またはメチル基、Rで表される置換基が炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基、Rで表される置換基が水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基、Xで表される置換基が水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0037】
上記のアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体としては特に制限されるものではないが、具体的な物質名としては、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどを挙ることができる。また、これらアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体は1種類で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0038】
前記のベンゾトリアゾール系単量体と共重合させることのできるその他の単量体成分としては、特に制限されるものではなく、適宜選択して用いることができるが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類。ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和単量体が挙げられる。更にはグリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等のオキシド環含有不飽和単量体が挙げられる。更には(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルロイルモルホリン、ビニルピリジン、ビニルイミダドール、N‐ビニルピロリドン等の含窒素不飽和単量体が挙げられる。更には塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和単量体が挙げられる。更にはスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族不飽和単量体が挙げられる。更には(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体が挙げられる。更にはビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和単量体が挙げられる。更には2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等のリン酸基含有不飽和単量体が挙げられる。
【0039】
前記のベンゾトリアゾール系単量体を含む単量体組成物の混合方法は特に限定されるものではない。つまり、単量体組成物を調整する方法は、特に限定されるものではない。
【0040】
前記のベンゾトリアゾール系単量体を含む単量体組成物を共重合反応させる際の重合方法は従来公知の溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等を採用することができ、特に限定されるものではない。
【0041】
重合反応させる際に用いるラジカル重合開始剤としては特に制限されないが、例えば、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2.4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド等のアゾ系ラジカル重合開始剤が挙げられる。更にはハイドロゲンパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス(3,5,5−)トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物系ラジカル重合開始剤が挙げられる。更には過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。また重合開始剤の使用量も特に限定されるものではない。
【0042】
乳化重合法等の水系重合法においては、還元剤として亜硫酸ナトリウム、L‐アスコルビン酸、ロンガリット等を用いることによりレドックス系開始剤としてもよい。
【0043】
共重合反応をさせる際には必要に応じて連鎖移動剤、重合調整剤を用いてもよい。連鎖移動剤、重合調整剤としては、n−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、β-メルカプトプロピオン酸メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、アルファメチルスチレンダイマー等が挙げられるが特に限定されるものではい。また連鎖移動剤、重合調整剤の使用量も特に限定されるものではない。
【0044】
溶液重合法において用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられるが特に限定されるものではい。また溶媒の使用量も特に限定されるものではない。
【0045】
乳化重合法において用いることができる界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン‐アクリル酸ナトリウム共重合体、スチレン‐アクリル酸アンモニウム共重合体、スチレン‐アルファメチルスチレン‐アクリル酸ナトリウム共重合体、スチレン‐アルファメチルスチレン‐アクリル酸アンモニウム共重合体、スチレン‐マレイン酸ナトリウム共重合体、スチレン‐マレイン酸アンモニウム共重合体、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが特に限定されるものではい。また界面活性剤の使用量も特に限定されるものではない。
【0046】
懸濁重合法において用いることができる分散剤としては、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド等が挙げられるが特に限定されるものではい。また分散剤の使用量も特に限定されるものではない。
【0047】
重合反応温度は特に限定されるものではないが室温〜200℃の範囲が好ましく、40℃〜140℃の範囲がより好ましい。反応時間は、特に限定されるものではなく、用いる単量体組成物の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように適宜に条件設定を行えばよい。
【0048】
以上のように、本発明のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性重合体は前記一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または、前記一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む単量体組成物を原料単量体として、(共)重合してなる構成である。さらに好ましくは、一般式(3)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体をさらに含む原料単量体を(共)重合してなる構成である。即ち300〜400nmの波長領域全般に紫外線吸能力を有する紫外線吸収性単量体を含む単量体組成物を(共)重合してなるので、300〜400nmの波長領域全般、特に330〜400nmの波長領域付近での紫外線吸収性能に特に優れている。
【0049】
