説明

紫外線照射ユニットおよび紫外線硬化方法

【課題】UV硬化に際して酸素による硬化阻害を抑制するため、不活性ガスを光源を経由させて硬化部に直接吹き付けることにより、高精度・低濃度の濃度管理を可能とし、かつ光源を効率的に冷却し得る紫外線照射ユニットを提供する。
【解決手段】不活性ガス供給口9および不活性ガス排出口10および不活性ガスを充填する空間部11を有する筐体8を備え、紫外線(UV)を照射する紫外線光源1が回路基板4に固定され、不活性ガス排出口の近傍に配置され、紫外線光源に電力を供給するように構成された電源を備えた、紫外線照射ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射ユニットおよびそれを用いる紫外線硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着剤、被覆材等の有機材料の硬化のために紫外線(UV)硬化を用いる方法が、熱硬化を用いる方法に比べて硬化時間が短い等の利点から広く行われている。このUV硬化においては、酸素による材料の硬化阻害を抑制したいという要望がある。このため、酸素濃度を減少させる目的で、窒素等の不活性ガスを充填する装置が既に開発されている。
【0003】
特開2004−67465号公報(特許文献1)および特開2004−67466号公報(特許文献2)では、窒素ガスを供給した無酸素室から圧力差により窒素ガスを硬化室に供給する方法が開示されている。すなわち、紫外線硬化樹脂を充填したダイスに光ファイバを挿通させて紫外線樹脂を塗布し、続いて光ファイバを硬化炉に挿通させ紫外線を照射して塗布された該紫外線硬化樹脂を硬化させる方法であって、ダイス出口から硬化炉出口までの間、光ファイバの周囲に実質的に無酸素状態のガスを供給するものである。ダイスで紫外線硬化樹脂を塗布された光ファイバは、UV硬化炉内の石英の保護管内に導かれ、ダイスの下面には筒が連結していて、筒の下端はUV硬化炉の上部無酸素室に連結されている。上部無酸素室には実質的に無酸素状態の窒素ガスが供給され、その窒素ガスが筒内及び保護管内にも供給され、紫外線照射による樹脂硬化が終わるまで光ファイバ周囲の雰囲気を酸素濃度1000ppm以下の状態に保つことが記載されている。
【0004】
また、特開2005−342549号公報(特許文献3)には、紫外線(UV)硬化型塗料が付着した高分子材料よりなる成形品、および/またはUVランプを動かすことにより、UVランプから成形品のUV硬化型塗料に満遍なくUV照射するUV硬化方法が記載され、そこでは硬化槽内を不活性ガスでパージしている。
【0005】
しかし、これらの技術は不活性ガスを室内に充填する方法であり、UV硬化部に対する効率よい酸素濃度抑制は困難である。
【0006】
一方、UV硬化の場合、紫外線の光源である紫外線ランプまたは発光ダイオード(LED)において、光源が発熱するために効率よい冷却方法が必要となる。現在、この冷却方式として、空冷などにより冷却を行っているのが一般的であり、空気は冷却にのみ使用されている。たとえば、図3は、従来のLED光源の冷却方式の代表的な構造の一例を示す模式図である。
【0007】
図3において、1はUV光源であるLEDチップであり、固定部材2によって電気的な信号を制御する回路基板4に固定され、ワイヤボンディング3によりLEDチップの電極と回路基板4の回路が電気的に接続される。5は封止樹脂であり、LEDチップの上部に充填され、UV光を透過させる。6は基板、7は絶縁部材、8は筐体である。14は放熱部材であり、回路基板4と基板6を固定させ、かつ回路基板4の熱を基板6に伝える。15は筐体8内に設けられたフィンであり、伝熱により温度が高くなった基板6を冷却させる。図3は空冷式であるが、水冷によって冷却する水冷式の構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−67465号公報
【特許文献2】特開2004−67466号公報
【特許文献3】特開2005−342549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、UV硬化部に効率よく不活性ガスを供給するため、光源に不活性ガスを通過させることが可能ということに着目し、UV光源を経由し、UV硬化部に直接不活性ガスを吹付けることで、酸素濃度を精度良く、低濃度に抑制するものである。また、UV光源に不活性ガス流体を経由させるため、UV光源の効率的な冷却も併せて行うことができる。また、UVの照射口と冷却気体の吹き出し口が同じ位置にあるため、ピンポイントで細かい部位を狙っての照射と酸素濃度管理が可能となる。さらに、不活性ガス流体として液体窒素を用いると、UV光源のさらなる強力な冷却を行うことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の発明を提供する。
