説明

紫外線照射装置

【課題】線状光源の長大化を招くことなく、紫外線光を均一照度で照射可能な照射領域を拡大することができる紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】略四角筒形状をなすチャンバ15の内壁面16を反射面で構成し、これら内壁面16のうち、光源ユニット10に収容された水銀ランプ12の長手方向に位置する内壁面16aを基部側から先端側に向けて拡開する方向に傾斜させるとともに、水銀ランプ12から放射される光の一部を拡開傾斜する内壁面16aの方向に反射する反射部材22を水銀ランプ12の配列方向に延在させる。これにより、水銀ランプ12の有効長lよりも拡大された照射面101a上の領域についても十分な光量の紫外線を照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紫外線を線状に発光する長尺な水銀ランプ等を光源として備えた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶パネルの製造においては、複数の薄膜トランジスタ素子が配列された素子基板と当該素子基板に対向する対向基板とを紫外線硬化樹脂を介して貼り合わせるための工程や、液晶に混合した紫外線反応材料によって基板上に配向膜を形成するための工程等において、紫外線照射装置が用いられる。
【0003】
この種の紫外線照射装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、内部に照射室を形成する筒状のチャンバ(フード)と、このチャンバの一端側に並列に配列される水銀ランプ等の複数の線状光源とを有し、これら線状光源から放射される光を、照射室を介して、液晶パネル等の照射対象に照射する構成が一般的である。
【特許文献1】国際公開番号WO2005/033788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、テレビジョン装置の大画面化等に伴い、液晶パネルが大型化する傾向にある。従って、このような大型の液晶パネルの製造に供される紫外線照射装置は、より広い照射領域(例えば、3m×3m以上の照射領域)に対して紫外線光を均一に照射することが要求される。この場合、照射領域の拡大に応じて、水銀ランプ等の線状光源の寸法を長大化させる等の対策が考えられる。
【0005】
しかしながら、特に、発光長が数mに及ぶ水銀ランプ等の線状光源を新たに製造することは、紫外線照射装置の高騰を招く結果となる。また、水銀ランプ等の線状光源は、長大化する程、慎重な取扱い等を要求される。
【0006】
本発明は、線状光源の長大化を招くことなく、紫外線光を均一照度で照射可能な照射領域を拡大することができる紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、紫外線を線状に発光する複数の線状光源が並列に配列された光源ユニットと、前記光源ユニットの出射側に基部側が連設され、前記線状光源の長手方向に位置する内壁面が前記基部側から先端側に拡開傾斜する反射面で構成された筒状のチャンバと、前記チャンバ内で前記線状光源の配列方向に延在し、前記線状光源から放射される光の一部を前記拡開傾斜する反射面の方向に反射する反射部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紫外線照射装置によれば、線状光源の長大化を招くことなく、紫外線光を均一照度で照射可能な照射領域を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は紫外線照射装置の要部を示す分解斜視図、図2は紫外線照射装置を水銀ランプの長手方向に沿って示す要部断面図、図3は図2のIII−III線に沿う要部断面図、図4は照射面の紫外線照度分布を示す説明図、図5は反射部材を除いた紫外線照射装置における照射面の紫外線照度分布を示す説明図である。
【0010】
図1乃至図3において、符号1は、例えば、大画面テレビジョン装置用の液晶パネル100の配向膜形成工程等に好適に用いられる紫外線照射装置を示す。ここで、本実施形態の紫外線照射装置1は、例えば、図2,3に示すように、ステージ101の照射面101a上に載置された3×4個の比較的大型な液晶パネル100に対して同時に紫外線を照射するためのものである。従って、照射面101aは、例えば、一方(X方向)の辺の長さx0、及び、他方(Y方向)の辺の長さy0が共に3m以上の長さに設定された広範な矩形領域となっている。
【0011】
