説明

紫外線吸収性粉体及び紫外線吸収性樹脂組成物

【構成】平均一次粒子径が0.01〜0.3μmで、(1)式を満足する酸化イットリウム系固溶体を特徴とする紫外線吸収性粉体、および該紫外線吸収性粉体を配合した樹脂組成物。Y2−(4/3)X Ce(1) (0.0005≦X≦0.05)
【効果】酸化イットリウム系固溶体を特徴とする無機系の紫外線吸収性粉体を提供できる。該紫外線吸収性粉体を樹脂に配合することにより、樹脂組成物に紫外線吸収性能を付与し、また可視領域において良好な光透光性も付与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な無機系紫外線吸収性粉体及び該無機系紫外線吸収性粉体を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、日用雑貨品等の広範囲にわたり合成樹脂材料であるプラスチック材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)が使用されている。しかし、プラスチック材料を通常の環境下で使用した場合、太陽光などの紫外線照射により物性劣化を引き起こす。このような物性劣化を防ぐために紫外線吸収剤を添加することで対処している。
【0003】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などの有機系の紫外線吸収剤と、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系の紫外線吸収剤がある。
【0004】
これまでのところ、プラスチック材料に添加される紫外線吸収剤としては、性能面(紫外線吸収性、透明性)において有機系の紫外線吸収剤が良好であるため、有機系のものが大半を占めている。
【0005】
しかし、有機系の紫外線吸収剤は人体に対する影響(発がん性等)も考えられ、安全性に問題がある。そこで、有機系の紫外線吸収剤に比べて安全性の良好な無機系の紫外線吸収剤が望まれている。
【0006】
特許文献1によると、樹脂配合用の無機系の紫外線吸収剤として、亜鉛と3価の金属(Al,Fe,Ce,Ti)との固溶体である酸化亜鉛系固溶体が開示されている。
【特許文献1】特開2000―144095
【0007】
特許文献2によると、樹脂配合用の紫外線吸収剤として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの粉体を樹脂中に内含させた樹脂粉体を紫外線吸収剤として用いることにより、樹脂に優れた紫外線吸収性を付与できることが記載されている。
【特許文献2】特開平9―208927
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
安全性が高い無機系の紫外線吸収性粉体で、紫外線吸収性の良好な新規の無機系粉体の提供及び紫外線に対する劣化の少ない樹脂組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するために、(1)式で示される平均一次粒子径が0.01〜0.3μmの酸化イットリウム系固溶体を特徴とする紫外線吸収性粉体の提供及び、樹脂100質量部に対して、(1)式で示される平均一次粒子径が0.01〜0.3μmの酸化イットリウム系固溶体を特徴とする紫外線吸収性粉体を0.01〜10質量部配合することを特徴とする紫外線に対して耐劣化性のある樹脂組成物の提供。
2−(4/3)X Ce(1) 「0.0005≦X≦0.05」
【0010】
酸化イットリウム系固溶体中のセリウム固溶量は0.05〜5.0mol%である。固溶量が0.05mol%未満の場合、樹脂に配合した時に十分な紫外線吸収性能が得られない。また、固溶量が5.0mol%を超えた場合、樹脂に配合した時に十分な紫外線吸収性能は得られるが可視領域での透過性能が低下する。また固溶させるセリウムの量が5.0mol%を超えた場合、固溶しにくくなり、固溶しないセリウムが混合物として酸化イットリウム系固溶体中に介在することになる。
【0011】
酸化イットリウム系固溶体の平均一次粒子径は0.01〜0.3μmで、好ましくは0.01〜0.06μmである。平均一次粒子径が大きくなると樹脂に配合した場合に紫外線吸収性能が低下する傾向がある。また、平均一次粒子径が大きくなると樹脂に配合した場合に可視領域での光透過性も低下する傾向がある。
【0012】
(1)式で示される酸化イットリウム系固溶体の調製方法は、イットリウムイオンおよびセリウムイオンを含有した鉱酸塩水溶液に尿素と硫酸イオンを混合し、該混合液をオートクレーブにて水熱反応処理してイットリウム系固溶体の炭酸塩を得る。得られた炭酸塩を濾過、水洗、乾燥、熱処理して目的の酸化イットリウム系固溶体とする。混合液中のイットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度としては0.05〜1.0mol/lである。イットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度が0.05mol/l未満の場合は、均一な平均一次粒子を有する粒子は得られるが、生産性が低くコスト的に不利である。また、イットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度が1.0mol/lを超える場合は、水熱反応によって調製された粒子の凝集が強く、樹脂への分散性が悪くなる。