なお、“セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体”とはベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にセサモールを結合させた化合物からの誘導体を意味する。また“レゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体”とはベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にレゾルシノールを結合させた化合物からの誘導体を意味する。また“アルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体”とはベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にアルカノールフェノール類を結合させた化合物からの誘導体を意味する。
【0050】
本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む塗料は、前記一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または、前記一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む原料単量体を(共)重合してなるベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む構成である。さらに好ましくは、一般式(3)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体をさらに含む上記原料単量体を共重合してなるベンゾトリアゾール系共重合体を含む構成である。塗料の形態は水系塗料、溶剤系塗料、紫外線硬化性塗料、熱硬化性塗料、クリア塗料、顔料塗料、染料塗料などが挙げられるが特段限定されるものではない。また、塗料を構成するベンゾトリアゾール系(共)重合体以外の樹脂、溶媒、架橋剤、硬化剤、触媒、充填剤、レベリング剤、可塑剤、安定剤、染料、顔料などの材料は特に限定されるものではなく、適宜選択して用いることができる。
【0051】
本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む塗料がコーティングされたフィルムは、前記一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または、前記一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む原料単量体を(共)重合してなるベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む構成の塗料がコーティングされたフィルムである。さらに好ましくは、一般式(3)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体をさらに含む原料単量体を共重合してなるベンゾトリアゾール系共重合体を含む構成の塗料がコーティングされたフィルムである。フィルムの種類は、ポリエステル系フィルム、セルロース系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルム、塩化ビニル系フィルム、塩化ビニリデン系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリイミド系フィルムなどが挙げられるが、特段限定されるものではない。
【0052】
上記フィルムにベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む塗料をコーティングする方法としては、前記ベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む塗料をロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドーコーター、エアドクターコーター、カーテンコーター、ファウンテンコーター、キスコーター,スクリーンコーター、スピンコーター、キャスト塗工、スプレーコーター、電着塗工押し出しコーター、ラングミュア・ブロジェット(LB)法などにより塗工する方法が挙げられるが特段限定されるものではない。さらに、本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体を含む塗膜の存在部位としては、フィルムの表面、裏面、両面、積層間などが挙げられるが特段限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
以下、ベンゾトリアゾール系(共)重合体の実施例および比較例とそれを含む塗料および塗料がコーティングされたフィルムにより、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、合成例および実施例および比較例に記載の「%」は「重量%」を示し、「部」は「重量部」を示す。
【0054】
〔1.ベンゾトリアゾール系単量体の合成〕
(合成例1)
セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレートの合成例を下記に記す。
【0055】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、2−(4−アミノフェニル)エタノール8.3g(0.061モル)を入れて、冷却しながら無水酢酸41.2g(0.404モル)を加え、70〜75℃で1時間撹拌した後に、5℃まで冷却してから70%硝酸6.5g(0.072モル)を5〜10℃で滴下し、同温度で3時間撹拌した。別の容器に氷水70gを入れて、上記で得られた反応物を撹拌しながら加え、5〜15℃で1時間撹拌した後に、析出した結晶をろ過、水洗し、黄色結晶を20.0g得た。
【0056】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付けて、得られた黄色結晶20.0g、水50ml、36%塩酸23.7g(0.234モル)を入れて、70〜75℃で1時間撹拌した。水酸化ナトリウムでpH4に調整し、静置して分離した下層部を抜き取り、2−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)エタノールを8.0g得た。
【0057】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記2−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)エタノール8.0g(0.044モル)、62.5%硫酸17.2g(0.110モル)、水80mlを入れて混合した後に、36%亜硝酸ナトリウム水溶液8.8g(0.046モル)を3〜7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を113g得た。300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール50ml、水酸化ナトリウム2.8g(0.070モル)、炭酸ナトリウム6.0g(0.057モル)、セサモール6.1g(0.044モル)を入れて混合した後に、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を14.6g得た。この赤色結晶14.6gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロフェニルアゾ]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを5.9g得た。
