説明

紫外線照射装置

【課題】紫外線ランプを収容するケーシング内のガスの置換効率を向上させることにより、ガスの置換時間を短縮するとともに、当該置換におけるガスの使用量を低減する。
【解決手段】ワークWに紫外線を照射する紫外線ランプ2と、紫外線ランプ2を収容し、ワークWに対向して開口する開口部31を有するケーシング3と、ケーシング3内にガスを供給するガス供給機構4とを備え、ケーシング3の内面又は内部空間に、ガス供給機構4により供給されたガスを紫外線ランプ2の周囲を一方向に循環させるための循環案内面3xが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板等のワークの表面を清浄化するために、ワークの表面に紫外線を照射して表面上の有機物を酸化分解する紫外線照射装置が用いられている。
【0003】
ここで、紫外線ランプから射出される例えば波長172nmの紫外線は、雰囲気中の酸素分子に吸収されてしまう。具体的には波長172nmの紫外線は、大気中で2mm進むだけで30%〜40%程度に減衰してしまう。このため、特許文献1や特許文献2等に示すように、紫外線ランプを収容するケーシング(ランプハウス)内に例えば窒素(N)ガス等の不活性ガスを充満させるとともに、紫外線ランプとワークとの間を不活性ガスで充満させている。このように紫外線ランプの周囲雰囲気を不活性ガスで充満させることで、紫外線ランプから射出された紫外線の減衰を防止して、ワークへの紫外線の照射効率を向上させることによってワークの洗浄効率の向上を図っている。
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2に示すものでは、概略直方体形状をなすケーシングの上面から下方向に不活性ガスを供給する、あるいは、ランプハウスの側面から横方向に不活性ガスを供給するため、ランプハウス内の不活性ガス置換に時間がかかってしまうという問題がある。また、ランプハウス内の角部に滞留したガスが置換されにくいだけでなく、紫外線ランプにおける不活性ガス導入口とは反対側の空間でガス置換が起こりにくく、置換が終了するまでに使用する不活性ガスの供給量も増えてしまうという問題がある。
【0005】
また、ケーシング内を不活性雰囲気にするためには、ケーシングの紫外線照射側に設けた開口部を光透過窓で密閉する必要があるし、光透過窓とワークの間の空間を不活性ガス雰囲気にするために、第2のガス供給機構を設けたり、光透過窓とケーシングの間に隙間を設けて、ケーシング内のガスをワーク側へ導入する機構を設ける必要があり、部品点数が多くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−268974号公報
【特許文献2】特開2010−125368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、紫外線ランプを収容するケーシング内のガスの置換効率を向上させることにより、ガスの置換時間を短縮するとともに、当該置換におけるガスの使用量を低減することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る紫外線照射装置は、ワークに紫外線を照射する紫外線ランプと、前記紫外線ランプを収容し、前記ワークに対向して開口する開口部を有するケーシングと、前記ケーシング内にガスを供給するガス供給機構とを備え、前記ケーシングの内面又は内部空間に、前記ガス供給機構により供給されたガスを前記紫外線ランプの周囲を一方向に循環させるための循環案内面が設けられていることを特徴とする。
【0009】
このような紫外線照射装置であれば、ガス供給機構により供給されたガスがケーシングの内面又は内部空間に設けられた循環案内面に沿って紫外線ランプの周囲を一方向に循環することになるので、ケーシング内のガスの置換効率を向上させることができる。これによって、ケーシング内のガスの置換時間を短縮することができるとともに、ガスの使用量を低減することができる。ガスの使用量を低減できることから、紫外線照射装置のランニングコストのうち3分の1〜2分の1を占めるといわれるガスのコストを削減することができる。
【0010】
また、本発明の紫外線照射装置は、ガスを紫外線ランプの周囲に循環させることから、紫外線ランプとワークとの間の空間(紫外線ランプの紫外線照射側の空間)のガスの置換効率を向上させることができる。これにより、紫外線ランプとワークとの距離を大きくすることができ、1つの紫外線ランプによるワーク照射範囲を可及的に大きくすることができる。
【0011】
