説明

紫外線照射装置

【課題】 被処理液の処理が十分かつ効率よく行える紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】
本発明の紫外線照射装置は、内部にガスが封入された容器1と、少なくとも一部が容器1内に位置するように配置された複数の管状の紫外線ランプ2と、少なくとも一部が容器1内に位置するように、かつ紫外線ランプ2と略平行するように配置された液体導管4と、を具備する水処理装置であって、紫外線ランプ2の管軸に対して垂直な断面において、複数の紫外線ランプ2は、隣接する紫外線ランプ2と中心同士を結んだときに多角形(例えば、四角形)となるように配置され、液体導管4は、その多角形内に配置されており、紫外線ランプ2と液体導管4の集合61〜64は複数構成されており、集合は、隣接する集合の少なくとも一の紫外線ランプ2を共用するようにして多角形を形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の殺菌や液体中の有機物の分解等を行うために使用される紫外線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体の殺菌や液体中の有機物の分解等を行うための紫外線照射装置としては、一般的に二種類の方式の装置が知られている。一つは、特許文献1や特許文献2のように、複数配置した二重管型の紫外線ランプを容器で覆い、その容器内に被処理液を流すことで、液体の処理を行う方式である。もう一つは、特許文献3のように、紫外線透過性の材料からなる管を囲むように紫外線ランプを複数配置し、その管内に被処理液を流すことで、液体の処理を行う方式である。前者の方式では、多くの液体を処理することができ、後者の方式では、確実に液体を処理することができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−138157号公報
【特許文献2】特開2007−152155号公報
【特許文献3】特開平5−253565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、最近では、より純度の高い液体、例えば超純水などを紫外線照射装置で精製したいというニーズがある。この超純水などの精製には、従来、一般的に使用されていた254nmよりも波長が短い185nmなどの波長を照射する紫外線ランプを使用することになるが、このような短波長の紫外線は雰囲気や液体による減衰が激しい。そのため、前者の方式では、ランプから離れた箇所を通る液体には紫外線が届かなくなり、処理が不十分となる。一方、後者の方式では、処理できる液体の量が少ないため、効率が悪い。
【0005】
本発明の目的は、被処理液の処理が十分かつ効率よく行える紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の紫外線照射装置は、内部にガスが封入された容器と、少なくとも一部が前記容器内に位置するように配置された複数の管状の紫外線ランプと、少なくとも一部が前記容器内に位置するように、かつ前記紫外線ランプと略平行するように配置された液体導管と、を具備する水処理装置であって、前記紫外線ランプの管軸に対して垂直な断面において、複数の前記紫外線ランプは、隣接する前記紫外線ランプと中心同士を結んだときに多角形となるように配置され、前記液体導管は、その多角形内に配置されており、前記紫外線ランプと前記液体導管の集合は複数構成されており、前記集合は、隣接する前記集合の少なくとも一の前記紫外線ランプを共用するようにして多角形を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被処理液の処理を十分かつ効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態の紫外線照射装置について説明するための図。
【図2】図1の紫外線照射装置のX−X’断面について説明するための図。
【図3】液体の紫外線透過率について説明するための図。
【図4】第1の実施の形態の紫外線照射装置の変形例について説明するための図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の紫外線照射装置について説明するための図。
【図6】第2の実施の形態の紫外線照射装置の変形例について説明するための図。
【図7】本発明の第3の実施の形態の紫外線照射装置について説明するための図。
【図8】容器の変形例について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の放電ランプについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の紫外線照射装置について説明するための図、図2は、図1の放電ランプのX−X’断面について説明するための図である。
【0010】
図1の紫外線照射装置は、超純水を精製するための装置であり、外囲器として容器1を備えている。
【0011】
容器1は例えば鉄やステンレスなどの金属からなるものであり、胴部11と蓋部12とで構成されている。胴部11は、内部に空間111を備える円筒であり、その内面には、アルミニウム等の層を形成することにより鏡面反射特性を有する反射面112が形成されている。また、胴部11の側面には排気・ガス導入口113が形成されている。蓋部12は、容器1の蓋であり、一対存在し、胴部11と溶接することにより一体化される。この蓋部12には円形の穴部121が複数形成されている。
【0012】
