説明

細孔物性が調整されたシリカゲルの製造方法

【課題】本発明の目的は、細孔を有するシリカゲルを原体とて用い、粒径を維持したまま、細孔径、細孔容積を減少させる、すなわち細孔物性が調整されたシリカゲルを製造する方法及び細孔を有するシリカゲルの細孔物性を調整する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン及び/又はその誘導体を水存在下で加水分解し、マイクロ波を照射することで、シリカゲルの粒径を維持したまま、細孔物性を制御できる。すなわち、細孔径、細孔容積を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔物性が調整されたシリカゲルの製造方法及びシリカゲルの細孔物性の調整方法であり、より詳しくは、細孔径、細孔容積を減少させる調整がされたシリカゲルの製造方法及びシリカゲルの細孔径、細孔容積を減少させる調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
球状多孔質シリカゲルは一般に高表面積、高細孔容積を有しており、ゲルクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、抗体医薬品やたんぱく質などの分離用、精製用、及び分析用基材、触媒や薬剤担体等の用途分野に好適に使用されている。具体的には、例えば液体クロマトグラフィーカラム充填剤としては、生命化学の分野、一般有機化合物、医薬品、農薬、化粧品、食品、タンパク質、糖質、低分子ペプチド、核酸、生薬、天然物中の有効成分などの広範な対象成分の分離、分析、精製用としての用途に広範囲に使用されている。
【0003】
また、特に細孔容積の大きな大細孔径シリカゲルは、当該細孔内により多量のタンパク質や糖質等の目的成分を取り入れることができるため、分離速度が大きくなり、分離装置のコンパクト化にも資することが期待される。
【0004】
従来、このような大細孔径シリカゲルの製造方法としてはいくつかの方法が知られている。具体的には、特許文献1には通常の球状多孔質シリカゲル(細孔径が300Å未満で数十Å〜十数Åのものをいう。普通細孔径シリカゲルともいう。)を2〜50%のリン酸に含浸し、100〜700℃で加熱処理することにより大細孔径化することが記載されており、具体的には、球状多孔質シリカゲルを15%リン酸で処理し、300℃で10時間加熱処理することにより、大細孔径シリカゲルが得られる。特許文献2には細孔径が100Å程度であるシリカゲルを270〜350℃で水熱処理することにより、大細孔径化することが記載されている。また、特許文献3には、通常のシリカゲルの細孔内を、NaCl等の無機塩水溶液で充填し、乾燥後、350〜1500℃で焼成する方法も記載されており、例えば、細孔径50Åのシリカゲル(NaClを10質量%充填したもの。)を900℃、1000℃、1300℃といった高温で焼成することにより、大細孔径シリカゲルが得られることも知られている。
【0005】
これら従来法である水熱処理や無機塩を添加して焼成する操作により、シリカゲルの当該細孔径を増大せしめることはきわめて容易である。しかしながら、当該細孔径を増大せしめる工程における焼成温度や水熱反応温度を制御することでシリカゲルの細孔径を調整することは困難であるため、目標とする細孔径を有するシリカゲルを再現性よく製造することはできなかった。
【0006】
細孔径を調整できず、過度に細孔径が大きくなったシリカゲルは比表面積が小さくなるために、保持時間が短くなり分離特性が悪くなるといった問題があるために、シリカゲルの細孔を縮小させる必要があるが、シリカゲルの細孔を再度縮小させるような効果的な手法は見出されていない。シリカゲルの細孔を再度縮小させる方法としては、シリカゲルを合成する従来法の系中に、細孔径を縮小させるシリカゲルを分散させる方法が考えられるが、この方法では加えたシリカゲルの形状が維持できず、さらには細孔の縮小化を目的に加えたシリカ原料自身が縮合、ゲル化され粒度分布が悪くなるといった問題点があった。
【0007】
細孔径を効果的に縮小させることができないために、細孔径が大きくなりすぎたシリカゲルは廃棄しなければならず、上記のような問題点を有しないシリカゲルの細孔物性の調整する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−23211号公報
【特許文献2】特公昭61−20487号公報
【特許文献3】特開昭47−5817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、細孔を有するシリカゲルを原体として用い、粒径を維持したまま、細孔径、細孔容積を減少させる、すなわち細孔物性が調整されたシリカゲルを製造する方法及び細孔を有するシリカゲルの細孔物性を調整する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン及び/又はその誘導体を水及び必要があれば有機溶媒を含む溶媒中で加水分解し、マイクロ波を照射することで、シリカゲルの粒径を維持したまま、細孔物性を制御できる。すなわち、細孔径、細孔容積を減少させることができる事を見出した。
【0011】
本発明は、細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン及び/又はその誘導体を水存在下で加水分解し、マイクロ波を照射することを特徴とする細孔物性が調整されたシリカゲルの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、細孔径が過度に大きくなったシリカゲルの粒径を保持したまま、細孔径、細孔容積を減少させることができる。また、球状のシリカゲルを用いた場合であっても、球状シリカゲルの形状を維持しつつ、細孔径、細孔容積を減少させることができるため、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
【0014】
本発明の細孔物性が調整されたシリカゲルの製造方法及びシリカゲルの細孔物性の調整方法は、細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン及び/又はその誘導体を水存在下で加水分解し、マイクロ波を照射することを特徴とする。
【0015】
<シリカゲル>
