説明

紫外線照射ユニットおよび紫外線照射処理装置

【課題】 本発明は、速やかにエキシマランプの周囲に不活性ガスを満たすことのできる紫外線照射ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の紫外線照射ユニットは、放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成された複数のエキシマランプと、当該複数のエキシマランプを取り囲み鉛直方向における一方向が開口したランプハウスと、当該ランプハウスの内部に不活性ガスを供給するためのガス供給機構とを備える紫外線照射ユニットであって、前記ランプハウス内には、前記エキシマランプによって占有されている空間以外の空間に空間閉塞体が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射処理装置に関する。特に、半導体基板や液晶基板などの製造工程において半導体基板や液晶基板の洗浄等に利用されるエキシマランプを用いた紫外線照射ユニットおよび紫外線照射処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体基板や液晶基板などの製造工程においては、半導体基板であるシリコンウェハや液晶基板であるガラス基板の表面に付着した有機化合物等の汚れを除去する方法として、紫外線を用いたドライ洗浄方法が広く利用されている。特に、エキシマランプから放射される真空紫外光を用いたオゾンや活性酸素による洗浄方法においては、より効率良く短時間で洗浄する洗浄装置が種々提案されており、例えば、特許文献1が知られている。
【0003】
図13は、同文献に開示される従来の紫外線照射処理装置の構成を示す。従来の紫外線照射処理装置によれば、開放ハウジングAの天井部には、例えばステンレス板に直径2mmの孔を3mmピッチで多数形成して開口率40%となるようにした多孔のガス拡散板Bを開放ハウジングAの開放面と平行になるように配置してある。支持プレートCには、そのガス拡散板Bによって区画された空間に連なるガス供給口CAが形成されており、支持プレートC上には前記ガス供給口CAを上から覆うようにガス供給ダクトDが設けられている。このガス供給ダクトDには、図示しない窒素ガス供給源が接続され、清浄な窒素ガス(不活性ガス)をガス供給ダクトD及びガス供給口CAを通じてガス拡散板Bの上方の空間に供給するようになっており、これらの構成がガス供給手段Eを構成する。搬送チャンバーF内には、搬送機構Gを構成する複数本のコンベア軸HがワークWの搬送方向と直交する方向に回転自在に設けられており、それらの各コンベア軸Hに設けた複数個のコンベアローラに載せてワークWが搬送される。また、搬送チャンバーFの底部には、図示しない排気装置に連なる排気ダクトIが設けられており、搬送チャンバーF内に供給された窒素ガスと共に内部で発生したオゾンガス等を排出できるようにしている。
【0004】
上記構成の紫外線照射処理装置によれば、図13の矢印に示すように、ランプハウスA内に設けられているガス拡散板Bの微細孔から窒素ガスが下向きに吐出される。吐出された窒素ガスは、まずエキシマランプJの平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変え、エキシマランプの両側部から真っ直ぐワークW表面に向かって落ちるように流れる。このため、エキシマランプJの周囲からワークWの紫外線照射空間Xにかけて全体が窒素の流れで満たされ、酸素がほとんど存在しない不活性ガス雰囲気に維持される。従って、各エキシマランプJから放射された紫外光はほとんど酸素に吸収されることなく紫外線照射空間Xに到達し、ワークW表面の紫外線強度は従来に比べて飛躍的に高くなる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−197291号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の紫外線照射処理装置によると、ワークWの処理を速やかに行うためには、エキシマランプJの周囲から、エキシマランプJとワークWとの間の紫外線照射空間Xにかけてを速やかに窒素で満たすことが必要になる。しかしながら、従来の紫外線照射処理装置においては、図13に示すように、互いに隣接する複数のエキシマランプJが所定の間隔で離間して配置されているので、開放ハウジングAの内容積を大きくせざるを得ない。そのため、開放ハウジングAの内部に配置される複数のエキシマランプJの周囲からワークWの紫外線照射空間Xにかけて不活性ガスの流れで満たそうとすると、ガス供給ダクトD及びガス供給口CAを通じて多量の不活性ガスを供給することが必要になって、コストが高くなるという問題がある。さらには、多量の不活性ガスをガス拡散板Bの微細孔を通すため、エキシマランプJの周囲に不活性ガスを満たすのに長時間を要するために、ワークWの搬送速度を落とさざるを得なくなり、スループットが低下するという問題がある。
