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紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法
説明

紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法

【課題】耐久性、耐摩耗性に優れ、しかも、塗布むら、色むらが生じ難く、また、斑点、白化、欠損、クラックが生じ難い紫外線遮蔽性塗膜あるいは赤外線遮蔽性塗膜をどのような作業環境下でも形成できる塗装方法を提供する。
【解決手段】紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤とバインダ成分と多価アルコール系溶媒とを少なくとも配合し、多価アルコールの配合量が50〜95重量%である塗液を、塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機、さらには、エアーカーテンを発生させるためのブロアを備えた塗装機を用い、塗液吐出ノズルの吐出圧を0.01〜0.098MPaとして、基材に塗布し乾燥して、基材の表面に紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法に関する。また、その塗装方法によって形成された塗膜、その塗膜を表面に有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線遮蔽剤を含有した塗膜を建築物の窓ガラスやプラスチック、自動車のガラス等の表面に形成して、紫外線の室内、車内への進入を抑えて、それによって物品の日焼け、変色を防止し、有害な紫外線から人体を守ることが行われている。また、赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成して赤外線の室内、車内への進入を抑えて、室内や車室内の温度の上昇を抑制することが行われている。
【0003】
紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成するには、紫外線遮蔽剤または赤外線遮蔽剤、バインダ成分、溶媒等を配合した塗液を刷毛塗りやスプレーガンを用いてスプレー塗装することが一般的である。例えば、下記の特許文献1には、紫外線遮蔽剤または赤外線遮蔽剤を配合し、エポキシ基含有アルコキシシランと活性水素を有するアミノ基含有アルコキシシランとの反応生成物をバインダ成分とした塗液を刷毛塗り、スプレー等で塗布することを開示している。また、特許文献1には、コンピューターによるノズル制御弁で、スプレーノズルの開放時間と閉鎖時間を制御したスプレーガンを用いて塗装することができることも記載している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−64308号公報(段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の特許文献1の方法では、特殊なバインダ成分を用いる必要があることから汎用的ではない。また、その実施例では不織布に含浸した液を塗布して塗布むら、色むらが生じない塗膜を室温の硬化で形成できることを記載しているものの、特許文献1には時間当たりの塗装面積が広いスプレー塗装での塗工例がなく、どの程度の改善が可能か不明である。そこで、スプレー塗装機を用いて検討したところ、高圧力で吐出ノズル径を小さくして塗液を超微粒子化して噴霧する通常の塗装条件では吐出量が小さくなり、所望の塗布量とするには数回の重ね塗りが必要であり、そのために強度の強い塗膜が得られ難く、また、作業環境によっては塗布むら、色むらが生じ、斑点、白化、欠損、クラックが発生するという問題が生じた。このような塗膜では膜の剥離や欠落が起こり、紫外線遮蔽性能や赤外線遮蔽性能を長期間にわたって継続的に活用できない。
そこで、本発明は以上のような従来技術の問題点を克服し、耐久性、耐摩耗性に優れ、しかも、塗布むら、色むらが生じ難く、また、斑点、白化、欠損、クラックが生じ難い、紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜をどのような作業環境下でも形成できる塗装方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来のスプレー塗装条件では紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗液を超微粒子化して噴霧しているために数回の重ね塗りが必要であること、さらには、各回の塗布面の乾燥条件が微妙に異なることによって、所望の塗膜が得られないと考えた。