説明

紫外線照射装置及びそれを用いた全有機体炭素測定装置

【課題】紫外線ランプの点灯確認のため、筐体から取り出したり、筐体に窓を設ける必要をなくし、簡便にランプの点灯を確認する手段を提供する。
【解決手段】紫外線照射装置2は筐体4内に紫外線ランプ6と紫外線が照射される対象物8を内蔵している。紫外線ランプ6では、紫外線放射ガスが封入された紫外線透過性管体の両端封止部から外部にリード端子が引き出されている。両端封止部が筒状の保持部10の一方の開口部に嵌め込まれ、保持部10の他方の開口部が紫外線を遮光する可視光透過性樹脂からなる封止部材10によりリード端子を突出させるように封止されている。筐体4は遮光性であり、紫外線ランプ6の管体部分と紫外線が照射される対象8とを内部に収容し、紫外線ランプ6の保持部10の他方の開口部を外部に露出させた状態で紫外線ランプ6を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線ランプを備えて試料水その他の測定対象物に紫外線を照射する紫外線照射装置と、その紫外線照射装置を備えた分析装置の1つの応用例である全有機体炭素(TOC)測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射装置は筐体内に紫外線ランプを内蔵し、筐体内でその紫外線ランプからの紫外線により照射する対象物、例えば試料水が流れる流路、が設けられている。
【0003】
紫外線照射装置を備えた分析装置の一例として全有機体炭素測定装置を取り上げると、全有機体炭素測定装置は紫外線照射により試料水中の有機体炭素を二酸化炭素に分解した後に試料水中の二酸化炭素濃度を検出することにより全有機体炭素濃度を測定するものである。具体的には、試料溶液中の炭素を酸化して二酸化炭素に変換する試料酸化部と、試料酸化部を経た試料溶液中の二酸化炭素を検出する二酸化炭素検出部を備えており、その試料酸化部として紫外線照射装置が使用されている(特許文献1参照。)。
【0004】
試料水によっては有機体炭素濃度が高いものもあれば低いものもある。もし紫外線ランプが寿命や故障により点灯していない場合は、試料水中の有機体炭素が二酸化炭素に変換されないので、仮に有機体炭素濃度が高い試料水であっても二酸化炭素濃度として検出される有機体炭素濃度は低いものとなる。そのため、二酸化炭素濃度の検出値が低かったとしても、それが必ずしも試料水自体の有機体炭素濃度が低いためであると断定することはできず、紫外線ランプが点灯していなかったことにより試料水中の有機体炭素が二酸化炭素に変換されなかった可能性もある。
【0005】
そこで、従来の全有機体炭素測定装置では、紫外線ランプが点灯していることを確認するために、分析開始前に紫外線ランプを紫外線照射装置の筐体から取り出してランプが点灯していることを確認している。またランプを取り外さないで点灯を確認することができるようにするために、紫外線照射装置に点灯確認窓を設けている全有機体炭素測定装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−40729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紫外線ランプが点灯していることを確認するために、ランプを装置の外に取り出して確認する方法では、ランプを肉眼で直視すると紫外線により目に障害を与えるので、保護眼鏡などが必要となる。保護眼鏡を使用したとしても紫外線ランプを筐体の外で点灯させることは危険を伴うものである。
【0008】
点灯確認窓を設けた紫外線照射装置では、紫外線を通さない透明な樹脂板などを通して点灯を確認することになる。紫外線ランプを点灯すると空気中の酸素が酸化されてオゾンが発生するので、紫外線照射装置の筐体はオゾンが外部に漏れないように密閉構造になっている。そのため点灯確認窓を設けた場合には窓の周囲の密閉構造が必要となり、装置コストの上昇を招く。
【0009】
そこで、本発明は紫外線ランプの点灯を確認するためにランプを筐体から取り出したり、筐体に確認窓を設けたりする必要をなくし、もっと簡便にランプの点灯を確認できる手段を備えた紫外線照射装置と、それを備えた分析装置の一例である全有機体炭素測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の紫外線照射装置は、遮光性の筐体内に紫外線ランプを保持したものである。その紫外線ランプは紫外線透過性の材料からなる管体を備えている。その管体内には紫外線放射ガスが封入され、管体の両端封止部から外部にリード端子が引き出されている。管体は保持部に保持されている。保持部は筒状をなし、保持部の一方の開口部に管体の両端封止部が嵌め込まれ、保持部の他方の開口部は紫外線を遮光する可視光透過性の樹脂からなる封止部材により前記リード端子を突出させるように封止されている。
【0011】
筐体は紫外線ランプの管体部分と紫外線が照射される対象とを内部に収容し、紫外線ランプの保持部の他方の開口部を外部に露出させた状態で紫外線ランプを保持している。
【0012】
