説明

細線をゴム異形部分中に埋め込む装置及び方法

本発明は、細線(F)をゴム異形部分(P)中に所与の方向で埋め込む装置であって、上昇位置と下降位置との間で往復直線運動状態でフレーム(1)上で走行することができる可動取付け具(2)に取り付けられたフレームに取り付けられていて、細線を連続的に供給する手段(4)を有し、可動取付け具は、頂部(21)及び底部(22)を有し、頂部(21)と底部(22)との間には、細線(F)を案内するようになったダクト(25)が形成され、チャネル(53)を備えた中空ニードル(5)を有し、細線(F)は、チャネル(53)内を動くことができ、ニードルは、ダクト(25)の連続体をなした状態でその端部(51)の一方の端部が可動支持体(2)の底部(22)に取り付けられ、ニードルは、その他端部にゴム異形部分(P)を穿通することができる先端部(52)を有し、フレーム(1)に取り付けられた切断手段(3)を有し、切断手段は、ニードルが上昇位置にあるとき、ニードルの各往復運動サイクル時に細線(F)をニードルの先端部から所与の距離のところで切断することができる切断ワイヤ(34)を備えた回転ブレード(30)を有するよう構成された装置に関する。切断手段(3)は、ブレードの切断ワイヤ(34)の後ろに配置され、細線をブレード(30)によって切断した直後にプライマーをニードルの先端部(52)の回りに折り曲げるようになっているパドル(32)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タイヤの技術分野に関し、特に、タイヤを構成するゴムコンポーネントの1つの中に所与の方向で挿入された繊維を有するタイヤの製造の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1213130号明細書は、この種のタイヤの特定の技術的思想を提供しており、この場合、短い補強繊維又はインサートがトレッド中に配向状態で埋め込まれ、それにより所与の方向におけるタイヤのこの部分の機械的性質が向上する。
【0003】
米国特許第7005022号明細書は、配向繊維を有するこの種のコンポーネントを製造する方法を提案しており、この方法では、まず最初に、等方性配向状態の短繊維を含むゴム状材料で作られた異形要素を押し出し、次に、第2段階において、幾分櫛の形をした穴開け手段を用いて、異形要素を所与の方向に穿孔するが、その目的は、繊維を同伴するニードルの作用効果により繊維の何割かを穿孔方向に配向させることにある。
【0004】
この第1の形式の方法により、結果の一部を達成することができるが、繊維の全てを所望の方向に配向させることができない。
【0005】
欧州特許第1213383号明細書は、上述のインサートをタイヤトレッド構造体のゴムコンポーネント内に埋め込む別の手段を提案している。
【0006】
この装置は、ゴムコンポーネントを穿刺することができ、補強繊維を挿通状態で通す中空ニードル、往復運動を行うことができると共に上述のニードルを支持することができる可動支持体、埋め込まれるべき繊維を切断する切断ブレード及び繊維の位置を維持すると共にこれを調節する少なくとも2つのクランプ手段を有する。
【0007】
この装置は、繊維又は補強インサートの全てを正確且つ制御された方向に埋め込むことができるという利点を有する。
【0008】
しかしながら、この装置に設けられているクランプ手段は、各サイクル時に繊維がニードルの内部に沿って走行するようにするために繊維を押すと共に保持するという目的を有していることが注目される。
【0009】
この作動モードは、繊維を圧縮するという作用効果を有する。
【0010】
案内手段が設けられているにもかかわらず、特に繊維がこの種の装填に対して耐性があまりないテキスタイル(紡織)繊維である場合、この圧縮は、繊維を繊維が自由に走行するその経路の部分で座屈させる恐れがある。
【0011】
また、先行技術の刊行物には、主として航空業界で用いられる複合材料に細線を埋め込むことを目的とする他の方法及び装置が記載されている。
【0012】
米国特許第5186776号明細書は、これと同様な装置を記載しており、この装置では、上述した装置の場合と同様、細線は、細線を超音波励振手段に結合されたニードルのダクト内に分配する手段の出口に位置決めされているノンリターンシステムを用いて押される。
【0013】
米国特許第5642679号明細書は、連続細線を複合材料の多数の層中に挿入してこれらを互いに接合することを目的とする装置を記載している。この装置からは細線をニードル内部で走行させる技術を想到することができず、この装置では、後で理解されるようにニードルが材料中に埋め込まれるたびにスタータ(開始部)としての尾部を作ることができる切断手段が設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第1213130号明細書
