説明

紫外線架橋性保護層を含有する熱転写リボン

【課題】熱転写リボンの保護層、例えばバックの組成物であって、溶媒フリーな、そして、リボンの幅及び長さの両方向に沿って完璧に均一なバックを、バッキングフィルムを加熱することもなく作製することのできる組成物を提案すること。
【解決手段】以下の成分:a)紫外線架橋性のポリエーテルアクリレートと紫外線架橋性のウレタンポリアクリレートとの混合物であって、3以下の官能基、好ましくは3官能基を含む混合物;、b)少なくとも一つのジアクリレート又はトリアクリレートモノマーの形をした前記混合物a)の希釈剤であって、紫外線架橋性であり、好ましくは、該モノマーが25℃で200mPa.s以下の粘度を有している希釈剤;、c)組成物中で10重量%以下の濃度の液状スリップ剤;を含んでいることを特徴とする、溶媒フリーな熱転写リボン保護層の組成物であって、コートされ、光開始剤d)の存在下で紫外線照射により架橋するか、或いは電子線架橋した後、1μm未満の厚さを有する保護層を形成することができる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写印刷の分野に関するものであり、特に、熱転写リボンの分野に関するものである。より具体的には、本発明は、熱転写リボンの保護層の組成物、該保護層をコートする方法及びこのようにして得られた保護層に関するものであり、さらに、該保護層を含有する熱転写リボンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱転写リボンは、一般的に、バッキングフィルムを有し、該バッキングフィルムの一方の表面は少なくとも1層の熱溶融性インク層でコートされ、反対側の表面は、通常、バックと呼ばれる保護層で覆われている。
【0003】
通常、熱転写印刷は、該リボンがプリントヘッドの下を通過する際、印刷機のプリントヘッドの発熱ポイント(「抵抗」又は「ドット」と呼ばれる)によって供給される熱を用いて、受容基材(紙、ボール紙、合成フィルム等)の上に前記熱溶融性インクを、例えば様々な文字(日付、コード、数字、ロゴ等)の形で付着させることから成る。該熱転写リボンのインクは、熱の影響下で(溶融又は昇華によって)変化し、単純な圧力(simple pressure)によって前記受容基材の上に文字の形で転写される。
【0004】
最適な印字品質(writing quality)を、特に該印刷機によって課される速さと温度の制約に従って、得るためには、前記リボンのバックは、プリントヘッドによって供給される高いエネルギー(温度)を放散することができ、そして、該ヘッドと該リボンの間の摩擦現象及び摩耗現象に耐えることができる必要がある。
【0005】
現在のところ、熱転写印刷用リボンは、一般的に、主に3つの部分から成る。即ち;
−通常、ポリマー、例としてポリアミド又はポリエステル系のポリマー、例えばポリ
エチレンテレフタレート(PET)であって特に二軸延伸のもの等、から作られる
、薄いバッキングフィルム;
−このフィルムの一方の表面は、インク系統、即ち、印刷時に受容基材へ転写される
ことを目的とする少なくとも1層の熱溶融性インク層でコートされ、任意で接着層
及び/又はインク保護層と結合している;
−該フィルムのもう一方の表面は、バックと呼ばれる少なくとも1層の層でコートさ
れていて、該フィルムを保護することを意図しており、同時に、プリントヘッド下
の滑りを良くしている。
【0006】
このインクリボンは大変長く、それ自身、マンドレル上に巻き取られている。該リボンは、全長及び全幅にわたって均一でなければならない。
【0007】
保護層「バック」の存在は、前記バッキングフィルムが薄い場合には不可欠である。なぜならば、該リボンは二次元における様々な機械的ストレス(伸び、引張り)に耐えなくてはならないからである。
【0008】
更に、このバックは、プリントヘッドによって供給されるエネルギーを該フィルムの反対側の面にあるインク系統へ送るために、厚さ方向を通して、熱伝導を可能にしなければならない。
【0009】
その他の保護層を、以下のようにして、特にインク系統を支える(bearing)面上で、前記熱転写リボンと一体化することもできる。
−保護層を前記バッキングフィルムの上に直接置き、次に、熱溶融性インク層で覆う
ことができる。この層は、受容基材上にひとたび印刷されたインクの保護を可能に
する;
−保護層をリボンのインク層の外部表面上に置くこともできる。この層が、保管の間
、周囲の環境からリボンを保護できるようにする(なぜなら、特に湿度及び高温が
インク層の劣化を引き起こす可能性があるからである)。
