説明

紫外線硬化性樹脂材料を用いたパターン転写方法、及びこれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】単官能モノマーのみで硬化させると、膜の硬化性が悪く、一方、官能数を増やすと硬化するが、硬化収縮性が大きくなりやすかったので良好なパターン転写を行うパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料を提供する。
【解決手段】イソボルニルアクリレートが80ないし95重量%、3官能アクリレートが1ないし20重量%、及び重合開始剤が0.5ないし6重量%含まれるパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料6を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂材料を用いたパターン転写方法、及びこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、さらなる高密度化や高精度化のためにナノインプリント技術が注目されている。
【0003】
例えば、半導体や光学素子、磁気記録媒体などへの応用が検討されている。
【0004】
磁気記録媒体では、更なる高密度化に対応するために、隣接する記録トラックを溝または非磁性材料からなるガードバンドで分離し、隣接トラック間の磁気的干渉を低減するようにしたディスクリートトラック媒体が注目されている。
【0005】
このようなディスクリートトラック媒体を製造する際に、スタンパーを用いてナノインプリント技術を応用し、磁性層のディスクリートトラックパターンを形成することができる。インプリント法によって記録トラックのパターンとともにサーボ領域の信号に相当する磁性層のパターンも形成すれば、従来の磁気記録媒体の製造時に必要とされるサーボトラックを描画する工程をなくすことが可能となるので、コスト低減にもつながる。
【0006】
このようなディスクリートトラックパターンを形成するプロセスとして、Niスタンパーから、例えば高圧インプリント法または熱インプリント法によりレジストパターンを転写して製造するプロセスが用いられてきたが、このプロセスでは、Niスタンパーの寿命が短く大量生産には適していない。また、高データ密度化されトラックが微細になった際にはレジストパターンの転写が上手くいかなかった。
【0007】
このようなことから、その他のナノインプリント技術として、光ナノインプリント法を用いることが注目されている。
【0008】
光ナノインプリント法を用いてディスクリートトラック媒体上のレジストにパターンを転写するには、まず、Niスタンパー(マザースタンパー)から射出成形により樹脂スタンパーを複製し、その樹脂スタンパーと、レジストとして使用される未硬化の紫外線硬化性樹脂層とを真空貼り合わせに供する。この方法がコスト低減可能で、微細化にも適していることがわかった。
【0009】
ここで、上記ディスクリートトラック媒体に転写するための紫外線硬化性樹脂に求められる特性としては、媒体上への塗布性、粘度、硬化性、樹脂スタンパーからの剥離性、転写したパターンを加工するためのエッチング耐性、及び硬化収縮性があげられる。紫外線硬化性樹脂の厚さは、転写パターンの凹凸の高さに対してインプリントに十分であることが必要であるけれども、その後の加工工程を考えると、インプリント後の紫外線硬化性樹脂の残さは少ないほうがよい。そのためには、紫外線硬化性樹脂層の塗布膜厚は60nm以下であることが望まれる。
【0010】
例えば、ラジカル重合を行う紫外線硬化性樹脂として、開始剤,ビニル(アクリロイル)基を持つオリゴマー及びモノマーが混合された紫外線硬化性樹脂があげられる(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、紫外線硬化性樹脂中にオリゴマーを入れると、粘度が高くなり、塗布膜厚を60nm以下にすることが困難であった。
【0011】
また、ナノインプリント用の紫外線硬化性樹脂として、例えば塗布性、剥離性向上のために界面活性剤が添加された紫外線硬化性樹脂があげられる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、界面活性剤を使用しすぎると、硬化阻害や硬化時間の長時間化、磁気記録媒体の劣化しやすかった。
【0012】
さらに、塗布膜厚を60nm以下と非常に薄くしなければならないため、紫外線硬化性樹脂の粘度は15cP以下でなければ膜厚制御は困難である。
【0013】
単官能モノマーのみで硬化させると、膜の硬化性が悪く、一方、官能数を増やすと硬化するが、硬化収縮性が大きくなりやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−19292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、良好なパターン転写を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板と、透明スタンパーとを、80ないし95重量%のイソボルニルアクリレート、1ないし20重量%の3官能アクリレート、及び0.5ないし6重量%の重合開始剤を含有する未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層を介して貼り合わせ、
該未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層に紫外線を照射して、硬化せしめ、
該透明スタンパーを剥離して、前記半導体基板の片面上に凹凸パターンが転写され、硬化された紫外線硬化性樹脂材料層を形成することを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のパターン転写方法は、真空下で、基材表面と、透明スタンパーの凹凸パターン面とを、80ないし95重量%のイソボルニルアクリレート、1ないし20重量%の3官能アクリレート、及び0.5ないし6重量%の重合開始剤を含有する未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層を介して貼り合わせ、
