説明

紫外線硬化性組成物及びこれを用いた硬化物

【課題】混合や加熱の必要が無く、短時間で硬化するという紫外線硬化材料の利点を維持し、しかも、照射光が届かない部位(暗部)の硬化が可能な紫外線硬化性組成物、及びそれを用いた硬化物を提供する。
【解決手段】紫外線硬化材料と、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物から構成される連鎖移動剤を含有し、照射光の届かない部位が硬化可能であるように、紫外線硬化性組成物を構成し、該組成物を硬化させて硬化物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性組成物及びこれを用いた硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
材料の加工や成型において、接着、コーティング、シールドの工程は重要であり、様々な材料が使用されている。特に加工性の面から、常温で添加や塗布が可能で、その後何らかの作用によって硬化する性質を持つ材料は古くから用いられている。
【0003】
一般的に接着剤や塗料は、顔料や樹脂を有機溶剤や水に溶解させ、液体の状態で目的材料に塗布し、有機溶剤や水を揮発させることで硬化物を得る方式をとっているものが多い。しかしながら、有機溶剤を用いると揮発するガスによる健康被害や引火性の問題が生じ、水の場合は揮発性が低いために硬化物を得るのに時間を要するという問題がある。よって溶剤を用いずとも液状の物質を添加・塗布後に硬化させる様式として、以下の(1)〜(4)の方法が主に使用されている。
【0004】
(1)互いに反応する低揮発性の液状化合物2液を混合してただちに添加・塗布し反応を進ませることで硬化させる方法。
(2)低揮発性液状化合物を添加・塗布した後、空気中の水分との反応により硬化させる方法。
(3)低揮発性液状化合物を添加・塗布した後、加熱して硬化反応を開始させ硬化させる方法。
(4)低揮発性液状化合物を添加・塗布した後、光や電子線を照射して反応を引き起こし硬化させる方法。
【0005】
上記(1)の硬化反応にはエポキシ基の反応が用いられており、グリシジルビスフェノールA等のエポキシ化合物にポリアミンやポリオール等の硬化剤を混合する方式をとっている。上記硬化反応においてエポキシ化合物が広く用いられている理由は、硬化せしめられたエキポシ樹脂の機械的強度が大きく、電気特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性などの多くの点で優れた特長を有しているためである。
【0006】
しかしながら、上記(1)の2液系では、混合後の保存安定性が極めて低く、ただちに使いきらなければならないため、使用毎に混合する必要がある。
【0007】
上記(2)の硬化反応には常温湿気硬化型変成シリコーン樹脂等のアルコキシシリル基の反応、シアノアクリレート系接着剤等のα−シアノアクリレート基の反応、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー等のイソシアネート基の反応が用いられており、混合や加熱を必要としない。しかしながら硬化性組成物はそれぞれ以下の欠点を持つ。
【0008】
常温湿気硬化型変成シリコーン樹脂及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは硬化に数十分から数十時間を必要とし、更に少し厚塗りすれば表面が固化するだけで内部は固まらないという欠点を持つ。またシアノアクリレート系接着剤は、被着体表面の吸着水で硬化反応が始まるものの、空気中の水分との反応は遅く、一対の被着体に挟まれていない成型やコーティング用途としては、全体硬化に数分から数時間の時間を要し、内部硬化は更に遅くなるという欠点を持つ。
【0009】
上記したような、硬化速度や内部硬化に関する欠点に対しては、塩基性化合物や有機金属などを触媒として添加することで改善が試みられている。しかし、水との反応性を高めると、反対に保存安定性が悪くなるという相反問題を生じる事となる。
【0010】
上記(3)の硬化反応にも主にエポキシ基の反応が用いられているが、上記(1)の方式中、硬化剤を高融点化、熱解離性保護基導入、またはマイクロカプセル化して常温で不活性な状態にして混合しておき、加熱することで硬化剤を活性化させ、硬化反応を引き起こさせる方式をとっている。この方式は混合する必要が無く、熱がかかった部分に限り、比較的短時間で均一に硬化させる事が可能である。
【0011】
しかしながら上記(3)の硬化反応は、硬化させるためには加熱が必要であり、肉厚の硬化物を得る場合や、被着物が共存した状態で硬化させる場合、均一に硬化させるためには、熱を全体に硬化開始温度までいき渡らせることが必要となり、加熱時間や特別な加熱方式を要する。また室温においてゆっくりと硬化が進むため、冷蔵保存が必要であるという問題を有する。
【0012】
上記(4)の硬化反応には、アクリレート誘導体等の二重結合を分子内に持つ化合物のラジカル重合反応が用いられている。すなわち、光や電子線でラジカルを発生する化合物をアクリレート誘導体等に混合しておき、光や電子線照射により、硬化反応を引き起こさせる方式である。この方法は高い活性を持つラジカル種を利用しているため、混合や加熱の必要も無く、短時間での硬化が可能である。
【0013】
しかしながら上記(4)の方法において、前記ラジカル種は活性が高い反面、寿命が非常に短く、酸素などで容易に失活してしまうため、照射を止めると硬化反応がただちに停止してしまい、紫外線照射光が届かない部位(暗部)を硬化させる事ができないという問題がある。
【0014】
上記の問題を解決する手段として、以下の特許文献1〜5に記載されているような手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−224133号公報
【特許文献2】特開平7−118369号公報
【特許文献3】特開平11−50014号公報
【特許文献4】特開2006−274240号公報
