説明

紫外線浄化処理装置

【課題】紫外線発光光源を希ガス放電灯とし、その内側および外側にらせん状流路を形成することで、紫外線による浄化処理能力を向上可能とする。
【解決手段】光源設置部に直管状の紫外線放射部を備えた複数の希ガス放電灯を紫外線放射部が平行になるように配置する。内周側らせん状流路および外周側らせん状流路を前記光源設置部の近傍に設ける。内周側らせん状流路および外周側らせん状流路は、紫外線透過材料により形成する。前記希ガス放電灯は、希ガスが密閉封入されたガラス管と、前記紫外線放射部のガラス管外周面に対向して設けた一対の帯状の外部電極とを有する紫外線発光の希ガス放電灯であり、非外部電極被覆面が前記内周側らせん状流路および外周側らせん状流路と対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を用いて殺菌・消毒などを目的とした清浄化処理を行なう清浄処理装置に関するもので、特に上下水道、工業用水、家庭用水などの水に対し、殺菌、消毒、脱臭などの処理を行う紫外線浄化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水質について問題視することが増加している。この水質改善の対策として紫外線を用いた殺菌装置900が従来から知られている。例えば、特許文献1では、図7に示すように円筒状の殺菌容器901と、その中央部に同軸に設置された低圧水銀灯902から構成される。殺菌処理する被処理水Wを、円筒状容器と低圧水銀灯902の間隙に形成される流路903に円筒軸と平行な方向に流通させることにより紫外線を照射して殺菌するものである。低圧水銀灯902は、水銀を励起媒質とし、主波長が254nmであり185nmの紫外線も発生する。
【0003】
また、紫外線照射を効率化するために、低圧水銀灯の周囲にらせん状水路を設ける方法も知られている。例えば、特許文献2では紫外線光源の周囲にらせん状水路を設けた紫外線照射装置において、らせん状水路における隣接する水路相互の間に空間を設け、らせん状水路を包囲する反射板を設けることを特徴とする紫外線照射装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−084871号公報
【特許文献2】特開2004−089941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の紫外線殺菌装置を使用した場合、流水は殺菌容器の軸に直角に流入し、軸に沿って流れ、また軸に直角な方向に排出されるが、流路の断面積が大きく流路の長さも短いために、流水が殺菌容器内を通過するに要する時間が短く、紫外線に照射される時間も短かった。
【0006】
また、特許文献2の紫外線照射装置の場合には、特許文献1に比べて紫外線を水路にほぼ均等に入射させることができる。しかしながら、らせん状水路により低圧水銀灯を冷却することになる。低圧水銀灯に封入している水銀の蒸気圧は温度により大きく変動するため、低圧水銀灯は周囲温度の影響を受けやすい。そのため、特に低温の流水をらせん状水路に流した場合においては、らせん状水路により冷却され紫外線の出力が低くなる、という課題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、水銀を含まない希ガス放電ランプを用いて、周囲温度の影響を受け難く、紫外線処理の効果の高めた紫外線浄化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は次の特徴を有する紫外線浄化処理装置(100)を提供する。
筒状の光源設置部(50)と、前記光源設置部(50)の内周面に設けた内周側らせん状流路(3)と、前記光源設置部(50)の外周面に設けた外周側らせん状流路(2)とを備えた紫外線浄化処理(100)であって、
前記光源設置部(50)には、直管状の紫外線放射部を備えた複数の希ガス放電灯(10,20)が直管状の紫外線放射部が平行になるように配置され、
前記内周側らせん状流路(3)および外周側らせん状流路(2)は、紫外線透過材料により形成され、前記光源設置部(50)の上面側(51)または下面側(52)に設けた連結部(4)を介して繋がっており、
前記希ガス放電灯(100)は、希ガス(13)が密閉封入されたガラス管(11)と、前記紫外線放射部のガラス管外周面に対向して設けた一対の帯状の外部電極(14,15)とを有する紫外線発光の希ガス放電灯(10,20)であり、非外部電極被覆面(53)が前記内周側らせん状流路(3)および外周側らせん状流路(2)と対向していることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記外周側らせん状流路の外側には、金属反射壁(8)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記希ガス放電灯(10,20)は、キセノンを主成分とするガスを20〜110Torr封入され、外部電極(14,15)がアルミニウム電極であることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、希ガス放電ランプを用いるので周囲温度の影響を受け難くすることができ、また、放射される紫外線を殆ど無駄にすることなく使用効率を高め、紫外線処理の効果の高めた紫外線浄化処理装置を提供することができる。