【0058】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロフェニルアゾ]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール5.9g(0.018モル)、イソプロピルアルコール30ml、水20ml、水酸化ナトリウム0.9g(0.023モル)、ハイドロキノン0.1g、60%ヒドラジン水和物1.1g(0.013モル)を入れて、50〜55℃で1時間撹拌させた後に、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール−N−オキシドを4.7g得た。
【0059】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール−N−オキシド4.7g(0.015モル)、メチルイソブチルケトン100ml、水35ml、亜鉛末2.0g(0.031モル)を入れて混合し、62.5%硫酸7.0g(0.045モル)を70〜75℃に保って1時間で滴下し、同温度で1時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水70mlで洗浄し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からメチルイソブチルケトン100mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール40mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄した後、乾燥機にて60℃で乾燥し、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを2.6g得た。2−(4−アミノフェニル)エタノールからの収率は14%、融点は179℃であった。
【0060】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール4.0g(0.013モル)、トルエン40ml、メタクリル酸1.8g(0.021モル)、メタンスルホン酸0.4g(0.004モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水30ml、炭酸ナトリウム0.6g(0.006モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過した後に、ろ液からトルエン40mlを減圧で回収し、イソプロピルアルコール100mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール40mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を4.2g得た。この黄色結晶4.2gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレート(以下、「UVA(1)」と記す。)を3.4g得た。
【0061】
6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールからのUVA(1)の収率は69%、融点137℃、最大吸収波長λmaxが368nmの時の吸光度εは22500であった。
【0062】
【化4】

・・・UVA(1)
【0063】
(合成例2)
レゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレートの合成例を下記に記す。
【0064】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、4−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール176.0g(0.684モル)、メチルイソブチルケトン350ml、1−クロロオクタン142.0g(0.955モル)、炭酸ナトリウム62.0g(0.585モル)、ヨウ化カリウム5.2gを入れて、120〜130℃で12時間還流脱水した。水200mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水200mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン350mlを減圧で回収し、イソプロピルアルコール450mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール200mlで洗浄し、乾燥して、2−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−オクチルオキシフェノールを216.9g得た。
【0065】
10Lの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記の2−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−オクチルオキシフェノール216.9g(0.587モル)、47%臭化水素酸125.8g(0.731モル)、スルホラン1800mlを入れて100〜105℃で48時間撹拌した。トルエン800ml、水3500mlを加えて、静置して下層の水層を分離して除去し、温水1300mlで2回洗浄し、トルエン800mlを減圧で回収した。イソプロピルアルコール800ml、水200mlを加えて、5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコール水溶液(80% V/V)200mlで洗浄し、乾燥して、2−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−オクチルオキシフェノールを126.6g得た。
【0066】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記の2−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−オクチルオキシフェノール126.6g(0.356モル)、メチルイソブチルケトン450ml、2−クロロエタノール35.8g(0.445モル)、炭酸ナトリウム23.5g(0.222モル)、ヨウ化カリウム17.8gを入れて、113〜118℃で10時間還流脱水した。250mlの水を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水150mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン450mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール500mlを加えて10℃まで冷却し、析出した結晶をろ過した後に、イソプロピルアルコール50mlで洗浄し、乾燥機で乾燥して、2−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−5−オクチルオキシフェノールを95.3g得た。4−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオールからの収率は35%であった。
