説明

紫外線遮断コーティング樹脂組成物と、それを用いた包装材

【課題】本発明は、食品、化粧品、医薬品、その他化成品等の包装材料として好適な、液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび安定である紫外線遮断コーティング組成物、および紫外線遮断コーティング組成物を用いた包装材を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛(A)、40〜180mgKOH/gの酸価を持つ分散剤(B)、ポリウレタン樹脂(C)からなり、酸化亜鉛(A)100重量部に対し分散剤(B)が1〜10重量部であり、ポリウレタン樹脂(C)が、カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化粧品、医薬品、その他化成品等の包装材料として有用な紫外線遮断包装材に関し、該包装材の製造に用いられる紫外線遮断コーティング組成物とそれを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品包装を始めとする各種包装材料では、内容物の紫外線に対する保護を目的として、透明プラスチックフィルムにアルミ箔の積層、アルミ蒸着あるいは着色インキの全面印刷等を行い紫外線を遮断してきたが、これらは内容物が見えないという欠点があった。
【0003】
また、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等の有機系紫外線吸収剤を使用した場合、透明ではあるが吸収剤自体が劣化するという問題があった。また使用量が少ないと紫外線遮断効果が不十分であり、逆に多い場合は内容物への紫外線吸収剤の移行という安全衛生上の問題も避けて通ることができなかった。
【0004】
一方、無機系紫外線吸収剤である二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物を液状媒体中に分散して紫外線遮断コーティング組成物を調製し、プラスチックフィルムに塗布する試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)が、通常の方法によって得られる金属酸化物粒子の分散体は安定性が低く、金属酸化物の沈降や分散体の粘度上昇、ゲル化を招き易いという問題があった。安定性を良くするために、金属酸化物粒子の分散体をゾル−ゲル法等により得てプラスチックフィルムに塗布すると、濡れ性の悪さから印刷不良を生じやすいうえに造膜性が低く、またヒートシール性の樹脂を積層後に積層体の強度不足を招くといった問題があった。
【0005】
また、分散性やヒートシール性の強度不足を解決するために、紫外線遮断コーティング組成物中の金属酸化物を液状媒体中に安定して分散させる試みがなされている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、これまでよりも分散安定の優れた紫外線遮断コーティング組成物を得ることができ、また高いヒートシール強度を得ることができた。しかしながら、金属酸化物の分散がまだ不充分であることから、内容物を見る必要のある各種包装材に対応するためには透明性が不充分であり、また、金属酸化物の沈降安定性についても分散が不充分であることから長い期間の確保が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−6305号公報
【特許文献2】特開2004−224986公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび安定である紫外線遮断コーティング組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、食品、化粧品、医薬品、その他化成品等の包装材料として好適な、可視光に対しては高い透明性を持ち、紫外線に対しては高い遮断性を持つ、ヒートシール強度の優れた紫外線遮断コーティング組成物を用いた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸化亜鉛(A)、40〜180mgKOH/gの酸価を持つ分散剤(B)およびポリウレタン樹脂(C)からなる紫外線遮断コーティング組成物であって、
分散剤(B)が、
酸化亜鉛(A)100重量部に対し1〜10重量部
であり、
ポリウレタン樹脂(C)が、
カルボジイミド基又はアジリジニル基を有する
ことを特徴とする紫外線遮断コーティング組成物に関するものである。
【0009】
また、本発明は、水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)が、さらに含まれていることを特徴とする上記の紫外線遮断コーティング組成物に関するものである。
【0010】
また、本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、上記の紫外線遮断コーティング組成物からなる紫外線遮断層とヒートシール性を有する樹脂からなるヒートシール層とを順次積層させてなる紫外線遮断包装材に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線遮断コーティング組成物は液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび保存安定性が優れており、安定した性能を維持することができる。また、コーティング組成物にて得られた紫外線遮断包装材は紫外線遮断性や可視光線透過性が優れ、包装材料として必要な内容物の可視性と内容物を保護するための紫外線に対する高い遮断性を兼ね備えている。更に、ラミネート強度やヒートシール強度も高い数値を得られる優れた紫外線遮断包装材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、紫外線遮断コーティング組成物と、プラスチックフィルムの少なくとも片面に紫外線遮断コーティング組成物から構成される紫外線遮断層、ヒートシール性を有する樹脂からなるヒートシール層を順次積層させた積層体からなる紫外線遮断包装材を提供する。
