説明

紫外線照射装置

【課題】均一な紫外線照射することにより、高性能で液晶パネル製造の歩留まり向上を実現する。
【解決手段】紫外線透過性の石英ガラスで気密性を有する放電空間11を備えた発光管12内の軸方向に一対の放電用の電極13a,13bを対向して配置する。放電空間11内にアーク放電させた状態を維持するために十分な量の希ガス、水銀、ハロゲン、発光金属からなる封入物を封入することで紫外線ランプ100を構成し、点灯時に紫外光を発光させる。紫外線ランプ100を冷却ユニット200で冷却させるとともに、被照射物とは反対側に反射板19を配置し、被照射物に照射させる。反射板19の複数の向きの異なる反射面61で入射された紫外線を拡散したことで、被照射物に照射させる紫外線の照度の均一化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶パネルに紫外線をムラなく照射させる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶パネル製造に用いられる紫外線照射装置は、液晶体と光反応性を有する高分子体とを内部に封入した被処理基板を冷却しながら波長領域340nm以下の紫外線の透過を抑制するフィルタを介して紫外線を照射し、被処理基板の内部の高分子体を反応させて対向部を形成するようにしている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−116672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、高性能な液晶パネルを製造するには、液晶体を所定の方向に配向させるための配向膜の配向制御が重要である。配向膜を布で擦る「ラビング法」等が一般的に用いられてきたが、ラビング法を用いると、埃が落ちて汚れが付着したり静電気等により半導体素子が破損したりする等の問題がある。
【0005】
そこで、ラビング法に代わる技術として、光反応性物質を基板上に形成し、紫外線を照射することにより光反応性物質を化学反応させて配向機能を持たせる技術が採用されている。液晶パネルに照射するUV紫外線に照度ムラが発生することで、配向膜の配向制御が均一にならない、という問題がある。
【0006】
この発明の目的は、均一な紫外線照射することにより、高性能で液晶パネル製造の歩留まり向上に寄与する紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、紫外線透過性の材料で気密性を有する放電空間を備えた発光管と、前記発光管の軸方向の該発光管に対向して配置された一対の放電用の電極と、前記放電空間内でアーク放電させた状態を維持するために十分な量の希ガス、水銀、ハロゲン、発光金属からなる封入物と、からなる紫外線ランプと、前記紫外線ランプから照射される紫外線を反射する反射板とを具備し、前記反射板の表面に拡散機能を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、紫外線ランプから放射される紫外線が被照射物に対して直接照射される分と拡散反射させる分とで全体として均一化した照度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するための基本的なシステム構造図である。
【図2】図1のI−I’線断面図である。
【図3】図1に用いる紫外線ランプについて説明するための構成図である。
【図4】鉄系メタルハライドランプとタリウム系メタルハライドランプのエネルギー分布について説明するための説明図である。
【図5】図1に用いられる反射板の曲率の一例について説明するための説明図である。
【図6】図5の矢印Aで示す破線円を拡大した状態について説明するための正面図である。
【図7】この発明と従来の反射板の反射について説明するための説明図である。
【図8】この発明の効果について説明するための説明図である。
【図9】この発明の紫外線照射装置に関する他の実施形態について説明するための基本的なシステム構造図である。
【図10】図9のII−II’線断面図である。
【図11】図10要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3は、この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するための、図1は基本的なシステム構造図、図2は図1の断面図、図3は図1に用いる紫外線ランプについて説明するための構成図である。
【0012】
図1、図2において、紫外線照射装置は例えば4本の紫外線ランプ100と冷却ユニット200から構成される。
【0013】
紫外線ランプ100は、図3に示すように、紫外線透過性を有する石英ガラス製で放電空間11を形成する発光管12の長手方向両端の内部には、例えばタングステン材の電極13a,13bが配置される。発光管12は、例えば外径φが27.5mm、肉厚mが1.5mm、発光長Lが1800mm程度の一重管で構成される。
【0014】
