説明

紫外線照射装置

【課題】発光スペクトルを変化させることなく、紫外線の調光を図る。
【解決手段】ランプハウス11内に、マイクロ波を発生させるマグネトロン131,132および導波管151,152を介してマイクロ波に基づき紫外線を発光することが可能な希ガスと放電媒体が封入された無電極ランプ12が配置される。無電極ランプ12から放射される紫外線は、リフレクタ231,232を用いて被照射物に対する集光または拡散を行う。ランプハウス11には紫外線を外部に照射させる照射窓111を形成し、この照射窓111に、紫外線を通過させる窓241が形成された第1シャッター24と窓251が形成された第2シャッター25を対向配置する。開口241,251が互いにずれる方向に第2シャッター25を移動可能とし、紫外線の照射量を調整して調光を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波給電式による無電極紫外線ランプを用いて、例えば主に印刷関連でのインク乾燥、半導体関連の微細露光、液晶関連の接着剤硬化等の用途に用いられる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロ波給電式による紫外線照射装置は、システム筐体の下部にマイクロ波をシステム筐体外に漏洩させないための電磁シールドを設けられている。このような紫外線照射装置は、ランプの有効発光長が短いことから複数本のランプが平行配置されるようにモジュール化し、照射エリアの長尺化が図られている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−224208公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、広面積の被照射面では高均斉度が得られにくいということから、各ランプで調光することで装置全体として被照射面での光量の均一性である均斉度を確保する必要がある。
【0005】
しかしながら、ランプの入力電力を可変させてランプを調光する場合、ランプ温度やランプの発光強度などのランプの発光状態が変化することから発光スペクトルが変化し、被照射物に悪影響を与えてしまう、という問題があった。
【0006】
この発明の目的は、ランプの発光スペクトルを変化させることなく紫外線の調光を図ることを可能とする紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、
マイクロ波により紫外線が放射可能な放電媒体が封入された無電極ランプ、該無電極ランプにマイクロ波を照射させ、前記放電媒体を励起させるためのマグネトロン、前記紫外線を集光または拡散させるリフレクタとを少なくとも収容するとともに、前記マイクロ波を遮断するランプハウスと、前記ランプハウスに形成され、前記紫外線を外部に照射させる照射窓と、前記照射窓に取り付けられ、前記紫外線を通過させる第1シャッターと、前記第1シャッターと対向配置して前記窓に取り付けられ、前記紫外線を通過させる第2シャッターと、を具備し、前記第1および第2シャッターの少なくともいずれか一方を移動させて前記紫外線の照射量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、簡単な構成でランプの発光スペクトルを変化させることなく紫外線の調光を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するための正面図である。
【図2】図1のI−I’断面図である。
【図3】図3は図1の具体例について説明するための構成図。
【図4】図1の第1および第2シャッターについて説明するための正面図である。
【図5】図1の第1および第2シャッターの関係について説明するための斜視図である。
【図6】図1の第1および第2シャッターの動作について説明するための説明図である。
【図7】図1の第1および第2シャッターの動作について説明するための説明図である。
【図8】図1の第1および第2シャッターの開口の大きさと形成位置の関係について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3は、この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するためのもので、図1はシステム構成図、図2は図1のI−I’線断面図、図3は図1で用いる無電極ランプの一例について説明するための構成図である。
【0012】
図1、図2において、11はマイクロ波を遮蔽する機能を有する、例えばステンレス製のランプハウスであり、このランプハウス11の中央下方部には電極を備えない、いわゆる無電極ランプ12を配設してある。131,132は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生させるマグネトロンである。14は、マグネトロン131,132を駆動させるための電力を供給するための電源である。151,152は、マグネトロン131,132で発生させたマイクロ波をアンテナ161,162から送信させ、無電極ランプ12に伝達させる導波管である。
【0013】
ランプハウス11の下部の開放部に配置された17は、紫外線は放射し、マイクロ波はランプハウス11外に放射されることを防止するための網状のシールド部材である。シールド部材17は、例えば、金属線をメッシュ状に編み込んで形成したり、金属板にパンチング加工で形成したりすることで、マイクロ波はシールドし、紫外線は通過させることができる。
【0014】
ここで、図3を参照して無電極ランプ12の構成例について説明する。121は紫外線を透過させる石英ガラス製の長さが240mm程度の円筒形状のバルブである。バルブ121は、中央部122をその両端部123,124よりも細くなるようにテ―パをつけたもので、両端部123,124の外径は例えば17mm程度、中央部122の外径は10mm程度である。
【0015】