【0013】
まず、本発明における紫外線遮断コーティングについて説明する。
本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれる酸化亜鉛(A)は、紫外線を吸収する働きをするものであり、透明性を確保するために、平均粒子径が0.2μm以下であることが好ましい。酸化亜鉛(A)の平均粒子径が0.2μmを超えると、可視光線の散乱を起こし、可視領域における紫外線遮断包装材の透明性が損なわれるためである。また、酸化亜鉛(A)は、平均粒子径が0.01μm未満の場合には酸化亜鉛(A)が2次凝集を起こしやすくなり、コーティング組成物の粘度上昇を招き、その安定性および作業性が低下するため、0.01μm以上であることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、BET法によるガス吸着量から算出される平均粒子径をいう。
【0014】
コーティング組成物中の酸化亜鉛(A)の含有量は、コーティング組成物の総固形分を基準として40〜80重量%であることが好ましく、50〜70重量%であることがより好ましい。酸化亜鉛(A)の含有量が40重量%未満であると紫外線遮断包装材としての紫外線遮断効果が劣り、80重量%を超えるとコーティング組成物の安定性および印刷・塗工適性が低下する。
【0015】
本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれる分散剤(B)は、40〜180mgKOH/gの酸価を持ち、酸化亜鉛(A)100部に対し1〜10部を使用する。分散剤(B)は、酸化亜鉛(A)を安定して液状媒体に分散させ、得られるコーティング組成物に流動性を付与する働きをするが、更に、カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に含有するポリウレタン樹脂(C)とをコーティング組成物中に含有させることにより、包装材とした場合の皮膜強度を維持、あるいは皮膜強度を増すことができる。
【0016】
コーティング組成物の顔料分散の工程は、
(1)顔料に対する分散剤または樹脂分の濡れ工程、
(2)顔料の粉砕工程、
(3)粉砕された顔料の安定化工程
という3つの工程が必要となり、各々の工程がスムーズに進めば進むほど、短時間で且つ安定した分散体を得ることができると云われている。高い分子量を持つポリウレタン樹脂等の樹脂を使用した場合には、一般的に顔料に対する親和性が低く(i)濡れ工程が悪く、またポリウレタン樹脂自体の分子量が大きいために、サンドミル分散装置等のビーズの衝撃による(ii)顔料粉砕工程の阻害要因になり、安定した分散体を得ることが難しく、安定した分散体を得ることができても長い分散時間が必要となる。一方、酸価を持つ分散剤(B)を用いた場合には、酸化亜鉛に対する親和性が良い為に(i)濡れ工程が良く、(ii)顔料粉砕工程を阻害すること無く、又(iii)粉砕顔料の安定化もスムーズに進むことから、短い時間で安定した分散体を得ることができると考えられる。
【0017】
酸価を持つ分散剤(B)は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、紫外線遮断層、ヒートシール層を順次積層させた紫外線遮断包装材の強度に対しても影響を及ぼす。常温で液体、あるいは固体であっても低い分子量であるといった性状の酸価を持たない分散剤をコーティング組成物に含有させた場合に、一般的に、コーティング組成物の乾燥皮膜、およびそれを用いた包装材の強度が低下する傾向にある。一方、本発明の酸価を持つ分散剤(B)は、上記の性状を持つにも関わらず包装材の強度が低下することが無い。これは、乾燥皮膜となる際に、ポリウレタン樹脂(C)中に含まれるカルボジイミド基又はアジリジニル基と酸価を持つ分散剤(B)のカルボキシル基との一部が化学結合により分散剤(B)とポリウレタン樹脂(C)の一体化がなされた結果と考えられ、コーティング組成物の乾燥皮膜、およびそれを用いた包装材の強度が低下することなく高い皮膜強度を示すものと考えられる。
【0018】
本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれる分散剤(B)は、40〜180mgKOH/gの酸価を持つ。酸価が40mgKOH/gよりも低い場合は、酸化亜鉛(A)に対する親和性が劣り安定した分散体を得ることが難し為多量の分散剤を必要となり、また仮に安定した分散体を得ることができても長い分散時間が必要となる。一方、180mgKOH/gよりも高い場合には、コーティング組成物の経時安定性が悪くなる傾向が見られる。分散剤(B)は、80〜140mgKOH/gの酸価を持つのがより好ましい。
【0019】
本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれる分散剤(B)は、酸化亜鉛(A)100部に対し分散剤(B)が1〜10部を含む。酸化亜鉛(A)100部に対し1部より少ない場合には、酸化亜鉛(A)の分散に対する効果がほとんど無く安定した分散体を得ることが難しく、10部より多い場合には包装材の強度が低下するといった問題が発生する。分散剤(B)は、酸化亜鉛(A)100部に対し1〜6部を含むことがより好ましい。
【0020】
酸価を持つ分散剤(B)には、上記の如く適性な酸価と、酸化亜鉛(A)に対する適正な配合量があり、これら2つの因子が両立する範囲内の分散剤(B)を使用しなければならず、これらの関係は、酸化亜鉛(A)と分散剤(B)とを合わせた重量に対する分散剤(B)の酸価が0.1〜15mgKOH/gであることが好ましい。
【0021】
