説明

紫外線硬化性上塗り被覆組成物およびその塗装品

【課題】金属蒸着層との密着性が良好で、耐傷付き性、耐湿性のバランスに優れた紫外線硬化性上塗り被覆組成物とその塗装品を提供する。
【解決手段】(1)ケトン樹脂の5〜90重量部に対し、1分子中に1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物95〜10重量部と、(2)前記紫外線硬化性ビニル化合物100重量部に対して、光重合開始剤0.01〜20重量部を含有することを特徴とする組成物およびこのような組成物によって塗装した塗装品であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性上塗り被覆組成物とそれを塗装した蒸着成型品に関し、更に詳しくはケトン樹脂と1分子中に、1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物、光重合開始剤を含み、蒸着面に対し密着性の優れた紫外線硬化性上塗り被覆組成物およびその塗装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりプラスチック成型品表面に金属を蒸着し、該蒸着成型物を各種装飾品などに利用することが知られている。蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが採用されている。通常このような加工をする場合、プラスチック成型品にアンダーコートとして熱硬化または紫外線硬化性の下塗り塗料を塗装した後、下塗り層の上層に金属蒸着を施している。金属蒸着層は酸素、水により劣化し易く、また傷に対しても弱いため装飾用または反射鏡等の用途としての機能を著しく損ないやすい。そのため、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化性塗料やシリコン変性等のアクリル樹脂塗料を前記蒸着膜に被覆し、塗膜を形成してきたが、密著性、耐傷付き性、耐湿性のバランスが不十分であった。蒸着上塗り用紫外線硬化性塗料としては、例えば特開平7−62267号公報では、環構造を有するアクリルまたはメタクリルモノマーと2官能のジメチルシロキサンを含む組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平7−62267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来知られている(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化性塗料は、耐傷付き性は優れるものの、密着性が不十分という欠点があり、シリコン変性等のアクリル樹脂塗料は、密着性は優れるものの耐傷付き性が不十分であるという欠点があった。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、金属蒸着層との密着性が良好で、耐傷付き性、耐湿性のバランスに優れた紫外線硬化性上塗り被覆組成物とその塗装品に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、(1)ケトン樹脂の5〜90重量部に対し、1分子中に1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物95〜10重量部と、(2)前記紫外線硬化性ビニル化合物100重量部に対し、光重合開始剤0.01〜20重量部を含有する紫外線硬化性上塗り被覆組成物が上記課題の解決に合致することを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ケトン樹脂を(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化性組成物に配合することにより、金属蒸着層との密着性が良好で、耐傷付き性、耐湿性のバランスに優れた紫外線硬化性上塗り被覆組成物とその塗装品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明による紫外線硬化性上塗り被覆組成物は、上述のように(1)ケトン樹脂の5〜90重量部に対し、1分子中に1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物95〜10重量部と、(2)前記紫外線硬化性ビニル化合物100重量部に対し、光重合開始剤0.01〜20重量部を含有することを特徴とする。
【0009】
1.ケトン樹脂
本発明で用いられるケトン樹脂は、被塗装物(たとえばプラスチック、金属蒸着膜など)、特に金属蒸着膜との密着性を改良するために、紫外線硬化性ビニル化合物に混合されるものであり、上述のような密着性を改良可能なものであれば、特に種類に制限はなく、公知の各種樹脂が利用できる。
【0010】
たとえば、ケトンとホルムアルデヒドの縮合物であり、縮合触媒としては酸、アルカリを用いることができる。反応は40〜120℃にて1〜10時間程度が好ましい。ケトンは、アセトン等の脂肪族飽和ケトン、メチルビニル等の脂肪族不飽和ケトン、シクロヘキサノン等の脂環式ケトン、アセトフェノン等の芳香族ケトン、アセトフェノンケトン等の複素環式ケトン等とこれらの水添化合物やウレタン変性物等が挙げられる。特に、アセトフェノンとホルムアルデヒドの縮合物(式1)およびこの縮合物の水添化合物(式2)およびウレタン変性物(式3)、シクロヘキサノンのホルマリン縮合物(式4)およびトリメチルシクロヘキサノンのホルムアルデヒド縮合物(式5)を具体例として挙げることができる。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
