説明

細胞および他の粒子を濃縮および改変するためのデバイスおよび方法

本発明は、粒子の決定論的な分離のためのデバイスおよび方法を特徴とする。例示的な方法は、デバイス内における、所望の粒子に関する試料の濃縮、または所望の粒子の改変を含む。本発明のデバイスおよび方法は、都合のよいことには、試料中、例えば母体の血液中に存在する極めて少ない細胞、例えば胎児の細胞、および極めて少ない細胞成分、例えば胎児細胞の核を濃縮するために使用される。本発明はさらに、試料中の対象細胞を、例えば細胞成分、例えば対象細胞の核から臨床情報を得るために、優先的に溶解させる方法を提供する。一般に本発明の方法は、試料中に含まれる対象細胞と他の細胞(例えば他の有核細胞)との間における差次的な溶解を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の分離および流体デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
臨床または環境に関連する情報は、試料中に存在する場合がしばしばあるが、量が極めて少ないために検出できない。したがって、そのような情報の検出能力を高めるために、さまざまな濃縮法または増幅法がしばしば使用される。
【0003】
細胞の場合、さまざまなフローサイトメトリーや細胞選別法が利用可能であるが、これらの手法は典型的には、大量の試料および熟練した操作者を必要とする、大型で高価な一連の装置を使用する。このような血球計算器および選別器は、細胞の分離を達成するために、静電偏向法、遠心分離法、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、および磁気活性化細胞選別法(MACS)などの方法を使用する。これらの方法は、試料の極めて少ない成分の解析を可能とするように試料を十分に濃縮できないという問題にしばしば遭遇する。さらに、このような手法は、そのような極めて少ない成分の、例えば対象成分の非効率的な分離または分解による、許容できない損失につながる場合がある。
【0004】
したがって、試料を濃縮するための新たなデバイスおよび方法が求められている。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
一般に本発明は、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を流体中において、構造中における流体の流れの平均的な方向に平行でない方向に確定的に偏向させる、1つもしくは複数の構造を含むデバイスを特徴とする。例示的な構造は、ギャップを通過する流体が、メジャーフラックスの平均的な方向が、流路内における流体の流れの平均的な方向に平行とならず、および第1の外部領域に由来するメジャーフラックスが第2の外部領域に誘導されるか、または粒子がメジャーフラックス中に誘導される第2の外部領域から離れるように誘導されるように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む。障害物のアレイは好ましくは、第1の行内におけるギャップを通過する流体が、第2の行内における2つのギャップに不均等に分けられるように相互に側方に動かされる第1および第2の行を含む。このような構造は、1つの流路内に直列に、同じ流路内に平行に、例えば複式配置で、デバイス内の多数の流路内に平行に、またはこれらを組み合わせることで配置可能である。各流路は、少なくとも1つの流入口、および少なくとも1つの流出口を有することになる。1つの流入口および流出口を平行に、同じ流路内または異なる流路内で、2つまたは2つ以上の構造に使用することができる。または個々の構造は、それ自体の流入口および流出口を有する場合があるか、または1つの構造は、例えば2種類の異なる流体を同時に導入または回収するために、多数の流入口および流出口を含む場合がある。
【0006】
本発明はさらに、本発明のデバイスを使用して試料を濃縮および改変する方法を特徴とする。
【0007】
好ましい態様では、本発明のデバイスは、マイクロ流体流路を含む。他の好ましい態様では、本発明のデバイスは、血液成分、例えば赤血球、白血球、または血小板を全血から、有核赤血球などの極めて少ない細胞を母体血液から、および幹細胞、病原性生物もしくは寄生性生物、または宿主もしくは移植免疫細胞を血液から分離するように構成される。この方法は、あらゆる血液細胞、またはこの一部を血漿から、または試料中の細胞成分もしくは細胞内寄生虫、もしくはこれらの小集団などのあらゆる粒子を懸濁状流体から分離するために使用することもできる。本発明のデバイス内で分離可能な他の粒子は、本明細書に記載されている。
【0008】
本発明はさらに、例えば、対象細胞、例えば有核胎児赤血球の細胞成分、例えば核または核酸から臨床情報を得るために、試料中の対象細胞を優先的に溶解させる方法を提供する。一般に、このような方法では、試料中における対象細胞と他の細胞(例えば他の有核細胞)間における差次的な溶解を利用する。ある態様では、優先的な溶解は、対象細胞、例えば赤血球もしくは胎児の有核赤血球の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の溶解を、および所望されていない細胞、例えば母体白血球もしくは母体有核赤血球の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満の溶解をもたらす。
【0009】
「ギャップ」とは、流体および/または粒子が通過可能な開口部を意味する。例えばギャップは、毛細管か、流体が通過可能な2つの障害物間の空間であるか、または水性流体が制限される、通常は疎水性である表面における親水性パターンである。本発明の好ましい態様では、ギャップのネットワークは、障害物のアレイによって規定される。この態様では、ギャップは、隣接する障害物間の空間である。好ましい態様では、ギャップのネットワークは、基質の表面上に障害物のアレイによって構築される。
【0010】
「障害物」とは、流路内を流れる際の障害、例えば、一方の表面からの突起を意味する。例えば障害物は、ベース基質、または水性流体に対する疎水性障害物の上に突き出たポストを意味する場合がある。いくつかの態様では、障害物は部分的に透過性である場合がある。例えば障害物は、孔が水性成分の透過を可能とするが、極めて小さいために分離対象の粒子が侵入できない多孔性材料から作られるポストの場合がある。
【0011】
「流体力学的サイズ」とは、流れ、ポスト、および他の粒子と相互作用する粒子の有効サイズを意味する。この表現は、流れ中における粒子の体積、形状、および変形性を示す一般的な表現として使用される。
【0012】
「流れ-抽出境界」とは、アレイから流体を除去するために設計された境界を意味する。
【0013】
「流れ-供給境界」とは、アレイに流体を添加するために設計された境界を意味する。
【0014】
「膨張試薬」と現は、粒子の流体力学的半径を増加させる試薬を意味する。膨張試薬は、体積を増やすこと、変形性を低下させること、または粒子の形状を変化させることによって作用する場合がある。
【0015】
「収縮試薬」とは、粒子の流体力学的半径を減少させる試薬を意味する。収縮試薬は、粒子の体積を減少させること、変形性を高めること、または形状を変化させることによって作用する場合がある。
【0016】
「標識試薬」とは、粒子に結合するか、または粒子とともに局在化されて、例えば、形状、形態、色、蛍光、発光、燐光、吸光度、磁気的性質、または放出放射線によって検出可能な試薬を意味する。
【0017】
「流路」とは、流体が流れ得るギャップを意味する。流路は、毛細管、導管、または親水性パターンのストリップ、または水性流体が制限される疎水性表面である場合がある。
【0018】
「マイクロ流体の」とは、少なくとも1 mm未満の寸法を有することを意味する。
【0019】
「濃縮された試料」とは、典型的には試料中に存在する他の成分に対して、対象となる細胞の相対集団または粒子を増やすように処理された、細胞または他の粒子を含む試料を意味する。例えば試料は、対象となる粒子の相対集団を、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%に、または少なくとも1000倍、10,000倍、100,000倍、もしくは1,000,000倍に増やすことで濃縮可能である。
【0020】
「細胞内活性化」とは、転写因子の活性化、またはキナーゼもしくは他の代謝経路の活性化に至る、セカンドメッセンジャー経路の活性化を意味する。細胞膜の外側に存在する抗原の調節による細胞内活性化は、受容体輸送の変化に至る場合もある。
【0021】
「細胞試料」とは、細胞またはこの成分を含む試料を意味する。このような試料は、天然の流体(例えば血液、リンパ液、脳脊髄液、尿、子宮頚部洗浄液(cervical lavage)、および水性試料)、ならびに細胞が導入された流体(例えば培地および液化組織試料)を含む。この表現は溶解物も含む。
【0022】
「生物学的試料」とは、生物起源の任意の試料、または生物学的粒子を含むか、もしくは潜在的に含む任意の試料を意味する。好ましい生物学的試料は細胞試料である。
【0023】
「生物学的粒子」とは、水性溶媒に不溶性の、生物起源の任意の化学種を意味する。例には、細胞、粒子状細胞成分、ウイルス、ならびにタンパク質、脂質、核酸、および糖質を含む複合体などがある。
【0024】
細胞の「成分」(すなわち「細胞成分」)とは、細胞の溶解によって少なくとも部分的に分離可能な、細胞の任意の成分を意味する。細胞成分は、細胞小器官(例えば核、核周囲区画、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、もしくは細胞膜)、ポリマーもしくは分子の複合体(例えば脂質、多糖、タンパク質(膜タンパク質、トランス膜タンパク質、もしくは細胞質タンパク質)、核酸(天然の核酸、治療用の核酸、もしくは病原性の核酸)、ウイルス粒子、もしくはリボソーム)、細胞内の寄生虫もしくは病原体、または他の分子(例えばホルモン、イオン、補因子、もしくは薬剤)の場合がある。
【0025】
「血液成分」とは、宿主の赤血球、白血球、および血小板を含む、全血の任意の成分を意味する。血液成分は、血漿の成分、例えばタンパク質、脂質、核酸、および糖質、ならびに例えば現在もしくは過去の妊娠、臓器移植、または感染のために血液中に存在し得る任意の他の細胞も含む。
【0026】
「対応物」とは、詳細なレベルでは(例えば配列)が異なるものの同じクラスである細胞成分を意味する。例には、さまざまな細胞のタイプ、例えば胎児赤血球や母体白血球に由来する核、ミトコンドリア、mRNA、およびリボソームなどがある。
【0027】
「優先的な溶解」とは、対象細胞を溶解の時間スケールで、所望されていない細胞より大きな規模で溶解させることを意味する。所望されていない細胞は典型的には、対象細胞、もしくはその対応物中に存在する成分と同じ細胞成分、または対象細胞の内容物を損なう細胞成分を含む。優先的な溶解は、例えば所望されていない細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を溶解しながら、対象細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の溶解を生じる場合がある。優先的な溶解は、所望されていない細胞に対する対象細胞の溶解の比をもたらす場合もある。
【0028】
他の特徴および利点は、以下の記述および請求項から明らかになる。
【0029】
発明の詳細な説明
デバイス
一般にデバイスは、流体の成分の決定論的な側方変位を可能とする1つもしくは複数の障害物のアレイを含む。この目的に障害物を使用する、本発明のデバイスとは異なるが、本発明のデバイスに似ている先行技術のデバイスは例えば、Huang et al., Science 304, 987-990 (2004)、および米国特許出願第20040144651号に記載されている。サイズに従って粒子を分離するための本発明のデバイスでは、ギャップを通過する流体が、後続のギャップに不均等に分けられる、ギャップのネットワークのアレイを使用する。アレイは、ギャップを通過する流体が、ギャップが同一の寸法の場合であっても不均等に分けられるように配置されたギャップのネットワークを含む。
【0030】
デバイスは、分離対象となる細胞を、ギャップのアレイを介して運ぶ流れを使用する。流れは、アレイから見て小さな角度(流れ角)を設けて配置される。臨界サイズより大きい流体力学的サイズを有する細胞は、アレイ内の線方向に沿って移動する一方で、臨界サイズより小さい流体力学的サイズを有する細胞は、異なる方向の流れに従う。デバイス内における流れは層流条件下で生じる。
【0031】
臨界サイズは、複数の設計パラメータの関数である。図1の障害物アレイに関連して、ポストの各行は、手前の行に対してΔλだけ水平に傾いている。ここでλは、ポストどうしの中心間の距離を意味する(図1A)。パラメーターΔλ/λ(「分岐比」、ε)は、後続のポストの左側に分岐した流れの比を決定する。図1でεは、説明の便宜上、1/3としてある。一般に、2本のポスト間のギャップを通過するフラックスがΦであれば、マイナーフラックスはεΦとなり、メジャーフラックスは(1-εΦ)となる(図2)。この例では、ギャップを通過するフラックスは基本的に3本に分かれる(図1B)。ギャップを通過する3本のフラックスのそれぞれが、ポストのアレイの周囲を進む一方で、個々のフラックスの平均的な方向は、流れの全体的な方向にある。図1Cは、アレイを通過する、臨界サイズを上回るサイズの粒子の動きを示す。このような粒子はメジャーフラックスとともに動き、各ギャップを通過するメジャーフラックスへ連続的に移される。
【0032】
図2に関しては、臨界サイズは約2R臨界である。ここでR臨界は、流れない流れのラインとポストとの間の距離である。仮に粒子、例えば細胞の重心がポストから少なくともR臨界の位置にある場合、粒子はメジャーフラックスに従い、アレイの線方向に沿って動くと考えられる。仮に、粒子の質量中心がポストからR臨界以内にある場合は、マイナーフラックスに異なる方向で従う。R臨界は、ギャップを挟んだ流れプロファイルが既知であれば決定可能である(図3);これは、マイナーフラックスを形成すると考えられる流体の層の厚みである。任意のギャップサイズdに関して、R臨界は分岐比εを基に調整することができる。一般に、小さいεほどR臨界は小さくなる。
【0033】
決定論的な側方変位用のアレイでは、異なる形状の粒子は異なるサイズをもつようにふるまう(図4)。例えばリンパ球は直径が約5μmの球状であり、赤血球は直径が約7μmで厚みが約1.5μmの両凹面の円板である。赤血球の長軸(直径)は、リンパ球の長軸より長いが、短軸(厚み)は短い。仮に赤血球が、流れによるポストのアレイによって駆動時に、その長軸を揃えて流れると、流体力学的サイズは、事実上、約1.5μmの厚みとなり、これはリンパ球より短い。赤血球がポストのアレイによって、流体力学的な流れによって駆動される場合は、その長軸が流れに沿って整列し、リンパ球より事実上「小さい」、約1.5μm幅の粒子のようにふるまう傾向がある。したがって、このような方法およびデバイスは、細胞を、その形状にしたがって分離可能であるが、細胞の容積は同じ場合がある。加えて、さまざまな変形性を有する粒子は、異なるサイズをもつかのようにふるまう(図5)。例えば、変形していない形状を有する2つの粒子は、決定論的な側方変位によって分離され得る。というのは、変形性のより大きな細胞は、アレイ内の障害物と接触時に変形して形状を変える可能性があるからである。したがって、デバイス内における分離は、粒子の物理的寸法、形状、および変形性を含む、流体力学的サイズに影響を及ぼす任意のパラメータを基に達成することができる。
【0034】
図6および図7によれば、粒子の混合物、例えばさまざまな流体力学的サイズの細胞をアレイの先頭から供給し、および図に示すように底部で粒子を回収することで、臨界サイズ2R臨界より大きな細胞を含む排出と、臨界サイズより小さい細胞を含む廃液の2つの生成物が得られる。図7では「廃液」と表記されているが、臨界サイズに満たない粒子は、臨界サイズを上回る粒子が廃棄される一方で回収され得る。いずれのタイプの排出とも、例えば試料を2つまたは2つ以上の下位試料に分画することで、望ましくは回収することもできる。ギャップサイズより大きい細胞はアレイ内部に捕捉されることになる。したがってアレイは、作業サイズの範囲を有する。細胞がメジャーフラックス内に誘導されるためには、臨界サイズ(2R臨界)より大きく、かつ最大通過サイズ(アレイのギャップサイズ)より小さくなければならない。
【0035】
本発明のデバイスの使用
本発明は、細菌、ウイルス、真菌、細胞、細胞成分、ウイルス、核酸、タンパク質、およびタンパク質複合体を含む粒子の、サイズによる分離用の改善されたデバイスを特徴とする。デバイスは、試料中の粒子に対してさまざまな操作を行うために使用することができる。このような操作は、サイズベースの分画、または粒子そのもの、もしくは粒子を運ぶ流体の改変を含む、粒子の濃縮すなわち高濃度化を含む。好ましくはデバイスは、不均一な混合物から極めて少ない粒子を濃縮するために、または、極めて少ない粒子を、例えば懸濁物中の液体を交換することで、または粒子に試薬を接触させることで変化させるために使用される。このようなデバイスによって、細胞に加わるストレスを抑えた、例えば細胞の機械的な溶解または細胞内活性化を抑えた高度の濃縮が可能となる。
【0036】
主に細胞に関して記述したが、本発明のデバイスは、サイズが本発明のデバイスにおける分離が可能な他の任意の粒子を対象に使用することができる。
【0037】
アレイの設計
単ステージ型アレイ。1つの態様では、単ステージは障害物のアレイ、例えば円筒形のポストを含む(図1D)。ある態様では、アレイは、赤血球から白血球を分離する際に、臨界サイズより数倍大きい最大通過サイズを有する。この結果は、大きなギャップサイズdと、小さな分岐比εを組み合わせることで達成可能である。好ましい態様では、εは最大で1/2であり、例えば最大で1/3、1/10、1/30、1/100、1/300、または1/1000である。このような態様では、障害物の形状が、ギャップ中における流れプロファイルに影響を及ぼす可能性がある;しかしながら障害物は、アレイを短くするために、流れの方向に圧縮され得る(図1E)。単ステージ型アレイは、本明細書に記載されたバイパス流路を含む場合がある。
【0038】
マルチステージ型アレイ。別の態様では、マルチステージを使用して、サイズの幅の広い粒子を分離する。例示的なデバイスを図7に示す。図のデバイスは3つのステージを有しているが、任意の数のステージを使用することができる。典型的には、第1のステージにおけるカットオフサイズ(すなわち臨界サイズ)は、第2のステージにおけるカットオフサイズより大きく、第1のステージのカットオフサイズは、第2のステージの最大通過サイズより小さい(図8)。同じことは、後続のステージについても言える。第1のステージは、例えば、第2のステージにおいて目詰まりを引き起こす可能性のある粒子を、粒子が第2のステージに到達する前に偏向させる(そして除去する)。同様に、第2のステージは、第3のステージにおいて目詰まりを引き起こす可能性のある粒子を、粒子が第3のステージに到達する前に偏向させる(そして除去する)。一般にアレイは、望ましいならば、多くのステージを有する場合がある。
【0039】
記載されたように、マルチステージ型アレイでは、大きな粒子、例えば下流で目詰まりを引き起こす可能性のある細胞が最初に偏向されるので、偏向された粒子は、目詰まりを避けるために下流のステージを迂回する必要がある。したがって本発明のデバイスは、アレイから排出を除去するバイパス流路を含む場合がある。本明細書では、臨界サイズを上回る粒子を除去することについて説明したが、バイパス流路を、アレイの任意の部分から排出を除去するために使用することもできる。
