説明

紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物及び被覆物品

【解決手段】(A)酸化亜鉛微粒子の表面をAl、Si、Zr並びにSnの酸化物もしくは水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理した複合酸化亜鉛微粒子を、分散媒体中に分散させた複合酸化亜鉛微粒子分散体であって、光触媒分解性が25%以下である複合酸化亜鉛微粒子分散体、
(B)シリコーンレジン、
(C)硬化触媒、
(D)溶剤
を含有し、かつ(A)複合酸化亜鉛微粒子分散体中の複合酸化亜鉛固形分量が、(B)シリコーンレジンの固形分に対して、1〜50質量%である紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【効果】本発明によれば、硬化塗膜が可視光の透明性を維持しながら耐擦傷性、紫外線遮蔽性を発現し、更に長期の屋外暴露に耐えうる耐候性、耐久性を兼ね備えたシリコーンコーティング組成物及びそれを用いた被覆物品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンコーティング組成物及び該組成物を用いた被覆物品に関する。特に、プラスチック等の有機樹脂基材の表面にコートし、加熱硬化することにより、耐擦傷性を有すると共に、塗膜の可視光透明性、紫外線遮蔽性を兼ね備え、長期耐候性に優れる塗膜を形成し得るシリコーンコーティング組成物及び該組成物の硬化被膜を被覆させてなる被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック等の有機樹脂基材の表面に、高硬度、耐擦傷性の付与を目的とした表面保護塗膜を形成するコーティング剤として、加水分解性オルガノシランを加水分解もしくは部分加水分解して得られる組成物からなるコーティング剤、あるいは該組成物にコロイダルシリカを混合したコーティング剤が知られている。
【0003】
例えば、特開昭51−2736号公報(特許文献1)、特開昭53−130732号公報(特許文献2)、特開昭63−168470号公報(特許文献3)には、オルガノアルコキシシラン、該オルガノアルコキシシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物、及びコロイダルシリカからなり、過剰の水でアルコキシ基をシラノールに変換してなるコーティング剤が提案されている。しかし、これらのコーティング剤により得られる塗膜は、硬度が高く、耐候性もよく、基材保護用として優れているが、靭性に乏しく、10μm以上の膜厚の塗膜においては、加熱硬化中、硬化加熱炉から取り出す際、屋外で使用中、急激な温度変化が起こったときなどに容易にクラックが発生する。更に硬化触媒として保存安定性を考慮し、緩衝化された塩基性触媒が使用されているにもかかわらず、これらのコーティング用組成物は、アルコキシシランの加水分解物/縮合物が比較的低分子量体を主成分としており、これらの比較的低分子量体に含まれるシラノールの反応性は非常に高く、またその含有量も多量であるため、常温でも徐々にそれらの縮合反応が起こり、経時で高分子量化し、得られる塗膜の硬度が低下する。更にはゲル化する場合もあり、コーティング剤として使用できなくなるという安定性に関わる問題があった。これらの問題を解決するものとして、特開2005−314616号公報(特許文献4)では、ある特定の塩基性化合物を硬化触媒に用いることにより、液の保存安定性と塗膜の耐クラック性、硬度、耐擦傷性を両立した組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、長期にわたり太陽光や風雨に耐えうるコーティング膜とするためには、まだ課題を有している。コーティング層は紫外線をカットする能力に乏しく、樹脂基材、基材接着性を付与するためのプライマー層、それらの界面が紫外線で劣化・変色するという現象が見られる。これを防止するため、上記プライマー層に紫外線吸収剤を添加する方法、及びプライマーを構成する有機樹脂中に、紫外線吸収性の有機置換基を化学結合を介して導入する方法が提案されている。ここでいう紫外線吸収剤及び紫外線吸収性の有機置換基とは、例えばベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン等の置換基、及びそれらを含有する有機化合物のことを指す(特許文献5:特開平4−106161号公報、特許文献6:特許第3102696号公報、特許文献7:特開2001−47574号公報、特許文献8:特許第3841141号公報参照)。
【0005】
上記方法は、プライマー層に有機系の紫外線吸収剤を含ませ、紫外線カットする方法であるが、本来、プライマー層は、下地基材とシリコーン層との密着性向上を主目的としており、上記紫外線吸収剤の添加量が多くなりすぎると、密着力低下や透明性低下といった問題が生じる。また、長期間にわたる屋外曝露試験、促進耐候性試験において、プライマー層だけでの紫外線カットでは、有機樹脂基材の劣化、変色防止に対して十分ではないことが明らかとなってきた。
【0006】
これら欠点を補う方法として、一方では、シリコーン層にも有機系紫外線吸収剤を添加する方法も以前から行われてきた。しかしながら、これらの化合物をコーティング組成物に単純に添加しただけでは、塗膜とした後の耐久性、即ち長期曝露後の紫外線吸収剤の表面からのブリード、流出が発生し、持続性に乏しいものである。そこで、コーティング層の主成分であるシロキサン化合物と化学結合が形成できるような、シリル変性した有機系紫外線吸収剤を用いる方法もこれまで開示されている(特許文献9:特公昭61−54800号公報、特許文献10:特公平3−14862号公報、特許文献11:特公平3−62177号公報、特許文献12:特開平7−278525号公報参照)。これは、紫外線吸収剤がシロキサンマトリックスに強固に結合しているため、持続性は向上したが、その一方、本来のコーティング層の耐擦傷性が大幅に低下、あるいは可撓性低下によるミクロクラックの発生が顕著になる結果となった。このように、有機系の紫外線吸収剤を用いる方法には、耐候性を伸ばすため添加量を増やすほどシリコーン膜の硬度が低下するという本質的な欠点がある。
【0007】
それに対し、紫外線遮蔽性を有する金属酸化物微粒子を添加することによって、硬度、耐擦傷性を維持する試みも行われてきた。例えば、金属酸化物微粒子としてアナターゼ型酸化チタン微粒子(特許文献13:特開2004−238418号公報)又はルチル型酸化チタン微粒子(特許文献14:特許第2783417号公報、特許文献15:特開平11−310755号公報、特許文献16:特開2000−204301号公報)の例が開示されている。これらコーティング剤は、可視光透過性、耐擦傷性を保ちつつ、紫外線を遮断する塗膜を形成することができる。しかしながら酸化チタン微粒子は光触媒活性を有しているため、たとえ表面をケイ素化合物などで被覆したとしても光触媒活性を完全に抑制することはできず、長期間にわたる促進耐候性試験では比較的早い段階でクラックが発生するなど、耐候性は不十分であった。
【0008】
また紫外線遮蔽性を有する金属酸化物微粒子として、酸化亜鉛微粒子を用いた例も知られている(特許文献17:特開平11−209695号公報、特許文献18:特許第3347097号公報、特許文献19:特開2002−60687号公報)。一般的に酸化亜鉛微粒子の紫外線遮蔽能は酸化チタンのそれに比べやや劣るものの、光触媒活性はその分だけ低下している。しかしながら酸化亜鉛微粒子を塗膜に含有させた場合、残存する光触媒活性のため、耐候性試験を実施すると、塗膜にクラックが発生したり、剥離が生じたりする現象が避けられない。
【0009】
更に酸化亜鉛微粒子の表面を酸化物被覆することで、光触媒活性を抑制する試みも開示されている(特許文献20:特許第3509749号公報、特許文献21:特開2002−87817号公報)。表面被覆することにより、耐候性試験において、表面被覆していない酸化亜鉛微粒子よりも塗膜は長寿命化するものの、長期の試験ではクラックが発生するなど、屋外の紫外線遮蔽材としては未だ十分ではない。
【0010】
一般的に耐候性の表面保護塗膜を形成するコーティング剤は、可視光透明性も重要な特性のひとつである。紫外線遮蔽剤として金属酸化物微粒子を用いると、平均粒子径の大きさあるいは凝集のしやすさにより、可視光透明性が大きく損なわれてしまう。特許文献22:特開平11−278838号公報では、特定の方法で酸化亜鉛微粒子を製造することで、粒子径が小さく、かつ凝集しにくい分散体が得られることを開示している。この酸化亜鉛微粒子分散体をコーティング剤に配合すれば可視光透明性が良好となり得るが、実施例には記載されていない。
【0011】
以上のように、コーティング剤の耐候性、耐擦傷性などの改善について様々な試みがなされてきたが、硬化塗膜が可視光の透明性を維持しながら耐擦傷性、紫外線遮蔽性を発現し、更に長期の屋外暴露に耐えうる耐候性、耐久性を全て満たしたコーティング組成物は存在してない。
【0012】
【特許文献1】特開昭51−2736号公報
【特許文献2】特開昭53−130732号公報
【特許文献3】特開昭63−168470号公報
【特許文献4】特開2005−314616号公報
【特許文献5】特開平4−106161号公報
【特許文献6】特許第3102696号公報
【特許文献7】特開2001−47574号公報
【特許文献8】特許第3841141号公報
【特許文献9】特公昭61−54800号公報
【特許文献10】特公平3−14862号公報
【特許文献11】特公平3−62177号公報
【特許文献12】特開平7−278525号公報
【特許文献13】特開2004−238418号公報
【特許文献14】特許第2783417号公報
【特許文献15】特開平11−310755号公報
【特許文献16】特開2000−204301号公報
【特許文献17】特開平11−209695号公報
【特許文献18】特許第3347097号公報
【特許文献19】特開2002−60687号公報
【特許文献20】特許第3509749号公報
【特許文献21】特開2002−87817号公報
【特許文献22】特開平11−278838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、硬化塗膜が可視光の透明性を維持しながら耐擦傷性、紫外線遮蔽性を発現し、更に長期の屋外暴露に耐えうる耐候性、耐久性を兼ね備えたコーティング組成物及び該組成物を被覆した被覆物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、酸化亜鉛微粒子を紫外線遮蔽剤として用いるコーティング組成物において、特定の被覆を施し光触媒活性を極めて高度に抑制した複合酸化亜鉛微粒子の分散体を、コーティング組成物に配合することにより、該組成物を用いた硬化塗膜が可視光の透明性を維持しながら耐擦傷性、紫外線遮蔽性を発現し、更にこれまで実現し得なかった屋外暴露における長期間の耐候性、耐クラック性が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
即ち、本発明は、下記のシリコーンコーティング組成物及びそれを用いた被覆物品を提供する。
〔1〕(A)酸化亜鉛微粒子の表面をAl、Si、Zr並びにSnの酸化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理した複合酸化亜鉛微粒子を、分散媒体中に分散させた複合酸化亜鉛微粒子分散体であって、メチレンブルー溶液に該複合酸化亜鉛微粒子分散体を投入し、ブラックライト照射前後で653nmの吸光度を測定した際の653nmでの吸光度変化から下記式で算出される光触媒分解性評価において、ブラックライト照射12時間後の光触媒分解性が25%以下である複合酸化亜鉛微粒子分散体、