バルブ121の発光空間125内には、不活性ガスとそれに水銀と鉄を主成分とする放電媒体が封入されており、マイクロ波で放電媒体を励起させることで紫外線を放射させる。バルブ121の両端には、バルブ121を支持する支持部126,127がバルブ121と一体的に形成される。
【0016】
なお、共通のランプハウス11内に2個のマグネトロン131,132を設置した例としたが、1個であっても構わない。また、無電極ランプ12は、中央部122をその両端部123,124よりも細くなるようにテ―パをつけたが、両端123,124と同径であっても構わない。
【0017】
再び、図1、図2において、18は、無電極ランプ12から放射された紫外線を受光する、金属線をメッシュ状に編み込んだり、金属板にパンチング加工したりしたカバーで覆われた受光素子である。19は、受光素子18が受光した光の量を検出する光量検出器である。さらに、20は、光量検出器18により検出された光量が、予めROM(Read Only Memory)に記憶させた光量情報の値と等しくなるような制御信号を生成する制御部である。
【0018】
光量検出器19は、受光素子18に対しリード線などで電気的に接続され、受光素子18で受光された光量を、例えば受光素子18から供給される電流の値により検出するようになっている。光量検出器19は、制御部20に対しリード線などで電気的に接続され、検出した光量を示すアナログ電圧を制御部20へ与えるようになっている。制御部20では、入力されるアナログ電圧に基づいた制御信号を出力する。
【0019】
さらに、ランプハウス11の上部には、ランプハウス11の内部に、例えば、風を供給することにより無電極ランプ12とマグネトロン131,132を冷却させるファンを主体とする冷却機構21が設けられる。
【0020】
無電極ランプ12の背面側にはフレーム22に取着されたリフレクタ231,232が設置される。また、無電極ランプ12と対向するシールド部材17の反対面と対向する位置には、ランプハウス11から紫外線を照射させる照射窓111が形成され、この照射窓111の位置に第1シャッター24が取り付けられている。
【0021】
第1シャッター24は、金属製で形成されており、図4(a)にも示すように、紫外線を通過させる、例えば行方向に7個、列方向に7個の計49個の開口241が設けられている。
【0022】
25は、第1シャッター24に対向配置される第1シャッター24と同材料で形成され、照射窓111に取り付けられた第2シャッターである。図4(b)にも示すように、第2シャッター25には、第1シャッター24に形成された開口241と同位置、同大きさ、同個数の開口251が形成される。
【0023】
第2シャッター25は、図5にも示すように、矢印A,B方向に移動可能である。すなわち、第2シャッター25は、開口241と251を一致させる第1の位置と第2シャッター25の開口251が形成されない部分で、第1の開口241を塞ぐ第2の位置との間を自由に移動可能となる。第1および第2シャッター24,25は、所望の位置にある場合に、第2シャッター25を矢印A方向に移動させると開口度が増し、矢印B方向に移動させると開口が塞がる状態となる。
【0024】
第2シャッター25は、制御のし易さや、移動後の状態維持を考えた場合、ランプハウス11側を直線ギアとし、第2シャッター25側を回転ギアとし、回転ギアを直線ギアに噛合させて回転させることで、スムースな移動とともに任意の位置での確実な保持が可能となる。
【0025】
シャッター25は、駆動部26で操作杆27を駆動することによって、矢印AあるいはB方向に移動させることができる。駆動部26は、制御部20からの制御信号に基づき駆動量が決定される。
【0026】
また、第2シャッター25は、ガイドするガイド溝をランプハウス11の側面に形成し、第2シャッター25の側縁部を支えるようにし、移動後は操作杆27で保持するようにしてもよい。
【0027】
なお、28は、無電極ランプ12とリフレクタ231,232それにシールド部材17で構成されるマイクロ波空洞部である。
【0028】
ここで、第1および第2シャッター24,25の関係について図6、図7を参照し、さらに詳しく説明する。
【0029】
図6、図7のそれぞれ(a)は紫外線照射装置の必要な部分のみを示した概略図、(b)は第1シャッター24の開口241と第2シャッター25の開口251との関係を、第2シャッター25側から見た状態を示した正面図である。
【0030】
まず、図6において、第1および第2シャッター24,25の開口241,251が互いに塞がれた状態を示している。この場合、無電極ランプ12から放射される紫外線は、第1および第2シャッター24,25で塞がれて被照射体に対して照射させることはできない。
【0031】
図7は、図6の第2シャッター25の位置から矢印B方向に、駆動部26で操作杆27を駆動させた状態を示している。この場合、開口241,251が重なる状態となり、マイクロ波空洞部28とランプハウス11の外側とが開放状態となり、無電極ランプ12から放射される紫外線を、開口241,251を通して被照射体に対して照射させることができる。
【0032】
操作杆27は、制御部20のROMに予め記憶された光量情報に基づき、制御部20で光量が低いと判断されたときは、開口241と251との開口面積が大きくなるように、光量が高いときは開口241と251との開口面積が小さくなるように駆動部26で駆動される。
【0033】
このように、受光素子18で検出された紫外線の光量情報と制御部20で比較を行い、その結果を制御信号として駆動部26に供給し、駆動部26で操作杆27を駆動させ、ROMの光量情報に基づいた値の紫外線が開口241,251から照射されるようにしている。
【0034】
図8は、第1および第2シャッター24,25の開口241,251の大きさとこれらを形成する位置関係について説明するための説明図である。
【0035】
第2シャッター25の開口251と隣に位置する開口251間の第1シャッター24で塞ぐ横幅w1は、開口241の横幅と同様とする。また、開口251の横幅w2も横幅w1と同様とする。これにより、第2シャッター25は、横幅w1(w2)の移動だけでよい。つまり、操作杆27が第2シャッター25を矢印A,B方向に動かす距離としては、横幅w1(w2)ということになる。