そして、塗液の液滴を超微粒子化せずに塗布するために、スプレーガンなどの塗装機の吐出ノズルの先端口径を比較的大きくするとともに吐出ノズルの吐出圧を比較的低圧として、しかも、塗液の粘度を比較的高くするために特定量の多価アルコールを配合した塗液を塗布することにより、塗布回数を減らすことができ所望の塗膜が形成できること、さらには、塗布直後に均一な膜化、乾燥を行うために、塗液吐出ノズルの周辺から被塗面に向けて塗液を囲むようにエアーカーテンを発生させるブロアを備えた塗装機を用いることにより、吹き付けるエアーの圧力によって塗液の液滴を押しつぶし液滴同士をつなぎ合わせて膜化、乾燥して、所望の塗膜が形成できることなどを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤とバインダ成分と多価アルコール系溶媒とを少なくとも配合し、多価アルコールの配合量が50〜95重量%である塗液を、塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機を用い、塗液吐出ノズルの吐出圧を0.01〜0.098MPaとして、基材に塗布し乾燥して、基材の表面に紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法であり、また、エアーカーテンを発生させるブロアを備えた、塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機を用いて、上記の塗液を基材に塗布し乾燥して、基材の表面に紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗装方法では、あらゆる物品の表面に耐久性、耐摩耗性に優れ、しかも、塗布むら、色むらが生じ難く、また、斑点、白化、欠損、クラックが生じ難い、紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成することができ、紫外線遮蔽性能や赤外線遮蔽性能を活用することができる。しかも、どのような作業環境下でも1回塗りで均質な紫外線遮蔽性塗膜や赤外線遮蔽性塗膜を簡便に形成でき、また、透明性も十分確保することができる。
このため、例えば、建築物の窓ガラスに新築・リフォーム時に簡単に施工でき、また、自動車には給油や洗車の際に簡単に施工できる。このように窓ガラスや自動車のフロントガラス、サイドガラス、後部ガラスなどに紫外線遮蔽性塗膜を形成すると進入する紫外線を遮断でき、それによって物品の日焼け、変色を防止でき、有害な紫外線から人体を守ることができる。また、赤外線遮蔽性塗膜を形成すると、室内や車室内の温度の上昇を抑えることができ、省エネルギーに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる塗装機は市販されているスプレーガンなどの塗装機を用いることができ、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有する塗液を供給する供給手段と、上記供給手段から供給される塗液を吹き出す吐出ノズルとを少なくとも具備する。塗液吐出ノズルの先端口径は0.5〜3.0mmとする必要があり、塗液吐出ノズルの吐出圧を0.01〜0.098MPaとする必要がある。このような範囲とすることにより塗液を従来のように超微粒子化せず、ノズルの先端口径に対応するほぼ0.5〜3.0mmの液滴径を有する、すなわち水滴に近い液滴径を有する液滴として吐出することができる。塗液吐出ノズルの先端口径は1.0〜2.0mm程度の範囲が好ましく、1.0〜1.5mm程度の範囲がより好ましい。先端口径が0.5mmより小さいと、液滴が微細化し易いほかに所望の塗布量を1回で塗布できず、数回の重ね塗りをすると白化し易く、塗膜透明性や強度の低下や剥離の要因となる。一方、先端口径が3.0mmより大きいと、塗布中に液ダレなどが発生して形成膜厚に著しい部分差が生じ、塗膜には虹彩色等の外観不良が発生し易い傾向となる。供給手段としては吹上げ式、重力式、圧送式など従来の手段を用いることができるが、圧送式の供給ポンプを用いるのが好ましく、この場合、塗液吐出ノズルの吐出圧を比較的低圧で行うのが良く、0.01〜0.09MPaの吐出圧が好ましく、0.01〜0.05MPa程度がより好ましい。吐出圧が0.01MPaより小さいと、吐出塗液の液滴の大きさを均一に維持したまま基材の表面に塗布し難く、斑点の原因となり、吐出圧が0.098MPaを超えると、液滴が微細化し易いほかに塗液が飛び散り塗着効率を低下させ、均一な塗膜が形成困難となる傾向がある。塗液吐出ノズルからの吐出量は30〜200ml/分が好ましく、50〜100ml/分程度がより好ましい。吐出量が30ml/分より小さいと、水滴に近い液滴径をつなぎ合わせることが困難で斑点の原因となり好ましくなく、吐出量が200ml/分を超えると、塗布中に液ダレなどが発生して形成膜厚に著しい部分差が生じ、塗膜には虹彩色等の外観不良が発生し易い傾向となり好ましくない。供給ポンプなどの供給手段と塗液吐出ノズルは直接あるいはホースや管で連結され塗装機を構成し、供給手段により供給され塗液吐出ノズルから吹き出された塗液は被塗面まで運ばれ付着する。
【0010】
