説明

細線状チタン化合物、色素増感型太陽電池用チタニア電極および色素増感型太陽電池

【課題】細線化や長繊維化を更に促進すると共に、熱処理後にチタニア電極の素材として用いたときの発電効率において良好な特性を発揮する細線状チタン化合物、およびこのような細線状チタン化合物を利用した色素増感型太陽電池用チタニア電極、並びにこうしたチタニア電極を有する色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】本発明の細線状チタン化合物は、チタン酸塩とアルカリ水溶液の混合物を加圧加熱処理することによって製造されるTiO2(B)型細線状チタン化合物であって、前記加圧加熱処理で合成されるTiO2(B)型チタン酸塩中のアルカリ金属元素より陽イオン半径が小さい不純物元素量が、原料中に含まれるチタン元素のモル数に対して1/1000以下に制御されているTiO2(B)型細線状チタン化合物を、その後900℃以上の温度で加熱処理が施されたもので、アナターゼ型のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池に用いられるチタニア電極、光触媒材料、自己清浄性塗料、ファイバー状半導体材料等の素材として有用な細線状チタン化合物、およびこのような細線状チタン化合物を利用した色素増感型太陽電池用チタニア電極、並びにこうしたチタニア電極を有する色素増感型太陽電池等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細線状チタン化合物(酸化チタン、チタン酸、チタン酸塩等:結晶を含む)は、色素増感型太陽電池に用いられるチタニア電極、光触媒材料、自己清浄性塗料、ファイバー状半導体材料等の素材として広く利用されている。
【0003】
特に、細線状チタン化合物を色素増感型太陽電池用のチタニア電極に利用した場合、光発電効率の増大が期待できるとされている。この色素増感型太陽電池では、色素によって励起された電子が酸化チタンに移動し、しかも電流を収集している透明電極に移動しており、酸化チタンの細線化および長繊維化を促進させておけばこの電子の移動中、電子の死活点となる再結合核や再反応サイトに電子が接するのを防止でき、発電効率が増大するとされている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、色素増感型太陽電池用のチタニア電極の素材として従来から用いられているチタニア粉末に細線状チタン化合物を混合することによって、チタニア粉末単独の場合に比べて発電効率が向上することが示されている。
【0005】
また上記非特許文献1によれば、ナノサイズ酸化チタン粉末と20mol/LのKOH水溶液を、「テフロン(登録商標)製遠沈管」に入れ、耐圧ガラス容器中で110℃、20時間の条件で加圧加熱処理(水熱合成処理)することで、比表面積が400m2/gを超える長繊維状の酸化チタン(酸化チタンナノワイヤー)が得られることが記載されている。
【0006】
しかしながら、水酸化カリウム(KOH)は反応性が高く取り扱いが難しいという問題がある。またカリウムの反応性が高く、水酸化カリウム中には炭酸カリウム等を多く含み、一般的に高純度の試薬を入手しにくい。こうしたことから、高純度な生成物を得るための反応を行なうには、Naの水酸化物で合成することが望ましい。
【0007】
また、上記のような方法(水熱合成法)で得られた細線状チタン化合物は、化合物中のアルカリ金属などの不純物を除去し、結晶格子を整えるために高温で加熱処理するのが一般的であるが、こうした熱処理を行なうと、細線状チタン化合物での結晶格子の再配列が起こり、比表面積が極端に減少するという問題がある。即ち、上記方法で得られた細線状チタン化合物は、熱処理温度に限界があり、希望する特性が発揮できないのが実情である。上記非特許文献1によれば、熱処理温度が500℃で比表面積が148.4m2/g、熱処理温度が600℃で比表面積が64.2m2/gまで夫々減少していることが示されている。
【0008】
一方、非特許文献2には、天然のルチルサンド(チタン含有量96%)を原料として、10mol/LのNaOH水溶液中で、150℃、72時間の条件で水熱合成を行なうことによって、TiO2(B)型の酸化チタン系細線状生成物が得られることが開示されている。また、この技術では、合成された酸化チタン系細線状生成物を塩酸で洗浄(イオン交換)した後に、試料を大気中で各々120〜1000℃に加熱(加熱時間:4時間)したときの結晶系や比表面積についても測定されている。
【0009】
この技術によれば、300〜500℃の加熱において、TiO2(B)型の酸化チタン系細線状生成物が観察されているが、500〜900℃の加熱によってアナターゼが観察されるようになり、更に900℃以上の加熱によってアナターゼの一部がルチルに相転移していることが観察されている。また、比表面積については、水熱合成後(熱処理前)においては、比表面積が45m2/gのものが得られているが、加熱に伴って比表面積が次第に低下することも示されている。
【0010】
特に、この技術では、天然のルチルサンド(チタン含有量96%)を原料としているため、ナノファイバーに不純物が多く含まれており、このようなものを色素増感型太陽電池用のチタニア電極の素材として用いた場合には、電気的特性を悪化させる可能性がある。また、上記不純物が原因して、細径化した酸化チタンが得られにくいという問題がある。
【0011】
また、この技術で得られた酸化チタン化合物では、合成後の熱処理を施すに際して、加熱温度に限界があることが予想される。即ち、細線状のチタン化合物を色素増感型太陽電池用のチタニア電極の素材等として用いる場合には、その結晶系はアナターゼ型であることが好ましいとされているが、このような結晶系は900℃以上の熱処理によって消失し、またファイバー径も著しく太くなることが報告されている。
【0012】
上記非特許文献2には、市販のチタニア粉末を原料として、10mol/LのNaOH水溶液中で、150℃、72時間の条件で水熱合成を行なうことによって、TiO2(B)型の酸化チタン系細線状生成物が得られることも開示されている。また、この技術では、水熱合成された酸化チタン系細線状生成物を塩酸で洗浄(イオン交換)した後に、試料を大気中で各々100〜1000℃に加熱(加熱時間:2時間)したときの結晶系についても測定されている。しかしながら、市販のチタニア粉末を原料として用いた場合では、天然のルチルサンドを原料として用いた場合とでは、特性上において顕著な違いは認められず、比較的低い温度での熱処理によって結晶系が変化(相転移)することや、ファイバーの径が著しく太くなる現象も現れることになる。
【0013】
非特許文献3には、アルコキシド法によって細線状チタン化合物を合成することについて開示されている。また、この技術では、市販のチタン粉末をチタニア電極に用いた場合には、その膜厚を厚くしても短絡電流Jscが飽和してしまうが、細線状チタン化合物をチタニア電極に用いた場合には、短絡電流Jsc(「短絡電流Jsc」については、後述する)が飽和する現象が見られないことも示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】実平、外2名、「酸化チタンナノワイヤーの合成と色素増感太陽電池」、化学工業、第60巻、第796−800頁(2004年10月)
