説明

紫外線照射装置

【課題】 被照射物への紫外線強度を確保しつつ、小型化した紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】 第1ランプ3A(一の紫外線ランプ)の第1反射板11Aは、この第1反射板11Aによって反射された紫外線が、第1ランプ3Aの軸線からワークWに鉛直に下ろした線L1と、第2ランプ3B(一の紫外線ランプに第2反射板側で隣合う紫外線ランプ)の軸線からワークWに鉛直に下ろした線L2との間の第1集光位置17でワークWの被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。第2ランプ3Bの第2反射板13Bは、これによって反射された紫外線が、第1集光位置17で被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の紫外線照射装置には、例えば、紫外線硬化型のインクを印刷した後にインクを急速に硬化させるために使用されるものや、被照射物上に塗布した紫外線硬化樹脂を硬化させるために使用されるものがある(例えば特許文献1参照)。
この紫外線照射装置100は、例えば図3に示すように、複数の直管状の紫外線ランプ101と、各紫外線ランプ101毎に取り付けた一対の反射板103,103とを備えてなる。反射板103,103は、紫外線ランプ101の略後方に配され紫外線ランプ101の上方及び側方を全長に亘って覆う断面楕円弧の形状をなし、紫外線ランプ101から後方に出射された紫外線を反射させてワークW側に導く役割を果たす(図では紫外線の光路を二点鎖線で図示してある。以下同様)。
【0003】
詳細には、反射板103,103は、図3中、一点鎖線の想像線で示す楕円の円弧に沿って配され、この楕円の第1焦点F1に紫外線ランプ101が配され、第2焦点F2がワークWの被照射面WAと合致するようにされている(なお第2焦点F2は、紫外線ランプ101の直下の位置とされている)。
【特許文献1】特開平10−300897号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紫外線照射装置100は、印刷機やその他の装置に組み込まれることが多いため、できる限り小型化したいという要望がある。
そこで、この紫外線照射装置100を幅方向(紙面左右方向)に小型化するためには、図4に示すように、第2焦点F2をワークWの被照射面WAと合致させつつ、想像線で示す楕円の短軸aと長軸bの長さを調整し、図3のものよりa/bを小さくする、すなわち、楕円を扁平にすればよいように思われる。
ところが、a/bを小さくしようとすると図4に示すように、紫外線ランプ101と反射板103,103とが干渉してしまい実際にこのような配置は採用できないという問題点があった。
【0005】
一方、紫外線ランプ101と反射板103,103との干渉を排除するために図3のものより楕円の長軸bを短くすると、図5に示すように、第2焦点F2がワークWの被照射面WAから外れてしまい、その結果ワークWへ照射される紫外線の強度が低下してしまうという問題点があった。
このように、種々の楕円を描いて、その楕円に沿うように反射板103を配置しても、小型化を図りつつ、従来と同等の被照射物への紫外線強度を確保することは困難であった。
本発明は上記事情に基づいて完成されたものであって、被照射物への紫外線強度を確保しつつ、小型化した紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、下方のワークに紫外線を照射するために並列配置された複数の直管形の紫外線ランプを備えた紫外線照射装置であって、各紫外線ランプには、その一側方から上方にかけて、紫外線ランプを全長にわたって囲む第1反射板と、他側方から上方にかけて、紫外線ランプの全長にわたって囲む第2反射板が備えられ、前記紫外線ランプのうち一の紫外線ランプの前記第1反射板は、これによって反射された紫外線が、前記一の紫外線ランプの軸線から前記ワークに鉛直に下ろした線と、前記一の紫外線ランプに第2反射板側で隣合う紫外線ランプの軸線から前記ワークに鉛直に下ろした線との間における集光位置で前記ワークの被照射面上に集光するように傾斜して配置され、前記隣合う紫外線ランプの第2反射板は、これによって反射された紫外線が、前記集光位置で前記被照射面上に集光するように傾斜して配置されていることを特徴とする紫外線照射装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1反射板と前記第2反射板との上端部間に所定間隔の隙間が形成され、この隙間から排気手段により前記紫外線ランプ周りの気体が排気されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