さらに、本発明の紫外線照射装置は、ガスを紫外線ランプの周囲を循環させることで、紫外線ランプへの白粉の付着を防止することもできる。なお、この白粉は、紫外線ランプの雰囲気中に有機溶剤、酸、アルカリ等の各種薬品が気化、霧化して浮遊している場合に、それが紫外線を受けて硫酸アンモニウム等の反応生成物を生じ、紫外線ランプに付着して生じる他、照射中のワークから発生する飛散物がランプに接触して再結晶化して生じる。この白粉により、紫外線の透過が阻害されて紫外線強度が低下する、白粉が紫外線ランプから剥がれ落ちて、ワークを汚染するという問題が生じる。
【0012】
前記ガス供給機構によるガス供給方向に沿った仮想線と、当該仮想線及び前記ケーシングの内面又は前記循環案内面の交点における接線とのなす角度が鋭角であることが望ましい。これならば、ガス供給機構により供給されたガスがケーシングの内面又は循環案内面に当たった後に、当該内面又は循環案内面に沿って流れ、紫外線ランプの周囲を一方向に循環し易くなる。したがって、ケーシング内のガスの置換効率、ガスの置換時間の短縮効果、及びガスの使用量の低減効果を高めることができる。
【0013】
前記ガス供給機構が、前記ケーシング内に形成されるガスの循環方向と同一方向に前記ガスを供給するものであることが望ましい。これならば、ガス供給機構により供給されたガスが、循環案内面に沿って紫外線ランプの周囲を一方向にさらに循環し易くなり、ケーシング内のガスの置換効率、ガスの置換時間の短縮効果、及びガスの使用量の低減効果をさらに高めることができる。
【0014】
前記循環案内面における前記ケーシングの長手方向に垂直な断面が、概略部分円形状、概略部分長円形状、概略部分楕円形状又は角部が円弧状をなす概略部分矩形状をなすことが望ましい。これならば、紫外線ランプの周囲にガスを循環させることができ、ケーシング内のガスの置換効率を向上させて、ガスの置換時間を短縮するとともに、当該置換におけるガスの使用量を低減することができる。ケーシングの内面が概略部分円形状又は概略部分楕円形状の場合には、その内面全体が循環案内面となり、概略部分長円形状(概略部分トラック形状)の場合には、その両側の円弧部が循環案内面となり、角部が円弧状をなす概略部分矩形状の場合には、その角部の円弧部が循環案内面となる。
【0015】
前記紫外線ランプが、長尺円筒形状をなすものであり、前記ケーシングが、前記紫外線ランプを収容する長尺筒形状をなすとともに、前記紫外線ランプの長手方向に沿った開口部を有するものが望ましい。これならば、紫外線ランプが円筒形状であるため、その軸方向周りの周囲にガスを循環させ易くなり、さらにケーシング内のガスの置換効率を向上させることができる。
【0016】
前記ガス供給機構が、前記ケーシングの長手方向略全体に亘って、前記ケーシング内にガスを供給するものであることが望ましい。これならば、長尺円筒形状をなす紫外線ランプを収容するケーシングにおいては、当該紫外線ランプの周囲を効率よくガスで充填させることができる。
【0017】
前記ガス供給機構が、前記ケーシングの上部において、前記ケーシング内に形成されるガスの循環方向と同一方向にガスを供給する第1の供給部と、前記ケーシングの開口部において、前記第1の供給部により供給されたガスの循環方向と同一方向にガスを供給する第2の供給部とを有することが望ましい。特に、第2供給部が、紫外線ランプとワークとの間の空間に向かって、第1供給部により供給されたガスの循環方向と同一方向にガスを供給するものであることが望ましい。これならば、紫外線ランプの上側と下側との両方からガスを供給することになるので、紫外線ランプ周囲のガスの循環を効率よく行うことができ、ガスの置換効率を向上させることができる。
【0018】
前記ガス供給機構により供給されたガスの循環方向が、前記ワークの搬送方向に沿った方向であることが望ましい。このように循環方向と搬送方向とを揃えることによって、ワークの搬送によってガスの循環が乱されることが無く、より一層ガスの循環を促進させることができる。
【0019】
紫外線ランプのワーク照射領域を可及的に大きくする場合には、紫外線ランプとワークとの距離を大きくすることが考えられる。このとき、ケーシングの開口部が、紫外線ランプの紫外線照射範囲を遮らないように形成するとともに、紫外線ランプ及びケーシングとワークとの距離を大きくすることが考えられる。このとき、ケーシングとワークとの間の空間におけるガスの置換が難しくなる。このため、ケーシングの開口部からワーク側に延設されて、前記紫外線ランプの紫外線照射範囲を遮らないように前記ワークを覆うカバー部を有することが望ましい。
【0020】