【非特許文献2】Systhesis of titanate,TiO2(B),and anatase TiO2 nano−fibers from natural rutile sand,Sorapong Pavasupree,Yosikazu Susuki,Susumu Yosikawa,Ryoji Kawahara,Journal of solid Stete Chemistry,178(2005),3110−3116、2179−2185
【非特許文献3】Formation of Titania Nanotubes and Application for Dye−Sensitized solar Cells,Motonari Adachi,Yusuke Murata,Issei Okada and Susumu Yoshikawa,Journal of Electrochemical Society,150(8)G488−G493(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これまで提案されてきた技術では、得られる細線状チタン化合物の特性(細線化や長繊維化、熱処理後にチタニア電極の素材として用いたときの発電効率)に関して若干の問題があり、その特性において更なる改善の余地がある。よって本発明の目的は、細線化や長繊維化を更に促進すると共に、熱処理後にチタニア電極の素材として用いたときの発電効率において良好な特性を発揮する細線状チタン化合物、およびこのような細線状チタン化合物を利用した色素増感型太陽電池用チタニア電極、並びにこうしたチタニア電極を有する色素増感型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成することのできた本発明の細線状チタン化合物とは、チタン酸塩とアルカリ水溶液の混合物を加圧加熱処理することによって製造されるTiO2(B)型細線状チタン化合物であって、前記加圧加熱処理で合成されるTiO2(B)型チタン酸塩中のアルカリ金属元素より陽イオン半径が小さい不純物元素量が、原料中に含まれるチタン元素のモル数に対して1/1000以下に制御されているTiO2(B)型細線状チタン化合物を、その後900℃以上の温度で加熱処理が施されたものであり、アナターゼ型である点に要旨を有するものである。
【0017】
本発明の細線状チタン化合物は、色素増感型太陽電池に用いられるチタニア電極、光触媒材料(例えば、空気清浄機や車両用脱臭材料)、自己清浄性塗料(例えば、屋外塗料、建築外壁材料)、ファイバー状半導体材料(例えば、有機型太陽電池のバルクヘテロ構造の構成材料)等の素材として有用なものであるが、特に色素増感型太陽電池に用いられるチタニア電極の素材として用いた場合には、良好な発電効率を発揮するものとなる。その具体的な構成としては、上記のような細線状チタン化合物と、粉末状のチタニアを混合することによって構成されたチタニア電極が挙げられる。また、このときの細線状チタン化合物の混合割合は、0.1〜20質量%(細線状チタン化合物と粉末状のチタニアの合計量に対する割合)であることが好ましい。
【0018】
上記のようなチタニア電極を用いることによって、良好な発電効率を発揮する色素増感型太陽電池が実現できる。
【0019】
尚、本明細書において、「チタン酸」とは、チタン酸塩(xM2O・yTiO2;Mはアルカリ金属。x、yは自然数)の金属Mが水素原子Hに置き換わった化合物((xH2O・yTiO2);特にH2Ti37・3H2OなどのH2Ti37・nH2O(nは0〜3の自然数))のことをいい、含水型酸化チタン(H2Ti37(x=1、y=3))を含むものである。
【0020】
また本明細書において「酸化チタン系化合物」とは、酸化チタン(TiO2)、含水型酸化チタン(H2Ti37)、およびその水和物(H2Ti37・mH2O(mは1〜3の自然数))を指す。更に、本明細書において「チタン化合物」は、前記チタン酸塩、チタン酸、酸化チタン系化合物の全てを含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、チタン化合物の細線化および長繊維化を更に促進させることができると共に、高温の熱処理によっても相転移が生じないような細線状チタン化合物が実現でき、このような細線状チタン化合物を色素増感型太陽電池用のチタニア電極の素材として用いた場合には、発電効率(光発電効率)の増大が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】チタン酸塩が巻回構造を構成することを説明するための模式図である。
【図2】微視的なTiO6結晶八面体の歪みの違いを概念的に示す説明図である。
【図3】二次元に広がった不純物の分布状態を示す概念図である。
【図4】本発明で使用する製造装置の一例を説明するための概略断面図である。
【図5】実施例で得られた乾燥針状化合物の図面代用走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例で得られた乾燥針状化合物の図面代用走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例で得られた乾燥針状化合物のラマンスペクトルを示すグラフである。
【図8】比較例で得られた乾燥針状化合物のラマンスペクトルを示すグラフである。
【図9】乾燥針状化合物を様々な温度で熱処理したときの試料のXRDスペクトルを示すグラフである。
【図10】乾燥針状化合物を400℃で5時間熱処理したときの図面代用走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】乾燥針状化合物を900℃で24時間熱処理したときの図面代用走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】乾燥針状化合物を1050℃で24時間熱処理したときの図面代用走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例3において、各チタニア電極において加熱時間と各特性の値(いずれも絶対値で評価)との関係を示す棒グラフである。
【図14】実施例4において、各チタニア電極の構成と各特性の値(いずれも絶対値で評価)との関係を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、チタン化合物の細線化および長繊維化を更に促進させるという観点から、かねてより研究を進めてきた。その研究の一環として、製造の際に用いる原料中に含まれる特定の不純物が、チタン化合物の細線化や長繊維化を阻害していることを突き止めた。そして、このような不純物の量を極力低減した状態で水熱合成すると、チタン化合物の細線化および長繊維化が有効に促進されることを見出し、その技術的意義が認められたので同一出願人によって出願している(特願2008−269003号)。
【0024】
上記技術は、チタン酸塩とアルカリ水溶液の混合物を加圧加熱処理し、チタン酸塩を細線状に成長させる工程を含む細線状チタン化合物の製造方法において、前記加圧加熱処理で合成されるチタン酸塩中のアルカリ金属元素より陽イオン半径が小さい不純物の原子の個数を、原料中に含まれるチタン元素の原子の個数の1/50以下に制御しつつ操業することによって、チタン化合物の細線化および長繊維化を実現したものである。
