説明

紫外線放電ランプ

【課題】蛍光体量を規定することでランプの軸方向の照度差の減少を図る。
【解決手段】母材質の100%中に10%以上の酸化ナトリウムが含有されたソーダライムガラス製の透明ガラス発光管11は、紫外線放電ランプが必要とする320〜340nmの波長で80%以上の透過率を得る。発光管11は、例えば管径Dが38mm、管長Lが2367mmであり、発光管11内には対向した一対の電極121,122を配置するとともに、アルゴンガス等の希ガスと一定量の水銀が封入されている。そして、発光管11の内壁に、水銀スペクトルである253.7nmを変換し、300〜340nmの間に変換効率のピークを持つ蛍光体量をN(mg)とし、塗布する内表面積をS(cm)としたときに、N/Sが、2<(N/S)<7での条件で塗布した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線の放射を行い高分子素材の重合や硬化を行う、例えば液晶パネル製造工程で用いられる紫外線放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紫外線蛍光ランプは、ソーダライムガラスからなる発光管の内部に水銀および希ガスを含む放電媒体を封入し、発光管内部に低圧水銀蒸気放電を生起させるように一対の電極を配置している。さらに、発光管の内面には波長が320〜400nmの近紫外線を発光するCe(MeBa)Al1119、YPO:Ce、LaPO:Ce等の蛍光体を少なくもと一つまたは組合せることで、紫外線硬化形樹脂の内部に浸透性の高いUV−A領域の光と紫外線硬化形樹脂の表面を硬化させる力の強いUV−Cの光を1本のランプで同時に得ることができる。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−358926公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、経時変化とともに水銀が発光管に打ち込まれることによるバルブ透過率を低下させ長手方向の照度分布の差が発生したり、点灯中の蛍光体の水銀吸着によって変換効率が低下して、所定の紫外線強度を維持することができない、という問題点があった。
【0005】
この発明の目的は、ランプの軸方向の照度差を減少させるとともにランプ照度の維持率の改善を図るようにした紫外線放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線放電ランプでは、ソーダライムガラスで形成された発光管と、前記発光管本体内に封入された始動用不活性ガスおよび水銀と、前記発光管内に対向して設けられた一対の放電電極と、を備え、前記発光管内壁に、水銀スペクトルである253.7nmを変換し、300〜340nmの間に変換効率のピークを持つ蛍光体の量をN(mg)とし、塗布する内表面積をS(cm)としたときに、N/Sが、2<(N/S)<7の条件で塗布したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、蛍光体量を規定したことでランプの軸方向の照度差の減少させるとともに、ランプ照度の維持率の改善を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の紫外線放電ランプに関する第1の実施形態について説明するための一部を切り欠いて示した構成図である。
【図2】一般のソーダガラスにおける紫外線透過率について説明するための説明図である。
【図3】この発明に用いられる蛍光体が発する波長について説明するための説明図である。
【図4】この発明に用いる蛍光体の発光分布について説明するための説明図である。
【図5】蛍光体量と紫外線照度の関係について説明するための説明図である。
【図6】この発明の紫外線放電ランプに関する第2実施形態について説明するための要部のみを切り欠き拡大して示した断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態の効果について説明するための説明図である。
【図8】この発明の第3の実施形態を説明のための、ランタンが添加されない従来のランプ長手方向の時間経過に対する照度分布について説明するための説明図である。
【図9】この発明の第3の実施形態を説明するためのランタンが添加されたこの発明のランプ長手方向の時間経過に対する照度分布について説明するための説明図である。
【図10】ランタンの添加量と照度の信頼性の関係について説明するための説明図である。
【図11】この発明の紫外線放電ランプに関する第4の実施形態について説明するための要部のみを切り欠き拡大して示した断面図である。
【図12】この発明の第4の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の紫外線放電ランプに関する第1の実施形態について説明するためのもので、図1では紫外線放電ランプの一例として熱陰極低圧水銀ランプの構成図の一部を切り欠いて示している。
【0011】
図1において、11は、340nm波長で80%以上の透過率が得られるNaO(酸化ナトリウム)が10%以上含まれる廉価なソーダライムガラス製の透明な発光管である。ソーダライムガラスを用いた場合の発光管の透過率は、図2に示すように、340nmの波長で80%以上の透過率を得ることができる。
【0012】
