説明

紫外線殺菌装置

【課題】石英ガラス等の紫外線透過板の破損を高い精度で検出することができる紫外線殺菌装置を提供すること。
【解決手段】紫外線ランプ11と、紫外線ランプ11を包囲するハウジング12と、ハウジング12に設けられた、対向する紫外線透過板16,17の間に密閉空間19を形成して構成された紫外線透過部13と、紫外線透過部13の密閉空間19に所定圧のエアーを導入して紫外線透過部13の密閉空間19を陽圧状態に保持するエアー供給手段と紫外線透過部13の密閉空間19及びエアー供給手段の間に設けられた、エアーの流れを検出するフローセンサとを備えた紫外線殺菌装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装材料等を殺菌するための紫外線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品業界においては、賞味期限の延長などを目的として、紫外線(UV)ランプ装置を用いた殺菌方法が用いられている。かかる紫外線ランプ装置においては、ハウジング内に設けられたランプと外部とを遮断するために、一般に、特定の波長の紫外線(254nm)を透過する石英ガラスが使用されている。他方、産業界全体においては、近年、製造者責任の観点より様々な面で安全性への要求が増し、ガラスの破損による異物混入の恐れがあるとしてガラス製品の使用さえ許可されないケースもでてきているが、現状では、紫外線ランプ装置の機能を満足すべく石英ガラスの使用が強く求められており、何らかの安全性確保の方法が必要とされている。
【0003】
上記のような背景の中、石英ガラス割れ検出の方法としていくつかの方法が知られているが、各装置とも、一長一短があり、更なる改良と差別化が求められている。例えば、ハウジング内部を冷却用ガスにより中圧(約0.1Mp)に保持し、圧力の低下を検出することにより、ガラスの割れを監視する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、小さな破損(ひび割れ)の検出には限界があり、また、ランプ交換等のメンテナンス作業が必要なハウジング自体を密閉とするため、パッキン類の隙間からリークする場合もあり、どこからリークしているのか発見するのが困難であり、確実にガラスの割れを検出できるというものではなかった。
【0004】
また、石英ガラス端部(紫外線の有効部分以外の部分)に配線を特殊な樹脂にて接着し、その線に通電を行ない、ガラス破損時に断線を検出する方法も提案されているが(特許文献2参照)、高圧殺菌装置においては実績がなく、また、電気線が完全に断裂しないと検出できず、ひび割れ位置や破損程度によっては、ガラスの割れを検出できない場合もあり、確実性が低いものであった。また、石英ガラス全面を網羅して配線することは、非常に困難であり、現実的でない。
【0005】
さらに、テフロン(登録商標)系の特殊ポリマーフィルムを石英ガラスの下側に配置し、石英ガラスやUVランプの破損時の異物落下を防止する方法も提案されているが(特許文献3参照)、高圧水銀タイプの紫外線ランプにおいては、高熱に曝されるため寿命が短く、また、紫外線の透過性が石英ガラス単体の場合に比して大きく低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3963480号公報
【特許文献2】特開2001−97319号公報
【特許文献3】特表2005−519816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、石英ガラス等の紫外線透過板の破損を高い精度で検出することができる紫外線殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、まずペットボトルを用いた穴開け予備試験により、従来の圧力検出方式が小さな破損に対して検出精度が低いことを確認すると共に、エアーのリークを検出する方式(エアーフロー検出方式)が、従来の圧力検出方式に比して精度が高いという知見を得た。この知見に基づき、さらに検討した結果、紫外線透過板を2枚用いて該紫外線透過板の間に密閉空間を形成し、該密閉空間に微圧エアーを導入又は該密閉空間からエアーを吸引して、フローセンサによりエアーの流れを検出することにより、確実に紫外線透過板の破損を検出できることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、密閉状態が保持されている間は、エアーの流れはないが、紫外線透過板の一部が破損した場合に密閉空間からエアーが漏出又は密閉空間に外部からエアーが流入することから、エアーに流れが生じ、このエアーの流れを検出することにより、正確かつ確実に紫外線透過板の破損の検出が可能となることを見い出した。