酸価を持つ分散剤(B)は、酸価や配合量以外に特に限定は無く、市販されているものを使用できる。例えば分散剤(B)は酸価を持つことが必要であって、アミン価を持つものでも持たないものでも良い。実際に使用できる市販の分散剤の例としては、ディスバーBYK102(酸価=101mgKOH;以下括弧内の数値は酸価を示す)、ディスパーBYK106(132)、ディスパーBYK110(53)、ディスパーBYK111(129)、ディスバーBYK140(73)、ディスバーBYK142(46)、ディスバーBYK145(76)、ディスバーBYK180(95)、ディスバーBYK2070(40)、ディスバーBYK−P104(180)、ディスバーBYK−P104S(150)、ディスバーBYK220S(100)、アンチテラー204(41)、アンチテラー205(40)などが挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0022】
本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれるウレタン樹脂(C)は、酸化亜鉛(A)を紫外線遮断層中に保持するバインダー樹脂として働くものであり、カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に含有させる必要がある。
【0023】
本発明に使用するカルボジイミド基(−N=C=N−)を樹脂中に含有するポリウレタン樹脂(C)のカルボジイミド基の含有量は、ポリウレタン樹脂固形分1g当り5.0×10−5〜3.0×10−3グラム当量の範囲内が好ましい。含有量が5.0×10−5グラム当量より少ない場合は、耐ボイル、耐レトルト性等の物性が得られ難く、また3.0×10−3グラム当量より多い場合は、ポリウレタン樹脂溶液の経時粘度安定性が低下し、該ポリウレタン樹脂を用いた印刷インキは増粘、ゲル化する傾向がある。
【0024】
カルボジイミド基を樹脂中に含有するポリウレタン樹脂(C)は、一般に高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤などを反応させて得られるものであり、カルボジイミド基の導入方法については何ら限定されるものではないが、例えば次のような方法を挙げることができる。すなわち、カルボジイミド基およびイソシアネート基を同じ分子中にそれぞれ1個以上有する化合物をジイソシアネート化合物成分の一部または全部として用いることにより、カルボジイミド基をポリウレタン樹脂に導入することができるが、均一なポリウレタン樹脂溶液が得られやすいという点では、下記一般式(1)で表されるイソシアネート基を2個有する化合物を用いることが好ましい。
【0025】
一般式(1)
【化1】


(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、複素環式を、nは1以上の整数を表し、Rは同一または異なってもよい。)
【0026】
カルボジイミド基およびイソシアネート基を同じ分子中にそれぞれ1個以上有する化合物は、公知の方法、例えばジおよびまたはトリイソシアネート化合物を非反応性の有機溶剤中で適当な触媒、例えば3-メチル−1-フェニル−2-ホスホレート−1-オキシドの存在下で加熱し、脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネートをカルボジイミド化する方法により得られる。
【0027】
カルボジイミド基およびイソシアネート基をそれぞれ同じ分子中に1個以上有する化合物の原料であるジイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、あるいはこれらの混合物であり、例えば1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4.4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジメリルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
本発明はまた、下記一般式(2)で表せるアジリジニル基を樹脂中に含有するポリウレタン樹脂(C)を用いることができる。
【0029】
一般式(2)
【化2】

(式中、R1およびR2は同一でも異なってもよく、水素原子またはメチル基またはエチル基を表す)
【0030】
本発明の一般式(2)で表されるアジリジニル基を有するポリウレタン樹脂(C)中のアジリジニル基は、ポリウレタン樹脂のいずれの部位に導入されても良く、例えば末端に導入されても良く、側鎖に導入されても良い。また、アジリジニル基の量は、該樹脂固形分1g当たり一般式(2)で表されるアジリジニル基を2.0×10−3〜1.0×10−6グラム当量の範囲が好ましい。アジリジニル基当量が2.0×10−3グラム当量以上含まれると、ポリウレタン樹脂の液中での安定性が不良となる。アジリジニル基当量が1.0×10−6グラム当量以下であると、十分な塗膜物性が得られない。
【0031】
アジリジニル基を樹脂中に含有するポリウレタン樹脂(C)は、一般に高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤などを反応させて得られるものであり、アジリジニル基の導入方法については何ら限定されるものではないが、例えば次のような方法を挙げることができる。一般式(2)で表されるアジリジニル基をポリウレタン樹脂の末端に導入する場合は、一般式(2)で表されるアジリジニル基を有しかつイソシアネートと反応しうる活性水素を1個有する化合物をイソシアネート基と反応させることにより得られる。また、一般式(2)で表されるアジリジニル基を側鎖に導入する場合は、一般式(2)で表されるアジリジニル基を有しかつイソシアネートの反応しうる活性水素を少なくとも2個有する化合物をポリオール、鎖伸長剤などとして用いればよい。
【0032】