【0007】
以上から、本発明においては、速やかにエキシマランプの周囲に不活性ガスを満たすことのできる紫外線照射ユニットおよび紫外線照射ユニットを備えた紫外線照射処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外線照射ユニットは、放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成された複数のエキシマランプと、当該複数のエキシマランプを取り囲み鉛直方向における一方向が開口したランプハウスと、当該ランプハウスの内部に不活性ガスを供給するためのガス供給機構とを備える紫外線照射ユニットであって、前記ランプハウス内には、前記エキシマランプによって占有されている空間以外の空間に空間閉塞体が配置されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の紫外線照射ユニットは、互いに隣接する前記エキシマランプの間に前記空間閉塞体が配置され、前記空間閉塞体の基端部が前記ランプハウスの天井部に固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の紫外線照射ユニットは、近年では、大面積の被処理体に対して紫外線を照射することが要求されており、これに伴って、ランプハウス内に収容されるエキシマランプの発光長を長くすることが必要になっている。例えば、被処理体を搬送しながら被処理体に対して紫外線を照射する場合においては、エキシマランプの発光長が、被処理体の搬送方向に対し直交する方向の全長よりも長いことが必要とされる。
エキシマランプの発光長を長くするには、発光管を構成する合成石英ガラス管の全長を長くする必要がある。エキシマランプ1本の全長を長くすることは、以下に説明するように、合成石英ガラス管の製造上の問題、あるいはエキシマランプの設置上の問題があり困難である。
合成石英ガラス管の製造上の問題とは、全長の長い合成石英ガラス管を作ろうとすると、歪んだり曲がったりしてしまい、特性の安定したランプに加工することが難しくなる。また、合成石英ガラス管の全長が長くなるにしたがい、ハンドリング(作業性)が低下して、合成石英ガラス管に傷をつけたり破損させたりしやすくなり、高コストのランプになってしまう。
エキシマランプの設置上の問題とは、全長の長いエキシマランプをランプハウスに設置したときに、エキシマランプが撓んでエキシマランプの中心部がワークに近づくことにより、紫外線放射のムラが生じて基板の処理ムラを引き起こしたり、さらに大きく撓む場合には、エキシマランプがワークに接触してワーク表面をこすってワークに対して機械的なダメージを与えてしまう問題である。
そのため、例えば図4に示すように、その全長が被処理体の搬送方向に対し直交する方向の全長よりも短いエキシマランプ1A、1Bを用意し、各々のエキシマランプ1A、1Bの発光領域SA、SBが重なる領域Qを形成することにより、発光長を長くすることが一般的に行われている。ところが、図4のようにして比較的全長の短いエキシマランプを並べると、各々のエキシマランプ1A、1Bの中心軸方向に余分な空間が形成される。
従って、前記したエキシマランプ1A、1Bの中心軸方向に形成される余分な空間を少なくするため、本発明の紫外線照射ユニットは、前記空間閉塞体が前記エキシマランプの中心軸上に配置されており、互いに隣接する前記エキシマランプの各々の発光領域が、前記エキシマランプの中心軸に対し直交する仮想直線上において重なることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記紫外線照射ユニットは、前記エキシマランプを前記ランプハウス内において固定するための支持体を備え、当該支持体に対して前記エキシマランプと前記空間閉塞体の双方が固定されていることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、本発明の紫外線照射処理装置は、前記の紫外線照射ユニットを備えると共に、前記エキシマランプの中心軸に対し直交する方向に被処理体を搬送する搬送機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の紫外線照射ユニットによれば、ランプハウス内において、エキシマランプにより占有されている空間以外の空間に空間閉塞体が配置されているので、エキシマランプの周囲の空間の容積が少なくなる。