説明

紫外線吸収性複合粉体

【課題】優れた紫外線防御能を有し、かつ、使用性、透明性に優れた複合粉体、および該複合粉体を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】平均粒子径が0.5〜100μmである有機粉体および無機粉体から選ばれる1種以上の一次粉体の表面を、式(1)の化合物で被覆してなる、紫外線吸収能を有する複合粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤を粉体表面に被覆した複合粉体、および本複合粉体を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は、オゾン層にカットされる200〜280nmのUV−C領域、暴露により皮膚が赤くなる所謂サンバーンを引き起こす280〜320nmのUV−B領域、赤みが引いた後の黒化現象を起こす320〜400nmのUV−A領域に大きく分類することができる。最近の研究では、UV−A,Bの上述した肌への有害性だけではなく、色素沈着、ドライスキン、肌荒れ、皮膚のたるみにも何らかの影響を及ぼしていると言われている。かかる広く認知されつつある紫外線の有害性に加えて、オゾン層の破壊など環境的要因も加味され、紫外線防御剤の化粧料への需要が高まりつつある。
【0003】
しかしながら、紫外線を防止する目的で配合させている有機系紫外線吸収剤は、(1)化粧品に汎用される油剤、特にシリコーン類へ溶解性に劣る、(2)使用感がベタツク、(3)光安定性に劣る、(4)経時的に変色や変臭を生じるなどの問題点がある。一方、無機系紫外線散乱剤である微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛は、(1)使用性がギシツク、(2)塗布時白くなる、(3)光触媒作用を有しているなどの問題点を有し、化粧料への配合量が限定されていた。また、単一の紫外線防御剤のみでUV-A,Bの領域を広く防御する紫外線防御剤がほとんどない状況であった。
【0004】
このような状況下で光安定性に優れ、広範囲な紫外線吸収スペクトルを有したベンゾトリアゾール類を使用した新規の不溶性有機系紫外線吸収剤((2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕))(以後、MBBTと示す)が開発された(特許文献1)。この有機系紫外線吸収剤は、水、化粧品に汎用される油剤に不溶性であり、吸収、散乱、反射により紫外線を防御する。この散乱、反射による紫外線防御効果は、粒子径に依存し、平均粒径が150nm〜200nmで最適な条件となることが知られている。さらに、この有機系紫外線吸収剤は、他の紫外線吸収剤と相乗効果を示し、併用することで著しく防御効果が増大することが知られている。
【0005】
特許文献2には、MBBTが最適な紫外線防御能を示す平均粒子径までこれを微細化し、水に分散し、処方設計における簡便性を向上したものが開示されており、またかかる製品が既に市販されている(チノソーブ(登録商標)M チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)。しかしながら、この製品は水を配合しない非水系製剤には配合できない、また、上記水分散液に塩を加えると、MBBTが凝集し、紫外線防御効果が低下するという欠点があった。油中水型乳化化粧料は、乳化の安定性向上するため、通常、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムなどの塩を処方中に配合するため、上記水分散体の油中水型乳化製剤への応用が困難であった。さらに、MBBTを多量に配合すると使用性がギシツくものとなるという点も問題とされている。
【0006】
そこで、特許文献3として、MBBTを有機溶媒に可溶な高分子に内包する手段が提案されている。しかしながら、MBBT自体が内包時に凝集してしまい最適の粒子径を維持することが困難であり、係る処方を用いても十分な紫外線防御効果が得られない。
【0007】
【特許文献1】特開平04-290877号公報
【特許文献2】特開平11-100317号公報
【特許文献3】特開2004-168913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた紫外線吸収能を有し、かつ、使用性、透明性に優れた、複合粉体を提供することを課題とする。さらに、本複合体を配合した高い紫外線防御濃を有する化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、平均粒子径が0.5〜100μmである有機粉体および無機粉体から選ばれる1種以上の一次粉体の表面を、式(1)の化合物で被覆してなる、紫外線吸収能を有する複合粉体を提供する。
【化1】