一般式(2)で表されるアジリジニル基を有し、イソシアネート基と反応しうる活性水素を有する化合物としては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、N−(γ−アミノプロピル)エチレンイミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンイミン、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、1−フェニル−2−アジリジニルエタノールなどが挙げられる。
【0033】
カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に含有するポリウレタン樹脂(C)の数平均分子量は、5,000〜150,000の範囲が好ましい。数平均分子量が5,000未満の場合、これをバインダーとして用いた印刷インキは、乾燥性、耐ブロッキング性等が劣り、皮膜強度、耐ボイル、レトルト性等の物性も得られにくい。また、150,000を越える場合には、ポリウレタン樹脂溶液の粘度が上昇し、インキの貯蔵安定性、印刷適性上も好ましくない。
【0034】
また、ポリウレタン樹脂中には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの各種の官能基を有しても良いが、該ポリウレタン樹脂溶液の製造時または保存中に増粘が著しくない範囲内で用いる必要がある。中でもカルボキシル基を導入した場合、カルボキシル基とカルボジイミド基とを含有するポリウレタン樹脂を主たるバインダーとする印刷インキを用いれば、カルボキシル基とカルボジイミド基との反応により、耐熱性、耐油性などが特に優れた印刷物を得ることができる。
【0035】
しかし、ポリウレタン樹脂中に含有してもよいカルボキシル基の量は、混在するカルボジイミド基および/又はアジリジニル基当量により異なるが、ポリウレタン樹脂の酸価が0.1〜20KOHmg/gであることが好ましい。ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の量が多過ぎる場合、ポリウレタン樹脂溶液の製造時または保存中、もしくは印刷インキにした場合の保存中にカルボキシル基とカルボジイミド基又はアジリジニル基との反応が生じ、樹脂溶液もしくは印刷インキの増粘あるいはゲル化を生じることがあり貯蔵安定性の面で好ましくなく、またカルボジイミド基又はアジリジニル基が消費され本発明の効果が低減または失われるため好ましくない。
【0036】
前記高分子ポリオールの具体例としては、たとえば酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の低分子グリコール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物を脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類などの一般にポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールが挙げられる。
【0037】
前記高分子ポリオールの分子量は、得られるポリウレタン樹脂の溶解性、乾燥性、耐ブロッキング性等を考慮して適宜決定されるが、通常は500〜3000の範囲が好ましく、さらには700〜2500の範囲が好ましい。分子量が500未満になると溶解性の低下に伴ない印刷適性が劣る傾向があり、また3000を越えると乾燥性および耐ブロッキング性が低下する傾向がある。これらの高分子ポリオールは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0038】
さらには、前記高分子ポリオールの一部を低分子ポリオール類、たとえば前記高分子ポリオールの製造に用いられる各種低分子ポリオールに置換してもよく、その際の低分子ポリオールの使用量は20重量%以下、さらには10重量%以下が好ましい。低分子ポリオール類の使用量が20重量%を越えると、希釈溶剤に対する溶解性や得られる印刷インキのプラスチックフィルムに対する密着性が低下する。また、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときは、前記高分子ポリオールとして環状エステル化合物をジメチロールプロピオン酸等により開環重合して得られるポリエステルポリオール類を用いるか、前記低分子ポリオール類にジメチロールプロピオン酸等を用いてもよい。
【0039】
イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。たとえば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4‘−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等がその代表例としてあげられる。
【0040】
鎖伸長剤としては、各種公知のアミン類を使用することができる。たとえばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4‘−ジアミンなどがあげられる。その他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等もその代表例としてあげられる。
【0041】
更には反応停止剤を用いることもできる。かかる反応停止剤としてはたとえば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときは、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。
【0042】