本発明において、出発原料である細孔を有するシリカゲル(本発明においては、多孔質シリカゲルともいう)としては、製造方法等により限定することなく使用できる。本発明において使用するシリカゲルとしては、通常、平均粒径は0.5〜10,000μmであり、好ましくは1〜500μmである。平均細孔径は5〜1000Åであり、50Å〜500Åが好ましく、80Å〜400Åがより好ましい。比表面積は50〜10000m/gであり、100〜1000m2/gであることがより好ましい。本発明で用いられるシリカゲルは、市販のものが容易に入手可能であり、また、所望のものを、公知の手段により、合成することも可能である。
【0016】
本発明のシリカゲルの形状は、破砕した非球状のシリカゲルであっても、球状のシリカゲル(本発明においては、球状多孔質シリカゲルともいう)であってもよいが、球状のシリカゲルであることが好ましい。また、本発明における「球状」とは真球に限定されるものではなく、やや変形した球形(例えば、楕円球など)を含み、平均球形度としては例えば0.85以上のものを指す。
【0017】
本発明のシリカゲルの代表的な製造方法は、液/液の界面張力を利用して粒子を球形化する方法であって、例えば、特開平6−64915号や特開2001−146416号に記載されているように、界面活性剤を含む非極性有機ハロゲン化物溶媒中、又は炭素数9−12程度の飽和炭化水素溶媒中で、ケイ酸アルカリ(アルカリ金属ケイ酸塩)水溶液を乳化・分散させ、生成した微小分散液滴の液/液界面における界面張力を利用して、個々の液滴を球形化せしめ、次いで、その状態で硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸や炭酸ガス等のゲル化剤と反応せしめてゲル化・固化せしめる方法である。
【0018】
得られたゲル粒子は、溶媒と分離し、熟成槽でpH1〜5、温度30〜100℃程度の条件下、0.5〜5時間程度熟成処理を行い、熟成停止後、濾過・水洗することにより、微小球状のシリカヒドロゲル粒子が得られ、これを50〜180℃程度で1〜8時間乾燥し、微小球状のシリカゲル粒子が得られる。なお、不定形破砕品は、この球形粒子を破砕処理することにより容易に得ることができる。
【0019】
また、気/液の表面張力を利用して、球形シリカゲルを得る方法を採用することも可能である。例えば、特公昭48−13834号に記載されているごとく、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液を混合してシリカゾルを短時間で生成させると同時に、気体中に放出し、当該気体中で球形粒子としてゲル化させる方法を採用することができる。不定形破砕品は、同様に、この球形粒子を破砕処理することにより容易に得られる。
【0020】
また、本発明のシリカゲルはこれら公知の方法で製造された後に、細孔径を増大せしめる処理がなされたシリカゲルであってもよい。また、細孔径を増大せしめる処理がなされた全てのシリカゲルの細孔物性を調整してもよく、また一部の過度に細孔径が大きくなったシリカゲルのみの細孔物性を調整してもよい。
【0021】
<アルコキシシラン化合物・その誘導体>
アルコキシシラン化合物は下記式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜9のアルキル基を示す。)
で表される化合物である。Rは、直鎖状又は分岐状の何れのアルキル基であってもよい。また、Rのアルキル基の炭素数は1〜4であることがより好ましく、このようなアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0022】
式(1)のアルコキシシラン化合物の誘導体としては、式(1)の化合物を部分的に加水分解して得られる低縮合物、並びに式(1)で表されるアルコキシシラン化合物の一部が飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、及び芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基で架橋された化合物が挙げられる。
【0023】
上記の低縮合物としては、下記式(2)
Sin−1(OR2n+2 (2)
(式中、Rは炭素数1〜9のアルキル基を示し、nは2〜20の整数を示す。)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
飽和炭化水素基としては、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3〜7のシクロアルキレン基、炭素数3〜7のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基(シクロアルキルアルキレン基)などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルケレン基、炭素数3〜7のシクロアルケレン基、炭素数3〜7のシクロアルケレン基で置換された炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルケレン基(シクロアルケレン基)などが挙げられる。
芳香族基としては、置換基を有していてよい1〜4個の環を有する芳香環又は複素環を有する2価の官能基が挙げられる。芳香環又は複素環としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルのようにベンゼン環だけで環構造を形成している化合物;ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンのような複素環だけで環構造を形成している化合物;ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリン、キノキサリン、クロマン、インドール、アントラキノンのようにベンゼン環と複素環とが縮合している化合物などが挙げられる。
置換基は特に限定されず、例えば、炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、置換アミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、アゾ基、アジド基等が挙げられる。
式(1)で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその誘導体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