【特許文献5】特開2010−150517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献1に記載の方法は、紫外線硬化と湿気硬化を併用したものであり、紫外線硬化の後、暗部まで湿気硬化させるという方法である。しかしながら湿気硬化には時間を要し、全体を硬化させるには、湿気硬化型樹脂と同じ時間を要する。
【0017】
上記特許文献2に記載の方法は、紫外線照射によりカチオンを生じる光カチオン重合開始剤により、エポキシ樹脂を硬化させる方法である。この方法で発生するカチオン(ルイス酸)はラジカルとは違い長寿命であるが、酸であるが故に金属材料などの被着物を汚染してしまう問題がある。また、一般にカチオン発生剤は特殊なイオン対であり、高価である。
【0018】
上記特許文献3に記載の方法は、酸素が遮断されることで硬化が開始する方法である。酸素が遮断される接合面では、その暗部硬化が発揮されるが、肉厚の硬化や開放系での硬化は不可能である。すなわち、コーティングやシーリングなどの用途では使用することができない。
【0019】
上記特許文献4に記載の方法は、近赤外線により硬化を開始させる方法である。近赤外線は物質の透過率が高いため、紫外線や可視光が行き届かない箇所も硬化させる事ができるが、高エネルギーを得る事が難しく、反応に数分の時間を要する。また、ほとんどの場合、紫外線照射装置よりも高価な照射装置を要する。
【0020】
上記特許文献5に記載の方法は、紫外線ラジカル発生剤と熱ラジカル発生剤を併用した手法である。熱ラジカル発生剤から発生したラジカルによって暗部も硬化させる事ができるが、熱ラジカル発生剤には過酸化物が使用されるため、保存するには特殊な不活性化法を必要とし、保存安定性を高めようとすると反応が起こらなくなる。また過酸化物は常温でも有機物を酸化分解する性質があるので、少しの温度上昇でも、その保存安定性は著しく低下する。また、硬化後、過酸化物が残存すると、硬化物自体の劣化を引き起こす。
【0021】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、混合や加熱の必要が無く、短時間で硬化するという紫外線硬化材料の利点を維持し、しかも、照射光が届かない部位(暗部)の硬化が可能な紫外線硬化性組成物、及びそれを用いた硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の紫外線硬化性組成物は、紫外線硬化材料と、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物から構成される連鎖移動剤を含有し、照射光の届かない部位が硬化可能であることを要旨とするものである。
【0023】
上記の紫外線硬化性組成物において、前記紫外線硬化材料と前記連鎖移動剤の配合比が質量比で90:10〜10:90の範囲内である事が好ましい。
【0024】
上記の紫外線硬化性組成物において、前記連鎖移動剤に含まれる含金属化合物が、すず、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含む化合物であることが好ましい。
【0025】
上記の紫外線硬化性組成物において、前記連鎖移動剤に含まれるウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物との配合比が質量比で100:0.001〜100:10の範囲内であることが好ましい。
【0026】
また本発明の硬化物は、上記の紫外線硬化性組成物が硬化されてなることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の紫外線硬化性組成物は、紫外線硬化材料と、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物から構成される連鎖移動剤を含有するものである。ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基のいずれか1種を含む化合物に、含金属化合物を添加すると、ウレタン結合、尿素結合又はイソシアネート基に含まれる窒素原子、酸素原子を介して金属錯体複合体を形成する。この金属錯体複合体が連鎖移動剤として機能することにより、紫外線硬化材料を硬化させる際に、従来は紫外線が届かず硬化をさせることが困難であった、照射光の届かない部位である暗部の硬化が可能である。
【0028】
上記の連鎖移動剤は、紫外線硬化反応の活性種を安定化した上で、分子間又は分子内伝達機能を発揮するため、紫外線硬化材料に添加することで、既存の紫外線硬化材料では見られない暗部硬化性を付加することができる。すなわち既存の紫外線硬化材料に、上記連鎖移動剤を混在させた状態で紫外線を照射して光重合させると、上記連鎖移動剤が、発生した重合反応活性種を、照射光が届かない部分(暗部)に瞬時に伝達し、硬化(暗部硬化)させる事ができる。
【0029】
本発明の紫外線硬化性組成物は、照射光の届かない部位が硬化可能であるから、従来必要であった、硬化直前の硬化剤の混合等が不要であり、また照射後の加熱や湿気硬化等の工程を必要とせずに暗部まで硬化させることができ、硬化作業を短時間で行うことが可能であり、硬化作業性が優れているものである。
【0030】
本発明の硬化物は、上記の紫外線硬化性組成物が硬化されてなるものであり、従来の紫外線硬化性組成物では硬化させることが困難であった照射光の届かなかい部分であっても確実に硬化させて、良好な物性を発揮することができる。また照射光が届かないところでも確実に硬化させることができるので、従来は使用できなかった照射の影となる部分などを含む形状であっても、確実に硬化可能であるから、硬化物の形状が限定されることなく、幅広い硬化物の形状に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の紫外線硬化性組成物は、(A)従来公知の各種の紫外線硬化性樹脂等の紫外線硬化材料と(B)連鎖移動剤とを含有するものである。(B)連鎖移動剤は、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を分子中に1個以上含む化合物(B-i)と、含金属化合物(B-ii)を含有している。
【0032】