【特許文献2】米国特許第7005022号明細書
【特許文献3】欧州特許第1213383号明細書
【特許文献4】米国特許第5186776号明細書
【特許文献5】米国特許第5642679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、細線をゴムコンポーネント中に所与の方向で直接埋め込む形式の装置の新規な使用手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
細線をゴム異形要素中に所与の方向で埋め込む装置は、
固定構造体に取り付けられた連続細線供給手段を有し、
上昇位置と下降位置との間で往復直線運動状態で構造体に沿って走行することができる可動支持体を有し、可動支持体は、頂部及び底部を有し、頂部と底部との間には、細線を案内するようになったダクトが形成され、
管路を備えた中空ニードルを有し、細線は、管路内を走行することができ、ニードルは、ダクトの連続体をなした状態でその端部の一方の端部が可動支持体の底部に固定され、ニードルは、その他端部にゴム異形要素を穿通することができる先端部を有し、
構造体に取り付けられた切断手段を有し、切断手段は、ニードルが上昇位置にあるとき、ニードルの各往復運動サイクル時に細線をニードルの先端部から所与の距離のところで切断することができる切断ワイヤを備えた回転ブレードを有する。
【0017】
この装置は、切断手段がブレードの切断ワイヤの後ろに配置され、細線をブレードによって切断した直後に尾部をニードルの先端部回りに折り曲げるようになっているパドルを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の装置を実施する方法は、
Aニードルが異形要素の表面の上方の上昇位置にあるとき、所与の細線の所与の長さ分を先端部側で放出して尾部を構成するステップを有し、
Bニードルの先端部を下降させてニードルの先端部が所与の深さにわたって異形要素を穿刺するようにするステップを有し、
C細線がニードルの内部に沿って走行することができるようにした状態でニードルを異形要素から取り出すステップを有し、
Dニードルの先端部を所与の高さだけ異形要素の表面の上方に上げて細線の所与の長さ分をニードルの先端部と異形要素の表面との間に放出するステップを有し、所与の長さ分は、異形要素に対するニードルの穿刺深さよりも短く、
E切断手段を用いて細線を異形要素の表面と同一高さ位置で切断するステップを有し、切断手段の回転ブレードは、所与の長さ分の新たな尾部を放出するようブレードの切断ワイヤの後部に位置決めされているパドルを有する。
【0019】
この方法は、切断直後に、パドルがニードルの移動方向に実質的に垂直な方向に衝撃を尾部に与えて尾部をニードルの先端部回りに折り曲げることを特徴とする。
【0020】
このように、各サイクル時、細線を切断した直後にニードルの先端部側の外側に位置した細線により形成される細線尾部は、ニードル出口管路の縁部回りに折れ曲がるようになる。ニードル出口管路の縁部は、細線の折り返し部分に作用すると共に細線を随行することができる楔(ウェッジ)のような作用効果を或る程度示す。
【0021】
この構成は、一方において、細線がニードル管路内を上方に引き返すのを阻止すると共に細線が異形要素の表面に向かうニードルの下方移動中、ニードルから自由に滑り出るのを阻止し、もしそうでなければ、結果的に尾部が短くなる。
【0022】
他方、この構成により、ニードル出口管路の縁部回りに折り曲げられた尾部は、ニードルを異形要素の厚み中に下降させているとき、尾部とニードルにより異形要素内に作られる穿孔の壁との接触により生じる摩擦力により同伴されることなくニードルの先端部にくっついたままでいることができ、もしそうでなければ、結果的に尾部が長くなる。
【0023】
ニードルを再び上昇させているとき、楔作用効果がなくなり、尾部は、これを掴んでいるゴム状材料によって穿孔内の定位置に保持され、それにより、ニードル内に存在している細線は、引き返すのが阻止され、その結果、上昇運動により、細線をニードルの内側に沿って走行させることができる。この運動中、ニードルの入口と尾部との間に位置する細線の部分は、張力下に保たれる。細線は、今や、欧州特許第1213383号明細書により提供されている装置で提案されているように押されるのではなく、ニードル中に引き込まれる。
【0024】