アルカリ性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示でき、これらの使用量はケトン類1モルに対して通常0.05〜0.5モル程度である。ケトン類とホルムアルデヒドの仕込み比率は、得られる樹脂の分子量、軟化点などを考慮して決定し、通常はホルムアルデヒドがケトン類の1.0〜4.0倍モル、好ましくは1.0〜2.0倍モルである。
【0016】
2.紫外線硬化性ビニル化合物
本発明の紫外線硬化性上塗り被覆組成物の基材として用いられる、1分子中に1個以上の二重結合を含む紫外線硬化性ビニル化合物としては、1分子中に1個の二重結合を含む化合物として、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアクリル酸アルキルエステル等の(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとγ−ブチロラクトンの付加物などの水酸基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸の他に、ジメチルマレート、ジメチルフマレート等のジアルキルエステル類等のカルボキシル基またはアルコキシカルボニル基含有ビニル化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有ビニル化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有ビニル化合物を挙げることができる。
【0017】
上記の他に、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を例示することができる。
【0018】
1分子中に2個の二重結合を含む化合物として、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
1分子中に3個以上の二重結合を含む化合物として、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。またイソシアヌル酸誘導体なども用いることができる。
【0020】
上記ビニル化合物の他に、ウレタン変性(メタ)アクリレート、ポリエステル変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレートを用いることもできる。
【0021】
3.ケトン樹脂と紫外線硬化性ビニル化合物の混合比
本発明においては、ケトン樹脂の5〜90重量部に対し、1分子中に1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物は、95〜10重量部混合される。前記ケトン樹脂が5重量部未満であると、密着性が改良されない恐れがあり、一方90重量部を越えると、塗膜強度が低下する恐れを生じるからである。最も好ましくは、20〜80重量部である。
【0022】
4.光重合開始剤
上記紫外線硬化性ビニル化合物を重合反応させるための光重合開始剤としては、上述の紫外線硬化性ビニル化合物を重合反応させるものであれば基本的にいかなるものでもよい。たとえば、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエール、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、P−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、カンファーキノン等を挙げることができる。
【0023】
このような光重合開始剤は、紫外線硬化性ビニル化合物100重量部に対し、0.01〜20重量部添加される。0.01重量部未満であると、重合が開始しない恐れがあり、一方、20重量部を越えると、塗膜の密着性を損なう恐れがある。
【0024】
5.その他
本発明による紫外線硬化性上塗り被覆組成物においては、分子量1000〜500000のアクリル樹脂を添加することが可能である。このようなアクリル樹脂は紫外線収縮を抑制し、密着性を良好にする作用があるとともに、増量剤としての作用を営む。
【0025】
このようなアクリル樹脂は、塗料の分野において、公知のものを使用することができ、公知の方法で得ることができる。前記アクリル樹脂は、ケトン樹脂および紫外線硬化性ビニル化合物の合計100重量部に対し、200重量部以下添加することができる。前記アクリル樹脂が200重量部を越えると、耐傷付き性と耐溶剤性(耐アルコール性、耐ガソリン性)が低下する恐れがある。
【0026】
上述のアクリル樹脂の数平均分子量は、1000〜500000であるのがよい。1000未満であると製造するのが困難であり、一方500000を越えると、平滑性、レベリング性が悪くなるとともに、相溶性も悪化する恐れがある。
【0027】
このようなアクリ樹脂を製造するための単量体の具体例としては、
「(メタ)アクリル酸エステル」、「カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基含有ビニル単量体」、「酸無水物基含有ビニル単量体」、「非脂環式エポキシ基含有ビニル単量体」、「芳香族ビニル単量体」、「水酸基含有ビニル単量体」等を挙げることができる。
【0028】
(1)「(メタ)アクリル酸エステル」としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレー卜、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
【0029】
(2)「カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基含有ビニル単量体」としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸の他に、ジメチルマレート、ジメチルフマレート等のジアルキルエステル類を挙げることができる。
【0030】