(B-i)ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を分子中に1個以上含む化合物は、下記(式1)で示されるウレタン結合部、下記(式2)で示される尿素結合部、下記(式3)で示されるイソシアネート基から選択される少なくとも1種を1分子中に1個以上含有すれば、特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0033】
(式1)
−NH−COO−
(式2)
−NH−CO−NH−
(式3)
−N=C=O
【0034】
上記(B-i)の化合物の具体例としては、各種ポリウレタン、各種ポリ尿素、含イソシアネート化合物等が挙げられる。上記各種ポリウレタン、各種ポリ尿素は、それぞれ下記の含イソシアネート化合物と、水酸基(−OH)含有化合物、アミン(−NH)含有化合物等を反応させることで得られるものである。
【0035】
含イソシアネート化合物は、そのまま上記(式3)のイソシアネート基を含む化合物として用いることができる、また含イソシアネート化合物は、以下に示す水酸基、アミン等と反応させて、各種ポリウレタン、各種ポリ尿素を形成するために用いる事ができる。
【0036】
上記含イソシアネート化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート。水素添加−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加−キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加−2,4−トリレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族イソシアネート。キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族イソシアネート。1,4−ジフェニルジイソシアネート、2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、O−トリジンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗製MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の芳香族イソシアネート等のポリイソシアネート。含イソシアネート化合物としては、更にこれらポリイソシアネートを水と反応させて得られるビウレット型ポリイソシアネート、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート、多価イソシアネートを一部ポリエステルやポリエーテル誘導体と重合させた液状プレポリマー、イソシアヌレート化して得られる多量体等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記水酸基含有化合物は、各種ポリウレタンを得るために含イソシアネートと反応させて用いられる。水酸基含有化合物としては、末端に水酸基を持つ炭素鎖1〜30のアルコール類、末端ジオールの(ポリ)エチレングリコール、末端ジオールの(ポリ)プロピレングリコール、末端ジオールの(ポリ)ヘキサメチレングリコール、末端ジオールの(ポリ)カプロラクトン、末端ジオールの(ポリ)エステル(ポリ)オール、末端ジオールの(ポリ)アミド、末端ジオールの(ポリ)エステル等が挙げられる。
【0038】
各種ポリウレタンは、最終的に紫外線硬化性組成物中に混合された場合に溶解もしくは懸濁状態になればよいので、必ずしも液状である必要は無いが、混合のし易さから、液状であることが好ましく、この際に用いられる水酸基含有化合物としては、分子量10万以下の液状化合物である事が好ましい。
【0039】
上記アミン含有化合物は、各種ポリ尿素を得るために含イソシアネート化合物と反応させて用いられる。アミン含有化合物は、末端に1級又は2級のアミノ基を持つ炭素鎖1〜30のアミン類、末端ジアミンの(ポリ)エチレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)プロピレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)ヘキサメチレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)カプロラクトン、末端ジアミンの(ポリ)エステル(ポリ)オール、末端ジアミンの(ポリ)アミド、末端ジアミンの(ポリ)エステル等が挙げられる。
【0040】
各種ポリ尿素は、最終的に硬化材料に混合された場合に溶解もしくは懸濁状態になればよいので、必ずしも液状である必要は無いが、混合のし易さから、液状であることが好ましく、この際に用いられるアミン含有化合物としては、分子量10万以下の液状化合物である事が好ましい。
【0041】
また、ポリウレタン、ポリ尿素化合物は、必要に応じて重合後に末端基を(チオ)エーテル、(チオ)エステル、アミド、(チオ)ウレタン、(チオ)尿素、N−アルキル結合等によって、アルキル基や(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキサゾリル基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、チオエステル基、リン酸(エステル)基、ホスホン酸(エステル)基、カルボン酸(エステル)基等で封止されていても良い。
【0042】
前記した、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基は、複数の種類が結合されていても、或いは末端基が組み合わせられること等により分子中に含有されていても良い。
【0043】
上記(B-ii)含金属化合物としては、すず、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルの中から選択される少なくとも1種類の金属を含むものが好ましく用いられる。含金属化合物は、複数種の上記金属が金属塩又は金属錯体等の形態で構成分子中に含有されていれば、特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0044】
