説明

紫外線硬化型インク組成物、記録方法

【課題】濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性に優れた紫外線硬化型インク組成物を提供する。
【解決手段】重合性化合物と、光重合開始剤と、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、を含有する紫外線硬化型インク組成物であって、前記重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含み、かつ、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、質量平均分子量が10,000〜13,000であり、HLBが5〜11であり、含有量が該インク組成物の総質量に対して0.1〜3.0質量%である紫外線硬化型インク組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型インク組成物、記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されている。このうち、インクジェット方式は、安価な装置であり、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像を形成するため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
【0003】
インクジェット記録方法に使用されるインク組成物として、水性溶媒を主成分とし、これに色材、及びグリセリン等の湿潤剤を含有した水性インク組成物が多く用いられている。
【0004】
一方、水性インク組成物が、浸透し難いか又は浸透しない被記録媒体、即ち低吸収性又は非吸収性の被記録媒体に印字される場合、当該インク組成物は、インクが安定して被記録媒体に固着できる成分を含有していることが要求される。
【0005】
そこで、近年、インクジェット方式の記録方法において、良好な耐水性、耐溶剤性、及び耐擦過性などを与えることのできるインク組成物として、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インク組成物が使用されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、顔料と、紫外線硬化性化合物と、光重合開始剤と、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部にポリエーテル基を導入した、HLB11.0以下のポリエーテル側鎖変性シリコーンオイルと、を含有する紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、特定の重合性ポリマーと、フェノキシエチルアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びn−ビニルカプロラクタムと、光重合開始剤と、を含有する活性放射線硬化型インク組成物が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、着色剤と、オクタデシルアクリレート等の紫外線硬化性有機希釈剤と、界面活性剤としてアクリレート変性ポリジメチルシロキサンを含む、インクジェット印刷用非水性紫外線硬化性インク組成物が開示されている。また、当該インク組成物が750枚の印刷物後インクジェット印字ヘッドにおけるノズルの5%以下の損失しか引起さず、かつ0.05以下の孔対面積比を提供することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−205446号公報
【特許文献2】特開2009−242468号公報
【特許文献3】特表2006−502257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3に開示のインク組成物は、被記録媒体に対する濡れ性に劣るためインクと被記録媒体との界面でハジキが生じたり、被濡れ性に劣るためインクを重ね塗りする際に滲みが生じたりする結果、画像の形成に問題が生じる。加えて、インクの吐出安定性にも問題が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性に優れた紫外線硬化型インク組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。まず、紫外線硬化型インク組成物に含まれる重合性化合物を検討したところ、所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、濡れ性を良好にする上で好適であることを知見した。次に、紫外線硬化型インク組成物に含まれる界面活性剤を検討したところ、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好適であることを知見した。ところが、インク組成物に用いるポリエーテル変性シリコーンオイルの種類によって、濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性の各々の優劣が全く異なることを確認した。
【0013】
そこで、インク組成物の濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性のいずれにも優れた効果を発揮するポリエーテル変性シリコーンオイルを見出すため、本発明者らは更に鋭意検討を重ねた。その結果、ポリエーテル変性シリコーンオイルの質量平均分子量、HLB、及び含有量がいずれも所定範囲内である紫外線硬化型インク組成物により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
重合性化合物と、光重合開始剤と、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、を含有する紫外線硬化型インク組成物であって、前記重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含み、かつ、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、質量平均分子量が10,000〜13,000であり、HLBが5〜11であり、含有量が該インク組成物の総質量に対して0.1〜3.0質量%である、紫外線硬化型インク組成物。
[2]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%である、[1]に記載の紫外線硬化型インク組成物。
[3]
酸化チタンをさらに含む、[1]又は[2]に記載の紫外線硬化型インク組成物。
[4]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]〜[3]のいずれかに記載の紫外線硬化型インク組成物。
[5]
被記録媒体に付着されて紫外線照射により形成される下地層を構成するものであり、重合性化合物と光重合開始剤とポリエーテル変性シリコーンオイルとを含有するインク組成物が、前記下地層の上に付着されるものである、[1]〜[4]のいずれかに記載の紫外線硬化型インク組成物。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の紫外線硬化型インク組成物を被記録媒体に付着させる付着工程と、該付着させた紫外線硬化型インク組成物に紫外線を照射して下地層を形成する硬化工程と、を含む、記録方法。