【0012】
さらに、金属反射壁を設けることで、より一層紫外線の利用効率および紫外線処理効率を高めることができる。
また、所定の希ガス放電ランプを用いることで、より一層周囲温度の影響を受け難くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各々の希ガス放電灯に設けた非外部電極被覆面が光源設置部の内外に配置されたらせん状流路に向かって対向しているので、紫外線照射時間を長くすることができるようになる。また、希ガス放電灯と流路を近接して配置することができ、紫外線の減衰を小さく抑えて紫外線放射照度を大きくすることができる。
【0014】
さらに、内外2重のらせん構造としたので、紫外線浄化装置内における流路を十分に長くすることができ、照射時間を長くすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施の形態の紫外線浄化処理装置の概略断面図である。
【図2】図2は、図1のD−D線に沿って示す紫外線浄化処理装置の概略断面図である。
【図3】図3は、図1の紫外線光源を説明する概略正面図である。
【図4】図4は、図3の希ガス放電灯の断面図で、(a)がB−B線に沿った概略断面図、(b)がC−C線に沿った概略断面図である。
【図5】図5は、図2に示す紫外線浄化処理装置と対比して説明する概略断面図である。
【図6】図6は、他の実施の形態に係る紫外線浄化処理装置に用いる希ガス放電灯を説明する概略正面図である。
【図7】図7は、従来の紫外線浄化装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態である液体の紫外線浄化処理装置について図1〜図6を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の実施態様に係る紫外線浄化処理装置100の構成の一例を示す概略断面図、図2は図1のD−D線に沿って示す紫外線浄化処理装置100の構成の概略断面図である。本実施形態の紫外線浄化処理装置100は、円柱状のジャケット1と、ジャケット1内部に設けた複数の希ガス放電灯10、外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3と、連結部4と、外周側らせん状流路2に接続した入水口5と、内周側らせん状流路3に接続した出水口6を備える。
【0018】
ジャケット1は外観円柱形状とされ、金属材料からなる。ジャケット1の内径と、ジャケット内径の中心軸X方向の長さを比べたときに、中心軸方向の長さが長い円柱形状、すなわち縦長の円柱形状としている。中心軸方向の長さを長くすることで、直管状の希ガス放電灯の使用本数を少なくしても紫外線処理効果を高めることができる。また、ジャケット1の内面1a、すなわち内周面は平滑度を高めて鏡面からなる反射面8としている。反射面8は希ガス放電灯10から照射された紫外線を反射する紫外線反射面となる。
【0019】
ジャケット1に用いる金属はアルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金が好適である。アルミニウムは紫外線の反射率が高く、且つ、熱伝導率が高いからである。熱伝導率が高いと紫外線ランプの点灯により生じた熱を効率よく外部に放熱することができる。また、紫外線反射面8は、ジャケット1の基材をそのまま用いたが、別途紫外線反射膜を内面に設けたものでもよい。また、金属材料のかわりに、紫外線ランプと対向する内面に紫外線を透過させない単層または複層の紫外線反射膜を設けた樹脂材料とすることもできる。
【0020】
希ガス放電灯10は直管形状とされ、本実施の形態においては中心軸Xを中心に8本を等間隔にて点対称に配置している(図2参照)。また、8本の希ガス放電灯10が配置している空間は概ね円筒形状をなしている。この円筒形状の空間が後述する光源設置部50に該当する。
【0021】
外周側らせん状流路2は、光源設置部50とジャケット内面1aとの間の空間に配置される。外周側らせん状流路2は、光源設置部50の外周において気体層55を隔てて中心軸Xと同軸となるように紫外線透過材料からなるチューブを螺旋状に多数回巻いて配設する。チューブの中空とした内部は、被処理水Wが通る流路となる。流路が希ガス放電灯10の周囲を回りながら進む螺旋通路を形成することで、特許文献1のような円筒形状のスペースとした場合に比較して、定まった流路を流れることになり、また、その長さを長くすることができる。流路の長さを長くし、且つ、螺旋通路としたことで、希ガス放電灯10から照射される紫外線光を長い距離に渡り被処理水Wに照射することができる。したがって、紫外線エネルギーをムダなく活用することができる。また、流路を進む被処理水Wは、希ガス放電灯10に対し、相対的な位置関係が変化しながら進行する。すなわち、被処理水Wは流路を乱流となって進む間に混合され、被処理水全体に万遍なく紫外線光が照射され、殺菌・消毒などの効果が上がる。