【0010】
本発明は、より具体的には、これらの熱転写リボンの保護層に焦点をあわせており、特に、該保護層の組成物に焦点を合わせている。
【0011】
今まで、これらの保護層の配合組成、特に前記バックの配合組成は、水性溶媒及び/又は有機溶媒の存在と関わるものであった。実際、十分流動的で、ポリエステル製バッキングフィルムの対応する表面上にコートされうるような組成物を有する必要がある。「溶媒」という言葉は、本明細書を通して、前記組成物の成分を希釈又は可溶化するために用いられ、その次に蒸発によって該組成物から除去される、いずれかの物質を意味するように意図されるだろう。乾燥作業の間の蒸発によって、コート後に除去されなければならないこの溶媒が存在すると、以下に記載されたいくつかの欠点がある。
【0012】
まず、衛生規制に関する制限及び安全規制に関する制限を厳守する必要がある。
【0013】
保護層を製造するための出発原料の量及び、より一般的には、リボン全体を製造するための出発原料の量を減らす傾向にある、持続可能な開発というポリシーを背景としたエコデザイン・アプローチの提唱と、溶媒及び任意のその他の揮発性材料の存在は、また、相いれない。
【0014】
更に、前記溶媒の蒸発は、リボンの表面全体に渡って常に均等というわけではなく、このことが、バックの組成物の均一性の違いという結果となる。前記熱転写リボンは、長さが大変長い可能性があり、しばしば数十キロメートルにも及ぶということを思い出すべきである。
【0015】
最後に、実際に行われているこの溶媒の蒸発は、出発組成物の原料ロスという結果となることから、この溶媒の蒸発は経済的影響を有している。配合組成中の溶媒画分の減少が、そのコストの減少と、出発原料の相対的なロスの除去とを可能にする。
【0016】
これらの問題を解決するために、溶媒フリーなバックが既に開発されてきており、このようなバックは、熱架橋性の成分を含む組成物である。一般的には、こうした架橋は100〜120℃を超える温度で行われ、該温度においては、バッキングフィルムの収縮が引き起こされる。PETフィルムの二軸配向性に起因して、該フィルムが幅方向に収縮し、リボンがその長さに沿って延びてしまうという点は、特に留意すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の主な目的は、熱転写リボンのバックの配合組成における溶媒の存在に関連した上述の欠点を克服することである。
【0018】
本発明の第一の目的は、前述したリボンの保護層、例えばバックの組成物であって、溶媒フリーで、且つ、バッキングフィルムを加熱することもなく、リボンの幅及び長さの両方向に沿って完璧に均一なバックを作製することのできる組成物を提案することである。
【0019】
ただし、こうして作製された熱転写リボンの品質全般に悪影響を及ぼさないために、特に、もう一方の面に付着された該インクの転写可能性、該リボンの可撓性及び該リボンを巻き取って形成されるロール全体の厚さに悪影響を及ぼさないために、薄いバック、0.10から0.40μmの従来の厚さを超えないバックを作製することが不可欠である。
【0020】
加えて、印字品質を高く保ちながら、同時に、該熱転写リボンのバックの特性、特に、バッキングフィルムとの接着性、熱機械的特性、耐摩耗性及び低摩擦係数を維持する特性を、維持或いは向上させることも勿論必要である。
【0021】
熱転写リボンのバックの滑りを良くするために、多くの特許が、高濃度のシリコーン基材ポリマー又はシロキサン基材ポリマーを含有するバックの組成物を用いることを推奨している。該ポリマーが高濃度だと、バックの接着性欠如や高粘度といったいくつかの欠点が存在し、且つ、コストも高くなる。それ故、本発明によるバックの組成物は、これらのポリマーを高濃度で含んではいけないのである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この趣旨で、本発明による溶媒フリーな熱転写リボンの保護層の組成物は、以下の成分を含んでいることを特徴とする:
a)紫外線架橋性のポリエーテルアクリレート及び紫外線架橋性のウレタンポリアク
リレートの混合物であって、3以下の官能基、好ましくは3官能基を含む、
b)少なくとも一つのジアクリレート又はトリアクリレートモノマーの形をした前記
混合物a)の希釈剤であって、紫外線架橋性であり、好ましくは、該モノマーが
25℃で200mPa.s以下の粘度を有している希釈剤、
c)前記組成物中で10重量%以下の濃度をした液状スリップ剤。