細線がニードルの内側に沿って走行させやすいようにするのに必要なことは、供給手段が細線をゼロ張力状態でニードルの入口まで送り出して、埋め込みサイクル中のどの時点においても細線を圧縮下に置く必要性がない状態で、装置への細線供給を連続的に行うことだけである。ニードルの上昇段階中に張力を細線に及ぼす目的は、ニードルの管路の内側に対する細線の摩擦力に打ち勝つことだけにある。
【0025】
加うるに、本発明の装置の作動が単純であるという理由及び関与する機械的コンポーネトの数が少ないという理由で、インサートの埋め込み速度を実質的に増大させることが可能である。
【0026】
以下の説明は、本発明の方法を実施することができる装置の一実施形態及び図1〜図8に基づいている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の装置の斜視図である。
【図2】スタータとしての尾部の形成におけるカッタの作動上の細部を示す図である。
【図3】スタータとしての尾部の形成におけるカッタの作動上の細部を示す図である。
【図4】スタータとしての尾部の形成におけるカッタの作動上の細部を示す図である。
【図5】本装置の第1の使用モードに従ってインサートを埋め込むサイクルの種々の位置を示す図である。
【図6】埋め込みサイクルの特定の段階における装置の部分の位置の斜視図である。
【図7】埋め込みサイクルの特定の段階における装置の部分の位置の斜視図である。
【図8】本発明の装置の実施形態の変形実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示されている本発明の装置は、細線Fの供給手段4を取り付けることができる構造体1と、中空ニードル5を支持した可動支持体2と、切断手段3とを有している。
【0029】
供給手段4は、構造体1の頂部に配置され、この供給手段は、細線Fを所与の且つ調節された一定速度で送り出すことができる。
【0030】
可動支持体2は、真っ直ぐな案内レール11を介して構造体1に連結されている。この可動支持体2には、リンクロッド14及び構造体1に固定されているモータ(図示せず)により回されるクランクシャフト13によって、上昇位置と下降位置との間の往復運動が与えられる。
【0031】
上昇位置は、構造体1が異形要素Pの表面Sから見て最も遠くの位置にあるサイクルの段階に対応した構造体の位置を意味しており、下降位置は、構造体が表面Sの最も近くの位置にあるサイクルの段階に対応した位置を意味している。
【0032】
可動支持体2は、底部22及び頂部21を有し、底部22と頂部21との間には、細線Fを案内するダクト25(点線で示されている)が形成されている。
【0033】
細線Fを挿通状態で走行させる管路53を有する中空ニードル5の端部の一方の端部51が可動支持体2の底部22と頂部21との間に形成されたダクト25の連続体をなした状態で可動支持体2の底部に固定されている。細線Fが出る起点としてのニードルの先端部は、異形要素Pの表面Sの方に差し向けられている。ニードルは、支持体2の往復運動と同様に往復運動を行う。
【0034】
ニードルの直径は、ゴム中へのニードルの穿刺具合を向上させるよう選択されている。好ましくは、選択されたニードルは、最も小さな外径を有し、これは、埋め込まれるべき細線の直径に一致しており、この直径は、最も通常の用途において0.1mmから1mmまで様々であって良い。極めて明らかなこととして、ニードルの内部管路内での細線の正確な摺動が保証されることになる。これを行うため、細線とニードルの内径の直径の差は、0.05mm未満であってはならない。
【0035】
ニードルの上下運動の際の案内具合を向上させるため、ニードルを挿通状態で自由に走行させる案内手段12が異形要素Pの表面Sにできるだけ近いところで構造体1の底部に配置されており、その結果、ニードルの先端部は、可動支持体が上昇位置にあるとき、案内手段から逃げ出ることがないようになっている。
【0036】
細線Fが可動支持体2の頂部21上に位置しているダクト25に入るときの細線Fの案内具合を向上させるため、細線案内手段23がこの支持体の頂部に取り付けられている。この細線案内手段23は、切頭円錐形の通路の形態をしており、この通路の最も小さな直径部は、可動支持体の頂部と底部との間に形成されたダクト25と同一側に位置し、その大きな直径部は、案内手段中への細線Fの導入部に配置されている。案内手段がこの特に簡単な実施形態に制限されず、多くの仕方で構成できることはいうまでもない。
【0037】
