説明

紫外線照射器、及び紫外線照射装置

【課題】反射板の変形を防止し、なおかつ筐体内温度を適正な温度に維持する。
【解決手段】水冷ジャケット31に収めた紫外線ランプ30と、前記紫外線ランプ30の光を反射する主反射板32とを筐体22に収め、前記紫外線ランプ30の直射光、及び前記主反射板32の反射光を照射する紫外線照射器7において、前記主反射板32の熱を回収して前記筐体22の外に排出する熱回収機構としての水冷機構33と、前記筐体22内の雰囲気の熱を前記水冷機構33に伝熱して当該水冷機構33に回収するヒートシンク34と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射する紫外線照射器、及び、当該紫外線照射器が組み込まれた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組込式の紫外線照射器を備え、試料室に置かれた試料に紫外線照射器の紫外線を照射する紫外線照射装置が知られており、試料の耐候性試験や表面洗浄、改質などに広く用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
この種の紫外線照射器は、紫外線ランプと、紫外線ランプを囲むように配置され当該紫外線ランプの光のうち所望の紫外域成分を透過する色ガラスフィルタと、紫外線ランプの光を反射する反射板と、を備えて構成されている。
【0003】
さらに、紫外線ランプの表面温度が点灯時に1000℃近くの高温に達するような場合には、紫外線ランプを石英ガラス製の水冷ジャケットに収めて冷却している。また色ガラスフィルタにあっても、紫外線ランプに曝され、更に所望の紫外域成分以外の成分(例えば可視域成分及び赤外域成分)を吸収することで熱を持つことから、色ガラスフィルタは水冷ジャケットの内部に設置されることが一般的である。また通常、水漏れが起きないように色ガラスフィルタを水冷ジャケット内に固定するために、これらは一体化されている(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−191965号公報
【特許文献2】特開平10−104151号公報
【特許文献3】特開平6−267509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、色ガラスフィルタが紫外線ランプの紫外線により劣化して透過率が低下した場合、これに伴って紫外線照射器の照度も低下することから、色ガラスフィルタを水冷ジャケットごと新品と交換する必要が生じる。この場合、紫外線劣化が起こっていない水冷ジャケットの部分も同時に交換するため、ランニングコストの面で問題があった。
【0006】
そこで例えば、色ガラスフィルタを水冷ジャケットの中に設けるのではなく、色ガラスフィルタに代えて紫外線透過フィルタを紫外線照射器と試料との間に配置する構成とすれば、紫外線透過フィルタのみを交換可能にできる。
しかしながら、紫外線ランプと反射板との間に色ガラスフィルタが介在しないため、前記従来の装置構成では色ガラスフィルタで吸収されていた赤外域成分や可視域成分の光が反射板に直接照射されることとなり、当該反射板が熱を持って高温になり変形してしまう、という新たな問題が生じる。
【0007】
さらに、従来の構成では、紫外線ランプの赤外域成分や可視域成分に起因する発熱は色ガラスフィルタを通じて水冷ジャケットに回収されているが、この色ガラスフィルタを無くした場合には、これら赤外域成分や可視域成分の光によって筐体内の雰囲気温度が上昇し、内蔵部品を傷めてしまう、という問題も新たに生じる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、反射板の変形を防止し、なおかつ筐体内温度を適正な温度に維持できる紫外線照射器、及び紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、水冷ジャケットに収めた紫外線ランプと、前記紫外線ランプの光を反射する反射板とを筐体に収め、前記紫外線ランプの直射光、及び前記反射板の反射光を照射する紫外線照射器において、前記反射板の熱を回収して前記筐体の外に排出する熱回収機構と、前記筐体内の