説明

細胞および組織の自動分析のためのシステムおよび方法

【課題】組織を迅速に分析する自動化システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】細胞内でバイオマーカーを局在化する、コンピューターにより実行される方法であって、以下:
第1の規定された領域に対応する該細胞の第1の画像の部分を同定する工程;
少なくとも1つのバイオマーカーに対応する該細胞の第2の画像の部分を同定する工程;
該第1の画像の該部分内に位置する該第2の画像の部分を決定し、該バイオマーカーが該規定された領域内に局在化するか否かを同定する工程
を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(I.発明の背景)
組織マイクロアレイ技術は、組織サンプルの高スループットの分析の機会を提供する(Konen,Jら,Nat.Med.4:844−7(1988);Kallioniemi,O.P.ら,Hum.Mol.Genet.10:657−62(2001);Rimm,D.L.ら,Cancer J.7:24−31(2001))。例えば、組織マイクロアレイを使用してラージスケールの研究を迅速に実施する能力は、薬物標的/予後マーカー(例えば、エストロゲンレセプター(ER)およびHER2/neu)および候補治療薬を同定し、そして確認するための重要な情報を提供し得る。
【0002】
しかし、マイクロアレイにおける組織サンプルの自動定量分析は、組織切片の不均一性、染色の細胞下局在化およびバックグラウンドシグナルの存在を含む、様々な困難を提示する。例えば、分析される腫瘍または組織切片の型に依存して、目的の領域は、サンプルのほぼ全体か、または小さい割合だけを表示し得る。例えば、膵臓癌、または実質的な癒着応答を有する胸部の小葉癌は、全領域の高い割合を表す間質組織を示し得る。このアッセイの目標が、所定のマーカーの上皮細胞発現を決定することである場合、その領域のみを評価するプロトコルを使用しなければならない。このプロトコルは、目的の領域を選択し得るだけでなく、この領域を正規化し得るので、任意の所定の領域から読み取られた発現レベルは、他の領域の発現レベルと比較され得る。細胞下局在化は、より同様の困難を提示する。核染色または膜染色の比較は、例えば、全細胞質染色における比較とはかなり異なる。
【0003】
特定の方法(共焦点顕微鏡および重畳/逆重畳顕微鏡を含む)は、単一の強力な領域内における細胞(または細胞下)レベルでのタンパク質の発現を定量するために使用されている(Robinson,J.P.Methods Cell.Biol.63:89−106(2001);Shaw,P.Histochem.J.26:687−94(1994))。しかし、これらは、計算上、集約的かつ困難な技術であり、これは、複数の連続画像上で操作する。結果として、組織切片のような組織マイクロアレイの分析のための現在の標準は、従来の病理学者に基づく分析およびスケールに従う類別である。
【0004】
大半のバイオマーカーは、パラメトリック(通常「ベル型」)の分布を示し、結果的に、連続スケール(例えば、0〜1000)で最良に分析される。不幸にも、手動での観察が、名目的(例えば、1+、2+、3+)でありがちである。なぜならば、第1に、ヒトの目は、染色強度の僅かな差を容易に区別し得ないからである。様々な方法が、名目上の手動での観察を連続スケールに変換するために開発されている。これらの中で最も先に挙げられるのが、Hスコアであり、ここで、陽性染色細胞のパーセント(0〜100)が、染色強度(0〜3)によって乗算され、理論上の連続スケール(0〜300)を作製する。しかし、染色強度の僅かな差異を検出できないこと(特に、スケールの下限および上限にて)、ならびに、スコアを四捨五入する傾向(例えば、150のスコアについて、3+で50%、対 141のスコアについて3+で47%)は、Hスコアの有効性を制限する。
【0005】
組織(組織マイクロアレイを含む)を迅速に分析する自動化システムおよび方法(これは、組織および他の細胞含有サンプル内でのバイオマーカーの同定および同定されたバイオマーカーの局在化を可能にする)が、必要とされる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
細胞内でバイオマーカーを局在化する、コンピュータにより実行される方法であって、以下:
第1の規定された領域に対応する該細胞の第1の画像の部分を同定する工程;
少なくとも1つのバイオマーカーに対応する該細胞の第2の画像の部分を同定する工程;
該第1の画像の該部分内に位置する該第2の画像の部分を決定し、該バイオマーカーが該規定された領域内に局在化するか否かを同定する工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記第1の画像の前記部分および前記第2の画像の前記部分が、ピクセルを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の画像の前記部分が、前記細胞の該第1の規定された領域に関連する強度を有する、ピクセルを含む項目1に記載の方法。
(項目4)
前記細胞の前記第1の規定された領域に関連する前記強度を決定する工程をさらに包含する、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記第2の画像の前記部分が、前記少なくとも1つのバイオマーカーに対応する強度を有するピクセルを含む、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも1つのバイオマーカーに関連する前記強度を決定する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記第1の画像中の焦点外エレメントの表示を削減する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
表示を削減する工程が、異なる焦点の深さを特徴とする第3の画像の画像ピクセル強度に基づいて、前記第1の画像の画像ピクセル強度を操作する工程を包含する、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記規定された領域が、細胞核、細胞質、核膜、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキソームおよびリソソームからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記細胞成分が、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質または炭水化物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目11)
細胞含有サンプルを分析する方法であって、以下:
該細胞内の第1の規定された領域に選択的な第1の染色および、少なくとも1つのバイオマーカーに選択的な第2の染色を有する該細胞の第1の画像、を得る工程;
該第1の画像中の複数のピクセル位置で、該第1の染色についての強度値を決定する工程;
該強度値に基づいて、該細胞内の該第1の規定された領域に対応する該第1の画像中のピクセル位置を決定し、そして、これらのピクセル位置を該第1の規定された領域に割り当てる工程;
第2の画像を得て、該第2の画像中の複数のピクセル位置で、該第2の染色についての強度値を決定する工程;ならびに、
該第1の画像および該第2の画像を比較して、該第1の細胞区画内にある該第2の画像中のピクセル位置を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目12)
前記規定された領域が、細胞核、細胞質、核膜、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキソームおよびリソソームからなる群から選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記細胞成分が、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質または炭水化物からなる群から選択される、項目11に記載の方法。
(項目14)
項目11に記載の方法であって、前記細胞が、該細胞内の第2の規定された領域に選択的な第3の染色に接触され、該方法はさらに、以下:
該細胞中の該第3の染色の分布についての第3の画像において、該第3の画像中の複数のピクセル位置の各ピクセル位置について強度値を決定する工程;
該強度値に基づいて、該第3の画像中のピクセル位置が、該細胞の該第2の規定された領域に対応することを決定し、そして、これらのピクセル位置を、該第2の規定された領域に割り当てる工程;ならびに、
該第2の画像中の該ピクセル位置のいずれが、該第2の規定された領域内にあるかを決定する工程、
を包含する、方法。
(項目15)
前記第1の規定された領域または前記第2の規定された領域に割り当てられないピクセル位置を、第3の規定された領域に割り当て、そして、該第2の画像中の該ピクセル位置のいずれが該第3の規定された領域内にあるかを同定する工程、をさらに包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記第1の規定された領域、前記第2の規定された領域および前記第3の規定された領域が、以下:
核、細胞質、核膜、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキソームおよびリソソーム、
からなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
項目14に記載の方法であって、前記細胞が、該細胞中の規定された領域に選択的な第4の染色と接触され、そして、該第4の染色の分布の少なくとも1つのピクセル化された画像が取得され、該方法はさらに、以下:
該第4の染色分布の画像中の複数のピクセルの各々について、第3の強度値を読み取る工程;
該第3の強度値からの閾値強度値を決定する工程;
該閾値強度と、該複数のピクセルの各々についての該第3の強度とを比較する工程;ならびに
ピクセル位置を、該閾値強度値に基づくマスクに割り当てる工程、
を包含する、方法。
(項目18)
前記第1の染色分布の画像中の前記複数のピクセルにおける前記ピクセル位置が、前記マスクセット中の該ピクセル位置である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記マスクに割り当てられた前記ピクセル位置が、前記閾値強度値と等しいか、またはそれより大きい第3の強度値を有するピクセルの位置を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記第4の染色分布の前記画像中の前記複数のピクセルの各々について、前記第3の強度値を保存する工程をさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記閾値強度値が、最大ビンの強度値から決定される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記閾値強度値が、第2の最大ビンの強度値から選択される、項目20に記載の方法。
(項目23)
各ピクセル位置について、前記第1の強度値と前記第2の強度値を比較し、そして、該第2の強度値が、該第1の強度値より大きい場合、該ピクセル位置に前記第2の規定された領域を割り当てる工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目24)