切断ワイヤ33を備えたブレード30を含む切断手段3が構造体1の底部に設置されている。この切断手段は、構造体1に固定されたモータ(図示せず)によりニードルの運動方向に実質的に平行な軸線31回りに回転するカッタの形態をしている。切断手段は、これを軸線31に沿って並進的に調節することができるよう配置されており、その結果、切断手段は、異形要素の表面Sとニードル52の頂部との間で細線Fを先端部から所与の且つ調節可能な距離dを置いたところで切断するようになっている。回転カッタは、ニードル5の案内手段12と異形要素Pの表面Sとの間に位置決めされている。
【0038】
カッタの回転運動は、これによりニードルの各前後サイクルについて丸1回転が行われるよう調節される。この運動は、ニードルの頂部が上昇位置にあるときに細線Fが切断されるよう設定される。これを行うため、同一の駆動手段を用い、それに従って機械的動力伝達手段を適合させることによりクランクシャフト13と回転カッタ3の両方を駆動することが有利な場合がある。
【0039】
カッタのブレード30の延長部として、パドル32が設けられ、このパドルは、ブレードの平面に実質的に垂直に延びる。ブレードの移動方向を考慮すると、パドル32は、細線を切断した直後に尾部に衝撃を与えるよう切断ワイヤの後ろに位置決めされる。この衝撃は、スタータとしての尾部を形成する細線の自由端部を図2及び図3に示されているように先端部52回りに折り曲げる作用効果を有する。
【0040】
本発明の装置の作動サイクルの重要な位置は、図5に詳細に示されており、括弧に入れた状態で示された符号(1)〜(6)で示されている。各サイクルは、異形要素P中への1本のインサートIの埋め込みに対応している。
【0041】
第1の位置(1)は、ニードル5が切断直後に下降位置に向かうその運動を開始するときのニードル5の上昇位置に対応している。理解できるように、細線Fの自由端部は、ニードル細線出口管路52の縁部回りに折り曲げられた尾部Aを形成するようニードル52の先端部を越えて延びている。
【0042】
尾部Aの長さは、注意を払って選択されなければならない。確かに、ニードルが異形要素を穿刺するとき、尾部と異形要素のゴム状製品との間の摩擦力が上述の楔作用効果の強さを上回らないようにするためには長すぎてはならないが、再びニードルを上昇させているときに、尾部が穿孔の底部内の位置にとどまるようにするためには短すぎてはならない。実際、タイヤ業界で通常用いられるテキスタイル細線の場合、尾部の長さは、有益には、細線直径の10倍〜20倍であり、或いは、一般に、3mm〜5mmの長さがこの分野において大抵の用途に対応できることが考えられる。同様に、細線の直径が大きければ大きいほど、尾部の長さはそれだけ一層短くすることができる。いずれの場合においても、尾部の長さが穿刺深さ(h)未満であるようにする措置が講じられる。
【0043】
第2の位置(2)は、ニードル5の下降運動及びニードルの先端部がゴム異形要素Pの表面Sを穿刺した時点に対応している。この位置は又、図6の斜視図に示されている。
【0044】
まさにこの時点で、尾部Aは、ニードル5に沿って折り返されることが注目されよう。この形態では、細線は、出口管路の縁部によって制止され、これにより、細線からはニードルの移動方向とは逆の方向における運動が奪われる。ニードル出口管路の縁部は、その楔機能を実行し、尾部が細線を同伴するのを阻止する。
【0045】
第3の位置(3)は、ニードルの下降位置に対応しており、この位置では、ニードルの先端部は、異形要素を所与の深さhまで穿刺し、第3の位置(3)は、図7の斜視図に対応している。
【0046】
次に、ニードルは、その下降位置から位置(4)に示されているその上昇位置まで上方に引き返す運動を開始する。ニードルの先端部が所与の且つ調節可能な距離dだけ異形要素Pの表面Sから見て遠くに位置したときに上昇位置に達する。
【0047】
この上昇運動中、細線及び尾部Aの自由部分は、異形要素のゴム状材料により掴まれる。尾部に加えられ、そしてニードルによって解除された細線の残部に次第に加えられる摩擦力により、細線Fを引っ張ることができ、ニードルは、異形要素Pの表面Sに対して固定状態のままの細線に沿って上昇する。
【0048】
上昇位置に達すると、ブレード5は、細線を切断して尾部Aを放し、この尾部Aは、位置(4)により示されているように次のインサートIの埋め込みに利用できる。
【0049】
細線を表面Sのできるだけ近くで切断することが有利であることが注目されよう。これを行うため、必要なことは、本発明の埋め込み装置をブレード3が表面Sのできるだけ近くに位置決めされた状態で構成するということだけである。
【0050】
このやり方は、タイヤの分野において最も頻繁に見受けられるやり方に対応しており、このやり方により、有益には、細線を比較的きれいに切断することができる。というのは、この表面は、細線が切断されている間、細線を保持することができるアンビルのような働きを或る程度示すからである。細線が表面を越えて突き出ることができるようにすることが必要であると分かった場合、細線に加わる過剰の戻し力を回避するために切断ブレードをつがい関係をなすブレードと協調させることが有益であることが分かる。
