説明

紫外線照射処理装置及びLow−k膜の紫外線キュア方法

【課題】基板上に形成されたLow−k膜から紫外線照射処理によって脱ガスしたガス成分の排気時間を短縮し、異常放電をなくすことができる真空排気系を備えた紫外線照射処理装置及びLow−k膜の紫外線キュア方法を提供する。
【解決手段】基板加熱機構24を備えた基板支持ステージが配置されている紫外線照射処理室2の上部に、紫外線光源21を組み込んだ紫外線照射装置22と紫外線透過窓23が配置され、前記処理室2の内部を排気するための真空排気系であって、大気から低真空領域に排気するための低真空用ポンプ26aと、低真空領域から中・高真空領域へ排気するための中・高真空用ポンプ26bと、を組み合わせた真空排気系26が接続されてなる紫外線照射処理装置を用いて、基板S上に形成されたLow−k膜を熱キュア処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射処理装置及びLow−k膜の紫外線キュア方法に関し、特に半導体素子製造装置において紫外線照射により基板表面上のLow−k膜を熱キュア処理するための紫外線照射処理装置及び基板表面に形成されたLow−k膜の紫外線キュア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線照射処理室を備えた半導体素子製造装置が知られている。この場合、紫外線照射処理室における排気系としては、コスト面などに鑑みて、低真空用の排気ポンプとしてのドライポンプが使用されている。しかしながら、この低真空用の排気ポンプでは、基板に対して紫外線処理する際に、基板表面上に形成された膜からの脱ガス成分(例えば、オリゴマー等の有機物)の排気に時間がかる。
【0003】
また、上記したような脱ガス成分中に含まれている有機物が、紫外線照射処理室の内壁やこの処理室内に配置されている治具や紫外線透過用窓に付着することにより、所定の紫外線キュア性能が発揮できなくなる。これは、大気中に紫外線ランプを設置して、紫外線キュアを行う場合などにおいて、紫外線透過用窓として通常使用されている合成石英窓の場合、前記有機物がこの石英窓に付着して、石英窓の透過率が劣化し、紫外線照射処理室内へ所定の紫外線量を照射できなくなるためである。これに対し、例えば、オゾンクリーニング又はクリーニングガスのラジカル種を用いて紫外線照射処理室内をクリーニングすることが知られているが、このクリーニング後において、通常使用されている低真空用のポンプでは紫外線照射処理室内の排気に時間がかかる。排気も含めた紫外線照射処理時間を短時間で行うことが求められているが、排気時間が長いということは、紫外線照射処理装置を用いる場合の短時間処理のための障害となりうる。
【0004】
上記したクリーニングガスのラジカル種を用いて紫外線照射処理室の光透過窓をクリーニングする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献には、従来技術としてオゾンクリーニングについても記載されている。しかしながら、特許文献1には紫外線照射処理室内の排気については、どのような真空ポンプを用いるかについて、また、排気時間を短くするためにどのような手段を採用しているかについては、記載も示唆もない。
【0005】
従来の紫外線照射処理室の一例を示す図1を参照して、紫外線照射処理室について説明する。この紫外線照射処理室1は、その上部に、紫外線光源11を組み込んだ紫外線照射装置12を備え、この紫外線照射装置の下に紫外線透過用の合成石英窓13が配置され、紫外線照射処理室1の下部には加熱機構14を備えた基板Sの支持ステージが配置されている。また、紫外線照射処理室1の側壁には、マスフローコントローラー(MFC)15a及び15bを備えたガス導入系が接続されており、この紫外線照射処理室1には、その内部を排気するための真空排気系16接続されている。このガス導入系から、Ar、N、He、O等のガスを紫外線照射処理室1内へ供給して、処理室のパージやクリーニング、基板のキュア、処理室及び基板の冷却や加熱アシストを行う。この真空排気系16は、ドライポンプ等の低真空用ポンプ16aがバルブ16bを介して紫外線照射処理室1へ接続されるように構成されている。支持ステージ上に載置される基板Sに対して、紫外線照射装置12を駆動させ、合成石英窓13を通して紫外線を照射し、基板S表面に形成されている膜を処理する。