【0022】
チューブは紫外線光を透過する材料により形成される。特にフッ素系の樹脂材料が好ましい。樹脂材料を用いることで容易に螺旋状に巻くことができる。具体的には、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))などを用いることができる。
【0023】
また、外周側らせん状流路2はチューブを多数回巻き回して配置したものを用いることができるが、これに限るものではない。例えば、螺旋通路を形成した石英ブロックを設けたり、円筒状石英にフッ素樹脂チューブを巻いて一体化したものを用いても良い。
【0024】
内周側らせん状流路3は、光源設置部50とジャケット中心軸Xとの間の空間に配置される。内周側らせん状流路3は、光源設置部50の内周において気体層55を隔てて中心軸Xと同軸となるように紫外線透過材料からなるチューブを螺旋状に多数回巻いた形状にて配設する。チューブの中空とした内部は、被処理水Wが通る流路となる。
【0025】
また、内周側らせん状流路3も外周側らせん状流路2と同様にフッ素系の樹脂材料からなるチューブを多数回巻き回して配置したものを用いることができる。また、螺旋通路を形成した石英ブロックを設けたり、円筒状石英にフッ素樹脂チューブを巻いて一体化したものを用いても良い点も外周側らせん状流路2と同様である。
【0026】
連結部4は、円筒形状をなす光源設置部50の上面51側に配設し、外周側らせん状流路2と内周側らせん状流路3の互いの流路を接続する。すなわち、図1にて点線にて示すように2つのらせん状流路2,3は互いの一端で連結された状態となる。
【0027】
円筒形状をなす光源設置部50の下面52側には、ジャケット1の底部から外部に延びる入水口5および出水口6が配置されている。入水口5は、外周側らせん状流路2の連結部4と接続していない一端に設けられており、出水口6は、内周側らせん状流路3の連結部4と接続していない一端に設けられている。これにより、殺菌処理される被処理水Wは、光源設置部50をはさむように内外に配置された2つのらせん状流路2,3の片方の端部から装置内に導入され、外周側らせん状流路2の内部を通った後、連結部を介して、もう片方のらせん状流路(内周側らせん状流路3)を流通する。その後、端部に設けた出水口6より排出される。なお、入水口5と出水口6は逆であっても構わない。
【0028】
たとえば外側のらせん状流路2から入水させた場合は、被処理水は外側のらせん状流路2を流通しながら、希ガス放電灯10の非外部電極被覆面53より放出される紫外線の照射を受け、連結部4を介して内側のらせん状流路3に移行したのちは、被処理水Wは内側のらせん状流路3を流通しながら、希ガス放電灯10の非外部電極被覆面53より放出される紫外線の照射を受け、しかるのちに出水口6から処理された水を排出することになる。
【0029】
次に希ガス放電灯10について説明する。
【0030】
図3および図4は希ガス放電灯10について説明する図面で、図3は希ガス放電灯10を示す概略正面図、図4は、図3に示した希ガス放電灯のB−B線およびC−C線に沿った概略断面図である。
【0031】
希ガス放電灯10は、管状のガラス管11と、ガラス管11の内部の密閉空間に充填されたキセノンなどの希ガス13と、ガラス管11の外周に設けた一対の帯状電極14,15により構成され、希ガス放電灯10を点灯すると紫外線を放射する。なお、符号17は、ガラス管11の外周に設けた紫外線透過性の熱収縮膜であり、熱収縮膜17には開口19が設けられ、開口19の箇所においてはガラス管11が露出している。
【0032】
ガラス管11は、紫外線を透過可能なガラス組成からなり、管状に形成されている。ガラス管11の端部は、ガラス管を加熱しながら縮径加工を施すなどによりガラス管端部が溶着されている。端部に封止ガラスを配設して溶着して封止するものでも良い。本実施の形態においては図4に示したような円筒状の直管形状のものを用いている。
【0033】
ガラス管11内部の密閉空間には所定の希ガス13が封入されている。希ガス13は、例えばキセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)などの希ガスが単一または混合して所定量封入されている。封入された希ガス13は励起媒質として作用し、単一ガスが封入された場合には、それぞれ172nm、146nm、126nmの紫外線を発生する。封入圧力は、例えばキセノンを主成分とするガスを20〜110Torr(常温)とする。また、内部空間には紫外線光源のための主たる発光物質としての水銀を封入していない。さらに、ガラス管11の密閉空間を形成する内周面16には、蛍光体層を設けていない。内周面16に紫外線を発する蛍光体層およびまたは紫外線を通す濃度の蛍光体層を設けても良い。
【0034】