【0040】
バイパス流路のさまざまな設計について、以下に説明する。
【0041】
単バイパス流路。この設計では、全てのステージが1つのバイパス流路を共有するか、または1つのステージのみ存在する。バイパス流路の物理的な境界は、一方の側ではアレイの境界によって、および別の側では側壁によって定まる(図9〜11)。単バイパス流路は、中央のバイパス流路が2つのアレイ(すなわち2つの外部領域)を隔てるように、複式アレイで使用することもできる(図12)。
【0042】
単バイパス流路は、デバイスの全体において一定の流れを維持するために、アレイと連結して設計することもできる(図13)。バイパス流路は、流路内における流れがアレイ内における流れに干渉しないように、全てのステージにわたって一定のフラックスを維持するように設計された、多様な幅を有する。このような設計は、複式アレイについても使用できる(図14)。単バイパス流路は、全てのステージにわたって実質的に一定の流体抵抗を維持するために、アレイと連結されるように設計することもできる(図15)。このような設計は、複式アレイで使用することもできる(図16)。
【0043】
マルチバイパス流路。この設計(図17)では、各ステージが専用のバイパス流路を有し、流路は、例えば異なる流路の内容物の混合を防ぐために、側壁によって相互に隔てられている。大きな粒子、例えば細胞は、メジャーフラックス中ので第1のステージの右下の角に向かって、および続いてバイパス流路(図17のバイパス流路1)中に偏向される。第2のステージにおいて目詰まりを引き起こさないと考えられる、より小さな細胞は第2のステージへと進み、および第2のステージの臨界サイズを上回る細胞は、第2のステージの右下の角に向かって、および別のバイパス流路(図17のバイパス流路2)中に偏向される。この設計は望ましいならば、多くのステージに関して繰り返すことができる。この態様では、バイパス流路は流体連結されていないために、別個の回収および他の操作が可能となる。バイパス流路は直線的である必要はなく、相互に物理的に平行である必要もない(図18)。マルチバイパス流路は、複式アレイで使用することもできる(図19)。
【0044】
マルチバイパス流路は、デバイスの全体にわたって一定のフラックスを維持するために、アレイと連結されるように設計することができる(図20)。この例では、バイパス流路は、流れの量を、アレイ内における流れが攪拌されないように、すなわち実質的に一定となるように設計される。このような設計は、複式アレイで使用することもできる(図21)。この設計では、中央のバイパス流路は、複式アレイ内の2つのアレイ間で共有される場合がある。
【0045】
最適な境界の設計。仮にアレイが無限に大きければ、流れの分布は、全てのギャップにおいて同じとなるであろう。ギャップを通過するフラックスΦは同じとなるであろうし、マイナーフラックスは全てのギャップに関してεΦとなるであろう。実際にはアレイの境界は、この無限の流れパターンを乱す。アレイの境界の一部分は、無限のアレイの流れパターンを生じるように設計可能である。境界は、流れ-供給型、すなわち境界が流体をアレイ内に注入するか、または流れ-抽出型、すなわち境界がアレイから流体を抽出する場合がある。
【0046】
好ましい流れ-抽出境界が次第に拡がってゆくことで、境界における個々のギャップからεΦ(図22の矢印)が抽出される(d=24μm、ε=1/60)。例えば、アレイと側壁間の距離が次第に広がってゆくことで、境界に沿った各ギャップに由来する境界へのεΦの追加が可能となる。このアレイの内部における流れパターンは、このような境界の設計のためにバイパス流路の影響を受けない。
【0047】
好ましい流れ-供給境界が次第に狭まってゆくことで、εΦ(図23の矢印)が、境界における各ギャップ中に正確に供給される(d=24μm、ε=1/60)。例えば、アレイと側壁間の距離が次第に狭くなってゆくことで、境界から境界に沿った各ギャップへのεΦの追加が可能となる。この場合も、アレイ内部における流れパターンは、境界の設計のためにバイパス流路の影響を受けない。
【0048】
流れ-供給境界は、アレイのギャップと同等の幅か、またはこれより広い幅を有する場合もある(図24)(d=24μm、ε=1/60)。例えば粒子の回収を可能とするために、境界がバイパス流路として機能する場合には、広い境界が望ましい場合がある。アレイを供給するために、その全体的な流れの一部を使用し、およびεΦを境界において各ギャップ中に供給する境界を使用することが可能である(図24の矢印)。
【0049】
図25は、複式アレイ内の単バイパス流路を示す(ε=1/10、d=8μm)。バイパス流路は、2か所の流れ-供給境界を含む。バイパス流路内の点線1を超えるフラックスはΦバイパスである。流れのΦは、点線の左側に向かってギャップに由来するΦバイパスと合流する。境界における障害物の形状は、アレイ内を進む流れが境界における各ギャップにおいてεΦとなるように調整される。点線2におけるフラックスもΦバイパスである。
【0050】
デバイスの設計
流れを規定して安定化させるためのオンチップのフローレジスター
本発明のデバイスは、流体レジスターを利用してアレイ内における流れを規定して安定化することも可能であり、ならびにアレイから回収される流れを規定することもできる。図26は、平面デバイスの略図を示す;試料、例えば血液、流入口流路、緩衝液流入口流路、廃液流出口流路、および生成物流出口流路がそれぞれアレイに連結されている。流入口および流出口はフローレジスターとして作用する。図26は、このような多様なデバイスコンポーネントの対応する流体抵抗も示す。
【0051】
アレイ内における流れの規定
図27および図28は、デバイスが一定の深さを有し、および任意の圧力の低下によって作動する際の、試料の流れおよび対応する幅、ならびにアレイ内における緩衝液の流れを示す。流れは、圧力低下を抵抗で割った値で規定される。この特定のデバイスでは、I血液とI緩衝液は等しく、およびこれがアレイ内における血液流と緩衝液流の等しい幅を規定する。
【0052】
回収フラクションの規定
生成物および廃液の流出口流路の相対的な抵抗を制御することで、各フラクションにかかる集積耐性(collection tolerance)を調節することができる。例えば、この特定の一連の回路では、R生成物がR廃液より大きい場合は、より高度に濃縮された生成物フラクションが、廃液フラクションへの喪失の潜在的な増加、および廃液フラクションの希釈を犠牲にして生じることになる。逆に、R生成物がR廃液に満たない場合は、より高く希釈されて、かつより多い収量の生成物フラクションが、廃液流からの潜在的な混入を犠牲にして回収されることになる。
【0053】
流れの安定化
流入口および流出口の各流路を、流路を挟む圧力の低下が、感知可能か、または全体的な駆動圧の揺らぎより大きくなるように設計することができる。典型的な例では、流入口および流出口における圧力の低下は、駆動圧の0.001〜0.99倍である。
【0054】
多重化アレイ
本発明は多重化アレイを特徴とする。多数のアレイを1つのデバイス上に集積することで、試料の処理スループットが高くなり、および異なるフラクションを対象とした、複数の試料、または試料の一部の平行処理または操作が可能となる。多重化は、調製用デバイスに、さらに望ましい。最も単純な多重型デバイスは、直列に連結された2つのデバイス、すなわちカスケードを含む。例えば、1つのデバイスのメジャーフラックスからの排出は、第2のデバイスの投入と連結してもよい。または、1つのデバイスのマイナーフラックスからの排出は、第2のデバイスの投入と連結してもよい。
【0055】
複式化。2つのアレイを隣合わせて、例えば鏡像として配置することができる(図29)。このような配置では、2つのアレイの臨界サイズは同じか、または異なる場合がある。さらにアレイは、メジャーフラックスが2つのアレイの境界に向かって流れるように、各アレイの縁に向かって流れるように、またはこれらを組み合わされるように配置することが可能である。このような複式化されたアレイは例えば、臨界サイズを上回る粒子を回収するために、または試料を例えば緩衝液の交換、反応、または標識を介して改変するために、アレイ間に配置された中央のバイパス流路を含む場合もある。
【0056】
デバイス上における多重化。複式とすることに加えて、投入が分割された2つまたは2つ以上のアレイを同じデバイス上に配置することができる(図30A)。このような配置は、複数の試料を対象に使用可能なほか、複数のアレイを、同じ試料の平行処理用に同じ流入口に連結することができる。同じ試料の平行処理では、流出口は流体連結される場合もあれば、されない場合もある。例えば、複数のアレイが同じ臨界サイズを有する場合、流出口を、高スループットの試料処理用に連結可能である。別の例では、アレイは、全てが同じ臨界サイズを有さなくてもよいか、またはアレイ内の粒子は、全てが同じ様式で処理されなくともよく、および流出口は流体連結されなくともよい。
【0057】
多重化は、複数の複式アレイを1つのデバイス上に配置することでも達成できる(図30B)。複式または単式の別を問わず、複数のアレイを、相互に任意の可能な三次元関係となるように配置することができる。
【0058】
本発明のデバイスは、小さなフットプリントも特徴とする。アレイのフットプリントを小さくすることで、コストの削減と、障害物との衝突数の減少が可能となり、粒子に対する任意の潜在的な機械的損傷または他の作用を除くことができる。マルチステージ型アレイの長さは、ステージ間の境界が流れの方向に対して垂直でなければ短縮可能である。長さを短くすることは、ステージの数が増える場合に重要となる。図31は、小さなフットプリントを擁する3ステージ型アレイを示す。
【0059】
他のコンポーネント
ギャップのアレイに加えて、本発明のデバイスは、例えば分離、回収、操作、または検出のための他のコンポーネントを含む場合がある。このようなコンポーネントは当技術分野で周知である。アレイは、親和力、磁力、電気泳動度、遠心分離度、および誘電泳動度を利用した分離を含む他のタイプの分離用のコンポーネントを有するデバイス上で使用することもできる。本発明のデバイスは、デバイス、例えばウェルのアレイや平面表面に由来する排出の二次元イメージング用のコンポーネントとともに使用することもできる。好ましくは、本明細書に記載されたギャップのアレイは、親和性を利用した濃縮で使用される。
【0060】
本発明は、同じデバイス上か、または別のデバイス上のいずれかに位置する、他の濃縮用デバイスとともに使用される場合もある。他の濃縮法は例えば、それぞれが参照により組み入れられる、国際特許出願第2004/029221号および第2004/113877号、米国特許第6,692,952号、米国特許出願第2005/0282293号および第2005/0266433号、ならびに米国特許出願第60/668,415号に記載されている。
【0061】
作製
本発明のデバイスは、当技術分野で周知の手法で作製することができる。作製法の選択は、デバイスに使用される材料、およびアレイのサイズに依存する。本発明のデバイスの作製に際して例示的な材料には、ガラス、シリコン、鉄、ニッケル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、シリコーン(例えばポリジメチルシロキサン)、およびこれらの組み合わせなどがある。その他の材料は、当技術分野で既知である。例えば、ディープ反応性イオンエッチング法(DRIE)で、小さなギャップ、小さな障害物、および大きなアスペクト比(障害物の側方の寸法に対する高さの比)を有するシリコンベースのデバイスが作製される。プラスチック製デバイスの熱成形(エンボス加工法、射出成形法)を、例えば最小の側方素性が20ミクロンで、これらの素性のアスペクト比が3未満の場合に使用することもできる。他の方法には、フォトリソグラフィー(例えば立体リソグラフィーまたはX線フォトリソグラフィー)、モールディング法、エンボス加工法、シリコン微細加工法、湿式もしくは乾式の化学エッチング法、ミリング法、ダイヤモンド切削法、リソグラフィーによる電気めっきおよび成形法(LIGA)、ならびに電気めっき法などがある。例えばガラスについては、従来のフォトリソグラフィーによるシリコン作製法と、これに続く湿式(KOH)または乾式のエッチング(フッ素もしくは他の反応ガスを用いた反応性イオンエッチング)を利用できる。光子吸収効率の高いプラスチック材料の場合には、レーザー微細加工法などの手法を採用することができる。この手法は、プロセスが連続的であるため、低スループットの作製に適している。大量生産されるプラスチック製デバイスには、熱可塑性射出成形法および圧縮成形法が適切な場合がある。(特性の忠実度をサブミクロンで保存する)コンパクトディスクの大量生産に使用される従来の熱可塑性射出成形法で本発明のデバイスを作製することもできる。例えば、デバイスの特徴は従来のフォトリソグラフィーによってガラスマスター上で複製される。ガラスマスターを電気鋳造すると、頑丈で耐熱衝撃性、熱伝導性のある硬質の型が得られる。この型が、特性のプラスチック製デバイスへの射出成形法または圧縮成形法用のマスターテンプレートとして機能する。デバイスの作製に使用されるプラスチック材料、ならびに光学的品質および最終製品のスループットに関する要件に依存して、圧縮成形法または射出成形法を作製法として選択できる。圧縮成形法(ホットエンボス加工法またはリリーフインプリンティング法とも呼ばれる)には、小型作製には優れているが、高いアスペクト比の構造の複製における使用は難しく、サイクル時間が長い高分子量ポリマーと適合するという利点がある。射出成形法は、高アスペクト比の構造に良好に作用するが、低分子量ポリマーに最も適している。
【0062】
デバイスは、1つもしくは複数のピースで作製後に組み立てられてよい。デバイスの層は、クランプ、接着剤、熱、陽極結合、または表面基間の反応(例えばウエハー結合)によって結合することができる。または、複数の平面上に流路を備えたデバイスを単一ピースとして、例えば立体リソグラフィーまたは他の三次元作製法で作製することができる。
【0063】
例えば溶解した細胞から放出されるか、または生物学的試料中に存在する細胞または化合物が流路壁へ非特異的に吸着することを抑えるためには、1つもしくは複数の流路壁を、非接着性すなわち反発性となるように化学的に修飾するとよい。壁は、ヒドロゲルの形成に使用されているものなど、市販の焦げ付き防止剤による薄膜コーティング法でコーティングすることができる(例えば単層)。流路壁の修飾に使用可能な化学種の他の例には、オリゴエチレングリコール、フッ化ポリマー、オルガノシラン、チオール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ウシ血清アルブミン、ポリビニルアルコール、ムチン、ポリHEMA、メタクリル化PEG、およびアガロースなどがある。荷電ポリマーを使用して、反対に荷電した分子種を反発させることもできる。反発に使用される化学種のタイプ、および流路壁への結合法は、反発対象となる分子種の性質、ならびに結合対象となる壁および分子種の性質に依存する。このような表面修飾法は当技術分野で周知である。壁には、デバイスが組み立てられる前または後に官能基を付与することができる。流路壁も、試料中の材料、例えば膜断片またはタンパク質を捕捉するためにコーティングすることができる。
【0064】
操作法
本発明のデバイスは、臨界サイズを上回る粒子か、または臨界サイズに満たない粒子が濃縮された試料の生成が望ましい任意の応用に使用することができる。デバイスの好ましい使用は、細胞、例えば極めて少ない細胞が濃縮された試料の生成である。濃縮試料が生成されたら、解析用に回収することができるほか、例えばさらに濃縮して操作することができる。
【0065】
本発明の方法では、分離対象の細胞をギャップのアレイを介して運ぶ流れを使用する。流れは、アレイから見て小さな角度(流れ角)をつけて配置される。臨界サイズより大きい流体力学的サイズを有する細胞は、アレイ内の線方向に沿って移動する一方で、臨界サイズより小さい流体力学的サイズを有する細胞は、異なる方向の流れに従う。デバイス内における流れは層流条件で生じる。
【0066】
本発明の方法は、例えば粒子が接触する場合、水力学的に相互に作用する場合、または別の粒子の周囲における流れの分布に作用を及ぼす場合に、濃縮済みの試料を使用することができる。例えば、このような方法では、ヒトのドナーに由来する全血中の白血球と赤血球を分離することができる。ヒトの血液は典型的には、容積比で約45%の細胞を含む。細胞は、アレイを通過する場合に物理的に接触した状態にあるか、および/または水力学的に相互に結合した状態にある。細胞がアレイの内部に高密度で詰められて、相互に物理的に相互作用可能なことを図32に図式的に示す。
【0067】
濃縮
1つの態様では、本発明の方法は、所望の流体力学的サイズの粒子が濃縮された試料を生成するために使用される。このような濃縮の応用は、粒子、例えば極めて少ない細胞を濃縮する段階、およびサイズ分画、例えばサイズフィルタリング(特定のサイズ範囲の細胞を選択すること)を含む。このような方法は、細胞の成分、例えば核を濃縮するために使用することもできる。核または他の細胞成分は、試料の操作、例えば本明細書に記載された溶解法によって生成可能なほか、試料中に、例えばアポトーシスもしくはネクローシスによって天然の状態で存在する場合がある。望ましくは、本発明の方法は、初期混合物と比較して、所望の粒子を1個もしくは複数の所望されていない粒子に対して少なくとも1倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍、100,000倍、またはさらには1,000,000倍に潜在的に濃縮しながら、所望の粒子の少なくとも1%、10%、30%、50%、75%、80%、90%、95%、98%、または99%を保持する。濃縮によって、当初の試料と比較して分離対象粒子が希釈される可能性もあるが、試料中の他の粒子に対して、分離対象粒子の濃度は上昇する。好ましくは、希釈率は最大で90%、例えば最大で75%、50%、33%、25%、10%、または1%である。
【0068】
好ましい態様では、このような方法で、極めて少ない粒子、例えば細胞が濃縮された試料が生成される。一般に、極めて少ない粒子は、試料の10%未満で存在する粒子である。例示的な極めて少ない粒子には、個々の試料に依存して、胎児細胞、(例えば胎児または母体の)有核赤血球、(例えば未分化の)幹細胞、癌細胞、(宿主または移植用の)免疫系細胞、上皮細胞、結合組織細胞、細菌、菌類、ウイルス、寄生虫、および(例えば細菌または原生動物の)病原体などがある。このような極めて少ない粒子は、体液、例えば血液、または環境中の供給源、例えば水性試料中の病原体を含む試料から分離することができる。胎児細胞、例えば有核RBCは母体の末梢血から、例えば発生中の胎児を対象とした性別の判定、および異数性または遺伝的特徴、例えば変異の同定の目的で濃縮することができる。癌細胞も、診断および治療の進行をモニタリングする目的で末梢血から濃縮することができる。体液試料または環境試料を、病原体または寄生虫に関して、例えば大腸菌型の細菌、敗血症などの血液由来の疾患、または細菌性もしくはウイルス性の髄膜炎に関してスクリーニングすることもできる。極めて少ない細胞は、別の生物中に存在する一種の生物体に由来する細胞、例えば移植臓器に由来する細胞も含む。
【0069】