この処理により基板表面上に形成されている膜から生じる脱ガス成分中に含まれている分子量1000以上のオリゴマーからなる有機物が、紫外線照射処理室の内壁や処理室内に配置されている治具に付着するとパーティクルの原因となり、また、合成石英窓等に付着すると紫外線照射効率が低下する原因となる。この場合、ポロジェン等の低分子量の物質は排気と共に除去され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−075179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、紫外線照射処理により基板表面のLow−k膜から発生する分子量1000以上のオリゴマーのような有機物からなる脱ガス成分を短時間で排気することができる真空排気系を備えた紫外線照射処理装置及びLow−k膜の紫外線キュア方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外線照射処理装置は、真空排気系を備えた、紫外線照射により基板上に形成されたLow−k膜を処理する装置において、紫外線照射処理室の上部に、紫外線光源を組み込んだ紫外線照射装置を備え、該紫外線照射装置の下に紫外線透過窓が配置され、該紫外線照射処理室の下部に加熱機構を備えた基板支持ステージが配置されており、また、該紫外線照射処理室には、その内部を排気するための真空排気系であって、大気から低真空にするための低真空用ポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するための中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系が接続されていることを特徴とする。
【0009】
前記紫外線照射処理装置において、低真空用ポンプと中・高真空用ポンプとを、基板処理プロセスに応じて切り替えるための切り替え機構を備えていることを特徴とする。
【0010】
前記紫外線照射処理装置において、低真空用ポンプ及び中・高真空用ポンプと紫外線照射処理室とを接続する真空排気系の径路の途中で、かつ低真空用ポンプ及び中・高真空用ポンプのそれぞれの下流側に圧力制御機構が介設されていることを特徴とする。
【0011】
前記紫外線照射理装置において、低真空用ポンプがドライポンプであり、中・高真空用ポンプがターボ分子ポンプであることを特徴とする。
【0012】
前記紫外線照射処理装置において、圧力制御機構が、コンダクタンス可変バルブであることを特徴とする。
【0013】
本発明のLow−k膜の紫外線キュア方法は、Low−k材料からなる膜を表面に有する基板を紫外線照射処理室内に載置し、この基板に対して紫外線照射装置を用いて紫外線を照射して該Low−k膜を紫外線キュアする際に、該紫外線照射処理室に接続されている大気から低真空にするための低真空用ポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するための中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系を用いて、該紫外線照射処理室内を1E−5〜1000Paの圧力に設定し、350〜440℃の温度で熱キュア処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大気から低真空にするための低真空用ポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するための中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系を用いることにより、基板表面のLow−k膜からの分子量1000以上のオリゴマー等からなる脱ガス成分の排気が短時間で行え、紫外線照射処理室の内壁やこの処理室内に配置されている治具に付着することもないので、パーティクル発生もなく、また、石英窓等に付着することもないので紫外線照射効率が低下することがないという効果を奏する。勿論、ポロジェン等の低分子量の物質も短時間で排気され得る。
【0015】
また、本発明によれば、紫外線照射処理室内での異常放電もなくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術による紫外線照射処理室を模式的に示す構成図。
【図2】本発明における紫外線照射処理室の一構成例を模式的に示す構成図。
【図3】排気系の違い(ドライポンプ(DRP)単独とドライポンプ(DRP)+ターボ分子ポンプ(TMP))による、得られた膜の誘電率(k値)を比較して示すグラフ。