該未硬化の紫外線硬化性樹脂材料の塗布層に紫外線を照射して、硬化せしめ、
該透明スタンパーを剥離して、前記基材の片面上に凹凸パターンが転写され、硬化された紫外線硬化性樹脂材料層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明を用いると、磁気記録媒体の製造方法において良好なパターン転写を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に用いられるパターン転写方法を表す図である。
【図2】磁気記録媒体を記録再生する磁気記録再生装置を表す図である。
【図3】ディスクリート型磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図4】転写パターンサンプルの評価装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料は、下記式(1)で表されるイソボルニルアクリレート、3官能アクリレート、及び重合開始剤を含有する。その組成は、イソボルニルアクリレートが80ないし95重量%、3官能アクリレートが1ないし20重量%、及び重合開始剤が0.5ないし6重量%である。
【化1】

【0021】
本発明によれば、イソボルニルアクリレート、3官能アクリレート、及び重合開始剤を所定の配合比で混合することにより、紫外線硬化性樹脂材料の粘度が15cp以下に調整され、60nm以下の薄く均一な厚さの塗布層の形成が可能となる。これにより、インプリント後の紫外線硬化性樹脂の残さを少なくすることが出来る。また、上記組成のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料は、紫外線による硬化性、及び硬化後の剥離性、エッチング耐性、及び硬化収縮性が良好である。このため、パターン転写用紫外線硬化性樹脂材料を用いると、スタンパーから精度の良いパターン転写を行うことが出来る。
【0022】
イソボルニルアクリレートは、9CPと比較的低粘度で、ガラス転移点Tgが比較的高い。また、脂環式構造を有することから、耐エッチング性が高い。このイソボルニルアクリレートと重合開始剤の二成分からなる材料をパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料として使用した場合、硬化後の膜の硬さが不十分であった。また、単官能モノマー、2官能モノマーとイソボルニルアクリレートの組み合わせでも同様であり、3官能モノマーとの組み合わせで耐エッチング性が良好なまま、硬化後の膜の硬さも十分となった。3官能モノマーより大きい多官能モノマーの場合、粘度が高く傾向がある。
【0023】
また、磁気記録媒体の製造方法は、真空下で、データ領域、サーボ領域を含む磁気記録媒体の磁気記録層表面と、樹脂スタンパーの凹凸パターン面とを、未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層を介して貼り合わせ、
未硬化の紫外線硬化性樹脂材料の塗布層に紫外線を照射して、硬化せしめ、
樹脂スタンパーを剥離して、前記磁気記録媒体の片面上に凹凸パターンが転写され、硬化された紫外線硬化性樹脂材料層を形成し、
硬化された紫外線硬化性樹脂材料層をマスクとしてドライエッチングを行い、磁気記録層表面に、凹凸パターンを形成する方法であって、
パターン転写用紫外線硬化性樹脂材料が80ないし95重量%のイソボルニルアクリレート、1ないし20重量%の3官能アクリレート、及び0.5ないし6重量%の重合開始剤を含有する。
【0024】
本発明のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料には、必要に応じて上記アクリレート及び重合開始剤の他に、接着剤などの添加物を1%以下で混合することができる。
【0025】
本発明のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料は、25℃で9ないし15cpの粘度を有することが好ましい。
【0026】
3官能アクリレートとしては、たとえば
トリメチロールプロパントリアクリレート
トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート
(PO(プロポキシ基)の数:2,3,4,6)
トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート
(EO(エトキシ基)の数:3,6,9,15,20)
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート
ペンタエリスリトールトリアクリレート
ペンタエリスリトールEO変性トリアクリレート
EO変性グリセリントリアクリレート
プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート
高プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート
トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート
ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート
を用いることができる。
【0027】
重合開始剤としては、
アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、チタノセン系重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、オキシムエステル酢酸エステル系光重合開始剤などを用いることができる。
【0028】
上記重合開始剤の具体的な例として、