【0025】
本発明者らは、上記発明が完成された後も細線状チタン化合物の特性を改善するべく、更に検討を重ねた。その結果、原料中に含まれる不純物元素を更に低減して水熱合成し、その後900℃以上の温度で熱処理を施したものでは、その特性においても従来の細線状チタン化合物の特性を凌駕するものとなることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の細線状チタン化合物では、900℃程度の熱処理においても相転移が生じることなく、結晶系がアナターゼを主体とするものとなるのである。そして、このような細線状チタン化合物は、チタニア電極の素材として用いたときに色素増感型太陽電池の発電効率が更に向上したものとなる。
【0026】
不純物元素の低減によってチタン化合物の細線化および長繊維化が有効に促進される原理は次のように考えることができる。一般的にイオン半径は、元素、イオンの価数、配位数により異なることが知られている。本発明では、価数はチタン酸塩中で安定なイオンの価数を用いる。即ち、K,Naは1価の陽イオン、Ca,Znは2価の陽イオン、Alは3価の陽イオン、Siは4価の陽イオンとなる。またイオン半径は、本来ならばチタン酸塩中のイオンの半径を以て議論すべき(例えば、「バトラー/ハロッド 無機化学(上)」(R.D.Sharnnon Acta Crytallographica,A32,751(1976):参考文献))であるが、同配位数のイオン半径を基準として、イオン半径を相対比較してイオン半径を議論しても構わない。また、後述する機構からして、チタン化合物の細線化に影響を及ぼす元素は、原料としてのアルカリ水溶液を構成するアルカリ金属元素よりも、前記した様に陽イオン半径を比較したときに陽イオン半径が小さい元素であることが必要となる。
【0027】
Na2Ti37等のチタン酸金属塩は、チタン酸と金属元素とが層状構造を構成し、それらの元素比が一定の整数比に従う化合物を構成するため、チタン酸の層と金属原子層との間に一定の元素の比率に従った段差構造が構成され、更にそれらの段差構造が水熱合成法による加圧加熱処理中で自己整合的にロール状の針状結晶を成長させるものと考えられている(例えば、The Soft Chemical Systhesis of TiO2(B) from layered Titanatees,THOMAS P.FEIST AND PETER K.DAVIEST)。こうした巻回構造について、図面を用いて説明する。
【0028】
図1は、チタン酸塩(例えば、チタン酸ナトリウム:Na2Ti37)が巻回構造を構成することを説明するための模式図であり、図中1はTiO6結晶八面体を示している。TiO6結晶八面体1は、3連続した箇所で段差を生じており、水熱合成により最終的に針状化合物の形状を得るためには、上記のTiO6結晶八面体1の角部が結晶の歪みに対して最も弱い構造をしているので、TiO6結晶八面体1同士が一定の割合で歪みを生じて、長期的に歪みを蓄積することにより、最終的に巻回構造を示し、一次元構造である針状化合物を構成すると考えられる。
【0029】
図2は、例えばNa陽イオンとK陽イオン等のように金属元素イオンの半径(陽イオン半径)が異なる場合の、微視的なTiO6結晶八面体1の歪みの違いを概念的に示す説明図である。図2(a)は、Na陽イオン(図中、2で示す)を含む場合(即ち、アルカリ水溶液としてNaOHを使用した場合)を示し、図2(b)は、K陽イオン(図中、3で示す)を含む場合(即ち、アルカリ水溶液としてKOHを使用した場合)を示している。
【0030】
例えば、アルカリ金属イオンとしてK陽イオンが存在する場合[図2(b)]には、TiO6結晶八面体1により構成される平面間隔が広がり、TiO6結晶八面体1により構成される平面同士の幾何学的な干渉が少なくなる。そして、平面同士の幾何学的な干渉が少なくなるために、TiO6結晶八面体1の平面上の段差における歪みが容易に大きくなると考えられる。また、陽イオンであるKやNaは、電子を供給してTiO6結晶八面体1の角部の酸素の分子の軌道にも影響を与えていると考えられる。
【0031】
こうした原理からして、チタン酸塩の平面上段差は、用いるアルカリ金属元素のイオン半径(陽イオン半径)に影響されると考えることができる。Na陽イオンの半径は0.116nmであるのに対して、K陽イオンの半径は0.152nmである「例えば、「バトラー/ハロッド 無機化学(上)」(R.D.Sharnnon Acta Crytallographica,A32,751(1976):参考文献)」。
【0032】
従って、アルカリ水溶液として、KOHを用いた場合(即ち、アルカリ金属原子としてKが存在する場合)は、NaOHを用いた場合(即ち、アルカリ金属原子としてNaが存在する場合)に比べて、巻回構造の曲率半径が小さくなることが予想され、得られるチタニア化合物は結晶がより細線化して大きな比表面積を示すものとなると考えられる。
【0033】
上記のような機構に対して、合成雰囲気中に一定量以上の不純物元素が存在する場合には、不純物元素の歪みが蓄積されて形成される長期的な巻回構造を乱して局所的に曲率半径を変化させて巻回構造の構成を阻害してしまうため、曲率半径が大きくなる方向に作用するものと考えられる。即ち、不純物元素は、長期的なTiO6結晶八面体により構成される平面の歪みを一定間隔で乱すことによって、巨視的な巻回構造の整合性を乱すものと考えられる。水熱合成の環境下で混入する不純物は、上記のようにCa,Al,Zn,Si,Mg等が考えられるが、これらの不純物は、概ねK陽イオンやNa陽イオンに比べて、イオン半径(陽イオン半径)が小さく且つ電子の価数が多いものである。例えば、上記参考文献によれば、これらの元素の陽イオン半径は、Ca2+:0.114nm、Al3+:0.068nm、Zn2+:0.088nm、Si4+:0.054nm、Mg2+:0.086nmとなる。尚、同一元素であっても、イオンの価数と配位数によってイオン半径が異なるが、ここでは、当該元素がチタン酸塩として化合するときの陽イオンの価数におけるイオン半径とする。
【0034】
従って、TiO6結晶八面体により構成される平面の間に不純物元素のイオンが置換された場合には、電子の価数の等しいKイオンやNaイオンを排斥してしまうので、原子の個数が少なくても、不純物元素によって結晶の巻回構造が崩され易くなるものと考えられる。ここで、TiO6結晶八面体によって構成される平面の間に入るアルカリ金属元素(KまたはNa)は二次元の分布をもつので、不純物の原子がアルカリ金属原子の1/100であった場合には、図3(二次元に広がった不純物の分布状態を示す概念図)に示すように(図中、4はアルカリ金属元素、5は不純物元素を示す)、一次元的(直線的)には10個に1個の割合で不純物元素が存在することになるので、巻回構造への影響は無視できないことになる。
【0035】
尚、上記した巻回構造について、シート状のH2Ti37分子がアルカリ溶液中で、周囲に存在するイオンの電子状態に関連して、分子の電子軌道を変性させるため、一定の曲率を持ってシート状のH2Ti37分子が安定するとの説明もなされている(例えば、“Formation Mechanism of H2Ti37 Nanotubes”S.Zhang,L-M.Peng,Q.Chen,G.H.Du,G.Dawson and W.Z.Zhou,The American Physical Society Vol.91,No.25(2003)256103−1)。