また、本発明で用いる好ましい塗装機は、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有する塗液を供給する供給手段と、エアーを供給するブロアと、上記供給手段から供給される塗液と上記ブロアから供給されるエアーとを一緒に吹き出すガンとを少なくとも具備し、上記ガンは、その先端の内側に塗液吐出ノズルを、その塗液吐出ノズルの外周側にエアー吹出口を有し、吐出した塗液の周辺を囲むようにエアーカーテンを発生させる。供給ポンプなどの供給手段とガン(塗液吐出ノズル)は直接あるいはホースや管で連結され、また、ブロアとガン(エアー吹出口)もホースや管で連結され塗装機を構成し、供給手段により供給され塗液吐出ノズルから吹き出された塗液は、その外側のブロアにより供給されエアー吹出口から吹き出される大量のエアーの流れ(これをエアーカーテンという)によって囲まれて被塗面まで運ばれ付着する。このようなエアーカーテンを発生させるブロアを備えた塗装機を用いることにより、塗液吐出ノズルから吹き出された塗液は、その外側がエアーによって囲まれているため周辺への飛散が少なく、作業者の健康阻害要因が激減し、塗液の無駄が減り、大掛かりなマスキングが不要になる。
【0011】
エアー吹出口から吹き出されるエアーは、低圧とし風量を多くするとより十分なエアーカーテンが得られるため好ましい。このため、エアーカーテンを発生させるためのブロアは、ブロア送風圧力を0.01〜0.098MPaとするのが好ましく、0.01〜0.05MPaとするのがより好ましく、0.015〜0.04MPa程度とするのがさらに好ましい。ブロア送風圧力が前記範囲であると十分な風量のエアーカーテンを発生させることができるため好ましく、ブロア送風圧力が0.01MPaより低いとエアーカーテンの発生が不十分になり好ましくなく、また、0.098MPaより高いとエアー風量が大きくなりすぎて好ましくない。エアー風量は500〜5000リットル/分程度が好ましく、1000〜3000リットル/分程度がより好ましい。エアーの温度は塗装環境温度より少なくとも10℃高くするのが好ましく、10〜50℃程度高くするのがより好ましく、10〜25℃程度高くするのがさらに好ましい。エアー温度を塗装環境温度より高く設定することにより塗膜の乾燥、硬化をあわせて行うことができる。塗装環境温度より高い温度のエアーを発生させるためには、高回転型タービンを備えたブロアを用いるのが好ましく、その回転摩擦熱によりエアーの温度を高めることができる。高回転型タービンの回転数は通常毎分21000〜25000回転程度であるが、その回転数を適宜調節することによりエアー温度を調整することができ、このようにすると特別な温風発生手段を備えなくても良い。このような塗装機としてはチロン社製の温風低圧塗装機(SG−2500、SG−2000、SG−91など)、ワグナー社製のスプレーガンなどを好ましく用いることができる。エアー温度を30℃以上高くする場合において高回転型タービンで不充分な際には所定温度の温風を発生させるための加温手段を備えることもできる。
【0012】
次に、本発明で用いる紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有する塗液は、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤、バインダ成分、多価アルコール系溶媒を少なくとも配合したものであり、塗液中に溶媒として多価アルコールを50〜95重量%配合することが重要である。多価アルコールの配合量が少なくとも上記範囲であれば、前記の塗装機で塗布すると所望の塗膜が得られ、60〜90重量%程度が好ましく、70〜90重量%程度がより好ましい。多価アルコールの配合量が50重量%より少ないと、揮発乾燥が遅く液だれになり易く、所望の塗膜が得られない。また、多価アルコールの配合量が95重量%より多いと、紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤の配合量が少なくなってしまい、それらの性能を十分活用することができず、所望の塗膜が得られない。
【0013】
塗液に配合する溶剤は、多価アルコールが必須であり、その配合量は前記のとおり塗液中に50〜95重量%の範囲である。多価アルコールは分子中に2個以上の水酸基をもつアルコールであり、2個の水酸基をもつ2価アルコールであるグリコール、3個の水酸基をもつ3価アルコールであるグリセリンなどを用いることができる。4価以上のアルコールでも使用できるが、低沸点である2価アルコールのグリコールがより好ましい。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールなどが挙げられ、その中のプロピレングリコールが最も好ましい。多価アルコールのほかに、水などの無機系溶媒、1価アルコール、エーテル、アミドなどの有機系溶媒から選ばれる少なくとも一種を配合することもでき、その配合量は塗液の粘度等を考慮して適宜調整することができる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどの1価アルコールを多価アルコールとともに用いると乾燥温度を比較的低くすることができる。
【0014】