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製IRGACURE651)
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルーケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製IRGACURE184)
2−ヒドロキシー2−メチルー1−フェニループロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製DAROCUR1173)
その他、IRGACURE2959,IRGACURE127,IRGACURE907,IRGACURE369,IRGACURE379,DAROCUR TPO,IRGACURE819,IRGACURE784,IRGACURE OXE01,IRGACURE OXE02,IRGACURE754(すべてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
が挙げられる。
【0029】
重合開始剤は、UV照射に用いるランプの波長によって最適なものを選ぶことができる。
【0030】
UV照射に用いるランプとしては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンフラッシュランプなどを使用することができる。
【0031】
以下、図面を参照し、本発明に用いられるパターン転写方法を図1(a)〜(d)を参照して概略的に説明する。
【0032】
これらの図は媒体基板の片面にパターンを転写する場合を示している。図1(a)に示すように、スピナー41に媒体基板51を設置する。図1(b)に示すように、スピナー41とともに媒体基板51をスピンさせながら、ディスペンサー42から紫外線硬化樹脂(2P樹脂)を滴下してスピン塗布する。図1(c)に示すように、真空チャンバー81内において、真空下で、磁気記録媒体51の片面と透明スタンパー71のパターン面とを2P樹脂層(図示せず)を介して貼り合わせる。図1(d)に示すように、大気圧下でUV光源43から透明スタンパー71を通してUVを照射して2P樹脂層を硬化させる。図1(d)の後に、透明スタンパー71を剥離する。
【0033】
本発明に使用可能な磁気ディスク基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板、およびこれらの基板の表面にNiP層を形成したものなどを用いることができる。ガラス基板には、アモルファスガラスまたは結晶化ガラスを用いることができる。アモルファスガラスとしては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどがある。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスなどがある。セラミック基板としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの焼結体を繊維強化したものなどを用いることができる。基板の表面にNiP層を形成するには、メッキやスパッタリングが用いられる。
【0034】
垂直磁気記録媒体を作製する場合には、基板上に軟磁性下地層(SUL)介して垂直磁気記録層を設けたいわゆる垂直二層媒体とすることができる。垂直二層媒体の軟磁性下地層は、記録磁極からの記録磁界を通過させ、記録磁極の近傍に配置されたリターンヨークへ記録磁界を還流させるために設けられている。すなわち、軟磁性下地層は記録ヘッドの機能の一部を担っており、記録層に急峻な垂直磁界を印加して、記録効率を向上させる役目を果たす。
【0035】
本発明に使用可能な軟磁性下地層としては、例えばFe、NiおよびCoのうち少なくとも1種を含む高透磁率材料が挙げられる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系およびFeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどが挙げられる。
【0036】
軟磁性下地層として、Feを60原子%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造、または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。
【0037】
軟磁性下地層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Coは、好ましくは80原子%以上含まれる。このようなCo合金をスパッタリングにより成膜した場合にはアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示す。また、アモルファス軟磁性材料を用いることにより、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNb、及びCoZrTa系合金などを挙げることができる。
【0038】
軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上あるいは基板との密着性の向上のためにさらに下地層を設けることができる。下地層材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、もしくはこれらを含む合金、またはこれらの酸化物、窒化物を用いることができる。
【0039】
軟磁性下地層と垂直磁気記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けることができる。中間層の役割は、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断すること、および記録層の結晶性を制御することである。中間層材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、もしくはこれらを含む合金、またはこれらの酸化物、窒化物を用いることができる。
【0040】
スパイクノイズ防止のために軟磁性下地層を複数の層に分け、厚さ0.5〜1.5nmのRuを挟んで反強磁性結合させることができる。また、軟磁性層と、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持った硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピニング層とを交換結合させることができる。この場合、交換結合力を制御するために、Ru層の上下に、磁性層たとえばCo、または非磁性層たとえばPtを積層することができる。
【0041】
本発明に使用可能な垂直磁気記録層には、たとえば、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、必要に応じてCrを含み、さらに酸化物(たとえば酸化シリコン、酸化チタン)を含む材料が用いることができる。垂直磁気記録層中では、磁性結晶粒子が柱状構造をなしていることが好ましい。このような構造を有する垂直磁気記録層では、磁性結晶粒子の配向性および結晶性が良好であり、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)を得ることができる。上記のような構造を得るためには、酸化物の量が重要になる。酸化物の含有量は、Co、Pt、Crの総量に対して、3mol%以上12mol%以下にすることができる、さらには、5mol%以上10mol%以下にすることができる。垂直磁気記録層中の酸化物の含有量が上記の範囲であれば、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を孤立化および微細化させることができる。酸化物の含有量が上記範囲を超える場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されない傾向がある。一方、酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の孤立化および微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られない傾向がある。
【0042】
垂直磁気記録層のPtの含有量は、10原子%以上25原子%以下にすることができる。Pt含有量が上記範囲であると、垂直磁気記録層に必要な一軸磁気異方性定数Kuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好になり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られる。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがある。一方、Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適したKuしたがって熱揺らぎ特性が得られない傾向がある。
【0043】
垂直磁気記録層のCrの含有量は、0原子%以上16原子%以下が好ましく、10原子%以上14原子%以下がより好ましい。Cr含有量が上記範囲であると、磁性粒子の一軸磁気異方性定数Kuを下げることなく高い磁化を維持でき、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られる。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、かつ磁性粒子の結晶性、配向性が悪化し、結果として記録再生特性が悪くなる傾向がある。
【0044】
垂直磁気記録層は、Co、Pt、Cr、酸化物に加えて、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の添加元素を含むことができる。これらの添加元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進するか、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。これらの添加元素の合計含有量は、8原子%以下にすることができる。8原子%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られない傾向がある。
【0045】
垂直磁気記録層の他の材料としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSiが挙げられる。垂直磁気記録層に、Pt、Pd、RhおよびRuからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とする合金と、Coとの多層膜を用いることもできる。また、これらの多層膜の各層に、Cr、BまたはOを添加した、CoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどの多層膜を用いることもできる。
【0046】
垂直磁気記録層の厚さは、5〜60nmにすることができる、さらには10〜40nmにすることができる。この範囲の厚さを有する垂直磁気記録層は高記録密度に適している。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。一方、垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上にすることができる。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上にすることができる。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
【0047】
垂直磁気記録層上には保護層を設けることが出来る。
【0048】
保護層は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ作用を有する。保護層の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含む材料が挙げられる。保護層の厚さは、1〜10nmとすることが好ましい。保護層の厚さを上記の範囲にすると、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。
【0049】
垂直磁気記録媒体表面には、潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを塗布することができる。
【0050】
図2に、磁気記録媒体を記録再生する磁気記録再生装置を表す図を示す。
【0051】
この磁気記録装置は、筐体61の内部に、磁気記録媒体62と、磁気記録媒体62を回転させるスピンドルモータ63と、記録再生ヘッドを含むヘッドスライダー64と、ヘッドスライダー64を支持するヘッドサスペンションアッセンブリ(サスペンション65とアクチュエータアーム66)と、ボイスコイルモータ67と、回路基板とを備える。
【0052】
磁気記録媒体62はスピンドルモータ63に取り付けられて回転され、垂直磁気記録方式により各種のデジタルデータが記録される。ヘッドスライダー64に組み込まれている磁気ヘッドはいわゆる複合型ヘッドであり、単磁極構造のライトヘッドと、GMR膜やTMR膜などを用いたリードヘッドとを含む。アクチュエータアーム66の一端にサスペンション65が保持され、サスペンション65によってヘッドスライダー64を磁気記録媒体62の記録面に対向するように支持する。アクチュエータアーム66はピボット68に取り付けられる。アクチュエータアーム64の他端にはアクチュエータとしてボイスコイルモータ67が設けられている。ボイスコイルモータ67によってヘッドサスペンションアッセンブリを駆動して、磁気ヘッドを磁気記録媒体61任意の半径位置に位置決めする。回路基板はヘッドICを備え、ボイスコイルモータの駆動信号、および磁気ヘッドによる読み書きを制御するための制御信号などを生成する。
【0053】
この磁気ディスク装置を用い、加工した磁気記録媒体からアドレス信号等を再生することが出来る。
【0054】
本発明の方法を用いて、半径9mm〜22mmのデータゾーンにおいて、トラック密度が325kTPI(track per inch、78nmトラックピッチに相当)である磁気ディスクを作製した。
【0055】
このようなサーボ領域を有する磁気ディスクを製造するには、磁気ディスク上の磁性層パターンと対応する凹凸パターンを有するスタンパーを用いてインプリントを行う。なおインプリントおよびその後の加工によって形成された磁性層の凹凸パターンは非磁性体材料によってその凹部が埋め込まれ、表面が平坦化されていても構わない。
【0056】
以下、本実施例の磁気ディスクの製造方法を説明する。
まず、スタンパーを作製した。
スタンパーの型となる原盤の基板として6インチ径のSiウエハーを用意した。一方、日本ゼオン社製のレジストZEP−520Aをアニソールで2倍に希釈し、0.05μmのフィルタでろ過した。Siウエハー上にレジスト溶液をスピンコートした後、200℃で3分間プリベークして、厚さ約50nmのレジスト層を形成した。
【0057】
ZrO/W熱電界放射型の電子銃エミッターを有する電子ビーム描画装置を用い、加速電圧50kVの条件で、Siウエハー上のレジストに所望のパターンを直接描画した。描画時にはサーボパターン、バーストパターン、アドレスパターン、トラックパターンを形成するための信号と、描画装置のステージ駆動系(少なくとも一方向の移動軸の移動機構と回転機構とを有する、いわゆるX−θステージ駆動系)へ送る信号と、電子ビームの偏向制御信号とを同期させて発生する信号源を用いた。描画中は線速度500mm/sのCLV(Constant Linear Velocity)でステージを回転させるとともに、半径方向にもステージを移動させた。また、1回転毎に電子ビームに偏向をかけて、同心円をなすトラック領域を描画した。なお、1回転あたり7.8nmずつ送り、10周で1トラック(1アドレスビット幅に相当)を形成した。
【0058】
SiウエハーをZED−N50(日本ゼオン社製)に90秒間浸漬してレジストを現像した後、ZMD−B(日本ゼオン社製)に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させ、図示しないレジスト原盤を作製した。
【0059】
レジスト原盤上にスパッタリングによってNiからなる導電膜を形成した。具体的には、ターゲットに純ニッケルを使用し、8×10−3Paまで真空引きした後、アルゴンガスを導入して圧力を1Paに調整したチャンバー内で400WのDCパワーを印加して40秒間スパッタリングを行い、厚さ約10nmの導電膜を成膜した。
【0060】
導電膜をつけたレジスト原盤をスルファミン酸ニッケルメッキ液(昭和化学(株)製、NS−160)に浸漬し、90分間Ni電鋳して、厚さ約300μmの電鋳膜を形成した。電鋳浴条件は次の通りである。
【0061】
電鋳浴条件
スルファミン酸ニッケル:600g/L
ホウ酸:40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム):0.15g/L
液の温度:55℃
pH:4.0
電流密度:20A/dm
レジスト原盤から、電鋳膜および導電膜をレジスト残渣がついた状態で剥離した。酸素プラズマアッシングによりレジスト残渣を除去した。具体的には、酸素ガスを100ml/minで導入して圧力を4Paに調整したチャンバー内で100Wのパワーを印加して20分間プラズマアッシングを行った。
【0062】
図3(a)に示すように、こうした導電膜および電鋳膜を含むファザースタンパー1を得た。その後、さらに電鋳を行い、図3(b)に示すようなマザースタンパー2を複製し、マザースタンパー2の不要部を金属刃で打ち抜くことにより射出成形用スタンパーを得た。
【0063】
このマザースタンパー2から図3(c)に示すように、東芝機械製射出成形装置により樹脂スタンパー3を複製した。成形材料としては、日本ゼオン社製 環状オレフィンポリマー ZEONOR 1060Rを用いたが、帝人化成製ポリカーボネート材AD5503でもよい。
【0064】
次に、磁気ディスクを作製した。
図3(g)に示す1.8インチ径のドーナツ型ガラスからなるディスク基板上にスパッタリングにより磁気記録層を形成した。この磁気記録層上に金属マスク層を3nm積層した。金属マスク層に用いることができる金属は、
Ag,Al,Au,C,Cr,Cu,Ni,Pt,Pd,Ru,Si,Ta,Ti,Znなどや、これらを含む合金(例えば、CrTi,CoB,CoPt,CoZrNb,NiTa,NiW,Cr−N,SiC,TiOxなど)などである。中でも、SiやCuは樹脂スタンパーからの剥離性や加工性が優れ、好ましい。また、金属マスク層の膜厚も、加工性によって決まり、薄いほど良好である。本実施例においては、Cuを3nm磁気記録層上に積層したものを用いた。
【0065】
図3(i)に示すように、この磁気記録層5上に表面保護層6を形成した後、紫外線硬化樹脂材料からなるレジスト7を図3(j)に示すように、回転数10000rpmでスピンコートした。
【0066】
図3(c)に示すように、真空貼り合わせ法により樹脂スタンパー3をディスク基板表面の紫外線硬化樹脂レジスト7に貼り合わせ、紫外線照射し樹脂を硬化させた後、図3(d)に示すように、樹脂スタンパー3を剥離した。
【0067】
紫外線インプリントによる凹凸形成プロセスでは、パターン凹部の底にレジスト残渣が残る。
【0068】
次に、酸素ガスを用いたRIEにより、パターン凹部の底にあるレジスト残渣を除去した。レジスト7のパターンをマスクとして、Arイオンミリングにより、図3(e)に示すように、磁気記録層をエッチングした。続いて、図3(f)に示すように、酸素RIEによりレジストのパターンを剥離した。さらに全面に図示しないカーボン保護層を成膜した。その後、作製した磁気ディスクに潤滑剤を塗布する。
【0069】
ここで、上述した磁気ディスク媒体においては、磁気記録層をレジストのマスクがない部位において底までエッチングしているが、途中でArイオンミリングを止め、凹凸が出来る程度の媒体であっても構わない。また、初めに磁性層を設けずにスタンパーを基板上のレジストにインプリントした後エッチングするなどして先に基板形状に凹凸を設け、その後磁性膜を製膜した媒体であっても構わない。さらに、上述したものを含めいずれの場合にも溝部が何らかの非磁性材料によって埋め込まれていても構わない。
【0070】
1つのNiスタンパーを用いて上述した方法により樹脂スタンパーを複製し、紫外線硬化樹脂によるレジストマスク転写を行った。各紫外線硬化樹脂について100枚の磁気ディスクを複製した。
【0071】
1つのNiスタンパーを用いて上述した方法により樹脂スタンパーを複製し、紫外線硬化性樹脂によるレジストマスク転写を行った。
【0072】
紫外線硬化性樹脂の評価は、粘度、硬化性、剥離性、Arスパッタエッチングレート、RRO (Repeatable Run Out)の5項目について行った。
【0073】
紫外線硬化性樹脂の粘度は、回転式粘度計(東機産業社製TVE−22LT)を用いて測定した。
【0074】
硬化性は、転写した後にエタノールに湿らせた布でふき取り、全く変化のないものを◎、細かい傷が2本以下のものを○、細かな傷が3本以上多くつくものを△、ふき取った場所が全面剥がれてしまうものを×とした。
【0075】
剥離性は、剥離を行った時に、樹脂スタンパー側に2P樹脂が残らないものを○、わずかに残るものを△、広い面積で残るものを×とした。
【0076】
Arスパッタエッチングレートは、芝浦メカトロニクス社製51Aを使用し、Ar雰囲気下、Ar 1Pa, RF電源100W, 200秒の条件でプラズマエッチングを行った。エッチングの前後にはアルバック社製触診式表面形状測定器DEKTAK6Mを用い、紫外線硬化性樹脂の膜厚を測定し、エッチング前後での膜厚差をエッチング時間で規格化してエッチングレートを算出した。耐エッチング性が良好なほど紫外線硬化性樹脂を用いた加工性は向上するため、エッチングレートは低いほうが好ましく、0.25nm/sec以下であることを基準とした。
【0077】
RROは、紫外線硬化性樹脂の硬化歪みを調べるのに有効な手段である。歪みが大きいほど、転写後のパターンの真円度が悪くなり、RROが悪化する傾向にある。この評価に用いる評価装置は、パルステック社製DDU−1000である。
【0078】
まず、RRO評価用に紫外線硬化性樹脂の転写パターンサンプルを準備した。内径φ12.01mm、外径φ32.00mm、0.6mm厚ガラス板の上に信越化学工業株式会社KBM503をスピンコートし、その上に通常の磁気記録媒体の転写・剥離過程と同様に、紫外線硬化性樹脂を塗布し、樹脂スタンパーを用いてパターン転写を行い、樹脂スタンパーのガラス板からの剥離を行った。
【0079】
紫外線硬化性樹脂の転写面と反対側からレーザーを入射し、RRO評価を行った。RROは1nm以下が良好である。
【0080】
以下、凹凸パターンのRROを調べる装置について説明する。
【0081】
図4は、RROを調べるためのRRO評価装置の概略構成を示すブロック図を示す。
【0082】
光源には半導体レーザ光源120が用いられる。その出射光の波長は、例えば400nm〜410nmの範囲の紫色波長帯のものである。半導体レーザ光源120からの出射光110は、コリメートレンズ121により平行光となり偏光ビームスプリッタ122、λ/4板123を透過して、対物レンズ124に入射される。その後、サンプルSの基板を透過し、基板上の溝が形成されている面に集光される。このとき、レーザの開口数(以下NAという)は対象となる媒体によって異なる。例えばこのサンプルの場合には0.6mm厚の転写パターンサンプル内部を透過するような評価方法とした場合、NAは約0.5〜0.7となる。一方、透過しない材料を用いたサンプルの場合、あるいはサンプルの表面を再生する場合には、NAを0.85以上に調整するか、あるいは樹脂材料の0.6mm厚相当となるような収差補正板をレーザとサンプルの間に挿入することができる。転写パターンサンプルの情報記録層による反射光111は、再び転写パターンサンプルSの基板を透過し、対物レンズ124、λ/4板123を透過し、偏光ビームスプリッタ122で反射された後、集光レンズ125を透過して光検出器126に入射される。