電極13a,13bは、それぞれインナーリード14a,14bを介してモリブデン箔15a,15bの一端に溶接される。モリブデン箔15a,15bの他端には、図示しないアウターリードの一端を溶接する。モリブデン箔15a,15bの部分は発光管12のインナーリード14a,14bからアウターリードの一端までの発光管12を加熱して封止する。
【0015】
モリブデン箔15a,15bは、発光管12を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適したものとしてモリブデンを使用する。モリブデン箔15a,15bに一端がそれぞれ接続されたアウターリードには、例えばセラミック製のソケット16a,16bの内部で電気的に接続された給電用のリード線17a,17bを絶縁封止するとともに図示しない電源回路に接続される。
【0016】
放電空間11には、アーク放電を維持させるための希ガスである十分な量の希ガス、水銀、ハロゲンそれに紫外光を発光させるための金属である鉄、スズ、インジウム、ビスマス、タリウム、マンガンのうちの少なくとも1種が封入されている。これにより、300〜400nmの紫外線を放射させることができる。
【0017】
図4は、上記した発光金属のうち、鉄系とタリウム系の2種により鉄系メタルハライドランプとタリウム系メタルハライドランプによるエネルギー分布について説明するものである。図4から明らかなように、必要とする300〜400nmの紫外線が得られることがわかる。
【0018】
再び図1、図2において、18は例えばアルミニウム製の冷却ブロックであり、冷却ブロック18の一面側には紫外線ランプ100の上部半周面を覆う例えばSUS(ステンレス鋼)材の反射板19が当接された状態で配置されるとともに、他面側には複数の冷却フィン181が一体的に形成される。
【0019】
反射板19の背面と冷却ブロック18は、反射板19の熱を冷却ブロック18に伝え易くするために、反射板19の背面と冷却ブロック18の隙間に熱伝導性の高い部材を配置させることでより効率的な冷却を実現することができる。
【0020】
図5に示すように、反射板19は、例えばY=1/170・Xの曲率の形状で形成されている。さらに、図5の矢印Aの破線円を拡大した状態の図6の正面図および図7(b)の断面に示すように、曲率に沿って細かな反射面61が組み合わされ拡散する状態の形状となっている。これにより反射板19に入射された紫外線は、拡散して出射される。
【0021】
拡散機能を有する反射面61が形成される反射板19は、例えば型によるプレス加工によって形成されるものである。
【0022】
フィン181は、紫外線ランプ100で発生した熱を逃がし易くすることで、紫外線ランプ100の温度が必要以上に上昇しないような役割を果たしている。冷却ブロック18の下側は、紫外線ランプ100と冷却ブロック18と反射板19を収納することができるランプハウス21が形成される。
【0023】
図1、図2において、紫外線ランプ100と対向するランプハウス21は、紫外線ランプ100から放射される紫外線を照射する窓部23が形成され、この窓部23には、例えば320nm以下の紫外線をカットする紫外線カットフィルタ24と400nm以上の赤外線をカットする赤外線カットフィルタ25で塞がれている。
【0024】
紫外線ランプ100を放電点灯させると、紫外線カットフィルタ24と赤外線カットフィルタ25を透過して放出される320〜400nm紫外線が被照射物である液晶パネルに照射させ、紫外線による光反応性物質を化学反応させて配向機能を持たせることができる。
【0025】
冷却ブロック18の上側は、紫外線ランプ100のランプ軸方向に沿って、冷却構造部を形成するカバー26が配置される。カバー26の長手方向の一端は吸入口27が形成され、他端は通気口28が形成される。通気口28に連通させた状態で筒状の排気筒29を取り付ける。
【0026】
紫外線ランプ100は、高周波点灯回路300の高周波出力端の一方が給電線30a、リード線17aを経由して電極13aに、他方が給電線30b、リード線17bを経由して電極13bにそれぞれ接続される。高周波点灯回路100の電源が投入されると、高周波を発生して高周波出力が電極13aと対向している電極13bとの間に紫外線を発光させることができる。
【0027】
図8は、この発明の拡散機能を有する反射板19と従来の反射板との照度分布を示すもので、図5における反射板19の長手方向と直交する測定ポイントPの照度の測定結果を表している。
【0028】
すなわち、この発明の場合は、拡散機能を有する反射板19の拡散作用により測定ポイントPの全領域に渡り平均的な照度を示している。この点、従来の反射板の場合は、測定ポイントPの全領域に渡り照度ムラが見られる。
【0029】
このように、この実施形態では、被照射物である液晶パネルに対し、均一な紫外線照射が可能なことから、液晶パネル製造の歩留まり向上に寄与することができる。
【0030】