<水>
使用される水の量は、細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン又はその誘導体との加水分解、縮合反応に影響を与えうるが、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。本発明においては、アルコキシシラン化合物及び/又はその誘導体に対して水の量が相対的に減少すれば、細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン又はその誘導体との加水分解、縮合反応よりもアルコキシシラン又はその誘導体自体の加水分解、縮合反応が優先的に反応する傾向があるため、水の量はアルコキシシラン化合物又はその誘導体に対して質量比が(アルコキシシラン又はその誘導体/水)1/400〜1/79が好ましい。その範囲であれば加えたアルコキシシラン又はその誘導体自身の加水分解、縮合反応が抑制され、細孔径を調整することができる。しかしながら、有機溶媒を使う時は必ずしもその範囲内である必要はなく有機溶媒と水との質量比が0.7未満であれば特にアルコキシシランまたはその誘導体の質量比は限定しない。
【0026】
<有機溶媒>
本発明の製造方法及び調整方法は無溶媒でもよく、必要であれば有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテルなどのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類など公知の有機溶媒を制限なく使用できる。溶媒は、1種でなくても2種類以上を混ぜて使用しても良い。中でもエーテル類が好ましい。有機溶媒の使用量は特に限定しない。
【0027】
<加水分解反応>
細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン化合物及び/又はその誘導体の加水分解反応は、約20〜120℃で行ってよい。特に、還流しながら反応させることが好ましい。この場合の反応温度は、使用する有機溶媒の種類や使用量により異なる。また、反応は常圧下で行えばよいが、加圧下で行ってもよい。反応時間は、約6時間以下とすればよい。
【0028】
<マイクロ波>
マイクロ波は、300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁波であり、工業用マイクロ波照射機では2,450MHzが使用されているため、通常はそれを使用してよい。照射時間は仕込み量、マイクロ波照射装置のワット数などによって異なるが、約0.4〜10kWで、約1〜60分とすればよい。マイクロ波照射実験装置は、例えば四国計測工業(株)、ミクロ電子(株)、マイルストーンゼネラル社、CEM社等により製作、販売されているものを使用してよい。
【0029】
また、加水分解反応を行う工程とマイクロ波を照射する工程を別々の工程とする、すなわち、加水分解を行った後にマイクロ波を照射してもよいし、また、加水分解反応を行う工程とマイクロ波を照射する工程を同一の工程とする、すなわち、加水分解を行いながらマイクロ波を照射させてもよい。
【0030】
<細孔物性が調整されたシリカゲル>
本発明で得られた細孔物性が調整されたシリカゲルの細孔径は、マイクロ波を照射する前のシリカゲルの細孔径の0.5〜0.99倍まで縮小させることができる。また、細孔容積も同様に縮小させることができ、マイクロ波を照射する前のシリカゲルの細孔容積の0.4〜0.99倍まで縮小できる。また球状の多孔質シリカゲルを用いた場合には、球状の形状を保持することができる。
【0031】
実施例
以下、本発明を実施例で示してより具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
球状シリカゲル(ダイソーSP−100−10P、平均粒径=10μm、細孔径=100Å、細孔容積=1.1cm3/g、比表面積=450m/g)100mg、テトラメトキシシラン1.0gを水40gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液に、マイルストーンゼネラル社製のマイクロ波照射装置を用いて還流する出力で20分間マイクロ波(2.45GHz)を照射した。照射終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0033】
[実施例2]
球状シリカゲル(ダイソーSP−200−10P、平均粒径=10μm、細孔径=200Å、細孔容積=1.1cm3/g、比表面積=200m/g)100mg、テトラメトキシシラン1.0gを水40gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液に、マイルストーンゼネラル社製のマイクロ波照射装置を用いて、0.5kWで、15分間マイクロ波(2.45GHz)を照射した。照射終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0034】
[実施例3]
球状シリカゲル(ダイソーSP−300−10P、平均粒径=10μm、細孔径=300Å、細孔容積=0.9cm/g、比表面積=120m/g)100mg、テトラメトキシシラン1.0gを水40gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液に、マイルストーンゼネラル社製のマイクロ波照射装置を用いて、0.5kWで、15分間マイクロ波(2.45GHz)を照射した。照射終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0035】
[実施例4]
球状シリカゲル(ダイソーSP−300−10P、平均粒径=10μm、細孔径=300Å、細孔容積=1cm/g、比表面積=300m/g)500mg、テトラメトキシシラン1.0gを水1gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液に、マイルストーンゼネラル社製のマイクロ波照射装置を用いて、0.5kWで2分間マイクロ波(2.45GHz)を照射した。照射終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0036】
[比較例1]