光触媒分解性(%)=[(A0−A)/A0]×100
(ここで、A0は初期吸光度を表し、Aは光照射後の吸光度を表す。)
(B)下記一般式(1):
(R1m(R2nSi(OR34-m-n (1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、m,nは、各々独立に、0又は1であり、かつm+nは、0,1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジン、
(C)硬化触媒、
(D)溶剤
を含有し、かつ(A)複合酸化亜鉛微粒子分散体中の複合酸化亜鉛固形分量が、(B)シリコーンレジンの固形分に対して、1〜50質量%である紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔2〕(A)成分中の複合酸化亜鉛微粒子が、更に下記一般式(2):
(R3x(R4ySi(X)4-x-y (2)
(式中、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシルオキシ基又はイソシアネート基であり、xは、0又は1であり、yは、0,1又は2であり、かつx+yは、0,1,2又は3である。)
で表される加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種で表面処理されていることを特徴とする〔1〕記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔3〕(A)成分中の酸化亜鉛微粒子が、亜鉛原料を直流アークプラズマ法によって加熱、気化させ、その亜鉛蒸気を酸化、冷却することにより得られたものであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔4〕(A)成分中の複合酸化亜鉛微粒子の平均粒子径(体積平均粒子径D50)が10〜200nmであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔5〕(A)成分中の分散媒体が、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類、芳香族炭化水素類、飽和炭化水素類から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔6〕(A)及び(B)成分として、請求項1乃至5のいずれか1項記載の(A)成分の存在下に式(1)のアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンを配合するようにした〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔7〕(C)成分の配合量が(B)成分のシリコーンレジンを硬化させる有効量であり、(D)成分の配合量が、シリコーンコーティング組成物の固形分濃度を1〜30質量%とする量である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔8〕更に、(E)コロイダルシリカを含むことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔9〕(E)成分のコロイダルシリカの添加量が、(B)成分のシリコーンレジン固形分100質量部に対し5〜100質量部である〔8〕記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔10〕更に、紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を配合した〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔11〕紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物を有機樹脂基材にビニル系共重合体層を設けた表面に塗布、硬化した際、得られた塗膜が、スーパーUVテスターでの耐候性試験で500時間後でも塗膜クラックが発生しないことを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
〔12〕基材の少なくとも一方の面に、直接もしくは少なくとも1種の他の層を介して、〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
〔13〕基材が有機樹脂基材である〔12〕記載の被覆物品。
〔14〕有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基を側鎖に有するビニル系共重合体からなるプライマー被膜を設け、更にそのプライマー被膜表面に〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
〔15〕有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基を側鎖に有するビニル系共重合体及びシリカゾルからなるプライマー被膜を設け、更にそのプライマー被膜表面に〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬化塗膜が可視光の透明性を維持しながら耐擦傷性、紫外線遮蔽性を発現し、更に長期の屋外暴露に耐えうる耐候性、耐久性を兼ね備えたシリコーンコーティング組成物及びそれを用いた被覆物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例で用いた分散体(A−1)中の複合酸化亜鉛微粒子の粒子径分布を示す図である。
【図2】実施例1の被膜の紫外可視吸光スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明のシリコーンコーティング組成物を詳細に説明する。
(A)成分
本発明に用いられる(A)成分は、酸化亜鉛微粒子の表面をAl、Si、Zr並びにSnの酸化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理した複合酸化亜鉛微粒子を、分散媒体中に分散させた複合酸化亜鉛微粒子分散体であって、メチレンブルー溶液に該複合酸化亜鉛微粒子分散体を投入し、ブラックライト照射前後で653nmの吸光度を測定した際の653nmでの吸光度変化から下記式で算出される光触媒分解性評価において、ブラックライト照射12時間後の光触媒分解性が25%以下である複合酸化亜鉛微粒子分散体であればよい。
光触媒分解性(%)=[(A0−A)/A0]×100
(ここで、A0は初期吸光度を表し、Aは光照射後の吸光度を表す。)
【0019】
より好ましくは、亜鉛原料を直流アークプラズマ法によって加熱、気化させ、その亜鉛蒸気を酸化、冷却することにより得られ、更にその表面をAl、Si、Zr並びにSnの酸化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理した複合酸化亜鉛微粒子を、分散媒体中に分散させた複合酸化亜鉛微粒子分散体である。
【0020】
本発明の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子における光触媒活性は十分に低いことが特徴である。一般的な酸化亜鉛微粒子は紫外線遮蔽作用を有すると同時に光触媒としても機能する。このような酸化亜鉛微粒子を紫外線遮蔽剤としてハードコート剤に使用した場合、光触媒によるバインダーの劣化に伴うクラックが発生するが、本発明の(表面被覆)酸化亜鉛微粒子は、光触媒活性が十分に低いのでクラック発生が抑制される。前述のように、本発明の(表面被覆)酸化亜鉛微粒子は、酸化亜鉛微粒子の表面をシリカ等の酸化物もしくは水酸化物で被覆し、好ましくは更に加水分解性シランにより表面処理されているので、光触媒活性を十分に低くすることができる。
【0021】
ここで、光触媒活性はメチレンブルーの光分解による吸光度変化を測定することで評価できる。濃度0.01mmol/Lのメチレンブルーの水メタノール(1:1質量比)溶液20gに、本発明の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体を(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子の固形分が0.15gになる量で投入し、30分間暗所にて撹拌した後に、15Wのブラックライトにより12時間光照射する。その後、3000rpm、15分の遠心分離を行い、上澄みの653nmのメチレンブルーの吸光度を紫外可視分光光度計にて測定し、下記式により光触媒分解性を算出する。
光触媒分解性(%)=[(A0−A)/A0]×100
ここで、A0は初期吸光度を表し、Aは光照射後の吸光度を表す。
この光触媒分解性が25%以下である(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子であればよく、23%以下がより好ましい。
【0022】
このような複合酸化亜鉛微粒子は、光触媒活性の低い複合酸化亜鉛微粒子を選択したり、複合酸化亜鉛微粒子表面を上記表面処理剤で被覆することにより、このように光触媒分解性を25%以下としたものを使用すればよい。
【0023】
酸化亜鉛微粒子の製造方法としては、直流アークプラズマ法、プラズマジェット法、高周波プラズマ法等のプラズマ法が挙げられるが、直流アークプラズマ法が光触媒活性の低い複合酸化亜鉛微粒子が得られやすく、生産性にも優れているため最も好ましい。この直流アークプラズマ法で製造した酸化亜鉛微粒子は、表面の結晶状態が良いためか極めて吸着性が強く、分散剤のアミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基等の官能基を強く吸着するので、微粒子同士が吸着することなく、分散性が良好になる。その結果、前記プラズマ法で製造された酸化亜鉛微粒子を配合した塗料を被膜化した際には、濁りがなく、透明性の高い被膜となる。
【0024】
本発明の酸化亜鉛微粒子の製造方法として好ましく使用される直流アークプラズマ法は、金属亜鉛等の亜鉛原料を消費アノード電極とし、カソード電極からアルゴンガスのプラズマフレームを発生させ、前記亜鉛原料を加熱、蒸発させ、その金属亜鉛蒸気を酸化、冷却するものである。この方法は、光散乱法で測定した平均粒子径(体積平均粒子径D50)が10〜200nmの範囲である酸化亜鉛微粒子を好適に製造することができる。
【0025】
本発明の(A)成分は、まず酸化亜鉛微粒子の表面をAl、Si、Zr並びにSnの酸化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理し、複合酸化亜鉛微粒子とする。この複合酸化亜鉛微粒子としては、例えばAl、Si、ZrあるいはSnのアルコキシドを用い、これを加水分解することで酸化物被覆を施したもの、又は、けい酸ナトリウム水溶液などを用い、中和させることにより表面に酸化物や水酸化物を析出させたもの、更には析出した酸化物や水酸化物を加熱して結晶性を高めたものなどを例示することができる。
【0026】
前記複合酸化亜鉛微粒子中における前記酸化物及び/又は水酸化物の被覆量は、0.1〜20質量%、より好適には1〜10質量%であることが好ましい。前記の被覆量が0.1質量%を下回ると、被覆によって光触媒活性を抑制する効果がなく、酸化亜鉛の耐薬品性を向上させることは難しい。一方、被覆量が20質量%を超えると、酸化亜鉛の量が80質量%未満となり、単位量あたりの紫外線遮蔽効率が低下する場合がある。
【0027】
また、複合酸化亜鉛微粒子の表面を下記式(2):
(R3x(R4ySi(X)4-x-y (2)
(式中、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシルオキシ基又はイソシアネート基であり、xは、0又は1であり、yは、0,1又は2であり、かつx+yは、0,1,2又は3である。)