【0013】
混合液中の硫酸イオン量としては、イットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度の0.2〜5.0倍(モル比)として硫酸や硫酸塩を添加する。硫酸イオン量が0.2倍未満の場合は針状の結晶が生成し、5.0倍を超える場合は板状の結晶が生成する。どちらの場合も、熱処理しても所望の酸化イットリウム系固溶体は得られない。また、混合液中の尿素量としては、イットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度の3倍以上で5倍以上が好ましくかつ硫酸イオン量の5倍以上である。尿素量がイットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度の3倍未満ではイットリウム系固溶体の炭酸塩が生成しにくくなる。また、尿素量に上限はないが、過剰に添加しても反応に関与しない尿素が増えるだけで不経済となる。従って、イットリウムイオンとセリウムイオンとの合計濃度の20倍以下で、かつ硫酸イオン濃度の30以下である。
【0014】
調製された混合液をオートクレーブ中にて水熱反応処理し、イットリウム系固溶体の炭酸塩を調製する。オートクレーブでの処理条件は、反応温度が105〜140℃、圧力は0.2〜1.0MPa、反応時間は2〜5時間である。反応温度が105℃未満では反応に時間がかかりすぎて実用的でない。反応温度が140℃を超えると圧力が高くなり装置の耐久性に問題がでてくる。圧力が0.2MPa未満では炭酸塩を生成させるのに時間がかかり、圧力が1.0MPaを超えると生成した炭酸塩の凝集が激しくなり、熱処理した酸化イットリウム系固溶体の凝集も強く樹脂への分散性が悪くなる。
【0015】
得られたイットリウム系固溶体の炭酸塩を濾過、洗浄、乾燥して酸化イットリウム系固溶体の前躯体とする。濾過は一般的な減圧濾過で行う。洗浄は純水にて5〜7回行う。5〜7回の洗浄で前躯体中に含有される無関係な陰イオンの量が500wtppm未満になる。前躯体中に無関係な陰イオンが500wtppm以上になると、前躯体を熱処理して酸化イットリウム系固溶体を調製する時に焼き付きが起こり均一な粒子が得られなくなる。
【0016】
次に、得られたイットリウム系固溶体の炭酸塩を110〜150℃で24〜48時間保持して乾燥させる。その後、700〜1200℃で2〜10時間の熱処理をして平均一次粒子径が0.01〜0.3μmである酸化イットリウム系固溶体を調製する。処理温度と処理時間を所定の範囲内で適宜決めることで、平均一次粒子径を0.01〜0.3μmに制御できる。熱処理温度が700℃未満では前躯体の分解が十分におこらず所望の酸化イットリウム系固溶体が得られない。また、熱処理温度が1200℃を超えると粒子の焼き付きがおこり分散性の悪い酸化イットリウム系固溶体になる。
【0017】
本発明の酸化イットリウム系固溶体である紫外線吸収性粉体を樹脂に配合する場合、樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部である。配合量が0.01質量部未満であると紫外線吸収性能を十分に付与できない。また、配合量が10質量部を超えると紫外線吸収性能を十分に付与できるが、可視領域での透過性能の低下やコストアップになり好ましくない。
【0018】
本発明の紫外線吸収性粉体である酸化イットリウム系固溶体は、樹脂への分散性や相溶性を良好にするために表面処理剤で表面処理することが望ましい。表面処理剤としては以下の物が挙げられる。ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸やそのアルカリ金属塩。アニオン界面活性剤としては、ステアリルアルコール、オレイルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩や、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩。カップリング剤としては、ビニルエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤、さらには、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤。多価アルコールからなるエステル類としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等の多価アルコールと脂肪酸のエステル類。リン酸エステル類としては、オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル類。表面処理剤の処理量としては酸化イットリウム系固溶体100質量部に対して1〜5質量部である。
【0019】