式(1)記載のベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤は、化粧品に汎用される油剤および水に不溶である。本発明の複合粉体は、紫外線吸収能を有し、かつ、使用性、透明性に優れたものである。
【0010】
本発明はさらに、本発明の複合粉体を配合した化粧料を提供する。本発明の化粧料は好ましくはさらにメトキシケイヒ酸オクチルを配合する。本発明の複合粉体とメトキシケイヒ酸オクチルとを併用することで、メトキシケイヒ酸オクチルの光安定性を向上させるだけでなく、相乗効果にて高い紫外線防御作用を発現させることが可能となる。
【0011】
本発明はさらに、水性媒体中、Al、Mg、Ca、Zn、ZrおよびTiからなる群より選ばれる金属の水溶性塩の存在下で一次粉体、式(1)の化合物を混合し、一次粉体表面上に式(1)の化合物を配向吸着させることを特徴とする、本発明の複合粉体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合粉体は、優れた紫外線防御能を有し、かつ、使用性、透明性に優れており、化粧料へ配合する上で非常に好ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に使用する式(1)の化合物、即ちベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤は、平均粒径が200nm以下、より好ましくは150〜200nmのものを用いる。かかる粒径のものを用いることにより、高い紫外線防御効果を達成することができる。このようなベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)Mとして販売されているものが好適に用いられる。チノソーブ(登録商標)Mは、式(1)の化合物を平均粒径200nm以下に微細化した微粒子を50%含有する水分散液である。
【0014】
本発明で使用される平均粒子が0.5〜100μmの粒径を有する有機粉体および無機粉体から選ばれる1種以上の一次粉体とは、一般的に化粧品に使用されている粉体であれば特に制限されない。例えば、タルク、カオリン、セリサイト、白雲母、金雲母、黒雲母、合成雲母、紅雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミクスパウダー等の無機粉末、ナイロンパウダー、シリコンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリ四弗化エチレンパウダー、ジスチレンベンゼンポリマーパウダー、エポキシパウダー、アクリルパウダー、微結晶性セルロース、ウレタンパウダー等の有機粉体、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛等の白色顔料など適宜選択し使用することができる。好ましくは、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、硫酸バリウムなどの板状形状の粉体を用いると粉体表面に凸凹ができることで、鏡面反射を防止しツヤ感を抑えることができる。また、シリカ、セルロースなどの球状粉体を用いると同じく粉体表面に凹凸ができることで、更に拡散反射効果が強くなり毛穴ぼかし効果などの効果を付与することできる。
【0015】
一次粉体の粒径は0.5〜100μが好ましい。より好ましくは1〜50μmである。0.5μm以下では、配向吸着させる不溶性ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤の粒径が200nmであることから、ほとんど紫外線吸収剤が複合化できなくなる。また100μm以上では、複合粉体がざらついた使用感となるため好ましくない。
【0016】
本発明の複合粉体は、水性媒体中、Al、Mg、Ca、Zn、ZrおよびTiからなる群より選ばれる金属の水溶性塩の存在下で一次粉体、式(1)の化合物を混合し、一次粉体表面上に式(1)の化合物を配向吸着させることによって調製される。本発明の方法において用いられるAl、Mg、Ca、Zn、ZrおよびTiからなる群より選ばれる金属の水溶性塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ硫酸チタン、四塩化チタンなどが例示される。入手の容易さや実績より硫酸アルミニウムが好ましい。これらの金属塩は、水溶液として用いられる。
【0017】
本発明の複合粉体を製造するにあたり、式(1)で示されるベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤の量は、一次粉体及び式(1)で示される化合体からなる複合粉体中1重量%以上35重量%以下が好ましく、更に好ましくは、3重量%以上30重量%以下である。1重量%以下では、紫外線防御作用が劣り、35重量%以上では、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤自体のぎしついた使用感となり好ましくない。
【0018】
本発明の複合粉体の製造方法において、式(1)の化合物とAl,Mg,Ca,Zn,Zr,Tiより選ばれる金属塩は、好適には式(1)の化合物の重量に対し、該金属塩が1/4量以上、2倍量以下、より好ましくは1/2量以上、同量以下用いられる。1/4量以下であるとベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤自体がうまく吸着できず、2倍量以上であると金属塩のざらついた使用感となり好ましくない。
【0019】
本発明の紫外線吸収能を有する複合粉体は、一次粉体の表面上に式(1)の化合物を配合吸着させる。この一次粉体の表面処理方法に関しては、特に制限されず、公知の一般的な方法を用いることができる。一例を挙げれば、まず表面処理の母粉体となる一次粉体を水に分散させる。次に一次粉体と式(1)の化合物の合計量を99〜65重量%とした場合に、1〜35重量%の式(1)で示される不溶性ベンゾトリアゾール化合物を加え、激しく撹拌する。この時点で不溶性ベンゾトリアゾール化合物の一部は、粉体表面に配向吸着する。次いで、Al、Mg、Ca、Zn、Zr、Tiからなる群から選ばれる金属の水可溶性塩の水溶液を、式(1)の化合物の1/4〜2倍量の割合で加える。かかる金属塩の水溶液を加えることで、式(1)の化合物は完全に一次粒子表面に配向吸着する。次いで遠心脱水機などを用い脱水洗浄した後、80〜120℃で乾燥し、目的の紫外線吸収能を有した複合粉体を得ることができる。
【0020】
このようにして得られた本発明の複合粉体は、粉体表面に均一に式(1)の不溶性ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤が一次粉体に近い状態で存在し、かつ、紫外線吸収剤同士の再凝集がなされない状態となっているため、優れた紫外線吸収能、使用性、透明性を示し、化粧料への配合成分として好適に使用することができる。
【0021】
得られた本発明の複合粉体は、そのまま用いても、さらに粒子表面に疎水化処理を施した疎水化処理粉末として用いてもよい。疎水化処理粉末を製造するための疎水化剤としては、シリコーン処理剤、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル等が挙げられる。シリコーン処理剤としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの各種のシリコーンオイルや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどの各種のアルキルシランや、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどの各種のフルオロアルキルシランなどが挙げられる。また、脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12―ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。また、脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12―ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。また、脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの疎水化剤のうち、1種または2種以上を用いて、常法に従い、本複合粉末の疎水化処理を行うことができる。
【0022】