【図4】排気系の違い(DRP単独とDRP+TMP)による、得られた膜の強度(ヤング率:GPa)を比較して示すグラフ。
【図5】排気系の違い(DRP単独とDRP+TMP)による、得られた膜の誘電率(k値)とヤング率との関係を比較して示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る紫外線照射処理装置の実施の形態によれば、紫外線照射処理装置は、真空排気系を備えた、紫外線照射により基板上に形成されたLow−k膜を処理する装置において、紫外線照射処理室の上部に、紫外線光源を組み込んだ紫外線照射装置を備え、紫外線照射装置の下に石英などからなる紫外線透過窓が配置され、紫外線照射処理室の下部に加熱機構を備えた基板支持ステージが配置されており、紫外線照射処理室の側壁には、ガス導入系が接続されており、また、紫外線照射処理室には、その内部を排気するための真空排気系であって、大気から低真空にするためのドライポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するためのターボ分子ポンプとを組み合わせた真空排気系が接続されており、ドライポンプ及びターボ分子ポンプと紫外線照射処理室とを接続する真空排気系の径路の途中で、かつドライポンプ及びターボ分子ポンプのそれぞれの上流側に、コンダクタンス可変バルブのような圧力制御機構が介設されており、そしてドライポンプとターボ分子ポンプとを基板処理プロセスに応じて切り替えが出来るように切り替え機構を備えていても良い。
【0018】
基板上に形成されたLow−k膜には様々な種類があり、その膜からの脱ガス量も未知のものもある。その場合、中真空用のポンプ及び高真空用のポンプでは処理が不可能になる場合もあるが、その際には、切り替え機構により補助ポンプとして使用している低真空用ポンプ等をプロセスに応じて使用すればよい。例えば、UV照射や加熱により基板から多量のガスが発生し、処理室内が一時的に圧力上昇するなどの際に圧力を下降せしめる場合や、低真空用ポンプで放出されたガスを排気した後、中高真空用のポンプに切り替え、残留ガスを排気する場合などが考えられる。
【0019】
上記したような切り替え機構を備えることにより、どのようなLow−k膜に対しても対応することができる。本発明におけるLow−k材料としては、特に制限されず、既知の紫外線照射可能なLow−k材料であれば、同様に使用でき、脱ガス成分も同様に排気可能である。
【0020】
本発明に係るLow−k膜の紫外線キュア方法の実施の形態によれば、この方法は、Low−k材料からなる膜を表面に有する基板を紫外線照射処理室内に載置し、この基板に対して紫外線照射装置を用いて紫外線を照射してLow−k膜を紫外線キュアする際に、紫外線照射処理室に接続されている大気から低真空にするためのドライポンプと真空領域から中・高真空へ排気するためのターボ分子ポンプとからなる真空排気系を用いて、紫外線照射処理室内を1E−5〜1Paの圧力に設定し、350〜440℃の温度で熱キュア処理し、さらにLow−k膜の疎水化を図るために疎水化処理を行うことからなる。
【0021】
上記圧力が1Paより高いと、オリゴマー等からなる脱ガス成分の排気が十分に行えず、また、1E−5より低くするためには、一般的に超高真空の領域となり汎用性の高いターボ分子ポンプではこの真空度を得ることが出来なくなり、コストが上がってしまう。温度が350℃未満であると、キュア効果が不十分となり性能が低下し、また、440℃を超えると、キュア効果が高く、膜にダメージを与える可能性がある。
【0022】
本発明に係る紫外線照射処理装置について、基板表面に形成されたLow−k材料からなる膜を紫外線照射により処理する装置の例を示す図2に示す紫外線照射処理室を参照して、以下説明する。
【0023】
この処理装置を構成する紫外線照射処理室2は、その上部に、紫外線光源21を組み込んだ紫外線照射装置22を備え、この紫外線照射装置の下に例えば合成石英窓からなる石英窓23が配置され、紫外線照射処理室2の下部には加熱機構24を備えた基板Sの支持ステージが配置されている。また、紫外線照射処理室2の側壁には、マスフローコントローラー(MFC)25a及び25bを備えたガス導入系が接続されており、Ar、N、He、O等のガスを紫外線照射処理室2内へ供給して、処理室のパージやクリーニング、基板のキュア、処理室及び基板の冷却や加熱アシストを実施することができるようになっている。また、この紫外線照射処理室2には、その内部を排気するための真空排気系26が接続されている。