上記金属塩としては、前記金属種のカルボン酸塩、りん酸塩、スルホン酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、(過)(亜)塩素酸塩等の形態が挙げられる。
【0045】
上記金属錯体としては、前記金属種と配位結合形成し得る有機配位子と1:1〜1:4(金属:配位子)で配位し安定化されたものであれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0046】
上記(B-ii)含金属化合物として、具体的には、ビス(2,4-ペンタンジオナト)すず、ジブチルすずビス(トリフルオロメタンスルホナート)、ジブチルすずジアセタート、ジラウリン酸ジブチルすず、ジブチルすずマレアート、フタロシアニンすず(IV)ジクロリド、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルすず、フタロシアニンすず(II)、トリブチル(2-ピリジル)すず、トリブチル(2-チエニル)すず、酢酸トリブチルすず、トリブチル(トリメチルシリルエチニル)すず、トリメチル(2-ピリジル)すず 、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(1,3-プロパンジアミン)銅(II)ジクロリド、ビス(8-キノリノラト)銅(II)、ビス(トリフルオロ-2,4-ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸銅(II)、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、エチレンジアミン四酢酸銅(II)二ナトリウム、フタロシアニン銅(II)、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)銅(II)、フタロシアニン銅
、テトラ-4-tert-ブチルフタロシアニン銅、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスファート、ナフテン酸銅、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3-ジチオール-2-チオン-4,5-ジチオラト)亜鉛コンプレックス、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、フタロシアニン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、
ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(III)ヘキサフルオロホスファート、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]コバルト(II)ジクロリド、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)、(1R,2R)-N,N'-ビス[3-オキソ-2-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ブチリデン]-1,2-ジフェニルエチレンジアミナトコバルト(II)、(1S,2S)-N,N'-ビス[3-オキソ-2-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ブチリデン]-1,2-ジフェニルエチレンジアミナトコバルト(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(II)、ビス(トリフルオロ-2,4-ペンタンジオナト)コバルト(II)、フタロシアニンコバルト(II)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムコバルト、ヘキサアンミンコバルト(III) クロリド、N,N'-ジサリチラルエチレンジアミンコバルト(II)、[5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)ポルフィリナト]コバルト(II)、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、ナフテン酸コバルト、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド、ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(マレオニトリルジチオラト)ニッケル(II)コンプレックス、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ブロモ[(2,6-ピリジンジイル)ビス(3-メチル-1-イミダゾリル-2-イリデン)]ニッケルブロミド、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムニッケル(II)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよい2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記(B-ii)含金属化合物の形態としては、最終的に硬化材料に混合された場合に溶解もしくは懸濁状態になればよいので、必ずしも有機物への溶解性が高い必要は無いが、混合のし易さから、有機酸塩又は金属錯体状であることが好ましい。
【0048】
上記、(B-ii)含金属化合物と、前記(B-i)ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を分子中に1個以上含む化合物とは、両成分を複合して(B)連鎖移動剤を構成する。上記(B-i)成分と(B-ii)成分の複合方法は、両成分を常温、又は加温条件で混合すれば良く、特に限定されないが、上記各成分を、減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、適当な温度にて、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌または混練し、溶解させるか均一に分散させる方法が好ましい。