【0036】
従来技術で示したように(前記非特許文献1参照)、KOH系での水熱合成で得られたチタニア化合物は、その後の熱処理によって、比表面積が極端に低下するものとなっている。こうした現象は、NaOH系の水熱合成によっても見られ、1000℃ではチタニア化合物の形状自体が崩れ、原子の位置交換によって、ファイバーが太くなる事例も報告されている。これらの現象は、上記した巻回構造を構成する微小なTiO6結晶八面体の曲率の変化が原因であると説明できる。
【0037】
本発明のチタニア化合物は、不純物元素を低減した原料を用いて水熱合成したものを素材とするものであるが、こうしたチタニア化合物では、理想的な巻回構造を構成するため、その結果として化合物結晶の細径化が図られ、且つ結晶構造が理想的であるため、その後の熱処理により格子歪みの緩和が少なく、結晶の相転移の温度が従来技術で示されたものに比べて200℃程度高温側に移動すると考えられる。
【0038】
一般的に、結晶を高温で加熱処理した場合には、熱エネルギーにより原子が振動する。結晶中の欠陥などの不完全な結晶部分がある場合は、熱による振動のために原子位置が移動して一時的に多くの原子と結合を行なうことになる(電子の共有状態が異なる)。そして、最終的に最も安定な結合を取ることで最も安定な状態となる。こうした現象は、結晶の不完全な部分を解消する熱処理(アニール処理)の作用として良く知られているものである。また、上記のように結晶格子中の歪みの解消だけでなく、例えば結晶中に不純物が存在する場合も、熱振動によって不純物元素の位置が変化して、不純物を捕らえることのできる界面や粒界に不純物が移動させ、または不純物を不活性にし、更には結晶の外に排出する可能性もある。
【0039】
このように、結晶中の原子の位置の変換が行なわれるとされる高温(例えば400℃以上)で加熱する処理は、結晶中の歪みを修復し、且つ結晶中の不純物元素を移動させて不活化させる可能性があり、一般的に材料の電気的特性を向上させる方向に作用するが、結晶が相転移する場合には、最適な結晶系を維持するために相転移が生じる温度よりも低い温度で加熱処理する必要がある。こうした観点からして、従来の技術で得られたチタニア化合物では、材料特性の向上に限界があった。
【0040】
本発明で用いるチタニア化合物は、不純物元素を極力低減した原料を用いて水熱合成したものである。このときの不純物元素量は、原料中に含まれるチタン元素のモル数に対して1/1000以下に制御する必要がある。また、水熱合成した段階でチタニア化合物(細線状チタニア化合物)は、その結晶系がTiO2(B)型のものであるが、その後の熱処理によってアナターゼ型のものとなる。このときの熱処理温度は、900℃以上(好ましくは1000℃以上、より好ましくは1050℃以上)とする必要がある。但し、熱処理温度があまり高くなり過ぎると、その結晶系がルチル型に転移するので、1100℃未満(但し、24時間保持の場合)とすることが好ましい。
【0041】
また熱処理を行なうときの時間(処理時間)については、何ら限定するものではないが、細線状チタニア結晶全体にわたり格子歪みを解消するという観点からして、格子緩和に必要な0.5時間以上とすることが好ましい。しかしながら、処理時間があまり長くなっても、一定温度で熱処理を継続することは、熱履歴を蓄えることとなり、より高温まで加熱したときと同等の現象が現れるので、好ましくない転移が発生する可能性があり、工業的にコストが上がるだけであるので48時間以内とするのが良い。
【0042】
尚、上記加熱するときの雰囲気については、特別な設備を必要とせず、大気中で実施することができるが、チタニア中の酸素欠損を補う観点から、酸素雰囲気で加熱しても良い。また、大気中の窒素や酸素の混入が問題となる場合には、不活性ガス雰囲気或は真空雰囲気で加熱しても良い。また、意図的に酸素欠陥を生じさせて半導体の特性を制御したい場合には、水素などの還元性ガス雰囲気で加熱しても良い。上記加熱の際の加熱速度は速いほど良く、例えば20℃/分以上としても良い。このように加熱速度を制御することにより、脱水時に、巻回構造特有の構造が崩れて、従来の結晶の性質を帯びる可能性を低くするため、巻回構造の結晶の有する特殊な物性を顕在化させるという作用が発揮される。
【0043】
上記のようなチタニア化合物を得るためには、原料中に混入する不純物の濃度を抑制することが重要であるが、不純物の濃度を低減する手段としては、強アルカリ溶液を調製する器具にガラス製等のアルカリと反応する器具を使わないことが基本となる。水酸化ナトリウムの溶解は、溶解熱が大きく発熱を伴い、且つ溶液の粘性が高い。また、溶液を希釈した場合は、その体積が減少するので、メスフラスコで評線を合わせる場合は、数度純水を満たして攪拌を繰り返す必要がある。従って、メスフラスコで調製した場合は評線を合わせるために高温の溶液を冷却し、溶液中の気泡を除去するために一定時間溶液を放置する必要があり、且つ評線を正確にあわせるために、数回希釈を行なう必要がある。
【0044】
またNaOH標準溶液を使用する前に、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によって不純物濃度を測定し、それが原料中に含まれるチタン元素のモル数に対して1/1000以下となっていることを確認してから水熱合成を行なうようにすることも有用である。
【0045】
上記工程で用いる器具をテフロンコーティング等の反応性が低いコーティング材料や樹脂を用いることが望ましい。また工業的には予め混合する原料の比率を定めておき、予め体積減少を考慮して混合する等の手法が考えられる。尚、水熱合成に用いるアルカリ水溶液としては、KOHやNaOHが代表的なものとして挙げられるが、より不純物の少ない試薬を入手できるとの観点からすればNaOHを用いることが好ましい。
【0046】
本発明で用いる細線状チタン化合物は水熱合成によって製造されるものである。水熱合成は、チタン酸塩を含む液を加圧加熱処理し、チタン酸塩化合物(結晶を含む)やチタン酸化合物(結晶を含む)を成長させる反応をいう。チタン酸塩を含む液の調製手法は、従来公知の種々の手法を採用でき、例えば、チタン酸塩を直接水に溶解ないし分散させてもよいが、好ましくは酸化チタン系化合物(特に酸化チタン)とアルカリ水溶液を混合する。酸化チタン系化合物とアルカリ水溶液の混合物では、水熱合成が速く進行する。
【0047】
酸化チタンとしては、高純度なものであればどの結晶系のものでも良く、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型、その他報告されているスリランカイト型、高圧型、II型であっても良い。合成酸化チタンを用いると、生成物(細線状チタン化合物)に混入する不純物をより低減でき、生成物の電気的特性を高めることができる。実施例では、アナターゼ型を用いた。
【0048】
水熱合成後の細線状チタン化合物は、その比表面積(BET比表面積)が47〜81m2/g程度のものとなる。また、この細線状チタン化合物は、結晶晶系がTiO2(B)構造を主体とするものとなる。
【0049】