【0051】
尾部Aの長さを定める長さdは、支持体2を上昇位置に配置し、ブレードのその軸線31に沿う軸方向位置を適合させることにより調節される。深さhは、クランクシャフト13の直径を変えることにより支持体2の運動の振幅を変えることによって調節される。運動の振幅は、深さhに長さdを加えた値に一致する。
【0052】
位置(5)により示したように切断直後、パドル32は、細線に当たって衝撃をニードルの運動方向に実質的に垂直な方向で尾部Aに及ぼす。
【0053】
尾部の折り返しができるだけ顕著であるようにするために、上昇位置におけるニードル32の端とパドル32との間の隙間jができるだけ小さく、図2に示されているように細線の直径に少なくとも等しいようにする措置が講じられる。隙間jは、有益には、細線の直径の1倍〜5倍であるのが良い。
【0054】
また、尾部の長さが変わる場合に隙間jを調節できるようにすることが実用的であることが分かる場合がある。したがって、これを行うため、組をなす取り外し可能なパドルが設けられるのが良く、これらの高さは、尾部の所望の長さに従って様々であり、これら組をなす取り外し可能なパドルは、パドル32を支持したブレードの支持体33に固定される。
【0055】
尾部を先端部52回りに折り曲げるこの運動は、図4に示されているように、ニードルが符号(5)で示されている上昇位置と先端部が異形要素の表面を穿刺する符号(2)で示されている位置との間で動いているときに細線がニードルの内側で上方に引き返す運動を制止するうえで十分である。
【0056】
細線が上方に引き返すのを回避するため、構造体1に取り付けられている供給手段4とダクト25又は案内手段23の入口51との間に位置する細線の部分が図1に示すと共に図6及び図7に示されているように可動支持体2の位置とは無関係にループBを形成するよう供給手段4を制御することによって、細線がニードルダクト25に入っているときの細線の張力がゼロであるようにする措置も又講じられる。
【0057】
図8は、案内手段が2つのローラ24の形態をした装置の場合を示しており、細線は、これら2つのローラ相互間を走行することができる。これらローラは、両方向に完全に自由に回転することができ又はローラ24と供給手段4との間に位置する細線の部分が偶発的に引っ張られた場合に細線が上方に引き返すのを阻止するよう2つの方向の一方に回転するのが阻止されるのが良い。
【0058】
次のインサートIは、位置(6)により示されているように異形要素を構造体1に対してステップ長さeだけ動かし、次に今説明したばかりのサイクルを繰り返し実施することにより埋め込まれる。
【0059】
これら作業を必要に応じて何回も繰り返し実施することにより、インサートIが位置(7)で示されているように均等に埋め込まれたゴム異形要素が得られる。
【0060】
長さhのインサートは、その底部に、尾部Aに対応した長さdの折り返し部を有する。インサートの底部に細線の二重の長さ分が存在していることにより、好ましくは、表面Sが路面と接触状態にあるタイヤトレッドの表面に一致する場合、トレッドブロック要素の基部が補強されるという利点が得られる。
【0061】
本明細書において説明したサイクルは、インサートが異形要素Pの表面Sに垂直に埋め込まれる場合に関する。極めて明らかなこととして、構造体を傾斜させて埋め込み角度を変更し、その結果、可動支持体2を走行させる案内レール11が表面Sと所与の角度をなすようにすることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細線(F)をゴム異形要素(P)中に所与の方向で埋め込む装置であって、
固定構造体に取り付けられた連続細線供給手段(4)と、
上昇位置と下降位置との間で往復直線運動状態で構造体(1)に沿って走行することができる可動支持体(2)であって、前記可動支持体は、頂部(21)及び底部(22)を有し、前記頂部(21)と前記底部(22)との間に、前記細線(F)を案内するようになったダクト(25)が形成されている可動支持体(2)と、
管路(53)を備えた中空ニードル(5)であって、前記細線(F)は、前記管路(53)内を走行することができ、前記ダクト(25)の連続体をなした状態でその端部(51)の一方の端部が前記可動支持体(2)の前記底部(22)に固定され、その他端部に前記ゴム異形要素(P)を穿通することができる先端部(52)を有する中空ニードル(5)と、