前記第2の染色分布の前記画像中のピクセルのアレイにおける各ピクセル位置について、シグナル強度値を読み取り、全シグナル強度を決定するために該シグナル強度を合計する工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目25)
前記第2の染色分布の前記画像中の前記ピクセルのアレイが、前記細胞中の前記第1の規定された領域中である、項目17に記載の方法。
(項目26)
前記第2の染色分布の前記画像中の前記ピクセルのアレイにおける各ピクセル位置についてシグナル強度値を読み取り、該シグナル値を合計する工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目27)
前記第2の染色分布の前記画像中の前記ピクセルのアレイが、前記第2の規定された領域である、項目17に記載の方法。
(項目28)
前記第2の染色分布の前記画像中の前記ピクセルのアレイにおける各ピクセル位置についてシグナル強度値を読み取り、全強度を決定するために該シグナル強度値を合計する工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目29)
前記第2の染色分布の前記画像中の前記アレイのピクセルが、前記第3の規定された領域である、項目17に記載の方法。
(項目30)
細胞含有サンプルを分析する方法であって、以下:
細胞の第1の画像中の複数のピクセル位置の各々についての値を入手する工程;
細胞の第2の画像中の該複数のピクセル位置の各々についての値を入手する工程;および
該第2の画像中の各ピクセル位置についての強度値の割合を、該第1の画像中の同じピクセル位置の強度値から減算して、調整した強度値を得る工程
を包含する、方法。
(項目31)
前記第1の画像が、第1の焦点面で獲得され、そして、前記第2の画像が、第2の焦点面で獲得される、項目30に記載の方法。
(項目32)
減算された前記第2の画像中の各ピクセル位置についての前記強度値の割合が、強度分布関数から決定される、項目30に記載の方法。
(項目33)
複数のスポットを分析する方法であって、以下:
該スポットを位置付ける工程;
該位置付けられたスポットについて参照点を規定する工程;
該位置付けられたスポットの該参照点を、対応する線分を有する最も隣接する1セットのスポットの参照点につなげる工程;および
互いにスポットをつなげるために使用された線分間の共通部分の点を同定する工程
を包含する、方法。
(項目34)
参照点および共通部分の点に参照番号を割り当てる工程をさらに包含する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記参照番号およびスポット位置を表にする工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
(項目36)
各スポット内の前記参照点が、該スポットの中心である、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記スポットが、組織マイクロアレイ中のヒストスポットである、項目33に記載の方法。
(項目38)
複数の参照点の各々を、対応する線分を使用して、最も近い端につなげる工程をさらに包含する、項目33に記載の方法。
(2.発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、細胞含有サンプルを迅速に分析するためのシステムおよび方法を特徴として、細胞内の特定のバイオマーカーを局在化および定量する。1つの実施形態において、本方法は、コンピューターによって実行され、そして、使用者により規定された細胞内の領域の画像に対してバイオマーカーの画像を重ね合わせて、バイオマーカーが使用者により規定された範囲内にあるか否かを決定する。
【0007】
別の局面において、本発明は、画像の不規則さ、歪み、変化するトポロジーおよび1つ以上のエレメントの非存在にもかかわらず、生物学的サンプルのアレイの光学的分析を容易にするアルゴリズムを特徴とする。
【0008】
本明細書中に記載のシステムおよびプロセスに従う患者サンプルの分析は、診断的に(特定の疾患を有するか、特定の毒素に曝露されたか、または、特定の治療薬もしくは器官移植によく応答する患者を同定するため)、および予後的に(例えば、特定の疾患を発症する可能性があるか、特定の治療薬によく応答する可能性があるか、または、特定の器官移植を許容する可能性がある患者を同定するため)有用であり得る。疾患の新規かつより良いマーカーがポストゲノム時代において同定されているので、本明細書中に記載されたプロセス(これは、マーカーを定量するだけでなく、細胞内でのそれらの局在を決定する)は、適用性を増大する。
【0009】
本明細書中で記載されるような、細胞含有調製物の自動分析は、バイオマーカーの予後的利点の迅速な評価を提供し得る。さらに、これらの自動化技術は、手動技術を使用しては代表的に示されない関連性を同定し得る。また、自動分析は、(特に、上端および下端での)染色強度の僅かな差異をより良く識別し得る。低レベルの発現を検出する能力、およびそれを発現していないものから区別する能力は、重要な予後情報を提供し得る。さらに、特定のマーカーの細胞下分布の分析は、以前は認識されなかった患者の生存への関連性を解明し得る。
【0010】
本発明の他の特性、目的および利点は、以下の図面、詳細な説明および特許請求の範囲から理解される。
【0011】
(4.詳細な説明)
(4.1概要)
一般に、細胞含有サンプル(組織および組織マイクロアレイを含む)の迅速な自動分析のために使用され得る多くの技術が、本明細書中に記載される。これらの技術は、互いに基づいており、そして、密接したプロセスとして記載されるが、各技術は、広範な適用性を有しており、そして、個々にか、または、以下に記載の技術以外と組合せて使用され得る。
【0012】
1つの実施形態において、画像内のスポットの位置を同定するための技術が特徴とされる。この技術(「スポットファインダー(spotfinder)」と呼ばれる)は、画像の不規則さ、歪み、変化するトポロジーおよび1つ以上のエレメントの非存在にもかかわらず、このような位置を柔軟に同定し得る。このプロセスは、ヒストスポット(histospot)の位置を局在化すること、および組織マイクロアレイ画像内の欠如したヒストスポットを同定することについて記載されているが、この技術は、より広範な適用を有する。より詳細には、この技術は、エレメントを局在化し、そして、エレメントの任意の集合において欠如するエレメントを同定するために使用され得る。さらに、このプロセスは、実質的に任意の次元のアレイおよび任意のエレメントの集合を含むアレイにおいて使用され得る。試料は、サイズまたは形状で制限されず、規則正しく間隔を空けられなければならないわけではない。
【0013】
別の実施形態において、単独でか、またはスポットファインダーと組合せて使用して、必要に応じて細胞内のバイオマーカーの局在化および定量し得る技術を、特徴とする。細胞調製物の画像は、代表的に二次元を特色とするが、細胞調製物は、深さを特徴とする。例えば、1つの細胞特性は、別の特性上に存在し得る。この重複は、画像分析ソフトウェアを潜在的に混乱させ得る。本明細書中に記載の技術(吹き替えRESA(Rapid Exponential Subtraction Algorithm))は、焦点外の画像エレメントを減算することによって、三次元画像を見積もり得る。従って、画像上のバックグラウンド特性の影響は削減され、より良い画像分析を可能にする。
【0014】
本明細書中に記載の別の技術(吹き替えPLACE(Pixel Based Locale Assignment Compartmentalization of Expression))は、異なる細胞の特徴付けの間を区別する。例えば、この技術は、個々の細胞内の細胞下分布の位置を決定し得る。この技術を実行するコンピューターは、例えば、ピクセルごとの基準で区画特異的染色から得られる画像の相対強度を測定する。次いで、このコンピューターは、画像内の個々のピクセル、このピクセルが、細胞内の特定の場所または使用者が規定した領域に対応する可能性を決定する。このような分析は、コンピューターが、細胞下区画に対してシグナルを、確立した程度の正確度(例えば、95%)で割り当てることを可能にする。この技術は、細胞の規定された場所の画像と、特定のバイオマーカーに関連するシグナルとを共存させ得る。
【0015】
これらの技術の使用は、自動化マイクロアレイ分析のスピードと正確さとの両方を増強し得る。図1は、蛍光タグ化マーカーでの染色後に撮影され、そして以下のような単一色の画像と合わされた、結腸癌腫の別個の単色画像を示す:DAPI(核を可視化するため、青)、抗サイトケラチン(非腫瘍エレメントから腫瘍を識別するため、緑)および抗α−カテニン(細胞膜を可視化するため、赤)(パネルA)。これらの細胞下区画間の有意な程度の重複に留意のこと。バイオマーカーβ−カテニンの単色画像が撮影され(パネルB、挿入図)、そして画像中の各ピクセルの強度は、パネルA中の種々の区画の相対的シグナル強度に従って再分配する(青=核、赤=膜、緑=細胞質)。
【0016】
この腫瘍におけるβ−カテニンの発現は、主に膜結合であるが、パネルA中の区画における有意な重複は、核に対して有意な量のシグナルを誤って割り当てる(マゼンダおよび青のピクセル、パネルB)。重複したシグナルの除去を助けるために、核細胞下区画の単色画像は、焦点外の画像から指数関数的に減算される。パネルCは、抗サイトケラチンマスク由来のマスク(緑のピクセル)上に示された、DAPIおよび抗α−カテニン(それぞれ、青および赤)の指数関数的に減算された合成画像を示す。チャネル間であまりに重複したピクセルは、抗サイトケラチン画像から生成されるマスクによって規定されるように、非腫瘍領域なので、打ち消される(<5%)。パネルDにおいて、バイオマーカーの指数関数的に減算された画像(β−カテニン、挿入図)からのシグナル強度は、次いで、パネルCにおいて規定された区画に従って再分配される。これは、重要な予後の有意性を有し得る、膜区画へのバイオマーカーのより正確な割り当てを生じる。膜結合β−カテニンは、接着複合体の細胞骨格付着を促進することによってカドヘリン媒介性の接着を安定化一方、核結合β−カテニンは、転写因子として作用する(これは、細胞の増殖および侵襲において重要ないくつかの遺伝子をアップレギュレートし、そしてこの能力において癌遺伝子とみなさる)ので、β−カテニン単独の発現は、予後情報を提供しない。しかし、核におけるその局在は、発癌の重要な指示であり得る。
【0017】
(1.スポット−ファインダー(spot−finder))
1つの実施形態において、図3に示されるように、コンピュータは、画像から任意の異常なサイズのスポットB1を除去する。異常な大きさのスポットとしては、例えば、融合したスポットおよび/または破片の画像が挙げられ得る。コンピュータは、このプロセスを自動的に実行するが、他の実施形態において、コンピュータは、このプロセスを容易にするためにユーザの入力の使用を可能にし得る。
【0018】
次いで、コンピュータは、代表的なスポットの大きさおよび形状の不透明な仮想的マスクを作製または利用する。仮想的マスクを使用して、コンピュータは、画像B2をスキャンして、第一のマスクが最高の平均ピクセル強度を有する領域をカバーするB3を決定する。コンピュータは、スキャンの間、画像の合計強度をモニタリングし、そしてマスクは不透明なので、合計画像強度が最小化される場合にマスクの位置を同定する。コンピュータは、この領域を第一のスポットとして同定し、そしてゼロ強度を有するように、この領域内のピクセルB4を設定する。コンピュータはまた、ゼロ強度を有するように、この領域を取り囲む予め規定された領域内のさらなるピクセルを設定する。このことは、重複するスポット間を識別するために役立つ。
【0019】
第一のスポットを同定した後、コンピュータは、最高の平均ピクセル強度を有する次の領域を見出すために、マスクを使用して、再びB2画像をスキャンする。次の領域が見出されると、コンピュータは、これを第二のスポットとして同定し、そしてゼロ強度を有するように、この領域中またはこの領域の周囲のピクセルを設定する。コンピュータは、スポットとして認定されるのに十分な強度を有する画像領域が見出され得なくなるまで、このプロセスを繰り返す。
【0020】
次いで、コンピュータは、参照点B5(例えば、中心)を各スポットにおいて同定し、そして各スポットの参照点を上下左右の各々の最も近い隣のスポットの参照点に結ぶ線を引く。コンピュータがこれらの方向のいずれにおいても最も近い隣のスポットを同定できない(すなわち、スポットがアレイの端にある)場合、コンピュータは、スポットの中心から、画像の最も近い端へと線を引く。
【0021】
(2.RESAおよびPLACE)
目的の画像領域の位置が一旦決定されると、光学顕微鏡は、目的の細胞特徴を同定するために適切な波長で、高解像度の画像を入手し得る。これらの特徴としては、バイオマーカー(「シグナル」とも称される)、組織切片内の目的の細胞(「細胞マスク」と称される)または細胞マスク内のユーザが規定した位置(「場所」と称される)が挙げられる。シグナル、細胞マスクおよび場所は、「チャネル」と称される。
【0022】
図4を参照して、プロセス50は、細胞マスクチャネルからマスクを作成することによって画像中の目的の領域を決定する(工程C1)。次に、このプロセスは、場所およびシグナルチャネルにこのマスクを適用する(工程C2)。次いで、このプロセスは、例えば、偽逆重畳のプロセスにおいて、マスクした画像から焦点外の情報を除去する(工程C3)。次に、「ピクセル割り当て」段階において、このプロセスは、画像中の細胞下特徴を同定し、画像中のピクセルを場所に割り当てる(工程C4)。一旦ピクセルが割り当てられると、コンピュータは、この場所をシグナル画像上にマッピングし(工程C5)、そして各場所中のバイオマーカーの量を定量する。この段階は、「シグナル割り当て」と称される。これらの工程は、以下でより詳細に記載される。
【0023】
(マスキング)
このプロセスの間に、ソフトウェアは、目的の染色された細胞(すなわち、細胞マスクチャネル)の画像中の目的の領域を同定する。このソフトウェアは、この場所およびシグナルチャネルをマスクして、目的の領域の外側の領域の不要な分析を回避する。
【0024】
目的の領域を同定するために、コンピュータは、細胞マスクチャネルについての閾値強度を決定する。一旦決定されると、コンピュータは、二元リディストリビューション中のピクセル強度を再分配する。言い換えると、コンピュータは、閾値未満の各ピクセルの強度をゼロに設定し、そして残りのピクセルを最大強度を有するように設定する(例えば、8ビットの画像の最大強度は、255である)。最大強度に設定されたピクセル位置のセットは、マスクと称される。画像スタック中の他の画像に対する引き続く手順は、マスクに対応するピクセル位置に対して実行される。
【0025】
閾値強度は、画像中のバックグラウンドの強度に関連し、これは、コンピュータが、最初にその強度に従って各ピクセルを保存することによって決定する(例えば、8ビットの各ピクセルは、0〜255の強度を有する)。いくつかの実施形態において、このバックグラウンドは、最大のビン(すなわち、最も一般的なピクセル強度)に対応する。他の実施形態において、このバックグラウンドは、第2の最大ビンに対応する。組織の自己蛍光および最大のビンが、蛍光組織化学染色の代わりに、蛍光組織の領域に対応するいくつかの場合において、これが生じる。いずれの場合においても、コンピュータは、バックグラウンド強度が、最大強度の特定の割合より低いこと(例えば、最大強度の半分未満)を推定する。
【0026】
ビンの大きさは、ヒストグラムを得るために、強度に対してプロットされる。ヒストグラム中の最大ピークは、最大ビンに対応する。最大ビンがバックグラウンドに対応する実施形態において、コンピュータは、この最大ピーク強度をバックグラウンド強度として割り当てる。他の実施形態において、バックグラウンドが第2の最大ビンに対応する場合、このヒストグラムは、最大ピークよりも低い強度で第二のピークを有する。従って、第二のピークが最大ピークの大きさの少なくとも特定の割合(例えば、少なくとも5%)である場合、コンピュータは、この第二のピーク強度を、画像のバックグラウンド強度として割り当てる。
【0027】
一旦確立されると、コンピュータは、バックグラウンド強度にさらなる因数を加算して、閾値強度を決定する。8ビットの画像について、この因数は、ユーザが規定した入力(通常0.5)によって乗算されたD(1/5)/10と等しい。ここで、D(1/5)は、保存されたピクセルの五分位数分布であり、以下のように決定される:
D(1/5)=〈I〉上位20−〈I〉下位20
ここで、〈I〉上位20は、上位20番内の百分位数の平均ピクセル強度であり、そして〈I〉下位20は、下位20番内の百分位数の平均ピクセル強度である。
【0028】
閾値強度以上の強度を有するピクセルは、マスクに割り当てられる。
【0029】
次いで、このマスクは、ユーザにより規定されたパラメータおよび画像処理技術に従ってさらに調節される。例えば、このマスクは、このマスク領域がユーザにより規定された値に一致するか、またはマスク内の特定の(ユーザにより規定された)大きさの満たされた穴を有するように、拡張または破壊され得る。マスクを作製するためのユーザにより規定されたパラメータは、少数のサンプルヒストスポット(histospot)画像を分析した後で、全アレイを実行する前に調整され得る。
【0030】
マスクの作製後、コンピュータは、このマスクを画像スタック中の画像に適用し、これらの画像の各々における目的の領域を、マスクピクセル位置に対応するピクセル位置として同定する。
【0031】
(バックグラウンド減少)
示されるように、プロセス50は、画像からの焦点外の情報の影響C3を減少させる。例えば、このプロセス50は、偽逆重畳技術を使用し得る。残りの画像のピクセルは、強度が減少されるが、画像情報は、組織の上部を介したより薄い仮想的スライスを示す。さらに、偽逆重畳は、画像のより高い染色強度とより低い染色強度との間の界面領域を、これらの領域間の対比を増大させることによって増強する。
【0032】
コンピュータは、場所(細胞区画)およびシグナル(すなわち、細胞成分)チャネルに対する逆重畳を実行する。コンピュータは、最初に、これらのチャネルの画像をマスキングし、分析されるべきピクセルの数を減少させる。コンピュータは、各チャネルの2つの画像を分析する。第一の画像は、焦点が合った画像(すなわち、ヒストスポットの上部の画像)である。第二の画像は、僅かに焦点の外れた画像であり、これは、組織の下部の僅かに下に焦点面を配置することによって生成される(例えば、5ミクロンの厚さのヒストスポットについて、この画像の焦点面は、このヒストスポットの上部の約8ミクロン下に位置される)。
【0033】
各ピクセル位置について、コンピュータは、対応する焦点の合った画像のピクセル強度(I焦点内)から、焦点外の画像のピクセル強度の割合(I焦点外)を減算する。コンピュータは、四分位数分布D(1/4)を使用して、焦点の合った画像の調整されたピクセル強度(I新ピクセル)を以下のように決定する:
【0034】
【数1】


ここで、I最大は、最大のピクセル強度(例えば、8ビットの画像について255)であり、そしてψは、以下から計算される:
ψ=α×D(1/4)−β
これは、画像のライブラリーの経験的評価から作成された。光学逆重畳を、可視的に判断し、そして各々についてのψを焦点内の画像についての四分位数分布に対してプロットした。経験的データの回帰分析により、フィッティングパラメータについての値を得た(すなわち、αは約80であり、そしてβは約1.19である)。この四分位数分布は、以下から決定される:
D(1/4)=〈I〉上位25−〈I〉下位25
ここで、〈I〉上位25は、上位25番内の百分位数の平均ピクセル強度であり、そして〈I〉下位25は、下位25番内の百分位数の平均ピクセル強度である。概念的には、低いD(1/4)(すなわち、ノイズに対する低いシグナル比)を有する画像中の低い強度のピクセルは、高いD(1/4)を有する画像からの低い強度のピクセルよりも、あまり激しく減算されない。
【0035】
ψの値は、マスクされた領域内の偽逆重畳の後に残るシグナル強度の割合を決定し、そしてその値をこのチャネルについて予め規定された値と比較することによって、精緻化され得る。この割合が、例えば、予め規定した値よりも高い場合、偽逆重畳は停止される。そうでない場合には、コンピュータは、シグナル強度の予め規定された割合に達するまで、ψの値を繰り返し増大させる。この予め規定された値は、チャネルによって覆われるマスクの予測された割合である。
【0036】
偽逆重畳後、得られた画像の各ピクセルは、ピクセル割り当てと称される、プロセスにおいて場所に割り当てられる。
【0037】
(ピクセルベースの発現の場所割り当て区画化(Pixel Based Locale Assignment Compartmentation of Expression)(PLACE))
ピクセル割り当て段階の間、コンピュータは、場所チャネル画像(すなわち、染色された場所の画像)の各々におけるピクセル位置の相対強度に基づく同定を割り当てる。例えば、この段階の間、コンピュータは、画像中の各ピクセル位置について、そのピクセル位置が核、膜または細胞質に属するか否かを決定する。コンピュータは、ユーザが規定した程度の確実度(例えば、95%)以内に割り当て得ないピクセルへの割り当てを行わない。より高いレベルの確実度は、この分析からより多くのピクセルを排除する。
【0038】
一般に、2つの場所画像中の各ピクセル位置について、コンピュータは、ピクセル強度を読み取り、そして各強度値を所定の閾値強度値と比較する。1つの場所のみの強度値が閾値よりも高い場合、コンピュータは、このピクセル位置をその場所に割り当てる。両方の強度値が、そのそれぞれの閾値よりも高い場合、コンピュータは、各場所からの強度値を比較し、そしてより高い強度値を有する場所の同一性を、そのピクセル位置に割り当てる。両方のピクセル強度がその閾値よりも低い場合、コンピュータは、そのピクセルを第三の場所に割り当てる。
【0039】
画像中のピクセル位置について上述のことを繰り返した後、コンピュータは、各場所の面積を計算し、そしてその結果を所定の(予想された)対象部分と比較する。計算された対象部分(例えば、核の場所のピクセルの数/マスクされたピクセルの数)が、所定の対象部分よりも大きい場合、コンピュータは、この場所から、最も低い強度を有するピクセルを除去する。コンピュータは、対象部分が、ほぼ所定の対象部分に減少するまで、最も低い強度のピクセルを除去し続ける。
【0040】
以下は、このプロセスが如何に作用するかの例である。膜の場所および核の場所の画像は、実行される割り当て分析について、95%の信頼区間で選択される。ピクセル位置は、排除によって細胞質の場所に割り当てられる。
【0041】
コンピュータは、膜および核の場所の画像中の各ピクセル位置においてピクセル強度を読み取り、そしてそれらを閾値と比較する。いずれの強度値も閾値よりも低い場合、ピクセル位置は、細胞質の場所に割り当てられる。核強度のみまたは膜強度のみが閾値よりも高い場合、コンピュータは、このピクセル位置を、閾値を上回る場所に割り当てる。両方の強度が閾値よりも高い場合、コンピュータは、一方に対すて強度値の比率を比較し、そして以下のような割り当てを行う:
核強度/膜強度>1→ピクセル位置=核の場所
核強度/膜強度<1→ピクセル位置=膜の場所
核強度/膜強度=1→ピクセル位置=割り当てない。
【0042】
従って、核強度が膜強度よりも高い場合、コンピュータは、このピクセル位置を核の場所に割り当てる。膜強度が核強度よりも高い場合、コンピュータは、このピクセル位置を膜の場所に割り当てる。膜強度が核強度と等しい場合、このピクセル位置は割り当てられない。これを、ピクセル位置について繰り返す。
【0043】
一旦全てのピクセル位置が分析されると、コンピュータは、膜の場所に誤って割り当てられた(すなわち、核から膜にこぼれた)核強度の量を決定し、その逆も決定する。膜チャネルに誤って割り当てられた核強度の量が、総核強度の5%より高い場合、コンピュータは、核強度に因数wで重み付けし、そして重み付けされた核強度の膜強度に対する比を再計算する。この比は互いに比較され、そしてピクセル位置は、以下のように再割り当てされる:
w×核強度/膜強度>1→ピクセル位置=核の場所
w×核強度/膜強度<1→ピクセル位置=膜の場所
w×核強度/膜強度=1→ピクセル位置=割り当てない。
【0044】
コンピュータは、再び、誤って割り当てられた各場所の量を決定する。これがなお5%より高い場合、コンピュータは、wの値を増大させ、そして上記の工程を繰り返す。これは、誤って割り当てられた核の場所の量が5%未満になるまで続く。コンピュータは、類似の技術を使用して、膜から核へのこぼれを最小化する。
【0045】
コンピュータはまた、細胞質(排除)の場所の面積を計算し、そしてそれを所定の値と比較する。割り当てプロセスを繰り返すことによって、コンピュータは、生物学に基づいて決定されるように、5%未満の細胞質から核または細胞質から膜が存在することを確実にする。
【0046】
次いで、コンピュータは、「シグナル割り当て」プロセスの間に、各場所中のシグナルの量を評価する。
【0047】
ピクセル割り当て後、コンピュータは、各場所中のシグナルを合計する。コンピュータは、シグナル画像(すなわち、細胞成分を選択的に標識する染色の画像)のピクセル強度を読み取り、そして同じ細胞下の区画に割り当てられたピクセル位置についてのシグナル強度を一緒に加算する。コンピュータは、その場所に割り当てられた各ピクセル位置のシグナル強度の直接的加算によってその場所のピクセル強度の合計を計算する。コンピュータはまた、シグナル強度および各ピクセル位置についての場所強度の比率を一緒に加算することによって、ピクセル強度比の合計を計算する。
【0048】
ピクセル強度の合計およびピクセル強度比の合計は、次いで、1以上のパラメータを計算する際に使用される。例えば、コンピュータは、各区画内に入るシグナルの相対的な割合(例えば、総シグナルの30%は膜であり、20%は細胞質であり、そして50%は核である)を決定する。別の例において、コンピュータは、特定の区画の大きさと比較した、存在するシグナルの量(例えば、膜チャネルに割り当てられたピクセルの数によって分割された、膜チャネルに割り当てられたピクセルのシグナル強度)を表示する。ユーザは、コンピュータに目的の他のパラメータを評価させるように選択し得る。例えば、どの程度の画像領域がマスクによって覆われているか、どの程度のマスクが各場所によって覆われているか、など。
【0049】
偽逆重畳アルゴリズム(これは、無関係のピクセル強度の大部分を制限する)を、強度面積測定値(これは、特定の細胞下の場所の面積をさらに規定する)と一緒に実行することによって、コンピュータは、細胞下の位置でのピクセル位置の非常に正確な割り当てを行うことができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、コンピュータは、カメラのダイナミックレンジをよりよく利用するために、さらなる工程を実行する。これは、その相対強度に基づいて、検出器のダイナミックレンジを超えて画像中のピクセル強度を再分配することによって達成される。
【0051】
再分配の1形態は、正規化再分配であり、これによって、より低い閾値(すなわち、マスキングの間に決定されたバックグラウンドのピクセル強度)は、画像中の全てのピクセルから減算され、そして得られた負の値を有する任意のピクセルは、ゼロに設定される。正規化再分配は、シグナルチャネルのために使用される。なぜなら、この再分配は、1つのサンプルから次のサンプルへと尺度を保存し、サンプル間の直接的比較が行われるのを可能にするからである。これは、シグナル画像をマスキングした後のいずれかに実行される。
【0052】
二重対数再分配は、画像の上限閾値の50%(すなわち、画像中のピクセルの50%のみがより高い強度を有する値)より上の画像中の全てのピクセルを、最大強度値に設定する(例えば、8ビットの画像について255)。下限閾値未満の強度値を有する全てのピクセルは、0に設定され、そして上限閾値と下限閾値との間の強度値を有する全てのピクセルは、以下の式に従って再割り当てされる:
【0053】
【数2】


ここで、Iは、新しいピクセル強度をいい、Iは、古いピクセル強度をいい、LTおよびUTは、それぞれ、最大閾値より低いか最大閾値の50%であり、そしてI最大は、最大の強度値である。二重対数再分配は、場所チャネルのマスキングの後か、または偽逆重畳の後のいずれかで、これらのチャネルのために使用される。概念的には、これは、50百分位数を超える強度を有する場所画像中のピクセルが、割り当て段階の間にその場所に割り当てられることを確実にする。50番目の百分位数より低いがそれに近い強度を有するピクセルは、より厳しく重み付けされ、そして50番目の百分位数より十分低い強度を有するピクセルよりも、その場所に割り当てられる可能性が高い。
【0054】
他のユーザにより規定される再分配(例えば、線形再分配または他の方程式による再分配)が、上記の例に加えて使用され得る。
【0055】
上記のアルゴリズムは、組織マイクロアレイの分析に関連するが、これらは、このようなアレイを研究することだけに限定されない。スポットファインダーアルゴリズムは、収集を含む任意のエレメントを同定するために使用され得、そしてRESAアルゴリズムおよびPLACEアルゴリズムは、任意の画像化可能な細胞含有サンプル(組織生検を含む)および細胞含有液体サンプル(血液、尿、髄液、唾液、リンパ、胸膜液、腹膜液および心膜液を含む)内のバイオマーカーを局在化および定量するために使用され得る。
【0056】
また、任意の光学画像化デバイスまたは非光学画像化デバイス(例えば、垂直光学顕微鏡または倒立光学顕微鏡、走査型共焦点顕微鏡、カメラ、操作型電子顕微鏡またはトンネル電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡および画像化赤外線検出器など)が使用され得る。
【0057】
上記の実施形態において、コンピュータは、システムの他の構成エレメントを制御し、そして画像を分析してヒストスポットまたは組織マイクロアレイについての所望の情報を引き出すために、ハードウェア、ソフトウェアまたはこれら両方の組み合わせを備え得る。上記の分析は、標準的なプログラミング技術を使用するコンピュータプログラムにおいて実行される。このようなプログラムは、プロセッサ、データ保存システム(メモリおよび/または保存エレメントを備える)、少なくとも1つの入力デバイス、少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイまたはプリンタ)をそれぞれ備える、プログラム可能なコンピュータで実行するために設計される。プログラムコードは、入力データ(例えば、一緒に綴じられた画像または画像スタック)に適用されて、本明細書に記載される関数を実行し、そして情報(例えば、シグナルの局在化)(これは、1以上の出力デバイスに適用される)を生成する。各コンピュータプログラムは、高レベルの手続型プログラム言語またはオブジェクト指向プログラム言語、あるいはアセンブリ言語または機械言語で実施され得る。このようなコンピュータプログラムの各々は、コンピュータによって読み出された場合に、コンピュータ中のプロセッサに本明細書中に記載される分析を実行させ得る、コンピュータ読み出し可能保存媒体(例えば、CD ROMまたは磁気ディスク)に保存され得る。
【0058】
以下は、本明細書に記載される方法に従って組織マイクロアレイの調製および分析の特定の実施形態の詳細な記載を提供するが、類似の工程が、任意の細胞含有サンプルに関して実行され得る。図5を参照して、組織マイクロアレイ100は、代表的には薄い(例えば、約5ミクロン)のパラフィンブロック130中に通常の間隔で包埋され、一連の行および列を形成するヒストコア(histocore)から調製された、ヒストスポット120の複数のサンプルを含む。ヒストスポット(ヒストコアの薄い切片)120は、実質的にディスク状の形状であり、そして代表的には、パラフィンブロック130と同じ厚さ(すなわち、約5ミクロン)であり、約0.6ミリメートルの直径を有する。代表的には、ヒストスポットの中心は、1ミリメートルの約10分のいくつか離れて間隔を空けられる。パラフィンブロック130およびヒストスポット120は、顕微鏡スライド110上に取り付けられ得る。組織マイクロアレイ100は、任意の数のヒストスポット、代表的には数百から数千程度のヒストスポットを備え得る。
【0059】
図6を参照して、光学顕微鏡ステーションが、組織の適切な画像を獲得するために使用され得る。顕微鏡ステーション200は、組織の画像化のための倒立光学顕微鏡201、および画像を分析するためのコンピュータ290を備える。光学顕微鏡201は、光源220を収容するマウント210、サンプルステージ240、対物レンズ250およびCCDカメラ270を備える。コンピュータ290中のフレームグラッバーは、CCDカメラ270を介して画像を獲得する。
【0060】
光学顕微鏡201はまた、フィルタホイール230および260を備え、これらは、一連のダイクロイックフィルタを収容する。ホイール230中のフィルタは、標準的な顕微鏡または蛍光顕微鏡についての適切な照明スペクトルの選択を可能にする。ホイール260中のフィルタは、蛍光顕微鏡におけるスペクトルシグネチャーの単離のために、伝えられた光をフィルタにかける。サンプルステージ240は、組織マイクロアレイ100を支持するか、または適切に位置付ける。サンプルステージ240は、x方向、y方向およびz方向(軸が示される)に直線的に移動され得る。サンプルステージ240は、自動化された移動を可能にするために、モーターを備える。コンピュータ290は、モーターのサーボ制御によって、サンプルステージ240の移動を制御する。
【0061】
組織マイクロアレイ100は、以下のように画像化され得る:ユーザは、このマイクロアレイをサンプルステージ240上に配置する。ユーザは、第一(すなわち、左上)のヒストスポットがカメラの視野の中心になり、そしてCCDカメラ270の焦点に合うように、サンプルステージ240を調節する。対物レンズ250は、適切な解像度に調整されるべきであり、例えば、0.6ミリメートルのヒストスポットは、10倍の倍率で観察され得る。一般に、種々の手段(染色された組織の可視光散乱、組織自己蛍光または蛍光タグに由来するシグナルを含む)を介して評価されるように、ヒストスポットは、周りのパラフィンよりも高い光強度の領域に対応する。コンピュータ290は、コンピュータソフトウェア(Softworx2.5、Applied Precision、Issaquah、WA)および画像化プラットホーム(例えば、Deltavision)を使用して、低解像度の画像(例えば、16ビンの解像度を有する64ピクセル×64ピクセル)を獲得し得る。コンピュータ290は、サンプルステージ240を、視野とほぼ等しい量に自動的に変換する。次いで、コンピュータは、第二の低解像度の画像を獲得する。このプロセスは、コンピュータが組織マイクロアレイ全体の画像を獲得するまで繰り返される。次いで、市販のソフトウェアを使用して、コンピュータは、パッチワークのように一連の画像をつなぎ合わせることによって、組織マイクロアレイ全体の複合画像を生成する。
