説明

紫外線硬化型インクの製造方法、及び、当該方法に基づくインク、印刷物、成形品

【課題】紫外線硬化型UVインクの方法において、シクロデキストリン又はその誘導体を配合した場合に、単数又は複数の単官能ラジカル重合性モノマーの適切な選択、及び相互間の適切な重量比を明らかにすること。
【解決手段】光反応開始剤、及び光重合反応性組成物を必須の成分としている紫外線硬化型インクの製造方法において、単官能ラジカル重合性モノマーを配合すると共に、シクロデキストリン又はその誘導体を配合し、基材上に印刷した後に紫外線によって硬化した段階における接着性、タック性、成形性の全てが良好であるか、又は少なくとも2個が良好であって、他の1個が不良でないような印刷を可能とする単官能ラジカル重合性モノマー及びシクロデキストリン又はその誘導体との重量比をそれぞれ選択することに基づく紫外線硬化型インクの製造方法、及び当該方法に基づくインク、印刷物、成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷方式、スクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式等の所定の方式によって印刷された後に、紫外線によって硬化し得る紫外線硬化型インク(以下、「UVインク」と略称する。)の製造方法において、シクロデキストリン又はその誘導体を配合することに基づく製造方法、及び当該方法に基づくUVインク並びに当該インクによって印刷又は塗布されて得られる加飾印刷物及び成形され得る加飾シート成形物並びに当該加飾印刷物及び加飾シート成形物を用いて製造されたインサートモールディング成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型インクは、通常、光反応開始剤、及び光重合反応性組成物を必須の構成要素としており、必要に応じて顔料、分散剤、その他の添加剤などが配合されているが、本発明においては、そのような配合を前提としたうえで、前記各方式等によって基材シート上に印刷された後に紫外線の照射によってインクを硬化させることを前提としている。
【0003】
UVインクは、前記各印刷方式に適する十分な流動性を有することが要求されることから、光重合反応性組成物として、単官能ラジカル重合性モノマーを不可欠な成分として採用しているが、当該単官能ラジカル重合性モノマーのみでは、硬化速度及び架橋密度が低いため、硬化皮膜にタックが残る場合が多く、また、フォーミングなどの成形性に劣り、かつ接着性においても不十分な状態にあることから、通常、単官能ラジカル重合性モノマーに多官能ラジカル重合性オリゴマーや多官能ラジカル重合性モノマーを配合している。
但し、単に単官能ラジカル重合性モノマーに多官能ラジカル重合性オリゴマーや多官能ラジカル重合性モノマーを配合しただけでは、フォーミングなどの成形性及び接着性その他の特性を十分開示することはできない状況にある。
【0004】
インクの製造方法として、シクロデキストリン又はその誘導体を配合することは、既に特許文献1〜5に示すように、インク製造業界において周知の技術的事項に該当している。
【0005】
しかしながら、特に紫外線照射によってインクを硬化させるUVインクの製造分野において、どのような光重合反応性組成物をシクロデキストリン又はその誘導体と組み合わせて配合することによって、接着性、タック性、及び成形性において検討することについては、これまで技術上の検討は殆ど行われていない。
【0006】
現に、特許文献6は、UVインクの製法を開示しているが、シクロデキストリン又はその誘導体と組み合わせて配合することについては全く想定していない。
【0007】
そして、この点は出願人自らの先願である特願2006−116810号出願(以下、当該出願に係る発明を「先願発明」と略称する。)の場合においても同様である。
【特許文献1】特開平5−132642号公報
【特許文献2】特開平9−31390号公報
【特許文献3】特開平11−106694号公報
【特許文献4】特開平11−263065号公報
【特許文献5】特開2006−316225号公報
【特許文献6】特願2007−131754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の如き従来技術の状況に鑑み、シクロデキストリン又はその誘導体と共に配合した場合に、単数又は複数の単官能ラジカル重合性モノマーの適切な選択、及び相互間の適切な重量比を明らかにすることによって、良好な特性を有するUVインクを得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明の基本構成は、光反応開始剤、及び光重合反応性組成物を必須の成分としている紫外線硬化型インクの製造方法において、光重合反応性組成物として単数又は複数種類の単官能ラジカル重合性モノマー及びシクロデキストリン又はその誘導体を配合し、基材上に印刷した後に紫外線によって硬化した段階における接着性、タック性、成形性の全てが良好であるか、又は前記各特性のうち、少なくとも2個が良好であって、他の1個が不良でないような印刷物を可能とするように単数又は複数種類の単官能ラジカル重合性モノマーを選択すると共に、各単官能ラジカル重合性モノマー及びシクロデキストリン又はその誘導体相互間の重量比を選択することに基づく紫外線硬化型インクの製造方法からなる。
【発明の効果】
【0010】
前記基本構成からも明らかなように、本発明においては、光重合反応性組成物として、多官能ラジカル重合性オリゴマーを配合せずに、単数又は複数の組合せによる単官能ラジカル重合性モノマーのみによってインクを形成することが可能となり、材料費を低コストとすることが可能となる。
【0011】
しかも、1種類の単官能ラジカル重合性モノマーのみの配合という簡単な製造方法を実現することができるばかりか、必ずしもフェノキシエチルアクリレートをベースとせずとも、色々な単官能ラジカル重合性モノマーの組合せによって、従来の技術概念では想定できなかったような多種類の素材に基づいて、高性能のUVインクを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、前記基本構成に基づく各実施形態について説明する。
【0013】
以下の説明においては、インクジェット方式用のUVインクに関する先願発明との対比に即して、インクジェット印刷方式用UVインクのデータに基づき、本願発明の特徴点を明らかにする。
但し、本願発明のUVインクは、単にインクジェット印刷方式だけでなく、スクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式等の他の印刷方式にも使用し得るUVインクを前提としているが、以下の実施形態、更には実施例において、印刷されたインクの膜厚が30μm以下という通常の場合には、UVインクの接着性、タック性、成形性に関する性能は、インクジェット方式、スクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式等の色々な印刷方式の種類を問わず一般的に妥当する以上、インクジェット方式用インクによるデータを以って、本願発明の代表的データとして採用することにする。
【0014】
実施形態(1)は、1種類の光重合反応性組成物を選択することを特徴としている。
【0015】
即ち、実施形態(1)は、シクロデキストリン又はその誘導体を配合することによって、光重合反応性組成物として、1種類の単官能ラジカル重合性モノマーのみの採用という先願発明では想定し得ないようなUVインクを実現している点に技術的意義が存在する。
【0016】
実施形態(1)を実現している具体例を裏付ける各組合せによる選択、及び当該選択に伴う適切な重量比の状況は、以下の表1に示すとおりである。
【表1】