前記構造体(1)に取り付けられた切断手段(3)であって、前記ニードルが前記上昇位置にあるとき、前記ニードルの各往復運動サイクル時に前記細線(F)を前記ニードルの先端部から所与の距離のところで切断することができる切断ワイヤ(34)を備えた回転ブレード(30)を有する切断手段と、を備えている装置において、
前記切断手段(3)は、前記ブレードの前記切断ワイヤ(34)の後ろに配置され前記細線を前記ブレード(30)によって切断した直後に尾部を前記ニードルの前記先端部(52)回りに折り曲げるようになっているパドル(32)を備えている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記切断手段(3)は、前記ニードルの運動方向に平行な軸線(31)回りに回転するカッタである、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記供給手段(4)は、前記可動支持体(2)の位置とは無関係に前記供給手段と前記可動支持体(2)の前記ダクト(25)の入口との間に位置した前記細線の部分をゼロの張力状態に保つことができる調節手段に連結されている、
請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置を用いて1本の細線で形成されたインサート(I)をゴム異形要素(P)中にその表面の1つの表面(S)を経て埋め込む方法であって、
A 前記ニードルが前記異形要素(P)の前記表面(S)の上方の上昇位置にあるとき、所与の細線の所与の長さ分を前記先端部(52)側で放出して尾部(A)を構成するステップを有し、
B 前記ニードル(5)の前記先端部(52)を下降させて前記ニードル(5)の前記先端部(52)が所与の深さ(h)にわたって前記異形要素(P)を穿刺するようにするステップを有し、
C 前記細線(F)が前記ニードルの内部に沿って走行することができるようにした状態で前記ニードル(5)を前記異形要素(P)から取り出すステップを有し、
D 前記ニードル(5)の前記先端部(52)を所与の高さ(d)だけ前記異形要素(P)の前記表面(S)の上方に上げて前記細線の所与の長さ分(d)を前記ニードル(52)の前記先端部と前記異形要素(P)の前記表面(S)との間に放出するステップを有し、前記所与の長さ分(d)は、前記異形要素に対する前記ニードルの穿刺深さ(h)よりも短く、
E 切断手段(3)を用いて前記細線を前記異形要素(P)の前記表面(S)と同一高さ位置で切断するステップを有し、前記切断手段の回転ブレードは、前記所与の長さ分(d)の新たな尾部(A)を放出するよう前記ブレードの切断ワイヤ(34)の後部に位置決めされているパドル(32)を有する、方法において、切断直後に、前記パドル(32)は、前記ニードルの移動方向に実質的に垂直な方向に衝撃を前記尾部(A)に与えて前記尾部を前記ニードルの前記先端部回りに折り曲げる、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記ステップEの実施完了時、前記異形要素(P)を前記構造体に対して所与のステップ長さ(e)だけ動かして新たなインサート(I)を埋め込むことができるようにする、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ステップEの実施中、前記細線を前記異形要素の前記表面と実質的に同一高さ位置で切断する、
請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
前記パドル(32)の頂部と前記ニードル(52)の先端部との間の距離(j)を前記ニードルが前記上昇位置にあるときに調節して前記距離(j)が前記細線(F)の直径の1倍〜5倍の長さである、
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記供給手段(4)は、前記供給手段(4)と前記ニードル(5)の前記ダクトの入口(51)との間に位置する前記細線の部分が前記可動支持体(2)の位置とは無関係にループBを形成するよう調節される、
請求項4ないし7のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−503758(P2013−503758A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527327(P2012−527327)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062907
【国際公開番号】WO2011/026916
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】