ポリウレタン樹脂(C)の製造法は特に限定されるものではないが、例えば高分子ポリオール、カルボジイミド基およびイソシアネート基を同じ分子内にそれぞれ1個以上有する化合物、および必要に応じてジイソシアネート化合物をイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、高分子ポリオールの両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(好ましくは遊離イソシアネート価0.5〜10%)を調整し、ついでこれを適当な溶媒中で鎖伸長剤、さらに必要に応じて反応停止剤と反応させる二段法があげられる。二段法は、均一な重合体溶液が得やすいという点で好ましい製造法である。
【0043】
ポリウレタン樹脂(C)の製造法において使用される溶剤としては、通常、印刷インキ用の溶剤としてよく知られ紫外線遮断コーティング組成物にも用いる、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤が挙げられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いる。
【0044】
水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)は、先に述べたポリウレタン樹脂(C)と同様に、酸化亜鉛(A)を紫外線遮断層中に保持するバインダー樹脂として働くものである。また、酸価を持つ分散剤(B)の補助的な役割を果たし、酸化亜鉛(A)を安定して液状媒体に分散させ、得られるコーティング組成物に流動性を付与する働きもする。また、水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)を含む紫外線遮断コーティング組成物は、包装材とした場合の強度や、加工適性といった物性面でも優れている。
上記の水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂の分子量は、特に限定されないが、コーティングとしての作業性を考えると、数平均分子量(Mn)で5,000〜45,000程度が好ましい。
【0045】
水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)は、通常、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂の酢酸ビニル部分のエステル結合を、部分的にケン化(加水分解)してビニルアルコールとすることで製造することができる。この場合、好ましい塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコールの構成比率は、それぞれを構成単位として重量比で表すと、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=70〜95/0.1〜15/0.1〜25(重量%)の範囲である。また、特に好ましい構成比率は、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=80〜95/0.1〜5/0.1〜15(重量%)の範囲である。
【0046】
また、水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)は、塩化ビニルモノマーと、酢酸ビニルモノマーと、水酸基を有し、塩化ビニルモノマーおよび酢酸ビニルモノマーと共重合性を有する他のモノマーとを共重合させることで製造することもできる。この場合、塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマー、水酸基を有する共重合性モノマーの好ましい比率は、塩化ビニルモノマー/酢酸ビニルモノマー/水酸基を有する共重合性モノマー=70〜95/0.1〜15/0.1〜25(重量%)の範囲である。
水酸基を有し、塩化ビニルモノマーおよび酢酸ビニルモノマーと共重合性を有する他のモノマーとしては、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸モノグリセリド、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、メタクリル酸モノグリセリド等を使用することができる。
【0047】
アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。また、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0048】
水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)は、コーティング中に、酸化亜鉛(A)100重量部に対して、3〜150重量部の割合で含まれることが好ましく、5〜100重量部の割合で含まれることがより好ましい。特に、コーティング組成物の製造時の酸化亜鉛(A)分散工程においては、酸価を持つ分散剤(B)と共に使用さる。
上記範囲で水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)を用いると、酸化亜鉛(A)を効果的に微分散できるばかりでなく、分散後の酸化亜鉛(A)の凝集もなく安定したコーティング組成物が得られるためである。具体的には、水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)の量が上記範囲より少ないと、分散時の流動性が悪化し作業性を損なうとともに、コーティング組成物の安定性も損なうため好ましくない。一方、水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)の量が上記範囲より多いと、分散効率が悪化するため透明なコーティング組成物を得ることが困難になるため好ましくない。
【0049】