従って、ランプハウス内に多量の不活性ガスを供給しなくてもエキシマランプの周囲を不活性ガス雰囲気とすることができ、不活性ガスを供給するのに必要なコストを低減することができる。さらには、前記したように、エキシマランプの周囲の空間の容積を小さくすることにより、エキシマランプの周囲を速やかに不活性ガス雰囲気にすることができるので、スループットを向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の紫外線照射ユニットにおいては、互いに隣接する前記エキシマランプの間に前記空間閉塞体が配置され、前記空間閉塞体の基端部が前記ランプハウスの天井部に固定されているために、空間閉塞体をランプハウスの内部において確実に固定することができる。
【0015】
さらに、本発明の紫外線照射ユニットにおいては、前記空間閉塞体が前記エキシマランプの中心軸上に配置されており、互いに隣接する前記エキシマランプの各々の発光領域が、前記エキシマランプの中心軸に対し直交する仮想直線上において重なるために、比較的全長の短いエキシマランプを使用する際にエキシマランプの中心軸方向に形成される空間が空間閉塞体によって閉塞され、ランプハウスの内部においてエキシマランプの周囲の空間の容積が小さくすることができると共に、大面積の被処理体に対して紫外線を確実に照射することができる。
【0016】
さらに、本発明の紫外線照射ユニットによれば、前記エキシマランプを前記ランプハウス内において固定するための支持体を備え、当該支持体に対して前記エキシマランプと前記空間閉塞体の双方が固定されているために、その搬送方向における幅が異なる複数種の被処理体に対して共通するランプハウスを使用して紫外線照射処理を行う場合において、不活性ガスを供給するのに必要なコストを低減することができると共に、エキシマランプの周囲を速やかに不活性ガス雰囲気にすることができる。
【0017】
さらに、本発明の紫外線照射処理装置によれば、エキシマランプの中心軸に対し直交する方向に被処理体を搬送する搬送機構を備えるので、被処理体の紫外線照射処理に必要なエキシマランプの本数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の紫外線照射ユニットの第1の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。図1は、本発明の紫外線照射ユニットの構成を示す断面図である。図2は、エキシマランプの構成を示す断面図である。図2(a)は、エキシマランプを中心軸方向に切断した断面図であり、図2(b)は、エキシマランプを中心軸に対し直交する方向に切断した断面図である。図3は、本発明の紫外線照射ユニットを鉛直方向から見たときの図を示す。図4は、エキシマランプ、空間閉塞体及び被処理体の配置を概念的に示す図である。図5は、空間閉塞体の構成を示す図である。
【0019】
紫外線照射ユニット100は、鉛直方向の下方側に開口51を有する金属製の筐体よりなるランプハウス5の内部に、複数のエキシマランプ1が互いに離間して平行に配置されると共に、ランプハウス5の天井部52には窒素ガスなどの不活性ガスを供給するためのガス供給管3が設けられ、互いに隣接するエキシマランプ1(1B、1D)とブロック状の空間閉塞体2(2A、2C)とが後述のようにして配置されている。各々のエキシマランプ1は、被処理体Wからの距離を均等にするために、各々の光出射面が同一平面上に配置されている。紫外線照射ユニット100の鉛直方向の下方には、液晶基板、半導体基板などの被処理体Wを図1中の矢印方向に搬送するための、複数のローラー61を備える搬送機構6が設けられている。なお、以下においては、紫外線照射ユニットと搬送機構の双方を備えるものを紫外線照射処理装置とする。
【0020】
エキシマランプ1は、図2に示すように、誘電体材料であるシリカガラスより構成され、四隅に丸みを有する扁平な角筒形状の放電容器10を有している。放電容器10の内部に形成された密閉空間Sには、例えばキセノンガスなどの希ガスや、希ガスに塩素ガスなどのハロゲンガスを混合したものが放電ガスとして充填されている。放電ガスの種類によって異なる波長のエキシマ光が発生する。放電ガスは、通常は、10〜100KPa程度の圧力で充填されている。
【0021】