[7]
形成した前記下地層の上に、重合性化合物と光重合開始剤とポリエーテル変性シリコーンオイルとを含有するインク組成物を付着させる重ね塗り工程をさらに含む、[6]に記載の記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0017】
本明細書において、「濡れ性」とは、親和性ないし濡れ広がり性とも言い、被記録媒体上でインクが濡れ広がる性質(被記録媒体とインクとが馴染む性質)を意味する。濡れ性に優れる場合、インクが被記録媒体上ではじかれにくくなる。「被濡れ性」とは、重ね塗り性とも言い、被記録媒体上に一のインクを塗って硬化させた後、当該一のインクの硬化膜上に他のインクを塗ったときに、当該硬化膜上で当該他のインクが濡れ広がる性質(硬化膜とインクとが馴染む性質)を意味する。当該硬化膜が被濡れ性に優れる場合、インクが下地である硬化膜上ではじかれにくくなる。
なお、濡れ性及び被濡れ性は、それぞれ被記録媒体上及び硬化膜上にインクを記録することで得られる線幅の測定により評価可能である。
【0018】
本明細書において、「吐出安定性」とは、ノズルの目詰まりがなく常に安定したインク滴をノズルから吐出させる性質をいう。「硬化性」とは、光を感応して硬化する性質をいう。「溶解性」とは、インクを調製するときに、白く懸濁することなく、そこに含まれる成分が十分に溶解する性質をいう(特に、ポリエーテル変性シリコーンオイルと所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類とが相溶する性質のことをいう。)。
【0019】
[紫外線硬化型インク組成物]
本発明の一実施形態に係る紫外線硬化型インク組成物(以下、単に「インク組成物」とも言う。)は、重合性化合物と、光重合開始剤と、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、を含有する。当該重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む。これに加えて、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、その質量平均分子量が10,000〜13,000であり、そのHLBが5〜11であり、かつ、その含有量が当該インク組成物の総質量(100質量%)に対して0.1〜3.0質量%である。
【0020】
ここで、「HLB」とは、Hydrophile−lipophile balance(親水親油バランス)の略称であり、界面活性剤の分子内における親水基と親油基のつり合いを示す指標である。上記HLBは、グリフィン法より算出された値とする。
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
【0021】
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。
【0022】
(ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類)
本実施形態において必須の重合性化合物であるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、分子中にビニル基及び(メタ)アクリル基を共に有する化合物であり、上記一般式(I)で示される。
【0023】
インク組成物が所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有することにより、インクの濡れ性及び硬化性を良好なものとすることができる。
【0024】
上記の一般式(I)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0025】
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0026】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0027】
上記の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0028】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0029】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルが好ましく、さらに、臭気が低く、皮膚への刺激を抑えることができ、かつ、反応性及び密着性に優れるため、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。上記の(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0030】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、10〜60質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性のいずれにも優れ、さらに光重合開始剤をインクに十分溶解させることができる。
【0031】
上記一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0033】
(上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類以外の重合性化合物)
また、上記のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類以外に、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーも使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
【0035】
上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、添加剤との相溶性が良いため、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、強靭な塗膜が得られ、かつ低粘度であるため、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、強靭な塗膜が得られ、かつ硬化性が良好であるため、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
これらの中でも、重合性化合物は単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。これにより、インク組成物が低粘度となり保存安定性に優れ、かつ、インクジェット記録時に優れた吐出安定性が得られやすい。さらに塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性が増すため、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0040】
さらに、上記単官能(メタ)アクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格、及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有することが好ましい。上記重合性化合物が上記骨格を有する単官能(メタ)アクリレートであることにより、インク組成物の粘度を低下させることができる。
【0041】
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、不飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、粘度及び臭気を低下させることができるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方が好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートがさらに好ましい。
【0043】
以上の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本実施形態のインク組成物が上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類以外の重合性化合物を含む場合、当該重合性化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。含有量が上記範囲内であると、添加剤の溶解性に優れ、かつ、塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性に優れる。
【0045】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0046】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物がより好ましい。
【0048】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン(DETX)、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0049】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製商品名)、Speedcure TPO、Speedcure DETX(2,4−ジエチルチオキサントン)(以上、Lambson社製商品名)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製商品名)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製商品名)、及びユベクリルP36(UCB社製商品名)などが挙げられる。
【0050】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
光重合開始剤は、紫外線硬化速度が十分大きく、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色が殆どないため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、1〜20質量%であることが好ましい。
【0052】
〔界面活性剤〕
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンオイルを含む。当該ポリエーテル変性シリコーンオイルは、HLB、質量平均分子量、及び含有量がいずれも所定範囲内であることを特徴とする。
【0053】
まず、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLBは、5〜11であり、9〜11が好ましい。HLBが上記範囲内であるポリエーテル変性シリコーンオイルと、上記所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、を組み合わせて使用することにより、(非吸収性)被記録媒体に対するインクの濡れ性を優れたものとする、すなわちインクのハジキを防止する、ことができ、かつ、インクの被濡れ性も優れたものとする、すなわちインクを重ね塗りした際の滲みも防止する、ことができる。
【0054】
ポリエーテル変性シリコーンオイルとは、シリコーンオイルの側鎖及び末端のうち少なくともいずれかにポリエーテル基を導入したものである。前記末端は、片末端及び両末端を共に含む。このうち、シリコーンオイルの両末端にポリエーテル基が導入されるパターンとして、例えば、変性シリコーンオイルがABA型ポリマーの場合に両末端の「A」としてそれぞれポリエーテル基が導入されるパターン、並びに変性シリコーンオイルが(AB)n型ポリマーの場合に両端及び繰り返し構造中の「A」としてそれぞれポリエーテル基が導入されるパターンが挙げられる。
【0055】
また、シリコーンオイルは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーによって構成される。シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーとしては、側鎖の全てと両末端又は片末端とがメチル基であるもの、側鎖の一部がフェニル基であるもの、及び側鎖の一部が水素原子であるものが挙げられる。
【0056】
ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、側鎖にポリエーテル基を導入したポリエーテル変性シリコーンオイル(以下、「側鎖ポリエーテル変性シリコーンオイル」ともいう。)、片末端にポリエーテル基を導入したポリエーテル変性シリコーンオイル(以下、「片末端ポリエーテル変性シリコーンオイル」ともいう。)、両末端にポリエーテル基を導入したポリエーテル変性シリコーンオイル(以下、「両末端ポリエーテル変性シリコーンオイル」ともいう。)が挙げられる。
なお、側鎖及び片末端にポリエーテル基を導入したポリエーテル変性シリコーンオイル、並びに側鎖及び両末端にポリエーテル基を導入したポリエーテル変性シリコーンオイルは、側鎖ポリエーテル変性シリコーンオイルに含むものとする。
【0057】
本実施形態においては、側鎖ポリエーテル変性シリコーンオイル、片末端ポリエーテル変性シリコーンオイル、及び両末端ポリエーテル変性シリコーンオイルのいずれであってもよい。
【0058】
本実施形態におけるポリエーテル変性シリコーンオイルは、後述の実施例で示すように自ら製造したものでもよいし、市販品を用いてもよい。
【0059】
次に、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルの質量平均分子量について説明する。上述のように、HLBのみに着目してポリエーテル変性シリコーンオイルを選定し用いた場合、界面活性剤の配向挙動(速度)まで調節することができない。当該配向挙動が調節できないと、インク組成物の濡れ性や被濡れ性が劣る場合が見られる。そのため、本発明者らが検討した結果、HLBだけでなく質量平均分子量にも着目してポリエーテル変性シリコーンオイルを選定することにより、界面活性剤の配向挙動を好適に調節でき、インク組成物の濡れ性及び被濡れ性が安定的に良好となることを見出した。
【0060】
上記ポリエーテル変性シリコーンオイルの質量平均分子量は、10,000〜13,000であり、11,000〜12,000がより好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であると、インク組成物の濡れ性及び被濡れ性のいずれにも優れたものとなる。
なお、本明細書における質量平均分子量は、日立製作所社(Hitachi, Ltd.)製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、スチレン換算の質量平均分子量として測定するものとする。
【0061】
次に、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.1〜3.0質量%であり、0.1〜0.5質量%が好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク組成物の濡れ性及び被濡れ性に優れ、さらに吐出安定性にも優れたものとなる。
【0062】
上記のポリエーテル変性シリコーンオイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0064】
(酸化チタン)
本実施形態のインク組成物は、白色顔料としての酸化チタンをさらに含有することが好ましい。これにより、良好な視認性(明度)が得られる。また、シアン、マゼンタ、又はブラックを重ね塗りする場合、酸化チタンを用いて下地をホワイトにすると、重ね塗った層の色調を所望のものとすることができる。
【0065】
上記酸化チタンとしては、白色顔料として一般的なルチル型の酸化チタンが好ましい。このルチル型の酸化チタンは、自ら製造したものであってもよく、市販されているものであってもよい。ルチル型の酸化チタン(粉末状)を自ら製造する場合の工業的製造方法として、従来公知の硫酸法及び塩素法が挙げられる。
【0066】
ルチル型の酸化チタンの市販品としては、例えば、Tipaque(登録商標) CR−60−2、CR−67、R−980、R−780、R−850、R−980、R−630、R−670、PF−736等のルチル型(以上、石原産業社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)製商品名)が挙げられる。
【0067】
酸化チタンの含有量は、硬化性に優れる上、(特に黒地基材上での)隠蔽性及び色再現性にも優れるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。
【0068】
(酸化チタン以外の顔料)
本実施形態のインク組成物は、酸化チタン以外の顔料を含有してもよい。顔料を含有することにより、インク組成物の耐光性を良好にすることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0069】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7等)類、酸化鉄を使用することができる。
【0070】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0071】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。
【0073】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記酸化チタン以外の色材の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜10質量%が好ましい。
【0075】
なお、上記酸化チタン以外の色材は、酸化チタンと混合されて一の硬化膜を形成してもよいし、重ね塗り印刷において、酸化チタンを含有するインク組成物から形成される硬化膜とは別の硬化膜に用いられてもよい。
【0076】
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(DISPERBYK 168等)、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
【0077】
〔重合禁止剤〕
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤をさらに含んでもよい。重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、IRGASTAB UV10(ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート)及びIRGASTAB UV22(以上、BASF社製商品名)、トパノールA(ハイドロキノンモノメチルエーテル)(ICI社製商品名)などを用いることができる。重合禁止剤を添加することにより、インク組成物の保存安定性が一層良好なものとなる。
【0078】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。当該成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0079】
[被記録媒体]
本実施形態の紫外線硬化型インク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。上記インクジェット記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水溶性インク組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
【0080】
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。なお、この水性インクの浸透性が比較的低い被記録媒体を、本明細書では特に「低吸収性の被記録媒体」ともいう。
【0081】
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
【0082】
[記録方法]
本実施形態の紫外線硬化型インク組成物は、記録方法に用いることができる。当該記録方法は、付着工程と硬化工程とを含むものである。当該付着工程は、上記インク組成物を被記録媒体に付着させる工程であり、ロール法、ディップ法、スピン法、スプレー法、及びインクジェット法などにより行うことができる。当該硬化工程は、上記付着工程を経て付着したインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化することにより、下地層を形成する工程である。この硬化工程を経て、硬化したインク組成物で構成された塗膜(硬化膜)が、被記録媒体上に形成される。
【0083】
また、上記記録方法は、重ね塗り工程をさらに含んでもよい。当該重ね塗り工程は、上記硬化膜を下地層として、この下地層の上に、下地層のインク組成物とは別のインク組成物を付着させることにより重ね塗るものである。より具体的に言えば、当該重ね塗り工程は、上記硬化工程で形成した下地層の上に、上記別のインク組成物、即ち重合性化合物と光重合開始剤とポリエーテル変性シリコーンオイルとを含有するインク組成物を付着させる工程である。当該重合性化合物としては、上述の紫外線硬化型インク組成物に含有させることができる重合性化合物が使用可能である。当該光重合開始剤としては、上述の紫外線硬化型インク組成物に含有させることができる光重合開始剤が使用可能である。当該ポリエーテル変性シリコーンオイルは、上述の紫外線硬化型インク組成物に含有させることができるポリエーテル変性シリコーンオイルに限らず、その他従来公知のポリエーテル変性シリコーンオイルも使用可能である。上記重ね塗り工程において用いられるインク組成物は、本実施形態の紫外線硬化型インク組成物と同じ組成を有するインク組成物でもよいし異なる組成を有するインク組成物でもよい。上記重ね塗り工程において用いられるインク組成物の付着方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法によりインク組成物を吐出する方法が挙げられる。
【0084】
このように、本実施形態の紫外線硬化型インク組成物は被記録媒体に付着されて紫外線照射により形成される下地層を構成するものであり、かつ、上記別のインク組成物が当該下地層の上に付着されるものであってもよい。
【0085】
〔吐出工程〕
上記付着工程は、従来公知のインクジェット記録装置を用いた吐出工程とすることができる。インク組成物の吐出は、インク組成物の粘度を所定値まで下げた後にインク組成物を所定温度に加熱することによって行うのが好ましい。上記所定値は、好ましくは20mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下である。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
【0086】
本実施形態の紫外線硬化型インク組成物は、通常のインクジェット記録用インクで使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
【0087】
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、紫外線(光)を照射することによって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、ラジカル重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が光を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0088】
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線硬化型インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
【0089】
このように、本実施形態によれば、濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性に優れた紫外線硬化型インク組成物を提供することができる。本実施形態の紫外線硬化型インク組成物は、被記録媒体、特に低吸収性又は非吸収性の被記録媒体に対するインクの濡れ性に優れる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
[使用成分]
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
〔重合性化合物〕
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下ではVEEAと略記した。)
・APG−100(ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、以下ではDPGDAと略記した。)
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、以下ではPEAと略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分100%、以下では819と略記した。)
・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分100%、以下ではTPOと略記した。)
・Speedcure DETX(Lambson社製商品名、固形分100%、以下ではDETXと略記した。)
〔界面活性剤〕
・KF615A(質量平均分子量12,000、HLB11、信越シリコーン社(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.)商品名)
・X−22−4515(質量平均分子量11,000、HLB5、信越シリコーン社商品名)
・BYK−UV3500(重量平均分子量5,000、HLB11、BYK社製商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル、以下ではUV3500と略記した。)
・KF−352A(重量平均分子量14,000、HLB7、信越シリコーン社商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)
・X−22−6191(重量平均分子量12,000、HLB2、信越シリコーン社商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)
・X−22−6266(重量平均分子量12,000、HLB12、信越シリコーン社商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)
なお、各界面活性剤の「重量平均分子量」は、上述の質量平均分子量と同義である。また、KF615A及びX−22−4515の質量平均分子量(重量平均分子量)及びHLBは、上述の方法により測定した数値である。
〔顔料〕
・Tipaque CR−60−2(酸化チタン、石原産業社製商品名)
・SPECIAL BLACK 250(デグサ社(Degussa Japan Co., Ltd.)製商品名、チャネル系カーボンブラック)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名)
・DISPERBYK 168(BYKChemie社製)
〔重合禁止剤〕
・トパノールA(ハイドロキノンモノメチルエーテル、ICI社製商品名、以下ではHQMEと略記した。)
【0092】
[例1〜14]
〔顔料分散液の作製〕
インク組成物の作製に先立ち、下地用及び上塗り用の顔料分散液を作製した。
まず、Tipaque CR−60−2(酸化チタン)を60質量%、Solsperse 36000(分散剤)を5質量%、VEEAを35質量%の割合で混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物を、ビーズミルを用いて分散し、下地用の顔料分散液を得た。分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間を2〜4時間とした。
【0093】
次に、SPECIAL BLACK 250(チャネル系カーボンブラック)を40質量%、DISPERBYK 168(分散剤)を25質量%、PEAを35質量%の割合で混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物を、ビーズミルを用いて分散し、上塗り用の顔料分散液を得た。なお、分散条件は、下地用の顔料分散液における条件と同じである。
【0094】
下記表1〜表3に記載の成分を、表1〜表3に記載の組成(単位:質量%)となるように混合し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、下地用(表1及び表2)及び上塗り用(表3)の紫外線硬化型インク組成物を得た。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