発光管11は、例えば管径Dが38mm、管長Lが2367mmであり、両端には、電極121,122を有している。電極121は、導電性のリード線131でコイル状のタングステンフィラメント14の両端が支持される。リード線131は、ガラスプレス封止部15を貫通させている。電極122も電極121と同様の構成となっている。電極121側のリード線131と電極122側のリード線は、ランプの対向する両端部に固着されたそれぞれの口金161,162にあるピン状接点171,172に接続される。
【0013】
さらに、発光管11には1〜10Torr程度の低圧力でアルゴン(Ar)ガス等の希ガスと一定量の水銀が封入されている。
【0014】
図3は、発光管11の内側の表面に塗布する種々ある蛍光体のうち、例えば日亜化学工業(株)製のNP−806、NP−805、NP−807の波長に対する輝度を表している。ここでは、300〜340nmの波長の間に、変換効率のピークを有する蛍光体18としては、NP−806が適している。このNP−806は、LaPO(リン酸ランタン):Ce(セリウム)を組成としたものである。
【0015】
このように構成された熱陰極低圧水銀ランプの電極121,122から電力が供給されると、図4に示す300〜340nmの波長の間にピークを有する分光分布の特性を確保することが可能となる。
【0016】
なお、添加量としては、0%を含まない2%以下が望ましく、2%を超えると逆に変換効率や透過率が低下し、紫外線出力の低下を引き起こすことになる。
【0017】
図5は、蛍光体18にNP−806を用い、蛍光体量(mg/cm)あたりの相対紫外線照度(%)について示したものである。すなわち、蛍光体18の蛍光体量は、単位内表面積3.9mg/cmで発光管11の内表面全域に塗布した場合に紫外線照度が最も高くなる。
【0018】
この結果、蛍光体18の変換効率と紫外線の透過率とを最適な条件を見出して規定することにより、さらに軸方向の分布も改善できた。
【0019】
ここでは、発光管11の内壁に、水銀スペクトルである253.7nmを変換し、300〜340nmの間に変換効率のピークを持つ蛍光体量をN(mg)とし、塗布する内表面積をS(cm)としたときに、規定値を2<(N/S)<7での条件で蛍光体18を塗布した。
【0020】
N/Sの値が2より少ない場合は、透過率は上がるが、蛍光体量が少ないため発光効率が落ちるとともに、発光管への水銀の吸着が増し、紫外線維持率が下がる。逆に、N/Sの値が7より多くなると、変換された紫外線が蛍光体により吸収され、ランプ外面から放出される紫外線量が減る。NP−806を蛍光体18として用いた場合における塗布量の最適値は、3.9mg/cm程度である。
【0021】
蛍光体18の塗布量は薄くするほど左右差はなくなるものの、変換効率の低下や蛍光体それにバルブ劣化が生じる。この実施形態のように、2<(N/S)<7の関係を満足させた蛍光体量で塗布することにより、蛍光体18の劣化を抑制しながら軸方向の照度差を減少させることができる。
【0022】
図6、図7は、この発明の紫外線放電ランプに関する第2の実施形態について説明するための、図6は要部のみを切り欠き拡大して示した断面図、図7は図6の効果について説明するための説明図である。
【0023】
この実施形態は、図6に示すように発光管11と蛍光体18との間にアルミナ(Al)を、例えば塗布による手段で構成した保護膜61を介在させ、断面上発光管11、蛍光体18、保護膜61が積層された状態となっている。
【0024】
保護膜61は、水銀の発光管11が打ち込まれることを抑制させることができ、発光管11の透過率低下を抑制させることができる。このため、経年変化に伴う照度の維持率低下を抑えることができる。
【0025】
この実施形態では、2<(N/S)<7の関係を満足させた蛍光体量で塗布することにより、蛍光体18の劣化を抑制しながら軸方向の照度差を減少させるとともに、照度維持率の改善が可能となる。
【0026】
さらに、保護膜61の作用により、発光管11に水銀が打ち込まれることを抑制でき、照度維持率の改善を図ることができる。この点は図7に示すように、保護膜61ありの方が1200時間経過後においても、90%の照度を維持することができることを確認している。
【0027】
この実施形態では、軸方向の照度差を減少させるとともに、保護膜を設けたことにより、照度維持率の改善を図ることが可能となる。
【0028】
図8、図9は、この発明の第3の実施形態について説明するための、図8は従来の単位面積あたりの照度分布について説明するための説明図、図9はこの実施形態における単位面積あたりの照度分布について説明するための説明図である。
【0029】
この実施形態は、図1で説明した紫外線放電ランプの蛍光体18に、ランタン(La)を蛍光体重量比の0.5%を添加させた蛍光体181を用いたものである。ランタンが添加された蛍光体181は、ランタンが水銀の吸着を抑制させ、蛍光体181の劣化を抑制させる作用が働く。
【0030】
なお、ランタンの添加量としては、0%を含まない2%以下が望ましく、2%を超えると逆に変換効率や透過率が低下し、紫外線出力の低下を引き起こすことになる。
【0031】
すなわち、ランタンが添加されない従来の蛍光体のランプ軸方向における単位面積あたりの照度は、図8に示すような分布となる。また、ランタンが添加されたこの発明の蛍光体のランプ軸方向における単位面積あたりの照度は、図9に示すような分布となる。
【0032】