放電容器10は、図2に示すように、紙面の上方側に位置する平坦壁11と紙面の下方側に位置する平坦壁12とが互いに離間して平行に伸びていると共に、紙面の左方に位置する平坦壁13と紙面の右方に位置する平坦壁14とが互いに離間して平行に伸びており、これら平坦壁11ないし14の各々の端部が湾曲部15によって連結されている。このような放電容器10は、紙面の上下に位置する平坦壁11、12の何れかが被処理体Wに向けて紫外線を出射するための光出射面を形成し、例えば放電容器10の下方に被処理体Wを配置する場合には平坦壁12が光出射面となる。
【0022】
平坦壁11、12には、それぞれ電極17、18が配置されている。電極17、18は、例えば金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの耐食性金属を平坦壁11、12上に印刷又は蒸着することによって、例えば厚みが0.1μm〜数十μmとなるように形成されており、平坦壁11、12の幅方向のほぼ全域を覆っている。下方に位置する電極18は、平坦壁12が光出射面となる場合には、上記の金属を格子状に印刷又は蒸着することにより光透過性を有するように形成される。発光領域SAは、図2(a)中に破線で示すように、放電容器10内の密閉空間Sのうち電極17、18で挟まれた領域である。
【0023】
図1、2に示すように、被処理体Wに対して遠い側の平坦壁11の内面11aに、例えばシリカ粒子とアルミナ粒子とよりなる紫外線反射膜が16が形成されている。図2に示す例では、紫外線反射膜16が平坦壁11の両端に連続する湾曲部15および平坦壁12ないし14の内面にまで伸びている。紫外線反射膜16は、シリカ粒子の含有割合が30〜99質量%であり、アルミナ粒子の含有割合が1〜70質量%であることが好ましい。
【0024】
図3を用いて、本発明の紫外線照射ユニットについて詳細に説明する。
ランプハウス5内には、複数(図3に示す例では4本)のエキシマランプ1A〜1Dと、エキシマランプ1A〜1Dと同数の空間閉塞体2A〜2Dとが、各々の空間閉塞体2A〜2Dが各々のエキシマランプ1A〜1Dの中心軸X上に位置すると共に、エキシマランプ1A〜1Dの中心軸Xに対し直交する方向において、エキシマランプ1A〜1Dと空間閉塞体2A〜2Dとが交互に並ぶよう具体的には次のようにして配置されている。
【0025】
エキシマランプ1Aと1Bは、ランプハウス5の側壁付近に位置するエキシマランプ1Aの一端が、当該エキシマランプ1Aに隣接するエキシマランプ1Bの他端を超えて伸びるが、エキシマランプ1Bの一端を超えることのないよう配置されている。エキシマランプ1Aの発光領域SAとエキシマランプ1Bの発光領域SBとは、図3中にQで示される領域で重なり合っている。エキシマランプ1Aの一端側には、当該エキシマランプ1Aによって占有されていない空間が形成されており、当該空間に空間閉塞体2Aが配置されている。
【0026】
エキシマランプ1Bと1Cは、エキシマランプ1Bの他端が、当該エキシマランプ1Bに隣接するエキシマランプ1Cの一端を超えて伸びるが、エキシマランプ1Cの他端を超えることのないよう配置されている。エキシマランプ1Bの発光領域SBとエキシマランプ1Cの発光領域SCとは、図3中にQで示される領域で重なり合っている。エキシマランプ1Bの他端側には、当該エキシマランプ1Bによって占有されていない空間が形成されており、当該空間に空間閉塞体2Bが配置されている。
【0027】
エキシマランプ1Cと1Dは、エキシマランプ1Cの一端が、当該エキシマランプ1Cに隣接するエキシマランプ1Dの他端を超えて伸びるが、エキシマランプ1Dの一端を超えることのないよう配置されている。エキシマランプ1Cの発光領域SCとエキシマランプ1Dの発光領域SDとは、図3中にQで示される領域で重なり合っている。エキシマランプ1Cの一端側には、当該エキシマランプ1Cによって占有されていない空間が形成されており、当該空間に空間閉塞体2Cが配置されている。ランプハウス5の側壁付近に位置するエキシマランプ1Dの他端側には、当該エキシマランプ1Dによって占有されていない空間が形成されており、当該空間に空間閉塞体2Dが配置されている。
【0028】
このように、紫外線照射ユニット100においては、図3、4に示すように、各々のエキシマランプ1A〜1Dは、各々の中心軸Xが被処理体Wの搬送方向に対し直交する方向に並ぶと共に、互いに隣接するエキシマランプ1A〜1Dにおける各々の発光領域SA〜SDが、エキシマランプ1A〜1Dのそれぞれの中心軸に対し直交する仮想直線K上において重なるように配置されている。こうすることにより、図4に示すように、各々のエキシマランプ1A〜1Dの全長と比較して被処理体Wの搬送方向に対し直交する方向の全長が長いものであったとしても、被処理体Wの搬送方向に対し直交する方向の全長にわたってエキシマランプ1A〜1Dから放射される紫外線が照射されることにより、被処理体Wの表面処理を確実に行うことができ、しかも被処理体Wの全長に対応して全長の長いエキシマランプを作製する必要がないので、エキシマランプの製造が簡単になるという利点がある。