【0062】
本発明に従って検出され得る生物学的マーカーとしては、任意の核酸、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物または細胞の他の成分が挙げられるが、これらに限定されない。特定のマーカーは、特定の細胞に特徴的であるが、他のマーカーは、特定の疾患または状態に関連することが同定されている。公知の予後マーカーの例としては、酵素的マーカー(例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼII、ニューロン特異的エノラーゼ、プロトンATPase−2および酸性ホスファターゼ)が挙げられる。ホルモンマーカーまたはホルモンレセプターマーカーとしては、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、癌胎児抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、アンドロゲンレセプター、gC1q−R/p33補体レセプター、IL−2レセプター、p75ニューロトロフィンレセプター、PTHレセプター、甲状腺ホルモンレセプターおよびインスリンレセプターが挙げられる。
【0063】
リンパ球のマーカーとしては、以下が挙げられる:α−1−アンチキモトリプシン、α−1−アンチトリプシン、B細胞マーカー、bcl−2、bcl−6、Bリンパ球抗原36kD、BM1(骨髄マーカー)、BM2(骨髄マーカー)、ガレクチン−3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、HLAクラスII(DR)抗原、ヒト好中球デフェンシン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、κ軽鎖、κ軽鎖、λ軽鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージマーカー、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化(anaplastic)リンパ腫キナーゼ、プラズマ細胞マーカー、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター、T細胞抗原レセプター(JOVI1)、T細胞抗原マーカー(JOVI3)、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、非クラスター化B細胞マーカー。
【0064】
腫瘍マーカーとしては、以下が挙げられる:αフェトプロテイン、アポリポプロテインD、BAG−1(RAP46タンパク質)、CA19−9(シアリルルイスA(sialyl lewisa)、CA50(癌腫関連ムチン抗原)、CA125(卵巣癌抗原)、CA242(腫瘍関連ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラスタリン(アポリポプロテインJ)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異的抗原、大柄な(gross)嚢胞性疾患液性タンパク質−15、肝細胞特異的抗原、ヘレグリン、ヒト消化管ムチン、ヒト乳脂肪小球、MAGE−1、マトリクスメタロプロテイナーゼ、メランA、黒色腫マーカー(HMB45)、メソセリン、メタロチオネイン、ミクロフタルミア症転写因子(MITF)、Muc−1コア糖タンパク質、Muc−1糖タンパク質、Muc−2糖タンパク質、Muc−5AC糖タンパク質、Muc−6糖タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、Myf−3(横紋筋肉腫マーカー)、Myf−4(横紋筋肉腫マーカー)、MyoD1(横紋筋肉腫マーカー)、ミオグロビン、nm23タンパク質、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、前立腺特異的抗原、前立腺酸ホスファターゼ、前立腺インヒビンペプチド、PTEN、腎臓細胞癌腫マーカー、小腸ムチンの抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子−1、マトリクスメタロプロテアーゼ1の組織インヒビター、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の組織的インヒビター、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1、ビリン、フォンビルブラント因子。
【0065】
細胞周期関連マーカーとしては、以下が挙げられる:アポトーシスプロテアーゼ活性化因子−1、bcl−w、bcl−x、ブロモデオキシウリジン、CAK(cdk活性化キナーゼ)、細胞内アポトーシス感受性タンパク質(CAS)、カスパーゼ2、カスパーゼ8、CPP32(カスパーゼ3)、CPP32(カスパーゼ3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNA断片化因子(N末端)、Fas(CD95)、Fas関連デスドメインタンパク質、Fasリガンド、Fen−1、IPO−38、Mcl−1、ミニクロモソーム維持タンパク質、ミスマッチ修復タンパク質(MSH2)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ、増殖細胞核抗原、p16タンパク質、p27タンパク質、p34cdc2、p57タンパク質(Kip2)、p105タンパク質、Stat 1α、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIα、トポイソメラーゼIIIα、トポイソメラーゼIIβ。
【0066】
神経組織マーカーおよび腫瘍マーカーとしては、以下が挙げられる:αBクリスタリン、α−インターネキシン、αシヌクレイン(synuclein)、アミロイド前駆体タンパク質、βアミロイド、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼ、興奮性アミノ酸トランスポーター1、GAP43、グリア線維酸性タンパク質、グルタミン酸レセプター2、ミエリン塩基性タンパク質、神経成長因子レセプター(gp75)、神経芽細胞腫マーカー、ニューロフィラメント68kD、ニューロフィラメント160kD、ニューロフィラメント200kD、ニューロン特異的エノラーゼ、ニコチン性アセチルコリンレセプターα4、ニコチン性アセチルコリンレセプターβ2、ペリフェリン、タンパク質遺伝子産物9、S−100タンパク質、セロトニン、SNAP−25、シナプシンI、シナプトフィジン、タウ、トリプトファン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素、ユビキチン。
【0067】
クラスター分化マーカーとしては、以下が挙げられる:CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8α、CD8β、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、およびTCR−ζ。
【0068】
他の細胞マーカーとしては、以下が挙げられる:セントロメアタンパク質−F(CENP−F)、ジャイアンチン(giantin)、インボルクリン(involucrin)、ラミンAおよびラミンC[XB10]、LAP−70、ムチン、核膜孔複合体タンパク質、p180ラメラ体タンパク質、ran、r、カテプシンD、Ps2タンパク質、Her2−neu、P53、S100、上皮マーカー抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNA、ならびにKi67。
【0069】
細胞含有サンプルを、特定の生物マーカーまたは種々の型の細胞もしくは亜細胞画分と直接反応する、色素もしくは染色液、または組織化学物質を使用して染色し得る。全ての染色が適合するわけではない。従って、使用される染色型およびそれらの適用順序は、十分に考慮されるべきであるが、これは当業者によって容易に決定され得る。このような組織化学物質は、透過顕微鏡によって検出可能な発色団か、または蛍光顕微鏡によって検出可能な発蛍光団であり得る。一般に、細胞含有サンプルは、少なくとも1つの組織化学物質を含む溶液でインキュベートされ得、このサンプルは標的の化学物質の基と直接反応するか、または結合する。いくつかの組織化学物質は、染色を可能にするために、媒染剤または金属と共インキュベートされなければならない。細胞含有サンプルは、目的の成分を染色する少なくとも1つの組織化学物質、および対比染色として作用し、かつ目的の成分の外部領域に結合する別の組織化学物質の混合物でインキュベートされ得る。あるいは、複数のプローブの混合物が染色において使用され得、そして特定のプローブの位置を識別する方法を提供し得る。
【0070】
以下の非限定的なリストが、組織学的染色または対比染色に使用され得る例示的な発色団、およびそれらの標的細胞、亜細胞画分、または細胞成分を提供する:エオシン(塩基性細胞成分、細胞質)、ヘマトキシリン(核酸)、オレンジG(赤血球、膵臓および下垂体細胞)、ライトグリーンSF(コラーゲン)、ロマノフスキー−ギムザ(細胞全体の形態)、メイ−グリュンヴァルト色素(血液細胞)、ブルーカウンターステイン(Trevigen)、エチルグリーン(CAS)(アミロイド)、フォイルゲン−ナフトールイエローS(DNA)、ギムザ(種々の細胞画分を異なって染色する)、メチルグリーン(アミロイド)、ピロニン(piyronine)(核酸)、ナフトールイエロー(赤血球)、ニューラルレッド(核)、パパニコラウ染色(代表的には、ヘマトキシリン、エオシンY、オレンジGおよびビスマルクブラウン混合物(全体的な細胞形態)、レッドカウンターステインB(Trevigen)、レッドカウンターステインC(Trevigen)、シリウスレッド(アミロイド)、フォイルゲン試薬(パラローザニリン)(DNA)、ガロシアニンクロムミョウバン(DNA)、ガロシアニンクロムミョウバンおよびナフトールイエローS(DNA)、メチルグリーンピロニンY(DNA)、チオニン−フォイルゲン試薬(DNA)、アクリジンオレンジ(DNA)、メチレンブルー(RNAおよびDNA)、トルイジンブルー(RNAおよびDNA)、アルシアンブルー(炭水化物)、ルテニウムレッド(炭水化物)、スーダンブラック(脂質)、スーダンIV(脂質)、オイルレッド−O(脂質)、ヴァン・ギーソン三色色素(酸性フクシンおよびピクリン酸の混合物)(筋肉細胞)、マッソン三色色素(ヘマトキシリン、酸性フクシンおよびライトグリーンの混合物)(コラーゲン、細胞質、仁(nucleioli)を別々に染色する)、アルデヒドフクシン(エラスチン繊維)ならびにヴァイゲルト染色(細網線維および膠原線維を区別する)。このような染色の包括的なリスト、これら染色の説明、および一般的な使用は、R.D.Lillie「Conn’s Biological Stains」、第8編、Williams and Wilkins Company、Baltimore、Maryland(1969)において提供される。前述の適切な媒染剤および組成物は、当業者に周知である。