本発明は更に、本発明の複合粉体を配合してなる化粧料を提供する。本発明の化粧料は複合粉体以外に、必要に応じて通常化粧料に配合される成分を適宜配合することが出来る。本発明の複合粉体と共に配合される成分としては例えば、ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコールなどの固形・半固形油分,スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコーン油、オリーブ油、アボガド油、ミンク油、などの流動油分,パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン、などのフッ素系油剤,水溶性および油溶性ポリマー,界面活性剤、無機及び有機顔料、シリコーン、金属石けん、レシチン、アミノ酸、コラーゲン、ポリマー、フッ素化合物などで表面処理された無機および有機顔料、タール色素、天然色素など色剤、エタノール、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、PH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、水などが例示される。これらは本発明の効果を損なわない質的量的範囲内で配合可能である。
【0023】
本発明の化粧料は、特に好適には、紫外線吸収剤としてメトキシケイヒ酸オクチルを配合する。本発明の複合粉体とメトキシケイヒ酸オクチルとを併用することにより、紫外線防止効果の相乗効果が期待できる。
【0024】
本発明で使用されるメトキシケイヒ酸オクチルは、淡黄色の透明な液体でわずかに特異臭があり化粧品に使用される汎用的な紫外線B波の吸収剤である。具体例としては、商標パルソールMCX(DSMニュートリション社製)、商標ユビナールMC−80(BASF社製)、商標ノムコートTAB(日清オイリオ社製)商標エスカロール557(ISP社製)の名称で市販されているものを使用することが出来る。
【0025】
本発明の化粧料は、剤形や製品形態には特に限定されず、パウダーファンデーション、クリーム状ファンデーション、油性ファンデーション、両用ファンデーション、スティックファンデーション、おしろい、アイシャドー、頬紅、口紅などのメイクアップ化粧料、化粧水、乳液、クリームなどの基礎化粧品、ボディーパウダー、ベビーパウダーなどのボディ化粧料などに適応することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、これらはあくまで例示であり、本発明の技術的範囲がこれらにより、限定的に解釈されるものではない。すなわち、本発明が適用される化粧料の種類、その構成成分については、以下の実施例に記載されたものに限定されるものではなく、また、通常化粧料に配合・使用される成分は、すべてなんらの制限なく含有することができる。
【0027】
実施例1
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]90gを加えた。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャルティケミカルズ社]10%水溶液を100g加え十分撹拌した。次に5%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
【0028】
次いで、遠心脱水機にて脱水し、エタノールにてチノソーブMに含まれる不溶性紫外線吸収剤以外の水溶性成分を洗浄した。この作業を2回繰り返し、120℃にて10時間乾燥し、目的のMBBTを約5重量%吸着した複合粉体100gを得た。
【0029】
実施例2
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]89.5gを加えた。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャルティケミカルズ社]14%水溶液を100g加え十分撹拌した。次に3.5%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
以下実施例1と同様の方法で、目的のMBBTを約7重量%吸着した複合粉体 100gを得た。
【0030】
実施例3
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]85gを加えた。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャルティケミカルズ社]20%水溶液を100g加え十分撹拌した。次に5%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
以下実施例1と同様の方法で、目的のMBBTを約10重量%吸着した複合粉体 100gを得た。
【0031】
実施例4
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]70gを加えた。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャルティケミカルズ社]40%水溶液を100g加え十分撹拌した。次に10%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
以下実施例1と同様の方法で、目的のMBBTを約20重量%吸着した複合粉体100gを得た。
【0032】
比較例1
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]94gを加えた。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャルティケミカルズ社]10%水溶液を100g加え十分撹拌した。次に1%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
【0033】
次いで、遠心脱水機にて脱水したが、脱水中MBBT水分散液と思われる白色液体が脱水された。さらに、エタノールにて洗浄を行ったが同様にろ液は、白色液体であった。得られた粉体96gであった。
【0034】
比較例2
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]98gを加えた。これに、2%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
次いで、遠心脱水機にて脱水し、120℃にて10時間乾燥し、複合粉体 100gを得た。
【0035】
比較例3
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、真球状シリカ(平均粒径3μm)[サンスフェア(登録商標):洞海化学工業社製]40gを加えた。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャルティケミカルズ社]80%水溶液を200g加え十分撹拌する。次に20%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
以下実施例1と同様の方法で、複合粉体 100gを得た。
【0036】
試験例1 紫外線防御効果No.1
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた複合粉体を複合粉体:トリオクタノインが重量比で3:7になるよう秤量し、ディスパーミキサーで3000rpm、10分間撹拌混合した。次いで、各分散液の吸光度を分光光度計(U−3010;日立製作所)を用いて280〜400nmの波長を測定した。
図1は、試験例1における測定結果を示している。
【0037】
試験例2 紫外線防御効果No.2(in-vitro SPF測定)
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた複合粉体を複合粉体25重量%、ワセリン75重量%の割合で秤量し、乳鉢を用いて均一に混合する。次いで、トランスポアテープ(住友3M社製)に2mg/cmになるよう均一に塗布し、SPF Analyzer UV-1000S(Labsphere社製)にてin-vitro SPF値の測定を行った。
【0038】
試験例3 使用性評価
パネラー5名によって、粉体の平滑感、きしみ、ざらつきなどの粉体の感触を以下に示す1〜5の<5段階評価>を行い、その平均点をさらに下記の<4段階評価>にて行った。
【0039】
<5段階絶対評価>
1.平滑感などの感触が悪い
2.平滑感などの感触がやや悪い
3.普通(未処理粉体と同等)
4.平滑感などの感触がややよい
5.平滑感などの感触がよい
【0040】
<4段階評価>
(評点)
◎ : 4点以上、
○ : 3点以上4点未満、
△ : 2点以上3点未満、
× : 2点未満
【0041】
試験例2〜4測定結果
【表1】