また、ガス供給機構がケーシング内に供給するガスとしては、不活性ガス又はプロセスガスであることが考えられる。ここで、プロセスガスとは、紫外線の吸収を抑えるとともに、ワークの処理を効率的に行うためのガスであり、例えば窒素ガス等の不活性ガスと酸素ガス等との混合ガスである。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、紫外線ランプを収容するケーシング内のガスの置換効率を向上させることにより、ガスの置換時間を短縮するとともに、当該置換におけるガスの使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の紫外線照射装置を示す斜視図。
【図2】同実施形態の紫外線照射装置を示す断面図。
【図3】置換開始後10秒後のシミュレーション結果を示す図。
【図4】基板搬送後のシミュレーション結果を示す図。
【図5】変形実施形態に係る紫外線照射装置の断面図。
【図6】ケーシングの第1変形例を示す断面図。
【図7】ケーシングの第2変形例を示す断面図。
【図8】ケーシングの第3変形例を示す断面図。
【図9】ケーシングの第4変形例を示す断面図。
【図10】変形実施形態の紫外線照射装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る紫外線照射装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る紫外線照射装置100は、液晶ディスプレイ用のガラス基板や半導体装置用の半導体基板等のワークWに紫外線を照射して、ワークWの表面を洗浄する基板洗浄装置に用いられるものである。
【0025】
具体的にこの紫外線照射装置100は、図1及び図2に示すように、下方に設けられたワークWに対して紫外線を照射する紫外線ランプ2と、この紫外線ランプ2を収容し、ワークWに対向して下方に開口する開口部31を有するケーシング3と、このケーシング3の内面に沿ってケーシング3内に窒素(N)ガス等の不活性ガスを供給するガス供給機構4とを備える。なお、ワークWは、図示しない搬送機構によって、紫外線照射装置100の下方を、図1の矢印S(紫外線照射装置100の長手方向に直交する方向、図2では紙面左から右の方向)に沿って搬送される。
【0026】
紫外線ランプ2は、例えば波長172nmの真空紫外線を射出するエキシマランプである。具体的にこの紫外線ランプ2は、図1に示すように、長尺円筒形状をなすものであり、図2に示すように、合成石英ガラス製の軸方向に直交する断面が円形状をなす密閉容器内に例えばキセノン(Xe)ガス等の放電用ガスが充填されており、軸方向から見て左右一対の対向面に、金属薄膜からなる帯状の電極21、22を設けられている。また、紫外線ランプ2は、その両端部がケーシング3内部に設けられた保持体5の貫通孔(不図示)に嵌入されて保持されるとともに、当該保持体5を介して電圧が印加されて点灯し、対をなす帯状の電極21、22の間から上下に紫外線を射出する。なお、対をなす帯状の電極21、22の間から下方向に射出される紫外線がワークWに照射される。また、紫外線ランプ2から照射された紫外線を有効に用いるために、紫外線ランプ2の内面上側又は外面上側に、紫外線を反射する層を設けても良い。
【0027】
ケーシング3は、長尺筒形状をなすものであり、その内部に、ケーシング3の軸方向(長手方向)と紫外線ランプ2の軸方向(長手方向)が平行となるように、紫外線ランプ2を収容する。また、ケーシング3の下方に形成された開口部31は、紫外線ランプ2の軸方向に沿って形成されており、軸方向から見て紫外線ランプ2の紫外線照射範囲Aを遮らないように形成されている。なお、紫外線ランプ2の紫外線照射範囲Aは、図2に示すように、対をなす帯状の電極21、22の下端と紫外線ランプ2の中心とを結ぶ角を中心角とする範囲である。
【0028】
そして、ケーシング3の内面は、ガス供給機構4により供給された不活性ガスを紫外線ランプ2の周囲を一方向に循環させるための循環案内面3xを有するように構成している。より詳細には、図2に示すように、ケーシング3の内面の長手方向に垂直な断面が、左右両端に部分円弧部3a、3bを有する概略部分長円形状(概略部分トラック形状)をなすものであり、この左右両端の部分円弧部3a、3bが循環案内面3xとして機能する。このようにケーシング3の内面は、長手方向に垂直な断面において、不活性ガスが滞留するような角部の無い滑らかな構造としている。
【0029】