【0083】
光検出器127の受光部は、通常複数に分割されており、それぞれの受光部から光強度に応じた電流を出力する。出力された電流は、図示しないI/Vアンプ(電流電圧変換)により電圧に変換された後、演算回路140に入力される。入力された電圧信号は、演算回路140により、チルト誤差信号、HF信号、フォーカス誤差信号、及びトラック誤差信号などに演算処理される。チルト誤差信号はチルト制御を行うためのものであり、HF信号は光ディスクDに記録された情報を再生するためのものであり、フォーカス誤差信号はフォーカス制御を行うためのものであり、またトラック誤差信号はトラッキング制御を行うためのものである。
【0084】
対物レンズ124はアクチュエータ128にて上下方向、ディスクラジアル方向、およびチルト方向(ラジアル方向または/およびタンジェンシャル方向)に駆動可能であり、サーボドライバ150によって転写パターンサンプルS上の情報トラックに追従するように制御される。
【0085】
なお、本評価装置では、半導体レーザの波長の例として400−410nmの範囲としているが、これに限ることはなく、さらに短波長でもよい。また、この評価装置の場合、転写パターンサンプルの溝のトラックピッチは例えば0.4μmより狭くすることが可能となる。また、半導体レーザを長波長とした場合、転写パターンサンプルの溝のトラックピッチは0.4μmよりも広くすることが必要となる。トラックピッチは、レーザースポット径によって決めることが出来る。転写パターンサンプルの溝のトラックピッチは評価装置のプッシュプル法を用いたトラッキングを行う場合、レーザースポット径の0.5〜1.2倍にすることができる。レーザースポット径はλ/NAで表すことができる。例えば、レーザー波長が405nm、NA0.65の場合、溝トラックピッチは0.31μm〜0.75μmにすることができる。また、例えば固定レーザーとして波長355nm,NA0.85のものを用いた場合、レーザースポット径は0.42μmとなり、最小トラックピッチは0.2μmとすることができる。トラックピッチは、広すぎるとダミー領域が広くなり、評価装置のレーザースポット径も大きくなる傾向があり、データ領域に対して粗い評価になりやすいため、できるだけ狭いほうがよい。一方、レーザーの波長は355nmより狭いものは取扱が困難で現実的でない。これより溝のトラックピッチの下限を0.2μmとすることが可能である。
【0086】
このようなRRO評価装置を用いて、本発明の転写パターンサンプルを再生することができる。本実施例においては、パルステック社製DDU−1000を用いた。このときのレーザ波長は405nm、NAは0.65であった。
【0087】
次に、転写パターンサンプルのRRO評価方法について説明する。
【0088】
上記評価装置に転写パターンサンプルをセットし、1.2m/秒の線速度で転写パターンサンプルを回転させる。なお線速度は、装置のトラッキング特性があるところから周波数が高くなるにつれて低下する傾向にある(サーボゲイン特性)。このため、スピンドルモータの最低回転数以上でできるだけ遅いほうが、RROの高次成分を、その次数における変位量を増幅させて、より正確に調べることができる。この評価装置では、ディスクの一回転分を周波数に変換し、これを回転周波数とし、偏芯次数をこの回転周波数で表している。
【0089】
レーザを照射し、チルトやオフセットを、差信号(プッシュプル信号)最大となるところに調整し、トラッキングを行う。トラッキング後のプッシュプル信号の周波数解析を、FFTアナライザ(小野測器社製CF−5210使用)を用いて行った。
【0090】
次に、トラッキングをOFFにして、フォーカスのみ調整した状態で、同じプッシュプル信号のpeak−to peak値を調べた。このpeak−to peak電圧値は1/2トラックピッチ変位量に相当する。FFTアナライザにて測定した各周波数での電圧値を、peak−to peak電圧値で割ることにより変位量を計算した。なお、FFTアナライザの測定条件は1つのトラックを100回測定し、平均化したデータを1回測定とし、かつダミー領域内でトラックを変えて5回測定した結果の最大値を変位量としている。この計算結果を本発明中での転写パターンサンプルのRROとした。この中で、特に転写パターンサンプルの回転周波数を基準の1次として15次から40次の変位量に注目した。15次未満の場合、転写パターンサンプルを載置する位置による誤差が生じやすく、また、40次を超えるところまで測定しなくても、ある程度安定した変位量が得られる。
【0091】
ここで、上記例では溝はランドとグルーブの比が1:1となるようにした転写パターンサンプルを使用しているが、これに限定されるものではない。RRO特性を調べる装置の特性上、プッシュプル信号PPの振幅(p−p)を和信号SUMの電圧値(p−G)で規格化した値 PP/SUMが、少なくともPP/SUM<0.1となればトラッキングを行うことが不可能となるため、このようにならないようトラッキングを行えるようなランドとグルーブの比を選定することができる。
【0092】
実施例1−12,比較例1−11
紫外線硬化性樹脂A〜Yを用いて上記方法にて磁気記録層上にパターンを転写し、磁気記録媒体を作製した。
【0093】
紫外線硬化性樹脂A〜Yの内容を表1に、結果を表2に示す。
【0094】
ここで、表1の記号について説明する。
【0095】
IBOA: イソボルニルアクリレート
TITA: トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート
【化2】

【0096】