雰囲気の熱を前記熱回収機構に伝熱して当該熱回収機構に回収する伝熱体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記紫外線照射器において、前記筐体の中で空気を循環させて前記反射板を冷却する送風機を備え、前記送風機は、前記反射板を経由して前記反射板の熱を回収した空気を吸い込み前記伝熱体に吹き付けることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記紫外線照射器において、前記紫外線ランプは管状を成し、前記反射板、及び前記伝熱体は、前記紫外線ランプに沿って延在し、前記送風機は、前記伝熱体の延在方向に直交する方向から前記伝熱体に風を吹き付けることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記紫外線照射器において、前記筐体の紫外線照射口と前記紫外線ランプとの間に照度分布調整用の補助反射板を備え、前記筐体内を循環する空気が前記補助反射板を経由して冷却し前記送風機に吸い込まれることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記紫外線照射器において、前記筐体の紫外線照射口と前記紫外線ランプとの間に配置され、前記紫外線ランプの直射光、及び前記反射板の反射光のうち、所定の紫外域成分を透過する紫外線透過フィルタを備え、なおかつ、前記反射板が少なくとも前記所定の紫外域以外の光を吸収することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記課題を解決するために、試料を収める試料室が設けられ、上記のいずれかに記載の紫外線照射器が組み込み自在に設けられ、前記試料室の試料に前記紫外線照射器の紫外線を照射することを特徴とする紫外線照射装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反射板の熱を回収して筐体の外に排出する熱回収機構を備えるため反射板の熱損傷や熱による変形を防止することができ、さらに筐体内の雰囲気の熱を熱回収機構に伝熱して当該熱回収機構に回収する伝熱体を備えるため、筐体内の温度上昇を緩和して適正な温度に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】耐候性試験装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は一部を切り欠いた正面図、(C)は左側面からみた装置の内部を示す側面図である。
【図2】紫外線照射器の構成を示す図であり、(A)は一部を切り欠いた正面図、(B)は右側面図である。
【図3】光源ユニットの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は左側面図、及び(E)は右側面図である。
【図4】紫外線照射器の構成、及び筐体内の空気の循環を模式的に示す図である。
【図5】紫外線照射器の主反射板の温度評価試験の結果を示す図であり、5(A)は温度の測定点を示し、(B)は各測定点での温度を示す。
【図6】図5の各テストにおける補助反射板の温度、紫外線照射器の筐体の雰囲気温度、当該筐体の温度、及び紫外線照射装置の装置筐体の温度のそれぞれの測定結果を示す図である。
【図7】耐候性試験装置における紫外線ランプの交換の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る耐候性試験装置1の構成を示す図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は一部を切り欠いた正面図、図1(C)は左側面からみた装置の内部を示す側面図である。
この耐候性試験装置1は、紫外線照射装置の一例であって、試料Sの耐候性を試験するため、試料Sに紫外線を照射したり、温度や湿度を調節したり、降雨の状態を作るなどして、屋外と同じ条件を作り出して、試料Sを屋外に置いたと同じ状態に設定できる装置である。