ランタンが添加されない場合は、図8に示すように、点灯時間が48時間から100時間にかけて照度の低下が見られる。また、ランタンが添加された場合は、図9に示すように、点灯時間が100時間を経過しても点灯時間が24時間と同等の照度が得られている。
【0033】
ここで、図10を参照し、ランタンの添加量と照度の信頼性の関係について説明する。
【0034】
すなわち、ランタンが添加されない初期の照度を100%とした場合は、発光スペクトルが見られるとともに、2000時間経過後の照度維持率は85.7%であった。ランタンが0.5%添加されたときの初期の照度は99%で、発光スペクトルはランタンが添加されない場合と変わらず、2000時間経過後の照度維持率は91.8%であった。同様に、ランタンが2.0%添加されたときの2000時間経過後の照度維持率は90.8%であった。
【0035】
また、ランタンが3.0%添加されたときの初期の照度は78%で、発光スペクトルはランタンが添加された場合と変わらないものの、2000時間経過後の照度維持率は88.2%であった。
【0036】
このようなことから、2000時間経過後においても照度の維持率が90%以上を呈するランタンの量は、多すぎても照度維持が難しく、0%を含まない2.0%以下で実現できることがわかった。
【0037】
この実施形態では、蛍光体にランタンを、蛍光体重量比の0%を含まない2%以下の範囲で添加させることにより、長時間に渡って十分な照度を得ることが実現可能となる。
【0038】
図11、図12は、この発明の紫外線放電ランプに関する第4の実施形態について説明するための、図11は要部のみを切り欠き拡大して示した断面図、図12は図11の効果について説明するための説明図である。
【0039】
この実施形態は、蛍光体にランタンが添加された上記の第3の実施形態に加えて、図11に示すように発光管11と蛍光体181との間に、アルミナ(Al)を例えば塗布による手段で形成した保護膜61を介在させ、断面上に発光管11、蛍光体181、保護膜61を積層させるように構成したものである。
【0040】
保護膜61は、水銀の発光管11が打ち込まれることを抑制させ、発光管11の透過率低下を抑制させることができる。このため、経年変化に伴う照度の維持率低下を抑えることができる。
【0041】
図12は、ランプの長手方向における経時変化に伴う照度の変化について示すもので、100時間経過後においても24時間経過と同等の単位面積あたりの照度に変化はなく、保護膜61による照度の維持率の改善を表している。
【0042】
この実施形態では、ランタンの添加により蛍光体の劣化を抑制しながら軸方向の照度差を減少させることができる。さらに、保護膜の作用により、発光管に水銀が打ち込まれることを抑制でき、照度維持率の改善を図ることができる。
【0043】
なお、この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば一般の紫外発光型熱陰極ランプを用いた製作が可能であることから、同ランプの発光長を次世代液晶基板などの大型サイズのパネル照射に必要な2500mm超えるランプへの適用も可能である。
【0044】
また、発光管は、ソーダライムガラスを例に挙げたが、340nm付近の波長で80%の透過率が得られればよく、硬質ガラスまたは半硬質ガラスを使用しても構わない。ソーダライムガラスと硬質ガラスの場合、硬質ガラスの方が短波長の透過率がよいことから、高い照度を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
11 発光管
121,122 電極121,122
131 リード線
14 タングステンフィラメント
15 封止部
161,162 口金
171,172 ピン状接点
18,181 蛍光体
61 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
340nm付近の波長で80%の透過率が得られるガラス製の発光管と、
前記発光管本体内に封入された始動用不活性ガスおよび水銀と、
前記発光管内に対向して設けられた一対の放電電極と、を備え、
前記発光管内壁に、水銀スペクトルである253.7nmを変換し、300〜340nmの間に変換効率のピークを持つ蛍光体の量をN(mg)とし、塗布する内表面積をS(cm)としたときに、N/Sが、2<(N/S)<7の条件で塗布したことを特徴とする紫外線放電ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体には、該蛍光体重量に対して2%以下で0%より多い重量比でランタン(La)粉末を添加したことを特徴する請求項1記載の紫外線放電ランプ。
【請求項3】
前記発光管は、母材質の100%中に10%以上の酸化ナトリウムが含有されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線放電ランプ。
【請求項4】
前記蛍光体と前記発光管の間に、アルミナ(Al)から構成される保護膜を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−44421(P2011−44421A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114013(P2010−114013)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】