また、塗液に配合するバインダ成分は塗膜を形成した際にバインダとして作用するものであり、公知のバインダ成分を用いることができる。例えば、シリコーン樹脂、アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、アルコキシシランの加水分解生成物、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、尿素樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、水ガラス、セメント、石膏などを適宜選択して用いることができる。本発明では、シリコーン樹脂、アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、アルコキシシランの加水分解生成物がその膜硬度が高いためより好ましい。シリコーン樹脂は、シロキサン結合の繰り返し(−Si−O−)nを主鎖とし、側鎖としてアルキル基、アリール基などをもつ重合体であり、三次元網目構造を有するシリコーンが好ましく、エポキシ変性、ポリエステル変性、アルキド変性、アクリル変性などの変性シリコーンでも良い。アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシランのモノマーを挙げることができ、そのアルコキシル基としてはメトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基などの炭素が1〜8程度のアルコキシル基を用いることができ、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素が1〜8程度のアルキル基を用いることができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノプロピルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリエチルモノエトキシシラン、トリプロピルモノプロポキシシランなどを用いることができる。また、バインダ成分として用いるアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、前記のアルコキシシランモノマーを部分的に加水分解・縮合した二量体あるいは三量体以上のオリゴマーであり、1分子中にケイ素原子を2〜9個程度含むものが好ましい。また、アルコキシシランの加水分解生成物はアルコキシシランを完全に近い程度まで加水分解縮合して粒子形状を形成したものであり、一般にオルガノシリカゾルと呼ばれるものを用いることができる。
【0015】
塗液中に配合するバインダ成分の配合量はそれぞれの用途に応じて適宜設定することができ、例えばバインダ成分を固形分に換算して塗液中に4〜49重量%配合させるのが好ましく、5〜35重量%程度がより好ましく、5〜20重量%程度がさらに好ましい。5重量%より小さい場合は、基材あるいは予め施した下地層との密着性や、塗膜強度が低下する傾向にあり好ましくなく、49重量%を超えると、形成される塗膜にバインダ成分が多すぎて紫外線遮蔽性能や赤外線遮蔽性能が十分に発揮されない傾向となるため好ましくない。
【0016】
紫外線遮蔽剤としては紫外線を反射する材料や紫外線を吸収する材料を含み、赤外線遮蔽剤としては赤外線を反射する材料や赤外線を吸収する材料を含み、また、近赤外線のみを反射あるいは吸収する材料も含まれる。紫外線遮蔽剤は公知の材料を用いることができ、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の有機化合物、二酸化チタン、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸亜鉛、酸化セリウム等の無機化合物を用いることができる。前記の二酸化チタン等のチタン化合物にはそれ自身が強い光触媒性能も有するためその性能がバインダ成分の分解要因になる場合、その粒子表面にケイ素、アルミニウム、ジルコニウム等の酸化物、水和酸化物、水酸化物の少なくとも一種を被覆すると、光触媒性能を弱めバインダ成分を分解し難くすることができる。赤外線遮蔽剤は公知の材料を用いることができ、例えば、ペリレン系化合物、アニリン系化合物、シアニン系化合物等の有機化合物、アンチモンをドープした酸化スズ、インジウムをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、雲母チタン(酸化チタン被覆マイカ)、酸化鉄被覆マイカ、塩基性炭酸鉛、オキシ塩化ビスマス、酸化セレン、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ロジウム、酸化ルテニウムや銅、銀、鉄、マンガンの金属錯体などの無機化合物、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、ニッケル、インジウム、パラジウム、スズなどの金属やそれらの合金を用いることができる。塗液中の紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤の配合量は適宜設定することができ、例えば紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を固形分に換算して塗液中に1〜46重量%配合させるのが好ましく、5〜35重量%程度がより好ましく、5〜20重量%程度がさらに好ましい。1重量%より小さい場合は、紫外線遮蔽性能や赤外線遮蔽性能が十分でない場合があるため好ましくなく、46重量%を超えると、形成される塗膜にバインダ成分が少なすぎて、塗膜強度が低下する傾向にあるため好ましくない。紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を固体として用いる場合、その粒子径や形状等には特に制限はなくどのような大きさのものでもどのような粒子形状のものでも用いることができるが、透明性を確保する必要がある場合には可視光を透過するような粒子径や形状を適宜選択して用いることができ、例えば1〜100nm程度の粒子径のものを用いるのが好ましい。