すなわち、耐候性試験装置1は、図1に示すように、箱形の装置筐体2を備え、装置筐体2の内部は仕切板3によって上室4Aと下室4Bとに上下に仕切られている。上室4Aには、試料Sを収める試料室5、試料室5に設けられ試料Sを載置する試料台6、試料Sに紫外線を照射する紫外線照射器7、試料室5の雰囲気温度や湿度を耐候性試験に応じて調整するための冷却器9及びヒーター10、試料室5と冷却器9及びヒーター10の間で空気を循環するブロワー11が収められている。
また試料室5の天井面5Aに上記紫外線照射器7が取り付けられ、この紫外線照射器7に対向して試料台6が配置され、試料台6に載置された試料Sに紫外線が照射される。
装置筐体2の上室4Aの正面には、紫外線照射器7の取り外し作業用の開閉扉12が設けられており、また紫外線照射器7が開閉扉12に隣接して配置されることで、組み込み、取り外し作業がし易くなっている。
【0018】
一方、下室4Bには、紫外線照射器7が備える後述の水冷ジャケット31及び水冷パイプ40(図2)用冷却水を貯留する水タンク13が設置されている。水タンク13には、水道管等の給水管が接続されて水タンク13に給水する給水管接続管13Aと、水タンク13か外部に排水する配水管13Bとが接続されており、また後述の水冷ジャケット31及び水冷パイプ40に冷却水を循環させるためのポンプ14が併置されている。
また、耐候性試験装置1の装置筐体2の正面には、タッチパネル式のコントロールパネル15が装着され、該コントロールパネル15に種々の情報が表示されると共に、このコントロールパネル15から必要な指示(例えば温度や湿度、紫外線光量、試験時間等)が入力される。
【0019】
図2は、紫外線照射器7の構成を示す図であり、図2(A)は一部を切り欠いた正面図、図2(B)は右側面図である。
紫外線照射器7は、金属製の筐体22を有している。筐体22は、底面開放直方体形状の光源ケース体20と、上面及び底面開放の補助反射板収容ケース体21とを備え、光源ケース体20の底面側に補助反射板収容ケース体21がラッチ23で連結されている。光源ケース体20には、底面側に紫外線を放射する光源ユニット24が配置され、当該光源ユニット24の底面側には平板状の薄膜フィルタ25が配置されている。
薄膜フィルタ25は、耐候性試験に求められる紫外領域の波長の光を透過する紫外線透過フィルタであって、紫外線に対して透明な石英ガラス板の表面に例えば誘電体多層膜等の耐熱性に優れた紫外線透過フィルタ材を形成したものである。光源ユニット24の放射光は薄膜フィルタ25を通ることで所定の紫外域成分に変換されて、補助反射板収容ケース体21に導かれる。
【0020】
補助反射板収容ケース体21の底面開口は紫外線を照射する紫外線照射口28であって、紫外線を透過する石英ガラス窓板27(図4)で閉塞されている。また補助反射板収容ケース体21には、補助反射板収容ケース体21の内側面(正面、背面、左右側面の4面)のそれぞれに沿って補助反射板26が設けられている。補助反射板26は、紫外線照射口28と紫外線ランプ30の間に配置されて、試料台6での照度分布を均一に調整するものである。これにより、紫外線照射口28からは、上記薄膜フィルタ25から直接底面に入射した直射光、及び補助反射板26で反射された反射光により、均一な照射光が照射される。
【0021】
図3は、光源ユニット24の構成を示す図であり、図3(A)は平面図、図3(B)は正面図、図3(C)は底面図、図3(D)は左側面図、及び図3(E)は右側面図である。なお、図3には後述の紫外線ランプ30及び水冷ジャケット31を取り外した状態を示す。
光源ユニット24は、紫外線ランプ30(図2)、水冷ジャケット31(図2)、主反射板32、水冷機構33、ヒートシンク34、及び送風機39(図2)を備えている。
紫外線ランプ30は、図2に示すように、直管形の例えばメタルハライドランプであって、横長の(正面からみて左右に伸びる)水冷ジャケット31内に配置されている。水冷ジャケット31は石英ガラス製の二重管からなり外管と内管の間に二重管の一方端から冷却水が導入され、他方端から排出されるようになされている。紫外線ランプ30は、水冷ジャケット31の内管内の中空部分に挿入配置されている。
また光源ユニット24の両端には端板35が配置され、各端板35には、上記水冷ジャケット31の挿入開口37が設けられたジャケット支持板36が設けられ、これらジャケット支持板36によって水冷ジャケット31が両端支持される。また、挿入開口37を通じて水冷ジャケット31内の紫外線ランプ30が挿脱自在に成されている。