図3〜5に示す従来のもののように、紫外線ランプの直下に紫外線を集光しようとすると、反射板の反射面を楕円形に沿って配置する必要がある。
これに比べて、図2に示す本発明のように、一の紫外線ランプの第1反射板を、これによって反射された紫外線が、一の紫外線ランプの軸線からワークに鉛直に下ろした線と、一の紫外線ランプに隣合う紫外線ランプの軸線からワークに鉛直に下ろした線との間における集光位置で集光するように傾斜して配置し、かつ、隣合う紫外線ランプの第2反射板は、これによって反射された紫外線が、前記集光位置付近で集光されるように傾斜して配置すると、一対の反射板を一点鎖線の想像線で示す楕円に沿った状態よりも閉じた角度で配置することになるから、紫外線照射装置の幅が従来のものよりも狭くでき、紫外線照射装置を小型化できる。
また、一の紫外線ランプの第1反射板によって集光された紫外線と、隣合う紫外線ランプの第2反射板によって集光された紫外線は重なりあうから、紫外線強度も大きくなる。
【0009】
<請求項2の発明>
本請求項の発明によれば、第1反射板と第2反射板との隙間から紫外線ランプ周りの気体が排気されて、紫外線ランプを冷却することができる。
特に本請求項の発明の構成によれば、一対の反射板(第1反射板と第2反射板)が従来よりも閉じた角度で配置されているから、気体の排気がスムーズとなり、冷却効率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図1、図2を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る紫外線照射装置1は、下方のワークWに紫外線を照射するために並列配置された複数(本実施形態では3本)の直管形の紫外線ランプ3(以下、「ランプ3」)を備えたものである(なお、ワークWは、図2において紙面の左右方向へ流れる)。
以下の説明では、3本のランプのうち、図2における左に位置するものを第1ランプ3A、中に位置するものを第2ランプ3B、右に位置するものを第3ランプ3Cという。
各ランプ3A,3B,3Cは、全体として直方体をなし下面に開口部(出射窓部)を形成した箱状のケース5,5,5内に収納されている。
【0011】
ランプ3A,3B,3Cとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、ブラックライト等が適用可能であり、UV樹脂硬化等に適した波長(例えば主波長365nm)の紫外線を照射可能とされている。
ケース5,5,5の開口方向(図2において下方)に対する各ランプ3A,3B,3Cの略後方には、第1反射板11A,11B,11C及び第2反射板13A,13B,13Cが配置されている。第1反射板11A,11B,11Cは、各ランプ3A,3B,3Cの一側方(図面左側方)から上方にかけて、ランプ3A,3B,3Cを全長にわたって囲む断面楕円弧状をなし、第2反射板13A,13B,13Cは、ランプ3A,3B,3Cの他側方(図面右側方)から上方ににかけて、ランプ3A,3B,3Cの全長にわたって囲む断面楕円弧状をなす。第1反射板11A,11B,11C及び第2反射板13A,13B,13Cは、ランプ3A,3B,3Cから後方に出射された紫外線を反射させて開口部に導く役割を果たす。第1反射板11A,11B,11Cの上端部と第2反射板13A,13B,13Cの上端部との間には、所定間隔の隙間Sが形成されている。ケース5,5,5の上方には、チャンバー15,15,15が設けられており、冷却ファンを駆動することで、ランプ3A,3B,3Cの周りの空気を上記隙間Sを介して引き込んで外部に排気するようになっている。
【0012】
次に各ランプ3A,3B,3Cの第1反射板11A,11B,11C及び第2反射板13A,13B,13Cの配置について説明する。第1ランプ3A(請求項1の「一の紫外線ランプ」に相当)の第1反射板11Aは、図2に示すように、この第1反射板11Aによって反射された紫外線が、第1ランプ3Aの軸線からワークWに鉛直に下ろした線L1と、第2ランプ3B(請求項1の「一の紫外線ランプに第2反射板側で隣合う紫外線ランプ」に相当)の軸線からワークWに鉛直に下ろした線L2との間の第1集光位置17でワークWの被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。
第2ランプ3Bの第2反射板13Bは、これによって反射された紫外線が、第1集光位置17で被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。
【0013】