水熱合成する際に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水酸化物の水溶液が使用できる。このアルカリ水溶液は、一般的に高濃度アルカリであり、アルカリ金属の濃度は、例えば、1〜20mol/L程度、好ましくは2〜17mol/L程度、さらに好ましくは5〜15mol/L程度である。
【0050】
酸化チタン系化合物の量は、アルカリ水溶液100mLに対して、例えば、1〜30g程度、好ましくは3〜20g程度、さらに好ましくは5〜15g程度である。
【0051】
水熱合成の加圧、加熱条件は、例えば、以下の通りである。
ゲージ圧力:0.2〜2MPa、好ましくは0.3〜1.5MPa、さらに好ましくは0.4〜1.2MPa(特に0.5〜1.0MPa)
反応温度:110℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130〜200℃(特に160〜190℃)
【0052】
上記水熱合成によって得られるチタニア化合物は、層状に積層されたチタン酸塩と酸化チタンが巻回した細線状化合物になっている。この巻回細線状化合物は、必要によって洗浄(特に水洗)した後、プロトン酸と接触させることによってイオン交換もしくはイオンを脱離し、次いで脱水処理することが望ましい。プロトン酸と接触させることにより、チタン酸塩(xM2O・yTiO2)部分が、チタン酸(例えばH2Ti37・nH2O。特にH2Ti37・3H2O)になる。また乾燥処理により、チタン酸が含水型酸化チタン(H2Ti37)になり、更に乾燥が進むと酸化チタン(TiO2)になる。尚、これら後処理を実施しても、巻回細線状構造は維持され、後処理の段階に応じて各種の巻回細線状チタン化合物を製造できる。ただし乾燥が進んで当初のチタン酸塩部分が酸化チタンになると、全体が酸化チタンとなり、化合物レベルでは巻回構造は消失してTiO2(B)構造となる。
【0053】
尚、巻回細線状化合物の凝集力は比較的弱いため、反応液の除去、プロトン酸液の除去、および水洗液の除去のいずれの場合においても弱い凝集力で結合している凝集体を維持するためには、外力を強く作用させないようにして液体部分を分離除去することが推奨される。液体部分の分離除去手段としては、遠心分離を採用してもよいが、自然沈降(デカンテーション)や濾過等を採用する方が望ましい。本発明では巻回細線状化合物のハンドリング性が高く、沈降性も高まっており、自然沈降(デカンテーション)や濾過などを採用しても、液体からの分離回収を極めて容易に行うことができる。
【0054】
プロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸などの強酸(鉱酸)が一般的である。プロトン酸と接触させる場合のプロトン濃度は、例えば、0.1mol/L以上、好ましくは0.3mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上である。プロトン酸濃度が低すぎると、チタン酸塩とのプロトン交換効率が低下する。プロトン酸濃度の上限は特に限定されないが、製造コストの観点から上限を設定してもよい。またプロトン酸濃度が高いと、チタン酸塩が一部溶解することもある。プロトン濃度は、例えば、6mol/L以下、好ましくは5mol/L以下、さらに好ましくは3mol/L以下にしてもよい。
【0055】
水熱合成されたチタニア化合物は、まず乾燥処理されるが、そのときの乾燥処理の方法は特に限定されず、凍結乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥(真空乾燥)、風乾燥、およびこれらを適宜組み合わせた乾燥手法(真空凍結乾燥、加熱減圧乾燥等)等を適宜採用できるが、ナノ状物質を外部環境へ拡散させないためには、密閉性のよい真空乾燥器を用いることが望ましい。チタン酸を含水型酸化チタンにするのは、比較的マイルドな乾燥条件(例えば、常圧で加熱乾燥する場合には、70〜150℃程度の加熱条件)でよいが、含水型酸化チタンを酸化チタンにするには、比較的強い乾燥条件(例えば、常圧で加熱乾燥する場合には、300〜600℃程度の加熱条件)が求められる。
【0056】
上記のようにして得られる細線状チタン化合物は、その細線化および長繊維化が更に促進された構造を有している。このようなチタン化合物は、チタン化合物の細線化が促進されたため、溶液中で凝集が促進されるので、そのBET比表面積にもその特徴がある。単位体積当りの表面積を単純円筒モデルで計算すると、針状結晶の様にアスペクト比が1より大きな領域では、BET比表面積はその値が大きくなるとアスペクト比が高くなることが計算でき、結晶の細線化(針状結晶)が促進されればその値が大きくなる。従って、針状結晶では大きなBET比表面積を有することは細線化を示す指標となり望ましい。
【0057】
色素増感型太陽電池向けチタニア電極を構成する場合は、BET比表面積が大きければ色素の吸着能が高くなり望ましいとされている。上記で得られるチタニア化合物では、BET比表面積は、例えば48m2/g以上、好ましくは81m2/g程度のものとなる。色素増感型太陽電池では、色素によって励起された光電子が酸化チタンに移動し、しかも電流を収集している透明電極に移動しており、酸化チタンの細線化および長繊維化を促進させておけばこの光電子の移動中、電子の死活点となる再結合核や再反応サイトに光電子が接するのを防止でき、発電効率が増大することが予想される。
【0058】
色素増感型太陽電池向けチタニア電極は、これまでチタニア粉末(主にアナターゼ型結晶)によって構成されているのが一般的である。こうしたチタニア電極では、チタニア電極中を電子が伝播するときに、多孔質のチタニア電極の結晶方位が揃っておらず、結晶方位の交差する場所や粒界等に格子欠陥等の電子をトラップする電子捕獲サイトが多く存在すると考えられる。また、電子が結晶中を伝播する場合、結晶方位が揃っていないために、電子の運動方向が頻繁に変えられ、一定の確率でチタニア電極表面に達してれレドックス溶液(Redox溶液)と再反応を起こす確率があり、発電効率が低下する原因となる。
【0059】
こうした問題を解決するために、チタニア粉末に細線状チタニア化合物を配合することによって、細線状チタニア化合物の結晶方位に沿って電子を運搬できる、所謂バイパスを設けることによって、電子の損出を少なくすることができる。チタニア粉末に細線状チタニア化合物を配合することによって、チタニア電極の発電効率が向上すること自体は既に知られている現象であるが(例えば、前記非特許文献1)、これまで提案開発されている細線状チタニア化合物では、チタニア粉末に混合しても、電極の焼成過程で収縮が大きく、基板から剥がれ落ちる問題があった。
【0060】
これに対し、上記のようにして得られた細線状チタン化合物(不純物を低減し、更に高温で処理したもの)と、チタニア粉末を混合したものと、チタニア電極の素材として用い場合には、チタニア電極の発電効率が大きく向上できるのである。こうした効果を発揮させるためには、細線状チタン化合物の配合量(細線状チタン化合物と粉末状チタニアの合計量に対する割合)は、0.1質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、この配合量が過剰になると、チタニアナノファイバー自身の色素の吸着量が少ないため、相対的な色素の吸着量が低下することとなるので、20質量%以下とすることが好ましい。細線状チタン化合物の配合量のより好ましい下限は1質量%(更に好ましくは2質量%)であり、より好ましい上限は10質量%(更に好ましくは6質量%)である。