【0049】
上記(B-i)成分と(B-ii)成分の配合比としては、質量比で、(B-i):(B-ii)=100:0.001〜100:10の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは、(B-i):(B-ii)=100:0.005〜100:5の範囲内である。(B-ii)含金属化合物の配合量が多過ぎると、含金属化合物が不溶物となり、紫外線硬化材料に添加された時に紫外光の透過を阻害するため、硬化反応を阻害してしまう結果となる虞がある。一方(B-ii)含金属化合物の配合量が少な過ぎると、複合体として作用しきれずに連鎖移動剤としての機能が低下してしまう虞がある。
【0050】
上記方法にて作成した(B)連鎖移動剤は、(A)紫外線硬化材料(後述する)に添加混合されて使用されるが、その混合方法としては特に限定されず、減圧下又は窒素等の不活性ガス雰囲気下で、適当な温度にて、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌または混練し、溶解させるか均一に分散させる方法が好ましい。
【0051】
(A)紫外線硬化材料と(B)連鎖移動剤の配合量は、質量比で、(A):(B)=90:10〜10:90の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲内である。(B)連鎖移動剤の配合量が多すぎると、紫外線硬化に関わる材料比が相対的に少なくなり、十分な硬化物が得られない虞がある。また(B)連鎖移動剤の配合量が少なすぎると、連鎖移動能が不足して、紫外線硬化材料の暗部硬化機能が不十分となってしまう虞がある。
【0052】
(A)紫外線硬化材料としては、既存の紫外線硬化材料を用いることができる。具体的には、液状の(メタ)アクリレート等の硬化性モノマー、オリゴマー等と光重合開始剤の混合物を基本組成物とし、紫外線が照射されることで硬化物が得られるものであれば使用することができる。尚、本発明において「(メタ)アクリレート」との記載はアクリレート及びメタクリレートの意味である。紫外線硬化材料の硬化原理としては、紫外線(紫外光)を光重合開始剤が吸収して、ラジカル種等の活性種を発生させ、その活性種が(メタ)アクリレート等の炭素−炭素の2重結合をラジカル重合させ、硬化させるものである。
【0053】
以下、本発明において用いられる紫外線硬化材料について詳述する。液状の(メタ)アクリレート化合物としては、分子中に1つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0054】
上記(メタ)アクリレートは、具体例として、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物又はPO付加物のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加物トリ(メタ)アクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、(ポリ)ブタジエン(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0055】
紫外線硬化材料に添加される光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカル重合を開始させる化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0056】
上記光重合開始剤は、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、エチルアントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また光重合開始剤は、市販品として、例えば、IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173,LucirinTPO(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等を用いることができる。
【0058】
本発明の紫外線硬化性組成物は、上記(A)紫外線硬化材料、(B)連鎖移動剤以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。上記添加剤としては、例えば、安定化剤、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、増感剤、分散剤、溶剤、抗菌抗カビ剤が挙げられる。
【0059】
上記安定化剤としては、老化防止剤、酸化防止剤、脱水剤等が挙げられる。これらは具体的には、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物(老化防止剤)、ブチルヒドロキシトルエン
、ブチルヒドロキシアニソール、トリフェニルフォスフェート等 (酸化防止剤)、無水マレイン酸、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、生石灰、カルボジイミド誘導体、ステアリルクロライド等の酸クロライド(脱水剤)が挙げられる。また少量のメタキノン等の重合禁止剤等も安定化剤として使用できる。
【0060】
上記可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、
オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、フェノール、ラウリル酸、ステアリン酸、ドコサン酸、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等が挙げられる。
【0061】
上記軟化剤としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
上記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0063】