IRGACURE369: 2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
【化3】

【0097】
EGTA3: エトキシ化(3)グリセリルトリアクリレート
【化4】

【0098】
上記式(4)においてl+m+n=3
EGTA9: エトキシ化(9)グリセリルトリアクリレート
上記式(4)においてl+m+n=9
EGTA20: エトキシ化(20)グリセリルトリアクリレート
上記式(4)においてl+m+n=20
TMPTA: トリメチロールプロパントリアクリレート
【化5】

【0099】
TMPTA−3EO: エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート
【化6】

【0100】
上記式(6)においてl+m+n=3
PUHA: ポリウレタンヘキサアクリレート
【化7】

【0101】
式中、n=25である。
【0102】
TCDMA: トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
【化8】

【0103】
PEA: 2−フェノキシエチルアクリレート
【化9】

【0104】
PBFA:プロポキシ化ビスフェノールAグリシジルエーテル化物アクリレート
【化10】

【0105】
DTMPTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
【化11】

【0106】
紫外線硬化性樹脂A〜K、Yでは、粘度、剥離性、硬化性、膜厚、エッチングレート、RROのすべての項目において磁気記録媒体にパターンを転写するのに使用が適している紫外線硬化性樹脂であることがわかった。
【0107】
中でも、C,D,F,G,J,Yはエッチングレートが特に良好であった。
【0108】
また、エッチングレートは、同じ骨格の3官能アクリレートである場合、エトキシ基を増やしていくことによって低くなり、耐エッチング性が高まることがわかった。
【0109】
硬化性に関しては、A,C,G,Yが特に良好であった。
【0110】
膜厚については、最も粘度の低いYが最良であり、A,D,F,G,Jも良好であった。
【0111】
一方、L、N,O,R,U,Xは硬化性で悪く、特にXでは、重合開始剤が入っていないため、全く硬化しなかった。M、Nは耐エッチング性に劣り、N,P,Q,R,SはRROが悪いため硬化収縮が大きいことがわかった。
【0112】
以上の結果より、80ないし95重量%のイソボルニルアクリレート、1ないし20重量%の3官能アクリレート、及び0.5ないし6重量%の重合開始剤を含有する紫外線硬化性樹脂を紫外線による硬化性、及び硬化後の剥離性、エッチング耐性、及び硬化収縮性が良好であることがわかった。また、このようなパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料を用いると、スタンパーから精度の良いパターン転写を行うことが出来ることがわかった。
【0113】
また、特に、IBOAが85重量%から93重量%,3官能アクリレートが6重量%から10重量%、重合開始剤が1重量%から5重量%がより好ましいことがわかった。
【0114】
良好な紫外線硬化性樹脂を用いてDTR媒体を作成し、記録再生特性を調べたところ、良好な特性を得ることができた。
【0115】
なお、本実施例においては重合開始剤としてIRGACURE369を用いたが、当然UVランプやアクリレートとの相性によって適宜選択することができる。
【表1】

【0116】
【表2】

【符号の説明】
【0117】
3,71…樹脂スタンパー,5…磁気記録層,7…紫外線硬化性樹脂層,51,62…磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、透明スタンパーとを
80ないし95重量%のイソボルニルアクリレート、1ないし20重量%の3官能アクリレート、及び0.5ないし6重量%の重合開始剤を含有する未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層を介して貼り合わせ、
該未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層に紫外線を照射して、硬化せしめ、
該透明スタンパーを剥離して、前記半導体基板の片面上に凹凸パターンが転写され、硬化された紫外線硬化性樹脂材料層を形成することを含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料は、25℃で9ないし15cpの粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材表面と、透明脂スタンパーの凹凸パターン面とを、80ないし95重量%のイソボルニルアクリレート、1ないし20重量%の3官能アクリレート、及び0.5ないし6重量%の重合開始剤を含有する未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料の塗布層を介して貼り合わせ、
該未硬化の紫外線硬化性樹脂材料の塗布層に紫外線を照射して、硬化せしめ、
該透明スタンパーを剥離して、前記基材の片面上に凹凸パターンが転写され、硬化された紫外線硬化性樹脂材料層を形成するパターン転写方法。
【請求項4】
前記未硬化のパターン転写用紫外線硬化性樹脂材料は、25℃で9ないし15cpの粘度を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−264758(P2010−264758A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135923(P2010−135923)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2009−60930(P2009−60930)の分割
【原出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】