【0061】
本発明で用いる細線状チタン化合物は、水熱合成によって得られるものであり、こうした水熱合成を実施するための装置は従来公知の水熱反応装置を用いることができるが、好ましくは、以下に説明する反応装置を用いて実施する。図4は、本発明で用いる反応装置の一例を示す概略断面図である。
【0062】
図4に示した製造装置では、円筒状の電磁石(図示例では、超伝導マグネット)41の中央筒型空間(室温ボア)42(図示例では直径100mm)のボアに密閉式加圧用容器44がセットされている。この加圧用容器44は、ヒーター46によって加熱可能になっており、また加圧用容器44にはチタン酸塩を含む液を入れた密閉式反応容器45と水43が収容されている。前記密閉式加圧用容器44は耐圧性のある剛性容器である一方、反応容器45は、外圧によって内容物を加圧可能な柔軟性の容器である。このような装置を用いれば、ヒーター46によって加圧用容器44内の水43が加熱され、この容器44の内圧が上昇するため、反応容器45内のチタン酸塩を含む液が加圧される。
【0063】
尚、図4に示した装置構成では、電磁石(超伝導マグネット)41から磁場を印加できるものを示したが、本発明の細線状チタン化合物は基本的に磁場を印加せずとも製造できるものである。但し、必要によって、磁場を印加しつつ水熱合成を行なっても良い。
【0064】
また図示例では、密閉式加圧用容器44が蓋体部44bと本体部44aとから構成されており、これらをネジ込み式で開閉することで、耐圧性を維持しつつ内容部を取り出し可能になっているが、容器44の開閉方式はネジ込み式に限定されず、公知の種々の方式を採用できる。
【0065】
また図示例では、反応容器45はマグネットセンター(磁場が最大となるところ)に位置しているが、マグネットセンターから外れてもよい。更に加圧用容器44内に反応容器45を複数収容してもよく、複数収容する場合には、横に並べて収容してもよく、縦に積み重ねて収容してもよい。尚、加圧用容器44に水43と反応容器45とを入れるのは、水43を圧力媒体とすることによって水熱合成に必要な圧力を比較的低温で達成できるようにするためであり、また強アルカリと装置との直接接触を避けて装置寿命を長くするためであるが、反応容器45は必須ではなく、加圧用容器44内に、直接、チタン酸塩を含む液を入れて水熱合成を行ってもよい。
【0066】
ヒーター46をマグネットセンターに配設する場合、たとえ弱磁性体のヒーターであってもマグネットの吸引力によりヒーターがマグネットセンターに引き付けられるために、マグネットセンターから外れた場所を直接加熱することは難しい。そこでマグネットセンターから外れた場所には、伝熱板、例えば銅板50を配置することによって、ヒーター46の熱を速やかに伝えることが推奨される。また加圧用容器44の外面のうち、ヒーター46で直接加熱されていない部分(図示例では、伝熱板50で覆われている部分および蓋体部分)は、断熱材71でカバーすることが望ましい。
【0067】
更に、図4に示した装置構成では、冷却システム51を設置している。この冷却システム51は、室温ボア42の内周面に真空層と冷却水層とを形成しており、ヒーター46の熱的影響が超伝導マグネット41に及ぶのを防止している。冷却システム51は、図示したものに限定されず、公知の冷却手段を単独でまたは適宜組み合わせて採用できる。磁場発生手段41が通常の電磁石や永久磁石である場合には、冷却システム51は不要であるが、例えば常伝導コイルを用いた場合はコイルに発生するジュール熱を冷却するために大量の冷却水が必要となる。
【0068】
図示例では、加熱温度は、ヒーター近傍の加熱温度計62によってモニターしつつ制御でき、また圧力は加圧用容器44の内部と配管47および配管継手48aを介して連通する圧力センサー49によってモニターしつつ制御できるようになっている。
【0069】
更に、図4に示した装置構成では、加圧用容器44の気相部の温度を測定するための熱電対式内温計61が設けられている。この内温計61は、加圧用容器44の蓋体部から延伸する配管47に取り付けられた締め込み式継手48bから加圧用容器44内に挿入されており、容器44の密閉性は維持されている。そして加圧用容器44内の密閉性を維持しつつ気相部温度を測定することによって、間接的に加圧用容器44内の圧力変化を測定することが可能となり、加圧用容器44の圧力変動関知センサ(特に漏洩センサ)として使用できる。即ち、加圧用容器44は密閉性が維持されているため、外界との熱的収支が遅く、短時間でみれば断熱系とみなすことができる。このような加圧用容器44において内容物のリークが生じると、気相部は断熱膨張して温度が低下する。また逆に加圧気体を送り込んだ場合、加圧気体と内容物との混合が生じるまでは気相部は実質的に断熱圧縮され、温度が上昇する。通常の圧力ゲージによる圧力変化は、ダイヤフラムの歪み量を計測するものであって鈍感でありかつ経時的変化を示すのに対し、気相部の温度変化は、圧力変化に対して微分的変化を示し、極めて鋭敏である。そのため、鋭敏な圧力変動関知センサ(特に漏洩センサ)として使用できる。
【0070】
熱電対式内温計61の先端部は、熱伝導ルートの長さの視点に立ったとき、加圧用容器44のうちヒーター46によって直接加熱されている部分(加熱部)から遠く離れているのが望ましい。図示した熱伝導ルートは、加熱部を起点に、加圧用容器本体部44a上部の非加熱部、加圧用容器蓋体部、配管47、配管継手48a、締め込み式継手48b、熱電対のシース部を経て、熱電対式内温計61の先端部に到達しており、その距離は長いといえる。熱電対式内温計61の軸部(シース部など)が、加熱部と直接接触していないことが推奨され、例えば、軸部は、非加熱部や非加熱部から延伸する継手部などと接触していることが望ましい。
【0071】
熱電対式内温計61にシース熱電対を用いる場合、保護管(圧力隔壁)には、耐熱性と熱伝導性を備えた材料、例えば、貴金属、ニッケル、ステンレス、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド、セラミックスなどを使用するのが望ましい。熱電対式内温計61は、気相部温度を測定可能である限り、加圧用容器44内に挿入する必要はない。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0073】
(実施例1)
前記図4に示した製造装置を用い、以下のようにして細線状チタン化合物を製造した。まず初めに、水酸化ナトリウム(Nakarai Tesque社製 試薬特級:純度96%)を、208.4g(NaOHの分子量:40.0)素早く秤量して、全量をビーカに移した。このとき、薬さじ等に付着したNaOHも、水によって洗い流した。そして、溶液の全量が500mLを超えない様に注意して、全NaOHをビーカ中で水と混合して水酸化ナトリウム水溶液とした。このとき溶解に用いた水(純水)は、比抵抗19MΩ・cm以上の電子工業用の純水である。
【0074】