ガラス管11の外周面12には、一対の外部電極14,15が設けられている。外部電極14,15は、ガラス管11のほぼ全長に亘って、ガラス管11の中心軸を中心として断面において両外部電極14,15が対向するようにして一対の帯状の導電体が配設されている。外部電極14,15は、アルミニウム箔が好適であるが、他に、導電性があり、かつ紫外線に対して耐久性がある材料として銀などの金属材料を用いることができる。アルミニウム外部電極はアルミニウム金属のみでなくアルミニウムを主成分とする合金も含んでアルミニウム外部電極という。
【0035】
外部電極14,15を紫外線を透過しない金属材料により形成したときには、外部電極14,15を形成した部分は、紫外線が放出されない領域となり、金属電極を形成していない非外部電極被覆面53、すなわち、外部電極のないガラス管11の側面の露出面である光(紫外線)放射部18から紫外線が放出される。外部電極14,15とガラス管11との間にシリコーン系接着剤などを介して接着しても良い。また、外部電極14,15は、ガラス管11の外周面12に、金属を焼き付けたり、金属を印刷する、などの方法で設けたものでも良い。
【0036】
熱収縮膜17は、外部電極14,15をガラス管11の外周面12に固定すると共に外部電極14,15を絶縁材料にて被覆して保護する。熱収縮膜17は、希ガス放電灯1から放射される紫外線を透過可能な樹脂材料により形成され、好適にはフッ素樹脂を用いる。例えば、PFAからなるフッ素樹脂チューブや、FEPからなるフッ素樹脂チューブを用いる。PFA(Per fluoro alkoxy fluoroplastics)は四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなるフッ素樹脂、FEP(Fluorinated Ethylenepropylene)は、トラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体したフッ素樹脂である。これらのフッ素樹脂チューブは、熱収縮チューブとして市場から調達することができる。PFAの紫外領域における透過率は、厚さ0.04mmのときに、波長250nmで約55%、波長300nmで約70%、波長350nmで約77%、波長400nmにおいて約80%であり高い透過率を示す。FEPの紫外領域における透過率もPFAに類似する高い透過率を示す。
【0037】
熱収縮膜17には、図3に示したように、光出射部18に対応する位置に開口19が設けてある。図3では4箇所の矩形の開口19を示している。開口19を設けていない位置の断面を図4(A)に示し、開口19を設けた位置の断面を図4(B)に示す。
【0038】
図4(A)に示したように、開口19を設けていない位置、すなわち、熱収縮膜17にて覆われた周方向被覆部Aにおいては、前記外部電極14,15の全ての外周側表面およびガラス管11の露出面の外周の全てが熱収縮膜17にて覆われている。一方、開口19を設けた位置においては、図4(B)に示したように、前記外部電極14,15の全ての外周側表面とガラス管11の露出面の一部が熱収縮膜17にて覆われているが、ガラス管11の残りの外周面12は、熱収縮膜17で覆われていず、外周面12が露出している。すなわち、開口19を設けていない周方向被覆部A以外の領域においては、ガラス管11の多くが熱収縮膜17にて覆われていない。
【0039】
周方向被覆部Aにおいては、ガラス管11の周方向の全周に亘って熱収縮膜17により覆われているので、熱収縮膜17を加熱して収縮させることにより外部電極14,15をガラス管11との間で挟持して固定する。また周方向被覆部A以外の熱収縮膜17を設けた位置においては、開口19が設けられているので、熱収縮膜17による紫外線の吸収が低減される。したがって、紫外線の出射量を増加させることができる。
【0040】
次に、熱収縮膜17による被覆方法について説明する。
予め希ガス13を封入したガラス管11の外周面12に外部電極14,15を所定位置に配設する。その後、開口19を形成したチューブ状の熱収縮膜17を被せる。このとき、開口19が光放射部18の位置になるようにして被覆する。熱収縮膜17を被覆した後に、ガラス管11全周を加熱し、熱収縮膜17を収縮させる。熱収縮膜17はガラス管11の径方向中心に向かって小径化し、ガラス管11の外周面12に密接して、外部電極14,15を固定する。なお、熱収縮膜17の被覆の方法は、上記した方法に限るものではなく、シート状の熱収縮膜を接着剤等により貼り付けた後に熱収縮するなどの方法としても良い。
【0041】
紫外線浄化処理装置100について、図2および図5を用いて説明を続ける。図5は希ガス放電灯10の外部電極と紫外線出射範囲の関係を説明する概略断面図である。
【0042】