(1)不活性ガス供給口および不活性ガス排出口を有する筐体を備え、紫外線(UV)を照射する紫外線光源が、筐体内または筐体に接続して不活性ガス排出口の近傍に配置され、紫外線光源に電力を供給するように構成された電源を備えた、紫外線照射ユニット。
(2)不活性ガス供給口から導入される不活性ガスを充填するための空間部を筐体内に有する上記(1)に記載の紫外線照射ユニット。
(3)紫外線光源がLEDである上記(1)または(2)に記載の紫外線照射ユニット。
(4)紫外線光源がキセノンランプ、水銀キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、重水素ランプ、またはエキシマランプである、ランプ式光源である上記(1)または(2)に記載の紫外線照射ユニット。
(5)紫外線光源が支持体に固定されており、支持体を介して電源から電気が紫外線光源に供給される上記(1)〜(4)のいずれかに記載の紫外線照射ユニット。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の紫外線照射ユニットを用いて、不活性ガス排出口により不活性ガスを通過させて紫外線光源を冷却するとともに、紫外線硬化性材料からなる紫外線硬化部表面に吹き付けることにより紫外線硬化性材料を紫外線硬化させることを特徴とする紫外線硬化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、UV硬化に際して酸素による硬化阻害を抑制するために、不活性ガスを光源を経由させて硬化部に直接吹き付けることが可能になり、高精度・低濃度な濃度管理を可能とし、かつUV光源を効率的に冷却させることできる。また、UVの照射口と冷却気体の吹き出し口が同じ位置にあるため、ピンポイントで細かい部位を狙っての照射と酸素濃度管理が可能となる。さらに、不活性ガスとして液体窒素を用いて、さらなる強い冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の紫外線照射ユニットの一例を示す模式図。
【図2】本発明の紫外線照射ユニットを用いるUV硬化方法の一例を示す模式図。
【図3】従来のLED光源の空冷方式の代表的な構造の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の紫外線照射ユニットは、不活性ガス供給口および不活性ガス排出口を有する筐体を備え、紫外線(UV)を照射する紫外線光源が、筐体内または筐体に接続して不活性ガス排出口の近傍に配置され、紫外線光源に電力を供給するように構成された電源を備えてなる。
【0014】
UVを照射するUV光源としては、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、重水素ランプ、エキシマランプ等のランプ式光源、またはLEDが挙げられる。長寿命、少ない発熱、照射量の制御の容易さ、等の点からは、LEDが特に好適である。UV光源は、筐体内または筐体に接続して不活性ガス排出口の近傍に配置される。UV光源は支持体に固定されており、支持体を介して電源からの電気がUV光源に供給される。いわゆる回路基板を支持体とすることができる。
【0015】
UV光源に電力を供給するように構成された電源は、常法により構成された電気的な駆動回路に接続することにより形成され得る。たとえば、LEDの場合には、LEDチップの電極とワイヤボンディングにより電気的に駆動回路に接続される。
【0016】
図1は、本発明の紫外線照射ユニットの一例を示す模式図である。図1において、1はUV光源であるLEDチップであり、固定部材2によって電気的な信号を制御する回路基板4に固定され、ワイヤボンディング3によりLEDチップの電極と回路基板4の回路が電気的に接続される。回路基板4は支持体の役割も果たす。固定部材2には、通常はシリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの接着剤樹脂が用いられるのが好適である。5は封止樹脂であり、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の透光性樹脂が用いられ、LEDチップの上部に充填され、UV光を透過させる。6は基板、7は絶縁部材、8は筐体であり、筐体8は上方に不活性ガス供給口9を有し、下方に不活性ガス排出口10を有する。LEDチップ1は、筐体8に接続して不活性ガス排出口10の近傍に配置されている。
【0017】
筐体8内には、不活性ガス供給口9から導入される不活性ガスを充填するための空間部11が設けられている。空間部11には、伝熱により温度が高くなった基板6を冷却させるフィン(図示せず)を設けることもできる。
本発明の紫外線照射ユニットを用いて、不活性ガス排出口により不活性ガスを通過させてUV光源を冷却するとともに、UV硬化性材料からなるUV硬化部表面に吹き付けることによりUV硬化性材料を紫外線硬化させることができる。UV硬化性材料としては、接着剤、被覆材等の未硬化のUV硬化性樹脂、たとえばアクリル、ウレタン、エポキシ、シリコーンなど有機材料が挙げられる。