(3)「酸無水物基含有ビニル単量体」としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを例示することができる。
【0031】
(4)「非脂環式エポキシ基含有ビニル単量体」としては、グリシジル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0032】
(5)「芳香族ビニル単量体」としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルスチレン等を例示することができる。
【0033】
(6)「水酸基含有ビニル単量体」の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0034】
(7)上記の他に、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を例示することができる。
【0035】
上述の単量体をラジカル重合するための、「ラジカル重合開始剤」としては、通常用いられていることができるものを使用でき、好ましくは10時間半減期温度が50〜110℃までのものである。具体例としては、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等の過酸化化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾビスニトリル類が挙げられる。「有機溶媒」としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒を用いることができ、炭化水素系溶媒を用いた場合には、溶解性の点から、他の溶媒を併用することが好ましい。ラジカル重合させた後は、通常反応液からアクリル樹脂を取り出すことなく、溶液のまま本発明に用いることができる。
【0036】
本発明による紫外線硬化性上塗り被覆組成物に、さらに必要に応じて通常の塗料に添加できる各種添加剤、例えばレベリング剤、流動性改良剤、酸化防止剤等を添加して調製することができる。
【0037】
6.塗装品
本発明によれば、図1に示すように、プラスチック材1上にアンダーコート2を設けるとともに、前記アンダーコート上に金属蒸着膜3を形成する。このように金属蒸着膜3を形成した後、この金属蒸着膜3に、本発明による紫外線硬化性上塗り被覆組成物を塗布し、紫外線硬化させて紫外線硬化塗膜4を形成する。
【0038】
図2は、前記紫外線硬化塗膜4上にさらにトップコート5として、紫外線硬化膜を形成した構造を示している。
【0039】
本発明による紫外線硬化性上塗り被覆組成物は、プラスチックに直接塗布してもよいが、特に金属蒸着膜3上に塗布し、良好な密着性、耐傷付き性、耐湿性を備えた紫外線硬化塗膜4を形成できる利点がある。
【0040】
前記金属蒸着膜3としては、特にアルミニウム蒸着膜、ニッケル蒸着膜、スズ蒸着膜が好ましい。良好な密着性を発揮できるからである。
【0041】
トップコートとしては、本発明による紫外線硬化性上塗り被覆組成物によって形成された塗膜に良好に密着するものであれば基本的にいかなるものでもよい。たとえば紫外線硬化型の、上記2.で示した紫外線硬化性ビニル化合物であることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の説明で「部」とあるのは全て重量部を表す。
【0043】
[製造例1]
[分子量1000〜500000のアクリル樹脂の製造]
撹拌装置、温度計、還流冷却管、窒素導入管を備えた反応器に、トルエン40部、酢酸イソブチル50部を仕込み、窒素雰囲気中で100℃に昇温し、メチルメタクリレート50重量部、n−ブチルメタクリレート30重量部、n−ブチルアクリレート20重量部、AIBN7部からなる混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後も同温度で2時間熟成してから、さらにAIBN1部、トルエン10部からなる混合物を滴下した。その後も、同温度に4時間保持して不揮発分が50%で、かつ数平均分子量が7000であるアクリル樹脂#Aを得た。
【0044】
[実施例1]
(アンダーコート塗装品とその蒸着品の作製)
ウレタンアクリレート(紫光UV3200B;日本合成化学工業株式会社製)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM305;東亜合成株式会社製)を20重量部、光重合開始剤(ヒドロキシシクロフェニルケトン(イルカギュア#184;チバスペシャリティケミカルズ))を2重量部、酢酸イソブチルを28重量部の配合で調製したアンダーコートをイソプロピルアルコールで脱脂したポリカーボネート板(LEXAN LS−II−111;GEプラスチック製)1に、乾燥膜厚が7〜10μmになるようにエアスプレー塗装した。その後、70℃、5分の条件で溶剤を除去し、高圧水銀灯を使用し紫外線照射(最大強度75mW/cm、積算光量700mJcm)することにより、アンダーコート層2を形成した。次にアンダーコート層2の上にアルミニウムを真空蒸着して蒸着膜3を形成し、蒸着成型品を得た。
【0045】
(上塗り塗装をした試験片の作製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM402;東亜合成株式会社製)の10重量部、アロニックスM305の26重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(ビスコート#230;大阪有機化学工業株式会社製)の20重量部、3官能以上ポリエステルアクリレート(アロニックスM856;東亜合成株式会社製)の40重量部とアノン系ケトン樹脂(アセトフェノンとホルマリンの縮合物)(K−90;荒川化学工業株式会社)の80重量部、イルガキュア#184の4重量部と酢酸イソブチル100重量部の配合で調製した紫外線硬化性上塗り被覆組成物を、上記蒸着品の蒸着面に乾燥膜厚が7〜10μmになるように直接スプレー塗装した。その後、70℃、5分の条件で溶剤を除去し、高圧水銀灯を使用し紫外線照射(最大強度75mW/cm、積算光量700mJcm)することにより、蒸着膜3上に塗膜4を構成した(図1参照)。