で表される加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種で表面処理されている表面被覆複合酸化亜鉛微粒子であることが好ましい。
【0028】
具体的に上記の表面処理は、複合酸化亜鉛微粒子を、水及び塩基性有機化合物の存在下、式(2)で表される加水分解性シランを加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応、所謂、ゾル−ゲル法により形成される。
【0029】
式(2)中、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。また、置換一価炭化水素基の置換基としては、塩素、フッ素等のハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイルオキシ基、カルボキシ基などが挙げられる。Xはハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシルオキシ基又はイソシアネート基であり、xは、0又は1であり、yは、0,1又は2であり、かつx+yは、0,1,2又は3である。
【0030】
上記の加水分解性シランの具体例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等の4官能シラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、4−ブチルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等の3官能シラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジドデシルジメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能シラン類、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン等の1官能シラン類が挙げられる。
【0031】
また、これらの加水分解性シランの部分加水分解縮合物としては、例えば、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「Mシリケート51」多摩化学工業(株)製、商品名「MSI51」コルコート(株)製、商品名「MS51」,「MS56」三菱化学(株)製)、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「シリケート35」,「シリケート45」多摩化学工業(株)製、商品名「ESI40」,「ESI48」コルコート(株)製)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(商品名「FR−3」多摩化学工業(株)製、商品名「EMSi48」コルコート(株)製)などを使用してもよい。
【0032】
これらの中で、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、及びジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類、及びそれらの部分加水分解縮合物が好ましい。
【0033】
また、アルコキシシラン類として、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類を単独使用もしくは併用することにより、形成される表面処理層に優れた耐水性、耐湿性、耐汚染性などを付与することができる。
【0034】
これらの加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物は、1種を用いることとしても、複数種を用いることとしてもよい。但し、複合酸化亜鉛微粒子における表面処理層の形成性の点で、1官能シラン類の使用量は、全シラン類の70モル%以下となるようにすることが望ましい。また、3官能及び4官能シラン類の使用量を、全シラン類の1〜90モル%とするのが好ましい。なお、表面処理層の緻密性を向上させ、耐水性、耐酸性、耐亜鉛溶出性、光触媒作用の封鎖能などを向上させるなどの点から、その上限値は、80モル%以下とするのが更に好ましく、70モル%以下とするのが特に好ましく、その下限値は、5モル%以上とするのが更に好ましく、10モル%以上とするのが特に好ましい。
【0035】
これらの加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物の使用量は、複合酸化亜鉛微粒子中の全金属原子のモル数に対する加水分解性シラン中の珪素原子のモル数比として、0.1〜100倍モルとするのが好ましい。なお、その上限値は、単位量あたりの酸化亜鉛の含有量を大きくできるなどの点から、70倍モル以下とするのが更に好ましく、50倍モル以下とするのが特に好ましい。一方、その下限値は、複合酸化亜鉛微粒子に対する非凝集性付与などの点から、0.5倍モル以上とするのが好ましく、1倍モル以上とするのが特に好ましい。
【0036】
本発明の複合酸化亜鉛微粒子の表面処理には、加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物の加水分解、及び相当するシラノール縮合反応の触媒として塩基性有機化合物を用いることが好ましい。具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリフェニルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン等の3級アミン類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等の含窒素複素環類などが挙げられ、中でも、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン等の炭素数6〜12の3級アミン類が好ましい。
【0037】
これらの塩基性有機化合物の使用量は、加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物に対して、0.001〜10質量%とするのが好ましい。なお、その上限値は、反応の制御性、及び複合酸化亜鉛微粒子に対する非凝集性付与などの点から、8質量%以下とするのが更に好ましく、5質量%以下とするのが特に好ましく、一方、その下限値は、反応速度などの点から、0.002質量%以上とするのが更に好ましく、0.005質量%以上とするのが特に好ましい。
【0038】
また、前記加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物を加水分解させるための水の使用量は、加水分解性シラン中の加水分解性基のモル数に対して、0.1〜10倍モルとするのが好ましい。なお、その上限値は、加水分解性シランの加水分解、シラノール縮合反応の制御性などの点から、7倍モル以下とするのが更に好ましく、5倍モル以下とするのが特に好ましい。一方、その下限値は、加水分解、及びシラノール縮合反応性などの点から、0.3倍モル以上とするのが更に好ましく、0.5倍モル以上とするのが特に好ましい。
【0039】
複合酸化亜鉛微粒子の表面処理の方法において、前記加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物、前記塩基性有機化合物、及び水の添加方法や順序に特に制限はなく、例えば、前記複合酸化亜鉛微粒子を含む液相中に、まず加水分解性シラン類を加え、次いで、塩基性有機化合物と水を逐次にあるいは同時に加える方法、まず塩基性有機化合物を加え、次いで、加水分解性シラン類と水を逐次にあるいは同時に加える方法、加水分解性シラン類と塩基性有機化合物と水を予め混合しておき、加える方法などが可能である。これらの中で、水を最後に加える方法が反応の制御性の点で好ましく、先ず加水分解性シラン類を加え、次いで塩基性有機化合物を加え、最後に水を加える方法が最も好ましい。
【0040】
本発明の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体の分散安定性の観点から、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は、無機粉体表面に吸着配向するような有機官能基を有しており、微細化した微粒子を保護する役割を担うため、分散安定性の高い分散体を調製する際には必須である。有機官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基、及びこれらの塩、アミド基、アセチルアセトナート基が挙げられる。特にカルボキシル基、リン酸基、及びこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩基が好ましい。このような官能基を有する化合物であって、より分散性向上に貢献するものとして、これら官能基を側鎖に有する有機重合体であることが好ましい。より具体的には、(メタ)アクリル酸、リン酸基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、スルホン酸基含有スチレン等の官能性モノマーを少なくとも1種以上含有する有機重合体であって、より好適には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、リン酸基含有(メタ)アクリレートを含むポリアクリレート類、ポリエステルアミン類、脂肪酸アミン類、スルホン酸アミド類、カプロラクトン類、第4級アンモニウム塩等のイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン、多価アルコールエステル等の非イオン性界面活性剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性高分子、ポリシロキサンなどが好ましい。具体的な商品名としては、ポイス520、521、532A、2100(以上、花王(株)製)、Disperbyk102、161、162、163、164、180、190(BYK製)、アロンT−40(東亞合成(株)製)、ソルスパース3000、9000、17000、20000、24000(以上、ゼネカ(株)製)などが使用可能であり、これらを単独もしくは適宜混合して用いることができる。
【0041】
分散剤の使用量は、(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子固形分100質量部に対して、分散剤有効成分で0.5〜30質量部、特に1〜20質量部が好ましい。0.5質量部より少ないと、分散剤添加効果が現れないことがある。30質量部よりも多いと過剰な分散剤が塗膜の耐擦傷性、耐候性の低下をもたらすことがある。
【0042】
本発明の(A)成分の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体は、前述の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子を各種の分散媒体に分散させたものである。分散媒体としては、特に制限されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール等のアルコール類、トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類、n−ヘキサン等の飽和炭化水素類など、及びそれらの混合物を例示することができる。
【0043】