【0042】
試験例1の結果である図1より、実施例1〜4、比較例3は、MBBTの配合量により紫外線の吸光度が高くなっていることが確認できた。また、比較例1は、実施例1と同量のMBBT混合量であるにもかかわらず、吸光度が低くなっていることより、硫酸アルミニウムが、不溶性ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤を粉体に複合化するために必要であることが明らかとなった。試験例2に関しても同様の結果が得られた。
【0043】
試験例3よりMBBTを40%複合化した比較例3は、高い紫外線防御能を有するが、使用性が悪く、ギシツいた使用性となり好ましくない。
【0044】
実施例5
1L容ビーカーに精製水500gを加え、ディスパーミキサーにて撹拌しながら、マイカ(平均粒径17μm)70gを加える。これに、MBBT水分散体(有効成分50重量%)[チノソーブ(TINOSORB)(登録商標)M:チバ・スペシャリティケミカルズ社]40%水溶液を100g加え十分撹拌した。次に10%硫酸アルミニウム水溶液を100g加え、さらに撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液にて、PHを中性にしたのを確認後さらに撹拌を続けた。
以下実施例1と同様の方法で、目的のMBBTを約20重量%吸着した複合粉体100gを得た。
【0045】
実施例6、7比較例4〜6 2ウェイケーキファンデーション
実施例3で調製した複合粉体を用い、下記表2に示す組成の2ウェイケーキファンデーションを作製し、試験例2のin-vitro SPF測定、および試験例3の使用感触について評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
(製法)粉体成分(1)〜(11)をヘンシェルミキサー等で混合粉砕した。これに、別の容器にて混合した油剤(12)〜(16)を加え均一になるよう撹拌混合し、その後アトマイザーにて粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型して製品を得た。
【0047】