また、このケーシング3の開口部31からワークW側に延設されて、紫外線ランプ2の紫外線照射範囲Aを遮らないようにワークWを覆うカバー部32a、32bを有する。このカバー部32a、32bは、開口部31から左右それぞれにおいて外側に広がるように形成されおり、紫外線ランプ2とワークWとの距離を大きくした場合に生じるワークW上の開放空間を覆うことで、紫外線照射範囲A全体が不活性ガスに置換されるようにするものである。なお、このカバー部32a、32bとワークWとの間隙から、ワークWの処理に必要な少量の酸素が、ワークWの搬送に伴って、ケーシング3内に流入する。
【0030】
ガス供給機構4は、ケーシング3の上部において、ケーシング3の長手方向全体に亘って、ケーシング3の内面に沿って不活性ガスを供給するものである。つまり、ケーシング3の長手方向に垂直な断面において、ガス供給機構4によるガス供給方向に沿った仮想線L1と、当該仮想線L1及びケーシング3の内面の交点Xにおける接線L2とのなす角度θが鋭角とされており、ガス供給機構4が、ケーシング3内に形成される不活性ガスの循環方向R(後述)と同一方向に不活性ガスを供給するものである。具体的にガス供給機構4は、ケーシング3の一方(図2では右側)の部分円弧部3bに設けられて、当該部分円弧部3bの内面の接線方向に沿って不活性ガスをケーシング3内に供給するものであり、部分円弧部3bに接続されるとともに部分円弧部3bの内面にて開口するガス導入部411と、このガス導入部411に不活性ガスを供給するガス供給配管412とを有する。
【0031】
このガス導入部411は、ケーシング3の部分円弧部3bにおいて長手方向に沿って設けられている。またガス導入部411は、上下2枚の平板によって部分円弧部3bの内面において長手方向に延びる1つの開口を有する。その他、ガス導入部411を、複数の管を例えば部分円弧部3bの長手方向に等間隔に接続することによって複数の開口を有するものとして形成しても良い。また、ガス供給配管412は、ガス導入部411に接続されるとともに、図示しない不活性ガス源から不活性ガスをガス導入部411に供給するものである。
【0032】
このガス供給機構4によってケーシング3内に供給された不活性ガスは、ケーシング3の内面に沿って流れる。つまり、一方の部分円弧部3bから供給された不活性ガスは、ケーシング3の平板部3cの内面に沿って他方の部分円弧部3aに流れて、当該部分円弧部3aの内面に沿って紫外線ランプ2の紫外線射出側(下側)に流れる。そして、紫外線ランプ2の紫外線射出側に流れた不活性ガスは、(ワークWがある場合はワークWの表面に沿って)一方の部分円弧部3bに流れて、この一方の部分円弧部3bの内面に沿って下側から上側に流れる。このようにして、紫外線ランプ2の周囲に一方向に循環する不活性ガスの流れRが形成される。この不活性ガスの循環方向Rは、搬送機構によってケーシング3の開口部31の下側を搬送されるワークWの搬送方向Sに沿った方向である。つまり、開口部31において不活性ガスは、左から右に向かって流れ、開口部31の下側においてワークWは、左から右に向かって流れる。
【0033】
次にこのように構成した紫外線照射装置100を用いた不活性ガスの置換効率のシミュレーション結果を示す。なお、比較例として、直方体形状をなすケーシングにおいて、シャワー状に上部から不活性ガスを供給する従来の紫外線照射装置における置換効率のシミュレーション結果を示す。なお、本実施形態及び比較例において不活性ガス(Nガス)の供給流速は、1m/sであり、ケーシング内のNガス置換を開始してから10秒後にワークの搬送を開始した。図3にNガス置換開始後10秒(ワーク搬送直前)のケーシング内の窒素濃度を示し、図4にワーク搬送開始後のケーシング内の窒素濃度を示す。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の紫外線照射装置100では、従来の紫外線照射装置に比べて、紫外線ランプよりも下側(紫外線照射側)において窒素濃度が高くなる時間が早いことが分かる。つまり、本実施形態の紫外線照射装置100は、従来の紫外線照射装置に比べてNガスの置換効率が改善されていることが分かる。
【0035】
図4に示すように、本実施形態の紫外線照射装置100では、ワークの搬送に伴って、ワークの搬送方向とNガスの循環方向が揃っているため、Nガスの循環が促進されることにより、紫外線ランプの下側のNガスの置換効率が向上していることが分かる。
【0036】