(A)成分中の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子の分散量は、特に制限されるものではなく、分散性を損なわない範囲内で可能な限り高濃度であることが好ましく、通常、分散体中に5〜80質量%、より好適には10〜60質量%含有される。分散量が5質量%未満では分散媒体の割合が高くなりすぎ、シリコーンレジン(B)を加えた後の全固形分濃度が小さすぎて、適当な膜厚の塗膜が得られない場合がある。一方、80質量%を超えると分散安定性を損なったり、高粘度化するなどのハンドリング上の不便が生じやすい場合がある。
【0044】
機械的な粉砕分散装置としては、ビーズミル、ジェットミル、アトライター、サンドミル、超音波ミル、ディスクミル等公知なものが使用可能であるが、特に、ビーズを用いたビーズミルを使用した場合、本発明の(A)成分が短時間で得られやすく、好ましい。ビーズミルの具体例としては、アシザワファインテック(株)製ミニゼータ、ラボスター、スターミルLMZ、スターミルZRS、寿工業(株)製ウルトラアペックスミル、アイメックス(株)製マックスビスコミルなどが使用可能である。分散時間は、使用されるビーズ径、ビーズ材質、ビーズミルの周速などにより変わるが、一般に0.03〜0.5mm程度のビーズ径で、アルミナ、ジルコニア等のセラミックビーズの使用が適する。ビーズミルでの粉砕時間は20分〜5時間程度、より好ましくは30分〜3時間程度が好ましい。
【0045】
前述の分散剤を使用する場合は、(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子と分散媒体を前述の装置を用いて機械的に粉砕分散する際に共存させるのが好ましい。(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子と分散媒体だけで機械的粉砕分散したのち、分散剤を添加した場合、目標とする分散体の平均粒子径まで凝集が解けにくいことがある。
【0046】
本発明の(A)成分の分散体は、光散乱法で測定した平均粒子径(体積平均粒子径D50)が10〜200nmの範囲にあるものが好ましい。200nmを超えると、塗膜の可視光透過性が低下するおそれがある。より好ましくは、体積平均粒子径D50で150nm以下が良い。また、体積平均粒子径D50が10nm未満の場合、ハンドリングの点で好ましくない場合が生じる。これら分布は測定装置に依存しないが、ここではナノトラックUPA−EX150(日機装(株)製)、あるいはLA−910(堀場製作所(株)製)にて測定した値で規定することとする。
【0047】
なお、上記(A)成分としては、市販品を使用することができ、例えばシーアイ化成(株)製ZNTAB15WT%−E16、同E15、同E16−(1)、同E16−(2)などを使用することができる。
【0048】
(A)成分の配合量は、後述する(B)成分のシリコーンレジンの固形分に対し、(A)成分中の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子固形分で1〜50質量%、より好ましくは3〜35質量%となる量を添加することが好ましい。(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子固形分が1質量%より少ない場合、期待されるほどの紫外線遮蔽能が得られない場合があり、50質量%より多いと塗膜の可視光透明性及び耐擦傷性を保つのが困難になる場合が生じる。
【0049】
(B)成分
本発明に用いられる(B)成分は、下記一般式(1):
(R1m(R2nSi(OR34-m-n (1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、m,nは、各々独立に、0又は1であり、かつm+nは、0,1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンである。
【0050】
上記式中、R1及びR2は、水素原子又は置換もしくは非置換の好ましくは炭素数1〜12、特に1〜8の一価炭化水素基であり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3’,3’’−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、γ−イソシアネートプロピル基等の(メタ)アクリロキシ、エポキシ、メルカプト、アミノ、イソシアネート基置換炭化水素基などを例示することができる。また、複数のイソシアネート基置換炭化水素基同士が結合したイソシアヌレート基も例示することができる。これらの中でも、特に耐擦傷性や耐候性が要求される用途に使用する場合にはアルキル基が好ましく、靭性や染色性が要求される場合にはエポキシ、(メタ)アクリロキシ、イソシアヌレート置換炭化水素基が好ましい。
【0051】
また、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基を例示することができる。これらの中でも、加水分解縮合の反応性が高いこと、及び生成するアルコールR3OHの蒸気圧が高く、留去のし易さなどを考慮すると、メチル基、エチル基が好ましい。
【0052】
上記式の例としては、m=0、n=0の場合、一般式:Si(OR34で表されるテトラアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物(a−1)である。このようなテトラアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「Mシリケート51」多摩化学工業(株)製、商品名「MSI51」コルコート(株)製)、商品名「MS51」、「MS56」三菱化学(株)製)、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「シリケート35」、「シリケート45」多摩化学工業(株)製、商品名「ESI40」、「ESI48」コルコート(株)製)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(商品名「FR−3」多摩化学工業(株)製、商品名「EMSi48」コルコート(株)製)などを挙げることができる。
【0053】
また、m=1、n=0あるいはm=0、n=1の場合、一般式:R1Si(OR33あるいはR2Si(OR33で表されるトリアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物(a−2)である。このようなトリアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート基同士が結合したトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「KC−89S」、「X−40−9220」信越化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシランとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「X−41−1056」信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0054】
m=1、n=1の場合、一般式:(R1)(R2)Si(OR32で表されるジアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物(a−3)である。このようなジアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物の具体例としては、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0055】
(B)成分のシリコーンレジンは、前記(a−1)、(a−2)及び(a−3)を任意の割合で使用して調製すればよいが、更に保存安定性、耐擦傷性、耐クラック性を向上させるには、(a−1)、(a−2)、(a−3)の合計100Siモル%に対して、(a−1)を0〜50Siモル%、(a−2)を50〜100Siモル%、(a−3)を0〜10Siモル%の割合で使用することが好ましく、更には(a−1)を0〜30Siモル%、(a−2)を70〜100Siモル%、(a−3)を0〜10Siモル%の割合で使用することが好ましい。この際、主成分となる(a−2)が50Siモル%未満では、樹脂の架橋密度が小さくなるために硬化性が低く、また硬化膜の硬度が低くなる傾向がある。一方、(a−1)が50Siモル%より過剰に用いられると、樹脂の架橋密度が高くなりすぎ、靭性が低下してクラックを回避しにくくなる場合がある。
【0056】
なお、Siモル%は全Siモル中の割合であり、Siモルとは、モノマーであればその分子量が1モルであり、2量体であればその平均分子量を2で割った数が1モルである。
【0057】
(B)成分のシリコーンレジンを製造するに際しては、(a−1)、(a−2)、(a−3)を公知の方法で(共)加水分解・縮合させればよい。例えば、(a−1)、(a−2)、(a−3)のアルコキシシランもしくはその部分加水分解縮合物の単独又は混合物を、pHが1〜7.5、好ましくは2〜7の水で(共)加水分解させる。この際、水中にシリカゾル等の金属酸化物微粒子が分散されたものを使用してもよい。このpH領域に調整するため及び加水分解を促進するために、フッ化水素、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタール酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸及び無機酸、もしくは表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒、あるいは酸性の水分散シリカゾル等の水分散金属酸化物微粒子を触媒に用いてもよい。また加水分解時にシリカゾル等の金属酸化物微粒子を水もしくは有機溶剤中に分散させたものを共存させてもよい。更に前述した(A)成分である(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体において、分散媒が水、あるいは水溶性の有機溶剤である場合、この分散体共存下にて、水、酸性の加水分解触媒、及びアルコキシシランを混合することによって、加水分解・縮合反応をさせてもよい。この場合、(A)成分中の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子の表面とアルコキシシランの加水分解縮合物が一部反応する可能性があるが、それにより(A)成分中の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子の分散性が向上するためより好ましい。
【0058】
この加水分解において、水の使用量は(a−1)、(a−2)及び(a−3)のアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して水20質量部〜3000質量部の範囲であればよいが、過剰の水の使用は、装置効率の低下ばかりでなく、最終的な組成物とした場合、残存する水の影響による塗工性、乾燥性の低下をも引き起こすおそれがある。更に保存安定性、耐擦傷性、耐クラック性を向上させるためには、50質量部以上150質量部未満とすることが好ましい。水が少ないと、得られるシリコーンレジンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量が後述する最適領域にまで大きくならないことがあり、多すぎると、得られるシリコーンレジンに含まれる原料(a−2)に由来する単位式:R’SiO(3-p)/2(OX)p{ただし、R’はR1又はR2であり、Xは水素原子又はR3であり、R1、R2、R3は前記と同じであり、pは0〜3の整数である。}で表される単位中のR’SiO3/2{ただし、R’は前記と同じ}で表される単位が、塗膜の耐クラック性を維持するための最適範囲にまで達しないことがある。