紫外線照射装置1は、光源ユニット10を有する。光源ユニット10は、例えば、複数(例えば、15本)の線状光源としての水銀ランプ12が、筐体11内に所定間隔毎に並列に配列されて要部が構成されている。
【0012】
具体的に説明すると、各水銀ランプ12は、例えば、約2mの発光長lを有する長尺なランプで構成され、紫外線を線状に発光する。これらの水銀ランプ12を収容する筐体11は、例えば、図2,3に示すように、照射面101aに対向する側の面が出射口11aとして開口された扁平な略箱形形状をなす。この筐体11の出射口11aは、一方(X方向)の辺の長さx1が他方(Y方向)の辺の長さy1よりも相対的に短く設定された略長方形の開口部で構成されている。本実施形態において、出射口11aの一方の辺の長さx1は、例えば、水銀ランプ12を収容可能な長さであって、且つ、照射面101aの一方の辺の長さx0の2/3程度の長さに設定され、具体的には、約2mに設定されている。また、出射口11aの他方の辺の長さy1は、照射面101aの他方の辺の長さy0と略等しい長さに設定され、具体的には、約3mに設定されている。この筐体11内には、複数(例えば、15本)の樋状のリフレクタ13が、長手方向(Y方向)に沿って並列に連なって配列されている。そして、各水銀ランプ12は、これら各リフレクタ13を介して、筐体11内にそれぞれ保持されている。
【0013】
この光源ユニット10の出射側には、筒状をなすチャンバ15の基部側が連設されている。具体的に説明すると、このチャンバ15は、光源ユニット10の出射口11aに対応する略長方形の入射口15aが基部側に開口された略四角等形状のチャンバで構成されている。このチャンバ15の内壁面16は反射面で構成され、これら内壁面16のうち、特に、水銀ランプ12の長手方向に位置する内壁面16aは基部側から先端側に向けて拡開するよう傾斜されている。これにより、チャンバ15の先端側の開口部15bは、その開口面積がX方向において入射口15aよりも拡大され、液晶パネル100を載置した照射面101aを内部に臨ませることが可能となっている。
【0014】
ここで、光源ユニット10とチャンバ15との間には、所定波長以上(例えば、380nm以上)の波長領域の可視光線、紫外線の透過を抑制するためのフィルタ20が介装されている。
【0015】
また、チャンバ15内には、反射部材22が配設されている。本実施形態において、この反射部材22は、例えば、水銀ランプ12の配列方向(Y方向)に延在する断面略”逆V字”形状の部材で構成され、水銀ランプ12の長手方向(X方向)中央部に対応する位置に配設されている。この反射部材22には、チャンバ15の拡開傾斜する各内壁面16aにそれぞれ対向する反射面22aが形成されており、これらの反射面22aは、水銀ランプ12から放射される光の一部を各内壁面16a方向に反射する。ここで、各反射面22aの形状や傾斜角度等は実験やシミュレーション等に基づいて適値に設定されており、反射面22aで反射された光は、照射面101a上の水銀ランプ12が正対されていない領域に対し、直接的に、或いは、内壁面16aによる反射を経て導かれる。これにより、水銀ランプ12が正対されていない照射面101a上の領域の光量が補われ、当該領域においても十分な紫外線照度が確保される。
【0016】
その一方で、チャンバ15内に反射部材22を配設すると、当該反射部材22に正対する照射面101a上の領域の紫外線照度が低下する。しかしながら、水銀ランプ12の長手方向中央部に対応する照射面101a上の領域は、そもそも、各水銀ランプ12から放射される光が最も集中する領域であるため、反射部材22を照射面101aから十分に離間させて周辺からの放射光の照射を許容すれば、当該領域の紫外線照度を十分に維持することが可能となる。このため、例えば、図2,3に示すように、光源ユニット10の出射口11aから照射面101aまでの距離がdである場合において、反射部材22は、少なくとも、光源ユニット10寄りに偏倚した距離d/2以内の領域に配置されていることが望ましい。
【0017】
このような実施形態によれば、略四角筒形状をなすチャンバ15の内壁面16を反射面で構成し、これら内壁面16のうち、光源ユニット10に収容された水銀ランプ12の長手方向に位置する内壁面16aを基部側から先端側に向けて拡開する方向に傾斜させるとともに、水銀ランプ12から放射される光の一部を拡開傾斜する内壁面16aの方向に反射する反射部材22を水銀ランプ12の配列方向に延在させることにより、水銀ランプ12の発光長lよりも拡大された照射面101a上の領域についても十分な光量の紫外線を照射することができる。そして、反射部材22の形状や傾斜角度等を適切に調整することにより、例えば、図4(a),(b)に示すように、水銀ランプ12の大型化を招くことなく、紫外線光をI0以上の均一照度で照射可能な照射領域を拡大することができる。