極めて少ない粒子の濃縮に加えて、本発明の方法を、調製目的の応用に使用することができる。例示的な調製目的の応用には、血液由来の細胞パックの生成などがある。本発明の方法は、血小板、赤血球、および白血球が濃縮されたフラクションが生成されるように構成することができる。多重型デバイスまたはマルチステージ型デバイスを使用することで、3種全ての細胞フラクションを、同一の試料から並列的または直列的に生成させることができる。他の態様では、このような方法で、有核細胞を除核細胞から、例えば臍帯血供給源から分離することができる。
【0070】
本発明の方法の使用は、濃縮対象の粒子が損傷または他の分解を受ける状況において有利である。本明細書に記載されているように、本発明のデバイスは細胞を、細胞と障害物間の衝突数を最小限に抑えて濃縮するように設計することができる。このような衝突の最小化によって、細胞の機械的な損傷が減り、衝突に起因する細胞の細胞内活性化も防がれる。こうした細胞の慎重な扱いによって、限られた数の極めて少ない細胞が試料中に保持され、細胞内成分の混入または分解に至る細胞の破裂が防がれ、および細胞、例えば幹細胞や血小板の成熟または活性化が防がれる。好ましい態様では、細胞は30%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、またはさらには0.01%未満が活性化されるか、または機械的に溶解されるように濃縮される。
【0071】
図33は、ヒト末梢血中の細胞の典型的なサイズ分布を示す。白血球は約4μm〜約18μmの範囲であり、赤血球は約1.5μm(短軸)である。赤血球から白血球を分離するように設計されたアレイは典型的には2〜4μmのカットオフサイズ(すなわち臨界サイズ)を有し、および最大通過サイズは18μmを上回る。
【0072】
別の態様では、デバイスは、赤血球の異常の検出器として機能する場合がある。選別の決定論的な原理によって、デバイス内で偏向される除核細胞のパーセンテージの予測が可能となる。マラリア感染や鎌状赤血球貧血などの疾患状態では、赤血球の形状のゆがみや可動性は、偏向される細胞のパーセンテージを大きく変化させる場合がある。この変化は、疾患であると判断するために、赤血球の形状およびサイズに関する顕微鏡観察による追跡対象となる病的生理の可能性を知らせる第1レベルの監視によってモニタリングすることができる。このような方法は、試料中の粒子の可動性に関する任意の変化に関して広く応用可能なモニタリング法でもある。
【0073】
別の態様では、デバイスは、血小板凝集の検出器として機能する場合がある。選別の決定論的な原理により、デバイス内で偏向される遊離の血小板のパーセンテージが予測可能となる。活性化された血小板は凝集体を形成する可能性があり、凝集体は偏向される可能性がある。この変化は、輸液用の血小板パックの有効性の劣化を知らせる、第1レベルの監視としてモニタリング可能である。この方法は一般に、例えば試料中の粒子の集塊に起因するサイズ上の任意の変化のモニタリングにも応用可能である。
【0074】
改変
本発明の方法の他の態様では、対象細胞を、懸濁物中で粒子または流体に化学的または物理的に改変可能な改変用試薬を接触させる。このような応用には、精製法、緩衝液交換法、標識法(例えば免疫組織化学的な標識、磁気による標識、および組織化学的な標識、細胞染色、およびフローインサイチュー蛍光ハイブリダイゼーション(FISH))、細胞の固定、細胞の安定化、細胞の溶解、ならびに細胞の活性化などがある。
【0075】
このような方法によって、粒子を試料から異なる液体中に移動させることができる。図34Aは、この作用を単ステージ型デバイスに関して図示したものであり、図34Bは、この作用をマルチステージ型デバイスに関して示したものであり、図34Cは、この作用を、複式アレイに関して示したものであり、および図34Dは、この効果を、マルチステージ型の複式アレイに関して示したものである。このような方法によって、血液細胞を血漿から分離することができる。1つの液体から別の液体への、粒子のこのような輸送は、一連の改変、例えばオンチップの血液のライト(Wright)染色を実施する際にも使用することができる。このような一連の改変は、粒子を第1の試薬に反応させる段階、ならびに続いて粒子を洗浄用緩衝液に移した後に別の試薬に移す段階を含む場合がある
【0076】
図35A、図35B、図35Cは、2本のバイパス流路を有する2ステージ型デバイスにおける改変の他の例を示す。この例では、大きな血液粒子が血液から緩衝液へ動かされてステージ1で回収され、中程度の血液粒子が血液からステージ2の緩衝液へ動かされ、ならびに続いてステージ1およびステージ2において血液から除去されない小さな血液粒子が回収される。図35Bは、2つのステージのサイズのカットオフを示し、および図35Cは、回収された3つのフラクションのサイズ分布を示す。
【0077】
図36は、アレイの側方の縁と流路壁の間に配置されたバイパス流路を有する2ステージ型デバイスにおける改変の例を示す。図37は、2つのステージが流体流路によって連結されている点を除いては、図36のデバイスと同様のデバイスを示す。図38は、小さなフットプリントを備えた2つのステージを有するデバイスにおける改変を示す。図39A〜39Bは、第1および第2のステージからの排出が1本の流路で捕捉されるデバイスにおける改変を示す。図40は、本発明の方法で使用される別のデバイスを示す。
【0078】
図41は、粒子を対象に複数の経時的な改変を実施するためのデバイスの使用を示す。この方法では、血液粒子が血液から、粒子と反応する試薬中に動かされ、次に反応済みの粒子が緩衝液中に動かされることによって、未反応の試薬または反応副産物が除去される。追加的な段階を加えることができる。
【0079】
別の態様では、試薬が試料に、試料中の粒子の流体力学的サイズを選択的または非選択的に大きくするために添加される。このような修飾型の試料は後に、障害物アレイを通して送込まれる。粒子は膨張して、長い流体力学的直径を有するので、より大きく、かつより容易に生成されるギャップサイズを有する障害物アレイを使用することが可能であろう。好ましい態様では、膨張およびサイズベースの濃縮の段階は、デバイス上で集積された様式で実施される。適切な試薬は、任意の低張液、例えば脱イオン水、2%糖溶液、または純粋な非水性溶媒を含む。他の試薬には、ビーズ、例えば(例えば抗体もしくはアビジン-ビオチンを介して)選択的に、または非選択的に結合する磁気粒子もしくはポリマーなどがある。
【0080】
別の態様では、試料中の粒子の流体力学的サイズを選択的または非選択的に小さくするために、試薬が試料が添加される。試料中の粒子の非均一な縮小は、粒子間の流体力学的サイズの差を広げることになる。例えば有核細胞は、細胞を高浸透圧によって収縮させることで、除核細胞から分離される。除核細胞は、非常に小さな粒子に収縮する場合がある一方で、有核細胞は、核のサイズ未満には収縮しない場合がある。例示的な収縮試薬には高張液などがある。
【0081】
別の態様では、試料中に存在する他の粒子に対して対象粒子の容積を高めるために、親和性官能基を付与したビーズが使用されることで、より大きく、かつより容易に作製可能なギャップサイズを有する障害物アレイの操作が可能となる。
【0082】
濃縮および改変は組み合わせることが可能であり、例えば所望の細胞を溶解試薬および細胞成分、例えば核と接触させてサイズを基に濃縮することができる。別の例では、粒子に粒状標識、例えば粒子に結合する磁気ビーズを接触させることができる。非結合状態の粒状標識は、サイズを基に除去することができる。
【0083】
他の濃縮法の併用
本発明のデバイスを使用する濃縮法および改変法を、他の粒状試料の操作法と組み合わせることができる。特に、粒子のさらなる濃縮または精製が望ましい場合がある。さらなる濃縮は、親和性濃縮を含む任意の手法で可能な場合がある。適切な親和性濃縮法には、対象粒子と、流路壁または障害物のアレイに結合した親和性薬剤の接触などがある。
【0084】
流体はデバイスを通して、能動的または受動的のいずれかによって駆動され得る。流体は、電場、遠心力場、圧力駆動性の流体の流れ、電気浸透流、および毛細管作用を使用して送込むことが可能である。好ましい態様では、場の平均的な方向は、アレイを含む流路の壁に平行となる。
【0085】
優先的溶解法
本発明はさらに、例えば臨床情報を細胞成分、例えば対象細胞の核から得るために、試料中の対象細胞を優先的に溶解させる方法を提供する。一般に、この方法では、試料中における対象細胞と他の細胞(例えば他の有核細胞)間の差次的な溶解を利用する。
【0086】
溶解
対象細胞は、任意の適切な方法で溶解させることができる。本発明の方法の1つの態様では、細胞に、優先的な溶解を引き起こす溶液を接触させることで溶解させることができる。このような細胞の溶解液には、補体媒介性溶解を開始させるための補体カスケード中の細胞特異的IgM分子およびタンパク質を含めることができる。他の溶解液には、特定の細胞型に感染して、複製の結果として溶解を引き起こすウイルスを含めることができる(例えばPawlik et al., Cancer 2002, 95:1171-81を参照)。他の溶解液は、細胞の浸透圧バランスを破壊する溶液、例えば溶解を引き起こす低張液または高張液(例えば蒸留水)を含む。他の溶解液は当技術分野で既知である。溶解は機械的手段によって、例えば細胞を、機械的に細胞を破壊するふるい、または他の構造に通すことによって、細胞を溶解させる熱、音響エネルギー、もしくは光のエネルギーを加えることで、またはアポトーシスやネクローシスなどの細胞調節型の過程によって生じる場合もある。細胞は、細胞を対象に凍結および融解の1回もしくは複数回のサイクルを行うことで溶解させる場合もある。加えて、界面活性剤を使用して、細胞膜を可溶化し、細胞を溶解して内容物を放出させることができる。
【0087】
1つの態様では、対象細胞は、極めて少ない細胞、例えば循環性の癌細胞、胎児細胞(胎児有核赤血球など)、血液細胞(母体および/または胎児の有核赤血球を含む有核赤血球など)、免疫細胞、結合組織細胞、寄生虫、または病原体(細菌、原生動物、および真菌など)である。大半の循環性の極めて少ない対象細胞は、宿主のRES(細網内皮係)に起因する免疫攻撃の結果として膜の完全性が損なわれており、このため溶解に対する感受性が高い。
【0088】
1つの態様では、対象細胞は、例えばWO 2004/029221およびWO 2004/113877に記載されているように、または本明細書に記載されているように、マイクロ流体デバイスを流れることで溶解する。別の態様では、対象細胞は最初に、例えば米国特許第5,837,115号に記載されているように、マイクロ流体デバイス内において障害物と結合した後に溶解する。この態様では、対象細胞の細胞成分は障害物から解放されるが、所望されていない細胞の細胞成分は結合状態を保つ。
【0089】
細胞成分の回収
所望の細胞成分は、例えば任意の適切な方法によって、例えばサイズ、重量、形状、変化、親水性/疎水性、化学反応性、もしくは不活性、または親和性を基に、細胞溶解物から分離することができる。例えば、核酸、イオン、タンパク質、および他の荷電性分子種をイオン交換樹脂で捕捉するか、または電気泳動によって分離することができる。細胞成分は、サイズまたは重量を基に、サイズ排除クロマトグラフィー、遠心分離、または濾過によって分離することもできる。細胞成分は、親和性機構(すなわち抗体-抗原相互作用および核酸の相補的な相互作用などの特異的な結合相互作用)、例えばアフィニティクロマトグラフィー、表面に結合された親和性分子種に対する結合、および親和性ベースの沈殿法で分離することもできる。特に核酸、例えばゲノムDNAを、例えばビーズまたはアレイに結合させた配列特異的なプローブとのハイブリダイゼーションによって分離することができる。細胞成分は、形状もしくは変形性、または非特異的な化学的相互作用、例えばクロマトグラフィーもしくは逆相クロマトグラフィー、または塩もしくは他の試薬、例えば有機溶媒を使用する沈殿法を基に回収することもできる。細胞成分は、化学反応、例えば遊離のアミンまたはチオールの結合を基に回収することもできる。回収に先立ち、細胞成分を、特定の回収様式を可能とするように、または促進するように、例えば変性、酵素による切断(プロテアーゼ、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、もしくは制限エンドヌクレアーゼを介する切断など)、または標識もしくは他の化学反応を介して改変しておくこともできる。
【0090】
回収対象の細胞成分に必要な純度のレベルは、使用される特定の操作に依存し、および当業者によって決定され得る。ある態様では、細胞成分は、例えば対象細胞成分が他の細胞成分に干渉することなく解析可能か、または操作可能な場合に、溶解物からの分離が必要ではない場合がある。親和性ベースの操作(例えば、検出可能な標識を使用する場合と使用しない場合のある、核酸プローブもしくはプライマー、アプタマー、抗体、または配列特異的な挿入剤との反応)は、細胞成分の精製を行わない場合の使用に適している。
【0091】
1つの態様では、例えば米国特許出願第2004/0144651号に記載されているか、または本明細書に記載されたデバイスが、対象となる粒状細胞成分、例えば核を、溶解物からサイズを基に分離するために使用される。この態様では、対象となる粒状細胞成分を他の粒状細胞成分および完全な細胞から、デバイスを使用して分離することができる。
【0092】
細胞成分の操作
溶解によって解放されるか、または例えば本明細書に記載されたサイズベースの分離法によって得られたら、所望の細胞成分をさらに操作すること、例えば同定したり、列挙したり、反応させたり、単離したり、または破壊したりすることができる。1つの態様では、細胞成分は核酸、例えば核、ミトコンドリア、および核または細胞質のDNAもしくはRNAを含む。特に核酸は、mRNAもしくはrRNAなどのRNA、または例えば切断可能な染色体DNAなどのDNA、またはアポトーシス過程を受けたDNAを含む場合がある。細胞成分中の核酸の遺伝的解析は、任意の適切な方法、例えばPCR、FISH、および配列決定法で実施することができる。遺伝情報に基づいて、疾患、遺伝病の保因者としての状態、または病原体もしくは寄生虫の感染を診断することができる。仮に、胎児細胞から獲得されれば、性別、父性、変異(例えば嚢胞性線維症)、および異数性(例えばトリソミー21)に関連する遺伝情報を得ることができる。いくつかの態様では、胎児細胞またはこの成分の解析によって、染色体、DNA、またはRNAの異常などの遺伝子異常の有無が判定される。常染色体異常の例には、アンジェルマン症候群(15q11.2-q13)、猫鳴き症候群(5p-)、ディジョージ症候群および口蓋心顔面(Velo-cardiofacial)症候群(22q11.2)、ミラー・ディッカー症候群(17p13.3)、プラダー・ウィリー症候群(15q11.2-q13)、網膜芽腫(13q14)、スミス・マジェニス症候群(17p11.2)、トリソミー13、トリソミー16、トリソミー18、トリソミー21(ダウン症候群)、三倍性、ウィリアムス症候群(7q11.23)、およびウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p-)などがあるが、これらに限定されない。性染色体異常の例には、カルマン症候群(Xp22.3)、steroid sulfate deficiency(STS)(Xp22.3)、X連鎖性魚鱗癬(Xp22.3)、クラインフェルター症候群(XXY);脆弱X症候群;ターナー症候群;超雌またはトリソミーX;およびモノソミーXなどがあるが、これらに限定されない。本明細書に記載されたシステムによって解析可能な他のそれほど一般的ではない染色体異常には、欠失(短い喪失切片);微小欠失(単一遺伝子のみを含む場合のある材料の微量の喪失);転座(染色体の一部分が別の染色体に結合した状態);ならびに逆位(染色体の一部分が切り出されて上下が逆になって再挿入された状態)などがあるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、胎児細胞またはこの成分の解析ではSNPが解析され、およびそのようなSNPに基づいて胎児の状態が推定される。仮に、癌細胞から獲得されれば、腫瘍原性特性に関する遺伝情報が得られる場合がある。仮に、ウイルスまたは細菌細胞から得られれば、病原性および分類に関する遺伝情報が得られる場合がある。非遺伝性の細胞成分の場合は、このような成分を解析して、疾患を診断するか、または健康状態をモニタリングすることができる。例えば、極めて少ない細胞、例えば胎児細胞に由来するタンパク質または代謝物を、親和性ベースのアッセイ法(例えばELISA)または他の解析法、例えばクロマトグラフィーや質量分析を含む、任意の適切な方法で解析することができる。
【0093】
一般的事項
本明細書に記載された方法では、試料を精製、例えば特定の成分の安定化および除去を行うか、行わないかにかかわらず使用することができる。試料の一部を、デバイス内への導入前に希釈したり、濃縮したりすることができる。
【0094】
本発明の方法の別の態様では、複数の障害物を含むマイクロ流体デバイスに試料を、例えば米国特許第5,837,115号に記載された、または本明細書に記載された手順で接触させる。対象細胞は、このようなデバイス内で障害物に結合された親和性部分に結合することで、例えばWO 2004/029221に記載されているように、所望されていない細胞に対して濃縮される。
【0095】
類似のデバイスを使用する本発明の方法の別の態様では、非対象細胞は、例えばWO 2004/029221に記載されたように、対象細胞の濃縮された試料に至る、対象細胞の通過を可能としながら、障害物に結合された親和性部分と結合する。サイズベースの方法および親和性ベースの方法を2段階の方法で組み合わせることで、対象細胞について試料をさらに濃縮することができる。
【0096】
本発明の方法の別の態様では、細胞試料を、例えば米国特許出願第2004/0144651号に記載されているように、または本明細書に記載されているように、特定のサイズを上回る粒子が、流体の流れの平均的な方向に平行でない方向に移動するように偏向されるように配置された複数の障害物を含むマイクロ流体デバイスに接触させることで事前に濾過する。
【0097】
実施例
実施例1
14の3ステージ型複式アレイを多重化したシリコンデバイス
図42A〜42Eは、以下の特徴を有する本発明の例示的なデバイスを示す。
寸法:90 mm×34 mm×1 mm
アレイ設計:3ステージ型、第1、第2、および第3のステージの各ギャップサイズ=18μm、12μm、および8μm。分岐比=1/10。複式;単バイパス流路。
デバイス設計:多重化された14の複式アレイ;流れを安定化させるためのフローレジスター。
【0098】
デバイスの作製:アレイおよび流路をシリコン中に、標準的なフォトリソグラフィーおよびディープシリコン反応性エッチング法で作製した。エッチング深度は150μmである。流体が通過する孔をKOH湿式エッチング法で作製する。シリコン基質でエッチング面をシールして、血液適合性の圧力感受性接着剤(9795, 3M, St Paul, MN)を使用して、閉じた状態の流体流路を作製した。
【0099】
デバイスのパッケージング:血液および緩衝液をデバイスに送るするために、および生じたフラクションを抽出するために、デバイスを機械的に、外部に流体リザーバーを備えたプラスチック製マニホールドに接続した。
【0100】
デバイスの操作:外部圧力源を使用して2.4 PSIの圧力を緩衝液および血液リザーバーに加え、パッケージ済みのデバイスからの流体輸送および抽出を調節した。
【0101】