【0018】
たとえば、図1において、不活性ガス供給口9から不活性ガスを導入してLEDチップ1を冷却しながら、不活性ガス排出口10から直接UV硬化部(図示せず)に不活性ガスを吹き付けることでUV硬化部表面の酸素濃度を低下させ、酸素による表面硬化阻害を効率的に抑制することができる。
【0019】
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等があげられるが、さらに、窒素として液体窒素を使用すると、さらにLEDチップを効果的に冷却することができる。不活性ガスの流量としては、0.01〜50L/s程度が好適であり、さらに好ましくは0.1〜5L/sでUV硬化部表面のタック性が抑えられる。
【0020】
図2は、本発明の紫外線照射ユニットを用いるUV硬化方法の一例を示す模式図である。
【0021】
1はUV光源であるLEDチップであり、固定部材(図示せず)によって電気的な信号を制御する回路基板4に固定され、ワイヤボンディング(図示せず)によりLEDチップ1の電極と回路基板4の回路が電気的に接続される。回路基板4は支持体の役割も果たし、LED光源の固定と電気供給の役割を担う。8は筐体であり、筐体8は上方に不活性ガス供給口9を有し、下方に不活性ガス排出口10を有する。LEDチップ1は、筐体8内に不活性ガス排出口10の近傍に配置されている。筐体8内には、不活性ガス供給口9から導入される不活性ガスを充填するための空間部11が設けられている。
12は紫外線照射対象の下地であり、通常プリント基板等が置かれ、この上部にUV硬化性材料13が塗布される。外部コントローラからの電気は回路基板4を介してLEDチップ1に供給され、UVを発光する。不活性ガス供給口9から不活性ガスが紫外線照射ユニット内の空間部11に供給され、不活性ガス排出口10を通過してUV硬化性材料13の表面に吹き付けられる。
【0022】
不活性ガスは、不活性ガス排出口10を通過するとき、発熱しているLEDチップ1を冷却する。不活性ガス排出口10から液体窒素を入れることにより、さらに強力なLEDチップ1の冷却を行うことができる。また、外部に窒素供給口を設置することで、さらにUV硬化性材料表面の酸素濃度を低下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、UV硬化に際して酸素による硬化阻害を抑制するため、不活性ガスを光源を経由させて硬化部に直接吹き付けることにより、高精度・低濃度の濃度管理を可能とし、かつ光源を効率的に冷却し得る紫外線照射ユニットを提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス供給口および不活性ガス排出口を有する筐体を備え、紫外線(UV)を照射する紫外線光源が筐体内の不活性ガス排出口の近傍に配置され、紫外線光源に電力を供給するように構成された電源を備えた、紫外線照射ユニット。
【請求項2】
不活性ガス供給口から導入される不活性ガスを充填するための空間部を筐体内に有する請求項1に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項3】
紫外線光源がLEDである請求項1または2に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項4】
紫外線光源がキセノンランプ、水銀キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、重水素ランプ、またはエキシマランプである、ランプ式光源である請求項1または2に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項5】
紫外線光源が支持体に固定されており、支持体を介して電源から電気が紫外線光源に供給される請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線照射ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線照射ユニットを用いて、不活性ガス排出口により不活性ガスを通過させて紫外線光源を冷却するとともに、紫外線硬化性材料からなる紫外線硬化部表面に吹き付けることにより紫外線硬化性材料を紫外線硬化させることを特徴とする紫外線硬化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39499(P2013−39499A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175985(P2011−175985)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】