【0022】
図4は、紫外線照射器7の構成を、紫外線ランプ30の管軸に直交する断面図として模式的に示したものであり、紫外線照射器7内の構成部材の配置や空気の流れ、それに試料台6の紫外線照射器7との位置関係を表わしている。
主反射板32は、断面略U字状に形成され紫外線ランプ30に沿って延在する反射板であって、両端の端板35の間に紫外線ランプ30の両側から上側を包囲するように設けられ、紫外線ランプ30を挟んで反対側(下側(底側))に配置されている上記薄膜フィルタ25に向けて光を反射する。この主反射板32は、主として紫外成分の光を反射し、また赤外成分の光を吸収する光学特性を有し、金属の基材の反射側表面を赤外線や熱線を吸収する、特殊な蒸着法で形成した金属薄膜等で構成した熱線吸収膜で覆い、当該熱線吸収膜の上に紫外成分を反射する誘電体多層膜を設けた、いわゆるメタルダイクロイックミラーにより構成されている。
【0023】
すなわち、主反射板32が赤外線や熱線を吸収するため、図4に示すように、光源ユニット24の放射光のうち上記薄膜フィルタ25を透過せずに反射された赤外線K1が主反射板32に入射して当該主反射板32で吸収され、また紫外線ランプ30から直接放射された赤外線K2も主反射板32で吸収される。したがって、主反射板32及び薄膜フィルタ25で包囲された紫外線ランプ30の赤外線や熱線は主反射板32で吸収され、筐体22に直接的に照射されることがないため、筐体22の温度上昇が低減される。
【0024】
水冷機構33は、主反射板32の熱を回収して紫外線照射器7の外に排出する熱回収機構であって、図3に示すように、主反射板32の左端部の導入口40Aから冷却水が導入され当該主反射板32に沿って右端部側に延び当該右端部の外で折り返し左端部の排出口40Bに戻るU字状の水冷パイプ40を備えている。この水冷パイプ40は、主反射板32の上面(紫外線ランプ30からみて背面側)に接触して配置され、導入口40A及び排出口40Bには、耐候性試験装置1が備える上記ポンプ14に接続される。これにより、上記水タンク13に貯留された水道水が水冷パイプ40に循環供給され主反射板32の熱を回収して紫外線照射器7の外の水タンク13に戻される。
なお、上記ポンプ14には水冷ジャケット31も接続されており、当該ポンプ14によって水冷ジャケット31の冷却水も循環されている。
【0025】
このように、主反射板32が水冷機構33によって冷却されるため、主反射板32が紫外線ランプ30を包囲するように配置され、なおかつ紫外線ランプ30の赤外線や熱線を吸収する構成であっても、当該主反射板32の温度上昇が抑えられる。
【0026】
ヒートシンク34は、筐体22内の雰囲気の熱を水冷機構33の水冷パイプ40に伝熱させ当該水冷機構33に回収させる伝熱体であって、水冷パイプ40に密着して当該水冷パイプ40に沿って延びる板状ベース体34Aと、板状ベース体34Aの上面に設けられた多数のフィン34Bとを備えている。板状ベース体34Aは水冷パイプ40で冷却されるため、板状ベース体34Aよりもフィン34Bの方が高温となり、フィン34Bを通じて雰囲気の熱が板状ベース体34Aに移動し水冷パイプ40に回収されることとなる。
【0027】
送風機39は、ヒートシンク34への雰囲気の熱の伝熱を促進し、雰囲気の熱回収の効率化を図るものである。具体的には、送風機39は、クロスフローファンであって、光源ケース体20の背面側(正面側と対向する側)の側面に取り付けられている。当該側面には、ヒートシンク34に沿って当該ヒートシンク34よりも長く延びる吹出開口47(図2)が形成されており、また吹出開口47の下方には、吹出開口47と平行に延びる吸込開口(図示略)が設けられている。送風機39は、光源ケース体20の中の空気を吸込開口を通じて吸込側39Aに吸い込みヒートシンク34のフィン34Bに吹出側39Bから吹出開口47を通じて吹き出して当該ヒートシンク34を通じて水冷機構33に熱を回収させる。この送風機39の作動によって、筐体22の中で空気が循環し、本実施形態では、図4に示すように、送風機39がヒートシンク34の延在方向に直交する方向から筐体22の天面22Aと光源ユニット24の間に空気M1を吹き出すことで、ヒートシンク34を通過した後に対向側面22Bに衝突させて底面側に向かう空気M2を生じさせる。この空気M2は主反射板32と薄膜フィルタ25の隙間に回り込み、当該主反射板32を経由して送風機39に吸い込まれる空気M3、M4となる。これにより、空気M2〜M4によって主反射板32が冷却されるとともに、これら空気M2〜M4が送風機39によってヒートシンク34に吹き付けられることで、主反射板32の発熱や紫外線ランプ30の周囲の熱を回収しヒートシンク34から水冷機構33に効率良く伝えられる。