【0059】
加水分解は、アルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物中に水を滴下又は投入したり、逆に水中にアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解縮合物を滴下又は投入したりしてもよい。この場合、有機溶剤を含有してもよいが、有機溶剤を含有しない方が好ましい。これは有機溶剤を含有するほど、得られるシリコーンレジンのGPC分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量が小さくなる傾向があるためである。
【0060】
(B)成分のシリコーンレジンを得るには、前記の加水分解に続いて、縮合させることが必要である。縮合は、加水分解に続いて連続的に行えばよく、通常、液温が常温又は100℃以下の加熱下で行われる。100℃より高い温度ではゲル化する場合がある。更に80℃以上、常圧又は減圧下にて、加水分解で生成したアルコールを留去することにより、縮合を促進させることができる。更に、縮合を促進させる目的で、塩基性化合物、酸性化合物、金属キレート化合物等の縮合触媒を添加してもよい。縮合工程の前又は最中に、縮合の進行度及び濃度を調整する目的で有機溶剤を添加してもよく、またシリカゾル等の金属酸化物微粒子を水もしくは有機溶剤中に分散させたものや、本発明の(A)成分である(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体を添加してもよい。一般的にシリコーンレジンは縮合が進行すると共に、高分子量化し、水や生成アルコールへの溶解性が低下していくため、添加する有機溶剤としては、シリコーンレジンをよく溶解し、沸点が80℃以上の比較的極性の高い有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤の具体例としてはイソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等のエステル類などを挙げることができる。
【0061】
この縮合により得られたシリコーンレジンのGPC分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量は、1500以上であることが好ましく、1500〜50000であることがより好ましく、2000〜20000であることが更に好ましい。分子量がこの範囲より低いと、塗膜の靱性が低く、クラックが発生しやすくなる傾向があり、一方、分子量が高すぎると、硬度が低くなる傾向があり、また塗膜中の樹脂が相分離するために塗膜白化を引き起こす場合がある。
【0062】
(C)成分
(C)成分は、通常、シリコーンコーティング組成物に用いられる硬化触媒が使用できる。具体的には、シリコーンレジン(B)中に含まれる、シラノール基、アルコキシ基等の縮合可能基が縮合する反応を促進する硬化触媒であり、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムアセテート、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート等の含金属化合物類;p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸等の酸性化合物類などが挙げられる。この中で特にプロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。
【0063】
更に、硬化性、耐クラック性に加え、コーティング組成物の保存安定性を維持するためにより適した硬化触媒として、以下のものが使用可能である。
下記一般式(3):
〔(R5)(R6)(R7)(R8)M〕+・X- (3)
(式中、R5,R6,R7,R8は、各々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基であって、R5,R6,R7,R8における各々のTaft−Duboisの置換基立体効果定数Esの合計が−0.5以下であり、Mは、アンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオンであり、X-は、ハロゲンアニオン、ヒドロキシドアニオン、又は炭素数1〜4のカルボキシレートアニオンである。)
で表される分子中に芳香族基を含まない化合物である。
【0064】
ここで、Taft−Duboisの置換基立体効果定数Esとは、置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度におけるメチル基CH3を基準にした相対速度であり、下記式で表される{J.Org.Chem.45,1164(1980)、J.Org.Chem.64,7707(1999)参照}。
Es=log(k/k0)
(式中、kは、特定条件下での置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度であり、k0は、同一条件下でのメチル基置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度である。)
【0065】
このTaft−Duboisの置換基立体効果定数Esは、置換基の立体的嵩高さを表す一般的な指標であり、例えば、メチル基:0.00、エチル基:−0.08、n−プロピル基:−0.31、n−ブチル基:−0.31となっており、Esが小さいほど立体的に嵩高いことを示している。
【0066】
本発明においては、式(3)中のR5,R6,R7,R8におけるEsの合計が−0.5以下であることが好ましい。Esの合計が−0.5より大きいと、コーティング組成物としての保存安定性が低下したり、塗膜化した際や耐水試験後にクラックや白化が発生したり、密着性、特に耐水密着性、煮沸密着性が低下するおそれがある。これはEsの合計が−0.5より大きい場合(例えばR5,R6,R7,R8がメチル基)、相当する式(2)で表される硬化触媒は触媒活性が強くなるものの、コーティング組成物の保存安定性は低下する傾向があり、またその塗膜は非常に吸湿し易くなり、耐水試験後の塗膜異常を引き起こす場合がある。なお、R5,R6,R7,R8におけるEsの合計は、通常、−3.2以上、特に−2.8以上であることが好ましい。
【0067】
上記式中、R5,R6,R7,R8のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基などが挙げられる。
【0068】
また、Mはアンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオンであり、X-はハロゲンアニオン、ヒドロキシドアニオン又は炭素数1〜4のカルボキシレートアニオンであり、ヒドロキシドアニオン又はアセテートアニオンであることが好ましい。
【0069】
このような硬化触媒の具体例としては、例えば、テトラn−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−ペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラキス(トリフロロメチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(トリフロロメチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルt−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−プロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラn−ブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラn−ペンチルホスホニウムヒドロキシド、テトラn−ヘキシルホスホニウムヒドロキシド、テトラシクロヘキシルホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(トリフロロメチル)ホスホニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムヒドロキシド、トリメチル(トリフロロメチル)ホスホニウムヒドロキシド、トリメチルt−ブチルホスホニウムヒドロキシド等のヒドロキシド類、これらヒドロキシド類とハロゲン酸との塩、及び炭素数1〜4のカルボン酸との塩を挙げることができる。これらの中でも、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセテートが好ましい。これらは1種単独で使用しても2種以上を併用してもよく、更には前述の公知の硬化触媒と併用してもよい。
【0070】
(C)成分の配合量は、(B)成分のシリコーンレジンを硬化させるのに有効な量であればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、シリコーンレジンの固形分に対し、0.0001〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%である。0.0001質量%未満であると硬化が不十分となり、硬度が低下する場合があり、30質量%より多いと塗膜にクラックが発生しやすくなる場合や、耐水性が低下する場合がある。
【0071】
(D)成分
(D)成分は溶剤であり、(A)〜(C)成分を溶解する又は分散するものであれば特に限定されるものではないが、極性の高い有機溶剤が主溶剤であることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等のエステル類などを挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を使用することができる。
【0072】
(D)成分の添加量としては、本発明のシリコーンコーティング組成物の固形分濃度を1〜30質量%、特に5〜25質量%とする量を用いることが好ましい。この範囲外では該組成物を塗布、硬化した塗膜に不具合が生じることがある。上記範囲未満の濃度では塗膜にタレ、ヨリ、マダラが発生し易くなり、所望の硬度、耐擦傷性が得られない場合がある。また上記範囲を超える濃度では、塗膜のブラッシング、白化、クラックが生じ易くなるおそれがある。
【0073】
(E)成分
(E)成分のコロイダルシリカは、塗膜の硬度、耐擦傷性を特に高めたい場合、適量添加することができる。粒子径5〜50nm程度のナノサイズのシリカが水や有機溶剤の媒体にコロイド分散している形態であり、市販されている水分散、有機分散タイプが使用可能である。具体的には、日産化学工業(株)製スノーテックス−O、OS、OL、メタノールシリカゾルなどが挙げられる。コロイダルシリカの添加量は、(B)成分のシリコーンレジン固形分100質量部に対し、0〜100質量部、好ましくは5〜100質量部、特に5〜50質量部がよい。
【0074】
本発明のシリコーンコーティング組成物には、必要に応じて、pH調整剤、レベリング剤、増粘剤、顔料、染料、金属酸化物微粒子、金属粉、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、熱線反射・吸収性付与剤、可撓性付与剤、帯電防止剤、防汚性付与剤、撥水性付与剤などを本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で添加することができる。
【0075】
本発明のシリコーンコーティング組成物の更なる保存安定性を得るために、液のpHを、好ましくは2〜7、より好ましくは3〜6にするとよい。pHがこの範囲外であると、貯蔵性が低下することがあるため、pH調整剤を添加し、上記範囲に調整することもできる。シリコーンコーティング組成物のpHが上記範囲外にあるときは、この範囲より酸性側であれば、アンモニア、エチレンジアミン等の塩基性化合物を添加してpHを調整すればよく、塩基性側であれば、塩酸、硝酸、酢酸、クエン酸等の酸性化合物を用いてpHを調整すればよい。しかし、その調整方法は特に限定されるものではない。