NaOHは溶解熱を発生するため、マグネティックスターラで攪拌を行ない、且つビーカを冷却した。尚、原料となるNaOHには、不純物として前記したMg(5ppm),Ca(0.002質量%),Zn(0.001質量%)およびAl(0.002質量%)を含むが、これらの元素の原子の個数は、Naの原子の個数に対してMgで5ppm、Caで0.001原子%、Znで3ppm、Alで0.002原子%程度となっていた。また原料となるNaOHには、上記不純物元素の他、K(0.05質量%)、Pb(5ppm)、Fe(5ppm)およびNi(0.001質量%)等の不純物(陽イオンを形成する元素)も含んでいたが、これは本発明の効果に影響を与えないほど、微量であった。
【0075】
上記のようにして得られた水酸化ナトリウム水溶液を、500mLのメスフラスコに移した。この際も、残留した水酸化ナトリウム水溶液を洗い流す必要があるが、評線を超えないように注意して洗い流した。溶解後の水酸化ナトリウム水溶液は熱を持ち、粘性も高く、泡も容易に抜けないので、約1晩水溶液を放置した。その後、水を加えて評線に合わせた。メスフラスコの評線に合わせた後に、メスフラスコの蓋をしっかり持って、上下を逆さにして攪拌し、しばらく放置した。このとき水の溶解によって体積が減るので、前記の工程を繰り返して評線まで水を満たして、水酸化ナトリウム水溶液の標準溶液(10mol/L)を得た。
【0076】
上記のようにして得られた水酸化ナトリウム水溶液の標準溶液(10mol/L)100mLに対して、10gのアナターゼ型酸化チタン粉末(和光純薬工業社製、Titanium(IV) Oxide,Anatase Form 5μm:純度99.9%)を混合し、ビーカに入れてマグネティックスターラによって30分以上攪拌することによってアナターゼがよく分散した原料溶液を調製した。
【0077】
上記原料溶液を、ポリテトラフルオロエチレン製の反応容器(長さ10cm)45に入れて、ねじ部にポリテトラフルオロエチレン製テープを巻き、原料溶液が反応容器45の8.5割まで溶液で満たして若干空気を残して、密栓を行なった。この反応容器45を加圧用容器44の底に設置し、加圧用容器44内の蓋44bから7cmの位置まで水を注いだ後、加圧用容器44の蓋44bを閉めて密閉した。ヒーター46を用いて加圧用容器44内の水43を加熱して、反応容器45を加圧・加熱した(温度185℃、ゲージ圧力0.95MPa)。加圧・加熱を66時間継続した後、反応容器45を取り出し、室温まで冷却した。得られた反応液中には、Na2Ti37の巻回構造を有する柔らかで嵩高なチタニア化合物(針状化合物)の集合体が沈殿することなく析出していた。
【0078】
針状化合物(Na2Ti3Oの巻回構造を有する針状化合物)の柔らかで嵩高な集合体を、純水で洗浄・濾過して、塩酸によりNaイオンと水素イオンを置換して、針状化合物を得た後、試料を400℃で加熱・脱水(乾燥)した。乾燥した針状化合物(実施例)の走査型電子顕微鏡写真(撮影倍率:5000倍)を図5に示す。また通常の純度で(他の合成条件は基本的に上記と同じ)で合成して得られた針状化合物(比較例)の走査型電子顕微鏡写真(撮影倍率:5000倍)を図6に示す。
【0079】
これらの結果から明らかなように、本発明の針状化合物(図5)では、その形態がより細線化しており、長繊維化(アスペクト比が高い)していることが分かる。これに対して、比較例の針状化合物(図6)では、ある程度の細線化は認められるが、繊維の長さが比較的短くなっていることが分かる。
【0080】
上記で得られた針状化合物(実施例)を、軽く粉砕して、ラマン分光分析を行い、その結晶性について調査した。このときの測定条件は、下記の通りである。
[ラマン分光測定条件]
装置:「NR−1000型レーザラマン分光光度計」(商品名:日本分光株式会社製)
励起光源:アルゴンイオンレーザ
励起波長:514.5nm
励起光出力:100mW
測定方法:90度散乱法
測定ビーム径:約200μmφ
積算回数:2回
【0081】
実施例の針状化合物のラマンスペクトルを図7に、比較例の針状化合物のラマンスペクトルを図8に、夫々示す。これらの結果から明らかなように、高純度の原料を用いた本発明の針状化合物(図7)では、アナターゼ結晶晶系が一部共存しているが(ラマンシフト151cm-1のピーク)、高い結晶性を示すTiO2(B)型を主体とするチタン化合物が形成されていることが分かる。これに対して、比較例の針状化合物(図8)では、ラマンスペクトルピークが広がり、結晶性が低くなっていることが分かる。
【0082】
上記で得られた針状化合物(実施例)を、軽く粉砕して、島津製作所製の「自動比表面積/細孔分布測定装置トライスター3000」を用いてBET比表面積を測定したところ、81.0m2/gであった。また上記した比較例の針状化合物におけるBET比表面積を測定したところ、37.9m2/gであった。
【0083】
(実施例2)
実施例1で得られた各種チタニアナノファイバー(乾燥針状化合物)に、600℃、800℃、900℃、1000℃、1050℃、1100℃の夫々に大気雰囲気で熱処理したとき(加熱時間はいずれも24時間)の試料のX線回折(XRD)スペクトルを図9に示す。この結果から明らかなように、通常ではルチル(rutile)に転移する温度であると報告されている1000℃で24時間加熱したものであっても、試料にルチルは観察されず、アナターゼ(anatase)のみが観察されていることが分かる。
【0084】
実施例1で得られたチタニアナノファイバーに対して、400℃、5時間の脱水処理を行なったときの走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)を図10に、900℃で24時間加熱したときの走査型顕微鏡写真(SEM写真)を図11に(以上、日立製作所製走査型電子顕微鏡「S−800」にて撮影)、1050℃で24時間加熱したときの走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)を図12(日立製作所製走査型電子顕微鏡「S−4000」にて撮影)に夫々示す。
【0085】
この結果から明らかなように、両者にはファイバー形状に顕著な差は認められないことが分かる。実施例1で示したように、高純度な水熱合成法によって合成されたチタニアナノファイバーは細線化され、結晶性が高くなっており、処理後の加熱工程においては相転移温度が200℃程度高温側にシフトしていることが分かる。
【0086】
(実施例3)
実施例1で得られた各種チタニアナノファイバーに、結合剤としてのポリエチレングリコール(Poly−ethylene−glycol:PEG)と、溶媒としての純水を加えてスラリーを作製し、フッ素ドープインジュウティンムオキサイド透明電極(FTO電極)上にブレード法によって塗布してチタニア電極とした。このとき、チタニアナノファイバー、PEGおよび水の混合比(チタニアナノファイバー:PEG:純水)は、1:2.2:31.7(質量比)である。
【0087】
上記スラリーを塗布後、チタニア電極を400℃で焼成する工程を繰り返し、3層のチタニアナノファイバー電極を作製し、その表面に色素N−719(ルテニュウム系色素)を吸着させて太陽電池を構成した。この太陽電池を用いて、各種の発電特性[短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、発電効率(η)、フィルファクター(F.F.)]を測定した。
【0088】