表面処理の方法については乾式法と湿式法があるが、酸化イットリウム系固溶体の表面を均一に処理するには湿式法が好ましい。湿式法としては、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジェッターなどの分散機を用いて、エタノール等の媒体中に酸化イットリウム系固溶体と処理剤を分散させて行う。湿式法としては、ヘンシェルミキサー、プローシェアミキサなどの混合機を用いて、酸化イットリウム系固溶体の粉末を十分に撹拌しながらエタノール等の媒体に溶解又は乳化させた表面処理剤を適宜添加し、乾式に近い状態で酸化イットリウム系固溶体を表面処理する。表面処理された酸化イットリウム系固溶体は、濾過、乾燥、粉砕等の処理を必要に応じて行う。
【0020】
本発明の対象樹脂は以下のものがあげられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、PBT樹脂などの熱可塑性樹脂。フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂。イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム 、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム等の合成ゴム。
【0021】
本発明の紫外線吸収性粉体の酸化イットリウム系固溶体を樹脂に配合して樹脂組成物を調製する方法は、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーザー等を用いて行う。
【0022】
本発明の紫外線に対して耐劣化性のある樹脂組成物は、酸化イットリウム系固溶体以外に必要に応じて各種添加剤を添加しても良い。例としては、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤等である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の紫外線吸収性の粉体である酸化イットリウム系固溶体は無機系で従来の有機系紫外線吸収剤に比べて安全性が高い。また、樹脂に配合することにより紫外線に対する劣化の少ない樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0025】
酸化イットリウム系固溶体の調製について
実施例1
303.3gの YCl・6HO(純度99.9%)を純水にて溶解させ、容量を1Lとして1.0mol/lの塩化イットリウム溶液を調製した。また、548.2gのCe(NH(NO(純度93%以上)を純水に溶解させ、容量を1Lとして1.0mol/lのセリウム溶液を調製した。次に、360.3gの尿素(純度99%)を純水に溶解させ、容量を1Lとして6.0mol/lの尿素水溶液を調製した。さらに、264.2gの(NH4)SO(純度99%)を純水にて溶解させ、容量を1Lとして2.0mol/lの硫酸アンモニウム水溶液を調製した。
上記の各溶液を次の割合で混合し、純水を加えて4lとした。塩化イットリウム溶液を995ml、セリウム溶液を6ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500ml。(イットリウム+セリウム)の金属濃度は0.25mol/l、尿素は1.5mol/l、硫酸アンモニウムは0.25mol/lである。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は450wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物について、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所)にて組成分析を行い、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社)にて100個の粒子を測定してその平均値を平均一次粒子径とし、X線回折装置(株式会社リガク)にて固溶性(酸化イットリウム以外のピークの存在)を確認した。X線回折の測定結果より酸化イットリウム以外のピークが存在しないときは固溶体とし、酸化イットリウム以外のピークが存在した場合は固溶せずとした。測定結果については表1に示す。次に調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのステアリン酸を溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0026】
実施例2
実施例1と同様にして塩化イットリウム溶液(1.0mol/l)、セリウム溶液(1.0mol/l)、尿素水溶液(6.0mol/l)、硫酸アンモニウム水溶液(2.0mol/l)を調製した。次に、塩化イットリウム溶液を999.5ml、セリウム溶液を0.6ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は480wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物である酸化イットリウム系固溶体について実施例1と同様に組成分析、平均一次粒子径、X線回折を行った。結果については表1に示す。次に、調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのビニルエトキシシランを溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0027】