また、第2ランプ3Bの第1反射板11Bは、この第1反射板11Bによって反射された紫外線が、第2ランプ3Bの軸線からワークWに鉛直に下ろした線L2と、第3ランプ3Cの軸線からワークWに鉛直に下ろした線L3との間の第2集光位置19でワークWの被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。
第3ランプ3Cの第2反射板13Cは、これによって反射された紫外線が、第2集光位置19で被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。
【0014】
なお、第1ランプ3Aの第2反射板13Aは、図2に示すように、この第2反射板13Aによって反射された紫外線が、第1ランプ3Aの軸線からワークWに鉛直に下ろした線L1より左側でワークWの被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。また、第3ランプ3Cの第1反射板11Cは、図2に示すように、この第1反射板11Cによって反射された紫外線が、第3ランプ3Cの軸線からワークWに鉛直に下ろした線L3より右側でワークWの被照射面WA上に集光するように傾斜して配置されている。
【0015】
さて、ここで本実施形態の紫外線照射装置1の作用効果について説明する。本実施形態の紫外線照射装置1では、図2に示すようにそれぞれのランプ3A,3B,3Cに備えられた一対の反射板11,13を一点鎖線の想像線で示す楕円に沿った状態よりも閉じた角度で配置することになるから、紫外線照射装置1の紙面左右方向の幅を従来の図3のものよりも狭くでき、紫外線照射装置1自体を小型化できる。
また、第1ランプ3Aの第1反射板11Aによって集光された紫外線と、第2ランプ3Bの第2反射板13Bによって集光された紫外線は被照射面WA上で重なり合い、同様に第2ランプ3Bの第1反射板11Bによって集光された紫外線と、第3ランプ3Cの第2反射板13Cによって集光された紫外線は被照射面WA上で重なり合うから、紫外線強度を図3の従来のものと同等に保つことができる。
【0016】
また、本実施形態の紫外線照射装置1によれば、第1反射板11と第2反射板13との隙間Sからランプ3周りの気体が排気されて、ランプ3を冷却することができる。特に本実施形態の紫外線照射装置1の構成によれば、従来よりも第1反射板11と第2反射板13とが閉じた角度で配置されているから、気体の排気がスムーズとなり、冷却効率が高くなる。
【0017】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
上記実施形態では、ランプ3は3本としたが、2本でも4本以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】紫外線照射装置を下面側から見た平面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】従来例の紫外線照射装置の断面図である。
【図4】同じく従来例の紫外線照射装置の断面図である。
【図5】同じく従来例の紫外線照射装置の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…紫外線照射装置
3…紫外線ランプ
5…ケース
11…第1反射板
13…第2反射板
17…第1集光位置
19…第2集光位置
W…ワーク
WA…被照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方のワークに紫外線を照射するために並列配置された複数の直管形の紫外線ランプを備えた紫外線照射装置であって、
各紫外線ランプには、その一側方から上方にかけて、紫外線ランプを全長にわたって囲む第1反射板と、他側方から上方にかけて、紫外線ランプの全長にわたって囲む第2反射板が備えられ、
前記紫外線ランプのうち一の紫外線ランプの前記第1反射板は、これによって反射された紫外線が、前記一の紫外線ランプの軸線から前記ワークに鉛直に下ろした線と、前記一の紫外線ランプに第2反射板側で隣合う紫外線ランプの軸線から前記ワークに鉛直に下ろした線との間における集光位置で前記ワークの被照射面上に集光するように傾斜して配置され、
前記隣合う紫外線ランプの第2反射板は、これによって反射された紫外線が、前記集光位置で前記被照射面上に集光するように傾斜して配置されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記第1反射板と前記第2反射板との上端部間に所定間隔の隙間が形成され、この隙間から排気手段により前記紫外線ランプ周りの気体が排気されることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate