説明

紫外線硬化型塗料組成物及びその塗膜

【課題】 紫外線照射により急速に硬化し、プラスチックや金属にも優れた密着性、かつ柔らかい触感、良好な耐薬品性、加水分解安定性及び強靱性を有する塗膜を形成する水分散性弾性塗料を提供する。
【解決手段】側鎖、及び末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量2000〜100000の水分散性ポリウレタン(A)と1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)と、紫外線重合開始剤(C)とからなる紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)と有機微粒子(E)を含むことを特徴とする紫外線硬化型水分散性塗料組成物およびその塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型の弾性塗料組成物及びその塗膜に関する。さらに詳しくは、外観および触感が良好で、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を与える紫外線硬化型の水分散性弾性塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックや金属などの各種基材には、防蝕、装飾、その他表面性状向上のために、各種コーティング剤が施されている。
特に近年、差別化コーティングが注目され、特異な機能を基材表面に付与することが試みられており、基材自体が有する風合いとは全く異なった機能を付与する表面処理が要望されている。この機能の一つとして、しっとりしたソフト感、ゴム様弾性感、滑りにくさ等があげられる。
従来、この機能を付与するために、ポリウレタン等の弾性を有する熱可塑性又は熱硬化性の樹脂で基材を被覆することは、よく知られている。
硬化剤を併用するようなタイプでは、例えばイソシアネート系硬化剤とポリオール樹脂を混合したものを熱で乾燥・硬化させることによりウレタン塗膜が形成されるものであった。柔らかい触感を有する硬化塗膜を与える弾性塗料を得る場合、塗料のバインダーに用いる樹脂の機械的特性としては軟質でゴム弾性を有するバインダー樹脂を得ることが重要であることが知られている。(特許文献1〜2)
これらの塗料は、有機溶剤を使用しているものが一般的であり、熱で有機溶媒などを蒸発、乾燥、硬化させることで、塗膜の形成が行われている。
【0003】
しかし近年、有機溶剤は、環境破壊やシックハウス症候群等の人体への健康阻害の原因物質であることが指摘され、いわゆる揮発性有機化合物(VOC又はVOCs)の排出規制が全世界的規模で急速に展開され、各国で法制化が進んでいる。国内でも、PRTR法、建築基準法改正、大気汚染防止法改正の成立により、脱有機溶剤系塗料への転換が緊急課題となっている。
上記課題を解決するために各種の塗料系が検討されているが、その中でも水性塗料が有利と考えられ、開発が進められ、一部の用途では既に実用化されている。しかしながら、これらの水性塗料は、溶剤系塗料の単なる水系化が多く、プラスチックのような耐熱性に劣るものに対しては、架橋剤による三次元化構造が十分に進まず、十分な塗膜性能、特に、硬さや耐薬品性が得られていないのが現状である。そこで、このような問題を解決する一つの方法として、紫外線照射により塗膜を硬化させる塗料が、近年特に着目され、開発が進められている。良好な塗膜特性を有している紫外線硬化型塗料は、紫外線照射で硬化させており、紫外線硬化性オリゴマ、モノマー、光重合開始剤、増感剤、必要に応じ少量の溶剤等から構成され、ハイソリッド、無溶剤系として使われている。しかし、この種の塗料は、有機溶剤の代わりにモノマーで他の組成物を希釈しているため塗装時のモノマー飛散による人体および環境への悪影響の問題があったり、硬い塗膜性質は得られやすいが、柔らかい触感を得る方法が無かった。
このような問題を解決するには、乾燥時に揮発する有害な成分を限りなく少なくし、且つ紫外線照射により架橋を起こし、弾性を有するような塗料組成物を選ぶことが望まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−212947号公報
【特許文献2】特開2006−257366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような従来技術における問題を解決し、水分散性で且つプラスチック、金属等といった各種基材上に容易に被覆でき、外観及び触感が良く、耐擦傷性に優れた塗膜を付与できる紫外線硬化型の水分散性弾性塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の構成は、以下のとおりである。
1.(A)(1)(a−1)ヒドロキシル価20〜230のポリエステルポリオールと、
(a−2)ヒドロキシル価20〜230のポリエーテルジオールの合計が10〜80当量%、
(a−3)ジ、若しくはトリオール0〜10当量%、
(a−4)ヒドロキシ基含有アクリレート10〜30当量%、及び
(a−5)アニオン性基、及び潜在的アニオン性基から選択される基を含むα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸10〜50当量%を、
(2)(1)の100当量%に対して、ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの1つ又はそれ以上を、100〜200当量%で反応させることにより得られる側鎖及び末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量2000〜100000の水分散性ポリウレタン30〜95重量部、
(B)1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤4〜60重量部、及び
(C)紫外線重合開始剤1〜10重量部を含有して成る紫外線硬化型水分散性ポリウレ
タン(D)の樹脂固形分100重量部に対して、
(E)有機微粒子25〜150重量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型水分散性塗料組成物。
2.前記紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)が、以下の工程(1)〜(4)を経て得られるものであることを特徴とする上記1.記載の紫外線硬化型水分散性塗料組成物。(1)水分散性ポリウレタン(A)30〜95重量部に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)4〜60重量部と、紫外線重合開始剤(C)1〜10重量部とを含有させる工程、
(2)塩形成により存在する潜在的アニオン性基をアニオン性基に変換する工程、
(3)水中分散体を形成する工程、
(4)(3)に0.1〜100当量%の、ジアミン及び/又はポリアミンの1つ又はそれ以上と反応させる工程
3.上記1.〜2.に記載の紫外線硬化型水分散性塗料組成物を紫外線硬化して得られることを特徴とする塗膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上説明したように構成されているから、本発明の紫外線硬化型水分散性塗料組成物を使用することで、プラスチックや金属等といった各種基材上に容易に被覆でき、当該紫外線硬化型水分散性塗料組成物を用いて形成された塗膜は、外観及び触感が良く、耐擦傷性に優れており、産業上極めて有用である。
本発明の構成と作用を説明する。本発明は、側鎖、及び末端に(メタ)アクリロイル基を有する水分散性ポリウレタン(A)が、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)と、紫外線重合開始剤(C)とを、水分散体中に包含することができるため、安定した粒子の形成と、効率の良い紫外線架橋反応を起こすことができる。
また、本発明の紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)は、有機微粒子(E)を最適に配合することにより、優れた触感をしめす。
よって、本発明によれば、紫外線照射により急速に硬化し、プラスチックや金属にも優
れた密着性、かつ柔らかい触感、良好な耐薬品性、加水分解安定性及び強靱性を有する塗膜を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における水分散性ポリウレタン(A)を構成する反応成分であるヒドロキシル価20〜230を有するポリエステルポリオール(a−1)としては、一般にウレタン化合物の製造に用いられる公知の種々のポリオールを用いることができ、例えばポリエステル系ポリオール、カプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等が挙げられ、これらは単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。これらのポリオールは、重量平均分子量が500〜5000の範囲にあるオリゴマーであるものが好ましい。ヒドロキシル基を含有する化合物中で(a−1)が5当量%未満の場合は、ポリウレタンとしての塗膜物性が得られず、70当量%超の場合は、他の機能を持つ化合物の配合量が少なくなるため、目的とする光反応や塗膜物性が得ることが困難となる。
【0009】
ヒドロキシル価20〜230を有するポリエーテルポリオール(a−2)としては、一般にウレタン化合物の製造に用いられる公知の種々のポリエーテルポリオールを用いることができ、例えばエチレングリコール系、プロピレングリコール系、エチレンープロピレングリコール系、テトラヘキサメチレングリコール系等が挙げられ、これらは単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。これらのポリエーテルポリオールは、重量平均分子量が500〜5000の範囲にあるオリゴマーであるものが好ましい。ヒドロキシル基を含有する化合物中で(a−2)が30当量%超の場合は、ウレタン樹脂としての塗膜物性が得ることが困難となる。
【0010】
ジ、若しくはトリオール(a−3)としては、一般にウレタン化合物の製造に用いられる公知の種々の化合物を用いることができ、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンープロピレングリコール系、テトラヘキサメチレングリコール系、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びソルビトール、又はこれらアルコールから出発して製造されたポリエーテル等が挙げられ、これらは単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。
ヒドロキシル基を含有する化合物中で(a−3)の中でも、3官能以上のヒドロキシル基を有する化合物が10当量%超の場合は、重合反応過程で3次元化を起こし、正常な重合物を得ることが困難である。
【0011】
ヒドロキシ基含有アクリレート(a−4)としては、側鎖、及び末端に(メタ)アクリロイル基とヒドロキシル基を有する化合物を用いることができ、例えば2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノメタクリレート等が挙げられ、これらは単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。ヒドロキシル基を含有する化合物中で(a−4)が30当量%超の場合は、光反応による塗膜架橋密度が高くなり、望む塗膜物性が得ることが困難となる。一方、10当量%未満の場合は、光反応による塗膜架橋密度が低くなり、望む塗膜物性が得ることが困難となる。
【0012】
アニオン性基、及び潜在的アニオン性基から選択される基を含むα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸(a−5)としては、例えば、モノ−及びジヒドロキシカルボン酸、モノ−及びジアミノカルボン酸、並びにこれらの塩が包含される。特に有用な化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸等が挙げられ、これらは単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。ヒドロキシル基を含有する化合物中で(a−5)が10当量%未満の場合は、水分散能力が極端に劣り、安定した
粒子が得られず、50当量%超の場合は、親水性が強くなりすぎ、水溶性樹脂になり粒子の安定性は良いが、粘度が高かったり、塗膜を形成してからの耐水性などが劣る。
【0013】
ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート類および脂肪族ジイソシアネート類が使用され、具体的にはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネートは、単独でも、また2種以上併用してもよい。本発明において、これらジイソシアネートは、上記ポリオール1モルに対して、1〜2モルの範囲で用いられる。ジイソシアネートの量が1モルよりも少ないと、耐加水分解性が劣る。また、2モルよりも多くなると、良好な触感が得られない。
側鎖、及び末端に(メタ)アクリロイル基を有する水分散性ポリウレタン(A)によって乳化される、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)は、(メタ)アクリロイル基が1個では、目的の塗膜物性を得るのが困難であり、2個以上有することが必須である。
【0014】
紫外線重合開始剤(C)としては、ジメチルアミノ安息香酸誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、アルキルフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、スルホニルアジド安息香酸、ジアゾジフェニルアミン誘導体、ナフトキノンジアゾスルホン誘導体等の1種または2種以上を使用できる。これら化合物の混合物の使用することができる。上記の一覧は単なる例示であり、当業者に知られている適当な光開始剤を排除することを意味しない。光開始剤を効果的に使用する濃度は当業者には既知であるが、
本発明においては、紫外線重合開始剤(C)は、(A)〜(C)成分からなる紫外線硬化型水分散性ポリウレタンの樹脂固形分100重量部中で1〜10重量部であるが、具体的には、ヒドロキシ基含有アクリレート(a−4)と1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)の合計100重量%に対して、通常1〜10重量%(好ましくは3〜7重量%)である。
【0015】
側鎖、及び末端に(メタ)アクリロイル基を有する水分散性ポリウレタン(A)と、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)と、紫外線重合開始剤(C)とを、混合して安定な水分散体に転相することが必須である。その際、(A)に含まれるアニオン性基、及び潜在的アニオン性基から選択される基を含む(a−5)α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基を以下に示す塩基で中和することにより、水分散性が付与される。すなわち、カルボキシル基が無い状態では安定な水分散体が得られない。中和に必要な塩基としては、有機アミンとして、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルカノールアミン類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン類、エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン類、ピペラジン、モルホリン、ピラジン等が用いられる。
【0016】
本発明の水分散体を製造する為に、この技術分野で知られている方法を使用することができる。そのような方法の例には、乳化剤/剪断力法、アセトン法、プレポリマー混合法、溶融乳化法、ケチミン法及び同時個体分散法又はこれら方法から誘導された方法が含ま
れるが、アセトン法が最も好ましい。
所望により、存在する有機溶媒を蒸留して除去することができる。本発明の水分散体は、通常20〜60重量%、好ましくは30〜55重量%の固形分を有する。
本発明の水分散体は、噴霧塗布、ロール塗布、ブレード塗布、注入、刷毛塗り又は
浸漬を含む通常の方法により、広範囲の基材に適用(塗布)することができる。水を蒸発させた後、本発明の水分散体は、ダストドライな被膜を形成する。
【0017】
有機微粒子(E)としては、アクリル系、ウレタン系、オレフィン系などの架橋、未架橋の有機微粒子を用いることができ、無機微粒子を併用することもできる。ただし、用途によっては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウムなどの無機微粒子を用いることもできるが、触感を一層際立たせるためには、有機微粒子を用いることが好ましい。
紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)100重量部に対して、25重量部未満であると、目的のソフトな触感が得られず、また150重量部超であると、触感は得られるが、耐摩耗性が極端に低下する。
【0018】
また、本発明の紫外線硬化型水分散性塗料組成物を配合する水性塗料には、塗料・塗膜要求性能、カラーバリエーションに応じて、上記水以外に公知の塗料組成物を必要に応じ適量配合して複数種の塗料組成物からなる紫外線硬化型水性塗料とすることができる。公知の塗料組成物としては、光輝顔料、着色顔料、体質顔料、加工顔料、媒染染料などの顔料及び染料類、分散剤、増粘・沈降防止剤、光安定剤、タレ防止剤、表面調整剤、表面改質剤、消泡剤、ワックス、艶消し剤、紫外線重合開始剤などの添加剤類、アルコール系、エステル系、ケトン系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、グリコールエーテル系等の有機溶剤類、樹脂類や繊維素誘導体類、硬化剤類等が挙げられる。顔料は、有機顔料たとえばアゾ系、フタロシアニン系、金属錯塩系、キナクリドン系のもの又は無機顔料たとえば二酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物、硫酸バリウム、シリカ等を用いることができる。その他公知のカーボンブラックがある。染料又は顔料の混合割合は、目的とする色の濃淡によって選択すればよいが、紫外線硬化型水分散性塗料全体の20重量部を超えてはならない。これを超えると、本発明の前記の特徴が失われるからである。
【実施例】
【0019】
本発明について、製造例、実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、製造例、実施例および比較例中の部は、特に断りのない限り重量部を意味する。
【0020】
(製造例1)紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)の合成
攪拌装置、還流冷却器を備えた2リットルの5口フラスコにポリカーボネートジオール(MW2000)を128.1部、トリメチロールプロパン0.2部、ジメチロールブタン酸6.1部、ヒドロキシ基含有特殊アクリレートM−5700(東亞合成化学社製)12.4部を仕込み、窒素雰囲気下で、60〜65℃まで昇温した。
65℃まで昇温し、各種材料が溶解していることを確認した後、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)33.2部を投入した。ヘキサメチレンジイソシアネート投入後、冷却効果により約10℃低下するが、直ぐに反応が始まり、発熱状態になるので、95℃を超えないように温度調節を行った。
5〜10分で発熱は収まるので、ジブチルスズジラウレートをスポイドで数滴滴下し、5時間反応させた。
5時間後、液の粘度を調整するためにアセトンを投入し、その後分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートR−1304(第一工業製薬製)を54部と光重合開始剤イルガキュア(IRG)2959を13.3部とトリエチルアミン(TEA)を4.2部添加し、20分後に水を477部投入した。
転相終了後、エチレンジアミン(EDA)を3.7部投入し、50〜55℃で約1時間
反応(鎖延長)させ、ロータリーエバポレーターでアセトンを除去した。
(製造例2〜6)
製造例2〜6は、製造方法は同じで、表1に、使用した物質及び量を示す。
なお、製造例1〜6で得られた紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)の固形分は、いずれも34.5%であった。
【0021】
【表1】

【0022】
(実施例1)
容器に製造例1で得られた紫外線硬化型水分散性ポリウレタン51.7部に有機微粒子(架橋アクリル−アルキル微粒子)AFX−15(積水化成品工業製)を16.6部とシリコーン樹脂エマルションX−51−1319(信越化学工業製)6.6部と消泡剤71アディティブ(東レダウコーニング製)0.1部とイオン交換水25.1部をいれ、攪拌機でよく攪拌し、スプレー塗装用の液を得た。
(実施例2〜3)
実施例1の配合で、製造例2〜3で合成した樹脂と各種有機微粒子を用いる以外はすべて同じ方法でスプレー塗装用の液を得た。
【0023】
(実施例4)
容器に製造例1で得られた紫外線硬化型水分散性ポリウレタン51.7部に有機微粒子(架橋アクリル微粒子A)テクポリマーMBX−8(積水化成品工業製)を16.6部とシリコーン樹脂エマルションX−51−1319(信越化学工業製)を6.6部と消泡剤71アディティブ(東レダウコーニング製)0.1部とイオン交換水25.1部をいれ、攪拌機でよく攪拌し、スプレー塗装用の液を得た。
(実施例5〜7)
実施例4の配合で、各種有機微粒子を用いる以外は全て同じ方法でスプレー塗装用の液を得た。(ウレタン樹脂微粒子A,B;アートパール(根上工業製))
【0024】
(比較例1)
容器に製造例1で得られた紫外線硬化型水分散性ポリウレタン93.3部に、シリコーン樹脂エマルションX−51−1319(信越化学工業製)を6.6部と消泡剤71アディティブ(東レダウコーニング製)0.1部をいれ、攪拌機でよく攪拌し、スプレー塗装用の液を得た。
(比較例2)
容器に製造例1で得られた紫外線硬化型水分散性ポリウレタン51.7部に、有機微粒子(架橋アクリル−アルキル微粒子)AFX−15(積水化成品工業製)を4.0部とシリコーン樹脂エマルションX−51−1319(信越化学工業製)を6.6部と消泡剤71アディティブ(東レダウコーニング製)0.1部をいれ、攪拌機でよく攪拌し、スプレー塗装用の液を得た。
【0025】
(比較例3)
容器に製造例1で得られた紫外線硬化型水分散性ポリウレタン51.7部に、有機微粒子(架橋アクリル−アルキル微粒子)AFX−15(積水化成品工業製)32.0部とシリコーン樹脂エマルションX−51−1319(信越化学工業製)を6.6部と消泡剤71アディティブ(東レダウコーニング製)0.1部とイオン交換水54.0部をいれ、攪拌機でよく攪拌し、スプレー塗装用の液を得た。
(比較例4〜6)
実施例1と同じ調合方法で、製造例4〜6の紫外線硬化型水分散性ポリウレタンを用いて、スプレー塗装用の液を得た。
上記実施例1〜7および比較例1〜6の紫外線硬化型の水分散性弾性塗料の成分を総括して表2に示す。
【0026】
(紫外線硬化型の水分散性弾性塗料の評価)
実施例1〜7、比較例1〜6で調合した水性塗料を使用し、塗膜の特性を評価した。塗膜は、白色のABS板にエアースプレーを用いて硬化後の塗膜厚が20μmになるように塗布し、次いで、80℃の温度で5分間予備乾燥した後、UV照射装置にて400mJ/cmの光量で紫外線硬化を行った。その結果は表2に示す通りであった。
【0027】
(評価方法)
(1)外観:塗膜表面の状態を目視判定で評価した。
(2)鉛筆硬度:JISK5600の方法に従って行った。
(3)密着性:JISK5600の付着性試験の方法に従って行った。
(4)触感:溶剤系の触感塗料ハニソフトンGM−330C(ハニー化成製)を基準として、手触り感で評価した。
5:現行品と同等レベル、4:若干触感が足りない、3:ある程度ソフト感あり、2:わずかにソフト感あり、1:ソフト感なし
(5)耐アルコール性:エチルアルコール(1級)を脱脂綿に浸み込ませ、1KGの加重をかけ、5センチの幅で50往復させた後の塗膜の外観で評価した。
○:塗膜外観に変化が認められない、△:塗膜外観に若干の変化がある、×:塗膜が剥がれる
【0028】
表2において、実施例1〜7は、いずれも所望した触感を有することが認められるが、特に実施例1〜3に示す架橋アクリル−アルキル微粒子Aでは、優れた触感を得ることができる。一方、比較例1に見られるように、架橋アクリル−アルキル微粒子を含まない場合には、全くその触感を得ることができない。また架橋アクリル−アルキル微粒子であっても、比較例2のように配合量が少ないとその効果が得られない。逆に、架橋アクリル−アルキル微粒子の配合量が多すぎても、比較例3のように耐アルコール性などの低下につながる。また、比較例4〜6に見られるように、水分散性ウレタン樹脂(D)が安定性の悪い配合であると、架橋アクリル−アルキル微粒子を用いても良い触感が得られないということが明らかである。
【0029】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の紫外線硬化型水分散性塗料組成物を使用することで、プラスチックや金属等といった各種基材上に容易に被覆でき、当該紫外線硬化型水分散性塗料組成物を用いて形成された塗膜は、外観及び触感が良く、耐擦傷性に優れており、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)(a−1)ヒドロキシル価20〜230のポリエステルポリオールと、
(a−2)ヒドロキシル価20〜230のポリエーテルジオールの合計が10〜80当量%、
(a−3)ジ、若しくはトリオール0〜10当量%、
(a−4)ヒドロキシ基含有アクリレート10〜30当量%、及び
(a−5)アニオン性基、及び潜在的アニオン性基から選択される基を含むα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸10〜50当量%を、
(2)(1)の100当量%に対して、ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの1つ又はそれ以上を、100〜200当量%で反応させることにより得られる側鎖及び末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量2000〜100000の水分散性ポリウレタン30〜95重量部、
(B)1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤4〜60重量部、及び
(C)紫外線重合開始剤1〜10重量部を含有して成る紫外線硬化型水分散性ポリウレ
タン(D)の樹脂固形分100重量部に対して、
(E)有機微粒子25〜150重量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型水分散性塗料組成物。
【請求項2】
前記紫外線硬化型水分散性ポリウレタン(D)が、以下の工程(1)〜(4)を経て得られるものであることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型水分散性塗料組成物。
(1)水分散性ポリウレタン(A)30〜95重量部に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート架橋剤(B)4〜60重量部と、紫外線重合開始剤(C)1〜10重量部とを含有させる工程、
(2)塩形成により存在する潜在的アニオン性基をアニオン性基に変換する工程、
(3)水中分散体を形成する工程、
(4)(3)に0.1〜100当量%の、ジアミン及び/又はポリアミンの1つ又はそれ以上と反応させる工程
【請求項3】
請求項1〜2に記載の紫外線硬化型水分散性塗料組成物を紫外線硬化して得られることを特徴とする塗膜。

【公開番号】特開2009−144065(P2009−144065A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323146(P2007−323146)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000111591)ハニー化成株式会社 (13)
【Fターム(参考)】