実施例3
実施例1と同様にして塩化イットリウム溶液(1.0mol/l)、セリウム溶液(1.0mol/l)、尿素水溶液(6.0mol/l)、硫酸アンモニウム水溶液(2.0mol/l)を調製した。次に、塩化イットリウム溶液を999ml、セリウム溶液を1.2ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は490wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物である酸化イットリウム系固溶体について実施例1と同様に組成分析、平均一次粒子径、X線回折を行った。結果については表1に示す。次に、調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのビニルエトキシシランを溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0028】
実施例4
実施例1と同様にして塩化イットリウム溶液(1.0mol/l)、セリウム溶液(1.0mol/l)、尿素水溶液(6.0mol/l)、硫酸アンモニウム水溶液(2.0mol/l)を調製した。次に、塩化イットリウム溶液を990ml、セリウム溶液を 10ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は460wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物である酸化イットリウム系固溶体について実施例1と同様に組成分析、平均一次粒子径、X線回折を行った。結果については表1に示す。次に、調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのビニルエトキシシランを溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0029】
実施例5
実施例1と同様にして塩化イットリウム溶液(1.0mol/l)、セリウム溶液(1.0mol/l)、尿素水溶液(6.0mol/l)、硫酸アンモニウム水溶液(2.0mol/l)を調製した。次に、塩化イットリウム溶液を980ml、セリウム溶液を 20ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は450wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物である酸化イットリウム系固溶体について実施例1と同様に組成分析、平均一次粒子径、X線回折を行った。結果については表1に示す。次に、調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのステアリン酸を溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0030】
実施例6
実施例1と同様にして塩化イットリウム溶液(1.0mol/l)、セリウム溶液(1.0mol/l)、尿素水溶液(6.0mol/l)、硫酸アンモニウム水溶液(2.0mol/l)を調製した。次に、塩化イットリウム溶液を970ml、セリウム溶液を 30ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は460wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物である酸化イットリウム系固溶体について実施例1と同様に組成分析、平均一次粒子径、X線回折を行った。結果については表1に示す。次に、調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのビニルエトキシシランを溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0031】
実施例7
実施例1と同様にして塩化イットリウム溶液(1.0mol/l)、セリウム溶液(1.0mol/l)、尿素水溶液(6.0mol/l)、硫酸アンモニウム水溶液(2.0mol/l)を調製した。次に、塩化イットリウム溶液を950ml、セリウム溶液を 50ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした。調製された混合液をオートクレーブ(容量10L)に投入し、125℃、0.5MPa、で3時間反応させて、炭酸塩を生成させた。得られた炭酸塩を5回の濾過洗浄を行い、120℃にて24時間乾燥した。乾燥物について化学分析したところ、Cl、NH4、NO3、SOなどの陰イオンの合計量は470wtppmであった。続いて、乾燥させた炭酸塩をアルミナ製の容器にて1100℃で3時間熱処理して酸化物とした。得られた酸化物である酸化イットリウム系固溶体について実施例1と同様に組成分析、平均一次粒子径、X線回折を行った。結果については表1に示す。次に、調製された酸化イットリウム系固溶体50gを、1.0gのステアリン酸を溶解させた300mlのエタノール中に投入し、ホモミキサーを用いて20分間の表面処理を行った。表面処理を行った後、濾過、乾燥(80℃)、粉砕を行った。