※各○、△、×の評価基準は、以下のとおりである。
成形試験 ○:塗膜の割れが見当たらない状態を示す。
△:肉眼によって辛うじて確認し得る程度の微細な割れが部分的に生じて
いる状態を示す。
×:印刷物全体に割れが生じている状態を示す。
接着試験 ○:塗膜の剥離が生じない状態を示す。
△:基本的に塗膜の剥離は生じないが、周辺において若干剥離が生ずる状
態を示す。
×:塗膜の剥離が目立つ状態を示す。
タック試験 ○:指触によって全くベタツキ(タック)を感じない状態を示す。
△:指触に際し、多少ベタツキを感じるが、指触の痕跡が残らない状態を
示す。
×:硬化状態が完成せずに、指触した場合に痕跡が残る状態を示す。
尚、前記各○、△、×の評価基準は、以下の表においても全く同様である。
【0017】
上記表1からも明らかなように、フェノキシアエチルクリレートを選択し、かつシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を5〜10:1とするか、2−ヒドロキシブチルアクリレートを選択し、シクロデキストリン又はその誘導体との重量比を3〜5:1とするか、アクリロイルモルフォリンを選択し、シクロデキストリン又はその誘導体との重量比を3以上:1とするような配合は、実施形態(1)の具体例に該当する。
【0018】
このような具体例からも明らかなように、シクロデキストリン又はその誘導体に対する重量比を選択することによって、実用可能なUVインクを提供することが可能となり、この点において先願発明と明瞭なコントラストを呈している。
【0019】
実施形態(2)は、2種類の光重合反応性組成物を選択することを特徴としている。
【0020】
そして、実施形態(2)は、光重合反応性組成物として2種類の単官能ラジカル重合性モノマーを選択している点において共通しているが、選択に必要な組合せの範囲及び広範な重量比が実現可能である点において先願発明と相違している。
【0021】
実施形態(2)を実現している具体例を裏付ける各組合せによる選択、及び当該選択に伴う適切な重量比の状況は、以下の表2−1、同2−2に示すとおりである。