実験条件:同意を得た成人ドナーから得たヒト血液を、K2EDTAバキュテナー(366643, Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)中に回収した。非希釈状態の血液を、上記の例示的なデバイス(図42F)を使用して、採血から9時間以内に室温で処理した。血液に由来する有核細胞を除核細胞(赤血球および血小板)から分離し、ならびに血漿を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412-100ML, Sigma-Aldrich, St Louis, MO)含む、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝食塩水(14190-144, Invitrogen, Carlsbad, CA)の緩衝液流中に移動させた。
【0102】
測定法:全血球数を、コールターインピーダンスヘマトロジーアナライザー(COULTER(登録商標) Ac・T diff(商標), Beckman Coulter, Fullerton, CA)を使用して決定した。
【0103】
結果:図43A〜43Fは、血液試料および廃液(緩衝液、血漿、赤血球、および血小板)、ならびにデバイスによって生成された生成物(緩衝液および有核細胞)フラクションから、ヘマトロジーアナライザーによって得られた典型的なヒストグラムを示す。以下の表は、5種類の異なる血液試料に関する結果を示す。

【0104】
実施例2
14の単ステージ型複式アレイを多重化したシリコンデバイス
図44は、以下を特徴とする、本発明の例示的なデバイスを示す。
寸法:90 mm×34 mm×1 mm
アレイ設計:単ステージ、ギャップサイズ=24μm。分岐比=1/60。複式;二重バイパス流路。
デバイス設計:多重化された14の複式アレイ;流れを安定化させるためのフローレジスター。
【0105】
デバイスの作製:アレイおよび流路をシリコン中に、標準的なフォトリソグラフィーおよびディープシリコン反応性エッチング法で作製した。エッチング深度は150μmとする。流体用の貫通孔をKOH湿式エッチング法で作製した。シリコン基質をエッチング面で密封して、密封された流体流路を、血液適合性の圧力感受性接着剤(9795, 3M, St Paul, MN)を使用して作製した。
【0106】
デバイスのパッケージング:デバイスを、血液および緩衝液をデバイスに送込み、生成したフラクションを抽出するための、流体リザーバーを外部に備えたプラスチック製マニホールドに機械的に接続した。
【0107】
デバイスの操作:パッケージングされたデバイスからの流体の輸送および抽出を調節するために、外部圧力源を使用して2.4 PSIの圧力を緩衝液および血液リザーバーに加えた。
【0108】
実験条件:同意を得た成人ドナーから得たヒト血液を、K2EDTAバキュテナー(366643, Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)中に回収した。非希釈状態の血液を、上記の例示的なデバイスを使用して、採血から9時間以内に室温で処理した。血液に由来する有核細胞を、除核細胞(赤血球および血小板)から分離し、ならびに血漿を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412-100ML, Sigma-Aldrich, St Louis, MO)を含む、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝食塩水(14190-144, Invitrogen, Carlsbad, CA)の緩衝液流中に移動させた。
【0109】
測定法:全血数を、コールターインピーダンスヘマトロジーアナライザー(COULTER(登録商標) Ac・T diff(商標), Beckman Coulter, Fullerton, CA)を使用して決定した。
【0110】
結果:デバイスを17 mL/hr操作し、99%を上回る赤血球の除去、95%を上回る有核細胞の保持、および98%を上回る血小板の除去が達成された。
【0111】
実施例3
胎児の臍帯血の分離
図45は、胎児の臍帯血から有核細胞を分離する際に使用されたデバイスの略図を示す。
寸法:100 mm×28 mm×1 mm
アレイ設計:3つのステージ、第1、第2、および第3のステージの各ギャップサイズ=18μm、12μm、および8μm。分岐比=1/10。複式;単バイパス流路。
デバイス設計:多重型の10の複式アレイ;流れを安定化させるためのフローレジスター。
【0112】
デバイスの作製:アレイおよび流路を、標準的なフォトリソグラフィー法、およびディープシリコン反応性エッチング法でシリコン中に作製した。エッチング深度は140μmとする。流体用の貫通孔をKOH湿式エッチング法で作製する。シリコン基質をエッチング面上でシールし、血液適合性の圧力感受性接着剤(9795, 3M, St Paul, MN)を使用して、閉じられた流体流路を形成した。
【0113】
デバイスのパッケージング:血液および緩衝液をデバイスに輸送して、生成したフラクションを抽出するために、デバイスを、外部に流体リザーバーを備えたプラスチック製マニホールドに機械的に接続した。
【0114】
デバイスの操作:パッケージングされたデバイスからの流体の輸送および抽出を調節するために、外部圧力源を使用して2.0 PSIの圧力を緩衝液および血液リザーバーに加えた。
【0115】
実験条件:ヒト胎児の臍帯血を、クエン酸デキストロース抗凝固剤を含むリン酸緩衝食塩水中に採取した。1ミリリットルの血液を、上記のデバイスを使用し、採血から48時間以内に室温で3 mL/hrで処理した。血液由来の有核細胞を除核細胞(赤血球および血小板)から分離し、ならびに血漿を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412-100ML, Sigma-Aldrich, St Louis, MO)、および2 mM EDTA (15575-020, Invitrogen, Carlsbad, CA)を含む、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝食塩水(14190-144, Invitrogen, Carlsbad, CA)の緩衝液流中に輸送した。
【0116】
測定法:生成物フラクションおよび廃液フラクションの細胞塗抹(図46A〜46B)を作製し、改変ライト-ギムザ(WG16, Sigma Aldrich, St. Louis, MO)で染色した。
【0117】
結果:胎児の有核赤血球は、生成物フラクション(図46A)中の観察されたが、廃液フラクション(図46B)中には認められなかった。
【0118】
実施例4
母体血液からの胎児細胞の分離
実施例1に詳細に記載されたデバイスおよび工程を、免疫磁気親和性濃縮法と組み合わせて使用することで、母体血液から胎児細胞を分離可能なことが明らかとなった。
【0119】
実験条件:男児を妊娠中の、同意を得た母体ドナーから得た血液を、妊娠の選択的終結の直後に、K2EDTAバキュテナー(366643, Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)中に採取した。希釈されていない血液を、実施例1に記載されたデバイスを使用して、採血から9時間以内に室温で処理した。血液由来の有核細胞を除核細胞(赤血球および血小板)から分離し、ならびに血漿を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412-100ML, Sigma-Aldrich, St Louis, MO)を含む、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝食塩水(14190-144, Invitrogen, Carlsbad, CA)の緩衝液流中に輸送した。続いて、有核細胞のフラクションを、抗CD71マイクロビーズ(130-046-201, Miltenyi Biotech Inc., Auburn, CA)で標識し、およびMiniMACS(商標) MSカラム(130-042-201, Miltenyi Biotech Inc., Auburn, CA)を使用して、製造業者の仕様書に従って濃縮した。最終的に、CD71陽性のフラクションをガラススライド上に滴下した。
【0120】
測定法:滴下済みのスライドを、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)法で、製造業者の仕様書に従って、Vysisプローブ(Abbott Laboratories, Downer's Grove, IL)を使用して染色した。試料は、X染色体およびY染色体の存在によって染色された。1つの例では、トリソミー21の妊娠が既知である調製試料も、第21染色体に関して染色された。
【0121】
結果:胎児細胞が分離されたことは、有核細胞フラクションから調製されたCD71陽性集団中における男児細胞の確実な存在によって確認された(図47)。検討された1つの異常な例では、トリソミー21病理も同定された(図48)。
【0122】
以下の例は、本発明のデバイスの特定の態様を示す。各デバイスに関する記述を、直列のステージの数、各ステージのギャップサイズ、ε(流れ角)、およびデバイス1台あたりの流路数(アレイ/チップ)について行う。各デバイスはシリコンからDRIEで作製し、各デバイスに熱による酸化被膜を施した。
【0123】
実施例5
このデバイスは、1つのアレイ内に5つのステージを含む。
アレイ設計:5ステージ型、非対称アレイ
ギャップサイズ:ステージ1:8μm
ステージ2:10μm
ステージ3:12μm
ステージ4:14μm
ステージ5:16μm
流れ角:1/10
アレイ/チップ:1
【0124】
実施例6
このデバイスは、各ステージがバイパス流路を有する複式である3つのステージを含む。デバイスの高さは125μmとした。
アレイ設計:中央に回収用流路を有する対称な3ステージ型のアレイ
ギャップサイズ:ステージ1:8μm
ステージ2:12μm
ステージ3:18μm
ステージ4:
ステージ5:
流れ角:1/10
アレイ/チップ:1
その他:中央に回収用流路
【0125】
図49Aは、デバイスの作製に使用されるマスクを示す。図49B〜49Dは、流入口、アレイ、および流出口を規定するマスクの一部の拡大図である。図50A〜50Gは、実際のデバイスのSEMを示す。
【0126】
実施例7
このデバイスは、各ステージがバイパス流路を有する複式である3つのステージを含む。「フィン」が、バイパス流路に隣接することで、バイパス流路からの流体がアレイに再侵入するのを防ぐように設計されている。同チップは、オンチップのフローレジスター、すなわちアレイより大きな流体抵抗を保持する流入口および流出口も含むようにした。デバイスの高さは117μmであった。
【0127】
アレイ設計:3ステージ型の対称アレイ
ギャップサイズ:ステージ1:8μm
ステージ2:12μm
ステージ3:18μm
ステージ4:
ステージ5:
流れ角:1/10
アレイ/チップ:10
その他:大きなフィンを有する回収用流路
オンチップのフローレジスター
【0128】
図51Aは、デバイスの作製に使用されたマスクを示す。図51B〜51Dは、流入口、アレイ、および流出口を規定するマスクの一部の拡大図である。図52A〜52Fは、実際のデバイスのSEMを示す。
【0129】
実施例8
このデバイスは、各ステージが、バイパス流路を有する複式である3つのステージを含む。バイパス流路に隣接するように「フィン」が、バイパス流路に由来する流体が、アレイに再侵入しないように設計された。アレイに最も近いフィンの縁は、アレイの形状に似るように設計されている。チップは、オンチップのフローレジスター、すなわちアレイより大きな流体抵抗を有する流入口および流出口も含む。デバイスの高さは138μmであった。

【0130】
図45Aは、デバイスの作製に使用されたマスクを示す。図45B〜45Dは、流入口、アレイ、および流出口を規定するマスクの一部の拡大図である。図532A〜532Fは、実際のデバイスのSEMを示す。
【0131】
実施例9
このデバイスは、各ステージがバイパス流路を有する複式である3つのステージを含む。「フィン」は、バイパス流路に隣接するように、バイパス流路に由来する流体がアレイ内に再侵入しないように、Femlabを使用して最適化された。アレイに最も近いフィンの縁は、アレイの形状に似るように設計された。チップは、オンチップのフローレジスター、すなわちアレイより大きい流体抵抗を有する流入口および流出口も含むようにした。デバイスの高さは139μmまたは142μmであった。
アレイ設計:3ステージ型の対称アレイ
ギャップサイズ:ステージ1:8μm
ステージ2:12μm
ステージ3:18μm
ステージ4:
ステージ5:
流れ角:1/10
アレイ/チップ:10
その他:Femlabにより、中央の回収用流路(Femlab I)を最適化
オンチップのフローレジスター
【0132】
図54Aは、デバイスの作製に使用されたマスクを示す。図54B〜54Dは、流入口、アレイ、および流出口を規定するマスクの一部の拡大図である。図55A〜55Sは、実際のデバイスのSEMを示す。
【0133】
実施例10
このデバイスは、両アレイの末端からの排出を受けるように配置されたバイパス流路を有する、単ステージ型の複式デバイスを含む。このデバイス内における障害物は楕円形である。アレイの境界はFemlabでモデル化された。チップは、オンチップのフローレジスター、すなわちアレイより大きい流体抵抗を有する流入口および流出口も含むようにした。デバイスの高さは152μmであった。
アレイ設計:単ステージ型の対称アレイ
ギャップサイズ:ステージ1:24μm
ステージ2:
ステージ3:
ステージ4:
ステージ5:
流れ角:1/60
アレイ/チップ:14
その他:中央に障害物
楕円形のポスト
オンチップのレジスター
Femlabによってモデル化されたアレイ境界
【0134】
図44Aは、デバイスの作製に使用されたマスクを示す。図44B〜44Dは、流入口、アレイ、および流出口を規定するマスクの一部の拡大図である。図56A〜56Cは、実際のデバイスのSEMを示す。
【0135】
実施例11
以下の実施例では、母体の全血に由来する、循環性の胎児細胞の精製後の核の集団の抽出に焦点を当てるが、記載された方法は、他の細胞からの細胞成分の分離に関して一般的な方法である。
【0136】
胎児核の分離
図57は、母体血液試料から胎児核を分離する方法のフローチャートを示す。この方法では、赤血球が優先的に溶解される(図58)。
【0137】
ゲノム解析を目的として、対象循環細胞から、全血に由来する核の精製集団を分離する方法の複数の態について以下に説明する。
【0138】
(a)この方法では、本明細書に記載されたように、全血を、(1)1〜3 logの除核赤血球および血小板の数を枯渇させることによって有核細胞の濃縮試料を得るために、(2)濃縮有核試料のマイクロ流体処理によって胎児核を放出させることで、残存性の除核赤血球、除核網状赤血球、および有核赤血球を、有核母体白血球に対して優先的に溶解させるために、(3)母体有核白血球から核を、サイズベースのデバイスによるマイクロ流体処理によって分離するために、および(4)胎児ゲノムを市販の遺伝子解析ツールを使用して解析するために、マイクロ流体処理によって分離する。
【0139】
(b)この方法は、態様1の段階1および段階2が、マイクロ流体デバイスを通過後に、段階3用の下流のデバイス、または大型のデバイスのコンポーネントの使用を可能とするように設計され得る(図59および図60を参照)。図59は、濃縮および溶解を同時に行うためのマイクロ流体デバイスの概略図を示す。このデバイスは、より大きな細胞を、溶解液を含む中央の流路内に試料が導入されるデバイスの縁から偏向させる障害物の2つの領域を利用する(例えば本明細書に記載された複式デバイス)。母体血液の場合、障害物の領域は、胎児の有核赤血球および他の有核細胞が中央の流路内に偏向されながら、母体の除核赤血球および血小板がデバイスの端に残存するように配置される。中央の流路内に偏向されると、胎児赤血球(対象細胞)は溶解する。図60は、非溶解細胞から核(対象となる細胞成分)を分離するためのマイクロ流体デバイスの概略図を示す。このデバイスは、障害物が、核がデバイスの端に維持されながら、より大きな粒子は中央の流路へ偏向されるように配置される点を除いて、図59のデバイスと似ている。
【0140】
(c)母体血液試料中の胎児核のマイクロ流体ベースの生成と、これに続く母体細胞から胎児核を分離する密度勾配遠心分離法などのバルク処理法の併用(図61参照)。
【0141】
(d)方法および原理の証明。
【0142】
有核赤血球の選択的な溶解および分別
満期における臍帯血をがスパイクされたドナー血液試料中に混入する赤血球を、低張性および塩化アンモニウムによる溶解の2つの方法で溶解した。除核赤血球は低張液中では有核細胞より速く溶解するので、低張液中における混合細胞集団の曝露時間を制御することで、細胞集団が、この時間を基に差次的に溶解される。この方法では、細胞は、沈降してペレットを生じ、ペレット上の血漿が吸引される。次に脱イオン水を添加し、ペレットを水と混合する。除核赤血球の95%を上回る部分を、有核赤血球の溶解を最小限に抑えながら溶解させるためには15秒間の曝露で十分であり、有核赤血球の70%を上回るが、他の有核細胞が15%未満の部分の溶解には15〜30秒間の曝露で十分であるが、他の有核細胞の溶解のパーセンテージは30秒間以上の曝露によってが高まる。所望の曝露時間後に、10×HBSS(高張平衡塩)溶液を添加すると、溶液は等張条件に戻る。標準濃度(例えば0.15 Mの等張液)の塩化アンモニウム溶解液への曝露は、赤血球のバルクを、有核細胞への影響を最小限に抑えながら溶解させる。低張性の塩化アンモニウム溶液を調製するために、溶解液の重量モル浸透圧濃度が低下する場合は、有核赤血球のバルクを成熟赤血球とともに溶解させる。
【0143】
密度遠心分離法で、濃縮されたリンパ球集団が得られる。これらのリンパ球のアリコートを、低張性の塩化アンモニウム溶液に、95%を上回る細胞を溶解させるのに十分な時間、曝露した。次にこれらの核を、2本鎖DNAのATに富む領域に特異的な染色剤であるHoechst 33342(ビスベンズイミドH33342)で標識し、当初のリンパ球集団に再び添加して、90:10(細胞:核)の混合物を得た。この混合物を、図60に記載されているように、細胞をサイズを基に核から分離するデバイス内に入れ、廃液および生成物のフラクションを回収し、ならびに各フラクションに含まれる細胞:核の比を測定した。
【0144】
溶解生成物の密度勾配遠心分離。差次的な溶解法で処理された混合細胞懸濁液の溶解した核は、溶解物にショ糖のクッション溶液を添加することで濃縮できる。次に同混合物を、純粋なショ糖クッション溶液上に重層した後に遠心分離し、濃縮状態の核ペレットを得た。非溶解細胞および残渣を上清から吸引し;核ペレットを緩衝液に再懸濁した後に、ガラススライド上でサイトスピンする。
【0145】
酸アルコールによる全細胞溶解、および標的細胞同定のための核RNAのFISH。図60に記載されたように、サイズを基に細胞を分離するデバイスから得られた生成物を、酸アルコール溶液(メタノール:酢酸3:1、体積比)に氷上で30分間曝露したところ、99%を上回る除核細胞が溶解され、および99.0%を上回る有核細胞が溶解した。核を膨張させるための、細胞を塩溶液(0.6% NaCl)に30分間、曝露する低張処理と、これに続く酸アルコールによる溶解を含めることもできる。放出された核を、サイトスピンによってガラススライド上に定量的に沈着させることが可能であり、FISHが可能である(図66aおよび図66b)。胎児有核赤血球などの対象細胞を、正の選択用にゼータ-グロビン、イプシロン-グロビン、ガンマ-グロビンなどのプローブを使用し、および負の選択用にベータ-グロビンなどのプローブを使用するRNA-FISHで同定することができるほか、またはテロメア長を解析することができる。胎児細胞と胎児以外の細胞を区別する他の方法は当技術分野で既知であり、例えば、米国特許第5,766,843号に記載されている。