この真空排気系26は、ドライポンプ等の低真空用ポンプ26aからなる真空排気系の径路26−1とターボ分子ポンプ等の中・高真空用ポンプ26bからなる真空排気系の径路26−1とに分岐して構成されている。ここで、本発明では、低真空とは大気圧〜1Paを意味し、中・高真空とは、1〜1E−5Paを意味するものとする。すなわち、1Paをしきい値として高い方を低真空とし、低い方を中・高真空としたが、低真空側のポンプによっては、0.2Pa程度まで真空に引けるものがあるので、その場合にはこの値をしきい値としても良い。真空排気系の径路26−1には、低真空用ポンプ26aから上流側に向かって、コンダクタンス可変バルブ26c(例えば、バタフライバルブ等)及びバルブ26dがこの順で介設されており、紫外線照射処理室2へと接続されている。また、真空排気系の径路26−2には、中・高真空用ポンプ26bから上流側に向かって、圧力制御機構としてのコンダクタンス可変バルブ26e(例えば、バタフライバルブ等)及びバルブ26fがこの順で介設されており、紫外線照射処理室2へと接続されている。低真空用ポンプ26aはバルブ26gを介して中・高真空用ポンプ26bに接続されている。このように接続することにより、バルブ(例えば、バルブ26f及び26g)の開閉により、基板処理プロセスに応じて真空排気系を切り替え、低真空用ポンプ26aと中・高真空用ポンプ26bとを組み合わせた真空排気系を使用することもでき、また、低真空用ポンプ単独の真空排気系を使用することもできる。
【0024】
本発明によれば、ドライポンプなどの低真空用ポンプを高真空用ポンプの補助ポンプとして使用することにより、紫外線照射処理室2内の排気速度を向上させ、この処理室2内の真空度を速やかに向上させることができる。すなわち、ターボ分子ポンプ等の高真空用ポンプを搭載することにより、処理室2内の真空度の安定化、制御を行える排気システムを提供できる。Low−k膜等からの脱ガスにより、紫外線照射処理室内の圧力は高い状態になるが、高真空排気により速やかに真空度が回復し、直ちに、次の紫外線キュア処理が出来る状態になる。
【0025】
上記のように構成された紫外線照射処理室を用いることにより、紫外線照射処理時に、基板表面に形成されているLow−k膜からの脱ガス成分を短時間に排気できる。この脱ガス成分は膜の種類により異なるが、通常は、分子量1000以上のポリマーである(例えば、材料に含まれるブロックポリマー由来のポリマー)。このような脱ガス成分は、ドライポンプ単独の真空排気系を用いても排気されず、紫外線照射処理室内の内壁や、治具や、石英窓等に付着し、上記したような悪影響を及ぼす。
【0026】
また、基板からの脱ガス成分量によっては、低真空ポンプ単独でのプロセス処理が有効となることもある。この場合は、低真空ポンプを高真空排気ポンプの補助ポンプとして使用するだけではなく、低真空ポンプ単独でのプロセスが可能となるように低真空用ポンプへの動作の切り替えを可能にしておくことで、多様な基板及び圧力での処理に対応が出来る。
【0027】
上記したような真空排気系を用いて紫外線照射処理室内を高真空に設定することにより、紫外線処理室内部における様々な異常放電を防止することができる。
【0028】
図2に示す処理装置を用いて基板に対して紫外線照射処理をする場合、支持ステージ上に載置された基板Sに対して、紫外線照射装置22を駆動させて紫外線照射し、基板S上に形成されたLow−k膜を紫外線照射処理することができる。この処理により、基板上に形成されているLow−k膜から生じる脱ガス成分が、紫外線処理室の内壁や処理室内に配置されている治具に付着することもないのでパーティクルの発生もなく、また、石英窓に付着することもないので紫外線照射効率が低下することもない。
【0029】
図2に示す紫外線照射処理装置を用いて、Low−k材料を用いて形成された膜を備えた基板を紫外線照射処理するプロセスについて、以下説明する。
【0030】
まず、基板に対して、スピンオンタイプのLow−k用塗布材料(例えば、分子量1000以上のオリゴマーの界面活性剤を含む)をスピンコータにて塗布し、紫外線処理室内で80〜150℃でプリベークする。かくして得られるLow−k膜に対して、紫外線照射装置を用いて紫外線を照射し(例えば、照射線量:3600mW/cm・sec)、350〜440℃で熱キュア処理を所定の圧力で所定の時間実施する。
【0031】