【0018】
この場合、特に、各水銀ランプ12の長手方向中央部に対応する照射面101a上の領域に水銀ランプ12から放射される光が最も集中することに着目し、反射部材22を水銀ランプ12の長手方向中央部に対応させて配置することにより、照射面101a上の照度を効率よく均斉化することができる。その際、反射部材22を、照射面101aから十分に離間した光源ユニット10寄りに偏倚させることにより、周辺から照射される放射光を利用して、反射部材22が対向する照射面101a上の領域においても十分な照度を確保することができる。
【0019】
なお、例えば、図5(a),(b)に示すように、反射部材22を除いた場合、水銀ランプ12の長手方向において、照射面101a上の照度が所望の照度I0を下回り、しかも、照射面101a上の照度の均斉度も低下する。
【0020】
ここで、照射面101a上の照度分布をより緻密に調整するため、チャンバ15内に、水銀ランプ12の配列方向に延在する複数の反射部材を配置することも可能である。この場合、例えば、図6に示すように、水銀ランプ12の長手方向中央部に対応する位置に断面”逆V字”形状をなす反射部材22を配設し、この反射部材22の両側の対称位置に、反射部材23,24を順次配設することが可能である。その際、各反射部材22〜24の反射面22a,23a,24aは、水銀ランプ12の長手方向端部に位置するものほど小面積に設定されることが望ましい。
【0021】
また、例えば、図7に示すように、水銀ランプ12の長手方向において、チャンバ15の側壁を揺動可能に軸支し、各種用途等に応じて、内壁面16aの傾斜角度を変更可能に構成することも可能である。このような構成においては、反射部材22の各反射面22aについても揺動可能に軸支し、内壁面16aの傾斜角度に応じて反射面22aの傾斜角度を調整することにより、照射面積が可変設定される照射面に対して均一照度の紫外線光を照射することが可能となる。この場合、内壁面16a及び反射面22aの各傾斜角度は、例えば、ステッピングモータ等の各アクチュエータにより、予め設定された関係に基づいて互いに連動して制御されることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】紫外線照射装置の要部を示す分解斜視図
【図2】紫外線照射装置を水銀ランプの長手方向に沿って示す要部断面図
【図3】図2のIII−III線に沿う要部断面図
【図4】照射面の紫外線照度分布を示す説明図
【図5】反射部材を除いた紫外線照射装置における照射面の紫外線照度分布を示す説明図
【図6】紫外線照射装置の変形例を示す要部断面図
【図7】紫外線照射装置の変形例を示す要部断面図
【符号の説明】
【0023】
1…紫外線照射装置、10…光源ユニット、11…筐体、11a…出射口、12…水銀ランプ(線状光源)、13…リフレクタ、15…チャンバ、15a…入射口、15b…開口部、16…内壁面、16a…内壁面(拡開傾斜する内壁面)、20…フィルタ、22…反射部材、22a…反射面、23…反射部材、23a…反射面、24…反射部材、24a…反射面、100…液晶パネル、101…ステージ、101a…照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を線状に発光する複数の線状光源が並列に配列された光源ユニットと、
前記光源ユニットの出射側に基部側が連設され、前記線状光源の長手方向に位置する内壁面が前記基部側から先端側に拡開傾斜する反射面で構成された筒状のチャンバと、
前記チャンバ内で前記線状光源の配列方向に延在し、前記線状光源から放射される光の一部を前記拡開傾斜する反射面の方向に反射する反射部材と、を備えたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記反射部材は、前記光源ユニット寄りにおいて、前記線状光源の長手方向中央部に配設され、前記線状光源の配列方向に延在することを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64026(P2010−64026A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233747(P2008−233747)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】