【0146】
実施例12
図62は、血液中の粒子の分離に最適化されたデバイスを示す。これは、固定ギャップ幅が22μmで、試料の平行処理用の48の多重化アレイを備えた単ステージ型デバイスである。デバイスのパラメータを以下に示す。

【0147】
妊娠中のボランティアのドナーから血液を得て、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)(iDPBS)で1:1に希釈した。血液およびランニング緩衝液(1% BSAおよび2 mM EDTAを含むiDPBS)を、0.8 PSIの有効圧力を加えて、実施例13に記載されたようにマニホールドに接続されたデバイスに輸送した。血液は、ランニング緩衝液中の有核細胞と、ランニング緩衝液中の除核細胞および血漿タンパク質の2つの成分に分離された。いずれの成分とも、標準的なインピーダンスカウンターを使用して解析した。有核細胞を含む成分はさらに、総有核細胞損失を決定するために、標準的なNageotteカウント用チャンバーとともに、ヨウ化プロピジウム染色液を使用することをさらに特徴とする。回収されたデータを使用して、血液処理量(mL)、血液処理速度(mL/hr)、RBC/血小板の除去、および有核細胞の保持を決定した。以下の表に、このデバイスを使用時の細胞濃縮の結果を示す。

【0148】
実施例13
内部に本発明のマイクロ流体デバイスが挿入された例示的なマニホールドを図63に示す。マニホールドは、間に本発明のマイクロ流体デバイスが配置された2つの片割れ(half)を有する。マニホールドの一方の片割れは、それぞれが対応する流体リザーバーに接続された、血液用および緩衝液用の別個の流入口を含む。デバイス内の流路は、デバイス内の貫通孔を介してリザーバーに連結されるように向けられている。典型的には、デバイスは垂直に向けられ、処理された血液が生成物流出口から滴下することで回収される。マイクロ流体デバイスの生成物流出口の周囲の領域も、疎水性物質によって、例えば、生じる液滴のサイズを制限するために、永久的なマーカーからマークされる場合がある。デバイスは、2つの疎水性ベントフィルター、例えば0.2μm径のPTFEフィルターも含む。このようなフィルターによって、デバイス内に捕捉された空気が、水溶液によって排気されることが可能となるが、低圧力、例えば5 psi未満の圧力では液体を通過させない。
【0149】
デバイスを始動するためには、緩衝液、例えば1%ウシ血清アルブミン(w/v)および2 mM EDTAを含むダルベッコPBSを、5〜10分間、減圧下で攪拌しながら脱気する。次に緩衝液を、マニホールド中の緩衝液流入口を介してデバイス内に5 psi未満の圧力で送込む。次に緩衝液で、疎水性ベントフィルターを介して空気を置換することで緩衝液チャンバーを満たした後に、マイクロ流体デバイスおよび血液チャンバー内の流路を満たす。血液チャンバーに接続された疎水性ベントフィルターによって、チャンバー内の空気の排出が可能となる。血液チャンバーが満たされると、緩衝液が血液流入口内に送込まれる。ある態様では、1 psiにおける1分間のプライミングの後に、血液流入口を閉じられ、3分間かけて圧力を3 psiに高められる。
【0150】
実施例14
本明細書に記載された任意のデバイスによって濃縮された胎児nRBC集団を対象に、大容量の低イオン強度の緩衝液、例えば脱イオン水を添加して低張ショックを加えることで、除核RBCおよびnRBCを選択的に溶解して、個々の核を放出させる。次に、等量の高イオン強度の緩衝液を添加して低張ショックを終了させる。イオジキサノール水溶液、ρ=1.32 g/mLへの通過などの勾配遠心分離法で後に回収可能な放出された核を解析する。
【0151】
図64は、溶解条件への曝露の時間の関数としての、母体nRBCに対する胎児nRBCの選択的な溶解を示す。この選択的溶解手順で、胎児nRBC、母体nRBC、除核の胎児および母体のRBC、ならびに胎児および母体の白血球を含む細胞集団中の胎児nRBCを選択的に溶解させることもできる。低張ショックを任意の時間、誘導するために蒸留水を使用し、続いてPBSなどの等量の10x塩溶液を添加することでこれを停止させたところ、胎児nRBCおよび母体nRBCは、溶解した(生きていない)胎児nRBCの数が10倍増加し、溶解した母体nRBCの数が、これより小さな倍率で増加した時間で溶解した。任意の時点において、溶解した細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、勾配遠心分離法で濃縮して、溶解した胎児nRBCと母体nRBCの比を決定した。最適化された時間を決定することで、胎児nRBCの核の選択的な濃縮に応用することができる。
【0152】
実施例15
除核RBCおよび母体の有核RBCを選択的に溶解させるために、胎児nRBCが濃縮された試料を、アセタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤(例えば0.1〜100 mM)を添加した0.155 M NH4Cl、0.01 M KHCO3、2 mM EDTA、1% BSAなどのRBC溶解緩衝液で処理して、溶解を誘導した後に、10x容量の1xPBS、または4,4'-ジイソチオシアノスチルベン-2,2'-ジスルホン酸(DIDS)などのイオン交換流路阻害剤が添加された1xPBSなどの平衡塩緩衝液などの大量の平衡塩緩衝液を使用して溶解過程を終了させる。次に、生存している胎児細胞を対象に、追加のラウンドの選択および解析を行うことが可能である。
【0153】
白血球を刺激するために、K562細胞をHoechst、およびcalcein AMで30分間かけて室温で標識した(図65)。標識後のK562細胞を血液標本に添加した後に、緩衝液(0.155 M NH4Cl、0.01 M KHCO3、2 mM EDTA、1% BSA、および10 mMアセタゾラミド)(スパイクされた血液容量に対する緩衝液容量の比は3:2)を添加した。スパイクされた血液標本を室温で4時間、定期的に穏やかに攪拌しながらインキュベートした。個々のスパイク済み標本中の生細胞のフラクションを、610 nmにおける緑色蛍光を複数の時点で測定することで判定した。細胞の溶解は、処理のわずか3分後に(DIDSの非存在下で)観察される。
【0154】
実施例16
胎児nRBCが、例えば本明細書に記載された任意のデバイスまたは方法で濃縮された試料を溶解して、遺伝子の内容を解析することができる。細胞の溶解、および所望の細胞または細胞成分の分離の可能な方法は、以下を含む:
(a)胎児nRBCが濃縮された試料を対象に全細胞溶解を行って、細胞質を除去して核を分離することができる。核は、カルノア液などの固定液による処理、およびガラススライドへの吸着によって固定化することができる。胎児核は、核タンパク質および転写因子の免疫染色による、または胎児のプレmRNAの差次的ハイブリダイゼーション、RNA FISHによる内因性の胎児標的の存在によって同定できる。(Gribnau et al. Mol Cell 2000. 377-86; Osborne et al., Nat Gene. 2004. 1065-71;Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 1991. 7391-7395;Alfonso-Pizarro et al., Nucleic Acids Research. 1984. 8363-8380)。このような内因性の胎児標的は、ゼータ-グロビン、イプシロン-グロビン、ガンマ-グロビン、デルタ-グロビン、ベータ-グロビン、アルファ-グロビンなどのグロビン、およびI-分岐酵素(Yu et al., Blood. 2003 101:2081)、N-アセチルグルコサミン転移酵素、またはIgnTなどの非グロビン標的を含む場合がある。RNA FISHに使用されるオリゴヌクレオチドプローブは、所望の標的を特異的に同定可能な、イントロン-エキソン境界に対応するものか、または他の領域に対応するもののいずれかの場合があるほか、またはテロメア長の解析を行うことができる。
(b)胎児nRBCが濃縮された試料を、実施例15に記載された緩衝液およびイオン交換阻害剤で処理して選択的に溶解させることで、胎児細胞を分離することができる。生存している胎児細胞は、グロビンやI-分岐ベータ1,6-N-アセチルグルコサミニル転移酵素などの細胞内マーカーか、または抗原Iなどの表面マーカーの有無によって、さらに選択することができる。別の態様では、濃縮された胎児nRBCを対象に選択的溶解を行って、実施例15に記載されたように除核RBCと母体nRBCの両方を除去した後に、あらゆる有核白血球上に存在する表面抗原であるCD45に対する抗体を使用する、補体による細胞溶解を行うことができる。結果として得られる完全な胎児nRBCは、他の任意の混入細胞を含まないはずである。
(c)胎児nRBCが濃縮された試料を、実施例14に記載された手順で低張ショックで溶解して、胎児核を分離することができる。核は、カルノア液などの固定液で処理して固定化し、ガラススライドに接着させることができる。
【0155】
分離されたら、所望の細胞または細胞成分(核など)を遺伝子の内容に関して解析することができる。FISHによって、第13染色体および第18染色体における欠損、またはトリソミー21やXXYなどの他の染色体異常を同定することができる。染色体の異数性も、比較ゲノムハイブリダイゼーションなどの方法で検出することができる。さらに、同定された胎児細胞を微小切断法で調べることができる。抽出後に、胎児細胞の核酸を対象に、1回もしくは複数回のPCR、または全ゲノム増幅と、これに続く比較ゲノムハイブリダイゼーション、またはショートタンデムリピート(STR)解析、単一ヌクレオチド点突然変異(SNP)、欠失、または転座などの遺伝子変異解析を行うことができる。
【0156】
実施例17
3 mlの赤血球の1xPBS溶液を含む、図60に記載されたデバイスで得られた生成物を、50 mMの亜硝酸ナトリウム/0.1 mMアセタゾラミドで10分間、処理する。次に細胞に、0.155 M NH4Cl、0.01 M KHCO3、2 mM EDTA、1% BSA、および0.1 mMアセタゾラミドの溶解緩衝液に接触させ、溶解反応を、4,4'-ジイソチオシアノスチルベン-2,2'-ジスルホン酸(DIDS)などのBAND 3イオン交換チャネル阻害剤を含むクエンチング溶液中に直接滴下して停止させる。除核RBCおよび有核RBCを、ライト-ギムザ染色後にカウントし、ならびにFISHで胎児nRBCをカウントする。次に値を、非溶解対照と比較する。このような1つの実験の結果を以下に示す。

【0157】
実施例18
カオトロピック塩または界面活性剤による全溶解、およびオリゴヌクレオチドによる胎児有核RBCからのアポトーシスDNAの濃縮
図60に記載された手順でデバイスから得られた生成物を、緩衝用の塩酸グアニジニウム溶液(少なくとも4.0 M)、グアニジニウムチオシアナート(少なくとも4.0 M)、またはSDSを添加したトリス緩衝液などの緩衝界面活性剤溶液などのカオトロピック塩溶液に溶解させる。次に細胞溶解物を、10μlの50 mg/mlのプロテアーゼKとともに55℃で20分間とインキュベートしてタンパク質を除去した後に、95℃で5分間、インキュベートすることでプロテアーゼを不活性化する。胎児nRBCは母体の血液循環に入るとアポトーシスを起こし、このアポトーシス過程によって、胎児nRBCのDNAが断片化する。胎児nRBCのDNAのサイズが小さいこと、およびオリゴヌクレオチドを介した濃縮による、より短いDNA断片の分離効率が完全なゲノムDNAの場合より高いという利点を利用することで、アポトーシスを起こした胎児nRBCのDNAを、ショートタンデムリピート(STR)などの1つしかない分子マーカーを同定するために、ビーズに結合した状態の、またはアレイもしくは他の表面に結合した状態のオリゴヌクレオチドの溶液に対するハイブリダイゼーションによって選択的に濃縮することができる。ハイブリダイゼーション後に、所望されていない核酸、または他の混入物を、10 mM Tris HCl pH 7.5を溶媒とする150 mM塩化ナトリウムなどの高塩緩衝液で洗浄して除去し、次に、捕捉された標的を、10 mM Tris pH 7.8などの緩衝液または蒸留水中に放出させることができる。次に濃縮されたアポトーシスDNAを、例えば実施例16に記載されたような、遺伝子の内容を解析する方法で解析する。
【0158】
実施例19
図67は、母体の血液試料を対象に実施可能な多様な溶解手順の詳細を記載したフローチャートを示す。例えば本明細書に記載されたデバイスおよび方法で生成される、「濃縮生成物」から開始されるように記載されているが、この過程は、任意の母体血液試料を対象に実施可能である。チャートから溶解が、(i)所望の細胞(例えば胎児細胞)を選択的に溶解させるために、(ii)所望の細胞およびその核を選択的に溶解させるために、(iii)全ての細胞を溶解させるために、(iv)全ての細胞およびその核を溶解させるために、(v)所望されていない細胞(例えば母体のRBC、WBC、血小板、またはこれらの組み合わせ)を溶解させるために、(vi)所望されていない細胞およびその核を溶解させるために、ならびに(vii)全ての細胞の溶解、および所望されていない細胞の核の選択的な溶解に使用可能なことがわかる。チャートは、放出された核を分離する例示的な方法(本発明のデバイスおよび方法は、この目的でも請求される)、ならびに結果を調べる方法も示している。
【0159】
実施例20
この実施例は、マイクロ流体環境内における全細胞溶解物の滴定の例である。本明細書に記載されたサイズベースの分離によって濃縮された血液試料を4つの等しい容量に分けた。そのうち3つを、デバイス内の一定の経路長で細胞を第1の所定の溶媒中に、および続いて、回収用の第2の所定の溶媒中に輸送可能なマイクロ流体デバイスで処理した。容積測定用の細胞懸濁物の流速は変動するため、第2の所定の溶媒に接触する前の、一定の経路長に沿った第1の所定の溶媒によるインキュベーション時間の制御が可能となる。この例では、第1の所定の溶媒としてDI水を使用し、および第2の所定の溶媒として2xPBSを使用した。流速を調節して、等張液を調製するために細胞を2×PBSと混合する前の、DI水中におけるインキュベーション時間を10秒、20秒、または30秒とすることができる。3つの処理容量、および残存する非処理容量の総細胞数を血球計数器を使用して計算した。

【0160】
他の態様
本明細書で言及された全ての出版物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の記載の方法および系のさまざまな変形および変更は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を特定の態様と関連して説明したが、請求される発明が、そのような特定の態様に過度に制限されるべきではないと理解されたい。実際、当業者に明らかな、本発明の記載された実施様式のさまざまな偏向は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0161】
他の態様は請求項に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1A〜1Eは、決定論的な側方変位を基に細胞を分離するアレイの概略図を示す:(A)後続の行の側方変位を示す;(B)ギャップを流れる流体が、どのように後続の行内における障害物の周囲で不均等に分けられるかを示す;(C)臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が、どのようにデバイス内で側方に動かされるかを示す;(D)円筒形の障害物のアレイを示す;および(E)楕円形の障害物のアレイを示す。
【図2】後続の行内における障害物の周囲におけるギャップを通る流れの不均等な分割を示す説明図。
【図3】臨界サイズが、この例では放物型である流れプロファイルにどのように依存するかを示す説明図。
【図4】形状が、デバイスを通して粒子の移動にどのように影響するかの説明。
【図5】変形性が、デバイスを介する粒子の移動にどのように影響するかの説明。
【図6】決定論的な側方変位の説明図。臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子は、アレイの縁に向かって動く一方で、臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子は、側方に変位することなくデバイスを通過する。
【図7】3ステージ型デバイスの概略図。
【図8】図7のデバイスの最大サイズおよびカットオフサイズ(すなわち臨界サイズ)の概略図。
【図9】バイパス流路の概略図。
【図10】バイパス流路の概略図。
【図11】共通のバイパス流路を有する3ステージ型デバイスの概略図。
【図12】共通のバイパス流路を有する3ステージ型の複式デバイスの概略図。
【図13】デバイスを流れる流れが実質的に一定である、共通のバイパス流路を有する3ステージ型デバイスの概略図。
【図14】デバイスを流れる流れが実質的に一定である、共通のバイパス流路を有する3ステージ型の複式デバイスの概略図。
【図15】バイパス流路および隣接するステージにおける流体抵抗が実質的に一定である、共通のバイパス流路を有する3ステージ型デバイスの概略図。
【図16】バイパス流路および隣接するステージにおける流体抵抗が実質的に一定である、共通のバイパス流路を有する3ステージ型の複式デバイスの概略図。
【図17】2つの別個のバイパス流路を有する3ステージ型デバイスの概略図。
【図18】任意の配置の、2つの別個のバイパス流路を有する3ステージ型デバイスの概略図。
【図19】3つの別個のバイパス流路を有する3ステージ型の複式デバイスの概略図。
【図20】各ステージを通過する流れが実質的に一定である、2つの別個のバイパス流路を有する3ステージ型デバイスの概略図。
【図21】各ステージを通過する流れが実質的に一定である、3つの別個のバイパス流路を有する3ステージ型の複式デバイスの概略図。
【図22】流れ-抽出境界の概略図。
【図23】流れ-供給境界の概略図。
【図24】バイパス流路を含む流れ-供給境界の概略図。
【図25】中央のバイパス流路に隣接する2つの流れ-供給境界の概略図。
【図26】オンチップのフローレジスターとして作用する、4本の流路を有するデバイスの概略図。
【図27】デバイス内を流れる2つの流体の相対的な幅にオンチップのレジスターが及ぼす作用の概略図。
【図28】デバイス内を流れる2つの流体の相対的な幅にオンチップのレジスターが及ぼす作用の概略図。
【図29】2つの外部領域用に共通の流入口を有する複式デバイスの概略図。
【図30】図30Aは、デバイス上のマルチアレイの概略図。図30Bは、デバイス上に共通の流入口および生成物流出口を備えたマルチアレイの概略図。
【図31】小さなフットプリントを備えたマルチステージ型デバイスの概略図。
【図32】デバイスを通過する血液の概略図。
【図33】血液細胞の流体力学的サイズの分布を示すグラフ。
【図34】単ステージ型デバイス(A)、3ステージ型デバイス(B)、複式デバイス(C)、または3ステージ型の複式(D)デバイス内における、試料から緩衝液中への粒子の移動を示す概略図。