【0029】
図1、3に示すように、各々のエキシマランプ1A〜1Dの鉛直方向の上方には、当該エキシマランプ1A〜1Dの周囲に不活性ガスを供給するためのガス供給機構3A〜3Hが配置されている。各々のガス供給機構3A〜3Hは、断面が角筒の管状部材からなり、不活性ガスを吹き出すための複数の開口31A〜31Hが互いに離間してガス供給機構3A〜3Hの長手方向に順次に並ぶよう形成され、各々の開口31A〜31Hから均等に不活性ガスが吹き出されるようになっている。不活性ガスは、ランプハウス5内に存在する酸素によってエキシマランプ1A〜1Dから放射される紫外光が吸収されることを回避するために供給されるもので、例えば窒素ガス等を用いることが好ましい。
【0030】
空間閉塞体2A〜2Dの構成について以下に説明する。便宜上、空間閉塞体2Aの構成のみについて説明するが、空間閉塞体2B〜2Dについても空間閉塞体2Aと同じ構成である。
図5に示すように、空間閉塞体2Aは、ランプハウス5の天井部52に取付けられた棒状体21Aと、当該棒状体の周囲を覆う有底筒状体22Aと、当該棒状体21Aと当該有底筒状体22Aとを固定する固定部材23Aとにより構成されている。棒状体21Aは、基端側がランプハウス5の天井部52に固定されており、被処理体W寄りに位置する先端側に有底の螺子孔211Aが形成されている。有底筒状体22Aは、天井部52に当接する基端側が開放されていると共に、底板部221Aの中央に固定部材23Aを挿通するための開口222Aが形成されている。固定部材23Aは、棒状体21Aの螺子孔211Aに螺合される棒状の螺子部231Aと、当該螺子部231Aに連続して鍔状に広がるフランジ部232Aとにより構成されている。
【0031】
空間閉塞体2A〜2Dは、次のようにして作製されている。有底筒状体22Aにより棒状体21Aの周囲を覆うと共に有底筒状体22Aの基端部をランプハウス5の内面に当接するよう配置して、有底筒状体22Aの開口222Aから固定部材23Aの螺子部231Aを挿通して、固定部材23Aのフランジ部232Aが有底筒状体22Aの先端部に当接するまで棒状体21Aの螺子孔211Aに対して螺子部231Aを螺合することによって形成されている。なお、空間閉塞体2Aの形状は、特に限定されないが、ランプハウス5内部においてエキシマランプによって占有されない領域の容積を少なくするために、直方体形状を有することが好ましい。また、有底筒状体および固定部材は、ランプハウス5内の空間に露出していることから、耐紫外光、耐オゾン性に優れる物質により構成されることが好ましいく、例えばSUS、アルミニウム板にアルマイト処理を施したもの、セラミックス等から構成されている。
【0032】
本発明の紫外線照射ユニットにおいては、各々の空間閉塞体2A〜2Dの先端面(有底筒状体の先端面)が、各々のエキシマランプ1A〜1Dの光出射面を含む平面よりも被処理体W寄りであって、かつ、ランプハウス5の鉛直方向の下方側に位置する先端面を含む平面よりも鉛直方向の上方寄りに配置されていることが好ましい。こうすることにより、ランプハウス5の内部空間において各々のエキシマランプ1A〜1Dによって占有される空間以外の空間の容積を小さくすることができ、しかも、各々の空間閉塞体2A〜2Dに対して被処理体Wが衝突する心配がない。
【0033】
以上のような本発明の紫外線照射ユニットによれば、図1、3に示すように、ランプハウス5の内部においてエキシマランプ1A〜1Dによって占有されている空間以外の空間に空間閉塞体が配置されているので、ランプハウス5内における余分な空間の容積が小さくなっている。従って、少量の不活性ガスを供給することによりランプハウス5の内部空間を不活性ガス雰囲気にすることができるため、不活性ガスの供給に要するコストを削減することができ、しかも、ランプハウス5の内部空間に対し速やかに不活性ガスを充満させることができる。
【0034】
特に、図1に示すように、搬送機構を備える紫外線照射処理装置においてスループットを向上させるためには、処理の完了した被処理体Wを搬送した後にランプハウス5内の雰囲気が大気雰囲気になることを考慮して、ランプハウス5の開口51の直下に被処理体が位置する際にランプハウス5内の雰囲気を速やかに不活性ガス雰囲気とすることが必要になる。従って、本発明のように、ランプハウス5の内部においてエキシマランプ1によって占有されている空間以外の空間を小さくすることにより、被処理体Wがランプハウス5の開口51の直下に位置する際に速やかにランプハウス5内に不活性ガスを充満させることができるため、比較例に係る紫外線照射ユニットに比べてスループットが格段に向上する。
【0035】
これに対し、図6に示すような比較例の紫外線照射ユニットにおいては、ランプハウス5の内部においてエキシマランプ1A〜1Dによって占有されている空間以外の空間TA〜TDに空間閉塞体が配置されていないため、ランプハウス5内の空間に多量の不活性ガスを供給しないとランプハウス5内の空間を不活性ガス雰囲気にすることができず、コストが割高になり、また、ランプハウス5内の空間に不活性ガスを充満させるのに長時間を要するのでスループットが低下する。
【0036】
〔第2の実施形態〕
以下に、本発明の紫外線照射ユニットの第2の実施形態について図7〜図8を用いて説明する。当該実施形態は、被処理体の搬送方向に対し直交する方向の全長が比較的短い場合に適用することが好ましい。図7は、本発明の紫外線照射ユニットの第2の実施形態の構成を示す断面図である。図8は、図7に示す紫外線照射ユニットを鉛直方向から見たときの図を示す。図7、8では、図1ないし図5と共通する箇所には図1ないし図5と同一の符号を付している。
【0037】
紫外線照射ユニット200は、鉛直方向の下方側に開口を有する金属製の筐体よりなるランプハウス5の内部に、複数のエキシマランプ1A〜1Cが互いに離間して平行に配置されると共に、ランプハウス5の天井部52には窒素ガスなどの不活性ガスを供給するためのガス供給管3A〜3Fが設けられ、互いに隣接するエキシマランプの間にブロック状の空間閉塞体2A、2Bが配置されている。各々のエキシマランプ1A〜1Cは、被処理体からの距離を均等にするために、各々の光出射面が同一平面上に配置されている。
【0038】
空間閉塞体2A〜2Bは、図5と同様にしてランプハウス5の天井部52に固定されており、各々の空間閉塞体2A〜2Bの先端面(有底筒状体の先端面)が、各々のエキシマランプ1A〜1Cの光出射面を含む平面よりも被処理体寄りであって、かつ、ランプハウス5の鉛直方向の下方側に位置する先端面を含む平面よりも鉛直方向の上方寄りに配置されていることが好ましい。
【0039】
図8に示すように、本発明の紫外線照射ユニットにおいては、複数のエキシマランプ1A〜1Cが、互いに等間隔で離間して各々の中心軸が平行に並ぶように配置されている。各々のエキシマランプ1A〜1Cの鉛直方向の上方には、当該エキシマランプ1A〜1Cの周囲に不活性ガスを供給するためのガス供給機構3A〜3Fが配置されている。
【0040】
空間閉塞体2A〜2Bは、図7、8に示すように、互いに隣接するエキシマランプ1A〜1Cの間に不可避的に存在する、エキシマランプ1A〜1Cによって占有された空間以外の空間に配置されている。このように、本発明の紫外線照射ユニットの第2の実施形態においては、各々のエキシマランプ1A〜1Cの中心軸に対し直交する方向において、各々のエキシマランプ1A〜1Cと各々の空間閉塞体2A〜2Bとが交互に並んで配置されている。
【0041】
すなわち、紫外線照射ユニット200においては、給電側電極からの絶縁距離を確保することができないので、各々のエキシマランプ1A〜1Cを極端に接近させることは不可能であり、互いに隣接する各々のエキシマランプ1A〜1Cの間には不可避的に空間が形成される。このように、互いに隣接するエキシマランプ1A〜1Cの間に不可避的に形成される空間に空間閉塞体2A〜2Bを配置することにより、前述した本発明の紫外線照射ユニットの第1の実施形態と同様に、ランプハウス5の内部においてエキシマランプ1A〜1Cによって占有される空間以外の空間の容積を小さくすることができる。従って、少量の不活性ガスを供給することによりランプハウス5の内部空間を不活性ガス雰囲気にすることができるため、不活性ガスの供給に要するコストを削減することができ、しかも、ランプハウス5の内部空間に対し速やかに不活性ガスを充満させることができる。
【0042】
〔第3の実施形態〕
以下に、本発明の紫外線照射ユニットの第3の実施形態について図9〜図11を用いて説明する。図9は、紫外線照射ユニットの断面図である。図10は、紫外線照射ユニットの一部を斜め上方から見たときの斜視図である。図9、10では、図1ないし図5と共通する箇所には図1ないし図5と同一の符号を付している。図11は、エキシマランプの支持体の構成について説明するための図である。図12は、間引き点灯について説明するための斜視図である。
【0043】
紫外線照射ユニット300においては、ランプハウス5の規格が統一されていることが多々あり、被処理体Wの大きさに係らず、複数種の被処理体Wを処理するにあたって、ランプハウス5を共通して用いることが一般に行われている。ランプハウス5の大きさ及び当該ランプハウス5内に収容されるエキシマランプ1の本数は、複数種の被処理体Wのうち搬送方向における幅が最大のものに対応して決められる。従って、被処理体Wの搬送方向の幅が当該方向におけるランプハウスの幅に比べて小さい場合においては、幾つかのエキシマランプ1を支持体7から取外して、所謂、間引き点灯を行っている。
【0044】
間引き点灯は、例えば図12に示すように、エキシマランプ1Cの右方側に位置する支持体7D,7Eにエキシマランプ1が支持されていない状態にすると共に、図10に示すように、各エキシマランプ1と概ね同じ体積を有する空間閉塞体20A、20Bを支持体7D,7Eに対してそれぞれ固定することによって行われる。本発明の紫外線照射ユニットの第3の実施形態は、このような間引き点灯を行う場合に特に有効である。
【0045】
図9、10に示す紫外線照射ユニットは、鉛直方向の下方側に開口51を有する金属製の筐体よりなるランプハウス5の内部に、複数のエキシマランプ1A〜1Cが互いに離間して平行になるよう支持体7A〜7Cにそれぞれ固定されていると共に、ランプハウス5の天井部52には窒素ガスなどの不活性ガスを供給するためのガス供給管3A〜3Fが設けられている。図10の紙面においてエキシマランプ1Cの右方側に、ブロック状の空間閉塞体20A、20Bが、エキシマランプ1A〜1Cと平行になるよう支持体7D,7Eにそれぞれ固定されている。各々のエキシマランプ1A〜1Cは、被処理体Wからの距離を均等にするために、各々の光出射面が同一平面上に配置されている。
【0046】
空間閉塞体20A、20Bは、エキシマランプ1と同じ体積を有し、例えば金属、木材などからなる棒状の部材である。エキシマランプ1A〜1Cと空間閉塞体20A,20Bとは、図10に示すようにそれぞれ別々のゾーンに配置されている必要はない。例えば、エキシマランプ1A〜1Cと空間閉塞体20A,20Bが、図10の紙面において左側から、エキシマランプ1A、空間閉塞体20A、エキシマランプ1B、空間閉塞体20B、エキシマランプ1Cの順に配置されていても良い。
【0047】
図11に示すように、支持体7Aは、エキシマランプ1Aの一端部10Aに取付けられる第1の保持部材71Aと、エキシマランプ1Aの他端部10Bに取付けられる第2の保持部材72Aとを備えている。第1の保持部材71Aは、エキシマランプ1Aの管軸と平行に伸びる固定部711Aと、固定部711Aに連続して固定部711Aに対し直交する方向に伸びる突出部712Aとを備えることで断面がL字状に形成され、固定部711Aの先端面713Aに、エキシマランプ1Aの一端部を挿入するための有底孔714Aが形成されている。
【0048】
第2の保持部材72Aは、断面がコの字になるよう柱部722A、723A、724Aが連続することによって形成され、エキシマランプ1Aの他端部を囲むよう配置される枠体部721Aと、柱部724Aを中心として回転自在となるよう枠体部721Aに連結された押圧部725Aとによって構成されている。押圧部725Aは、柱部724Aの端部に連結された基体部726Aと、当該基体部726Aの垂直方向に連続して伸びる突出部727Aとによって形成され、断面がC字状に形成された板バネ728Aが突出部727Aに固定されている。
【0049】
エキシマランプ1Aは、上記の支持体7に対して、次のようにして固定される。エキシマランプ1Aの一端部10Aを、第1の保持部材71Aに設けられた有底孔714Aに挿入した後、枠体部721Aによってエキシマランプ1Aの他端部10Bの周囲を囲むように第2の保持部材72Aを配置すると共に、押圧部725Aを柱部724Aの周方向に回転させて板バネ728Aによってエキシマランプ1Aの他端部10Bの端面を押圧する。押圧部725Aは、柱部722Aの端部に形成された突起部(不図示)を基体部726Aに設けられた切欠き部(不図示)に係合することにより、周方向への回転が規制され、枠体部721Aに固定される。エキシマランプ1Aは、板バネ728Aによって発生する反発力によって有底孔714Aの底部に押し付けられ、さらに、有底孔714A及び枠体部721Aの幅がエキシマランプ1Aの幅に概ね等しくなっていることにより、管軸方向および管軸直交方向に移動することが確実に規制される。