【0032】
実施例8
実施例1で炭酸塩を調製するときのオートクレーブでの反応温度を120℃にて4時間で行い、熱処理して酸化物にする際の温度を1000℃に変えた以外は同様にして酸化イットリウム系固溶体を調製した。組成分析、平均一次粒子径、X線回折の結果については表1に示す。また、表面処理の条件も同様である。
【0033】
実施例9
実施例1で炭酸塩を調製するときのオートクレーブでの反応温度を120℃にて4時間で行い、熱処理して酸化物にする際の温度を900℃に変えた以外は同様にして酸化イットリウム系固溶体を調製した。組成分析、平均一次粒子径、X線回折の結果については表1に示す。また、表面処理の条件も同様である。
【0034】
実施例10
実施例1で炭酸塩を調製するときのオートクレーブでの反応温度を115℃にて5時間で行い、熱処理して酸化物にする際の温度を850℃に変えた以外は同様にして酸化イットリウム系固溶体を調製した。組成分析、平均一次粒子径、X線回折の結果については表1に示す。また、表面処理の条件も同様である。
【0035】
実施例11
実施例1で炭酸塩を調製するときのオートクレーブでの反応温度を115℃にて5時間で行い、熱処理して酸化物にする際の温度を750℃に変えた以外は同様にして酸化イットリウム系固溶体を調製した。組成分析、平均一次粒子径、X線回折の結果については表1に示す。また、表面処理の条件も同様である。
【0036】
比較例1
実施例1で炭酸塩を調製する時の各水溶液の混合条件を、塩化イットリウム溶液を999、5ml、セリウム溶液を0.5ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした以外は同様に行って酸化イットリウム系固溶体を調製した。組成分析、平均一次粒子径、X線回折の結果については表1に示す。また表面処理も同様に行った。
【0037】
比較例2
実施例1で炭酸塩を調製する時の各水溶液の混合条件を、塩化イットリウム溶液を920ml、セリウム溶液を80ml、尿素水溶液を1000ml、硫酸アンモニウム水溶液を500mlを混合し、純水にて全体の容量を4Lとした以外は同様に行って酸化イットリウム系固溶体を調製した。組成分析、平均一次粒子径、X線回折の結果については表1に示す。また表面処理も同様に行った。
【0038】
【表1】



【0039】
表1に示す実施例の結果より、本件発明の所定の条件により調製した酸化イットリウム系固溶体は所定の平均一次粒子径(0.01〜0.3μm)を満足し、またX線回折チャートに酸化イットリウムの特定ピーク以外にピークが見られないことより、セリウムが酸化イットリウムの格子に固溶したものと思われる。また、比較例2のように固溶させるセリウムの固溶量が5mol%を超えて7mol%程度で固溶させようとすると、酸化イットリウム以外のピークが認められ、固溶できなかったセリウムが存在していると思われる。
【0040】
樹脂組成物の調製及び評価
実施例1〜実施例11、比較例1と比較例2及び市販の無機系の紫外線吸収剤を樹脂に配合し、シート成形して紫外領域(350nm)及び可視領域(600nm)での光透過率を測定した。350nmでの光透過率が低いほど紫外線吸収性能が良好であることを示している。また、600nmでの光透過率が高いほど透明性が良好であることを示している。
【0041】
実施例12
実施例1で調製した酸化イットリウム系固溶体1.0g、ポリエチレン樹脂(ノバテックHD:HF133:ノバテックは日本ポリエチレンの商品名)100g、酸化防止剤(イルガノックス1010,イルガノックスはチバガイギー社の商品名)0.4gをラボプラストミル(東洋精機株式会社)を用いて150℃で30分間混練して樹脂組成物とした。得られた樹脂組成物を金型(厚み0.5×縦100×横100mm)に挿入し、150℃にてプレス成形した。調製されたシートから試験片(厚み0.5mm×縦20mm×横20mm)を切り取り、分光光度計(株式会社日立製作所)を用いて350nmと600nmでの光透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0042】
実施例13
実施例2で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0043】
実施例14
実施例3で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0044】
実施例15
実施例4で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0045】
実施例16
実施例5で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0046】
実施例17
実施例6で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0047】
実施例18
実施例7で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0048】
実施例19
実施例8で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0049】