該組成物は、コートされ、光開始剤d)の存在下で紫外線照射により架橋するか、或いは電子線架橋した後に、1μm未満の厚さを有する保護層を形成することができる。
【0023】
驚いたことには、ジアクリレート又はトリアクリレートモノマーの成分b)の存在下で、成分a)が3以下の官能基、好ましくは3官能基を含むとき、EP 0 314 348が教示する内容に反して、本発明による組成物は、好都合な熱機械的特性を前記保護層に与えているということが明らかになっている。
【0024】
(例えば成分a)(the latter)が1500又は2000mPa.sより大きな粘度を有していれば、)成分a)の希釈剤としての役割を果たすために、更には、モノマーの性質によっては、熱転写リボンのバッキングフィルム上の保護層の接着性をより良くするために、前記紫外線架橋性の成分b)は、好ましくは200mPa.s以下の、好都合には100mPa.s以下の粘度を有している。
【0025】
好都合には、前記スリップ剤もまた紫外線架橋性である。
【0026】
こうした熱転写リボンの保護層の組成物は、また、熱転写の分野では従来から用いられている、展着剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、静電気防止剤、染料及び/又はトレーサーを含むこともできる。
【0027】
しかしながら、完璧に好都合な一実施形態によれば、前記組成物は、成分a)、b)及びc)のみを含むか、又は、成分a)、b)、c)及びd)のみを含み、即ち、その他の添加剤を含まないのである。
【0028】
先行技術の熱転写リボンのバック組成物と比較すると、本発明による組成物は、バックの成分全てについて、(瞬間的にと言っても良いくらいに)大変早くて且つ完璧な架橋を可能にするケースであることが明らかとなった。具体的にいうと、照射領域を出るとすぐに、架橋は完璧であり、照射後の前記材料の特性は安定する。このような架橋は高温を必要とせず、従って、バッキングフィルムは損傷されない。
【0029】
加えて、この組成物は溶媒フリーなので、該組成物の調整は、製造のすみずみまで溶媒が存在しない限り、環境に対する悪影響を減らすと同時に、特に爆発や火災につながり得る化学物質リスクを取り除く。
【0030】
好都合には、本発明による組成物は、該組成物全体に対して、重量%で表される以下の濃度を含む:
−成分a):30〜85%、好ましくは40〜75%、
−成分b):最大で60%、好ましくは10〜50%、
−スリップ剤c):0.5〜10%、好ましくは5〜10%、
−光開始剤d):0〜7%、好ましくは3〜7%。
【0031】
成分b)、c)及びd)に関して、これらは以下から選ぶことができる;
−成分b)は、架橋の補助として、及び反応性希釈剤としての役割を果たすジアクリ
レートモノマー又はトリアクリレートモノマーであり、ジプロピレングリコールジ
アクリレート(DPGDA)、グリセリルプロポキシレートトリアクリレート(G
PTA)、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート(HD(EO)3DA)、
ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアク
リレート(TPGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA
)、ペンタエリスリトールトリ−及びテトラアクリレート(PETIA)、又はそ
の混合物;
−成分c)は、スリップ促進剤であり、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリシロ
キサンアクリレート、特に、ジメチルポリシロキサン変性ポリエーテル等のシロキ
サン変性ポリエーテル及びフッ素化界面活性剤、又はその混合物;
−架橋が開始できるようにする光開始剤d)に関しては、ベンゾフェノン、4−クロ
ロベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、4−メ
チルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジメチルヒド
ロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒド
ロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(
4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−
2−メチルプロパン−1−オン, 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
