説明

紫外線硬化型樹脂組成物

【課題】半田耐熱試験においても透過率の減少が抑制された、半田耐熱性に優れた低損失な紫外線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)を含有する紫外線硬化型樹脂組成物である。
(A)オキセタニルシルセスキオキセタン。
(B)下記の一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂。
【化1】


(C)光重合開始剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野にて使用される光学部品や光学部品組み立て用に用いられる透明樹脂において、光信号を低損失で通す透明性と優れた接着力を有し、光電気混載基板等に使用される場合の半田耐熱信頼性が高く、また耐湿信頼性に優れた紫外線硬化型樹脂組成物に関するものである。特に、レンズの固定、光デバイスパッケージのシールやV溝基板への光ファイバーの固定、光導波路やレンズ等の光学部品材料等として有用な紫外線硬化型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高透明な光学用接着剤はもとより、高分子材料を用いた光導波路が提案され、実用化されつつある。上記高分子材料は、無機材料と比較して加工が容易であり、大面積化やフィルム化を容易に行うことができる。また、フレキシブル(可撓性を有する)であるためその用途が広いこと、屈折率の調整が容易である等種々の利点を有している。なかでも、紫外線硬化型樹脂は、安価であり、大量生産を行うことが可能な材料であることから、光導波路用の材料として期待されている。このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリイミド、ポリシランやオキセタン樹脂等様々な材料が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2000−356720号公報
【特許文献2】特開2003−21735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記エポキシ樹脂やアクリレート樹脂等の高分子材料では、耐熱性の点で充分なものとは言えず、例えば、半田等の熱処理等において樹脂に黄変が発生し、大きな損失が生起し、結果、信頼性に問題が生じる。また、耐湿性に関しても充分なものではなく、恒温恒湿試験において、剥離や黄変が生起するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、半田耐熱試験においても透過率の減少が抑制された、半田耐熱性に優れた低損失な紫外線硬化型樹脂組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、下記の(A)〜(C)を含有するという構成をとる。
(A)オキセタニルシルセスキオキセタン。
(B)下記の一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂。
【化1】

(C)光重合開始剤。
【0006】
すなわち、本発明者は、半田耐熱試験においても透過率の減少が抑制された、優れた半田耐熱性を有し、透過率の減少を抑制することができる紫外線硬化型樹脂組成物を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)を用いるとともに、エポキシ樹脂として、上記特定のエポキシ樹脂(B)を用いると、上記オキセタニルシルセスキオキセタンは、多官能型オキセタン化合物であり、反応性が高く、耐熱性が高いため、半田等の熱処理においても光透過率の低下を起こさない。一方、上記特定のエポキシ樹脂(B)はフッ素化エポキシ樹脂であり透明性が高いが反応性が低く、また、通常、オキセタン類の化合物とは相溶しないものであるが、上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)および上記特定のエポキシ樹脂(B)は相溶性が良好で、両者を併用することにより、半田耐熱性が著しく向上し、透明性の良好な硬化物が得られるようになるため、上記のような所期の目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明は、上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)と、上記特定の液状エポキシ樹脂(B)を用いた紫外線硬化型樹脂組成物である。このため、半田温度相当の高温放置下においても透過率の減少がほとんどなく低損失となり半田耐熱性が向上し、高い透明性を有する。したがって、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を、光通信系におけるVグルーヴや光導波路(AWG)等の精密光部品の接着およびファイバーアレイの接着用途、また光導波路およびレンズ等の形成材料として用いると、高信頼性の良好な光学系を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、オキセタニルシルセスキオキセタン(A)と、特定の液状エポキシ樹脂(B)と、光重合開始剤(C)とを用いることにより得られる。
【0009】
上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)は、下記の構造式(2)で表されるものであり、シルセスキオキセタン骨格を有する多官能型オキセタン化合物である。そして、上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)は、例えば、オキセタニル基および加水分解性基を有するケイ素化合物を、加水分解・縮合させることにより合成することができる。
【0010】
【化2】

【0011】
上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)としては、例えば、東亞合成社製のOX−SQ等が好適に用いられる。
【0012】
上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)の含有割合は、このオキセタニルシルセスキオキセタン(A)および特定のエポキシ樹脂(B)の合計量の50〜90重量%の範囲内となるよう設定することが好ましい。特に好ましくは70〜80重量%である。すなわち、50重量%未満では、充分な硬化性を得ることが困難であり、90重量%を超えると、硬化物が脆くなり、硬化物物性が低下する傾向がみられるからである。
【0013】
上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)とともに用いられる特定の液状エポキシ樹脂(B)は、下記の一般式(1)で表されるフッ素化直鎖脂肪族型の液状エポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂は低粘度であり、このエポキシ樹脂を用いることにより樹脂組成物全体の低粘度化を図ることが可能となる。
【0014】
【化3】