【0076】
本発明のシリコーンコーティング組成物の硬化塗膜に、有機樹脂や木材製品を基材とした場合、基材の黄変、表面劣化を防ぐ目的で、本発明の(A)成分以外の紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を添加することもできるが、本発明のシリコーンコーティング組成物と相溶性が良好で、かつ揮発性の低い紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤が好ましい。
【0077】
紫外線吸収剤としては、(A)成分で述べた(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子以外で、紫外線遮蔽能を更に高めるため、公知の無機酸化物、例えば酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどであり、光触媒活性の抑制されたものが好ましい。また、チタン、亜鉛、ジルコニウム等の金属キレート化合物、及びこれらの(部分)加水分解物、縮合物などを用いることができる。有機系の例として、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系である化合物誘導体が好ましい。更に側鎖にこれら紫外線吸収剤を含有するビニルポリマー等の重合体、及び他のビニルモノマーとの共重合体、又はシリル化変性された紫外線吸収剤、その(部分)加水分解縮合物でもよい。
【0078】
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジエトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジプロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−プロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−ブトキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−t−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノンの(共)重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの(共)重合体、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応物、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応物、これらの(部分)加水分解物などが挙げられる。これらの有機系紫外線吸収剤は2種以上を併用してもよい。
【0079】
紫外線吸収剤の配合量は、シリコーンコーティング組成物の固形分に対して0〜100質量%が好ましく、配合する場合、好ましくは0.3〜100質量%、特に0.3〜30質量%である。
【0080】
紫外線安定剤としては、分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有し、本発明のシリコーンコーティング組成物との相溶性がよく、また低揮発性のものが好ましい。紫外線光安定剤の具体例としては、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、また、光安定剤を固定化させる目的で、特公昭61−56187号公報にあるようなシリル化変性の光安定剤、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルトリメトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルメチルジメトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルトリエトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルメチルジエトキシシラン、更にこれらの(部分)加水分解物等が挙げられ、これらの光安定剤は2種以上併用してもよい。
【0081】
紫外線光安定剤の配合量は、シリコーンコーティング組成物の固形分に対して0〜10質量%であることが好ましい。配合する場合、好ましくは0.03〜10質量%、特に0.03〜7.5質量%である。
【0082】
本発明のシリコーンコーティング組成物は、上記各成分の所定量を常法に準じて混合することにより得ることができる。
【0083】
このようにして得られたシリコーンコーティング組成物は、基材の少なくとも一方の面に、直接もしくは少なくとも1種の他の層を介して、上記シリコーンコーティング組成物を塗布、硬化することにより被膜を形成した被覆物品を得ることができる。
【0084】
ここで、シリコーンコーティング組成物の塗布方法としては、通常の塗布方法で基材にコーティングすることができ、例えば、刷毛塗り、スプレー、浸漬、フローコート、ロールコート、カーテンコート、スピンコート、ナイフコート等の各種塗布方法を選択することができる。
【0085】
また、ここで用いられる基材としては、特に限定されることはないが、プラスチック成形体、木材系製品、セラミックス、ガラス、金属、あるいはそれらの複合物などが挙げられ、各種プラスチック材料(有機樹脂基材)が好適に使用され、特にポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、変性アクリル樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂、含硫黄樹脂などが好ましい。更にこれらの樹脂基材の表面が処理されたもの、具体的には、化成処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸やアルカリ液での処理、及び基材本体と表層が異なる種類の樹脂で形成されている積層体を用いることもできる。積層体の例としては、共押し出し法やラミネート法により製造されるポリカーボネート樹脂基材の表層にアクリル樹脂層もしくはウレタン樹脂層が存在する積層体、又はポリエステル樹脂基材の表層にアクリル樹脂層が存在する積層体などが挙げられる。
【0086】
本発明のシリコーンコーティング組成物を塗布した後の硬化は、空気中に放置して風乾させてもよいし、加熱してもよい。硬化温度、硬化時間は限定されるものではないが、基材の耐熱温度以下で10分〜2時間加熱するのが好ましい。具体的には80〜135℃で30分〜2時間加熱するのがより好ましい。
【0087】
塗膜の厚みは特に制限はなく、使用用途により適宜選択すればよいが、0.1〜50μmであることが好ましく、塗膜の硬さ、耐擦傷性、長期的に安定な密着性、及びクラックが発生しないことを満たすためには、特に1〜20μmが好ましい。
【0088】
本発明のシリコーンコーティング組成物は、塗膜とした時の可視光透過性が特徴のひとつである。その指標として、塗膜のヘイズ(Haze)の値の上限を定めることができる。ヘイズは一般に膜厚が大きいほど大きくなるので、ここでは膜厚5μm以下でのヘイズが2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下を満たすものが好ましい。塗膜のヘイズは、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)で測定した値とする。
【0089】
本発明のシリコーンコーティング組成物は、塗膜とした際の耐擦傷性がもうひとつの特徴である。その指標として、塗膜の耐擦傷性ΔHzで上限を定めることができる。ΔHzはASTM1044に準じ、テーバー摩耗試験にて摩耗輪SC−10Fを装着、荷重500gの下での500回転後のヘイズを測定、試験前後のヘイズ差(ΔHz)である。膜厚5μm以下でのΔHzが15.0以下、好ましくは13.0以下、より好ましくは10.0以下を満たすものが好ましい。
【0090】
本発明のシリコーンコーティング組成物は、塗膜とした場合の耐候性がもうひとつの特徴である。その指標として、塗膜の耐候性試験での塗膜クラックの有無で定めることができる。耐候性試験での塗膜クラックの有無は、岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスターW−151を使用し、[ブラックパネル温度63℃、湿度50%RH、照度50mW/cm2、降雨10秒/1時間で5時間]→[ブラックパネル温度30℃、湿度95%RHで1時間]を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す条件で、250時間、好ましくは300時間、より好ましくは500時間で塗膜クラックの発生がないものが好ましい。なお塗膜クラックは目視にて観察する。
【0091】
本発明のシリコーンコーティング組成物は、樹脂基材の表面に、直接又は必要に応じてプライマー層や紫外線吸収層、印刷層、記録層、熱線遮蔽層、粘着層、無機蒸着膜層などを介して形成することもできる。
【0092】
ここでプライマー層として、アクリル樹脂系プライマーが好ましく、更に、具体的には有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基を側鎖に有するビニル系共重合体からなるプライマーがより好ましい。このようなプライマーとしては、特許第4041968号公報、特開2008−120986号公報、特開2008−274177号公報の例が挙げられる。
【0093】
前述のプライマーの主成分である有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基が側鎖に結合したビニル系重合体としては、アルコキシシリル基がSi−C結合を介してビニル重合体主鎖と結合していることが好ましく、更に有機紫外線吸収性基もビニル重合体主鎖と結合していることが好ましい。このような重合体は、アルコキシシリル基がSi−C結合を介して結合したビニル系単量体(a)と、有機紫外線吸収性基を有するビニル系単量体(b)と、共重合可能な他の単量体(c)とからなる単量体成分を共重合して得ることができる。
【0094】
また、プライマー構成成分として、有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基とが側鎖に結合したビニル系重合体以外に、有機溶剤に分散したコロイダルシリカを含むものがより好ましい。この有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン/n−ブタノールの混合物を挙げることができる。中でも有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基とが側鎖に結合したビニル系重合体の溶解性を考慮すると、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。
【0095】
このようなプライマーを有機樹脂基材上に塗工し、該被膜の表面に本発明のシリコーンコーティング組成物を塗布、硬化させた被覆物品は、本発明のコーティング層での紫外線遮蔽能に加え、プライマー層中の有機紫外線吸収性基との相乗効果により、より高度の耐候性が得られる。
【実施例】
【0096】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は質量%、部は質量部を示す。また、粘度はJIS Z8803に基づいて測定した25℃での値であり、重量平均分子量は、標準ポリスチレンを基準としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0097】