、又はその混合物。
【0032】
これらの成分全ては、液状だと好都合であり、該バックの組成物は、コート後に、25℃で4000mPa.s以下、好ましくは2000mPa.s以下、より好ましくは1500mPa.s未満の粘度を有している。該組成物の粘度の低さは、前記熱転写リボンのバッキングフィルム上に非常に薄くコートするのを容易にする。
【0033】
好ましくは、本発明による組成物において、成分a)はポリエーテルアクリレートとウレタンポリアクリレートの混合物である。なぜなら、ポリエーテルアクリレートはより良い機械的強度を付与し、ウレタンアクリレートはバックの可撓性を高めるということが観察されているからである。好都合には、該組成物は、重量%で、20〜60%のポリエーテルアクリレートと20〜55%のウレタンアクリレートを含む。
【0034】
本発明は、また、この熱転写リボンの保護層用組成物をコートする方法に関するものである。
【0035】
この趣旨で、該組成物をコートする方法は、液体組成物を得る目的のために成分a)、b)及びc)を、光開始剤が任意で存在している下で、室温で混合するステップ、そしてその後、マルチロールコーターを用い、該コーターの二つのロールの間を循環する該リボンのバッキングフィルム表面上で薄層に該組成物を塗布するステップ、及び、熱転写リボンの保護層を形成するために、バッキングフィルム上に塗布された前記の層を紫外線照射架橋或いは電子線架橋するステップを含み、該保護層は1μm未満の厚さを有している。
【0036】
該紫外線照射は、例えば、UVA、UVB及び/又はUVC線を放射するランプの下で生じうる。
【0037】
通常、特に該保護層と該バッキングフィルムとの接着性を増加させることを意図して、コロナ放電を用いて前記バッキングフィルムを前処理することができる。
【0038】
前記ロールは、好ましくは、30乃至1000m/minの速度で回転する共回転ロールである。コートする温度は、通常、10乃至60℃である。
【0039】
このようにして、0.05乃至0.30g/m、好ましくは0.10乃至0.20g/mの坪量で、均一な層をコートすることが可能なのである。従って、この保護層の均一な厚さは、前記成分の濃度に応じて、0.05μm乃至0.4μm、好ましくは0.10乃至0.25μmである。
【0040】
このように厚さが薄いにもかかわらず、熱機械的強度と、該バック上でのプリントヘッドの摩擦係数、特に、規格ASTM D1894に従って測定される、0.300以下、好ましくは0.200未満、特に0.115未満の動摩擦係数kdの観点から、本発明のバックは有利な特性を有する。
【0041】
本発明の第一の実施形態によると、上で述べたように、ポリエステル系ポリマーでできたバッキングフィルムを有し、該フィルムの一方の面が、印刷時の転写を目的とする少なくとも1層の熱溶融性インク層でコートされ、該フィルムの反対側の面は、保護層でコートされてバックと呼ばれている熱転写リボンを製造することが可能であり、該保護層は上述の通りである。
【0042】
第二の実施形態によると、該熱転写リボンは、ポリエステル系ポリマーでできたバッキングフィルムを有し、該フィルムの一方の面は、印刷時の転写を目的とする少なくとも1層の熱溶融性インク層でコートされ、本発明の保護層が該バッキングフィルムと該インク層(1層或いは複数層)との間に設けられているか、又は、部分的に或いは全体的に該インク層(1層或いは複数層)を覆っている。
【0043】
この第二の改良型によると、該インク層(1層或いは複数層)と反対側の該バッキングフィルムの面を、バックで覆うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の各種実施形態についての記述から浮かび上がってくるだろうが、これらは実施例に限定されるものではなく、且つ、以下の添付図面で表される。
【図1】本発明の第一の実施形態による熱転写リボンの断面の略図。
【図2】本発明の第二の実施形態の改良型による断面の略図。
【図3】本発明の第二の実施形態の改良型による断面の略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
[実施例]
配合組成の実施例
他に明記されない限り、試験を通じて、濃度は、配合組成全体のうちの重量%であらわされる。
【0046】
(左の欄は、用いられた成分の商標名を示す。)
【0047】
比較例1乃至4は、4より大きい官能基を有する成分を少なくとも1種類含む保護層の組成物を表す。
【0048】
例1(比較):
表1