【0067】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、前記の2−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−5−オクチルオキシフェノール95.3g(0.239モル)、トルエン550ml、メタクリル酸50.6g(0.588モル)、メタンスルホン酸29.8g(0.310モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水200ml、炭酸ナトリウム32.8g(0.309モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭1.8gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、そのろ液からトルエン550mlを減圧で回収した後に、イソプロピルアルコール750mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール100mlで洗浄し、減圧下40℃で乾燥し、白色結晶を88.1g得た。全量をイソプロピルアルコールで再結晶して、減圧下40℃で乾燥し、2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート(以下、「UVA(2)」と記す。)77.8gを得た。2−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−5−オクチルオキシフェノールからの収率は70%、融点92℃、最大吸収波長λmaxが350nmの時の吸光度εは30900であった。
【0068】
【化5】

・・・UVA(2)
【0069】
(合成例3)
レゾルシノール型ベンゾトリアゾール系単量体2−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレートの合成例を下記に記す。
【0070】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、4−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオール17.0g(0.066モル)、メチルイソブチルケトン35ml、1−ブロモブタン9.2g(0.067モル)、炭酸ナトリウム5.6g(0.053モル)、ヨウ化カリウム4.9gを入れて105〜115℃で4時間還流撹拌した。水35mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水35mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン35mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール100mlを加え、析出した結晶をろ過した後に、イソプロピルアルコール20mlで洗浄し、乾燥して、5−ブトキシ−2−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールを15.0g得た。
【0071】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、上記の5−ブトキシ−2−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール15.0g(0.048モル)、47%臭化水素酸9.9g(0.058モル)、スルホラン145mlを入れて100〜105℃で48時間撹拌した。トルエン70ml、水200mlを加えて、静置して下層の水層を分離して除去し、温水100mlで2回洗浄し、トルエン70mlを減圧で回収した。イソプロピルアルコール30ml、水15mlを加えて、5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過した後に、イソプロピルアルコール水溶液(70% V/V)20mlで洗浄し、乾燥して、5−ブトキシ−2−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールを6.2g得た。
【0072】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、上記の5−ブトキシ−2−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール6.2g(0.021モル)、メチルイソブチルケトン50ml、2−クロロエタノール7.4g(0.092モル)、炭酸ナトリウム4.9g(0.046モル)、ヨウ化カリウム0.2gを入れて113〜118℃で10時間還流脱水した。水50mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水50mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン50mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール25mlを加えて5℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール15mlで洗浄し、乾燥して、5−ブトキシ−2−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]フェノールを3.4g得た。
【0073】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、上記の5−ブトキシ−2−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]フェノール3.4g(0.010モル)、トルエン40ml、メタクリル酸1.7g(0.020モル)、メタンスルホン酸0.2g(0.002モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水30ml、炭酸ナトリウム0.7g(0.007モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン40mlを全量回収した後に、イソプロピルアルコール30mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール15mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、白色結晶を2.7g得た。白色結晶をイソプロピルアルコールで再結晶して、減圧下40℃で乾燥し、2−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート(以下、「UVA(3)」と記す。)を2.2g得た。4−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゼン−1,3−ジオールからの収率は8%、融点101℃、最大吸収波長λmaxが351nmの時の吸光度εは29100であった。
【0074】
【化6】

・・・UVA(3)
【0075】
〔2.ベンゾトリアゾール系単量体市販品〕
アルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体は市販品の2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(ダブルボンドケミカル社 FS593)を用いた。以下、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールを「UVA(4)」と記す。
【0076】
【化7】

・・・UVA(4)
【0077】
〔3.ベンゾトリアゾール系(共)重合体の合成〕
(実施例1)