【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
上記表3から明らかなように、本発明の実施例6、7は、使用性が優れまた、高い紫外線防御能を示した。一方、無機紫外線吸収剤を用いた比較例5〜7は、紫外線防御能は優れているものの、使用性が悪く、塗布色に関しても青味が生じた。以上の結果、実施例6、7は紫外線防御能、使用感触に優れた2ウェイファンデーションであった。
【0050】
実施例8 プレストパウダー
【表4】

*マツモトマイクロスフェア(商標)M-100(松本油脂製薬社製)
**サンラブリー(登録商標)C(洞海化学工業社製)
【0051】
(製法)
粉体部(1)〜(7)を混合粉砕して、これをヘンシェルミキサーに移し、油相部(8)〜(11)を加えて均一になるよう撹拌混合し、その後アトマイザーにて粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型して製品を得た。
得られたプレストパウダーは、in-vitro SPF値:17、使用感触に優れたプレストパウダーであった。
【0052】
実施例9 油性ケーキファンデーション
【表5】

【0053】
(製法)
粉体部(1)〜(7)をヘンシェルミキサーにて混合し、均一に粉砕する。次ぎに油相部(8)〜(17)を加熱溶解し、粉体部を加え均一に撹拌した。脱泡後トレイにバルクを流し込み、室温まで徐冷し、目的の油性ケーキファンデーションを得た。
得られた油性ケーキファンデーションは、in-vitro SPF;20、使用感触に優れた油性ケーキファンデーションであった。
【0054】
実施例10 スティックファンデーション
【表6】

【0055】
(製法)
粉体部(12)〜(17)を予めヘンシェルミキサーにて混合する。全量が仕込める容器に油相部(1)〜(11)を秤量し、加熱溶解する。別の容器に水相部(18)〜(22)秤量し加熱溶解する。油相部に粉体部を加え均一に分散させ、水相部を加え乳化後、脱泡後モールドにバルクを流し込み、室温まで徐冷し、目的のスティックファンデーションを得た。
得られたスティックファンデーションは、in-vitro SPF;17、使用感触に優れたスティックファンデーションであった。
【0056】
実施例11 W/O乳化型ファンデーション
【表7】