【図35】図35Aは、粒子を血液から緩衝液中へ動かして、3つの生成物を得るために使用される2ステージ型デバイスの概略図。図35Bは、2つのステージの最大サイズおよびカットオフサイズを示す図式的グラフ。図35Cは、3つの生成物の組成の図式的グラフ。
【図36】各ステージがバイパス流路を有する、改変用の2ステージ型デバイスの概略図。
【図37】デバイス内の2つのステージを連結する流体流路の使用の概略図。
【図38】2つのステージが小さなフットプリントを備えたアレイとして設定された、デバイス内の2つのステージを連結する流体流路の使用の概略図。
【図39】図39Aは、両ステージから排出を受けるバイパス流路を有する2ステージ型デバイスの概略図。図39Bは、このデバイスで達成され得る、生成物のサイズの範囲の図式的グラフ。
【図40】各ステージに隣接し、および同じ流出口に流れ込むバイパス流路を有する、改変用の2ステージ型デバイスの概略図。
【図41】粒子の連続的な動きおよび改変用のデバイスの概略図。
【図42】図42Aは、本発明のデバイスの写真。図42B〜42Eは、本発明のデバイスの作製に使用されるマスクの図。図42Fは、血液および緩衝液を含むデバイスの一連の写真。
【図43】図43A〜43Fは、血液試料および廃液(緩衝液、血漿、赤血球、および血小板)、ならびに図42のデバイスで生成された生成物(緩衝液および有核細胞)のフラクションに由来する、ヘマトロジーアナライザーによって作成された典型的なヒストグラム。
【図44】図44A〜44Dは、本発明のデバイスの組み立てに使用されるマスクの描写。
【図45】図45A〜45Dは、本発明のデバイスの組み立てに使用されるマスクの描写。
【図46】図46Aは、胎児赤血球が濃縮された試料の顕微鏡写真。図46Bは、母体赤血球廃液の顕微鏡写真。
【図47】男児胎児細胞の正の同定を示す一連の顕微鏡写真(青=核、赤=X染色体、緑=Y染色体)。
【図48】性別およびトリソミー21の正の同定を示す一連の顕微鏡写真。
【図49】図49A〜49Dは、本発明のデバイスの組み立てに使用されるマスクの描写。
【図50】図50A〜50Gは、図49のデバイスの電子顕微鏡写真。
【図51】図51A〜51Dは、本発明のデバイスの組み立てに使用されるマスクの描写。
【図52】図52A〜52Fは、図51のデバイスの電子顕微鏡写真。
【図53】図53A〜53Fは、図45のデバイスの電子顕微鏡写真。
【図54】図54A〜54Dは、本発明のデバイスの組み立てに使用されるマスクの描写。
【図55】図55A〜55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真。
【図56】図56A〜56Cは、図44のデバイスの電子顕微鏡写真。
【図57】胎児赤血球の核の分離を示すフローチャート。
【図58】母体血液試料中における細胞の溶解の経過を示す図式的グラフ。
【図59】濃縮試料における、対象細胞を濃縮し、および対象細胞を優先的に溶解させるマイクロ流体法の概略図。試料は最初に、対象細胞のサイズベースの方向によって好ましい流路内に濃縮され、次に対象細胞が、溶解液中における滞留時間の制御によって選択的に溶解される。
【図60】非対象の非溶解の全ての細胞に由来する、溶解した対象細胞の核のサイズベースの分離のマイクロ流体法の概略図。非対象の細胞は廃液中に誘導される一方で、核は所望の生成物流中に保持される。
【図61】母体白血球から胎児核を分離する別の方法を示すフローチャート。
【図62】実質的に一定のギャップ幅、ならびに流れ-供給境界および流れ-抽出境界を利用する本発明のデバイスの概略図。
【図63】図63Aは、本発明のマニホールドの概略図。図63Bは、本発明のマニホールドの写真。
【図64】低張性溶解液に対する曝露の時間の関数としての、生きた細胞のパーセンテージを示すグラフ。
【図65】溶解緩衝液中における、時間の関数としての、全血の溶解のグラフ。
【図66】図66Aは、本明細書に記載された、カルノア固定液による全細胞溶解法を使用する、サイトスピン後の核の回収を示す表。図66Bは、カルノア固定液による全細胞溶解を使用した、核を対象としたFISHの結果の例を示す一連の蛍光顕微鏡写真。核を対象に、X(水色)、Y(緑色)、およびY(赤)に関してFISHを行い、DAPIによって対比染色した。
【図67】細胞および核の溶解のさまざまなオプションの詳細を示すフローチャート。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の外部領域が流路内において平行に配列され、セクションにおいて臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の方向に、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子を第2の方向に確定的に誘導する構造をそれぞれが含む、第1および第2の外部領域を含む第1のセクションを含む流路を含む複式デバイス。
【請求項2】
個々の構造が、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含み、該ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされず、第1の外部領域において該臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が第2の外部領域に向かうか、または該第2の外部領域から離れるように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第2の行が、第1の行内におけるギャップを通過する流体が第2の行内における2つのギャップに不均等に分けられるように、第1の行に対して側方に動かされる、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
第1のセクション内における第1の外部領域と第2の外部領域の間に配置されたバイパス流路をさらに含み、個々の外部領域が独立に、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を該バイパス流路の方へ、または該バイパス流路から離れるように誘導する、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
中央領域に隣接するように配置されたアレイの縁が流れ-抽出境界を含み、流体が、該中央領域における流体のフラックスが実質的に一定となるように中央領域から抽出される、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子がネットワーク内において側方に動かされ、および臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされないように、ギャップを通過する流体がメジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、それぞれが、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含み、第1の外部領域において該臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が、第2の外部領域か、または該第2の外部領域から離れるように誘導される、第1および第2の外部領域、ならびに
該臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が誘導される、第2のセクション内において第1の外部領域の側に配置された第1のバイパス流路を含む第3の領域
の3つの領域を含む第2のセクションをさらに含む、請求項2記載のデバイス。
【請求項7】
第1の外部領域が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第2の外部領域から離れるように誘導し、および第2の外部領域が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の外部領域から離れるように誘導する、該臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が誘導され、第2のセクション内において第2の外部領域の側に配置された第2のバイパス流路をさらに含む、請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
第1のバイパス流路が、第2のセクション内における第1の外部領域と第2の外部領域の間に配置され、ならびに第1の領域および第2の領域が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を該第1のバイパス流路の方向に誘導する、請求項6記載のデバイス。
【請求項9】
第1および第2の外部領域における粒子の方向が、第1のバイパス流路に向かう、請求項4記載のデバイス。
【請求項10】
構造が、有核血液細胞をバイパス流路内に偏向させ、および除核血液細胞を第1または第2の外部領域内に保持させることが可能である、請求項4記載のデバイス。
【請求項11】
(i)各セクションが、第1および第2の縁を有する構造を含み、該セクションにおいて、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の方向に、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子を第2の方向に該構造が確定的に誘導する、直列に配置された第1および第2のセクション;ならびに
(ii)流体排出が第2のセクションを通過しない、第1のセクションの第1または第2の縁から流体排出を受けるように配置された第1のバイパス流路
を含む、マルチステージ型デバイス。
【請求項12】
個々の構造が、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含み、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において第1の縁の方向へ側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が、該ネットワーク内において第1の縁の方向へ側方に動かされないように、アレイが第1および第2の縁を有し、ならびに該ギャップを通過する流体がメジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
各セクションにおける障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内におけるギャップを通過する流体が、第2の行内における2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
第1および第2のセクションが異なる臨界サイズを有する、請求項11記載のデバイス。
【請求項15】
第1のバイパス流路が、第1および第2のセクションの第1または第2の縁から流体排出を受けるように配置される、請求項11記載のデバイス。
【請求項16】
各セクションに隣接するバイパス流路の幅が、同セクション内におけるアレイと実質的に同じ流体抵抗を持たせるようなサイズで設けられる、請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
第1のバイパス流路が、第1のセクションの第1または第2の縁から流体排出を受けるように配置され、および第2のバイパス流路が、第2のセクションの第1または第2の縁から流体排出を受けるように配置される第2のバイパス流路をさらに含む、請求項11記載のデバイス。
【請求項18】
第3のセクションが、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含み、アレイが、流体の流れの方向に平行な第1および第2の縁を有し、ならびに該ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が、該ネットワーク内において第1の縁の方向へ側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が、該ネットワーク内において第1の縁の方向へ側方に動かされないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、第3のセクションをさらに含む、請求項12記載のデバイス。
【請求項19】
第1のセクションが第2のセクションより大きい臨界サイズを有し、および該第2のセクションが第3のセクションより大きい臨界サイズを有する、請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
第2のセクションおよび第1のバイパス流路が、第1および第2のセクションにおいて実質的に一定の流体フラックスを維持するようなサイズで設けられる、請求項11記載のデバイス。
【請求項21】
各流路が、流入口、流出口、および該流路内において、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の方向に、および該臨界サイズに満たないサイズを有する粒子を第2の方向に確定的に誘導する構造を含む複数の流路を含む、多重型デバイス。
【請求項22】
臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が、ネットワーク内において側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が、該ネットワーク内において側方に動かされないように、ギャップを通過する流体がメジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、構造がギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む、請求項21記載のデバイス。
【請求項23】
複数の流入口が流体連結された、請求項21記載のデバイス。
【請求項24】
複数の流出口が流体連結された、請求項21記載のデバイス。
【請求項25】
第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項22記載のデバイス。
【請求項26】
2つの構造の間に配置、かつ流体連結されたバイパス流路をさらに含む、請求項21記載のデバイス。
【請求項27】
個々の構造が、直列に配置された第1および第2のセクションを含むマルチステージ型構造であり、各セクションが、第1および第2の縁を有する構造を含み、該構造が該セクション内において、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の方向に、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子を第2の方向に確定的に誘導し、ならびに流体排出が該第2のセクションを通過しない該第1のセクションの第1または第2の縁から流体排出を受けるように配置された第1のバイパス流路を含む、請求項21記載のデバイス。
【請求項28】
ネットワーク内において、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する細胞が該ネットワーク内において側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する細胞が側方に動かされないように、ギャップを通過する血液中の流体がメジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、10〜30μmの実質的に一定の幅のギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含むデバイス。
【請求項29】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内におけるギャップを通過する流体が第2の行内における2つのギャップに、流体中の粒子が個々のサイズを基に差次的に誘導されるように不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項28記載のデバイス。
【請求項30】
ギャップの幅が18〜24μmである、請求項28記載のデバイス。
【請求項31】
流路が、1つの流れ-供給境界および1つの流れ-抽出境界を有し、ならびにギャップの幅が約18μmまたは20μmである、請求項28記載のデバイス。
【請求項32】
体液に由来する臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する細胞がネットワーク内において側方に動かされ、および体液に由来する該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する細胞が該ネットワークにおいて側方に動かされないように、ギャップを通過する流体がメジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、実質的に一定の幅のギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含むデバイス。
【請求項33】
体液が、汗、涙、耳液(ear flow)、痰、リンパ液、骨髄懸濁液、尿、唾液、精液、膣液(vaginal flow)、脳脊髄液、脳内液(brain flow)、腹水、乳汁、呼吸器、腸管、もしくは尿生殖路の分泌物、または羊水を含む、請求項32記載のデバイス。
【請求項34】
構造が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の縁の方向へ確定的に偏向させ、第1の縁または第2の縁が、流れ-抽出境界または流れ-供給境界を含む、第1およびセクションの縁を有する構造を含む流路を含むデバイス。
【請求項35】
構造が、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含み、同アレイが第1および第2の縁を有し、ならびに該ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、請求項34記載のデバイス。
【請求項36】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項35記載のデバイス。
【請求項37】
第1の血液成分を第1の方向に、および第2の血液成分を第2の方向に確定的に偏向させるように配置された分離領域を含む流路を含むデバイス。
【請求項38】
分離領域が、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含み、該ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられ、第1の血液成分が該臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有し、および第2の血液成分が該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する、請求項37記載のデバイス。
【請求項39】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項38記載のデバイス。
【請求項40】
第1の成分が胎児有核細胞を含み、および第2の成分が母体除核赤血球を含む、請求項37記載のデバイス。
【請求項41】
胎児有核細胞が、有核胎児赤血球を含む、請求項40記載のデバイス。
【請求項42】
第2の成分が、母体除核赤血球を含む、請求項41記載のデバイス。
【請求項43】
各セクションが、第1および第2の縁を有する構造を含む流路を含み、該構造が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の縁の方向へ確定的に偏向させ、第1のセクションと第2のセクションとの間の境界が、流体の流れの方向に対して垂直ではない、直列に配置された第1および第2のセクションを含む流路を含むデバイス。
【請求項44】
構造が、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含み、同アレイが第1および第2の縁を有し、ならびに該ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において該第1の縁の方向へ側方に動かされるように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、請求項43記載のデバイス。
【請求項45】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項44記載のデバイス。
【請求項46】
第1の行内においてギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子がネットワーク内において側方に動かされ、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされ、分岐比が最大で1/2である、第1および第2の行を含む障害物のアレイを含む流路を含むデバイス。
【請求項47】
比が最大で1/60である、請求項46記載のデバイス。
【請求項48】
流れの平均的な方向に対して垂直な障害物の横断面積が、流れの平均的な方向に平行な該障害物の横断面積より大きい、請求項46記載のデバイス。
【請求項49】
赤血球が、臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有し、白血球が、該臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有し、および該白血球がアレイをブロックしない、請求項46記載のデバイス。
【請求項50】
臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子がネットワーク内において側方に動かされ、ならびに該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において側方に動かされないように、ギャップを通過する流体がメジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられ、第1および第2の流入口がアレイより大きい流体抵抗を有する、第1および第2の流入口、ならびにギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含むデバイス。
【請求項51】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項50記載のデバイス。
【請求項52】
ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子がネットワーク内において側方に動かされ、ならびに該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が、該ネットワーク内において側方に動かされないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられ、第1および第2の流出口がアレイより大きな流体抵抗を有する、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイの下流に、第1および第2の流出口を含む流路を含むデバイス。
【請求項53】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項52記載のデバイス。
【請求項54】
デバイスが、該デバイスからの排出を画像化するための機器に接続されている、請求項1、11、21、28、34、37、46、50、および52のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項55】
構造が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の縁の方向へ確定的に偏向させ、第1の縁または第2の縁が、第1または第2の流路の壁から少なくとも臨界サイズを隔てて配置される、第1の流路壁に隣接する第1の縁、および第2の流路壁に隣接するセクションの縁を有する構造を含む流路を含むデバイス。
【請求項56】
構造が、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含み、同アレイが第1および第2の縁を有し、ならびに該ギャップを通過する流体が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において該第1の縁の方向へ側方に動かされ、ならびに該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子が該ネットワーク内において該第1の縁の方へ側方に動かされないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、請求項55記載のデバイス。
【請求項57】
障害物のアレイが第1および第2の行を含み、第1の行内においてギャップを通過する流体が、第2の行内において2つのギャップに不均等に分けられるように、第2の行が第1の行に対して側方に動かされる、請求項56記載のデバイス。
【請求項58】
以下の段階を含む、第1の生物学的粒子が濃縮された試料を生成する方法:
(a)生物学的試料を、請求項1記載のデバイスの第1または第2の外部領域に導入する段階;および
(b)該生物学的試料中に存在する任意の該第1の生物学的粒子が第1または第2の方向に誘導されることで、該第1の生物学的粒子が濃縮された該試料が生成される、該生物学的試料を該デバイスに流すことを可能とする段階。
【請求項59】
デバイスが請求項4記載のデバイスであり、ならびに第1および第2の外部領域が、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子をバイパス流路の方向に誘導し、ならびに希釈液を、該第1の生物学的粒子が該バイパス流路内に誘導される該バイパス流路内に流す段階をさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
以下の段階を含む、第1の生物学的粒子が濃縮された試料を生成する方法:
(a)生物学的試料を、請求項11記載のデバイスの第1のセクション内に導入する段階;および
(b)該生物学的試料中に存在する任意の該第1の生物学的粒子が、該第1のセクションの第1または第2の方向に誘導されることで、該第1の生物学的粒子が濃縮された該試料が生成される、該生物学的試料を該デバイスに流すことを可能とする段階。
【請求項61】
第1の生物学的粒子が、第1のセクションの第1の方向に、および第1のバイパス流路内に誘導される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
第1のセクションの第1の方向に誘導されない流体が、第2のセクション内に流れることを可能とし、ここで第2の生物学的粒子が該第2のセクションの第1の方向に誘導される段階をさらに含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
デバイスが請求項17記載のデバイスであり、第2の生物学的粒子が第2のバイパス流路内に誘導される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
第3の生物学的粒子が、第2のセクションの第2の方向に誘導される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
第1の生物学的粒子が白血球を含み、第2の生物学的粒子が赤血球を含み、および第3の生物学的粒子が血小板を含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
以下の段階を含む、第1の生物学的粒子が濃縮された試料を生成する方法:
(a)生物学的試料を、請求項21記載のデバイスの各流路の流入口内に導入する段階;および
(b)該生物学的試料中に存在する任意の該第1の生物学的粒子が、第1または第2の方向に誘導されることで、該生物学的粒子が濃縮された該試料が生成する、該生物学的試料が該デバイスに流れることを可能とする段階。
【請求項67】
第1の生物学的粒子が濃縮された試料を回収する段階をさらに含む、請求項58、60、および66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
第1の生物学的粒子の濃度が、生物学的試料に対して濃縮試料中で高くなる、請求項58、60、および66のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
生物学的試料が細胞試料を含む、請求項58、60、および66のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
細胞試料が血液を含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
生物学的試料が母体血液を含み、および第1の粒子が胎児細胞である、請求項58、60、および66のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
胎児細胞が有核赤血球である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
胎児細胞を、性別、異数性、タンパク質発現、コード核酸もしくは非コード核酸、または代謝状態に関して解析する段階をさらに含む、請求項71記載の方法。
【請求項74】
以下の段階を含む、第1の生物学的粒子が濃縮された試料を生成する方法:
(a)生物学的試料を、請求項28記載のデバイス内に導入する段階;および
(b)該生物学的試料中に存在する任意の該第1の生物学的粒子が第1または第2の方向に誘導されることで、該第1の生物学的粒子が濃縮された該試料が生成される、該生物学的試料が、ギャップのネットワークを流れることを可能とする段階。
【請求項75】
第1の生物学的粒子が、癌細胞、病原体、寄生虫、細菌、ウイルス、真菌細胞、宿主免疫細胞、幹細胞、移植免疫細胞、樹状細胞、結合組織細胞、または真核細胞成分である、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
生物学的試料が第1の生物体から得られ、および第1の生物学的粒子が第2の生物体から得られる、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
第1および第2の生物体が異なるヒトである、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
第1の生物学的粒子の流体力学的半径を増加させるために、該第1の生物学的粒子に膨張試薬を、段階(b)前または段階(b)の間のいずれかにおいて接触させる段階をさらに含む、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
第1の生物学的粒子の流体力学的半径を減少させるために、該第1の生物学的粒子に収縮試薬を、段階(b)前または段階(b)の間のいずれかにおいて接触させる段階を含む、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
生物学的試料が最大90%の液体を含む、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
濃縮試料が、生物学的試料中に存在する第1の生物学的粒子の少なくとも75%を含む、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
第1の生物学的粒子が、生物学的試料に対して少なくとも2倍濃縮される、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
第1の生物学的粒子が、10倍を超えて希釈されない、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
第1の生物学的粒子中に濃縮された試料を、該第1の生物学的粒子に選択的に結合するか、または第2の生物学的粒子に選択的に結合する結合成分に接触させる段階をさらに含む、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
第1の生物学的試料中に濃縮された試料を、胎児核を検出するためにRNA FISHで解析する段階をさらに含む、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
第1の生物学的粒子が胎児有核細胞である、請求項58、60、66、および74のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
胎児有核細胞が、赤血球、トロホブラスト、内皮細胞、または幹細胞である、請求項86記載の方法。
【請求項88】
以下の段階を含む、第1の生物学的粒子を改変する方法:
(a)アレイが、流体の流れの方向に平行な第1および第2の縁を有し、ならびにギャップを通過する流体が、メジャーフラックスの平均的な方向が第1の縁の方向へ向かい、およびマイナーフラックスの平均的な方向が第1の縁の方向へ向かわないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、第1の流入口、第2の流入口、第1の流出口、第2の流出口、およびギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含むデバイスを提供する段階;
(b)生物学的試料を該第1の流入口に導入し、および改変途上の液体を該第2の流入口に導入する段階;ならびに
(c)細胞試料中に存在する任意の該第1の生物学的粒子が、該メジャーフラックス中に、および該改変途上の液体中に誘導されることで、該第1の生物学的粒子が改変される、該生物学的試料を該ギャップのネットワークに流すことを可能とする段階。
【請求項89】
改変途上の液体が、希釈用試薬または標識試薬を含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
標識試薬が、巨核球、放射性同位体、フルオロフォア、ビーズ、または抗体を含む、請求項88記載の方法。
【請求項91】
改変途上の液体が安定化試薬を含む、請求項88記載の方法。
【請求項92】
安定化用試薬が、アポトーシス阻害剤、固定剤、抗酸化剤、または糖を含む、請求項91記載の方法。
【請求項93】
糖が、ショ糖またはトレハロースである、請求項92記載の方法。
【請求項94】
固定剤がアルデヒドである、請求項92記載の方法。
【請求項95】
デバイスが、請求項1、11、21、28、34、37、46、50、および52のいずれか一項記載のデバイスである、請求項88記載の方法。
【請求項96】
以下の段階を含む、第1の細胞またはこの成分の、濃縮された活性化されていない試料を生成する方法:
(a)アレイが、流体の流れの方向に平行な第1および第2の縁を有し、ならびにギャップを通過する流体が、メジャーフラックスの平均的な方向が第1の縁の方向に向かい、およびマイナーフラックスの平均的な方向が第1の縁の方向に向かわないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含むデバイスを提供する段階;
(b)細胞試料を該アレイ内に導入する段階;ならびに
(c)該細胞試料中に存在する任意の該第1の細胞またはこの成分が該メジャーフラックス中に誘導され、ならびに該第1の細胞またはこの成分の10%未満が、該第1の細胞またはこの成分と該障害物の1つとの衝突の結果として細胞内活性化を受けることで、該第1の細胞またはこの成分の、該濃縮された活性化されていない試料が生成される、該細胞試料を該ギャップのネットワークに流すことを可能とする段階。
【請求項97】
第1の細胞が、血小板、幹細胞、顆粒球、単球、または内皮細胞である、請求項96記載の方法。
【請求項98】
デバイスが、請求項1、11、21、28、34、37、46、50、および52のいずれか一項記載のデバイスである、請求項96記載の方法。
【請求項99】
以下の段階を含む、第1の粒子が濃縮された試料を生成する方法:
(a)アレイが、流体の流れの方向に平行な第1および第2の縁を有し、およびギャップを通過する流体が、メジャーフラックスの平均的な方向が第1の縁の方向へ向かい、およびマイナーフラックスの平均的な方向が第1の縁の方向へ向かわないように、メジャーフラックスとマイナーフラックスに不均等に分けられる、ギャップのネットワークを形成する障害物のアレイを含む流路を含むデバイスを提供する段階;
(b)容積比で少なくとも0.1%の粒子を含む試料を該アレイ内に導入する段階;ならびに
(c)該試料中に存在する任意の該第1の粒子が、該メジャーフラックス中に誘導されることで、該第1の粒子が濃縮された該試料が生成される、該試料を該ギャップのネットワークに流すことを可能とする段階。
【請求項100】
試料が血液を含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
デバイスが、請求項1、11、21、28、34、37、46、50、および52のいずれか一項記載のデバイスである、請求項99記載の方法。
【請求項102】
以下の段階を含む、第1の血液成分が濃縮された試料を生成する方法:
(a)請求項37記載のデバイスを提供する段階;
(b)血液を含む試料をアレイ内に導入する段階;および
(c)該第1の血液成分が第2の血液成分から確定的に分離されることで、該第1の血液成分が濃縮された該試料が生成されるように、該試料を該デバイスに流すことを可能とする段階。
【請求項103】
デバイスが請求項38記載のデバイスである、請求項102記載の方法。
【請求項104】
以下の段階を含む、対象細胞から細胞成分を回収する方法:
(a)対象細胞を含む試料を処理して、対象細胞が濃縮された試料を生成する段階;
(b)細胞成分またはこの対応物を含む他の細胞より、濃縮試料中の対象細胞を優先的に溶解させる段階;および
(c)溶解した対象細胞から細胞成分を回収する段階。
【請求項105】
回収された細胞成分を、同定、列挙、または疾患の診断の目的で解析する段階をさらに含む、請求項103記載の方法。
【請求項106】
対象細胞が胎児赤血球である、請求項103記載の方法。
【請求項107】
細胞成分が胎児赤血球の核である、請求項106記載の方法。
【請求項108】
試料が血液試料である、請求項103記載の方法。
【請求項109】
試料が母体血液試料である、請求項108記載の方法。
【請求項110】
対象細胞が、癌細胞、病原体、寄生虫、細菌、ウイルス、真菌細胞、宿主免疫細胞、幹細胞、移植免疫細胞、樹状細胞、または結合組織細胞である、請求項103記載の方法。
【請求項111】
細胞成分が、細胞小器官、ポリマーもしくは分子の複合体、または細胞内化学種である、請求項103記載の方法。
【請求項112】
細胞小器官が、核、核周囲区画、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、または細胞内寄生虫である、請求項111記載の方法。
【請求項113】
ポリマーもしくは分子の複合体が、脂質、多糖、タンパク質、核酸、ウイルス粒子、またはリボソームである、請求項111記載の方法。