このように構成した本実施形態に係る紫外線照射装置100によれば、ケーシング3内面に沿って供給された不活性ガスがケーシング3内面に設けられた循環案内面3xに沿って紫外線ランプ2の周囲を一方向に循環することになるので、ケーシング3内の不活性ガスの置換効率を向上させることができる。これによって、ケーシング3内の不活性ガスの置換時間を短縮することができるとともに、不活性ガスの使用量を低減することができる。不活性ガスの使用量を低減できることから、紫外線照射装置100のランニングコストのうち3分の1〜2分の1を占めるといわれる不活性ガスのコストを削減することができる。また、不活性ガスを紫外線ランプ2の周囲に循環させることから、紫外線ランプ2とワークWとの間の空間(紫外線ランプ2の紫外線照射側の空間)の不活性ガスの置換効率を向上させることができる。これにより、紫外線ランプ2とワークWとの距離を大きくすることができ、1つの紫外線ランプ2によるワーク照射範囲を可及的に大きくすることができる。さらに、不活性ガスを紫外線ランプ2の周囲を循環させることで、紫外線ランプ2への白粉の付着を防止することもできる。その上、紫外線ランプ2の周囲を循環させることで、紫外線ランプ2の冷却も行うことができる。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0038】
例えば、図5に示すように、ガス供給機構4が、ケーシング3の上部において、ケーシング3内に形成される不活性ガスの循環方向Rと同一方向にガスを供給する第1の供給部41と、ケーシング3の開口部31においてケーシング3の長手方向全体に亘って前記第1の供給部41により供給された不活性ガスの循環方向Rと同一方向に不活性ガスを供給する第2の供給部42とを有するものであっても良い。なお、第1の供給部41は、前記実施形態のガス供給機構4と同一の構成である。
【0039】
この第2の供給部42は、ケーシング3の他方のカバー部32aに設けられて、カバー部32aから開口部31に向かって不活性ガスを供給するものであり、他方のカバー部32aに設けられるとともに、カバー部32aにて開口するガス導入部421と、このガス導入部421に不活性ガスを供給するガス供給配管422とを有する。
【0040】
このガス導入部421は、ケーシング3のカバー部32aにおいて長手方向に沿って設けられている。なお、図5においては、第1の供給部41と同様に、上下2枚の平板によってガス導入部421が形成されているが、ガス導入部421を複数の管を例えば等間隔にカバー部32aに接続することによって形成しても良い。また、ガス供給配管422は、ガス導入部421に接続されるとともに、図示しない不活性ガス源から不活性ガスをガス導入部421に供給するものである。
【0041】
この第2の供給部42によって開口部31に向かって流れる不活性ガスは、第1の供給部41により供給された不活性ガスとともに紫外線ランプ2の紫外線射出側(下側)に流れる。そして、第2の供給部42により供給された不活性ガスは、第1の供給部により供給された不活性ガスと共に、一方の部分円弧部3aの内面に沿って下側から上側に流れ、紫外線ランプ2の周囲に一方向に循環する不活性ガスの流れRが形成される。
【0042】
また、ケーシングの断面形状としては、前記実施形態に限られず、図6に示すように、概略部分円形状をなすものとしても良いし、図7に示すように、概略部分楕円形状をなすものとしても良い。この場合、ケーシング3の内面全体が循環案内面3xとして機能し、ガス供給機構4は、ケーシング3の断面円形をなす内面の接線方向に沿って不活性ガスを供給する。また、図8に示すように、角部が円弧状をなす概略部分矩形状をなすものとしても良い。この場合、ケーシング3の内面のうち、角部に形成された円弧部が循環案内面3xとして機能する。
【0043】
さらに図9に示すように、ケーシング3にカバー部を設けることなく構成し、左右の部分円弧部3a、3bに第1の供給部41及び第2の供給部42を設けるようにしても良い。
【0044】
また、前記実施形態では、ケーシング3の内面に循環案内面3xを設けた場合を示しているが、その他、図10に示すように、ケーシング3の内部空間3Kに循環案内面3xを設けても良い。具体的には、ケーシング3の内部空間3Kにおいて、紫外線ランプ2の周囲に、循環案内面3xが内面に形成された案内面形成部材300を設けることが考えられる。これならば、ケーシング3を従来の構成としつつ、ケーシング内のガスの置換効率、ガスの置換時間の短縮効果、及びガスの使用量の低減効果を奏することができる。なお、図10においては、ガス供給機構4が、循環案内面3xに向けてガスを供給する場合を示している。
【0045】
その上、前記実施形態ではケーシング内を不活性ガスで置換するものであったが、不活性ガスにワークの表面処理に有効な処理用ガス(例えば酸素ガス)を混合したガス(プロセスガス)を用いて、ケーシング内をこのプロセスガスで置換するものであっても良い。このようなものであれば、不活性ガスで完全に置換させることによってワークの表面処理の効率が低下してしまう恐れを未然に防止することができる。