【0071】
以下の非限定的なリストは、例示的な蛍光組織化学染色、およびそれらの標的細胞、亜細胞画分、または適用可能な細胞成分を提供する:4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)(核酸)、エオシン(塩基性細胞成分、細胞質)、ヘキスト33258およびヘキスト33342(2つのビスベンズイミド)(核酸)、ヨウ化プロピジウム(核酸)、スペクトラムオレンジ(核酸)、スペクトラムグリーン(核酸)、キアナクリン(quianacrine)(核酸)、フルオレセインファロイジン(アクチン繊維)、クロモマイシンA3(核酸)、アクリフラビンフォイルゲン反応(核酸)、オーラミンO−フォイルゲン反応(核酸)、臭化エチジウム(核酸)、ニッスル染色(ニューロン)、高親和性DNA発蛍光団(例えば、POPO、BOBO、YOYO、およびTOTO、ならびにその他)およびDNA結合性タンパク質(例えば、ヒストン)と融合された緑色蛍光タンパク質、ACMA、キアナクリン、ならびにアクリジンオレンジ。
【0072】
広範な種々の、独自の蛍光性のオルガネラ特異的プロープは、Molecular Probes(Eugene,OR)より利用可能であり、これらとしては、ミトコンドリア特異的プローブ(MitoFluor色素およびMito Tracker色素)、小胞体(ER)およびゴルジ体のプローブ(ER−Trackerおよび種々のセラミド結合体)、ならびにリソソームプローブ(Lyso Tracker色素)が挙げられる。これらのプローブ、ならびに多くの一般の蛍光性組織化学物質は、「Handbook of Fluorescent Probes and Research Products」第8版(2001)(Molecular Probes,Eugene,ORから利用可能)から利用可能であり、そしてそこに広範に記載されている。
【0073】
各々の細胞含有サンプルは、目的の細胞成分である酵素に対して適切な基質、および酵素活性の部位で有色沈殿物を生成する適切な試薬と共に、共インキュベートされる。このような酵素組織化学染色は、特定の標的酵素に特異的である。酵素組織化学染色での染色を使用して、亜細胞成分または特定の型の細胞を規定し得る。あるいは、酵素組織化学染色を診断上で使用して、細胞内の酵素活性量を定量し得る。種々の広範な酵素基質および検出アッセイは、当該分野で公知であり、そして記載されており、そしていくつかの選択される方法が以下に例示される。
【0074】
酸性ホスファターゼはいくつかの方法により検出され得る。酸性ホスファターゼについてのGomoriの方法において、細胞調製物をグリセロリン酸と共にインキュベートし、そしてニトロ化を導く。酵素がホスフェートを遊離させて、これがリードと結合してリードホスフェートの無色沈殿物を生じる。次いで、この組織を硫酸アンモニウムの溶液に浸し、これは、リード硫化物の黒色沈殿物を形成するリードホスフェートと反応する。あるいは、細胞をパラロサニリン塩酸、亜硝酸ナトリウム、ナフトール(napthol)ASB1ホスフェート(基質)およびベロナール酢酸緩衝液を含む溶液でインキュベートし得る。この方法は、酸性ホスファターゼ活性の領域に赤色沈殿物を形成する。酸性ホスファターゼの特徴的な含有量に起因して、リソソームは、このアッセイの使用により他の細胞質顆粒およびオルガネラと区別され得る。
【0075】
デヒドロゲナーゼは、細胞を、デヒドロゲナーゼの種に対する適切な基質、およびテトラゾールと共にインキュベートすることによって位置付けられ得る。この酵素は、基質から水素イオンをテトラゾールに移動させて、テトラゾールをホルマザンの暗色沈殿物に還元する。例えば、NADHデヒドロゲナーゼは、呼吸鎖の複合体Iの成分であり、そしてミトコンドリアに大部分が配置される。
【0076】
周知の染色技術が開発された他の酵素、およびそれら酵素の本来の細胞内位置または活性としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ATPase(筋肉線維)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(ミトコンドリア)、チトクロムcオキシダーゼ(ミトコンドリア)、ホスホリラーゼ(ミトコンドリア)、ホスホフルクトキナーゼ(ミトコンドリア)、アセチルコリンエステラーゼ(神経細胞)、ラクターゼ(小腸)、ロイシンアミノペプチダーゼ(肝細胞)、ミオデニレート(myodenylate)デアミナーゼ(筋細胞)、NADHジアフォラーゼ(赤血球)、およびスクラーゼ(小腸)。
【0077】
免疫組織化学は、最も感度良くかつ特異的な組織化学的技術の1つである。各々の組織スポットは、特異的な結合プローブを含む、標識された結合組成物と結合され得る。種々の標識(例えば、フルオロフォア)、または光もしくは蛍光を吸収する生成物を生成する酵素が使用され得る。単独の結合事象に関係して強力なシグナルを提供する、広範な種々の標識が公知である。染色に使用される複数のプローブは、1つ以上の識別可能な蛍光標識で標識され得る。これらの色の差異は、特定のプローブの位置を識別する方法を提供する。フルオロフォアとタンパク質(例えば、抗体)の結合体を調製する方法は、文献に広範に記載されており、そして本明細書で例示を必要としない。
【0078】
少なくとも120,000個の市販の抗体が存在するが、以下は、細胞成分に特異的に結合することが公知であり、そして研究のために、そして限定される場合において種々の疾患の診断のために使用される免疫組織化学的染色における成分として現在使用される、いくつかの例示的な1次抗体を列挙する。抗エストロゲンレセプター抗体(乳癌)、抗プロゲステロンレセプター抗体(乳癌)、抗p53抗体(複数の癌)、抗Her−2/neu抗体(複数の癌)、抗EGFR抗体(上皮増殖因子、複数の癌)、抗カテプシンD抗体(乳癌および他の癌)、抗Bcl−2抗体(アポトーシス細胞)、抗E−カドヘリン抗体、抗CA125抗体(卵巣癌および他の癌)、抗CA15−3抗体(乳癌)、抗CA19−9抗体(結腸癌)、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体(MDR、多種薬剤耐性)、抗CEA抗体(癌胎児性抗原)、抗レチノブラストーマタンパク質(Rb)抗体、抗ras腫瘍性タンパク質(oneoprotein)(p21)抗体、抗ルイスX(またはCD15とも呼ばれる)抗体、抗Ki−67抗体(細胞増殖)、抗PCNA抗体(複数の癌)、抗CD3抗体(T細胞)、抗CD4抗体(ヘルパーT細胞)、抗CD5抗体(T細胞)、抗CD7抗体(胸腺、未成熟T細胞、NKキラー細胞)、抗CD8抗体(サプレッサーT細胞)、抗CD9/p24抗体(ALL)、抗CD10(またはCALLAとも呼ばれる)抗体(一般に急性リンパ芽球性白血病)、抗CD11c抗体、単球、顆粒球、AML)、抗CD13抗体(骨髄性単球細胞、AML)、抗CD14抗体(成熟単球、顆粒球)、抗CD15抗体(ホジキン病)、抗CD19抗体(B細胞)、抗CD20抗体(B細胞)、抗CD22抗体(B細胞)、抗CD23抗体(活性化B細胞、CLL)、抗CD30抗体(活性化T細胞および活性化B細胞、ホジキン病)、抗CD31抗体(脈管新生マーカー)、抗CD33抗体(骨髄性細胞、AML)、抗CD34細胞(上皮性幹細胞、間質腫瘍)、抗CD35抗体(樹状細胞)、抗CD38抗体(プラズマ細胞、活性化T細胞、活性化B細胞、および骨髄性細胞)、抗CD41抗体(血小板、巨核球)、抗LCA/CD45抗体(白血球共通抗原)、抗CD45RO抗体(ヘルパーT細胞、インデューサーT細胞)、抗CD45RA抗体(B細胞)、抗CD39、CD100抗体、抗CD95/Fas抗体(アポトーシス)、抗CD99抗体(ユーイング肉腫マーカー、MIC2遺伝子産物)、抗CD106抗体(VCAM−1;活性化内皮細胞)、抗ユビキチン抗体(アルツハイマー病)、抗CD71(トランスフェリンレセプター)抗体、抗c−myc(腫瘍性タンパク質およびハプテン)抗体、抗サイトケラチン(トランスフェリンレセプター)抗体、抗ビメンチン(内皮細胞)抗体(B細胞およびT細胞)、抗HPVタンパク質(ヒトパピローマウイルス)抗体、抗κ軽鎖抗体(B細胞)、抗λ軽鎖抗体(B細胞)、抗メラノソーム(HMB45)抗体(黒色腫)、抗前立腺特異的抗原(PSA)抗体(前立腺癌)、抗S−100抗体(黒色腫細胞、軟骨(salvary)細胞、グリア細胞)、抗タウ抗原抗体(アルツハイマー病)、抗フィブリン抗体(上皮細胞)、抗ケラチン抗体、抗サイトケラチン抗体(腫瘍)、抗α−カテニン(細胞膜)、ならびに抗Tn抗原抗体(結腸癌、腺癌、および膵臓癌)。
【0079】
1次抗体と結合体化され得るフルオロフォアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、VECTOR Red、ELF.TM.(酵素標識フルオレセイン)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR.TM.’S、オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムゾン(40kDa)、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシファーイエロー、アレクサ色素ファミリー、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY.TM.、ホウ素ジピロメテン二フッ化物、オレゴングリーン、MITOTRACKER.TM.Red、DiOC.sub.7(3)、DiIC.sub.18、フィコエリスリン(Phycoerythrin)、フィコビリプロテイン(Phycobiliprotein)BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトラムブルー、スペクトラムアクア、スペクトラムグリーン、スペクトラムゴールド、スペクトラムオレンジ、スペクトラムレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外線(IR)色素、サイクリックGDP−リボース(cGDPR)、カルコフルオロホワイト、リサミン、アンベリフェロン(Umbelliferone)、チロシン、およびトリプトファン。広範な種々の他の蛍光プローブが、「Handbook of Fluorescent Probes and Research Products」第8版(2001)(Molecular Probes,Eugene,ORから利用可能)ならびに多くの他の製造業者から利用可能であり、そして/またはそれらに広範に記載される。
【0080】
シグナルのさらなる増幅は、抗抗体が標的の抗体プローブの定常領域に結合する場合、特に、その抗体が異なる種由来である場合、特異的な結合メンバーの組み合せ(例えば、抗体と抗抗体)を使用することによって、達成され得る。あるいは、リガンド−レセプター対の特異的な結合(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)が、1次抗体がその対の一方のメンバーと結合体化されて、そしてその他のメンバーが検出可能なプローブで標識される場合、使用され得る。従って、当業者は、第1のメンバーが細胞成分と結合して、第2の結合を提供するよう役割を果たす場合、第2の結合メンバーは標識を含んでも含まなくてもよい場合、結合メンバーのサンドイッチを効果的に構築し、このことはさらに、三次的な結合メンバーが標識を提供する場合、三次結合を提供し得る。