四つ口フラスコにジムロート冷却器、水銀温時計、窒素ガス吹き込み管、攪拌装置を取り付け、単量体組成物としてのUVA(1)20部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と記す。)20部、および、溶媒としてのトルエン20部,メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記す。)20部、および、重合開始剤としての1,1’‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カルボニトリル)(以下、「重合開始剤(1)」と記す。)0.6部を入れて、攪拌しながら窒素ガス流量10ml/minで1時間フラスコ内を窒素置換後に、反応液温度90〜96℃で10時間還流状態にて重合反応を行った。重合反応終了後、トルエン10部、MEK10部を追加し、紫外線吸収性共重合体溶液100.6部を得た。
【0078】
(実施例2)
実施例1における単量体組成物をUVA(2)20部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0079】
(実施例3)
実施例1における単量体組成物をUVA(3)20部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0080】
(実施例4)
実施例1における単量体組成物をUVA(1)10部、UVA(2)10部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0081】
(実施例5)
実施例1における単量体組成物をUVA(1)10部、UVA(3)10部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0082】
(実施例6)
実施例1における単量体組成物をUVA(1)10部、UVA(4)10部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0083】
(実施例7)
実施例1における単量体組成物をUVA(1)10部、UVA(2)5部、UVA(4)5部、MMA10部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0084】
(実施例8)
実施例1における単量体組成物をUVA(1)10部、UVA(3)5部、UVA(4)5部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0085】
(比較例1)
実施例1における単量体組成物をUVA(4)20部、MMA20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0086】
(比較例2)
実施例1における単量体組成物をUVA(4)20部、MMA8部、フェノキシエチルアクリレート(以下、「PEA」と記す。)8部、ビニルピロリドン(以下、「VP」と記す。)4部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0087】
(比較例3)
実施例1における単量体組成物をUVA(4)20部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、「CHMA」と記す。)20部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0088】
(比較例4)
実施例1における単量体組成物をUVA(4)20部、CHMA16部、4‐メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(以下、「HALS」と記す。)4部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0089】
(比較例5)
実施例1における単量体組成物をUVA(4)20部、CHMA15.6部、HALS4部、メタクリル酸(以下、「MAA」と記す。)0.4部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0090】
(比較例6)
実施例1における単量体組成物をUVA(4)20部、CHMA15部、HALS4部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」と記す。)1部とした以外は実施例1と同様の重合反応操作を行い、紫外線吸収性共重合体溶液を得た。
【0091】
〔4.評価〕
上記の実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例6により得られた紫外線吸収性共重合体溶液の不揮発分、溶液粘度、分子量、および紫外線吸収性共重合体の最大吸収波長λmax、紫外線吸収スペクトルを測定した。さらに紫外線吸収性共重合体を含む塗料を作製し、これをポリエステルフィルムにコーティングしたコーティングフィルムを作製し、昇華転写印刷画像の保護性能確認を目的とした紫外線遮断機能確認試験、塗膜からの紫外線吸収成分の溶出、ブリードアウト、結晶化、配合材料相溶性の確認試験を実施した。
【0092】
不揮発分はアルミ皿に得られた紫外線吸収性共重合体溶液を1g秤量し、100℃で1時間乾燥、更に150℃で5時間乾燥後の残留樹脂量から算出した。
【0093】
粘度はEH型粘度計(東機産業(株) TV‐22)を用い、25℃における溶液粘度を測定した。
【0094】
分子量はGPCシステム(日本分光(株))を用い、溶離液をテトラヒドロフラン、分離カラムをKF‐805L(昭和電工)として、ポリスチレン検量線を用いポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn)を測定した。
【0095】
最大吸収波長λmax、紫外線吸収スペクトルは、得られた紫外線吸収性共重合体溶液を減圧乾燥にて脱溶剤した後に、濃度40ppmクロロホルム溶液とし、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ(株) U‐3900H)を用いて測定した。
【0096】
紫外線遮断機能試験は、実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例6で得られた紫外線吸収性共重合体溶液を用いて、紫外線吸性共重合体含有塗料を作製し、その塗料のコーティングフィルムによる昇華転写印刷画像の紫外線吸収遮断性能を確認した。以下に手順を記す。
【0097】
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例6で得られた紫外線吸収性共重合体溶液10部にトルエン15部、MEK15部、レベリング剤F‐471(DIC(株))0.004部を加え、紫外線吸収性共重合体を含む塗料を作製し、ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)、コスモシャインA‐4300、100ミクロン、両面易接着処理)にバーコーター#4で上記の塗料を塗布した後、70℃で1分間乾燥後、更に100℃で30秒間乾燥させ、紫外線吸収性共重合体を含むコーティングフィルムを得た。膜厚計(FILMETRICS F20)を用いた紫外線吸収性共重合体を含む塗膜の膜厚はそれぞれおよそ0.9μであった。
【0098】
次いで、市販の昇華転写方式コンパクトフォトプリンター(Canon SELPHY CP600)を用い印画紙にイエロー染料、シアン染料、マゼンダ染料の3色を個別に最大濃度で印刷のみを行い、転写フィルムに標準装備されている紫外線吸収保護層の転写無しの印刷印画紙を得た。これをJISK5701‐1:2000に準じて印刷部分の染料の紫外線照射による劣化を、紫外線フェードメーター(スガ試験機 U48)を用いてブラックパネル温度73±3℃、紫外線150時間連続照射で確認したところ、イエロー染料が最も紫外線による退色劣化が著しかった。この結果より、イエロー染料の退色劣化を耐紫外線機能評価基準とした。