25℃での粘度=1020mPa.s
【0049】
例2(比較)
表2

25℃での粘度=1160mPa.s
【0050】
例3(比較)
表3

25℃での粘度=540mPa.s
【0051】
例4(比較)
表4

25℃での粘度=930mPa.s
【0052】
以下の実施例5乃至10は、4以下の官能基を有する成分a)を含む、本発明による保護層の組成物を表す。
【0053】
実施例5
表5

25℃での粘度=270mPa.s
【0054】
実施例6
表6

25℃での粘度=230mPa.s
【0055】
実施例7
表7

25℃での粘度=300mPa.s
【0056】
実施例8
表8

25℃での粘度=310mPa.s
【0057】
実施例9
表9

25℃での粘度=850mPa.s
【0058】
実施例10
表10

25℃での粘度=480mPa.s
【0059】
実施例11
表11

25℃での粘度=1300mPa.s
【0060】
実施例12
表12

25℃での粘度=1100mPa.s
【0061】
実施例13
表13

25℃での粘度=300mPa.s
【0062】
用いられた複数成分a)及びb)の官能基及び粘度は、納入業者によって与えられており、表14で照合される。
表14

(−):不明
【0063】
この表で挙げられた成分は、それぞれ、サイテック社(エベクリル)、ラーン社(ジェノマー及びミラマー)そして、バイエル社(Desmolux)によって販売されている。
【0064】
複数の液体成分を25℃で混合することにより、該組成物を得た。あらかじめコロナ処理を施した後、PETでできていて、4.5μmの厚さを有するバッキングフィルム2の一方の面上に、マルチロールコーターでそれぞれの組成物を(図1の実施形態で表したように)コートした。そして、UV−A、−B及び−Cランプ(200〜380 nm)の下で架橋した。
【0065】
該フィルム2の反対側の面を、4g/mの坪量を有する単層のワックスインク層3でコートした。リボン1全体の厚さは9μmであり、保護層、この場合バック5の厚さは、配合にもよるが、0.05乃至0.40μmであった。
【0066】
上記の様々な配合組成の効果を示すために、以下を試験を行った。
【0067】
摩擦試験
この試験は、動力計を用いて、可動式スレッドに取り付けられたサンプルを、固定板の上に設置された(同タイプの)もう一つのサンプルの上で滑らせ、その動摩擦係数及び静止摩擦係数を測定することから成る。(規格ASTM D1894に従って測定される)動摩擦係数kdついての結果を以下の表15に示す。
【0068】
熱機械的強度の試験
この試験は、リボンの最後の部分(the latter)が印刷機(東芝製(reference) TEC B572、フラットヘッド)を通過するときの、印刷用リボンの強度を評価することから成る。印刷は、さまざまな速度(25〜127 mm/s)と様々なエネルギーレベルで行う。
【0069】
得られた結果を、処理条件とともに表15に挙げた。
表15