【表2−1】


表2−1からも明らかなように、フェノキシエチルアクリレートとフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとを1:0.5〜1.5の重量比にて組み合わせるか、フェノキシエチルアクリレートとアクリロイルモルフォリンとを1:0.3〜2の重量比にて組み合わせたことによる選択を行ったうえで、これらの2種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体とを4〜15:1の重量比とすることによる配合、及びフェノキシエチルアクリレートとビニルカプロラクタムとを1:0.3〜2の重量比にて組み合わせ、これらの2種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体とを4以上:1の重量比とすることによる配合は、実施形態(2)の具体例に該当する。
【0022】
先願発明においては、フェノキシエチルアクリレートをベースとして、他の1種類の単官能ラジカル重合性モノマーと組み合わせても良好な特性が得られない場合であっても、組合せ可能な単官能ラジカル重合性モノマーの範囲が限定されているのに対し、実施形態(2)の場合には、表2−1に示すように、フェノキシポリエチレングリコールアクリレートのように水酸基を有していない脂肪族系モノマー、更には2−ヒドロキシブチルアクリレートのような水酸基を有する脂肪族系モノマーとの組合せであっても、実用可能なUVインクが確保できることが判明する。
【0023】
しかも、先願発明において、ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルフォリンのような複素環式単官能ラジカル重合性モノマーとの組合せのように、本来シクロデキストリン又はその誘導体の配合を伴わずとも、良好な特性を発揮し得る場合であっても、シクロデキストリン又はその誘導体の配合によって、先願発明における単官能ラジカル重合性モノマー同士の重量比(フェノキシエチルアクリレート1に対し、0.5〜1.5)よりも広範な重量比による配合比率を組み合わせることが可能となることが判明する。
【表2−2】

【0024】
上記表2−2からも明らかなように、アクリロイルモルフォリンと2−ヒドロキシブチルアクリレートとを1:0.5〜1.5の重量比にて組み合わせるか、アクリロイルモルフォリンとイソボニルアクリレートとを0.5〜1.5の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、これらの2種類の単官能ラジカル重合性モノマーと、シクロデキストリン又はその誘導体との重量比を4〜15:1とすることによる配合は、実施形態(2)の具体例に該当する。
【0025】
先願発明においては、2種類の単官能ラジカル重合性モノマーを配合する場合においては、フェノキシエチルアクリレートをベースとしたうえで、他の単官能ラジカル重合性モノマーを配合することを前提としていたが、上記表2−2からも明らかなように、実施形態(2)においては、フェノキシエチルアクリレートをベースとせずとも、他の単官能ラジカル重合性モノマーとの2個の組合せによって、良好な性能が得られることが判明する。
【0026】
実施形態(3)は、光重合反応性組成物として3種類の単官能ラジカル重合性モノマーを選択することを特徴としている。
【0027】
実施形態(3)のように、3種類の単官能ラジカル重合性モノマーを選択して組み合わせる発想は、先願明細書には記載されておらず、本発明によって始めて実現されている。
【0028】
実施形態(3)を実現している具体例を裏付ける各組合せによる選択、及び当該選択に伴う適切な重量比の状況は、表3−1、3−2に示すとおりである。
【表3−1】