【0099】
同様にして印画紙全体にイエロー染料を最大濃色で印刷を行い、標準装備されている紫外線保護層転写無しの印刷印画紙を得た。これを前記で作製したそれぞれの紫外線吸収性共重合体を含む塗料がコーティングされたフィルムで印画面を保護し、同様にJISK5701‐1:2000に準じてイエロー染料の紫外線退色劣化を確認した。評価は退色の目視確認での程度を考慮して5段階とし、レベル5は変化無し、レベル4は僅かなインク退色が確認出来る、レベル3はインク退色が確認出来る、レベル4は殆どインク退色、レベル1はインク分解消失とした。
【0100】
塗膜からの紫外線吸収成分の溶出、ブリードアウト、結晶化、配合材料相溶性の塗膜状態の変化確認試験は前記で作製したそれぞれの紫外線吸収性共重合体を含む塗料がコーティングされたフィルムの経時変化を光学顕微鏡用いて観察した。評価はフィルム作製から6ヵ月間の塗膜状態の目視感応評価とした。
【0101】
前記の実施例1〜実施例8および比較例1〜比較例6より得られた紫外線吸性共重合体溶液の不揮発分、分子量、最大吸収波長λmax、長波長領域360nm,370nm,380nm,390nm,400nmにおける吸光度、紫外線遮断機能試験評価結果、塗膜からの紫外線吸収成分の溶出、ブリードアウト、結晶化、配合材料相溶性の塗膜状態の変化確認試験結果を表1〜2に紫外線吸収スペクトルを図1〜図14に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表1,2中の記号の意味は次の通りである。
「UVA(1)」:2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレート
「UVA(2)」:2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート
「UVA(3)」:2−[2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート
「UVA(4)」:2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
「MMA」:メチルメタクリレート
「重合開始剤(1)」:1,1’‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カルボニトリル)
「MEK」:メチルエチルケトン
「CHMA」:シクロヘキシルメタクリレート
「PEA」:フェノキシエチルアクリレート
「VP」:ビニルピロリドン
「HALS」:4‐メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン
「HEMA」:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
「MAA」:メタクリル酸
【0105】
比較例1〜6の結果から、市販されている一般式(4)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体を用いた紫外線吸収性共重合体の極大吸収波長領域は330nm〜350nm付近を中心とした比較的短い領域に存在し、波長400nm付近の吸収性能が低いため、地上における太陽から到達する光放射照度分布の紫外線波長領域300nm〜400nm全般を吸収するには不十分であり、これらを用いた塗料およびその塗料がコーティングされたフィルムの紫外線吸収性能および紫外線遮断性能は十分であるとはいえない。
【0106】
実施例1〜8の結果から明らかなように、本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体は、地上における太陽から到達する太陽光放射照度分布の紫外線波長領域300nm〜400nmに対する広範囲な紫外線吸収波長領域を有する。従って、これを用いた塗料およびその塗料がコーティングされたフィルムも300nm〜400nmの広範囲な紫外線吸収波長領域を有する。よって紫外線吸収遮断保護材料として用いると、非常に高いレベルで保護対象物を紫外線から保護することができることがわかった。また、塗膜からの紫外線吸収成分の溶出やブリードアウト、塗膜中での紫外線吸収成分の結晶化や他の配合材料との相溶性の問題も生じないことも分かった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体は、従来吸収が難しかった太陽光の紫外線領域のうち、太陽光の紫外線部分の分光放射照度分布に対応可能な300〜400nmの広範囲な波長領域を吸収することができる材料である。また従来知られている250nm〜380nmの紫外線領域を吸収するベンゾトリアゾール系単量体をさらに原料単量体として用いて共重合させて得られる本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体では、さらなる広範囲の紫外線領域において吸収性能に優れる。またこれを塗料にしてコーティングすることもできる。したがって、例えば直射日光に晒されて劣化する部材などに本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体をコーティングすることで、該部材の耐久性を向上させることができる。またこれまで耐久性の点で使用が困難だった、300nm〜400nmの波長を利用する殺菌灯など人口灯の筐体材料などでも、本発明のベンゾトリアゾール系(共)重合体で保護ざれた合成樹脂を用い得る可能性もあり、産業上の利用価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体および/または、一般式(2)で表されるレゾルシノール型ベンゾトリアゾール単量体を含む原料単量体を重合してなることを特徴とするベンゾトリアゾール系(共)重合体。
【化1】

・・・・・一般式(1)
【化2】

・・・・・一般式(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基または炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のオキシアルキレン基を表す。Rは炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記原料単量体が、更に一般式(3)で表されるアルカノールフェノール型ベンゾトリアゾール系単量体を含む、請求項1記載のベンゾトリアゾール系共重合体。
【化3】

・・・・・一般式(3)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。Xは水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のベンゾトリアゾール系(共)重合体を含有する紫外線吸収性塗料。
【請求項4】
請求項3記載の紫外線吸収性塗料がコーティングされているフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−25811(P2012−25811A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163813(P2010−163813)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000190895)新中村化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】