上記帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0064】
上記難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−
ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
【0065】
上記接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン− フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0066】
上記増感剤としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、市販品としてユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB製)等が挙げられる。
【0067】
上記分散剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル等の界面活性剤が挙げられる。
【0068】
上記溶剤としては、硬化材料組成中に固形成分を用いる際、その固形成分を溶解させる事ができるものであれば良く、具体的にはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの極性溶剤、ジクロロエタン、トリクロロベンゼンなどの塩素系溶剤が挙げられる。
【0069】
上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0070】
本発明の紫外線硬化性組成物を製造する方法は、特に限定されないが、上記各成分を、減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌または混練し、溶解させるか均一に分散させる方法が好ましい。
【0071】
本発明の硬化物は、上記紫外線硬化性組成物に紫外線が照射されて硬化されてなるものである。照射光は、紫外線以外に可視光であってもよい。紫外線照射装置は、従来公知の各種照射装置を用いることができる。また紫外線の照射条件も、各紫外線硬化材料等に応じて、適宜設定することができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0073】
表1に実施例、比較例で用いた紫外線硬化材料の調製例(A−1〜A−4)の組成を示す。また表2に実施例と比較例で用いた連鎖移動剤の調製例(B−1〜B−12)及び比較調製例(C−1、C−2)の組成を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
紫外線硬化材料は、表1に示す各成分を表1に示す組成(質量部)で、攪拌機を用いて混合し溶解または分散させて得た。連鎖移動剤は、表2に示す各成分を、表2に示す組成(質量部)で、攪拌機を用いて混合し溶解または分散させて得た。
【0077】
尚、表1及び表2中において略称で示した成分の詳細は以下の通りである。尚、メーカー名を記載しないものは、東京化成社製の試薬グレードのものを用いた。
【0078】
<(メタ)アクリレート>
・IBA:イソボルニルアクリレート
・DPGA:ジプロピレングリコールジアクリレート
・UP−2:合成品(含ウレタン結合化合物の合成例2を後述)
【0079】
<紫外線(光)重合開始剤>
・HCHPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
・EANT:2−エチルアントラキノン
【0080】
<含ウレタン結合化合物>
・UP−1:合成品(合成例1を後述)
・UP−2:合成品(合成例2を後述)
【0081】
<含尿素結合化合物>
・UP−3:合成品(合成例3を後述)
【0082】
<含イソシアネート基化合物>
・N3600:住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールN3600」
【0083】
<含金属化合物>
・BPDZ:ビス(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛(II)
・CDEDTC:ジエチルジチオカルバミン酸銅(II)
・DBTDL:ジラウリン酸ジブチルすず
・BPDC:ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(II)
・BTCN:ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)
【0084】
(合成例1)UP−1の合成
攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が400のポリプロピレングリコール80g(200mmol)、ヘキサメチレンジイソシアネート40g(238mmol)とジブチルすずジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm−1付近のイソシアネート基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−1とする。UP−1は数分子量約3000、末端がイソシアネート基の含ウレタン結合化合物である。
【0085】
(合成例2)UP―2の合成
攪拌機を備えた反応容器に、UP−1を100g(33mmol)と2−ヒドロキシエチルアクリレート8.2g(70.6mmol)、ジブチルすずジラウレート0.05g、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm−1付近のイソシアネートの吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−2とする。UP−2は数分子量約3200、末端がアクリレート基の含ウレタン結合化合物である。
【0086】
(合成例3)UP−3の合成
