説明

紫外線硬化型樹脂組成物及びハードコートフィルム

【課題】 タッチペンでの押圧により発生するキズを防止し、指紋の付着跡が目立たないフィルムを提供する。
【解決手段】 (a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマーと、(c)希釈溶剤を含有する紫外線硬化型樹脂組成物において、レベリング剤を含まず、希釈溶剤は沸点の異なる溶剤を併用する。希釈溶剤は、低沸点(100℃以下)溶剤、中沸点(101℃〜120℃)溶剤、高沸点(121℃以上)溶剤からなる群から選ばれる、少なくとも二種を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
紫外線硬化型樹脂組成物及びハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックはその加工性、透明性に加えて、軽量、安価といった特徴を有しているためディスプレイなど様々な箇所で使用されている。しかし、ガラスと比較しやわらかいため、アクリル系やシリコーン系の樹脂を加熱または紫外線硬化することにより表面に傷がつきにくい硬化物で保護している。この硬化物は塗工面に指紋等の油分が付着しやすくディスプレイの視認性を低下させる問題を有しており、防汚剤を配合する場合があった。
【0003】
【特許文献1】特開2010−70602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防汚剤は相溶性が悪く、レベリング性が著しく低下してハードコート剤を塗工するとスジが入る問題が発生していた。これを解決しようとしてレベリング剤を添加しても顕著な効果が得られないという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために検討されたものであり、多官能(メタ)アクリレート及び、幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマーと、希釈溶剤を含有する紫外線硬化型樹脂組成物において、レベリング剤を含まず、希釈溶剤は沸点の異なる溶剤の併用であることを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物である。
尚、本明細書で、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート、又はメタクリレート」を意味する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマーを用い、希釈溶剤を選択することでスジが入ることなく外観良く塗工できる。また、レベリング剤を配合する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いる多官能(メタ)アクリレートはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0008】
紫外線や電子線の電離放射線による重合の際に用いる開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドなどが挙げられ、市販品としてはIrgacure127、184、369、651、500、891、907、Darocure1173、TPO(BASFジャパン株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0009】
本発明では指紋の付着を目立たないものとするため、幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマーを用いており、(a)多官能(メタ)アクリレートの100重量部に対して0.03〜0.2重量部(固形分比)配合する。下限に満たないと、指紋の付着が目立ちやすく、上限を超えるとハードコートフィルムの外観が白っぽくなり好ましくない。市販品としては、例えば、ZX−204−A(商品名、富士化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0010】
希釈溶剤は、低沸点(100℃以下)、中沸点(101℃〜120℃)、高沸点(121℃以上)であり、これらの群から少なくとも二種以上を選択することにより塗工時のスジが入らないなど、ハードコートフィルムの外観を向上させることができる。
【0011】
低沸点(100℃以下)溶剤としては、MEK(メチルエチルケトン)、酢酸エチル、中沸点(101℃〜120℃)溶剤としては、トルエン、IBA(イソブチルアルコール)、高沸点(121℃以上)溶剤としては、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0012】
(c)希釈溶剤は、(a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマーと、(c)希釈溶剤の総重量に対して、固形分(重量%)は、30〜70%となるように配合する。特に(X)低沸点(100℃以下)溶剤、(Y)中沸点(101℃〜120℃)溶剤、(Z)高沸点(121℃以上)溶剤の三種類を用いるときは、
X/(X+Y+Z)×100=25〜50重量%
Y/(X+Y+Z)×100=25〜50重量%
Z/(X+Y+Z)×100=25〜50重量%
の配合にすると極めて塗工スジのない外観が優れたものとなり好ましい。
【0013】
フィルムに紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する手段としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、スクリーン印刷など通常公知の方法で塗布して、硬化させればよい。
【0014】
本発明において用いられるフィルムは、透明なプラスチックフィルムであれば特に限定はないが、なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね25μm〜250μmであればよい。
【0015】
前記のフィルムには、紫外線硬化型樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、プライマー処理やサンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例1】
【0016】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート (商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、固形分100%)473.5重量部、幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマー(ZX−204−A、商品名、富士化成工業株式会社製)0.5重量部、光開始剤(商品名:IRGACURE184、BASFジャパン株式会社製、商品名)を23.6重量部、HALS(高分子光安定剤)として、TINUVIN152、BASFジャパン株式会社製、商品名)2.4重量部、MEK250重量部、トルエン250重量部を配合し、#200のステンレスメッシュで異物を除き、塗工液を得た。
塗工液を188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名:ルミラーU46、東レ株式会社製)に#10のバーコーターにて塗布し、80℃熱風乾燥機で2分間乾燥後、300mJ/cmの紫外線を照射して硬化し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0017】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例3】
【0018】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例4】
【0019】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例5】
【0020】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例6】
【0021】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例7】
【0022】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例8】
【0023】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例9】
【0024】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【実施例10】
【0025】
実施例1において、表1に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0026】
比較例1
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0027】
比較例2
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0028】
比較例3
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0029】
比較例4
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0030】
比較例5
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0031】
比較例6
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0032】
比較例7
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0033】
比較例8
実施例1において、表2に示す溶剤配合に変更した以外は同様に実施した。
【0034】
比較例9
比較例1において、シリコーン系レベリング剤としてBYK310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を2.5重量部添加した以外同様に実施した。
【0035】
比較例10
比較例3において、シリコーン系レベリング剤としてBYK310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を2.5重量部添加した以外同様に実施した。
【0036】
比較例11
比較例5において、シリコーン系レベリング剤としてBYK310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を2.5重量部添加した以外同様に実施した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
外観:バーコーターのスジや、塗工ムラの有無を目視にて確認し、スジや塗工ムラがまったく無いものを「○」、スジや塗工ムラが少量のものを「△」、スジや塗工ムラが大量にあるものを「×」と評価した。
【0040】
指紋視認性:指紋の視認性を目視にて確認し、指紋が見えにくいものを「○」、明らかに見えるものを「×」とした。
【0041】
鉛筆硬度:JIS K5600−5−4に基づき、750g荷重で評価を行った。傷のつかない硬度を記載した。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多官能(メタ)アクリレートと、(b)幹がアクリル樹脂からなる枝状ポリマーと、(c)希釈溶剤を含有する紫外線硬化型樹脂組成物において、レベリング剤を含まず、希釈溶剤は沸点の異なる溶剤の併用であることを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の希釈溶剤は、低沸点(100℃以下)溶剤、中沸点(101℃〜120℃)溶剤、高沸点(121℃以上)溶剤からなる群から選ばれる、少なくとも二種であることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
プラスチックフィルムに請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射してなることを特徴とするハードコートフィルム。


【公開番号】特開2013−43907(P2013−43907A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181062(P2011−181062)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】