説明

紫外線照射装置

【課題】紫外線ランプ表面温度を規定温度範囲内に収める管理を可能としたことでランプの長寿命化を実現する。
【解決手段】ランプハウス10内に、紫外線を放射される紫外線ランプ13を主に構成するランプユニット部11とランプユニット部11から放射される紫外線が照射される照射部12が構成される。さらに、紫外線ランプ13と反射板171,172との間には耐熱性の紫外線透過ガラス板272,272を設置した。紫外線透過ガラス板271,272が紫外線ランプ13に対して風量を増やす作用を生かしてランプ温度の管理を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線を発光させ、印刷関連におけるインク乾燥、半導体関連の微細露光、液晶関連の接着剤硬化等の用途に用いられる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紫外線照射装置は、紫外線を放射させるエキシマランプや超高圧水銀ランプ等からの紫外光を効果的に活用するために、紫外光反射機能を有する金属材若しくは表面に金属酸化物を形成しているガラス材等を紫外線反射機構が用いられている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−35436公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、印刷や半導体製造工程等で使用される空冷用紫外線照射装置に使用する紫外線ランプは、その表面温度により性能を制御しているため、ランプ表面温度を規定温度の範囲内に管理する必要がある。特に、規定の上限温度を超えてランプを使用した場合、ランプ寿命が著しく短くなる、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、紫外線ランプ表面温度を規定温度範囲内に収める管理を可能としてランプの長寿命化を実現した紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、紫外光を放射するランプから発生される熱を気体により冷却する冷却機構および前記ランプの周囲に配置して前記紫外光を一定方向に反射させる反射機構を備えた紫外線照射装置において、少なくとも前記ランプ中心位置から前記反射機構を結んだ直線上に紫外線透過ガラス板を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、紫外線ランプ表面温度を規定温度範囲内に収める管理を可能としたことで、ランプの長寿命化を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するためのシステム全体の断面図である。
【図2】図1の側断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示して説明するための図である。
【図4】反射板による集光の一例について説明するための説明図である。
【図5】反射板による集光の他の例について説明するための説明図である。
【図6】紫外線透過ガラス板のない場合について説明するための説明図である。
【図7】垂直に配置された場合における紫外線透過ガラス板の一例について説明するための説明図である。
【図8】傾斜して配置させた場合における紫外線透過ガラス板の他の例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3は、この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するための、図1はシステム全体の断面図、図2は図1の側断面図、図3は図2要部を拡大して示した図である。
【0011】
図1〜図3において、10は、システム全体が収容される箱状のランプハウスであり、このランプハウス10は、ランプを保持するランプユニット部11と被照射物に紫外線を照射させるための照射部12から構成される。
【0012】
ランプユニット部11は、高圧水銀ランプ等の紫外線を発光させる管径が27.5mmで、発光長が2000mm程度の紫外線ランプ13の両端の封止部に取着された例えばセラミック製の口金131,132を支持するためのフック141,142が天板15あるいは天板15に固定されたフレーム16に取着される。
【0013】
口金131,132内では、紫外線ランプ両端のそれぞれ電極が図示しない電力供給用の外部リード線の一端と電気的に接続され、リード線の他端は口金131,132が外側に取り出し、電源に接続される。
【0014】
171,172は、紫外線ランプ13から放射される紫外光を下方に反射させる反射板である。反射板171は天板15に固定されたフレーム16に取り付けられた取付部181,182に支持され、反射板172は天板15に固定されたフレーム16に取り付けられた取付部191,192に支持される。反射板171,172が取り付け部181,182と191,192にそれぞれ取り付けられることにより反射機構を構成する。
【0015】
紫外線ランプ13から放射された紫外光と反射板171,172で反射された紫外光は、ランプユニット部11と照射部12との間に形成される照射口20を介して照射部12に配置される被照射物に照射される。
【0016】
照射口20は、石英ガラス21、赤外線カットフィルタ22、紫外線カットフィルタ23を積層した格好で塞がれており、照射部12内に特定波長の紫外光のみが照射されるようにしてある。
【0017】
24は、ランプハウス10の天板15に開けた開口部に取り付けられ、ランプユニット部11内の空気に放出させる排気口である。25,26は、紫外線ランプ13の長手方向の両端と対向するランプハウス10の側面に開けた開口部に取り付けられ、ランプユニット部11外の空気を取り込む吸気口である。
【0018】
吸気口25,26では、送風機等を用いてランプユニット部11内に外気を取り込み、ランプユニット部11内の温度を下げている。また、排気口24は、送風機等を用いて温まった空気を外部に排気するようにしている。図示しないが、吸気口25,26はダクトを用いて送風機等の外気を取り込む手段と接続され、同様に排気口24はダクトなどを用いて所定の位置まで排気を行うようにしている。排気口24から外気を取り込み、吸気口25,26から排気する一連の気体である空気の流れは、紫外光を放射するランプが発生する熱を気体により冷却する冷却機能を果たしている。
【0019】
271,272は、紫外線透過率が高く耐熱性の高い例えば石英ガラス製の紫外線透過ガラス板である。紫外線透過ガラス板271,272は、それぞれ反射板171,172と対向位置に配置される。紫外線透過ガラス板271,272の紫外線透過率は、300〜380nm波長帯おける紫外線の発光効率観点から100%に近いほどよいが、90%以上であれば構わない。
【0020】
図4、図5を参照し、紫外線ランプ13から放射される紫外光と反射板171,172との関係について説明する。
【0021】
図4は、紫外線ランプ13から放射された紫外光を、反射板171,172をそれぞれ介して集光させ照射させている。すなわち、反射板171,172のそれぞれの反射面を、図中破線で示す楕円E上に設置し、紫外線ランプ13の第1焦点F1に設置したことにより、第2焦点F2に紫外光を集光させることができる。
【0022】
ここで、紫外線ランプ13の中心をOと楕円EとX軸との交点A間の距離OA=aとし、Oと楕円EとY軸との交点B間の距離OB=bとした場合の楕円式は、
(X/a)+(Y/b)=1
OF1=OF2=f
とすると、
f=(a−b0.5
となる。つまり、紫外線ランプ13から放射される紫外光を一点に集約したい場合は、楕円形状の紫外線反射板171,172の焦点位置付近に、紫外線ランプ13を配置する。
【0023】
図5は、紫外線ランプ13から放射された紫外線を、反射板171,172をそれぞれ介して集光させ照射させている。すなわち、反射板171,172のそれぞれの反射面を、図中破線で示す放物線P上に設置したことで、光軸に対し平行な反射光を得ることができる。
【0024】
ここで、紫外線ランプ13の中心をFとし、放物線PとX,Y軸の交点をOとした場合のPとOとの距離OF=1とすると、
f=Y/4X
となる。つまり、紫外線ランプ13からの紫外光を平行光で放出したい場合は、放物線形状の反射板171,172の焦点位置付近に、紫外線ランプ13を配置する。
【0025】
図4、図5で説明したように、紫外線ランプ13から放射された紫外光と反射板171,172との位置関係は、あまり狭めることができない。このため、紫外線ランプ13と反射板171,172で構成される空間は、広い容積となる。このため、図1に示す吸気口25,26と排気口24を用いて冷却がされているが、発熱源である紫外線ランプ13の温度を下げるには限界があった。
【0026】
そこで、反射板171,172の反射面に対向する位置に設置された紫外線透過ガラス板271,272は、紫外光は通過させつつ、紫外線ランプ13から放射される紫外光の照射とともに発生する熱を、吸気口25,26から各排気口24までの空気の流れを加速させることができる。これにより、紫外線ランプ13の温度を抑えることができる。
【0027】
図6〜図8を参照し、紫外線透過ガラス板271,272についてさらに説明する。図6は紫外線透過ガラス板271,272のない例を、図7は紫外線透過ガラス板271,272が垂直に取り付けられた状態の一例を、図8は紫外線透過ガラス板271,272を上方ほど近づくように傾斜させた状態の他の例を示している。
【0028】