攪拌機を備えた反応容器に、1,11−ジアミノ−3,6,9−トリオキサウンデカン40g(208mmol)、ヘキサメチレンジイソシアネート42g(250mmol)を仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm−1付近のイソシアネート基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネート基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−3とする。UP−3は数分子量約2000、末端がイソシアネート基の含尿素結合化合物である。
【0087】
実施例1〜19、比較例1〜4
表1に示す紫外線硬化材料と表2に示す連鎖移動剤を用い、表3に示す配合量で両者を混合して、実施例1〜19の紫外線硬化性組成物を調製した。この組成物を硬化させて硬化性と暗部硬化距離について測定した。その結果を表3に示す、また比較のために、紫外線硬化材料のみを用いた比較例1、連鎖移動剤のみを用いた比較例2、紫外線硬化材料と比較調製例C−1、C−2の含金属化合物を有していない化合物を組み合わせた比較例3、4を表4に示す配合量で調製し、硬化性と暗部硬化距離を測定した。その結果を表4に示す。尚、紫外線硬化性組成物の調製方法、硬化性の試験方法、暗部硬化距離の測定方法は以下の通りである。
【0088】
(紫外線硬化性組成物の調製)
表3または表4に記載の各成分を各表に記載の配合割合(質量部)となるように攪拌機を用いて混合し、溶解または分散させることにより、実施例、比較例の紫外線硬化性組成物を調製した。
【0089】
(硬化性の試験方法)
紫外線硬化性組成物を、内径5mm高さ50mmのガラス管に液面の高さが20mmになるように入れ、側面からUVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm)で10秒間紫外線照射を行った。その後、1分間室温で放置した後、上部から1.5mm径のガラス棒を挿入し、硬化しているか否かを指触にて判断した。この際、液面より下にガラス棒を挿入できなかったものに関しては硬化していると判断し「○」とし、ガラス棒を液面より下に容易に挿入できたもは未硬化と判断し「×」とした。
【0090】
(暗部硬化距離の測定方法)
紫外線硬化性組成物を、内径5mm、高さ50mmのガラス管に液面の高さが20mmになるように入れ、内容物の上部半分(10mm)をアルミ箔で包み、遮光部分を作成した。その後、側面からUVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm)で10秒間紫外線照射を行った。その後、室温まで戻すため20分間室温で放置した後、上部から1.5mm径のガラス棒を挿入し硬化部の確認を行うことによって、紫外線照射面と遮光面の境界から上部(非照射部)に進んだ硬化部の距離を計測した。なお、硬化しているか否かは、硬化性の試験と同様の評価とした。
【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
表3に示すように、実施例1〜19は、いずれも良好な硬化性を有するものであった。また実施例1〜19は、暗部硬化距離が最低でも2.4mmあり(実施例16)、暗部硬化性を有していることが確認できた。
【0094】
これに対し比較例2は、紫外線硬化材料成分を含んでいないため、表4に示すように紫外線による硬化が確認できなかった。すなわち、初期硬化性については、(メタ)アクリレート成分と光重合開始剤を含んだ紫外線硬化材料が必要で、連鎖移動剤のみでは硬化しないことが分かる。これに対し実施例1〜4は、いずれも比較例2で用いた連鎖移動剤を用いたものであるが、紫外線硬化材料と組み合わせることで、紫外線照射により硬化しているように、本発明の紫外線硬化材料と連鎖移動剤の組み合わせにより、紫外線硬化性が得られることが確認できた。
【0095】
また比較例1、3、4は、表4に示すように、暗部硬化距離が0.5mm未満であり、暗部硬化がほとんど進んでいないことが分かる。具体的には、比較例1は、連鎖移動剤を含んでいないため、暗部硬化が進まない。比較例3、4は、比較調製例C−1、C−2の化合物が含金属化合物を含んでいないため暗部硬化が進まない。すなわち、紫外線硬化材料に暗部硬化性を持たせる為には、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物から構成される連鎖移動剤使用しなければ、暗部硬化性が不十分となる事がわかる。これに対し、実施例1〜16から、本発明の紫外線硬化性組成物によれば、紫外線照射により暗部でも硬化されることが確認された。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化材料と、ウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物から構成される連鎖移動剤を含有し、照射光の届かない部位が硬化可能であることを特徴とする紫外線硬化性組成物。
【請求項2】
前記紫外線硬化材料と前記連鎖移動剤の配合比が質量比で90:10〜10:90の範囲内である事を特徴とする請求項1記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項3】
前記連鎖移動剤に含まれる含金属化合物が、すず、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含む化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項4】
前記連鎖移動剤に含まれるウレタン結合、尿素結合、イソシアネート基から選択される少なくとも1種を含む化合物と含金属化合物との配合比が質量比で100:0.001〜100:10の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線硬化性組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2012−251034(P2012−251034A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123281(P2011−123281)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】