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)紫外線ランプと、該紫外線ランプを包囲するハウジングと、該ハウジングに設けられた、対向する紫外線透過板の間に密閉空間を形成して構成された紫外線透過部と、該紫外線透過部の密閉空間に所定圧のエアーを導入又は該密閉空間からエアーを吸引して、密閉空間を陽圧又は陰圧状態に保持するエアー調整手段と、前記紫外線透過部の密閉空間及びエアー調整手段の間に設けられた、エアーの流れを検出するフローセンサと、を備えたことを特徴とする紫外線殺菌装置や、(2)エアー調整手段が、所定圧のエアーを導入して紫外線透過部の密閉空間を陽圧状態に保持するエアー供給手段であることを特徴とする前記(1)記載の紫外線殺菌装置や、(3)紫外線透過部は、紫外線ランプ側の紫外線透過板に比して、他方の紫外線透過板が厚いことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の紫外線殺菌装置や、(4)対向する紫外線透過板の間隔が、1〜30mmであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の紫外線殺菌装置や、(5)紫外線透過板が、石英ガラスであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の紫外線殺菌装置や、(6)紫外線ランプが、高圧紫外線ランプであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の紫外線殺菌装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紫外線殺菌装置によれば、石英ガラス等の紫外線透過板の破損を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の紫外線殺菌装置の概略断面図(正面)である。
【図2】本発明の紫外線殺菌装置の概略断面図(側面)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の紫外線殺菌装置としては、紫外線ランプと、該紫外線ランプを包囲するハウジングと、該ハウジングに設けられた、対向する紫外線透過板の間に密閉空間を形成して構成された紫外線透過部と、該紫外線透過部の密閉空間に所定圧のエアーを導入又は該密閉空間からエアーを吸引して、密閉空間を陽圧又は陰圧状態に保持するエアー調整手段と、前記紫外線透過部の密閉空間及びエアー調整手段の間に設けられた、エアーの流れを検出するフローセンサとを備えた装置であれば特に制限されるものではなく、本発明の装置によれば、圧力検出方式では検出が困難な紫外線透過板の小さな破損を検出することができる。
【0013】
エアー調整手段としては、所定圧のエアーを導入して紫外線透過部の密閉空間を陽圧状態に保持するエアー供給手段や、エアーを吸引して紫外線透過部の密閉空間を陰圧状態に保持するエアー吸引手段(真空吸引手段)を例示することができる。前者の場合、比較的高価な減圧装置を使用することなく、紫外線透過板の破損を検出することができるのでコスト的に有利である。他方、後者の場合、破損片が殺菌対象物側に流出することを抑制することができる点で有利である。なお、エアーとは、空気のみならず、不活性ガス等を含む気体全般を意味する。
【0014】
紫外線透過部の密閉空間を陽圧状態とする場合、大気圧に対して10〜50KPa程度加圧することが好ましく、紫外線透過板として石英ガラスを用いる場合には、ガラス強度上10〜30KPa程度加圧することがより好ましい。本発明のエアーフロー検出方式では、微圧であっても小さな破損の検出を行うことができる。
【0015】
紫外線ランプとしては、紫外線透過部の紫外線透過度や殺菌対象物の必要紫外線量等を考慮して適宜公知の紫外線ランプを使用することができる。具体的には、低圧〜高圧の紫外線ランプを用いることができ、より高い殺菌効果を得たい場合には、高圧紫外線ランプを用いることが好ましい。高圧紫外線ランプとしては、常用されているものを使用することができ、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプを使用することができる。
【0016】
対向する紫外線透過板としては、紫外線を透過できるものであれば特に制限されるものではなく、石英ガラスの他に特表2005−519816号公報(特許文献3)記載のもの等を例示することができ、紫外線透過度が高い点から、石英ガラスが好ましい。また、対向する紫外線透過板は、紫外線ランプ側の紫外線透過板に比して、他方(殺菌対象物側)の紫外線透過板が厚いことが好ましい。これにより、紫外線ランプ側の紫外線透過板が先に破損する可能性が高いことから、外部側(殺菌対象物側)に飛散することを防止することができる。紫外線ランプ側の紫外線透過板の厚さとしては、例えば1〜5mm程度であり、殺菌対象物側の紫外線透過板の厚さとしては、例えば3〜7mm程度である。また、対向する紫外線透過板の間隔としては、1〜30mmであることが好ましく、3〜20mmであることがより好ましく、5〜15mmであることがさらに好ましい。
【0017】
フローセンサは、エアーの流れが生じた場合にかかるエアーの流れを検出することができるものであれば特に制限されるものではなく、微量のエアーの流れを検出できるセンサであることが好ましく、例えば、最小検出量が0.05〜0.5L/min程度のセンサを用いることが好ましい。具体的には、例えば、最小検出流量が0.2L/minのフローセンサを用いる場合、通常はかかる最小検出流量に設定し、0.2L/min以上のエアーの流れが生じた場合に検知できるようにする。