【0029】
前記表3−1からも明らかなように、フェノキシエチルアクリレートとビニルカプロラクタムとイソボニルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせるか、フェノキシエチルアクリレートとフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとビニルカプロラクタムとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、当該3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を3〜20:1とする配合、更には、フェノキシエチルアクリレートとビニルカプロラクタムと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、これらの3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を5以上とする配合は、何れも実施形態(3)の具体例に該当する。
【表3−2】

【0030】
表3−2からも明らかなように、アクリロイルモルフォリンと2−ヒドロキシブチルアクリレートとイソボニルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、当該3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を5〜15とすることによる配合、又はアクリロイルモルフォリンとビニルカプロラクタムと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、当該3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体の重量比を3以上とすることによる配合もまた実施形態(3)の具体例に該当する。
【0031】
表3−1、及び同3−2からも明らかなように、3種類の単官能ラジカル重合性モノマーを配合した場合には、シクロデキストリン又はその誘導体との広範な重量比にて良好な特性を発揮することが可能であることが判明する。
【0032】
本発明に基づくインクの製造方法、就中実施形態(1)、(2)、(3)によるインクの製造方法、更にはこれらの方法において、必要に応じて顔料、高分子分散剤、添加剤等を加えたことによるインクは、必然的に接着性、タック性、成形性のうちの少なくとも2個については良好な特性を発揮することができる。
【0033】
したがって、当該インクを基材上にインクジェットによる射出、又は印刷に基づいて単一又は複数の塗布層を形成し、当該塗布層に対する紫外線の照射による硬化工程を経たことに基づき加飾積層を形成している加飾印刷物、当該加飾印刷物を真空成形又は圧空成形によって成形したことに基づく加飾シート成形物、更には前記加飾印刷物又は加飾シート成形物に対し、成形用樹脂を射出成形機からの射出によって一体化したことによるインサートモールディング成形品においては、前記積層に至る工程において、塗膜の割れ、ベタツキ、更には剥離が殆ど生じないような状態にて製品を得ることが可能となる。
尚、前記基材としては、ポリカーボネート、(処理)ポリエステル、(処理)ポリプロピレン、(処理)ポリエチレン、アクリルなどのシートやフィルムを使用することができるが、当該シートやフィルムにスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、ロールコート、スプレー塗装などによって印刷層又は塗装層を設けたものを基材として使用することもできる。
【0034】
前記インサートモールディング成形品の成形において、前記成形用樹脂と前記加飾印刷物又は前記加飾シート成形物の加飾積層との接着性を高めるために、加飾層の上にバインダー層を印刷又は塗装によって設けることにより、更に高品質なインサートモールディング成形品を作成することができる。
【0035】
バインダー層を形成するためのインキ、塗料の例としては、帝国インキ製造株式会社製商品名IMB−003バインダー、IMB−009バインダーなどの、アクリル樹脂や塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂を使用したバインダーインキを挙げられる。
【0036】
また、前記成形用樹脂としては、ABS(アクリルブタジエンスチロール)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂などを挙げることができる。
【0037】
以上のとおり、単官能ラジカル重合性モノマー又はその組み合わせによる実施形態を示すが、本発明においては、単官能ラジカル重合性モノマー以外に、多官能ラジカル重合性オリゴマー、多官能ラジカル重合性モノマーを配合することを完全に排除するものではなく、接着性、タック性、成形性に関し、単官能ラジカル重合性モノマー及びその組み合わせに基づく本発明の機能を損なわない程度更には当該機能を増強し得る程度に配合することは当然可能であって、このような配合状態は本発明の利用形態に該当する。
【0038】
具体的には、1.5官能から多官能ラジカル重合性オリゴマー、1.5官能から多官能ラジカル重合性モノマーの一方又は双方を配合することによる利用形態は、十分採用可能である。
【0039】
以下、実施例に従って説明する。
尚、実施例においても、インクジェット方式用UVインクによるデータを採用しているが、他の印刷方式においても30μm以下という通常の膜厚を採用した場合には、前記各性能については全く同様のデータが得られることについては、段落[0013]において既に述べたとおりである。
【実施例1】
【0040】
実施例1は、実施形態(1)に関する具体例及び比較例を示す。
【0041】
着色顔料として、カーボンブラックを2.5重量%、光反応開始剤として2,4,6,トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを10.5重量%、シリコン系レベリング剤を0.1重量%、重合禁止剤(保存安定性部材)として、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンを0.1重量%用意したうえで、1種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリンとしてメチル化シクロデキストリンとの重量比を選択したことによる結果は、以下の表4−1のとおりである。