容器1には、185nmの紫外線を照射可能な管状の紫外線ランプ2が配置されている。この紫外線ランプ2は、いわゆる冷陰極放電ランプであり、主要部として円筒状のガラス管を備えている。このガラス管は、石英または合成石英からなる紫外線透過性の材料からなり、その外径は3〜24mmである。ガラス管の両端には、カップ電極、封着線およびアウターリードで構成された電極マウントが、カップ電極がガラス管内で対向するように封着されている。ガラス管の内部空間には、水銀と希ガスが封入されている。この希ガスとしては、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトンを単体または複数組み合わせて使用するのが望ましい。
【0013】
このような紫外線ランプ2が、少なくとも一部が空間111に位置するように容器1に配置されている。具体的には、蓋部12の穴部121に紫外線ランプ2が挿通され、両端部の電極付近は容器1の外部、それ以外の部分は空間111に位置するように配置されている。このとき、紫外線ランプ2と穴部121の間には、その隙間を埋めるように密封部材としてOリング3が配置されている。同様に、紫外線ランプ2は管軸がそれぞれ略平行の関係になるように複数配置されている。本発明での略平行とは、完全に平行であるのが最適だが、設計上生じる管の曲がりや、配置上生じる若干のズレ等は許容するという意味である。なお、図示していないが、これらの紫外線ランプ2は、容器1の外部において点灯回路と接続されている。
【0014】
また、容器1には、液体導管4が配置されている。この液体導体4は、紫外線ランプ2のガラスと同様、紫外線透過性のガラスからなる筒状の管であり、内部には被処理液5が流通される。この液体導管4は、少なくとも一部が容器1内に位置するように、かつ紫外線ランプ2の管軸と略平行するように配置されている。具体的には、蓋部12の穴部121に液体導管4が挿通され、一部は容器1の外部、それ以外の部分は空間111に位置するように配置されている。このとき、液体導管4と穴部121の間には、その隙間を埋めるように密封部材としてOリング3が配置されている。
【0015】
紫外線ランプ2や液体導管4等が配置されて、気密が保たれた容器1内部の空間111は、排気・ガス導入口113を介して、排気およびガスが導入されている。ガスを封入するのは、空間111が大気雰囲気であると、ランプから185nmの紫外線が照射されたときに、オゾンが発生し、紫外線が吸収されてしまうためである。すなわち、導入されるガスとしては、窒素、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトンの単体または混合ガスなどの紫外線が照射されてもオゾンが発生しにくいガスであるのが望ましい。特には、コストが安い窒素やアルゴンであるのが実用的である。なお、上記のようなガスの比率を調整して封入することで、空間111の熱伝導率を調整するようにしてもよい。
【0016】
ここで、紫外線ランプ2と液体導管4の管軸に対して垂直な断面における配置について詳しく説明する。
【0017】
図2からわかるように、紫外線ランプ2は、その中心と隣接、すなわち近接配置された紫外線ランプ2の中心同士を結んだときに多角形を形成するように配置されている。具体的には、4本の紫外線ランプ2により、正方形が形成されている。また、複数の紫外線ランプ2により構成された正方形の内部には、液体導管4がその中心が正方形の略中心に一致するように配置されている。このような配置とすることで、被処理液5に様々な方向から紫外線の照射が可能となるとともに、均一な照射が可能となるため、被処理液5の処理が確実となる。
【0018】
このような紫外線ランプ2と液体導管4の集合は、容器1内で複数構成されている。本実施の形態では、4つの集合61〜64が構成されており、その集合61〜64は共に正方形を形成する4本の紫外線ランプ2と液体導体4とで構成されている。ただし、これらの集合は、隣接する集合の少なくとも一の紫外線ランプ2を共用するようにして多角形を形成している。すなわち、例えば集合61は、集合62および集合64を構成する紫外線ランプ2を利用して正方形を形成している。このような配置とすることで、少ないランプ本数で多くの被処理液5を確実に処理することが可能となる。
【0019】
なお、液体導管4の内径Rは、12mm以下であるのが望ましい。液体の紫外線透過率は、図3に示すように距離が長くなるほど対数的に悪くなるためである。液体導管4の内径Rが12mm以下であれば、ランプから最も離れた部分でも10%程度の紫外線照射が可能となり、本実施の形態のようなランプの配置との組み合わせによって被処理液5全体に十分な紫外線を照射することが可能となる。
【0020】
下記に本実施の形態の冷陰極放電ランプの一実施例を示す。
【0021】
(実施例)
容器1;ステンレス製、内部には窒素を1atmで封入、内面にはアルミニウムによる鏡面層を形成、
紫外線ランプ2;ガラス管として全長=400mm、外径=5mmの合成石英管を使用し、封入物として水銀を4mg、アルゴン:ネオンからなる混合ガスを比率が10%:90%、圧力が50torrとなるように封入した、185nmの紫外線を照射可能な冷陰極放電ランプ、
液体導管4;外径=5mm、内径R=3mmの合成石英ガラス管を使用、
配置;紫外線ランプ2を9本用いて正方形が4つ形成されるように配置し、それら4つの正方形の中心に1本ずつ、すなわち計4本の液体導管4を配置。
【0022】
この実施例において、それぞれの紫外線ランプ2に8Wの電力(電流=15mA)を投入し、それぞれの液体導管4に被処理液5として純水を流す試験を行った。純水としては、リグニン、タンニン、フミン酸、フルボ酸等の自然物、エンドトキシン、リボヌクレアーゼ等の生理活性物質、農薬、溶剤、除草剤、環境ホルモン等の人工物からなる有機物を約100μg/リットルを含むものを使用し、流量は4リットル/分とした。結果、当該紫外線照射装置を通った純水は、有機物が5μg/リットル以下まで低減されており、純度の高い液体を精製可能であることが確認された。
【0023】