【0017】
本発明で用いる塗液には、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤、バインダ成分、多価アルコール系溶媒のほかに、分散剤、増粘剤、粘度調整剤、硬化剤、架橋剤、レベリング剤、界面活性剤、顔料、充填剤、吸着剤、脱臭剤、抗菌剤、導電剤、帯電防止剤、電磁波遮蔽剤などの添加剤を適宜配合しても良い。また、バインダ成分の重合触媒、重合開始剤を必要に応じて添加しても良い。前記の紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤、バインダ成分、多価アルコール系溶媒さらには必要に応じて添加剤をそれぞれ所定量混合して塗液とすることができ、溶媒の種類や配合量などによって塗液の粘度を調整することができる。塗液中の全固形分濃度は5〜50重量%程度が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、20〜45重量%がさらに好ましい。塗液中の全固形分濃度が5重量%未満であると、形成される塗膜に紫外線遮蔽性能や赤外線遮蔽性能が十分に発揮されない傾向となり好ましくなく、50重量%を超えると、形成される塗膜にクラックが生じ易く、また塗膜透過率の低下に繋がる傾向にあるため好ましくない。全固形分濃度に対する紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤の配合量はそれぞれの用途に応じて適宜設定することができ、2〜90重量%程度でも十分な性能が得られるため適当であり、5〜80重量%程度がさらに良い。本発明では、塗液中の全固形分濃度が5〜50重量%であって、その塗液中にバインダ成分を固形分に換算して4〜49重量%配合し、多価アルコールを50〜95重量%を少なくとも配合した塗液を用いるのが好ましい。
【0018】
前記の塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機を用いて、あるいは、エアーカーテンを発生させるブロアを備えた、塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機を用い、塗液吐出ノズルの吐出圧を0.01〜0.098MPaとして、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤とバインダ成分と多価アルコール系溶媒とを少なくとも配合し、多価アルコールの配合量が50〜95重量%である塗液を基材に塗布し乾燥して、基材の表面に紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する。塗液の塗布速度、塗布回数、吹付け高さ等は基材や塗布量設定条件等に応じて適宜調節することができる。例えば本発明では基材の縦幅または横幅1m当たり0.3〜30秒程度の短時間で行うことができ、0.5〜10秒がより好ましい。短時間で塗布しても基材1m当たり0.01〜30gの乾燥塗布量を得ることができ、0.01〜20gが好ましい範囲である。塗膜の膜厚は適宜調節することができ10nm〜50μm程度とすることができ、10nm〜10μm程度とするのが好ましく、50nm〜1.0μm程度とするのがより好ましい。また、本発明では1回の塗布でも十分な塗布量を得ることができ、1/3程度を重ねて塗りつぐ程度で十分である場合が多いが、更なる高塗布量が必要になる場合などでは必要に応じて2回〜数回重ね塗りを行うこともできる。塗布した後、風乾またはエアーカーテンのエアーで塗布面を順次乾燥し、硬化することができる。乾燥、硬化は風乾またはエアーで十分な場合が多いが、さらに高い温度での硬化が必要な場合はヒーターを使用して塗布面が300℃程度、より好ましくは150℃程度になるように加熱しても良い。加熱時間は適宜設定でき、好ましくは10〜15分程度である。バインダ成分として紫外線照射によって硬化するものを用いる場合には、塗膜に紫外線を照射して硬化させる。また、必要に応じて光沢を出す場合、塗膜表面をポリッシャーで磨くこともできる。したがって本発明では、基材の幅1m当たり0.3〜30秒間で1回塗布し、風乾またはエアーカーテンのエアーにより乾燥し溶媒を除去して、基材1m当たり0.01〜30gの乾燥塗布量を得ることができる。
【0019】