球状シリカゲル(ダイソーSP−100−10P、平均粒径=10μm、細孔径=100Å、細孔容積=1.1cm/g、比表面積=450m/g)100mg、テトラメトキシシラン1.0gを水40gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液を140℃で12時間還流させた。反応終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。主シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0037】
[比較例2]
球状シリカゲル(ダイソーSP−200−10P、平均粒径=10μm、細孔径=200Å、細孔容積=1.1cm/g、比表面積=200m/g)100mg、テトラメトキシシラン1.0gを水40gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液を140℃で12時間還流させた。反応終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。主シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0038】
[比較例3]
球状シリカゲル(ダイソーSP−300−10P、平均粒径=10μm、細孔径=300Å、細孔容積=0.9cm/g、比表面積=120m/g)100mg、テトラメトキシシラン1.0gを水40gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液を140℃で12時間還流させた。反応終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。主シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0039】
[比較例4]
球状シリカゲル(ダイソーSP−300−10P、平均粒径=10μm、細孔径=300Å、細孔容積=0.9cm/g、比表面積=120m/g)500mg、テトラメトキシシラン1.0gを水1gに加え室温下で5分間攪拌した。続いてその溶液を140℃で12時間還流させた。反応終了後、溶液を冷却しシリカゲルを濾取した。主シリカゲルをテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥しシリカゲルを得た。得られたシリカゲルの細孔物性を表1に記載する。
【0040】
[シリカゲルの評価]
粒径測定
平均粒径は堀場製作所製「LA−920」レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して測定した値である。
【0041】
細孔径測定
本発明において、細孔径は、島津製作所製商品名「Tristar3000」の表面積測定装置を使用して測定した値である。
【0042】
平均球形度
シリカゲルの平均球形度は、約0.85以上が好ましく、約0.90以上がより好ましく、約0.93以上がさらにより好ましい。本発明において、平均球形度は、シスメックス社製商品名「FPIA-1000」のフロー式粒子像分析装置を使用して測定した値である。以下、詳細な測定方法を記載する。
粒子像から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとして表示できる。そこで試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定するとPM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、個々の粒子の球形度は、円形度=A/B=A×4π/(PM)として算出できる。これを任意に選ばれた100個以上の粒子について測定し、その平均値を2乗したものを平均球形度とした。測定溶液はサンプル0.1gに蒸留水20mlとプロピレングリコール10mlを加え、3分間超音波分散処理を行い調製した。
【0043】
上記実施例及び比較例で得られたシリカゲルの評価結果を表1に纏める。
【表1】

【0044】
実施例1〜4と比較例1〜4を比較すると、比較例1〜4の細孔物性を調整した処理後のシリカゲルは原料シリカゲルの形状を維持することができず、粒径も増大し、原料シリカゲルと細孔物性を調整した処理後のシリカゲルの細孔物性もほぼ変化が無かった。一方、実施例1〜4においては原料シリカゲルと細孔物性を調整処理後のシリカゲルの形状はほぼ変化が無く、粒径はほぼ同一であり、細孔径と細孔容積を大きく縮小することができた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
従来の大細孔径シリカゲルを原体とし、マイクロ波を照射することでその細孔径、細孔容積をきわめて狭い範囲で、且つ短時間で減少させるように調整することができる。その細孔調整方法を用いれば、細孔が過度に大きくなったシリカゲルの細孔を極めて狭い範囲で再び縮小することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有するシリカゲルとアルコキシシラン及び/又はその誘導体を水存在下で加水分解し、マイクロ波を照射することを特徴とする細孔物性が調整されたシリカゲルの製造方法。
【請求項2】
アルコキシシランが下記式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜9のアルキル基を示す。)
で表される化合物であって、アルコキシシランの誘導体が式(1)のアルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物であることを特徴とする請求項1記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項3】
細孔を有するシリカゲルの平均球形度が0.85以上である球状多孔質シリカゲルであることを特徴とする請求項1又は2記載のシリカゲルの製造方法。


【公開番号】特開2010−235344(P2010−235344A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82888(P2009−82888)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】