【0070】
比較例1乃至4の組成物から得られたリボンは、摩擦係数(比較例1、3及び4において大きすぎる)とリボンの質の両方の観点からすると、期待とは一致しない。なぜなら、バッキングフィルム上の保護層の接着性が乏しいという主な理由により、ある測定条件下で、該リボンが破断するからである。
【0071】
反対に、実施例5乃至13の組成物から得られるバックでは、特に、該保護層の接着性、リボンの可撓性及び動摩擦係数kdの観点から、試験結果は完全に満足できるものである。
【0072】
表15で述べられた条件下で、文字、ロゴ及びバーコードを含む識別ラベルを印刷するときは特に、素晴らしい印刷の品質も認められた。
【0073】
別の実施形態によれば、上述の保護層を、熱転写リボン1中の他の位置に設けることも可能である。
この実施形態の2つの改良型を、図2及び図3で表す。
図2で概略的に表された1つの改良型によると、保護層は、インク系統を、この場合は単層のインク層3を含むインク系統を覆う。
もうひとつの改良型によると、図3で示されているように、インク系統、この場合は単層のインク層3を含むインク系統をコートする前に、保護層6をバッキングフィルム2の上に設けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
a)紫外線架橋性のポリエーテルアクリレートと紫外線架橋性のウレタンポリアクリ
レートとの混合物であって、3以下の官能基(at most equal t
o)、好ましくは3官能基を含む混合物、
b)少なくとも一つのジアクリレート又はトリアクリレートモノマーの形をした前記
混合物a)の希釈剤であって、紫外線架橋性であり、好ましくは、該モノマーが
25℃で200mPa.s以下の粘度を有している希釈剤、
c)組成物中で10重量%以下の濃度の液状スリップ剤;
を含んでいることを特徴とする、溶媒フリーな熱転写リボン保護層の組成物であって、コートされ、光開始剤d)の存在下で紫外線照射により架橋するか、或いは電子線架橋した後に、1μm未満の厚さを有する保護層を形成することができる組成物。
【請求項2】
前記スリップ剤もまた紫外線架橋性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分a)、b)及びc)、又は成分a)、b)、c)及びd)のみを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
25℃で4000mPa.s以下、好ましくは2000mPa.s以下、より好ましくは1500mPa.s未満の粘度を有することを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物全体に対して以下の重量%の濃度:
−成分a):30〜85%、好ましくは40〜75%、
−成分b):最大で60%、好ましくは10〜50%、
−スリップ剤c):0.5〜10%、好ましくは5〜10%、
−光開始剤d):0〜7%、好ましくは3〜7%、
を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
重量%で、20〜60%のポリエーテルアクリレートと、20〜55%のウレタンアクリレートとを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記成分b)が、ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレート、又はそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記スリップ剤C)が、シリコーン(メタ)アクリレート、シロキサン変性ポリエーテル、ポリシロキサンアクリレート、フッ素化界面活性剤、又はそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記光開始剤d)が、ベンゾフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又はそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
液体組成物を得る目的のために前記成分a)、b)及びc)を、光開始剤が任意で存在している下で、室温で混合するステップ、そしてその後、マルチロールコーターを用い、該コーターの二つのロールの間を循環する該リボンのバッキングフィルムの一方の面上で薄層に該組成物を塗布するステップ、及び、熱転写リボンの保護層を形成するために、バッキングフィルム上に塗布された層を紫外線照射架橋或いは電子線架橋するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物をコートする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を用いて得られ、0.05μm乃至0.4μm、好ましくは0.10μm乃至0.25μmの厚さを有することを特徴とする、熱転写リボンの保護層。
【請求項12】
0.300以下、好ましくは0.200未満の動摩擦係数kdを有することを特徴とする、請求項11に記載の保護層。
【請求項13】
ポリエステル系ポリマーでできているバッキングフィルム(2)を有し、該フィルム(2)の一方の面が、印刷時の転写を目的とする少なくとも1層の熱溶融性インク層(3)でコートされており、該フィルム(2)のもう一方の面はバック(5)と呼ばれる保護層でコートされている熱転写リボンであって、該保護層が請求項11又は12と一致していることを特徴とする、熱転写リボン(1)。
【請求項14】
ポリエステル系ポリマーでできているバッキングフィルム(2)を有し、該フィルム(2)の一方の面が、印刷時の転写を目的とする少なくとも1層の熱溶融性インク層(3)でコートされている熱転写リボン(1)であって、請求項11若しくは12と一致している保護フィルム(4、6)が、該バッキングフィルム(2)と(1層若しくは複数層の)該インク層(3)との間に設けられているか、又は、部分的に或いは全体的に(1層或いは複数層の)該インク層(3)を覆っていることを特徴とする、熱転写リボン(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517916(P2012−517916A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549638(P2011−549638)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050167
【国際公開番号】WO2010/092277
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511198003)
【Fターム(参考)】