上記短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、発電効率(η)、フィルファクター(F.F.)については、次のように定義されるものである。太陽電池の表裏電極間に電圧計を接続し、光を当てて測定した発生電圧を開放電圧(Voc)、電流計に接続して測定した電流を短絡電流(Jsc)と呼ぶ。これらの値は、半導体の種類によって異なり、原理的にはセルの面積が異なっても発生する開放電圧(Voc)は変化しないが、短絡電流(Jsc)は面積に比例することになる。また最大発生電力Wmを開放電圧(Voc)および短絡電流(Jsc)で割ったものをフィルファクター(F.F.)と呼び、この値が1に近いほど、太陽電池の性能が良好であることを意味する。
【0089】
また、太陽電池に当たる光エネルギーのうち、どれだけ電気エネルギーに変換されるかを示した割合を太陽電池電極全変換効率[上記発電効率(η)に相当]と呼び、フィルファクター(F.F.)の定義によって、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)およびでフィルファクター(F.F.)の関数で表現できる(η=Jsc×Voc×F.F.)。測定結果を下記表1に示す。また、この結果に基づいて、細線状チタニアの加熱時間と各特性の値(いずれも絶対値で評価)との関係を図13に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
この結果から、次のように考察できた。発電効率の絶対値は、いずれも低い値であるが、高温で加熱したチタニアナノファイバーを用いたものは、短絡電流Jsc値が向上していることが分かる。即ち、チタニアナノファイバーを電極材料として用いる場合には、できるだけ高温・長時間のアニールを施すことが好ましいことが分かる。
【0092】
こうした現象が生じる理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、おそらく次のように考えることができた。即ち、チタニアナノファイバーを高温・長時間加熱することによって、結晶格子中の「結晶欠陥」の修復が行なわれ、また不純物として残っているNa原子を拡散により表面や粒界等の不活性サイトにトラップするか、或は大気中に放出し、チタニアナノファイバー結晶中の電子のトラップサイトを低減させて、電子の伝播効率が向上したものと考えることができる。
【0093】
(実施例4)
上記のように、高温・長時間加熱したチタニアナノファイバーを使用することによって、太陽電池電極全変換効率[上記発電効率(η)に相当]は向上するものとなるのであるが、合成したチタニアナノファイバー単独で作製した太陽電池電極を用いた色素増感型太陽電池では、実用的な高い発電効率を確保することはできない。その理由は、ルテニュウム色素である色素N−719の色素吸着能が極端に低くなることによるものと考えられた。この点に関して、チタニア粉末[「AEROXIDE TiO2 P25」日本エアロジル社(Degussa社)]から作製したチタニア電極に比較して、同時間の色素の吸着を行なっても、明らかにチタニアナノファイバーの色が白いことが目視によって確認できた。
【0094】
こうしたことから、合成したチタニアナノファイバーを利用し、高い発電効率を確保
できるチタニア電極の構成について、更に検討を加えた。
【0095】
まず、チタニア粉末[アナターゼ型結晶80質量%、ルチル型結晶20質量%を含むもの:「AEROXIDE TiO2 P25」日本エアロジル社(Degussa社):以下単に「P25」と表記する]と、上記チタニアナノファイバーの配合比(質量比)を99:1〜90:10(P25:チタニアナノファイバー)の範囲で変化させ、3層となるようなチタニア電極を構成し、色素増感型太陽電池の発電効率を調査した。その結果を、下記表2に示す。下記表2には、チタニアナノファイバーの配合量を1質量%に固定して、チタニア電極の層を3層、6層と厚膜化したときの色素増感型太陽電池についても構成し、その発電効率(η)についても測定した。また、この結果に基づいて、チタニア電極の構成と各特性の値(いずれも絶対値で評価)との関係を図14(棒グラフ)に示す。尚、表2において、「3層(99:1)」と記載したのは、配合比(P25:チタニアナノファイバー)が99:1で、3層であることを意味する(他もこれに準ずる)。また、3層P25と表記したものは、既存のチタニア電極(チタニア粉末「P25」だけで電極を構成したもの)を示している。
【0096】
【表2】

【0097】
また表2に示した電極のうち、3層のチタニア電極について、チタニアナノファイバーの配合比と発電効率ηの関係を下記表3に示す。このとき、既存のチタニア電極「3層P25」の発電効率ηの平均値(η1=2.384)を1.0としたときの比(η/η1
を、向上率として示した。
【表3】

【0098】
この結果から明らかなように、全ての配合比(99:1〜90:10)において、チタニアナノファイバーの配合による発電効率ηが向上していることが分かる。発電効率の向上には、実験上のばらつきや測定誤差が認められ、どの配合比領域が最適範囲であるとは特定できないが、上記の配合比の範囲では全般的に発電効率が1.2倍から1.5倍に向上していると判断できる。
【0099】
上記の考察で、チタニアナノファイバーの配合により、発電効率ηが向上することが判明したが、チタニアナノファイバーの最も配合比が少ない1質量%の場合(上記配合比で99:1の配合比の場合)で、チタニア電極を3層から6層に増膜させた場合には、発電効率ηが5.9(%)を示しており、最も良好な発電効率ηとなっていることが分かる。
【符号の説明】
【0100】
1 TiO6結晶八面体
2 Na陽イオン
3 K陽イオン
4 アルカリ金属元素
5 不純物元素
41 マグネット
44 密閉式加圧用容器
46 ヒーター
45 密閉式反応容器
61 熱電対式内温計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸塩とアルカリ水溶液の混合物を加圧加熱処理することによって製造されるTiO2(B)型細線状チタン化合物であって、前記加圧加熱処理で合成されるTiO2(B)型チタン酸塩中のアルカリ金属元素より陽イオン半径が小さい不純物元素量が、原料中に含まれるチタン元素のモル数に対して1/1000以下に制御されているTiO2(B)型細線状チタン化合物を、その後900℃以上の温度で加熱処理が施されたものであることを特徴とするアナターゼ型細線状チタン化合物。
【請求項2】
色素増感型太陽電池に用いられるチタニア電極であって、請求項1に記載の細線状チタン化合物と、粉末状のチタニアを混合することによって構成されたものであることを特徴とするチタニア電極。
【請求項3】
細線状チタン化合物の混合割合が0.1〜20質量%である請求項2に記載のチタニア電極。
【請求項4】
請求項2または3に記載のチタニア電極を用いたものである色素増感型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−84442(P2011−84442A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239677(P2009−239677)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】