ポリウレタン樹脂と、水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂とを併用する際の比率は、ポリウレタン樹脂/水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂=90/10〜50/50(重量%)の範囲が好ましい。ポリウレタン樹脂比が90重量%を超えると、塗工物のブロッキングが生じやすく、50重量%未満であるとラミネート強度等のラミネート加工適性が低下するためである。
【0050】
紫外線遮断コーティング組成物には、必要に応じて可塑剤、滑剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませることができる。さらに、本発明の目的に反しない範囲で、その他の通常用いられている有機・無機充填剤を含ませてもよい。
【0051】
次に、紫外線遮断コーティング組成物の製造方法について説明する。
紫外線遮断コーティング組成物は、酸化亜鉛(A)、酸価を持つ分散剤(B)、ポリウレタン樹脂(C)を液状媒体に分散することにより製造することができる。具体的には、酸化亜鉛(A)と酸価を持つ分散剤(B)、ポリウレタン樹脂(C)とを混合し、さらに必要に応じて水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)消泡剤、滑剤等を混合して従来公知の方法で、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散する。
【0052】
最後に、紫外線遮断包装材について説明する。
紫外線遮断包装材の一つの例を挙げると、まずプラスチックフィルムの少なくとも片面に紫外線コーティング組成物を塗布乾燥させ紫外線遮断層を設け、次に紫外線遮断層のプラスチックフィルムとは反対の紫外線遮断層上にヒートシール性を有する樹脂からなるヒートシール層を順次積層させることにより積層体を得る。食品、医薬品、その他化成品に使用する袋状の紫外線遮断包装材は、この積層体のヒートシール層同士を貼り合わせヒートシールさせることにより得ることができる。
【0053】
紫外線遮断包装材の紫外線遮断層は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、従来公知の方法、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート等で紫外線遮断コーティング組成物を塗布後、通常40〜60℃で乾燥することにより得られる。
【0054】
本発明における紫外線遮断コーティング組成物は、酸化亜鉛(A)が高濃度に、かつ透明に微分散されていることを特徴とするので、紫外線遮断層は特に厚くする必要はない。紫外線遮断層の乾燥膜厚は、塗工方法によっても異なるが、好ましくは0.3〜15μm、より好ましくは0.5〜10μmの範囲である。乾燥膜厚が15μmを超えると包装材の透明性が低下し、0.3μm未満では紫外線遮断効果が不足するため好ましくない。
【0055】
紫外線遮断コーティング組成物をプラスチックフィルムに塗工する前後に、包装材、包装体の意匠性を高めるため、他の着色インキを使用して、製品名、絵柄等の各種デザインの印刷を行うことも可能である。特にフタロシアニンブルーや、フタロシアニングリーン等の青、緑色系の顔料を使用したインキは、300〜400nm付近に吸収があり、またジスアゾイエロー等の顔料を使用した黄色系のインキは、400〜500nm付近に吸収があるため、紫外線遮断層の下または上にこれらのインキを塗工すると、長波長側の紫外線を遮断するのに有効である。
【0056】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ナイロン等の通常包装材として使用されるプラスチックのフィルムを使用することができる。
【0057】
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステル等の収縮フィルムも使用することができる。
【0058】
プラスチックフィルムの厚さは、5〜300μmであることが好ましく、取り扱い易さの点から10〜200μmであることがより好ましい。
プラスチックフィルムは、一軸または二軸延伸されたものでもよく、延伸されていないものでもよい。また、プラスチックフィルムの表面には、コロナ放電処理等の処理が施されていてもよい。
【0059】
また、可視領域における光線透過率が70%以上の透明なプラスチックフィルムは、内容物を容易に視認できるため好ましい。
【0060】
紫外線遮断包装材の紫外線遮断層上には、ヒートシール性を有する樹脂からなるヒートシール層を積層することができる。ヒートシール層の積層は、一般的な溶剤型または無溶剤型接着剤、例えばポリウレタン接着剤を使用してヒートシール性を有する樹脂フィルムを貼り合わせるドライラミネーション、ポリオレフィン樹脂等のヒートシール性を有する樹脂を溶融、押出ししてラミネートする押出しラミネーション等の方法により行うことができる。特に、ドライラミネーションによりヒートシール層の積層を行うと、接着剤を塗布することにより紫外線遮断層表面が平滑となり、より透明性が向上した包装材、包装容器を得ることができるため好ましい。
【0061】
ドライラミネーションに使用されるヒートシール性を有する樹脂フィルムは、一般的にシーラントと呼ばれている樹脂フィルムであり、例えばポリエチレン(PE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂フィルムが使用できる。また、押出しラミネーションには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等の樹脂が使用できる。紫外線遮断層上には、必要に応じてヒートシール層の積層に先立って、ポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗布することができる。
【0062】
ヒートシール層の厚さは特に限定されないが、10〜100μmが好ましい。100μmを超えると透明性が低下する場合があり、10μm未満では包装材としての物性が満たされない。