【表4−1】


※ メチル化シクロデキストリンを配合していない場合を示す。
【0042】
これに対し、以下の表4−2に示すような選択及び重量比の場合には、良好な特性を得ることができなかった。
【表4−2】


※ メチル化シクロデキストリンを配合していない場合を示す。
【0043】
前記表4−1と同4−2との対比に基づいて、実施形態(1)の単官能ラジカル重合性モノマーの選択及びシクロデキストリン又はその誘導体との重量比の選択範囲の合理性を確認することができる。
【0044】
表4−1による各インクを、前記実験の場合と同一の条件にて紫外線を照射し、かつポリカーボネート樹脂の基材シート上に硬化させ、かつ当該基材シートを真空成形したうえで、射出成形機によってABS樹脂を積層し、かつ一体化することによってインサートモールディング成形品を成形したが、成形に際し、各インクは、基材シートに上で、タック状態とならずに、概略良好な成形性を示し、しかも基材シートとの接着も概略良好であって、剥離状態は全く呈さず、堅固なインサートモールディング成形品を得ることができた。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、実施形態(2)に関する具体例及び比較例を示す。
【0046】
着色顔料、光反応開始剤、レベリング剤、重合禁止剤につき、実施例1と同様の配合を行い、かつ2種類の単官能ラジカル重合性モノマーの組合せ及びメチル化シクロデキストリンとの重量比を選択したことによる結果は、以下の表5−1のとおりである。
【表5−1】


※ メチル化シクロデキストリンを配合していない場合を示す。
【0047】
これに対し、以下の表5−2に示すような組合せ及び重量比の場合には、良好な特性を得ることができなかった。
【表5−2】


※ メチル化シクロデキストリンを配合していない場合を示す。
【0048】
前記表5−1及び同5−2の対比に基づき、実施形態(2)の単官能ラジカル重合性モノマーの組合せの選択、及びシクロデキストリン又はその誘導体との重量比の選択範囲の合理性を確認することができる。
尚、表5−1の具体例に基づくインクにつき、実施例1と同一の条件によって、インサートモールディング成形品を成形したところ、同様に概略良好な成形性、接着性及びタック性を示し、かつ基材との接着も良好であって、堅固なインサートモールディング成形品を得ることができた。
【実施例3】
【0049】
実施例3は、実施形態(3)に関する具体例及び比較例を示す。
【0050】
着色顔料、光反応開始剤、レベリング剤、重合禁止剤を実施例1、及び同2と同様の配合を行い、かつ3種類の単官能ラジカル重合性モノマーの組合せ及びメチル化シクロデキストリンとの重量比を選択したことによる結果は、以下の表6−1のとおりである。
【表6−1】


※ メチル化シクロデキストリンを配合していない場合を示す。
【0051】
これに対し、以下のような組合せ及び重量比の場合には、表6−2に示すように、良好な特性を得ることができなかった。
【表6−2】