紫外線ランプには水銀灯やキセノンランプなどがあるが、何れも発生する光は紫外線だけでなく、可視光領域の光も含んでいる。本発明の紫外線ランプは、保持部の開口部のうち、筐体の外部に突出する開口部を封止している部材が可視光透過性の樹脂であるので、紫外線ランプの保持部の開口部の封止部材を通して紫外線ランプが点灯していることを筐体の外部から確認することができる。
【0013】
樹脂は一般に紫外線は透過しない。通常使用される封止部材としては、可視光も透過させないように樹脂に可視光を吸収する顔料を添加していることが多い。本発明の封止用部材の一例は、そのような顔料を添加していない樹脂接着剤を硬化させたものである。
【0014】
本発明の全有機体炭素測定装置は、試料溶液中の炭素を酸化して二酸化炭素に変換する試料酸化部と、試料酸化部を経た試料溶液中の二酸化炭素を検出する二酸化炭素検出部を備えたものであり、試料酸化部として本発明の紫外線照射装置が使用されている。そして、紫外線照射装置の筐体内に収容される対象が紫外線透過材料からなる流路であり、その流路内を試料溶液が流れるようになっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紫外線照射装置では、紫外線ランプの保持部の開口部のうち管体部分が取り付けられている部分が筐体内部にあるが、開口部のその反対側の部分は筐体の外部に露出しているので、ランプが点灯すると可視光領域の光は保持部を封止している樹脂を通して外部に漏れ出す。紫外線は樹脂により吸収され外部には漏れないので安全性は維持される。ランプ自身が点灯していることを確認できる構造を備えているので、ランプの点灯を確認するためにランプを筐体の外部に取り出す必要がなくなるので安全に作業を行うことができる。また、筐体に確認窓を設ける必要もなくなるので、窓材と、窓材と筐体の接合部分からオゾンが漏れるのを防ぐオゾンシールのための部品も必要がなくなり、紫外線照射装置をより安価に製造することができる。また、そのような紫外線照射装置を備えると全有機体炭素測定装置などの分析装置のコスト低下にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施例の紫外線照射装置を示す断面図である。
【図2】同実施例における紫外線ランプを示す図であり、(A)は一部切欠き平面図、(B)は正面図である。
【図3】一実施例の紫外線照射装置が適用される全有機体炭素測定装置を示す流路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は一実施例の紫外線照射装置の正面断面図であり、図2は同実施例における紫外線ランプを示したものである。図2(A)は一部を切り欠いて示す平面図、(B)は正面図である。
【0018】
紫外線照射装置2は、筐体4の内部に紫外線ランプ6を内蔵したものである。筐体4内には紫外線が照射される対象物8も内蔵されている。
【0019】
筐体4は外部に紫外線が漏れないように、かつオゾンも漏れないような密閉構造となった金属ブロックである。筐体の素材は特に限定されないが、例えばアルミニウムである。
【0020】
紫外線ランプ6は図2に示されるように、筒状の保持部10の一方の開口部に紫外線透過材料である石英ガラス製のカバー12が取り付けられ、カバー12の内部にはU字型に折り曲げられた紫外線ランプの管体14が収容され、管体14の両端部が保持部10内にくるように取り付けられている。
【0021】
管体14は紫外線を透過させる石英ガラス製であり、気密容器となっていて、内部に水銀と放電媒体としての希ガス又は希ガスハロゲン化物が封入されている。希ガスとしてはキセノン、アルゴン又はヘリウムを用いることができ、希ガスハロゲン化物としては塩化キセノン(XeCl)、塩化クリプトン(KrCl)などを用いることができる。具体的な一例を示すと、管体14内には水銀100mgが封入され、希ガスとしてアルゴンが0.5torrの圧力になるように封入されている。管体14の両端部にはニッケル、タングステン、モリブデン、ステンレス又はチタンなどの耐火性のある金属からなるリード端子が取り付けられて両端部が封止部となっている。両端封止部は管体の石英ガラスを溶融させて封止したものである。管体14の両端部から突出したリード端子にはケーブル16が接続されている。
【0022】
保持部10の一方の開口に管体14の両端部とカバー12が差し込まれ、保持部10の他方の開口部から保持部10内に封止部材18が充填されて保持部10の開口部が封止されている。封止部材18は可視光を吸収する顔料が添加されていない樹脂接着剤であり、保持部10のリード端子側の開口部からその接着剤が充填されて硬化したものである。リード端子に接続されたケーブル16は保持部10から外部に取り出されている。
【0023】
図1に戻って説明すると、筐体4内には紫外線ランプ6に対向して紫外線が照射される対象物として試料水が流れる流路8が設けられている。流路8は石英ガラス製であり、筐体4の外部に突出した一方の接続口20が試料水の入口となり、反対側で筐体4から外部に突出した接続口22が試料水の出口となっている。
【0024】
紫外線ランプ6を点灯すると、流路8を流れる試料水10中の有機体炭素がランプ6からの紫外線により分解して二酸化炭素となる。このとき、ランプ6が点灯すると、保持部10の開口部から樹脂の封止部材18を通して筐体4の外部に可視光の一部が漏れ出すので、ランプ6が点灯していることを筐体4の外部から確認することができる。ランプ6からの紫外線は樹脂で遮光されて筐体4の外部には漏れない。