【0081】
二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン、またはビオチンは、それぞれ独立して検出可能な部分で標識されて、この検出可能な部分は、実質的に不溶性発色反応生成物、蛍光性色素(染料)、発光性色素または非蛍光性色素を有する基質の発色反応に関する酵素であり得る。これらの選択肢のそれぞれに関する例を以下に列挙する。
【0082】
原理的に、酵素は、(i)1次抗体と結合体化され得るか、または1次抗体と間接的に(例えば、結合体化されたアビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、2次抗体を介して)結合し得、そして(ii)不溶性産物(沈殿物)を提供する可溶性基質を使用する、任意の酵素が使用され得る。
【0083】
使用される酵素は、例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、および/またはグルコースオキシダーゼであり得;そして基質は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼまたはグルコースオキシダーゼのそれぞれの基質であり得る。
【0084】
アルカリフォスファターゼ(AP)の基質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:AP−ブルー基質(青色沈殿物、Zymedカタログ);AP−オレンジ基質(オレンジ、沈殿物、Zymed)、AP−レッド基質(赤色、赤色沈殿物、Zymed)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート(BCIP基質、turquoise沈殿物)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム/ヨードニトロテトラゾリウム(BCIP/INT基質、黄褐色沈殿物、Biomeda)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT基質、青色/紫色)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム/ヨードニトロテトラゾリウム(BCIP/NBT/INT、茶色沈殿物、DAKO、ファーストレッド(赤色)、Magenta−phos(マゼンタ)、ナフトールAS−BI−ホスフェート(NABP)/ファーストレッドTR(赤色)、ナフトールAS−BI−ホスフェート(NABP)/New Fuchsin(赤色)、ナフトールAS−MX−ホスフェート(NAMP)/New Fuchsin(赤色)、New Fuchsin AP基質(赤色)、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP、黄色、水溶性)、VECTORTM Black(黒色)、VECTOR.TM.Blue(青色)、VECTOR.TM.Red(赤色)、Vega Red(ラズベリー赤色)。
【0085】
西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP、時々POと略される)の基質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2,2’−アジノ−ジ−3−エチルベンズ−チアゾリンスルホネート(ABTS、緑色、水溶性)、アミノエチルカルバゾール、3−アミノ,9−エチルカルバゾールAEC(3A9EC、赤色)、α−ナフトールピロニン(赤色)、4−クロロ−1−ナフトール(4C1N、青色、暗青色)、3,3’−ジアミノベンジジン四水素化物、(DAB、茶色)、オルト−ジアニシジン(緑色)、o−フェニレンジアミン(OPD、茶色、水溶性)、TACS Blue(青色)、TACS Red(赤色)、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB、緑色または緑/青色)、TRUE BLUE.TM.(青色)、VECTOR.TM.VIP(紫色)、VECTOR.TM.SG(くすんだ青灰色)、およびZymed BlueHRP基質(鮮やかな青色)。
【0086】
グルコースオキシダーゼ(GO)の基質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ニトロブルーテトラゾリウム(NBT、紫色沈殿物)、四ニトロブルーテトラゾリウム(TNBT、黒色沈殿物)、2−(4−ヨードフェニル)−5−(4−ニトロフェニル)−3−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT、赤色またはオレンジ色沈殿物)、テトラゾリウムブルー(青色)、ニトロテトラゾリウムバイオレット(青紫色)、および3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、紫色)。全てのテトラゾリウム基質は、グルコースを補基質として必要とする。そのグルコースは酸化され、そしてテトラゾリウム塩は還元され、そして有色沈殿物を生成する不溶性ホルマザンを形成する。
【0087】
β−ガラクトシダーゼ基質としては、以下が挙げられるが、これに限定されない:5−ブロモ−4−クロロ,3−インドリルβ−D−ガラクトピラノシド(X−gal、青色沈殿物)。列挙された各々の基質に関連する沈殿物は、特有の検出可能なスペクトルサイン(成分)を有する。
【0088】
この酵素はまた、基質の発光反応を触媒すること(例えば、ルシフェラーゼおよびアクオリンであるが、これらに限定されない)に向けられ得、この基質は、発光し得るか、または発光生成物を有する第2の基質(例えば、ルシフェリンおよびATP、またはコエレンテラジン(coelenterazine)およびCa.sup.++であるが、これらに限定されない)の第2反応を導き得る、不溶性反応性生物を実質的に有する。
【0089】
以下の参考文献は、本明細書中で援用され、そしてさらなる例を提供する:J.M.Elias(1990)Immunohistopathology:A practical approach to diagnosis.ASCP Press(American Society of Clinical Pathologists),Chicago;J.F.McGinty,F.E.Bloom(1983)Double immunostaining reveals distinctions among opioid peptidergic neurons in the medical basal hypothalamus.Brain Res.278:145−153;およびT.Jowett(1997)Tissue In situ Hybridization:Methods in Animal Development.John Wiely&Sons,Inc.,New York;J Histochem Cytochem 1997年12月 45(12):1629−1641。
【0090】
細胞調製物は、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)に供され得る。一般に、核酸配列プローブは、合成されて、そして蛍光性プローブまたはリガンド:レセプター対(例えば、ビオチン/アビジン)の1メンバー(検出可能な部分で標識される)のいずれかで標識される。例示的なプローブおよび部分は、前述の節に記載される。この配列プローブは、細胞中の標的ヌクレオチド配列に相補的である。標的ヌクレオチド配列を含む、各々の細胞または各々の細胞成分は、標識されたプローブに結合し得る。分析に使用されるプローブは、DNAのオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、またはRNAのオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのいずれかであり得、そして天然に存在するヌクレオチド以外にも、それらのアナログ(例えば、ジオキシゲニンdCTP、ビオチンdcTP 7−アザグアノシン、アジドチミジン、イノシンまたはウリジン)を含み得る。他の有用なプローブとしては、ペプチドプローブおよびそのアナログ、分枝の遺伝子DNA、ペプチド模倣物、ペプチド核酸、および/または抗体が挙げられる。プローブは、標的核酸配列とプローブとの間に安定かつ特異的な結合が生じるような、目的の標的核酸配列に対して十分な相補性を有する。安定なハイブリダイゼーションのために必要とされる相同性の程度は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーで変動する。ISH、ハイブリダイゼーションおよびプローブの選択についての従来の方法論は、Leitchら、In Situ Hybridization:a practical guide,Oxford BIOS Scientific Publishers,Microscopy Handbooks v.27(1994);およびSambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989)に記載される。
【0091】
本発明はさらに、以下の実施例によって例示され、これらは何らかの目的に限定するように構築されるべきではない。掲載される全ての参考文献の内容は、本明細書によって明確に参考として援用される。
【実施例】
【0092】
(実施例1.エストロゲンレセプター(ER)およびHER2/neuの生存分析および核会合β−カテニンの分析に関する組織マイクロアレイの構築)
組織マイクロアレイの設計:結節陽性の侵襲性乳癌腫の345症例由来のパラフィン包埋されたホルマリン固定化切片を識別した。インサイチュで、病変および正常上皮から離れた侵襲性癌腫の領域を同定して、そして3つの0.6cmパンチの「生検」中心を別々の領域から取り出した。各々の中心を、別々のレシピエントブロックに整列させて、そして厚さ5ミクロンの切片を薄切して先に示したように処置した(Konenen,J.ら、Tissue microarrays for high−throughput molecular profiling of tumor specimens,(1987)Nat.Med.4:844−7)。同様に、結腸癌腫の310症例を入手して、そして先に記載されるように整列させた(Chung,G.G.ら、Clin.Cancer Res.(印刷中))。
【0093】