【請求項114】
細胞内化学種が、ホルモン、イオン、補因子、または薬剤である、請求項111記載の方法。
【請求項115】
段階(a)で、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を、セクション内における流れの平均的な方向に平行でない方向に確定的に偏向させる構造を含む流路を含むデバイスを使用する、請求項103記載の方法。
【請求項116】
段階(a)および段階(b)が同時に行われる、請求項115記載の方法。
【請求項117】
以下の段階を含む、血液試料中の循環性細胞から遺伝情報を得る方法:
(a)該血液試料を処理して除核赤血球および血小板を実質的に除去して、濃縮された有核細胞試料を生成する段階;
(b)他の有核細胞より、対象有核細胞を優先的に溶解させる段階;
(c)溶解した対象細胞の細胞成分を含む核酸を回収する段階;ならびに
(d)回収された細胞成分中の核酸を解析することで、対象細胞から遺伝情報を得る段階。
【請求項118】
対象細胞が胎児赤血球である、請求項117記載の方法。
【請求項119】
対象細胞が、癌細胞、病原体、寄生虫、細菌、ウイルス、真菌細胞、宿主免疫細胞、幹細胞、移植免疫細胞、樹状細胞、または結合組織細胞である、請求項117記載の方法。
【請求項120】
細胞成分が、細胞小器官、ポリマーもしくは分子の複合体、または細胞内化学種である、請求項117記載の方法。
【請求項121】
細胞小器官が、核、核周囲区画、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、または細胞内寄生虫である、請求項120記載の方法。
【請求項122】
ポリマーもしくは分子の複合体が、脂質、多糖、タンパク質、核酸、ウイルス粒子、またはリボソームである、請求項120記載の方法。
【請求項123】
細胞内化学種が、ホルモン、イオン、補因子、または薬剤である、請求項120記載の方法。
【請求項124】
遺伝情報が、疾患状態、性別、父性、異数性、または変異の有無を含む、請求項117記載の方法。
【請求項125】
段階(a)で、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を、セクション内における流れの平均的方向に平行でない方向に確定的に偏向させる構造を含む流路を含むデバイスを使用する、請求項117記載の方法。
【請求項126】
段階(a)および段階(b)が同時に行われる、請求項125記載の方法。
【請求項127】
(a)第1のリザーバー、該第1のリザーバーと流体連絡する第1の流入口、および該第1のリザーバーと流体連絡する第1の疎水性ベント;ならびに
(b)該第1のリザーバーおよび流出口が、マイクロ流体デバイスが係合されている時には流体連絡状態であり、および該マイクロ流体デバイスが係合されていない時には流体連絡状態ではなく、マニホールドが、試料の第2の成分に対して、試料中の第1の粒子の濃縮を可能とするマイクロ流体デバイスと係合するように、サイズ、形状、変形性、または親和性を基に形成され、およびサイズが決定される流出口
を含むマニホールド。
【請求項128】
第1のリザーバー、第2のリザーバー、および流出口が、マイクロ流体デバイスが係合されている時には流体連絡された状態にあり、および該マイクロ流体デバイスが係合されていない時には流体連絡された状態にない、第2のリザーバー、該第2のリザーバーと流体連絡された第2の流入口、および任意で該第2のリザーバーと流体連絡された第2の疎水性ベントをさらに含む、請求項127記載のマニホールド。
【請求項129】
第1または第2の疎水性ベントが1μm未満の孔を含む、請求項128記載のマニホールド。
【請求項130】
マニホールドが、2つの片割れ(half)を含み、マイクロ流体デバイスが、該片割れと片割れとの間に配置されることによって係合可能である、請求項127記載のマニホールド。
【請求項131】
第1のリザーバーがマイクロ流体デバイス内の流路と、該デバイス内の孔を介して流体連絡する、請求項127記載のマニホールド。
【請求項132】
第1および第2のリザーバーがマイクロ流体デバイス内の流路と、該デバイス内の孔を介して流体連絡する、請求項128記載のマニホールド。
【請求項133】
複数のマイクロ流体デバイスと係合するように形成されてサイズが決定される、請求項127または128記載のマニホールド。
【請求項134】
マイクロ流体デバイスが、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の方向に、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子を第2の方向に、確定的に偏向させる構造を有する流路を含む、請求項128記載のマニホールド。
【請求項135】
マイクロ流体デバイスが、請求項1〜57のいずれか一項記載のデバイスである、請求項134記載のマニホールド。
【請求項136】
係合されるマイクロ流体デバイスをさらに含む、請求項127または128記載のマニホールド。
【請求項137】
マイクロ流体デバイスが、それぞれが試料中の第1の粒子を該試料の第2の成分に対して、サイズ、形状、変形性、または親和性を基に独立に濃縮可能な複数の流路を含む、請求項127または128記載のマニホールド。
【請求項138】
複数の流路が、少なくとも5、10、15、20、25、または30である、請求項137記載のマニホールド。
【請求項139】
各流路が独立に、第1および/または第2のリザーバーに、デバイス内の孔を介して連結される、請求項137記載のマニホールド。
【請求項140】
第1の粒子が、癌細胞、病原体、寄生虫、細菌、ウイルス、真菌細胞、宿主免疫細胞、幹細胞、移植免疫細胞、樹状細胞、結合組織細胞、または真核細胞の成分を含む、請求項127〜139のいずれか一項記載のマニホールド。
【請求項141】
第1の粒子が有核赤血球を含む、請求項127〜139のいずれか一項記載のマニホールド。
【請求項142】
第1の粒子が胎児有核赤血球を含む、請求項141記載のマニホールド。
【請求項143】
以下の段階を含む、試料中において第2の成分に対して第1の粒子を濃縮する方法:
(a)該試料を、第1の流入口を介して、請求項136記載のマイクロ流体デバイスと係合されたマニホールド中に導入する段階であって、ここで該試料が第1のリザーバーを少なくとも部分的に満たす段階;および
(b)該試料を、該マイクロ流体デバイスを通過させて、該第1の粒子を該第2の成分に対して、サイズ、形状、変形性、または親和性を基に濃縮することを可能とする段階。
【請求項144】
マニホールドが請求項128記載のマニホールドであり、および段階(b)に先立って、第2の液体を第2の流入口を介してマニホールド中に導入する段階であって、該第2の液体が第2のリザーバーを少なくとも部分的に満たし、段階(b)の間に該第2の液体が該試料と相互作用する段階をさらに含む、請求項143記載の方法。
【請求項145】
マイクロ流体デバイスが、臨界サイズを上回る流体力学的サイズを有する粒子を第1の方向に、および該臨界サイズに満たない流体力学的サイズを有する粒子を第2の方向に確定的に誘導する構造を有する流路を含む、請求項144記載の方法。
【請求項146】
マイクロ流体デバイスが、請求項1〜57のいずれか一項記載のデバイスである、請求項145記載の方法。
【請求項147】
マニホールドが、請求項129〜142のいずれか一項記載のマニホールドである、請求項143記載の方法。
【請求項148】
以下の段階を含む、液体をマニホールド中に導入する方法:
(a)マイクロ流体デバイスをさらに含む、請求項127記載のマニホールドを提供する段階であって、該マニホールドおよびデバイスが液体で満たされていない段階;
(b)液体を第1の流入口を介してマニホールド中に導入する段階であって、該液体が第1のリザーバーを少なくとも部分的に満たし、および第1のリザーバー内に存在する気体を、第1の疎水性ベントを介して置き換え、該導入段階が、液体を該第1のベントを介して強制的に動かすのに不十分な圧力下で行われる段階;ならびに
(c)液体をマイクロ流体デバイス内に進め、流出口を通過させることを可能とする段階。
【請求項149】
マニホールドが請求項128記載のマニホールドであり、段階(c)前、段階(c)の間、または段階(c)後に、液体が第1のリザーバーからマイクロ流体デバイスを通して第2のリザーバー内に流れ、該液体が第2の疎水性ベントを通して気体と置き換わる、請求項148記載の方法。
【請求項150】
マニホールドが、請求項129〜142のいずれか一項記載のマニホールドである、請求項148記載の方法。
【請求項151】
以下の段階を含む、母体細胞に対して胎児細胞について試料を濃縮する方法:
(a)母体血液試料を、胎児有核細胞を母体細胞に対して、サイズ、形状、変形性、または親和性を基に濃縮可能なマイクロ流体デバイス内に導入することで、濃縮された試料を生成する段階;
(b)該濃縮試料中の該胎児有核細胞を溶解させることで、胎児核を放出させる段階;および
(c)該胎児核を検出する段階。
【請求項152】
段階(b)が、濃縮試料中の全ての細胞を溶解させる段階、および胎児核を回収する段階を含む、請求項151記載の方法。
【請求項153】
段階(b)が、胎児有核細胞を母体細胞に対して選択的に溶解させる段階を含む、請求項151記載の方法。
【請求項154】
マイクロ流体デバイスが、胎児有核細胞を第1の方向に、および少なくとも一部の母体細胞を第2の方向に、決定論的な側方変位を基に確定的に誘導する構造を有する流路を含む、請求項151記載の方法。
【請求項155】
マイクロ流体デバイスが、請求項1〜57のいずれか一項記載のデバイスである、請求項154記載の方法。
【請求項156】
段階(c)が、胎児核の正または負の選択にRNA FISHを使用する段階を含む、請求項151記載の方法。
【請求項157】
以下の段階を含む、胎児細胞中の母体血液試料を濃縮する方法:
(a)該母体血液試料を提供する段階;
(b)該試料に、アンモニウムイオンおよび重炭酸イオンを含む緩衝液、ならびに炭酸脱水酵素阻害剤を接触させ、胎児赤血球に対して母体赤血球の選択的な溶解を誘導する段階;ならびに
(c)band 3アニオン輸送体の阻害剤を導入して溶解を停止させる段階。
【請求項158】
段階(a)における試料が、胎児細胞について、該胎児細胞を母体細胞に対して、サイズ、形状、変形性、または親和性を基に濃縮可能なマイクロ流体デバイスを介して濃縮される、請求項157記載の方法。
【請求項159】
マイクロ流体デバイスが、胎児有核細胞を第1の方向に、および少なくとも一部の母体細胞を第2の方向に、決定論的な側方変位を基に確定的に誘導する構造を有する流路を含む、請求項158記載の方法。
【請求項160】
マイクロ流体デバイスが、請求項1〜57のいずれか一項記載のデバイスである、請求項159記載の方法。
【請求項161】
炭酸脱水酵素阻害剤がアセタゾラミドを含む、請求項157記載の方法。
【請求項162】
band 3アニオン輸送体の阻害剤がDIDSを含む、請求項157記載の方法。
【請求項163】
以下の段階を含む、胎児細胞中の母体血液試料を濃縮する方法:
(a)該母体血液試料を提供する段階;ならびに
(b)該試料に、胎児赤血球に対して母体の赤血球および白血球の選択的な溶解を誘導可能な1種類または複数の緩衝液を接触させる段階。
【請求項164】
以下の段階を含む、試料中の胎児細胞を解析する方法:
(a)母体血液試料を提供する段階;
(b)該試料に、以下の溶解手順の1つを実施する段階:
(i)胎児核を完全な状態に維持しながら、母体細胞に対して胎児細胞を選択的に溶解させる段階;
(ii)母体核を完全な状態に維持しながら、胎児細胞に対して母体細胞を選択的に溶解させる段階;
(iii)核を完全な状態に維持しながら、全ての細胞を溶解させる段階;
(iv)胎児核を完全な状態に維持しながら、全ての細胞および母体核を溶解させる段階;
(v)胎児細胞に対して母体細胞およびその核を選択的に溶解させる段階;
(vi)全ての細胞およびその核を溶解させる段階;ならびに
(vii)母体細胞に対して胎児細胞およびその核を選択的に溶解させる段階;ならびに
(c)段階(b)で放出された、胎児核、胎児核酸、胎児タンパク質、または胎児代謝物を解析する段階。
【請求項165】
段階(a)における試料が、胎児細胞について、該胎児細胞を母体細胞に対して、サイズ、形状、変形性、または親和性を基に濃縮可能なマイクロ流体デバイスを介して濃縮される、請求項164記載の方法。
【請求項166】
マイクロ流体デバイスが、胎児有核細胞を第1の方向に、および少なくとも一部の母体細胞を第2の方向に、決定論的な側方変位を基に確定的に誘導する構造を有する流路を含む、請求項165記載の方法。
【請求項167】
マイクロ流体デバイスが、請求項1〜57のいずれか一項記載のデバイスである、請求項165記載の方法。
【請求項168】
段階(c)が、該胎児核、胎児核酸、胎児タンパク質、または胎児代謝物を、RNAもしくはDNAのFISH、PCR、テロメア長解析、親和性に基づくアッセイ法、またはDNAもしくはRNAのハイブリダイゼーションによって解析する段階を含む、請求項164記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34C】
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【図34D】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39A】
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【図39B】
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【図40】
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【図41】
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【図42−1】
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【図42−2】
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【図42−3】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50−1】
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【図50−2】
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【図50−3】
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【図50−4】
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【図51】
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【図52−1】
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【図52−2】
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【図52−3】
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【図53−1】
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【図53−2】
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【図53−3】
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【図53−4】
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【図54】
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【図55−1】
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【図55−2】
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【図55−3】
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【図55−4】
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【図55−5】
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【図55−6】
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【図55−7】
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【図55−8】
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【図55−9】
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【図55−10】
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【図55−11】
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【図56−1】
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【図56−2】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63A】
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【図63B】
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【図64】
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【図65】
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【図66A】
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【図66B】
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【図67】
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【公表番号】特表2008−538283(P2008−538283A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505514(P2008−505514)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/012820
【国際公開番号】WO2006/108101
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506299869)リビング マイクロシステムズ (2)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】