図9〜図11は、この発明の紫外線照射装置に関する他の実施形態について説明するための、図9はシステム構成図、図10は図9のII−II’線断面図、図11は図10要部の拡大断面図である。上記実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0031】
この実施形態は、紫外線ランプ100の850℃以下に維持させる冷却を水冷方式にした場合である。この場合も、4本の紫外線ランプ100とこれらに対応の冷却ユニット300から構成される例を挙げて説明する。
【0032】
紫外線ランプ100と冷却ユニット300から構成される。紫外線ランプ100と冷却ユニット300は、紫外線ランプ100のソケット16a,16bに取り付けられたスペーサ91a,91bにより所定の間隔に位置決めされる。
【0033】
冷却ユニット300は、円筒状の石英ガラス等の紫外線透過性の透明な材料よりなり、内管31とその外側に設けられた外管32を備え、二重管構造となっている。紫外線ランプ100は、内管31に内包されている。
【0034】
冷却ユニット300の内管31は、例えば内径d1を32mm、外径d2を36mmとし、外管32は、例えば内径d3を66mm、外径d4を70mmとする。
【0035】
冷却ユニット300は外周端部に設けられた接続管33a,33bを通して外部から水などの冷却液34が循環される。冷却液34は、接続管33aから温度の低いものを入水し、接続管33bから紫外線ランプ100の冷却を行い、暖められたものを出水する。暖められた出水は、冷却され再び接続管33aから入力する循環構造にしてある。
【0036】
外管32の外表面には、赤外線をカットする赤外線カットフィルタ93がそれぞれ形成される。場合によっては、不必要な紫外線をカットするカットフィルタを重ねて形成しても構わない。
【0037】
冷却ユニット300の外側上面には、拡散機能を備えた反射板94を配置する。反射板94は、図5、図6、図7(b)で説明した内容と同構成をしており、曲率に沿って細かな反射面61が形成されている。
【0038】
紫外線ランプ100を放電点灯させると、赤外線カットフィルタ93を透過して放出される320〜400nm紫外線が被照射物である液晶パネルに照射させ、紫外線による光反応性物質を化学反応させて配向機能を持たせることができる。
【0039】
320〜400nm紫外線は、直接照射される分と反射板94で拡散させて反射した分とが被照射物に照射される。反射板94で反射された紫外線と直接照射される紫外線は、図8で示した平均化され照度分布を得ることができることから、液晶パネル製造過程における配向膜の配向制御の均一化を図ることができる。
【0040】
この実施形態でも、被照射物である液晶パネルに対し、均一な紫外線照射が可能なことから、液晶パネル製造の歩留まり向上に寄与することができる。この場合、冷却ユニットが冷却液を使用していることから、紫外線ランプを850℃以下に維持させることが容易となる。
【符号の説明】
【0041】
100 紫外線ランプ
200,300 冷却ユニット
11 放電空間
12 発光管
13a,13b 電極
14a,14b インナーリード
15a,15b モリブデン箔
16a,16b ソケット
17a,17b リード線
18 冷却ブロック
181 フィン
19,94 反射板
21 ランプハウス
23 窓部
24 紫外線カットフィルタ
25,93 赤外線カットフィルタ
26 カバー
27 吸入口
28 通気口
29 封止
30a,30b 給電線
61 反射面
31 内管
32 外管
33a,33b 接続管
34 冷却液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性の材料で気密性を有する放電空間を備えた発光管と、
前記発光管の軸方向の該発光管に対向して配置された一対の放電用の電極と、
前記放電空間内でアーク放電させた状態を維持するために十分な量の希ガス、水銀、ハロゲン、発光金属からなる封入物と、からなる紫外線ランプと、
前記紫外線ランプから照射される紫外線を反射する反射板とを具備し、
前記反射板の表面に拡散機能を形成したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記反射板の背面に空冷の冷却ユニットを配置したことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外線ランプを二重管構造の水冷の冷却ユニットに配置し、該冷却ユニットに前記反射板を対向配置したことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線ランプと被照射物との間に紫外線カットフィルタおよび赤外線カットフィルタを配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−107264(P2011−107264A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260062(P2009−260062)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】