まず、図6において、ここでは紫外線透過ガラス板がないことから、紫外線ランプ13と反射板171,172との空間容積が大きく紫外線ランプ13に対する風量は、図中実線の矢印で示すように広い空間を通過して行くことから、さほど強くはならない。使用用途により反射板の形状と紫外線ランプの設置位置は、図4、図5で説明したようにほぼ限定される。このため、使用用途にあった反射板の形状では、紫外線ランプ13に対するランプの表面温度を規定温度範囲内に収めることが困難となる。
【0029】
図7での紫外線透過ガラス板271,272は、ほぼ垂直の状態で、反射板171,172と紫外線ランプ13との間に配置される。この場合、紫外線透過ガラス板271,272の上方に紫外線ランプ13が配置され、空気の流れが図中実線の矢印で示すように紫外線ランプ13の周囲の風量が増加されることから、紫外線ランプ13に当たる風量も増加することになり、ランプの温度上昇を抑えることができる。
【0030】
図8での紫外線透過ガラス板271,272は、上方ほど互いが近づくよう傾斜させた状態で、反射板171,172と紫外線ランプ13との間に配置される。この場合、紫外線透過ガラス板271,272の間隔が狭くなった上方に紫外線ランプ13が配置されていることから、空気の流れが下方から上方に風量を増加させる作用がある。この場合上方の空気の流れが、図中実線矢印で示されるように絞られることから、この部分の風量がより増加することになる。風量の流れがより増加された位置に配置された紫外線ランプ13は、より温度上昇を抑えることができ、ランプの寿命をより長くさせることが可能となる。
【0031】
この実施形態では、紫外線照射装置の使用用途により反射板の形状と紫外線ランプの設置位置がほぼ限定されるが、紫外線ランプと反射板との間に紫外線透過ガラス板を設置したことでランプ温度の管理が実現可能となった。これにより、紫外線ランプのランプ温度を規定値以内に抑えることでランプの長寿命化が実現可能となる。
【0032】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない、例えば、ランプユニット部と照射部との間に形成される照射口に配置された石英ガラス、赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタは、紫外光を照射させる被照射物により、全てが必ずしも必要ではなく、目的に応じて石英ガラスのみ、石英ガラスと紫外線カットフィルタあるいは紫外線カットフィルタの何れであっても構わない。
【0033】
また、紫外線ランプから放射される紫外光は、反射板により集光あるいは平行光とするだけでなく拡散させるものであっても構わない。要は、紫外線透過ガラス板を用いて紫外線ランプに当てられる風量を増加させることができればよい。
【符号の説明】
【0034】
10 ランプハウス
11 ランプユニット部
12 照射部
13 紫外線ランプ
171,172 反射板
20 照射口
24 排気口
25,26 吸気口
271,272 紫外線透過ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を放射するランプから発生される熱を気体により冷却する冷却機構および前記ランプの周囲に配置して前記紫外光を一定方向に反射させる反射機構を備えた紫外線照射装置において、
少なくとも前記ランプ中心位置から前記反射機構を結んだ直線上に紫外線透過ガラス材を配置したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線透過ガラスは、300〜380nmの波長帯における透過率を90%以上としたことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外線透過ガラスは、石英ガラスであることを特徴とする請求項1または2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線透過ガラスは、垂直の状態で対向配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記紫外線透過ガラスは、下方から上方に行くに従い互いが接近する傾斜状態で配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記紫外線ランプは、前記紫外線透過ガラスの上方で挟む状態に配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−181266(P2011−181266A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42926(P2010−42926)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】