光源設置部50は、外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3の間の空間であって、略円筒状をなす。光源設置部には複数の希ガス放電灯10を、ジャケット中心軸Xを中心とした同心円上に、各希ガス放電灯10の直管部中心軸54がジャケット中心軸Xと平行になるように配置されている。このとき、図2に示すように、各希ガス放電灯10の側面における非外部電極被覆面53が、外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3と向かい合い、外部電極14,15が外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3と向かい合わないように配置する。すなわち、図2に示すように非外部電極被覆面53が円筒状の光源設置部50の内周側および外周側に位置するように配設している。本実施の形態において非外部電極被覆面53は、光放射部18および周方向被覆部Aが該当する。
【0043】
このように配置すると、希ガス放電灯10から放射する紫外線が外部電極14,15にて遮蔽されることなく外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3に到達するので好適である。例えば、外部電極14,15が外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3と向かい合うように配置する場合を図5に比較として示す。図5において網掛してある部分は、外部電極により紫外線が照射されなくなっている領域を4本の希ガス放電灯10ついて示している。図5のように希ガス放電灯の外部電極を配置した場合には、らせん状流路を流通する水が、紫外線照射を受ける領域と受けない領域を交互に通過することになるのがわかる。紫外線殺菌装置の殺菌効果は、紫外線量、すなわち紫外線放射照度と照射時間の積により定まるので、紫外線照射を受けない領域が多く生じることは、照射時間の短縮につながるので好ましくない。
【0044】
一方、本実施の形態では、図2に示したように外部電極14,15により紫外線が照射されなくなる領域、すなわち外部電極14,15を形成した面は隣り合うランプの方向に向いている。その一方、紫外線が照射される領域は外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3の方向に向く構造となっている。したがって、被処理水Wはらせん状流路を流通する間、常に紫外線の照射を受ける状態となっているので、照射時間を十分に長くすることができる。
【0045】
また、希ガス放電灯の2つ非外部電極被覆面53に近接してらせん状流路2,3を配置することができるので、紫外線の距離による減衰を少なくすることができ、水に十分な紫外線放射照度を与えることができる。さらに、外周側らせん状流路2および内周側らせん状流路3の両側のらせん状流路を形成しているので、流路を十分に長いものとすることができる。したがって、照射時間を十分に長くすることができ、コンパクトな構成にて紫外線殺菌効果を高めることができる。
【0046】
さらに、前記希ガス放電灯10は、前記熱収縮膜にて外部電極14,15を所定位置に固定しており、好適にはフッ素樹脂系化合物を用いている。これにより、希ガス放電灯から放射される紫外線の減衰を抑制し、また、外部電極を安定して固定することで外部電極を容易にかつ安定して固定することができる。また、対向する外部電極14,15の位置も、光源設置部50の形状に応じて調整することができる。例えば、直管部中心軸54を中心とした完全な線対称な位置から光源設置部50の曲率に応じて偏在させてもよい。
【0047】
次に他の実施の形態について説明する。
図6は、本発明に用いる希ガス放電灯20の別の構成を示す概略正面図である。なお、以下の説明において、上記した実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
希ガス放電灯20は、管状のガラス管11と、ガラス管11の内部の密閉空間に充填されたキセノンなどの希ガス13と、ガラス管11の外周に設けた一対の帯状電極14,15により構成され、希ガス放電灯10を点灯すると紫外線を放射する。
さらに、本実施の形態においては、ガラス管11の外周には、管長方向に間隔をあけてリング状とした紫外線透過性熱収縮膜27が複数個設けられている。
【0049】
リング状とした紫外線透過性熱収縮膜27は、希ガス放電灯1から放射される紫外線を透過可能な絶縁性の樹脂材料により形成され、好適にはフッ素樹脂を用いる。ガラス管11の管長より短く、且つガラス管11のほぼ全長に亘って配設した一対の帯状の導電体からなる外部電極14,15のガラス管の両側端部近傍と、両側端部間の複数箇所の位置を、等間隔のピッチとなるように配設している。図3においては5個のリング状の紫外線透過性熱収縮膜27を設置している。
【0050】
このような希ガス放電灯20は、予め希ガス13を封入したガラス管11の外周面12に外部電極14,15を所定位置に配設する。その後、リング状とした熱収縮膜27を所定の間隔をあけて配置する。その後、ガラス管11全周を加熱し、熱収縮膜27を収縮させる。熱収縮膜27はガラス管11の径方向中心に向かって収縮し、外部電極14,15を固定する。したがって、より簡単に希ガス放電灯を製造することができ、総じて紫外線浄化処理装置全体のコストを低減することができる。
【0051】