<(A)成分の(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体>
A−1:シーアイ化成(株)製 ZNTAB15WT%−E16(2)(直流アークプラズマ法で製造した酸化亜鉛微粒子をシリカ被覆した後、メチルトリメトキシシランで表面処理してから、分散剤を用いて、混合アルコールに分散した分散体、固形分濃度15%、ナノトラックUPA−EX150(日機装(株)製)を用いて測定した結果を図1に示す。平均粒子径(体積平均粒子径D50)105nm)。
A−2:シーアイ化成(株)製ZNTAB15WT%−E15(直流アークプラズマ法で製造した酸化亜鉛微粒子をアルミナ被覆した後、分散剤を用いて、混合アルコールに分散した分散体、固形分濃度15%、平均粒子径(体積平均粒子径D50)98nm)。
【0098】
<(B)成分のシリコーンレジンの合成>
[合成例1]
2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン287g(2.11Siモル)を仕込み、液温が約10℃になるよう冷却後、スノーテックスO(日産化学工業(株)製:水分散シリカゾル、平均15〜20nm、SiO220%含有品)211g、0.25Nの酢酸水溶液93gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで、60℃にて3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、シクロヘキサノン300gを投入し、加水分解で生成したメタノールを、常圧にて液温が92℃になるまで加熱留去すると共に、縮合させた後、希釈剤としてイソプロパノール400g、レベリング剤としてKP−341(信越化学工業(株)製)0.5g、酢酸1.6g、及び25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)1.6gを加え、撹拌した後、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度19.2%、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析による重量平均分子量2510、分散度1.84の無色透明のシリコーンレジン溶液(B−1)を得た。
【0099】
[合成例2]
2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン321g(2.36Siモル)、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン21g(0.13Siモル)、シリケート35(多摩化学工業(株)製:テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物、平均2量体)56g(0.33Siモル)を仕込み、よく混合させた。次いで、液温が約10℃になるよう冷却後、0.25Nの酢酸水溶液308gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで、60℃にて3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300gを投入し、加水分解で生成したメタノール及びエタノールを、常圧にて液温が92℃になるまで留去すると共に、加熱縮合させた後、希釈剤としてイソブタノール400g及びレベリング剤としてKP−341(信越化学工業(株)製)0.5g及び0.25%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)134gを加え、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度19.5%、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析による重量平均分子量3180、分散度1.96の無色透明のシリコーンレジン溶液(B−2)を得た。
【0100】
[合成例3]
2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン259g(1.90Siモル)、イソシアヌレートシランX−12−965(信越化学工業(株)製:トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート)43g(0.21Siモル)を仕込み、よく混合させた。次いで、液温が約10℃になるよう冷却後、スノーテックスO(日産化学工業(株)製:水分散シリカゾル、平均15〜20nm、SiO220%含有品)211g、0.25Nの酢酸水溶液93gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで、60℃にて3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、シクロヘキサノン300gを投入し、加水分解で生成したメタノールを、常圧にて液温が92℃になるまで加熱留去すると共に、縮合させた後、希釈剤としてイソプロパノール400g、レベリング剤としてKP−341(信越化学工業(株)製)0.5g、酢酸1.6g、及び25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)1.6gを加え、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度21.3%、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析による重量平均分子量5490、分散度2.90の無色透明のシリコーンレジン溶液(B−3)を得た。
【0101】
<(A)成分表面被覆複合酸化亜鉛微粒子分散体共存下での(B)成分シリコーンレジンの合成>
[合成例4]
2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン287g(2.11Siモル)を仕込み、液温が約10℃になるよう冷却後、スノーテックスO(日産化学工業(株)製:水分散シリカゾル、平均15〜20nm、SiO220%含有品)211g、0.25Nの酢酸水溶液93gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで、60℃にて3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、シクロヘキサノン300g、表面被覆複合酸化亜鉛微粒子分散体A−1 57gを投入し、加水分解で生成したメタノールを、常圧にて液温が90℃になるまで留去すると共に、縮合させた後、希釈剤としてイソプロパノール400g、レベリング剤としてKP−341(信越化学工業(株)製)0.5g、酢酸1.6g、及び25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)1.6gを加え、撹拌した後、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度19.6%、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析による重量平均分子量2740、分散度1.88の白色の表面被覆複合酸化亜鉛微粒子含有のシリコーンレジン溶液(AB−1)を得た。
【0102】
<有機系紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基が側鎖に結合したビニル系重合体からなるプライマーの合成>
[合成例5]
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えた2リットルフラスコに溶剤としてジアセトンアルコール152gを仕込み、窒素気流下にて80℃に加熱した。ここに予め調製しておいた単量体混合溶液(2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2−メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(RUVA−93、大塚化学(株)製)67.5g、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを90g、メチルメタクリレート270g、グリシジルメタクリレート22.5g、ジアセトンアルコール350g)を混合したもののうち240g及び予め調製しておいた重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.3gをジアセトンアルコール177.7gに溶解した溶液のうち54gを順次投入した。80℃で30分反応させた後、残りの単量体混合溶液と残りの重合開始剤溶液を同時に80〜90℃で1.5時間かけて滴下した。更に80〜90℃で5時間撹拌した。
得られたトリメトキシシリル基及び有機系紫外線吸収性基が側鎖に結合したビニル系重合体の粘度は5050mPa・s、またその共重合体中の紫外線吸収性単量体の含有量は15%、トリメトキシシリル基がC−Si結合を介して側鎖に結合したビニル系単量体量は20%であった。また、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析による重量平均分子量は60800であった。
こうして得られたビニル系重合体100部に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに分散したコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「PMA−ST」、固形分濃度30%、一次粒子径10〜15nm)23部、ジアセトンアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが質量比1/1の混合溶剤110部をよく撹拌した後、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度20.4%の無色透明のプライマー組成物(P−1)を得た。
【0103】
<シリコーンコーティング組成物の調製及び硬化塗膜評価>
[実施例1]
合成例1で得られたシリコーンレジン溶液(B−1)100部に対し、表面被覆複合酸化亜鉛微粒子分散体(A−1)40部(有姿)を添加、混合することにより、コーティング組成物(1)を得た。
得られた組成物(1)及び比較としてシリコーンレジン溶液(B−1)単独を、石英基板にフローコートした後、135℃/60分加熱硬化することによって、膜厚約2.5μmの薄膜を得た。これらの薄膜を紫外可視分光光度計にて、光吸収スペクトルを測定した結果を図2に示した。組成物(1)の硬化被膜は300nm以下の光を吸収していること、及び可視域においては、透明性が確保されていることが確認された。
【0104】
[実施例2〜6]
合成例5のプライマー組成物(P−1)を、表面を清浄化した0.5mmポリカーボネート樹脂板(ユーピロンシート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)に硬化塗膜として約6〜8μmになるようにフローコートし、135℃にて45分加熱硬化させた。更に該塗膜上に、合成例1〜3のシリコーンレジン溶液(B−1〜B−3)、合成例4の表面被覆複合酸化亜鉛微粒子含有のシリコーンレジン溶液(AB−1)、(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子分散体(A−1、A−2)及び各種添加剤を混合したものを硬化塗膜として約3〜5μmになるようにフローコートし、135℃にて60分加熱硬化させた。このようにして得られた積層塗膜を試験片とし、下記の物性評価の結果を表1に示した。