【0015】
上記式(1)中の繰り返し数nは2〜10の整数であり、好ましくは4〜10の整数である。
【0016】
さらに、本発明においては、上記特定のエポキシ樹脂(B)とともに、他のエポキシ樹脂を併用することができる。上記他のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加型ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニルモノグリシジルエーテルやリモネンジエポキサイド等の反応性希釈剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、透明で耐熱性が高いという点から、下記の構造式(3)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを併用することが好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
これら他のエポキシ樹脂を併用する場合の使用割合は、上記特定のエポキシ樹脂(B)との合計量の50重量%以下となるよう設定することが好ましい。すなわち、50重量%を超えると、透明性が低下したり、高温放置時の黄変がひどくなる傾向がみられるからである。
【0019】
上記一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂(B)の含有割合は、(A)および(B)の合計量の10〜50重量%の範囲内となるよう設定することが好ましい。特に好ましくは20〜30重量%である。すなわち、10重量%未満では、充分な半田耐熱性の向上効果が得られ難く、50重量%を超えると、上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)と相溶しにくくなる傾向がみられるからである。
【0020】
上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)および特定のエポキシ樹脂(B)とともに用いられる光重合開始剤(C)としては、特に限定するものではなく、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物あるいは鉄アレーン系化合物等を用いることができる。その中でも、光硬化性の観点から、芳香族スルホニウム塩が好ましく、特に芳香族スルホニウム・ヘキサフロロホスホニウム化合物、芳香族スルホニウム・ヘキサフロロアンチモネート化合物、またはその両者の併用が、硬化性、接着性等の観点から好ましい。さらに、上記光重合開始剤(C)とともに、従来公知の光増感剤や酸増殖剤等も必要に応じて添加することができる。
【0021】
上記光重合開始剤(C)の含有量は、上記オキセタニルシルセスキオキセタン(A)および特定のエポキシ樹脂(B)の合計量100重量部(以下「部」と略す)に対して1〜15部に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜10部である。
【0022】
また、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には、上記(A)〜(C)以外に、接着性を高めるためにシラン系あるいはチタン系のカップリング剤、合成ゴムやシリコーン化合物等の可撓性付与剤等の化合物、さらに酸化防止剤、消泡剤等の他の添加剤を必要に応じて適宜に配合することができる。
【0023】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、上記(A)〜(C)、さらに必要に応じて他の添加剤を用いて、所定の割合で配合し溶融混合することにより得られる。
【0024】
このようにして得られる紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、UVランプ等により紫外線を照射した後、所定の温度でのポストキュアを行うことにより硬化させることができる。
【0025】
また、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化後の光透過率は、通常、厚み140μmの場合、25℃雰囲気下、可視光領域(波長500〜900nm)および赤外領域において90%以上である。
【0026】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0027】
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0028】
〔オキセタン化合物1〕
前記構造式(2)で表されるオキセタニルシルセスキオキセタン(東亞合成社製、OX−SQ)
【0029】
〔オキセタン化合物2〕
下記の構造式(4)で表される2官能オキセタン化合物(東亞合成社製、OXT−121)
【化5】

【0030】
〔エポキシ化合物1〕
前記一般式(1)で表されるフッ素化直鎖脂肪族エポキシ樹脂(n=4)
【0031】
〔エポキシ化合物2〕
下記の式(3)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2021P)
【化6】

【0032】
〔エポキシ化合物3〕
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、YL−6753)
【0033】
〔光重合開始剤〕
スルホニウム・ヘキサフロロアンチモン系重合開始剤(旭電化社製、SP−170)
【0034】
〔カップリング剤〕
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−403)
【0035】
〔酸化防止剤〕
HCA(三光化学社製)
【実施例】
【0036】
〔実施例1〜5、比較例1〜4〕
下記の表1〜表2に示す各配合成分を同表に示す割合で配合し溶融混合(条件:25℃)することにより紫外線硬化型樹脂組成物を作製した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
このようにして得られた実施例および比較例の各紫外線硬化型樹脂組成物を用いて、硬化後の初期透過率と半田温度(260℃)での各透過率、および上記透過率の減少率を下記の方法に従ってそれぞれ測定・評価した。これらの結果を後記の表3〜表4に併せて示す。
【0040】
〔各透過率および透過率減少率〕
透過率評価用サンプルをつぎのようにして作製した。すなわち、2枚のパイレックス(登録商標)ガラス(大きさ:40mm×20mm)の間にスペーサーを用いて、140μmの隙間を形成した。つぎに、この隙間に毛細管現象を利用して紫外線硬化型樹脂組成物を充填した後、紫外線照射を行うことにより硬化させて透過率評価用サンプルを作製した。なお、上記紫外線照射による硬化は、500WのUVランプ(高圧水銀ランプ)を用いて、9000mJ/cm2 で光照射した後、100℃で1時間のポストキュアを行った。つぎに、このサンプルを用い、波長850nmにおける初期透過率(25℃)を測定した後、260℃の乾燥機に30分間投入した後のサンプルを再度波長850nmでの透過率を測定した。そして、上記初期透過率と260℃での透過率の各値から透過率の減少率を算出した。なお、透過率の測定には、分光光度計(UV−3000、島津製作所社製)を用いた。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
上記結果から、実施例品は、両透過率とも高く、したがって透過率減少率も非常に小さいものであった。このことから、耐熱性に優れたものであることがわかる。
【0044】
これに対して、オキセタニルシルセスキオキセタン以外のオキセタン化合物および特定のエポキシ化合物を用いない比較例1品、またオキセタニルシルセスキオキセタンと特定のエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を併用した比較例2品は、いずれも透過率の減少率が実施例品に比べて高く、耐熱性に劣るものであることは明らかである。また、オキセタニルシルセスキオキセタン以外のオキセタン化合物と特定のエポキシ化合物を用いた比較例3品およびオキセタニルシルセスキオキセタンのみを用いた比較例4品は、260℃×30分間の条件ではサンプルにクラックが発生してしまい透過率の測定ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、光通信分野にて使用される光学部品や光学部品組み立て用に用いられる透明樹脂、特に、レンズの固定、光デバイスパッケージのシールやV溝基板への光ファイバーの固定、光導波路(AWG)やレンズ等の成形材料等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
(A)オキセタニルシルセスキオキセタン。
(B)下記の一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂。
【化1】

(C)光重合開始剤。

【公開番号】特開2006−8740(P2006−8740A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183685(P2004−183685)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】