【0063】
紫外線遮断包装材は、三方シール形、四方シール形、中央合掌形、封筒形等の袋詰め包装として食品、医薬品、その他化成品の包装体として、またスタンディングパウチ、トレー蓋材、収縮包装、収縮ラベル等の用途にも使用できる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
【0065】
〔合成例1;カルボジイミド基導入ウレタン樹脂(樹脂c1)〕
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得た。次いで、イソホロンジアミン 8.2部、ジ−n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)を得た。
【0066】
〔合成例2;アジリジニル基導入ウレタン樹脂(樹脂c2)〕
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール200部、イソホロンジイソシアネート33.4部、酢酸エチル100部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル200部を加えて末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミ7.2部、テトラメチロールメタン−トリ−β− アジリジニルプロピオネート8.5部および酢酸エチル141部、イソプロピルアルコール140部を混合したものに 、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液533.4部を徐々に添加し、攪拌下に50℃で3時間反応させ、固形分30%、分子量22,000のアジリジニル基含有ポリウレタン樹脂(樹脂c2)の溶剤溶液を得た。
【0067】
[合成例3;ポリウレタン樹脂(樹脂c3)]
攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール125部、およびイソホロンジイソシアネート29.5部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル153部を加えて末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン10.3部、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール0.78部、ジ−n−ブチルアミン1.0部、酢酸エチル118部、およびイソプロピルアルコール118部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を307.5部添加し、50℃で3時間反応させ、固形分30%、分子量25,000のポリウレタン樹脂(樹脂c3)を得た。
【0068】
[実施例1]
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部、樹脂c1(合成例1で得られたカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂、分子量40,000、固形分30%)100部、酢酸エチル50部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得た。次に、この分散体に前記樹脂c1 100部、酢酸エチル65部、イロプロピルアルコール20部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して紫外線遮断コーティング組成物Aを得た。
【0069】
次に、コーティング組成物Aを、酢酸エチル/酢酸nプロピル/イソプロピルアルコール=5/2/3(重量比)の混合溶剤で希釈して、粘度をザーンカップNo.3(離合社製)で16秒に調整し、二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡績製「エステルE5100」、厚さ12μm)と、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートして、乾燥膜厚1.0μmの紫外線遮断層を形成した印刷物を得た。
次に、PETフィルムの紫外線遮断層上に2液硬化型接着剤(東洋モートン製「TM−265」/「CAT−RT37」=100/7.5(重量比))を約3g/m塗布し、ドライラミネート機を使用してシーラントである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東セロ社製「TUX−FCD#40」、厚さ40μm)を積層し、40℃3日間エージングさせ積層体を得た。更に積層体を140℃でヒートシールすることにより、製袋し、紫外線遮断包装材を得た。
【0070】
また、OPPフィルムの紫外線遮断層上に2液硬化型接着剤(東洋モートン製「TM−329」/「CAT−8B」=50/50(重量比))を約3g/m塗布し、ドライラミネート機を使用してシーラントである無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東セロ社製「トーセロCP GHC」、厚さ25μm)を積層し、40℃3日間エージングさせ積層体を得た。更に積層体を140℃でヒートシールすることにより、製袋し、紫外線遮断包装材を得た。
【0071】
[実施例2〜6]
表1に示した処方に従いコーティング組成物B〜Hを得た。次に、実施例1と同様にして調整およびグラビア印刷機でコートし、更に接着剤を塗布した後に、シーラントを積層し、積層体、更に紫外線遮断包装材を得た。
【0072】
[比較例1〜4]
表1に示した処方に従いコーティング組成物I〜Lを得た。次に、実施例1と同様にして調整およびグラビア印刷機でコートし、更に接着剤を塗布した後に、シーラントを積層し、積層体、更に紫外線遮断包装材を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