この際、大気から低真空にするための低真空用ポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するための中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系を用いて紫外線照射処理室内を排気して、所定の圧力にして紫外線キュアを実施する。また、低真空用ポンプ単独の真空排気系、又は低真空用ポンプと中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系を用い、低真空用ポンプ単独の真空排気系と、低真空用ポンプと中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系とを基板処理プロセスに応じて切り替えながら、紫外線照射処理室内を排気して、所定の圧力にして紫外線キュアを実施することも出来る。
【0032】
紫外線照射処理後、疎水化剤として、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)や、TMCTS(テトラメチルシクロテトラシロキサン)等を用いて、350℃のアニールの条件下でLow−k膜に対して疎水化処理を行う。
【実施例1】
【0033】
本実施例では、排気系の違いによる得られた膜特性の評価を行う。
【0034】
基板に対して、スピンオンタイプのLow−k用塗布材料(分子量1000以上のシロキサンオリゴマーを含む塗布材料)をスピンコータにて塗布し、この基板を図1、2に示す紫外線照射処理室内において80℃でプリベークした。かくして得られたLow−k膜に対して、図1、2に示す紫外線照射装置を用いて紫外線を照射し(照射線量:3600mW/cm・sec)、350℃で熱キュア処理を5分間実施した。この際、熱キュア温度350℃及び紫外線キュア時の照射線量:3600mW/cm・secを固定して、紫外線照射処理室内の、紫外線キュア処理時の圧力を変えて実験を行った。
【0035】
すなわち、ドライポンプ(DRP)のみを用いてE−0Pa(B.G.圧力)の圧力で、また、ドライポンプ及びターボ分子ポンプ(主排気)を組み合わせて(DRP+TMP)E−3Pa(B.G.圧力)の圧力で熱キュアを行った。
【0036】
その後、熱キュアされた膜に対して、HMDSを用いて350℃のアニールの条件で疎水化処理を行った。かくして得られたLow−k膜は、DRPの場合に108nmの膜厚を有し、DRP+TMPの場合に、118nmの膜厚を有していた。
【0037】
かくして得られた結果を表1に示すと共に、図3〜5に示す。図3はDRP及びDRP+TMPの場合に得られたLow−k膜の誘電率を示すグラフであり、図4はDRP及びDRP+TMPの場合に得られたLow−k膜のヤング率(GPa)を示すグラフであり、そして図5はDRP及びDRP+TMPの場合に得られたLow−k膜の誘電率とヤング率との関係を示すグラフである。
【0038】
【表1】

【0039】
表1及び図3から明らかなように、k値に着目すると、より低真空で行ったDRP+TMPの場合が、DRPの場合よりも低いk値が得られ、良好な結果を達成できることが分かる。また、表1及び図4から明らかなように、強度(ヤング率)の数値だけを比べるとそれほどの差異はないようではある。しかし、図3〜5に示ように、k値の差に鑑みれば、DRP+TMPの場合の方が低いk値を有することから、強度に関しても向上しているものと考えられる。
【0040】
上記DRP単独の真空排気系を用いた場合とDRP+TMPからなる真空排気系を用いた場合とを比較すると、前者の場合、脱ガス成分の排気時間は長く、紫外線照射処理室の内壁や室内の治具や石英窓に脱ガス成分が付着しており、紫外線照射効率が悪かった。また、DRP単独の真空排気系を用いた場合には紫外線照射処理室内で異常放電が発生したが、DRP+TMPからなる真空排気系を用いた場合には紫外線照射処理室内で異常放電は発生しなかった。
【0041】
また、熱処理キュア温度300℃で上記プロセスを繰り返したが、k値の点で上記より高めになり、好ましくなかった。
【実施例2】
【0042】
本実施例では、排気系の違いによる得られた膜特性の評価を行った。
【0043】
基板に対して、スピンオンタイプのLow−k用塗布材料(分子量1000以上のシロキサンオリゴマーを含む塗布材料)をスピンコータにて塗布し、この基板を紫外線照射処理室内において100℃でプリベークした。かくして得られたLow−k膜に対して、紫外線照射装置を用いて紫外線を照射し(照射線量:3600mW/cm・sec)、400℃で熱キュア処理を5分間実施した。この際、熱キュア温度400℃及び紫外線キュア時の照射線量:3600mW/cm・secを固定して、紫外線照射処理室内の紫外線キュア処理時の圧力を実施例1の場合と同様に変えて実験を行った。