【0046】
さらに、トップコートである紫外線硬化性塗料UVコートM−35(オリジン電気株式会社製)を同様の紫外線硬化条件で硬化させ、上塗り上にトップコート5を形成し、蒸着成型品の図2に相当する蒸着成型品を得た。
【0047】
[実施例2〜6]
実施例1と同様の方法でアンダーコート塗装品とその塗装品を作製した。上塗り塗装は表1、表2に示した各成分と重量部を配合し、各実施例2〜8、比較例1〜4の紫外線硬化性上塗り被覆組成物を調製して行い、試験片を作製した。
【0048】
[実施例7〜8]
実施例1と同様の方法でアンダーコート塗装品とその塗装品を作製した。上塗り塗装は表1、表2に示した各成分と重量部を配合し、各実施例7,8の紫外線硬化性上塗り被覆組成物を調製して行い、試験片を作製した。
【0049】
実施例1〜8,比較例1〜4の試験結果を下記の表1および2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
上記の表中、性能評価の項目と条件を下記に示す。
[性能評価項目と条件]
(1)密着性:1mm碁盤目セロテープ(登録商標)剥離を行った。
(2)耐湿性:65℃、95%雰囲気下に塗装品を96h放置し、取り出し後密着性を確認。
(3)耐熱性:85℃雰囲気下に塗装品を96h放置し、取り出し後密着性を確認。
(4)耐傷付き性:スチールウール#0000を用い傷付き程度を試験した。荷重は、150g/cm、摩耗回数は11往復とした。なお、耐傷付き性の評価は、発生した傷の程度を目視判定し1〜3の3段階で示した(表3参照)。
【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明によれば、ケトン樹脂を(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする紫外線硬化性組成物に配合することにより、金属蒸着層との密着性が良好で、耐傷付き性、耐湿性のバランスに優れた紫外線硬化性上塗り被覆組成物とその塗装品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による塗装品の一構成例の断面図。
【図2】本発明による塗装品の他の構成例の断面図。
【符号の説明】
【0056】
1 プラスチック材
2 アンダーコート
3 金属蒸着膜
4 紫外線硬化塗膜
5 トップコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ケトン樹脂の5〜90重量部に対し、1分子中に1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物95〜10重量部と、
(2)前記紫外線硬化性ビニル化合物100重量部に対して、光重合開始剤0.01〜20重量部を含有する紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項2】
前記ケトン樹脂を構成成分であるケトンは、脂肪族飽和ケトン、脂肪族不飽和ケトン、脂環式ケトン、芳香族ケトン、複素環式ケトンおよびこれらの水添化合物やウレタン変性物の1種以上である請求項1記載の紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項3】
前記ケトン樹脂はアセトフェノンとホルムアルデヒドとの縮合物である請求項1または2記載の紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項4】
前記ケトンはシクロヘキサノンとホルムアルデヒドとの縮合物である請求項1または2記載の紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項5】
前記ケトン樹脂はアセトフェノンとホルムアルデヒドとの縮合物の水添加物である請求項3記載の紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項6】
前記ケトン樹脂はアセトフェノンとホルムアルデヒドとの縮合物ウレタン変性物である請求項3記載の紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項7】
前記ケトンとホルムアルデヒドの仕込み比率は、ホルムアルデヒドの1.0〜4.0倍モルである請求項1〜6記載のいずれかの紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の被覆組成物100重量部に対し、分子量1000〜500000のアクリル樹脂を200重量部以下含む紫外線硬化性上塗り被覆組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載した紫外線硬化性上塗り被覆組成物を蒸着面に対し直接塗布し紫外線硬化した塗膜を有する塗装品。
【請求項10】
前記塗膜に紫外線硬化性塗料を塗布し紫外線硬化させたトップコートを設けた請求項9記載の塗装品。
【請求項11】
前記蒸着膜は、アルミニウム、ニッケルまたはスズ蒸着膜である請求項9または10記載の塗装品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−248084(P2008−248084A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91158(P2007−91158)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】