続いて、インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン社〔Seiko Epson Corporation〕)製商品名)を改造したものを用いて、上記組成となるように調製した下地用の各紫外線硬化型インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPETフィルム(ルミラー125E20〔商品名〕、パナック社製)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が2μmとなるようなベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が60mW/cm2であり、且つ波長が395nmである紫外線を300mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PETフィルム上に下地層であるベタパターン画像を形成した。ベタパターン画像とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
【0099】
なお、照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。
【0100】
次に、上記組成となるように調製した上塗り用の紫外線硬化型インク組成物をノズルに充填し、上記と同様の方法及び条件で印刷し、硬化して(照射強度1,500mW/cm2、紫外線照射波長395nm、紫外線照射エネルギー200mJ/cm2)、上記の下地層の上に上塗り層であるベタパターン画像を形成した(上塗り層の厚さ10μm)。
以上のようにして、PETフィルム上に重ね塗り印刷された記録物を作製した。
【0101】
〔評価項目〕
(1.濡れ性)
インクジェットプリンターを用いて、上記組成となるように調製した下地用の各紫外線硬化型インク組成物の液滴重量7ng及び解像度720dpiの条件でPET50A(リンテック社製)上に直線を印刷し、これを硬化させた(照射強度1,500mW/cm2、紫外線照射波長365nm、紫外線照射エネルギー200mJ/cm2)。得られた線の幅を測定した。線幅が大きいほど、インクの濡れ性に優れる。評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表4及び表5に示す。
A:70μm以上。
B:65μm以上70μm未満。
C:65μm未満。
【0102】
(2.被濡れ性)
インクジェットプリンターを用いて、上記組成となるように調製した下地用の各紫外線硬化型インク組成物の液滴重量7ng及び解像度720dpiの条件でPET50A(リンテック社製)上に直線を印刷し、これを硬化させた。
硬化後、得られた下地層(白色被膜)上に、上記組成となるように調製した上塗り用の紫外線硬化型インク組成物の液滴重量7ng及び解像度720dpiの条件で直線を印刷し、これを硬化させた(照射強度1,500mW/cm2、紫外線照射波長365nm、紫外線照射エネルギー200mJ/cm2)。得られた線の幅を測定した。線幅が大きいほど、インクの被濡れ性に優れる。評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表4及び表5に示す。
A:70μm以上。
B:65μm以上70μm未満。
C:65μm未満。
【0103】
(3.吐出安定性)
インクジェットプリンターを用いて、解像度720dpi×720dpi、上記組成となるように調製した下地用の各インク組成物の液滴重量10ngの条件で、PETフィルムに対してベタパターン画像とする印刷を8時間連続で行った。このときのドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生を目視により観察した。評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表4及び表5に示す。
A:ドット抜け、飛行曲がり、又はインクの飛散の発生が50回未満であった。
B:ドット抜け、飛行曲がり、又はインクの飛散の発生が50回以上100回未満であった。
C:ドット抜け、飛行曲がり、又はインクの飛散の発生が100回以上であった。
【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

【0106】
上記表4及び表5中、例1,2,7,8,及び11〜13が実施例相当であり、その他の例が比較例相当である。
【0107】
上記一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む重合性化合物と、光重合開始剤と、質量平均分子量が10,000〜13,000であり、HLBが5〜11であり、且つ含有量が0.1〜3.0質量%であるポリエーテル変性シリコーンオイルと、を含有する紫外線硬化型インク組成物(例1,2,7,8,11〜13)は、そうでない紫外線硬化型インク組成物(例3〜6,9,10,14)と比べて、濡れ性、被濡れ性、及び吐出安定性のいずれも劣らないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、光重合開始剤と、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、を含有する紫外線硬化型インク組成物であって、
前記重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含み、かつ、
前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、質量平均分子量が10,000〜13,000であり、HLBが5〜11であり、含有量が該インク組成物の総質量に対して0.1〜3.0質量%である、紫外線硬化型インク組成物。
【請求項2】
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%である、請求項1に記載の紫外線硬化型インク組成物。
【請求項3】
酸化チタンをさらに含む、請求項1又は2に記載の紫外線硬化型インク組成物。
【請求項4】
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インク組成物。
【請求項5】
被記録媒体に付着されて紫外線照射により形成される下地層を構成するものであり、
重合性化合物と光重合開始剤とポリエーテル変性シリコーンオイルとを含有するインク組成物が、前記下地層の上に付着されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インク組成物を被記録媒体に付着させる付着工程と、
該付着させた紫外線硬化型インク組成物に紫外線を照射して下地層を形成する硬化工程と、を含む、記録方法。
【請求項7】
形成した前記下地層の上に、重合性化合物と光重合開始剤とポリエーテル変性シリコーンオイルとを含有するインク組成物を付着させる重ね塗り工程をさらに含む、請求項6に記載の記録方法。

【公開番号】特開2012−219255(P2012−219255A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89997(P2011−89997)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】