※メチル化シクロデキストリンを配合していない場合を示す。
【0052】
前記表6−1、及び同6−2の対比に基づき、実施形態(3)の単官能ラジカル重合性モノマーの選択及びシクロデキストリン又はその誘導体との重量比の選択範囲の合理性を確認することができる。
尚、表6−1の具体例に基づくインクにつき、実施例1と同一の条件によって、インサートモールディング成形品を成形したところ、同様に概略良好な成形性、接着性及びタック性を示し、かつ基材との接着も良好であって、堅固なインサートモールディング成形品を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、単数及び複数の単官能ラジカル重合性モノマーを配合することによるUVインク、更には当該インクに基づく加飾用成形品の分野に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反応開始剤、及び光重合反応性組成物を必須の成分としている紫外線硬化型インクの製造方法において、光重合反応性組成物として単数又は複数種類の単官能ラジカル重合性モノマー及びシクロデキストリン又はその誘導体を配合し、基材上に印刷した後に紫外線によって硬化した段階における接着性、タック性、成形性の全てが良好であるか、又は前記各特性のうち、少なくとも2個が良好であって、他の1個が不良でないような印刷を可能とするように単数又は複数種類の単官能ラジカル重合性モノマーを選択すると共に、各単官能ラジカル重合性モノマー及びシクロデキストリン又はその誘導体相互間の重量比を選択することに基づく紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項2】
1種類の光重合反応性組成物を選択することを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項3】
1種類の単官能ラジカル重合性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレートを選択し、かつシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を、5〜10:1とするか、2−ヒドロキシブチルアクリレートを選択し、シクロデキストリン又はその誘導体との重量比を、3〜5:1とするか、アクリロイルモルフォリンを選択し、シクロデキストリン又はその誘導体との重量比を、3以上:1とすることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項4】
2種類の光重合反応性組成物を選択することを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項5】
2種類の単官能ラジカル重合性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレートとフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとを1:0.5〜1.5の重量比にて組み合わせるか、アクリロイルモルフォリンと2−ヒドロキシブチルアクリレートとを1:0.5〜1.5の重量比にて組み合わせるか、アクリロイルモルフォリンとイソボニルアクリレートとを1:0.5〜1.5の重量比にて組み合わせるか、フェノキシエチルアクリレートとアクリロイルモルフォリンを1:0.3〜2の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、前記2種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を4〜15:1とすることを特徴とする請求項4記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項6】
2種類の単官能ラジカル重合性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレートとビニルカプロラクタムとを1:0.3〜2の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、前記2種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を4以上:1とすることを特徴とする請求項4記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項7】
3種類の光重合反応性組成物を選択することを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項8】
3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレートとビニルカプロラクタムと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせるか、フェノキシエチルアクリレートとビニルカプロラクタムとイソボニルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせるか、アクリロイルモルフォリンと2−ヒドロキシブチルアクリレートとイソボニルアクリレートとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせるか、アクリロイルモルフォリンとビニルカプロラクタムと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比で組み合わせることによる選択を行ったうえで、当該3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を3以上:1とすることを特徴とする請求項7記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項9】
3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレートとフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとビニルカプロラクタムとを1:0.05〜1.5:0.05〜1.5の重量比にて組み合わせることによる選択を行ったうえで、当該3種類の単官能ラジカル重合性モノマーとシクロデキストリン又はその誘導体との重量比を5〜15とすることを特徴とする請求項7記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項10】
シクロデキストリンとして、メチル化シクロデキストリンを採用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の何れかに記載の紫外線硬化型インクの製造方法。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の何れかの方法によって製造された紫外線硬化型インク。
【請求項12】
請求項11記載の紫外線硬化型インクを基材上にインクジェットによる射出、又は印刷に基づいて単一又は複数の塗布層を形成し、かつ当該塗布層に対する紫外線の照射による硬化工程を経たことに基づき加飾積層を形成している加飾印刷物。
【請求項13】
請求項11記載の加飾印刷物を真空成形又は圧空成形によって成形したことに基づく加飾シート成形物。
【請求項14】
請求項13の加飾印刷物又は請求項12記載の加飾シート成形物に対し、成形用樹脂を射出成形機からの射出によって一体化したことによるインサートモールディング成形品。

【公開番号】特開2009−67860(P2009−67860A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236206(P2007−236206)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(591017250)帝国インキ製造株式会社 (15)
【Fターム(参考)】