【0105】
[比較例1〜5]
表2に示した比率にて上記各成分を混合することによって、コーティング組成物を調製した。得られたコーティング組成物を実施例2同様、合成例5のプライマー組成物(P−1)を介して、塗工した。得られた塗膜に関して、下記の評価を行い、その結果を表2に示す。
なお、実施例及び比較例に用いた略号のうち、合成例で説明していない略号は以下の通りである。
【0106】
<添加剤>
F−1:金属キレート化物の加水分解縮合物
チタンテトライソプロポキシドとアセチルアセトンとを反応させ、アンモニア水により加水分解した加水分解縮合物の固形分濃度20%のメタノール溶液。
F−2:可撓性付与剤
ポリメチルシルセスキオキサン樹脂(KR−220L、固形分100%、信越化学工業(株)製)の固形分濃度20%のイソプロパノール溶液。
F−3:ヒンダードアミン系光安定剤
N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(サンドバー3058Liq.クラリアント・ジャパン(株)製)。
F−4:有機系紫外線吸収剤
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(ケミゾーブ10、ケミプロ化成(株)製)。
F−5:酸化チタン微粒子分散体
オプトレイク1120Z(11RU−7・A8)、固形分濃度20%、日揮触媒化成(株)製。
F−6:直流アークプラズマ法でない方法で製造した酸化亜鉛微粒子分散体
ZS−303−IPA、固形分濃度30%、平均粒子径(体積平均粒子径D50)81nm、住友大阪セメント(株)製。
F−7:シーアイ化成(株)製ZNAP15WT%−G0
直流アークプラズマ法で製造した酸化亜鉛微粒子を、分散剤を用いて、混合アルコールに分散した分散体、固形分濃度15%、平均粒子径(体積平均粒子径D50)89nm。
【0107】
<酸化亜鉛微粒子分散体の光触媒活性の測定>
濃度0.01mmol/Lのメチレンブルーの水メタノール(1:1質量比)溶液20gに、表面被覆複合酸化亜鉛微粒子分散体A−1,A−2、酸化チタン微粒子分散体F−5、及び酸化亜鉛微粒子分散体F−6,F−7を酸化物微粒子の固形分が0.15gになる量を投入し、30分間暗所にて撹拌した後に、15Wのブラックライトにより12時間光照射する。その後、3000rpm、15分遠心分離し、上澄みの653nmのメチレンブルーの吸光度を紫外可視分光光度計にて測定し、下記式により光触媒分解性を算出し、その結果を表3に示した。
光触媒分解性(%)=[(A0−A)/A0]×100
ここで、A0は初期吸光度を表し、Aは光照射後の吸光度を表す。
【0108】
硬化被膜の評価方法
<分散安定性>
組成物を室温1週間放置した後、配合した(表面被覆)複合酸化亜鉛微粒子の分散の状態を下記の基準で評価した。
○:沈降なく、分散している
×:凝集、沈降している
<塗膜透明性>
塗膜のヘイズをヘイズメーター(NDH2000:日本電色工業(株))にて測定した。
【0109】
<耐擦傷性>
ASTM1044に準じ、テーバー摩耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着、荷重500g下での500回転後のヘイズを測定し、試験後と試験前のヘイズ差(ΔHz)を測定した。
【0110】
<初期密着性>
JIS K5400に準じ、カミソリ刃を用いて、塗膜に2mm間隔で縦、横6本ずつ切れ目を入れて25個の碁盤目を作製し、セロテープ(登録商標、ニチバン(株)製)をよく付着させた後、90°手前方向に急激に剥がした時、塗膜が剥離せずに残存したマス目数(X)を、X/25で表示した。
【0111】
<耐水性外観及び耐水密着性>
試験片を沸騰水中に2時間浸漬した後に、目視にて外観観察、及び前記初期密着性と同様にして密着性試験を行った。
【0112】
<耐候性試験>
岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスターW−151を使用し、[ブラックパネル温度63℃、湿度50%RH、照度50mW/cm2、降雨10秒/1時間で5時間]→[ブラックパネル温度30℃、湿度95%RHで1時間]を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す条件で250時間、500時間の試験を行った。耐候性試験前後に、JIS K7103に準拠し、黄変度を、また耐候塗膜クラック性、耐候塗膜剥離の状態を下記評価基準にて目視又は顕微鏡(倍率250倍)にて観察した。
【0113】
<耐候塗膜クラック性>
耐候性試験後の塗膜外観を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:僅かにクラックあり
×:塗膜全体にクラックあり
【0114】
<耐候塗膜剥離>
耐候性試験後の塗膜の状態を下記の基準で評価した。
○ :異常なし
△1:シリコーンコーティング組成物層とプライマー組成物層との間で一部剥離
△2:プライマー組成物層と基材との間で一部剥離
×1:シリコーンコーティング組成物層とプライマー組成物層との間で全面剥離
×2:プライマー組成物層と基材との間で全面剥離
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化亜鉛微粒子の表面をAl、Si、Zr並びにSnの酸化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理した複合酸化亜鉛微粒子を、分散媒体中に分散させた複合酸化亜鉛微粒子分散体であって、メチレンブルー溶液に該複合酸化亜鉛微粒子分散体を投入し、ブラックライト照射前後で653nmの吸光度を測定した際の653nmでの吸光度変化から下記式で算出される光触媒分解性評価において、ブラックライト照射12時間後の光触媒分解性が25%以下である複合酸化亜鉛微粒子分散体、
光触媒分解性(%)=[(A0−A)/A0]×100
(ここで、A0は初期吸光度を表し、Aは光照射後の吸光度を表す。)
(B)下記一般式(1):
(R1m(R2nSi(OR34-m-n (1)
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、m,nは、各々独立に、0又は1であり、かつm+nは、0,1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジン、
(C)硬化触媒、
(D)溶剤
を含有し、かつ(A)複合酸化亜鉛微粒子分散体中の複合酸化亜鉛固形分量が、(B)シリコーンレジンの固形分に対して、1〜50質量%である紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項2】
(A)成分中の複合酸化亜鉛微粒子が、更に下記一般式(2):
(R3x(R4ySi(X)4-x-y (2)
(式中、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシルオキシ基又はイソシアネート基であり、xは、0又は1であり、yは、0,1又は2であり、かつx+yは、0,1,2又は3である。)
で表される加水分解性シラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種で表面処理されていることを特徴とする請求項1記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項3】
(A)成分中の酸化亜鉛微粒子が、亜鉛原料を直流アークプラズマ法によって加熱、気化させ、その亜鉛蒸気を酸化、冷却することにより得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項4】
(A)成分中の複合酸化亜鉛微粒子の平均粒子径(体積平均粒子径D50)が10〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項5】
(A)成分中の分散媒体が、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類、芳香族炭化水素類、飽和炭化水素類から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項6】
(A)及び(B)成分として、請求項1乃至5のいずれか1項記載の(A)成分の存在下に式(1)のアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を(共)加水分解・縮合することにより得られたシリコーンレジンを配合するようにした請求項1乃至5のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項7】
(C)成分の配合量が(B)成分のシリコーンレジンを硬化させる有効量であり、(D)成分の配合量が、シリコーンコーティング組成物の固形分濃度を1〜30質量%とする量である請求項1乃至6のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項8】
更に、(E)コロイダルシリカを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項9】
(E)成分のコロイダルシリカの添加量が、(B)成分のシリコーンレジン固形分100質量部に対し5〜100質量部である請求項8記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項10】
更に、紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を配合した請求項1乃至9のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項11】
紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物を有機樹脂基材にビニル系共重合体層を設けた表面に塗布、硬化した際、得られた塗膜が、スーパーUVテスターでの耐候性試験で500時間後でも塗膜クラックが発生しないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物。
【請求項12】
基材の少なくとも一方の面に、直接もしくは少なくとも1種の他の層を介して、請求項1乃至11のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
【請求項13】
基材が有機樹脂基材である請求項12記載の被覆物品。
【請求項14】
有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基を側鎖に有するビニル系共重合体からなるプライマー被膜を設け、更にそのプライマー被膜表面に請求項1乃至11のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
【請求項15】
有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、有機紫外線吸収性基及びアルコキシシリル基を側鎖に有するビニル系共重合体及びシリカゾルからなるプライマー被膜を設け、更にそのプライマー被膜表面に請求項1乃至11のいずれか1項記載の紫外線遮蔽性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202731(P2010−202731A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47965(P2009−47965)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】