【0036】
この実施形態では、第2シャッターを移動させることにより、第1シャッターとを合わせた場合における開口面積の調整することで紫外線の光量調整を行っている。このため、発光スペクトルを変化させることなく、紫外線の調光を実現させることができる。
【0037】
ここで、紫外線の照射面積を拡大するために、複数台の紫外線照射装置を並べてモジュール化した場合について考える。
【0038】
例えば、無電極ランプが直線上に配置されるように、紫外線照射装置を複数台並べ、実質的にランプ長を長くした照射面積の拡大が考えられる。各紫外線照射装置から照射される光量は、一致しないことが考えられ、各紫外線照射装置に設けられた光量素子から検出される光量と、制御部のROMに記憶された光量値とが一致するように、各紫外線照射装置の移動可能なシャッターを、操作杆を通して操作することにより調光をすることが可能となる。
【0039】
照射面積は、無電極ランプを直線上に配置することに加え、無電極ランプの軸と直交する方向に複数台並べることで、縦と横の面積を拡大することも可能である。この場合で、各紫外線照射装置の光量と制御部に記憶された光量値とを合わせるようにしたことで、均斉度を得ることができる。
【0040】
この場合は、制御部で全紫外線照射装置の光量を管理し、各紫外線照射装置の移動可能なシャッターを制御することで、全紫外線照射装置から放射される紫外線の均斉度の向上を、発光スペクトルを変化させることなく実現することができる。
【0041】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1および第2シャッターの開口は、同形状としたが異なっても構わない。要は、第1の位置では紫外線の照射を塞ぎ第2の位置では最も紫外線の照射量を増やし、第1と第2の位置との間で任意に紫外線の照射量を変化させることができればよい。ただ、第1および第2シャッターの開口の大きさを異ならせた場合は、移動する側のシャッターの移動量が大きくなることが考えられ、同じ大きさが好ましい。さらに、第1および第2シャッターは同材料としたが、異なる材料で形成しても構わない。
【0042】
開口の調整には、第1および第2シャッターの何れも移動させることでも可能である。ただし、第1および第2シャッターの両方を移動させるようにするには、移動機構が複雑になる。このため、この実施形態では一方のシャッターの移動としている。
【0043】
さらに、第1および第2シャッターの少なくともいずれか一方は、マイクロ波がランプハウス外に漏洩されることを防止するためのシールド部材として兼用させても構わない。この場合は、部品点数削減に寄与することになる。
【符号の説明】
【0044】
11 ランプハウス
111 照射窓
12 無電極ランプ
131,132 マグネトロン
14 電源
151,152 導波管
161,162 アンテナ
17 シールド部材
18 受光素子
19 光量検出器
20 制御部
21 冷却機構
22 フレーム
231,232 リフレクタ
24 第1シャッター
25 第2シャッター
26 駆動部
27 操作杆
28 マイクロ波空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波により紫外線が放射可能な放電媒体が封入された無電極ランプ、該無電極ランプにマイクロ波を照射させ、前記放電媒体を励起させるためのマグネトロン、前記紫外線を集光または拡散させるリフレクタとを少なくとも収容するとともに、前記マイクロ波を遮断するランプハウスと、
前記ランプハウスに形成され、前記紫外線を外部に照射させる照射窓と、
前記照射窓に取り付けられ、前記紫外線を通過させる第1シャッターと、
前記第1シャッターと対向配置して前記窓に取り付けられ、前記紫外線を通過させる第2シャッターと、を具備し、
前記第1および第2シャッターの少なくともいずれか一方を移動させて前記紫外線の照射量を調整することを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記第1および第2シャッターには、紫外線を通過させる複数の開口が同じ位置に形成したこと特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第1および第2シャッターに形成された開口は、同形状であることを特徴とする請求項2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記第1および第2シャッターの少なくともいずれか一方は、前記マイクロ波を遮断するためのシールド部材を兼ねたことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記第1および第2シャッターの移動方向の開口と非開口の幅はほぼ同じにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記第1および第2シャッターのいずれか一方の移動は、前記紫外線の光量と予め設定された光量情報との比較に基づき制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の紫外線照射装置を並べて配置し、各紫外線照射装置からの光量情報と予め設定された光量情報をそれぞれ比較し、その結果に基づき各紫外線照射装置から放射される紫外線の調光を行い光量の均一化を図るように光量の制御を行ったことを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−204435(P2011−204435A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69836(P2010−69836)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】