また、液体導管4の一本あたりに紫外線ランプ2を4本使用する場合には、4リットル/分の水を処理するのに32Wを要するのに対し、実施例の装置では18W(72W÷4)で済むため、液体を効率よく処理することが可能である。
【0024】
したがって、本実施の形態では、紫外線ランプ2の管軸に対して垂直な断面において、複数の紫外線ランプ2を、隣接する紫外線ランプ2と中心同士を結んだときに四角形となるように配置し、液体導管4を、その四角形内に配置するとともに、そのような紫外線ランプ2と液体導管4の集合61〜64を複数構成し、その集合を、隣接する集合の少なくとも一の紫外線ランプ2を共用するようにして四角形を形成したことで、液体導管4内を流れる被処理液5の全体に十分な紫外線を照射することが可能となるとともに、少ないランプ本数で多くの液体を処理することが可能になるため、被処理液5の処理を十分かつ効率よく行うことができる。
【0025】
また、液体導管4の中心を複数の紫外線ランプ2で構成された多角形の略中心に配置したことで、被処理液5に対して均一な紫外線照射が可能となるため、より確実な処理を行うことができる。
【0026】
また、液体導管4の内径Rを12mm以下としたことで、液体の厚みによって照射強度が大きく減衰してしまう185nm以下の波長を照射可能な紫外線ランプ2を用いたとしても、被処理液5の処理を十分かつ効率よく行うことができる。
【0027】
なお、図4(a)に示すように集合の紫外線ランプ2を三角形を形成するように配置したり、(b)に示すように集合の紫外線ランプ2を六角形を形成するように配置したりした場合でも、実施例の紫外線照射装置と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態の紫外線照射装置について説明するための図である。この第2の実施の形態の各部について、第1の実施の形態の紫外線照射装置の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0029】
本実施の形態では、紫外線ランプ2と液体導管4とが接触するように配置している。このように配置することで、容器1内の空間111を有効利用することができるため、処理の確実性を増したり、処理効率を良好にしたりすることができる。なお、図6のように、紫外線ランプ2の配置をハニカム状とし、紫外線ランプ2と紫外線ランプ2も接触するようにしてもよい。
【0030】
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の第3の実施の形態の紫外線照射装置について説明するための図である。
【0031】
本実施の形態では、集合61〜64が配置された容器1内の空間111の残余の空間に集合71〜79を配置している。この集合71〜79は、集合61〜64を構成する紫外線ランプ2は正三角形を形成しているのに対して、二等辺三角形を形成するようにしている。このように、異なる形状の多角形を組み合わせるように紫外線ランプ2を配置することで、容器1内の空間111を有効利用することができる。なお、本実施の形態のように、異なる大きさの紫外線ランプ2や液体導管4を組み合わせるようにしてもよい。
【0032】
以上、実施の形態をいくつか説明したが、本発明は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0033】
容器1は、真円の筒である必要はなく、図8のように楕円等であってもよい。図8では余分な空間111が小さくなるので、小型の紫外線照射装置を実現することができる。
【0034】
紫外線ランプ2は、熱陰極放電ランプ、誘電体バリア放電などであってもよい。また、U字管やコ字管等の屈曲管であってもよい。また、ランプ全体が容器1内に配置されるようにしてもよい。また、185nmなどの所定の波長の紫外線強度を高めるために、封入物を変えたり、蛍光体層を塗布したりしてもよい。
【0035】
被処理水6は、透明度の高い水に限らず、血液や汚水などであってもよい。ただし、このような透明度の低い液体では、紫外線の透過率はさらに低下してしまうため、内径Rが小さい液体導管4を使用したり、液体の流量を下げたりするのが望ましい。
【符号の説明】
【0036】
1 容器
2 紫外線ランプ
4 液体導管
5 被処理液
61〜64 集合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガスが封入された容器と、
少なくとも一部が前記容器内に位置するように配置された複数の管状の紫外線ランプと、
少なくとも一部が前記容器内に位置するように、かつ前記紫外線ランプと略平行するように配置された液体導管と、を具備する水処理装置であって、
前記紫外線ランプの管軸に対して垂直な断面において、複数の前記紫外線ランプは、隣接する前記紫外線ランプと中心同士を結んだときに多角形となるように配置され、前記液体導管は、その多角形内に配置されており、
前記紫外線ランプと前記液体導管の集合は複数構成されており、前記集合は、隣接する前記集合の少なくとも一の前記紫外線ランプを共用するようにして多角形を形成していることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線ランプは、185nmの波長の紫外線を照射可能なランプであり、前記液体導管は、その中心が多角形の略中心に配置されるとともに、その内径Rが12mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96159(P2012−96159A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245465(P2010−245465)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】