表1中以下の通りである。
分散剤b1 ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価無し
分散剤b2 ディスパーBYK180、酸価95mgKOH/g、
アミン価95mgKOH/g
分散剤b3 ディスパーBYK P104、酸価180mgKOH/g、アミン価無し
分散剤b4 ディスパーBYK142、酸価46mgKOH/g、
アミン価43mgK OH/g
分散剤b5 ディスパーBYK108、酸価無し、アミン価71mgKOH/g
樹脂c1 合成例1で得られたカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂、
分子量40,000、固形分30%
樹脂c2 合成例2で得られたアジリジニル基含有ポリウレタン樹脂、
分子量22,000、固形分30%
樹脂c3 合成例3で得られたポリウレタン樹脂、分子量25,000、固形分30%
樹脂d 塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニルアルコール=81/4/15
(重量%)、分子量20,000、固形分30%
PETフイルム 二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績社製「エステルE
5100」、厚さ12μm)
OPPフイルム 二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製「パイレンP
2161」、厚さ20μm)
LLDPEフイルム 直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製「TUX−FC D#40」、厚さ40μm)
CPPフイルム 無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製「トーセロCP GH C」、厚さ25μm)
【0075】
実施例および比較例で得られた紫外線遮断コーティング組成物の安定性、印刷物の耐ブロッキング性、および積層体の光線透過率、およびラミネート強度、ヒートシール強度を下記の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0076】
【表2】

【0077】
[コーティング組成物の保存安定性]
紫外線遮断コーティング組成物をガラス瓶に入れ密栓し、40℃の環境下に1ヵ月間保存した後、コーティング組成物の変化(分離、沈殿)を目視により判定した。
○:変化無し
△:変化(分離、沈殿)あり
×:変化が非常に大きい
○が実用レベルである。
【0078】
[耐ブロッキング性]
紫外線遮断コーティング組成物をコートした面と、コートしていないフィルムの非コロナ処理面とを重ね合わせ、荷重9.8N/cmを加えながら、40℃、80%RHの環境下で24時間放置した後に手で剥がし、コート面と非コロナ処理面との貼り付き具合を評価・判定した。
5:貼り付きがない
4:剥がす際に若干の貼り付きを感じる。
3:強い貼り付き感があるが、コート面の転移は見られない
2:コート面の一部が、非コロナ処理面に転移している
1:コート面の全てが非コロナ処理面に転移している、又は強く貼り付き剥がれない
4以上が実用レベルである。
【0079】
[光線透過率]
JASCO社製の分光光度計V560を用いて、積層体の各波長における透過率を測定した。紫外線遮断性は360nm、可視光線透過率は550nmを代表値として測定した。
【0080】
[ラミネート強度]
積層体のフィルムとシーラントを引っ張り試験(スピード300mm/分)し、ラミネート強度を測定した。
【0081】
[ヒートシール強度]
積層体のシーラント同士を貼り合わせヒートシール(140℃、19.6N/cm2、1秒間)した後、シーラント同士を引っ張り試験(スピード300mm/分)し、ラミネート強度を測定した。
【0082】
表2に示す様に、分散剤を使用しない場合や酸価を持たない分散剤を使用した場合は、コーティング組成物の保存安定性や、紫外線遮断包装材の可視部の光透過性が劣る。又、カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に持たないウレタン樹脂を用いた場合は、ラミネート強度やヒートシール強度が劣る。これに対し、本発明のコーティング組成物は保存安定性に優れ、本発明の紫外線遮断包装材は光透過性、ラミネート強度、ヒートシール強度に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛(A)、40〜180mgKOH/gの酸価を持つ分散剤(B)およびポリウレタン樹脂(C)からなる紫外線遮断コーティング組成物であって、
分散剤(B)が、
酸化亜鉛(A)100重量部に対し1〜10重量部
であり、
ポリウレタン樹脂(C)が、
カルボジイミド基又はアジリジニル基を有する
ことを特徴とする紫外線遮断コーティング組成物。
【請求項2】
水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(D)が、さらに含まれていることを特徴とする請求項1記載の紫外線遮断コーティング組成物。
【請求項3】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に、請求項1又は2記載の紫外線遮断コー
ティング組成物からなる紫外線遮断層とヒートシール性を有する樹脂からなるヒートシール層とを順次積層させてなる紫外線遮断包装材。

【公開番号】特開2011−252120(P2011−252120A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128392(P2010−128392)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】