【0044】
かくして得られた結果は、実施例1の場合と同様に、DRP+TMPの場合が、DRP単独の場合よりも低いk値が得られ、強度に関しても向上していた。
【0045】
また、DRP単独の場合とDRP+TMPの場合とを比べたところ、脱ガス成分の付着や、紫外線照射処理室内における異常放電について、実施例1の場合と同様な傾向が認められた。
【0046】
さらに、熱処理キュア温度450℃で上記プロセスを繰り返したが、k値の点で上記より高めになり、好ましくなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、Low−k材料からなる膜を紫外線照射処理することにより、低いk値及び高い強度を有するLow−k膜を得ることができるので、Low−k材料を用いて得られた膜を紫外線照射処理する半導体素子製造分野等において利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 紫外線照射処理室 11 紫外線光源
12 紫外線照射装置 13 合成石英窓
14 加熱機構 15a、15b マスフローコントローラー
16 真空排気系 16a 低真空用ポンプ
16b バルブ 2 紫外線照射処理室
21 紫外線光源 22 紫外線照射装置
23 石英窓 24 加熱機構
25a、25b マスフローコントローラー
26 真空排気系 26−1、26−2 径路
26a 低真空用ポンプ 26b 中・高真空用ポンプ
26c、26e コンダクタンス可変バルブ
26d、26f、26g バルブ S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気系を備えた、紫外線照射により基板上に形成されたLow−k膜を処理する装置において、紫外線照射処理室の上部に、紫外線光源を組み込んだ紫外線照射装置を備え、該紫外線照射装置の下に紫外線透過窓が配置され、該紫外線照射処理室の下部に加熱機構を備えた基板支持ステージが配置されており、また、該紫外線照射処理室には、その内部を排気するための真空排気系であって、大気から低真空にするための低真空用ポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するための中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系が接続されていることを特徴とする紫外線照射処理装置。
【請求項2】
前記低真空用ポンプと中・高真空用ポンプとを、基板処理プロセスに応じて切り替えが出来るように切り替え機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項3】
前記低真空用ポンプ及び中・高真空用ポンプと紫外線照射処理室とを接続する真空排気系の径路の途中で、かつ低真空用ポンプ及び中・高真空用ポンプのそれぞれの下流側に圧力制御機構が介設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項4】
前記低真空用ポンプがドライポンプであり、中・高真空用ポンプがターボ分子ポンプであることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項5】
前記圧力制御機構が、コンダクタンス可変バルブあることを特徴とする請求項3又は4に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項6】
Low−k材料からなる膜を表面に有する基板を紫外線照射処理室内に載置し、この基板に対して紫外線照射装置を用いて紫外線を照射して該Low−k膜を紫外線キュアする際に、該紫外線照射処理室に接続されている大気から低真空にするための低真空用ポンプと低真空領域から中・高真空へ排気するための中・高真空用ポンプとを組み合わせた真空排気系を用いて、該紫外線照射処理室内を1E−5〜1Paの圧力に設定し、350〜440℃の温度で熱キュア処理することを特徴とするLow−k膜の紫外線キュア方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114234(P2012−114234A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261837(P2010−261837)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】