【0028】
また、補助反射板収容ケース体21には、光源ケース体20の中を循環する空気を導入する空気導入口45及び空気排出口46が設けられており、上記空気M2の一部の空気M5が空気導入口45から導入される。この空気M5は補助反射板収容ケース体21の上記送風機39に対向する側の補助反射板26に沿って流下し、底面の石英ガラス窓板27に到達する空気M6となり、当該空気M6によって補助反射板収容ケース体21が冷却される。また空気M6は石英ガラス窓板27上を通って送風機39側の補助反射板26に至る空気M7、M8となり、この補助反射板26に沿って空気M8が上昇して空気排出口46から排出され送風機39に吸い込まれる空気M9となる。この空気M9がヒートシンク34に吹き付けられることで、補助反射板収容ケース体21の補助反射板26等の熱がヒートシンク34を通じて水冷機構33に伝えられ回収されることとなる。
【0029】
また、上述の通り、送風機39は、紫外線ランプ30、主反射板32及びヒートシンク34の延在方向に対する直交方向から、当該ヒートシンク34の全長に亘って送風するため、これら紫外線ランプ30、主反射板32及びヒートシンク34の全体を幅広く冷却することができる。
【0030】
図5は紫外線照射器7の主反射板32の温度評価試験の結果を示す図であり、図5(A)は温度の測定点を示し、図5(B)は各測定点での温度を示す。
この温度評価試験は、紫外線ランプ30のランプ電力を6kW、水冷ジャケット31及び水冷パイプ40を循環する冷却水温度を30℃としたときに、送風機39の送風動作の有無、及び、光源ケース体20から補助反射板収容ケース体21への通風の有無を変えて試験したものである。なお、本実施形態の主反射板32の耐熱温度は最大200℃であり、この温度を超えると熱損傷や変形が生じ得る。また、ランプ電力、及び冷却水温度といった熱的条件は、送風機39で送風した状態でランプ電力、冷却水温度、及び冷却水量を変えて各測定点の温度を測定する予備実験を行い、当該予備実験において、主反射板32の耐熱温度を超えない範囲で比較的高い温度が測定されたときの条件を採用した。
【0031】
図5(B)において、テスト1は、送風機39をオンした状態であって、なおかつ、光源ケース体20から補助反射板収容ケース体21への通風を無しにした状態(空気導入口45及び空気排出口46を閉塞した状態)で紫外線ランプ30を点灯したものである。
またテスト3は、テスト1において、光源ケース体20から補助反射板収容ケース体21への通風を有りにして紫外線ランプ30を点灯したものである。
これらテスト1及びテスト3のいずれにおいても、主反射板32の温度は全ての測定点(1)〜(9)で耐熱温度以下に抑えられている。特に、紫外線ランプ30の中央近傍であって送風機39によって筐体22の中の熱が直接吹き付けられる測定点(6)においても良好に温度が抑えられている。
【0032】
一方、テスト2は、テスト1において、送風機39をオフにした状態で紫外線ランプ30を点灯したものである。更に、このテスト2では、紫外線ランプ30を点灯した直後数分間で、主反射板32の水冷にもかかわらず、主反射板32の測定点(6)が200℃近くに達したため、主反射板32の保護のために、温度上昇が飽和するのを待たずに試験を中止している。
これらテスト1及びテスト2の比較によれば、送風機39により筐体22内で空気を循環させて主反射板32を冷却し、当該主反射板32を経由して熱を回収した空気M4をヒートシンク34に吹き付け水冷機構33(水冷パイプ40)に回収させることで、当該主反射板32の熱を水冷機構33に効率良く回収させ温度を適正な温度に維持できることが分かる。