基材としては、無機質の物品、有機物の物品、それらを複合した物品などあらゆる物品を対象とすることができ、例えば、ガラス、タイル、コンクリート、モルタル、陶器などのセラミックスや金属の材質のもの、プラスチック、紙、木などの材質のものを用いることができる。具体的には、窓ガラスなどの建築物のガラス部材、建築物の外壁、ドア、柵、扉、建築物室内の壁、天井、ドア、床、食器、家具、特に浴室の床や壁、ドア、台所の天井、レンジ、換気扇、トイレの便器や壁、自動車や電車のフロントガラス、後部ガラス、サイドガラスなど種々のものに塗布することができる。また、前記の物品を基材として用いるほかに、予め基材の表面に紫外線遮蔽性塗膜や赤外線遮蔽性塗膜を形成した後、それらを加工して物品とすることもできる。塗膜を形成する基材は、その表面を予めガラスコンパウンドで磨いたりサンダーで研摩したり、水、アルコール、酸、アルカリの少なくとも一種で洗浄した後、塗液を塗布すると塗膜の接着強度を高めることができるので好ましい。ガラス基材の場合、その表面をガラスコンパウンドで汚染物質、油分の除去を行ない、さらにアルコールで洗浄した後、塗液を塗布するのが好ましい。また、基材にはそのままの状態で塗布することもできるが、基材の表面に予めプライマー処理やシーラー処理を施したり、下塗り層、中塗り層を形成した後、塗液を塗布することもできる。また、紫外線遮蔽性塗膜や赤外線遮蔽性塗膜を形成した後、その上にバインダ成分等を含む保護層を形成しても良い。
【0020】
前記の塗液を先端口径が大きい塗液吐出ノズルを用いて低圧力で塗布して形成した本発明の塗膜は、鉛筆硬度試験、耐久性試験、耐摩耗性試験の結果、十分な強度を有しており、目視判定の結果、塗布むら、色むらが生じ難く、しかも、斑点、白化、欠損、クラックがほとんどない塗膜とすることができる。また、紫外線を90%以上遮蔽することができたり、近赤外線を40%以上遮蔽できる塗膜を形成することができる。紫外線、赤外線の透過率は分光光度計を用いて測定する。また、膜厚は全固形分濃度を調整することにより適宜調節することができるため10nm〜50μm程度の膜厚、好ましくは10nm〜10μmの膜厚を得ることができ、また、50nm〜5μm程度の膜厚で透明性にも優れた塗膜を得ることができる。また、可視光透過率が85%以上の好ましい塗膜を得ることもできる。さらに、塗膜のヘイズ値が0.5%以下、さらには0.3%以下である、白化やにごりの少ない好ましい塗膜を得ることもできる。可視光透過率とヘイズ値の測定には日本電色工業社製ヘイズメーター NDH 300Aを用いる。このようにして、10nm〜10μmの膜厚を有する紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を表面に有する物品とすることができ、好ましい態様として、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を表面に有するガラス物品、あるいは、紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜をフロントガラス、後部ガラスおよびサイドガラスの少なくとも一部に有する自動車とすることができる。
【実施例】
【0021】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
実施例1
下記の塗液をスプレー式温風低圧塗装機を用いて、ソーダガラス板(150×70×6mm)に対してスプレー塗布し、常温乾燥にて塗膜を作製した。乾燥塗布量は2.8g/mであった。得られた塗膜は透明薄グレイを呈し、近赤外線を40%遮蔽でき、また紫外線を90%遮蔽できた。
塗液の組成
(1)バインダ成分:シリコーン樹脂5重量%
(2)赤外線遮蔽剤:アンチモンをドープした酸化スズ3重量%
(3)赤外線遮蔽剤:酸化ルテニウム1重量%
(4)紫外線遮蔽剤:ベンゾトリアゾール1重量%
(5)溶媒:プロピレングリコール90重量%
塗装機として、高回転型タービンのブロアを備えたスプレー式温風低圧塗装機(チロン社製SG−91)を用いて、次の条件で運転した。
(1)塗液吐出ノズルの先端口径:1.2mm
(2)吐出圧:0.018MPa
(3)吐出量:70ml/分
(4)ブロア送風圧力:0.018MPa
(5)エアーカーテンのエアー風量:2200リットル/分
(6)エアーカーテンのエアー温度:塗装作業の環境温度より15℃高い温度
(7)塗装速度:被塗物の幅1mを3秒間で塗装機を移動させた。
基材として用いたソーダガラス板の前処理として市販のガラスコンパウンドを用いて汚染物質、油分の十分な除去を行ない、さらにイソプロピルアルコールにて洗浄を行った。
【0023】
実施例2
下記の塗液を用いたこと以外は実施例1と同様にして塗膜を作製した。乾燥塗布量は8.4g/mであった。得られた塗膜は透明薄グレイを呈し、近赤外線を40%遮蔽でき、また紫外線を90%遮蔽できた。
塗液の組成
(1)バインダ成分:シリコーン樹脂20重量%
(2)赤外線遮蔽剤:アンチモンをドープした酸化スズ6重量%
(3)赤外線遮蔽剤:酸化ルテニウム1重量%
(4)紫外線遮蔽剤:ベンゾトリアゾール3重量%
(5)溶媒:プロピレングリコール70重量%
【0024】
比較例1
温風低圧塗装機の塗液吐出ノズルの先端口径を0.3mmとし、下記条件で運転すること以外は実施例1と同様にして塗膜を作製した。
(1)塗液吐出ノズルの先端口径:0.3mm
(2)吐出圧:0.018MPa
(3)吐出量:18ml/分
(4)ブロア送風圧力:0.018MPa
(5)エアーカーテンのエアー風量:2200リットル/分