【0046】
加えて、前記実施形態では、ケーシング内に1本の紫外線ランプを収容するものであったが、互いに平行に配置された複数の紫外線ランプを配置するようにしても良い。その他、紫外線ランプの外観形状は、長尺円筒形状をなすものに限られず、その他の形状を有するものであっても良い。また、紫外線ランプは、断面円形状をなすものに限られず、その他、断面矩形状をなす扁平な角筒形であり、その上下の一対の平坦面に電極(下側の電極はメッシュ状)を設けたものであっても良い。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
100・・・紫外線照射装置
W ・・・ワーク
S ・・・ワークの搬送方向
2 ・・・紫外線ランプ
A ・・・紫外線照射範囲
3 ・・・ケーシング
3x ・・・循環案内面
31 ・・・開口部
32a・・・カバー部
32b・・・カバー部
4 ・・・ガス供給機構
R ・・・循環方向
41 ・・・第1の供給部
42 ・・・第2の供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに紫外線を照射する紫外線ランプと、
前記紫外線ランプを収容し、前記ワークに対向して開口する開口部を有するケーシングと、
前記ケーシング内にガスを供給するガス供給機構とを備え、
前記ケーシングの内面又は内部空間に、前記ガス供給機構により供給されたガスを前記紫外線ランプの周囲を一方向に循環させるための循環案内面が設けられていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記ガス供給機構によるガス供給方向に沿った仮想線と、当該仮想線及び前記ケーシングの内面又は前記循環案内面の交点における接線とのなす角度が鋭角である請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記ガス供給機構が、前記ケーシング内に形成されるガスの循環方向と同一方向に前記ガスを供給するものである請求項1又は2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記循環案内面における前記ケーシングの長手方向に垂直な断面が、概略部分円形状、概略部分長円形状、概略部分楕円形状又は角部が円弧状をなす概略部分矩形状である請求項1乃至3の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記紫外線ランプが、長尺円筒形状をなすものであり、
前記ケーシングが、前記紫外線ランプを収容する長尺筒形状をなすとともに、前記紫外線ランプの長手方向に沿った開口部を有するものである請求項1乃至4の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記ガス供給機構が、前記ケーシングの長手方向略全体に亘って、前記ケーシング内にガスを供給するものである請求項5記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記ガス供給機構が、前記ケーシングの上部において、前記ケーシング内に形成されるガスの循環方向と同一方向にガスを供給する第1の供給部と、前記ケーシングの開口部において、前記第1の供給部により供給されたガスの循環方向と同一方向にガスを供給する第2の供給部とを有する請求項1乃至5の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記ガス供給機構により供給されたガスの循環方向が、前記ワークの搬送方向に沿った方向である請求項1乃至7の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記ケーシングの開口部が、前記紫外線ランプの紫外線照射範囲を遮らないように形成されており、当該開口部から前記ワーク側に延設されて、前記紫外線ランプの紫外線照射範囲を遮らないように前記ワークを覆うカバー部を有する請求項1乃至8の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記ガスが、不活性ガス又はプロセスガスである請求項1乃至9の何れかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−33948(P2013−33948A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142734(P2012−142734)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】