【0033】
またテスト1、及びテスト3を比較すると、光源ケース体20から補助反射板収容ケース体21に通風を行っても、主反射板32の温度に有意な差は生じず、当該主反射板32の冷却性は維持されることが示されている。
【0034】
図6は、図5の各テストにおける補助反射板26の温度、紫外線照射器7の筐体22内の雰囲気温度、当該筐体22の温度、及び紫外線照射装置1の装置筐体2の温度のそれぞれの測定結果を示す図である。なお、補助反射板26の温度は、補助反射板収容ケース体21の正面、背面、及び左右側面の4面に設けた各補助反射板26の中央部の表面温度を平均したものであり、また紫外線照射器7の筐体22の温度は筐体22の外側上面中央の表面温度を示し、紫外線照射装置1の装置筐体2の温度は装置筐体2の外側正面中央の表面温度を示す。
図6に示すように、テスト1及びテスト3を比較すると、光源ケース体20から補助反射板収容ケース体21に通風を行うことで、補助反射板26の温度が低下して冷却されていることが分かる。
上述の通り、光源ケース体20から補助反射板収容ケース体21に通風を行っても、主反射板32の冷却性を維持できることから、補助反射板収容ケース体21に通風することで、主反射板32及び補助反射板26の両方が効率良く冷却されることが分かる。
【0035】
また、紫外線照射器7の筐体22内の雰囲気温度にあっては、テスト1及びテスト3(共に送風あり)とテスト2(送風無し)との比較から、送風機39で空気を循環させ、なおかつ筐体22の中の空気をヒートシンク34に吹き付けることで、筐体22の雰囲気の熱がヒートシンク34を通じて水冷機構33に回収され、雰囲気の温度が有意に低下することが分かる。
【0036】
さらにテスト1からテスト3のいずれにおいても、耐候性試験装置1の装置筐体2の温度が概ね30℃程度に抑えられており、手で触れても熱く感じることがない。
詳述すると、紫外線照射器7は、耐候性試験装置1の正面側の側面である開閉扉12に隣接して配置しているため、紫外線照射器7の筐体22の温度が高くなると、開閉扉12までも温度が上昇し、安易に触れることができなくなる。
これに対して、本実施形態では、紫外線照射器7の各部の熱は水冷機構33により効率良く回収されて水タンク13等の外部に排出されるため、紫外線照射器7の筐体22の温度も抑えられ、結果として、耐候性試験装置1の装置筐体2の温度も抑えられる。
また紫外線照射器7の温度が抑えられ、また熱を水冷機構33で外部に排出するため、当該紫外線照射器7を組み込む耐候性試験装置1では、紫外線照射器7の熱対策をする必要がなく、装置構成を簡易かつ低コストにできる。
【0037】
ところで、紫外線ランプ30は、経年劣化により、ある程度の点灯時間ごとに交換する必要がある。紫外線ランプ30は、紫外線照射器7に内蔵されるため、紫外線ランプ30の交換に際しては、従来、紫外線照射器7を耐候性試験装置1から一旦取り外してから交換作業をする必要がある。具体的には、水冷ジャケット31内部に色ガラスフィルタを設置している従来の紫外線照射器においても、かかる色ガラスフィルタが、上記薄膜フィルタ25などと比べて短時間で紫外線により劣化して透過率が低下してしまうことから、紫外線ランプ30と同時交換をしないと装置しての性能を発揮することが出来なくなるため、当該紫外線ランプ30の交換と同時に、色ガラスフィルタを水冷ジャケット31ごと交換しており、このため、紫外線ランプ30の交換時には紫外線照射器を耐候性試験装置から一旦取り外す必要が生じる。
しかしながら、紫外線照射器7の重量は大きく、取り外し、組み込みのために上げ下ろしする際には危険が伴い、またランプ交換作業に多大な時間を要する、という問題がある。
これに対して、本実施形態の耐候性試験装置1は、紫外線照射器7を組み込んだまま紫外線ランプ30の交換を可能にしている。
すなわち、紫外線照射器7にあっては、図7に示すように、端部の端板35の挿入開口37から紫外線ランプ30が挿脱自在に構成され、また耐候性試験装置1にあっては、装置筐体2の側面2Aに、組み込まれた紫外線照射器7の端板35の対面箇所に開口50が設けられ、この開口50にランプ交換用扉51を取り付ける構成としている。
【0038】