実施例20
実施例9で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0050】
実施例21
実施例10で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0051】
実施例22
実施例11で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0052】
比較例3
比較例1で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0053】
比較例4
比較例2で調製した酸化イットリウム系固溶体に変えた以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示す。
【0054】
比較例5
市販の酸化亜鉛(平均粒径0.29μm)に変えた以外は実施例12と同様に行った。
結果を表2に示す。
【0055】
比較例6
市販の酸化チタン(平均粒径0.05μm)に変えた以外は実施例12と同様に行った。
結果を表2に示す。
【0056】
比較例7
市販の酸化セリウム(平均粒径0.15μm)に変えた以外は実施例12と同様に行った。
結果を表2に示す。
【0057】
【表2】



【0058】
表2に実施例、比較例、市販の無機系紫外線吸収剤を樹脂に配合した樹脂組成物についての光透過率を記載している。本発明の酸化イットリウム系固溶体中のセリウム固溶量が0.05〜5mol%の試料について紫外領域(350nm)での光透過率が1%以下あるいはゼロか、ほぼゼロに近いことより良好な紫外線吸収性粉体であることがわかる。さらに可視領域(600nm)での光透過率が63〜77%で良好な光透過性を示している。
一方、セリウム固溶量が本発明の技術範囲より少ない試料(比較例3)では紫外領域(350nm)での光透過率が4%を超えており、良好な紫外線吸収性を示さなかった。また、セリウム固溶量が本発明の技術範囲より多い試料(比較例4)では紫外領域(350nm)での光透過率はゼロで非常に良好であるが、可視領域(600nm)での光透過率が約40%程度と低かった。
汎用性を考慮すると、紫外線を良好に吸収しかつ可視光線を良好に透過させる紫外線吸収剤が求められているので、酸化イットリウム系固溶体中のセリウム固溶量としては0.05〜5.0mol%である。
酸化イットリウム系固溶体の平均一次粒子径について、平均一次粒子径が小さくなるほど紫外領域(350nm)での光透過率は低くなる傾向を示し、また可視領域(600nm)での光透過率は高くなる傾向を示した。(実施例12、実施例19〜実施例22)紫外線吸収性が良好な傾向を示す理由として、樹脂への配合量は重量割合で添加しており、平均一次粒子径が小さいほど樹脂中に存在する酸化イットリウム系固溶体の個数が多くなり有効に作用する傾向が増加するためでないかと推察している。さらに、可視領域での光透過率が良好な傾向を示す理由として、平均一次粒子径が小さくなるほど光散乱を起こす傾向が少なくなり、光透過率が高くなる傾向を示したのではないかと推察している。酸化イットリウム系固溶体の平均一次粒子径の適用範囲は0.01〜0.3μmであるが、適用範囲の中でも小さい平均一次粒子径を有する酸化イットリウム系固溶体のほうが望ましい
と考えられる。
市販品の酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムについては本発明の酸化イットリウム系固溶体に比べていずれも良好な紫外線吸収性能は示さなかった。(比較例5〜比較例7)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)を満足し、平均一次粒子径が0.01〜0.3μmである酸化イットリウム系固溶体を特徴とする紫外線吸収性粉体。
2−(4/3)X Ce(1) (0.0005≦X≦0.05)
【請求項2】
平均一次粒子径が0.01〜0.06μmである請求項1に記載の酸化イットリウム系固溶体を特徴とする紫外線吸収性粉体。
【請求項3】
高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アニオン系界面活性剤、カップリング剤、多価アルコールからなるエステル類、リン酸エステル類から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤で表面処理された請求項1記載の酸化イットリウム系固溶体である紫外線吸収性粉体。
【請求項4】
樹脂100質量部に対して、請求項1又は請求項2に記載の酸化イットリウム系固溶体を0.01〜10質量部配合した紫外線に対して耐劣化性のある樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−46352(P2009−46352A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214514(P2007−214514)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(390036722)神島化学工業株式会社 (54)
【Fターム(参考)】