なお、支持体7B〜7Eは、上記した支持体7Aと同一の構成を有しており、上記したようにして、それぞれエキシマランプ1B、1C、空間閉塞体20A、20Bが固定されている。
【0050】
紫外線照射ユニットにおいては、支持体7A〜7Eの全てにそれぞれエキシマランプ1A〜1Eが固定された状態で被処理体Wに対して紫外線を照射して被処理体Wの処理を実施する場合と、支持体7A〜7Eのうちの何れかからエキシマランプ1A〜1Eの何れかを取外した状態で被処理体Wに対して紫外線を照射して被処理体Wの処理を実施する場合がある。後者の場合に、本発明の紫外線照射ユニット300によれば、図10に示すように、エキシマランプ1が設置されていない支持体7D,7Eに対し、空間閉塞体20A、20Bが固定されているので、ランプハウス5の内部における余計な空間を低減することができる。従って、紫外線照射ユニット300によると、前述した第1の実施形態の紫外線照射ユニット100、200と同様に、少量の不活性ガスでランプハウス5の内部空間を不活性ガス雰囲気とすることができるため、不活性ガスの供給に要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の紫外線照射ユニットの構成を示す断面図である。
【図2】エキシマランプの構成を示す断面図である。
【図3】紫外線照射ユニットを鉛直方向から見たときの図を示す。
【図4】エキシマランプ、空間閉塞体及び被処理体の配置を概念的に示す図である。
【図5】空間閉塞体の構成を示す図である。
【図6】比較例の紫外線照射ユニットを概念的に示す図である。
【図7】本発明の紫外線照射ユニットに係る第2の実施形態の構成を示す断面図である。
【図8】図7に示す紫外線照射ユニットを鉛直方向から見たときの図を示す。
【図9】本発明の紫外線照射ユニットに係る第3の実施形態の構成を示す断面図である。
【図10】紫外線照射ユニットの一部を斜め上方から見たときの斜視図である。
【図11】エキシマランプの支持体の構成について説明するための図である。
【図12】間引き点灯について説明するための斜視図である。
【図13】従来の紫外線照射処理装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 エキシマランプ
2 空間閉塞体
3 ガス供給機構
5 ランプハウス
6 搬送機構
7 支持体
20 空間閉塞体
W 被処理体
K 仮想線
X エキシマランプの中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成された複数のエキシマランプと、当該複数のエキシマランプを取り囲み鉛直方向における一方向が開口したランプハウスと、当該ランプハウスの内部に不活性ガスを供給するためのガス供給機構とを備える紫外線照射ユニットであって、
前記ランプハウス内には、前記エキシマランプによって占有されている空間以外の空間に空間閉塞体が配置されていることを特徴とする紫外線照射ユニット。
【請求項2】
前記紫外線照射ユニットは、互いに隣接する前記エキシマランプの間に前記空間閉塞体が配置され、前記空間閉塞体の基端部が前記ランプハウスの天井部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項3】
前記紫外線照射ユニットは、前記空間閉塞体が前記エキシマランプの中心軸上に配置されており、互いに隣接する前記エキシマランプの各々の発光領域が、前記エキシマランプの中心軸に対し直交する仮想直線上において重なることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項4】
前記紫外線照射ユニットは、前記エキシマランプを前記ランプハウス内において固定するための支持体を備え、当該支持体に対して前記エキシマランプと前記空間閉塞体の双方が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうち何れかに記載の紫外線照射ユニットを備えると共に、前記エキシマランプの中心軸に対し直交する方向に被処理体を搬送する搬送機構を備えることを特徴とする紫外線照射処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−212429(P2009−212429A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56155(P2008−56155)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】