これにより、ランプ交換の際には、紫外線照射器7を耐候性試験装置1から取り外さなくとも、ランプ交換用扉51を開いて紫外線照射器7の端板35を露出させ、この端板35の挿入開口37から紫外線ランプ30を引き出すだけで交換でき、ランプ交換作業を簡単、安全、かつ短時間にできる。
特に、本実施形態の紫外線照射器7では、水冷ジャケット31内部に色ガラスフィルタを配置するのではなく、当該色ガラスフィルタよりも紫外線に対して劣化しづらい薄膜フィルタ25を用いる構成としているため、紫外線ランプ30の交換時には、従来のように水冷ジャケット31の交換が不要となり、しかも当該紫外線ランプ30のみを耐候性試験装置1のランプ交換用扉51から簡単に交換することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、主反射板32の熱を回収して筐体22の外に排出する熱回収機構の一例としての水冷機構33と、筐体22内の雰囲気の熱を水冷機構33に伝熱して当該水冷機構33に回収する伝熱体としてのヒートシンク34と、を備える構成とした。
この構成により、水冷機構33によって主反射板32の熱が回収されて筐体22の外に排出されるため主反射板32の熱損傷や熱変形を防止することができ、さらに筐体22内の雰囲気の熱が水冷機構33にヒートシンク34を介して回収されるため、筐体22内の温度上昇を緩和して適正な温度に維持できる。
【0040】
また本実施形態によれば、筐体22の中で空気を循環させて主反射板32を冷却する送風機39を備え、この送風機39は、主反射板32を経由して当該主反射板32の熱を回収した空気M4を吸い込みヒートシンク34に吹き付ける構成とした。
この構成により、筐体22の中の雰囲気の熱をヒートシンク34を通じて効率良く水冷機構33に伝え外部に排出することができ、筐体22の中の温度上昇をより効率良く抑えられる。
【0041】
また本実施形態によれば、紫外線ランプ30は、管状を成し、主反射板32及びヒートシンク34は、紫外線ランプ30に沿って延在し、送風機39は、ヒートシンク34の延在方向に直交する方向から当該ヒートシンク34に風を吹き付ける構成とした。
これにより、主反射板32の全長に亘って幅広く風を送り、またヒートシンク34で効率良く熱を回収させることができる。
【0042】
また本実施形態によれば、筐体22の紫外線照射口28と紫外線ランプ30との間に照度分布調整用の補助反射板26を備え、筐体22内を循環する空気が補助反射板26を経由して冷却し送風機39に吸い込まれる構成とした。
この構成により、主反射板32に加えて補助反射板26も効率良く冷却できる。
【0043】
また本実施形態によれば、筐体22の紫外線照射口28と紫外線ランプ30との間に、紫外線ランプ30の光、及び主反射板32の反射光のうち所定の紫外域成分を透過する紫外線透過フィルタたる薄膜フィルタ25を備え、なおかつ、主反射板32が少なくとも所定の紫外域以外の光を吸収する構成とした。
この構成により、薄膜フィルタ25を透過せずに反射された赤外線や紫外線ランプ30が放射する赤外線が主反射板32で吸収され、筐体22への赤外線の照射量が抑えられるため当該筐体22の温度上昇を抑制できる。
【0044】
また本実施形態によれば、試料Sを収める試料室5が設けられた耐候性試験装置1に、上記の紫外線照射器7を組み込み自在に設け、試料室5の試料Sに紫外線照射器7の紫外線を照射する構成とした。
これにより、紫外線照射器7にあっては熱が水冷機構33により効率良く回収されことで、耐候性試験装置1に与える熱的な負荷が小さく、試料室5の温度等に悪影響を及ぼすことがなく、また耐候性試験装置1の冷却性能を向上させる必要もないため、紫外線照射器7の組み込みが容易となる。
【0045】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0046】
例えば上述した実施形態では、主反射板32にU字状の水冷パイプ40を接触させて熱を回収する構成を例示したが、これに限らず、主反射板32の裏面を蛇行する形状、或いは主反射板32の左右両端間を数往復する形状に成された水冷パイプ40、又は、複数本の水冷パイプ40を用いて、主反射板32の水冷による冷却性を高め、例えば送風機39の送風が無い状態でも主反射板32の温度が耐熱温度を超えないようにしても良い。