*レオパール(商標)ISK(千葉製粉社製)
【0057】
(製法)
油相部(1)〜(11)に予めヘンシェルミキサーにて撹拌混合した粉体部(12)〜(15)を加え、撹拌機にて均一に分散した。別の容器に水相部(16)〜(20)を加熱溶解する。粉体部を分散させた油相部に水相部を加え乳化後、室温まで冷却し、目的のW/O乳化型ファンデーションを得た。得られたW/O乳化型ファンデーションは、in-vitro SPF;18、使用感触に優れたW/O乳化型ファンデーションであった。
【0058】
実施例12 ほほ紅
【表8】

【0059】
(製 法)
粉体部(1)〜(5)をヘンシェルミキサーで混合し、これに加熱溶解した油相部(6)〜(9)を混合した、アトマイザーにて粉砕し、中皿に成型しほほ紅を得た。
得られた頬紅は、in-vitro SPF;25、使用感触に優れたほほ紅であった。
【0060】
実施例13 サンスクリーンクリーム
【表9】

*: レオパール(商標)KL(千葉製粉社製)
**:コスメサーブ(商標)WP-58MP(V)(大日本化成社製)
【0061】
(製 法)
加熱溶解した油相部(1)〜(8)に(9)、(10)を加え、撹拌機にて均一に分散した。別の容器に加熱溶解した水相部(11)〜(14)を(1)〜(8)および(9)、(10)に加え乳化後、室温まで冷却し、目的のサンスクリーンクリームを得た。得られたサンスクリーンクリームは、in-vitro SPF;50、使用感触、透明性に優れたものであった。
【0062】
実施例14 口紅
【表10】

【0063】
(製法)
(1)〜(13)を均一に溶解し、(14)〜(16)を加え、均一に分散させた。脱泡後、モールドに流し込み、冷却後、適当な容器に装着し、目的の口紅を得た。
得られた口紅は、in-vitro SPF;10の使用感触に優れた口紅であった。
【0064】
実施例15 毛穴隠し化粧下地
【表11】

*:レオパール(商標)KL(千葉製粉社製)
**:サンスフェア(登録商標)L-51(洞海化学工業社製)
【0065】
(製法)
(1)〜(7)を均一に溶解し、(8)〜(9)を加え、均一に分散させる。脱法後、適当な容器に流し込み、室温まで徐冷し、目的の毛穴隠し化粧下地を得た。
得られた毛穴隠し化粧下地は、in-vitro SPF;20、使用感触に優れたものであった。
【0066】
実施例16 ルースパウダー
【表12】

*マツモトマイクロスフェア(商標)S-100(松本油脂製薬社製)
【0067】
(製法)
粉体部(1)〜(7)を混合粉砕して、これをヘンシェルミキサーに移し、油相部(8)〜(11)を加えて均一になるよう撹拌混合し、その後アトマイザーにて粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型して製品を得た。
得られたフェイスパウダーは、in-vitro SPF値:15、使用感触に優れたプレストパウダーであった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】試験例1における測定結果を示す図面である。
【図2】実施例1複合粉体の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例5複合粉体の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.5〜100μmである有機粉体および無機粉体から選ばれる1種以上の一次粉体の表面を、式(1)の化合物で被覆してなる、紫外線吸収能を有する複合粉体。
【化1】

【請求項2】
式(1)の化合物が、平均粒子径が200nm以下の微粉末である請求項1記載の複合粉体。
【請求項3】
水性媒体中、Al、Mg、Ca、Zn、ZrおよびTiからなる群より選ばれる金属の水溶性塩の存在下で一次粉体、式(1)の化合物を混合し、一次粉体表面上に式(I)記載の化合物を配向吸着させることを特徴とする請求項1記載の複合粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の複合粉体を含有する化粧料。
【請求項5】
さらにメトキシケイヒ酸オクチルを含有する、請求項4記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−126419(P2007−126419A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322355(P2005−322355)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(591119750)岩瀬コスファ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】