【0025】
筐体4はランプの保持部10を保持している部分と、流路8が筐体4の外部に突出している部分を気密状態に封止しており、筐体4の内部を密閉状態としている。そのため、筐体内でオゾンが発生しても筐体4の外部に漏れ出すことはない。
【0026】
本発明の紫外線照射装置が使用される分析装置として水溶液中の全有機体炭素を測定する全有機体炭素測定装置に適用した一実施例を図3に示す。
【0027】
水溶液中の有機物に含まれている炭素量で水溶液の汚染度を表す方法として全有機体炭素(TOC)がある。TOCを測定するために、全有機体炭素測定装置が使用されるが、TOCを測定する一般的な測定方法として、試料水溶液中の全炭素(TC)と無機体炭素(IC)とを測定し、TCの測定値からICの測定値を差し引いた値(TOC=TC−IC)として求める方法がある。
【0028】
全有機体炭素測定装置の概略構成図を図3に示す。有機体炭素を含む試料溶液が試料入り口31から導入され、リン酸リザーバー33に収容されたリン酸溶液がリン酸シリンジポンプ34により一定量が試料溶液に加えられ、さらにペルオキソ二硫酸塩リザーバー36に収容されたペルオキソ二硫酸塩溶液がペルオキソ二硫酸塩シリンジポンプ37により一定量が試料溶液に加えられる。試料溶液にリン酸溶液が加えられることにより、試料に含まれる無機体炭素(IC)が二酸化炭素に変換される。この二酸化炭素量を導電率センサ41で測定することにより無機体炭素の濃度が測定される。一方、試料にペルオキソ二硫酸塩溶液が加えられ、試料酸化流路38において紫外線ランプ39により紫外線が照射されることにより、試料に含まれる全炭素が酸化されて二酸化炭素が発生する。この二酸化炭素量を導電率センサ42で測定することにより全炭素濃度が測定される。測定された全炭素の濃度から無機体炭素の濃度を差し引くことにより全有機体炭素濃度が得られる。
【0029】
ここで、試料酸化流路38及び紫外線ランプ39として、図1に示した実施例の紫外線照射装置2を使用する。
【0030】
また、リン酸塩溶液及びペルオキソ二硫酸塩溶液と反応した試料溶液を2つの流路に分離することなく、ひとつの流路とひとつの導電率センサで測定する全有機体炭素測定装置とすることもできる。その場合は、試料溶液に紫外線を照射する紫外線ランプをON/OFFすることにより、オフのときに無機体炭素を測定し、オンのときに全炭素を測定する。つまり、紫外線を照射せずに試料溶液の導電率を測定すると無機炭素を測定することができ、紫外線を照射しながら試料溶液の導電率を測定することにより全炭素を測定することができるのである。紫外線を照射したときに測定される炭素量から紫外線を照射しないときに測定される炭素量を差し引くことにより、全有機体炭素量を測定することができる。
【0031】
ひとつの流路とひとつの導電率センサで測定する全有機体炭素測定装置として、紫外線の照射、非照射を紫外線ランプのON/OFFで行うのではなく、試料溶液と紫外線ランプの間に遮蔽板を設置し、この遮蔽板をモータやソレノイドで駆動することにより紫外線の照射と非照射を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
2 紫外線照射装置
4 筐体
6,39 紫外線ランプ
8 紫外線が照射される対象物
10 保持部
14 紫外線ランプの管体
16 リード端子につながるケーブル
18 封止部材
38 試料酸化流路
41,42 導電率センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線放射ガスが封入された紫外線透過性管体の両端封止部から外部にリード端子が引き出され、前記両端封止部が筒状の保持部の一方の開口部に嵌め込まれ、前記保持部の他方の開口部が紫外線を遮光する可視光透過性樹脂からなる封止部材により前記リード端子を突出させるように封止されている紫外線ランプと、
前記紫外線ランプの管体部分と紫外線が照射される対象とを内部に収容し、前記紫外線ランプの前記保持部の他方の開口部を外部に露出させた状態で前記紫外線ランプを保持している遮光性の筐体とを備えた紫外線照射装置。
【請求項2】
前記樹脂は可視光を吸収する顔料が添加されていない樹脂接着剤を硬化させたものである請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
試料溶液中の炭素を酸化して二酸化炭素に変換する試料酸化部と、前記試料酸化部を経た試料溶液中の二酸化炭素を検出する二酸化炭素検出部を備えた全有機体炭素測定装置において、
前記試料酸化部として請求項1又は2に記載の紫外線照射装置が使用され、
前記紫外線照射装置の筐体内に収容される前記対象が紫外線透過材料からなり試料溶液が流れる流路となっている全有機体炭素測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−266222(P2010−266222A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115468(P2009−115468)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】