また、水冷パイプ40を用いた水冷に代えて、例えばヒートパイプ等の任意の熱回収機構を用いても良いことは勿論である。
【0047】
また例えば、上述した実施形態では、ヒートシンク34の全長と同程度の長さの吹出開口47を1つだけ設けたが、これに限らず、複数の吹出開口47をヒートシンク34の延在方向に沿って設けても良く、また各吹出開口47ごとに送風機39を設置しても良い。
【0048】
また例えば、上述した実施形態では、本発明の紫外線照明装置の一態様として、耐候性試験装置を例示したが、これに限らず、本発明は、試料表面の紫外線洗浄や改質といった材料プロセスのために紫外線を照射する装置といった各種の紫外線照射装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 耐候性試験装置(紫外線照射装置)
2 装置筐体
5 試料室
7 紫外線照射器
13 水タンク
14 ポンプ
20 光源ケース体
21 補助反射板収容ケース体
22 筐体
24 光源ユニット
25 薄膜フィルタ(紫外線透過フィルタ)
26 補助反射板
28 紫外線照射口
30 紫外線ランプ
31 水冷ジャケット
32 主反射板(反射板)
33 水冷機構(熱回収機構)
34 ヒートシンク(伝熱体)
35 端板
36 ジャケット支持板
37 挿入開口
39 送風機
39A 吸込側
39B 吹出側
40 水冷パイプ
45 空気導入口
46 空気排出口
47 吹出開口
50 開口
51 ランプ交換用扉
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷ジャケットに収めた紫外線ランプと、前記紫外線ランプの光を反射する反射板とを筐体に収め、前記紫外線ランプの直射光、及び前記反射板の反射光を照射する紫外線照射器において、
前記反射板の熱を回収して前記筐体の外に排出する熱回収機構と、前記筐体内の雰囲気の熱を前記熱回収機構に伝熱して当該熱回収機構に回収する伝熱体と、を備えることを特徴とする紫外線照射器。
【請求項2】
前記筐体の中で空気を循環させて前記反射板を冷却する送風機を備え、
前記送風機は、前記反射板を経由して前記反射板の熱を回収した空気を吸い込み前記伝熱体に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射器。
【請求項3】
前記紫外線ランプは管状を成し、
前記反射板、及び前記伝熱体は、前記紫外線ランプに沿って延在し、
前記送風機は、前記伝熱体の延在方向に直交する方向から前記伝熱体に風を吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の紫外線照射器。
【請求項4】
前記筐体の紫外線照射口と前記紫外線ランプとの間に照度分布調整用の補助反射板を備え、前記筐体内を循環する空気が前記補助反射板を経由して冷却し前記送風機に吸い込まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線照射器。
【請求項5】
前記筐体の紫外線照射口と前記紫外線ランプとの間に、前記紫外線ランプの直射光、及び前記反射板の反射光のうち所定の紫外域成分を透過する紫外線透過フィルタを備え、なおかつ、前記反射板が少なくとも前記所定の紫外域以外の光を吸収することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外線照射器。
【請求項6】
試料を収める試料室が設けられ、
請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線照射器が組み込み自在に設けられ、前記試料室の試料に前記紫外線照射器の紫外線を照射する
ことを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192327(P2012−192327A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57393(P2011−57393)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】