この希ガス放電灯20を図1および図2に示した紫外線浄化処理装置100に用いれば、実用が十分可能な簡易な構造で、外部電極型希ガス放電灯から放射される紫外線を確実に被処理水に照射し、照射時間を長く、放射照度を大きくすることが可能になるので、殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を得ることができる。
【0052】
ところで、紫外線ランプより照射される光は、光源であるランプから離れると減衰する。点光源からの照度(線量率)は光源からの距離の2乗で減少し、減衰後の線量率は、I=S/4πx2で表される。ここで、Iは照度(線量率)(μW/cm)、Sは光源のエネルギー(μW)、xは距離(cm)である。この式から理解できるように、減衰を小さくするためには、できる限り希ガス放電灯の近くにらせん状流路2,3を設けることが好ましい。
【0053】
一般に、被処理水Wは紫外線ランプより低温の場合が多い。そのため、紫外線ランプの近くを被処理水Wが通るようにすると、紫外線ランプが被処理水Wにより冷却される。紫外線ランプが水銀放電灯からなる場合には、特に低温環境化において紫外線の出力が低くなる。一方、本発明に係る紫外線浄化処理装置100においては、紫外線ランプとして希ガス放電灯を使用している。したがって、希ガス放電灯は、水銀発光を用いた紫外線水銀ランプを用いた場合に比べて、特に低温環境化における紫外線の出力低下が大きくない。よって、水銀を用いた紫外線水銀ランプを用いる場合に比べて光源の近くまでらせん状流路2,3を設けることができる。それ故、紫外線の減衰をより小さくすることができ、また、小型化することもできる。
また、低圧水銀灯などの紫外線水銀ランプは、水銀を励起媒質として利用しているため、廃棄の際に環境への悪影響が懸念されるが、水銀を含有しない希ガス放電灯を用いることで環境ダメージを低減することもできる。
【0054】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。例えば、本実施の形態において直管状のガラス管11を用いたが、U字形状のガラス管としても良い。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る希ガス放電灯によれば、紫外線放射量の減衰が少なく、外部電極の固定を確実にした紫外線放射光源を提供することが可能となる。したがって、空気清浄機や表面洗浄装置などに限らず、紫外線光源を利用する各種製品に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 ジャケット
1a 内面
2 外周側らせん状流路
3 内周側らせん状流路
4 連結部
5 入水口
6 出水口
8 紫外線反射面
10,20 希ガス放電灯
11 ガラス管
12 外周面
13 希ガス
14,15 外部電極
16 内周面
17,27 熱収縮膜
18 光(紫外線)放射部
19 開口
50 光源設置部
51 上面
52 下面
53 非外部電極被覆面
54 直管部中心軸
55 気体層
100 紫外線浄化処理装置
A 周方向被覆部
900 殺菌装置
901 殺菌容器
902 低圧水銀灯
903 流路
W 被処理水
X (ジャケット)中心軸
CA 希ガス放電灯の紫外線放射部中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の光源設置部と、前記光源設置部の内周面に設けた内周側らせん状流路と、前記光源設置部の外周面に設けた外周側らせん状流路とを備えた紫外線浄化処理であって、
前記光源設置部には、直管状の紫外線放射部を備えた複数の希ガス放電灯が直管状の紫外線放射部が平行になるように配置され、
前記内周側らせん状流路および外周側らせん状流路は、紫外線透過材料により形成され、前記光源設置部の上面側または下面側に設けた連結部を介して繋がっており、
前記希ガス放電灯は、希ガスが密閉封入されたガラス管と、前記紫外線放射部のガラス管外周面に対向して設けた一対の帯状の外部電極とを有する紫外線発光の希ガス放電灯であり、非外部電極被覆面が前記内周側らせん状流路および外周側らせん状流路と対向していることを特徴とする紫外線浄化処理装置。
【請求項2】
前記外周側らせん状流路の外側には、金属反射壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線浄化処理装置。
【請求項3】
前記希ガス放電灯は、キセノンを主成分とするガスを20〜110Torr封入され、外部電極がアルミニウム電極であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線浄化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240033(P2012−240033A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116076(P2011−116076)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】