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の装置を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1及び図2は、本発明の紫外線殺菌装置の概略断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の紫外線殺菌装置10は、1灯式の紫外線ランプ11と、紫外線ランプ11を包囲するハウジング12と、ハウジング12の一面に設けられた紫外線透過部13とを備えており、紫外線ランプ11の下方で、その長手方向に、ゲーブルトップ型の包装容器14がその上部を開放した状態で搬送される。
【0020】
紫外線ランプ11は、例えば高圧水銀灯であって、大型の反射板15によって高い照度を維持し、包装容器14の底部まで確実に殺菌できるようになっている。また、紫外線透過部13は、10mm程度の間隔をあけて配設された対向する2枚の石英ガラス16,17を備えている。かかる2枚の石英ガラス16,17は、周部に介在するスペーサー18と共に密閉空間19を形成している。紫外線ランプ11側の石英ガラス16は、3mm程度の厚さであって、他方の石英ガラス17は、5mm程度の厚さとなっている。石英ガラス17の方を厚く構成して破損の可能性を低減させることにより、包装容器14へのガラス破片の飛散を防止することができる。
【0021】
また、紫外線透過部13の密閉空間19には、エアー源からレギュレータで制御(減圧)されたエアーが電磁弁を開放することにより供給され、密閉空間19内は所定の陽圧状態に保持される。さらに、このエアー源から密閉空間19の間の配管20には、エアーの流れを検出するフローセンサが設けられており、エアーの流れが所定値以上になった場合に検知できるようになっている。すなわち、密閉空間19の密閉状態が保持されている間は、配管20内にエアーの流れはないが、石英ガラス16,17の一部が破損した場合には、密閉空間19からエアーが漏出すると共に配管20内にエアーの流れが生じ、このエアーの流れを検知する。本発明のエアーフロー検出方式によれば、圧力変化検出方式よりも正確かつ確実に石英ガラス16,17の破損の検出を行うことができる。なお、レギュレータの下流には、圧力スイッチを設け、レギュレータの不具合等による圧力異常を検知してエアー供給を遮断する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の紫外線殺菌装置は、例えば、食品包装材料等を殺菌するために用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 紫外線殺菌装置
11 紫外線ランプ
12 ハウジング
13 紫外線透過部
14 包装容器
15 反射板
16,17 石英ガラス
18 スペーサー
19 密閉空間
20 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプと、
該紫外線ランプを包囲するハウジングと、
該ハウジングに設けられた、対向する紫外線透過板の間に密閉空間を形成して構成された紫外線透過部と、
該紫外線透過部の密閉空間に所定圧のエアーを導入又は該密閉空間からエアーを吸引して、密閉空間を陽圧又は陰圧状態に保持するエアー調整手段と、
前記紫外線透過部の密閉空間及びエアー調整手段の間に設けられた、エアーの流れを検出するフローセンサと、
を備えたことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
エアー調整手段が、所定圧のエアーを導入して紫外線透過部の密閉空間を陽圧状態に保持するエアー供給手段であることを特徴とする請求項1記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
紫外線透過部は、紫外線ランプ側の紫外線透過板に比して、他方の紫外線透過板が厚いことを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
対向する紫外線透過板の間隔が、1〜30mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の紫外線殺菌装置。
【請求項5】
紫外線透過板が、石英ガラスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の紫外線殺菌装置。
【請求項6】
紫外線ランプが、高圧紫外線ランプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の紫外線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−85850(P2012−85850A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235453(P2010−235453)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000180298)四国化工機株式会社 (44)
【Fターム(参考)】