(6)エアーカーテンのエアー温度:塗装作業の環境温度より15℃高い温度
(7)塗装速度:被塗物の幅1mを3秒間で塗装機を移動させた。
得られた塗膜の乾燥塗布量は0.7g/mであり、塗布むらが生じた。作製した塗膜は近赤外線遮蔽率10%、紫外線遮蔽率20%であった。
【0025】
比較例2
比較例1の温風低圧塗装機を用い、3回重ね塗りする以外は比較例1と同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の乾燥塗布量は2g/mであったが、未塗布ガラス板に対して斑点や透明性の低下が確認され、塗膜硬度も不充分であった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の塗装方法では、あらゆる物品の表面に耐久性、耐摩耗性に優れ、しかも、塗布むら、色むらが生じ難く、また、斑点、白化、欠損、クラックが生じ難い、紫外線遮蔽性塗膜あるいは赤外線遮蔽性塗膜を形成することができる。しかも、どのような作業環境下でも1回塗りで均質な塗膜を簡便に形成でき、また、透明性も十分確保することができる。このため、このような紫外線遮蔽性塗膜を活用して、入射する紫外線を遮断でき、それによって物品の日焼け、変色を防止でき、有害な紫外線から人体を守ることができる。また、赤外線遮蔽性塗膜を活用して室内や車室内の温度の上昇を抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤とバインダ成分と多価アルコール系溶媒とを少なくとも配合し、多価アルコールの配合量が50〜95重量%である塗液を、塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機を用い、塗液吐出ノズルの吐出圧を0.01〜0.098MPaとして、基材に塗布し乾燥して、基材の表面に紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法。
【請求項2】
多価アルコールが2価アルコールである請求項1に記載の塗装方法。
【請求項3】
2価アルコールがプロピレングリコールである請求項2に記載の塗装方法。
【請求項4】
多価アルコールを70〜90重量%配合した塗液を用いる請求項1に記載の塗装方法。
【請求項5】
塗液吐出ノズルからの吐出量を30〜200ml/分の範囲で塗布する請求項1に記載の塗装方法。
【請求項6】
塗液中の全固形分濃度が5〜50重量%であって、その塗液中にバインダ成分を4〜49重量%配合した塗液を用いる請求項1に記載の塗装方法。
【請求項7】
エアーカーテンを発生させるためのブロアを備えた塗装機を用いる請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項8】
ブロア送風圧力を0.01〜0.098MPaとする請求項7に記載の塗装方法。
【請求項9】
エアーカーテンのエアーの温度を塗装環境温度より少なくとも10℃高くする請求項7または8に記載の塗装方法。
【請求項10】
基材の幅1m当たり0.3〜30秒間で1回塗布し、風乾またはエアーカーテンのエアーにより乾燥し溶媒を除去して、基材1m当たり0.01〜30gの乾燥塗布量を得る請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項11】
ガラス基材の表面をガラスコンパウンドで汚染物質、油分の除去を行ない、さらにアルコールで洗浄した後、塗液を塗布する請求項1〜10のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項12】
基材が建築物のガラス部材の少なくとも一部である請求項1〜11のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項13】
基材が自動車のフロントガラス、後部ガラスおよびサイドガラスの少なくとも一部である請求項1〜11のいずれか一項に記載の塗装方法。
【請求項14】
請求項1〜13に記載の塗装方法を用いて基材の表面に形成した、10nm〜10μmの膜厚を有する紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜。
【請求項15】
請求項14に記載の紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を表面に有する物品。
【請求項16】
請求項14に記載の紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を表面に有するガラス物品。
【請求項17】
請求項14に記載の紫外線遮蔽剤および/または赤外線遮蔽剤を含有した塗膜をフロントガラス、後部ガラスおよびサイドガラスの少なくとも一部に有する自動車。

【公開番号】特開2006−334530(P2006−334530A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163518(P2005−163518)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(501282604)株式会社フミン (2)
【Fターム(参考)】