免疫組織化学:予め薄切したパラフィンコーティングされた組織マイクロアレイスライドをパラフィン除去し、そして圧力をかけて加熱して(pressue−cooking)、抗原賦活化させた(Katoh,A.K.ら、(1997)Biotech Histochem.F2:291−8)。スライドを、3つの標的抗原のうちの1つに対する抗体(モノクローナル抗E.R.(マウス、Dako Corporation,Carpinteria,CA)、ポリクローナル抗HER/neu(ウサギ、Dako Corp.)、モノクローナル(マウスクローン14、BD Transduction Labs,San Diego CA)抗β−カテニン、またはポリクローナルウサギ抗βカテニン)を用いて染色した。1次抗体を4℃で一晩インキュベートした。次いで、デキストランポリマーの骨格で修飾された西洋ワサビペルオキシダーゼと結合体化された、対応するヤギ抗マウス2次抗体または抗ウサギ2次抗体(Envision,DAKO Corp.)を、1時間適用した。標的抗原を、視覚分析のために、可視光クロマジェン(chromagen)(ジアミノベンジジン、DAKO)か、または蛍光性クロマジェン(Cy−5−チラミド(tyramide)、NEN Life Science Products,Boston,MA)のいずれかを用いて可視化した。自動化された分析のために設計されたスライドを、核の可視化のためにDAPIで対比染色し、そして腫瘍細胞とストローマ細胞を区別するために、ポリクローナルウサギ抗サイトケラチン(Zymed,So.San Francisco,CA)またはウサギ抗α−カテニンのいずれかを、ならびに細胞膜を視覚化するために使用した。多くの場合において、抗サイトケラチンで染色されたヒストスポットの、指数関数的に減算された画像は、腫瘍細胞においてサイトケラチンの膜下の融合に起因して、細胞膜に受容可能なマーカーを提供する。これらの抗体は、Cy3またはAlexa 488のいずれかで結合体化されたヤギ抗マウス2次抗体または抗ウサギ2次抗体(Amersham、Piscataway、NJおよびMolecular Probes、Eugene、OR)を使用して可視化される。目視検査のために設定されたスライドを、ヘマトキシリンで酸性化した水酸化アンモニウムで対比染色した。E.R.、HER2/neuおよびβ−カテニンのレベルについてのマイクロアレイの手動検査は、これまでに記載されている(Snead,D.R.ら、(1993)Histopathology 23:233−8)。
【0094】
画像分析:マイクロアレイの画像を、自動化X,Y,Zステージ移動を備えるTE200倒立蛍光顕微鏡上の10×Nikon Super−Fluorレンズを通して、付属の水冷式Photometricシリーズ300カメラを備える、Deltavisionのプラットフォームおよびソフトウェア(SoftWorx 2.5)(Applied Precision,Issaquah,WA)を使用して獲得した。マイクロアレイの複数(約1500枚)の低解像度画像(64×64ピクセル)を一緒に使用して、マイクロアレイの低い強度の画像を構築(stich)した。各々の位置を決定するために、本明細書中で記載されるソフトウェアアルゴリズムによって、これらの画像を分析した。続いて、モノクロの高解像度(1024×1024ピクセル)の画像を、各々、平面焦点およびその8ミクロン下の両方で獲得した。各々の蛍光色素についてのイメージ対を獲得した。簡潔に以下に述べると、以下のように、さらなるアルゴリズムを使用して、画像を分析した。遍在的に発現される上皮特異的抗原(サイトケラチンまたはα−カテニンのいずれか)に由来するマスクを使用して、目的の領域(腫瘍)を同定した。蛍光性に標識される膜および核の区画の画像を、設定された量の画像強度が残るまで指数関数的に減算した。次いで画像を組み合わせると、その結果、ある区画から次の区画までのシグナルの最小限の重複部分が存在した。有意な程度の重複部分が存在するピクセルを、さらなる分析から無効にした。標的抗原の指数関数的に減算された画像のピクセル強度を、3つの区画(核、膜または核でも膜でもない(細胞質))のうちの1つに割り当てた。標的の強度を以下のように分析した。E.R.については、核に局在するシグナルのみを使用し、HER2/neuについては膜に局在するシグナルのみを分析した。β−カテニンの総量のシグナルについては、核 対 膜のシグナル比、および核 対 総量のシグナル比を分析した。
【0095】
データ分析:乳癌からの染色スコアは、2つのスコア付け可能なヒストスポットからの、平均化した結果(ERについて)または最大化された結果(HER2/neuについて)を示す。その後の研究は、単独のヒストスポットの分析が結果を判定するのに統計的有意力を提供することを示し、その結果、結腸癌のアレイからの染色スコアはただ1つのヒストスポットの結果を示す。Kaplan−Meierの分析を使用して、そして統計的有意性を評価するためにMantel−Coxの対数階級スコアを使用して、総合的な生存分析を評価した。一変量のCox比例危険モデル(Coxproportional hazard model)を使用して、相対的な危険性を評価した。分析を、Statview 5.0.1(SAS Institute,Cary,NC)を使用して実施した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1(A〜D)は、蛍光タグ化マーカーで染色し、そして、以下のとおりの単一のカラー画像に合わせられた後に撮られた、結腸癌の別々の単色画像を示す:DAPI(核を可視化するため、青)、抗サイトケラチン(非腫瘍エレメントと腫瘍エレメントを区別するため、緑)、および抗α−カテニン(細胞膜を可視化するために、赤)
【図2】図2(A〜D)は、エストロゲンレセプターレベルの自動化スコアリングおよび病理学者によるスコアリングの回帰比較を示す。
【図3】図3は、アレイ内のスポットの相対位置を同定する方法およびその説明のフローチャートである。
【図4】図4は、位置内のシグナル(例えば、バイオマーカー)を局在化するためのプロセスのフローチャートである。
【図5】図5は、組織マイクロアレイを示す。
【図6】図6は、光学顕微鏡ステーションを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織サンプルの画像を最適化する、コンピュータにより実行される方法であって、
a)垂直顕微鏡または倒立顕微鏡を使用して、
i)該組織サンプルの焦点内の高解像度の画像を得る工程であって、該画像が、各ピクセル位置について焦点内の画像強度値を有する複数のピクセル位置を含む、工程;および
ii)該組織サンプルの焦点外の高解像度の画像を得る工程であって、該画像が、各ピクセル位置についての焦点外強度値を有する複数のピクセル位置を含む、工程;ならびに
b)各ピクセル位置についての該焦点外強度値を、該ピクセル位置における該焦点内強度値から減算する工程;
を包含し、これによって、バックグラウンドに対して補正された最適化された画像を得る、方法。
【請求項2】
組織サンプルに含まれる目的の個々の細胞中に存在する特定のバイオマーカーを局在化および定量するための、コンピュータにより実行される方法であって、
a)該組織サンプルを、該バイオマーカーを特異的に標識する染色液と一緒にインキュベートする工程;
b)垂直顕微鏡または倒立顕微鏡を使用して、
i)第1の焦点内画像;
ii)第2の焦点外画像;
を得るように、該組織サンプル中の染色の高解像度の画像を得る工程;
c)該第2の画像を該第1の画像から減算して、第3の画像を得る工程;ならびに
d)該第3の画像を分析して、該染色の強度および位置を得、これによって、該バイオマーカーを局在化および定量する、工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
各画像が、各ピクセルについて強度値を有する複数のピクセル位置を含む高解像度の画像であり、そして前記第2の焦点外画像の各ピクセルについての強度値が、前記第1の焦点内画像の対応するピクセルの強度値から減算されて、前記第3の画像が得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記染色液が、発蛍光団を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーが、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質または炭水化物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオマーカーの定量が、前記第3の画像中のピクセル位置における前記染色の強度値を合計する工程、および該合計を、該染色の強度価を有するピクセルの数で除算する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記焦点外画像が、焦点面を前記組織の下方に配置することによって獲得される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記焦点面が、前記組織の上表面の約8ミクロン下方に配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記焦点外画像のピクセル強度の百分率が、前記焦点内画像のピクセル強度から減算される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記焦点外画像のピクセル強度が、前記焦点内画像のピクセル強度から、四分位数分布を使用する方法によって減算され、該方法において、低い四分位数分布を有する画像が高い四分位数分布を有する画像より激しく減算されない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ピクセル強度が、低いノイズに対する低いシグナル比を有する画像において、高いノイズに対する低いシグナル比を有する画像においてより激しく減算されない方法によって、前記焦点外画像のピクセル強度が前記焦点内画像のピクセル強度から減算される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記組織が固定されている、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記組織がパラフィン包埋されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組織切片が、約5ミクロンの厚さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記高解像度の画像が、1024×1024ピクセルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記組織が、組織マイクロアレイ中のサンプルである、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記組織が、全組織切片である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
組織サンプル内に存在する特定のバイオマーカーを局在化および定量するためのシステムであって、
該組織サンプルの高解像度の画像を得るように構成された、高解像度の垂直顕微鏡または倒立顕微鏡であって、該顕微鏡は、
i)該サンプルを保持するように構成されたステージ;
ii)該ステージに向かう方向で第1の光線を発光するように構成された蛍光光源;
iii)該蛍光光源のためのハウジング;
iv)該光源と該サンプルステージとの間に位置決めされた第1のセットのフィルタ;
v)該第1のセットのフィルタのうちの1つが該第1の光線の経路に入るように選択的に位置決めするための第1の位置決め手段であって、該第1の光線の経路内の選択されたフィルタが該第1の光線をフィルタに通して、望ましい照射スペクトルの第2の光線を出力する、第1の位置決め手段;
vi)該サンプルを該第2の光線の経路内に配置するために該ステージを位置決めするための第2の位置決め手段であって、該第2の光線は、該サンプルに入射して、該サンプルに蛍光を透過させる、第2の位置決め手段;
vii)該サンプルステージとデジタルカメラとの間に位置決めされた第2のセットのフィルタ;
viii)該サンプルから発光された蛍光の一部をフィルタに通し、そしてフィルタに通された望ましいスペクトルシグネチャーの光の通過を可能にするために、各フィルタを該第2のセットのフィルタと選択的に位置合わせするための第3の位置決め手段;ならびに
ix)該サンプルから発光された蛍光をフィルタに通すことにより生じるフィルタに通された光のデジタル画像を捕捉するためのデジタルカメラ、
を備える、顕微鏡;ならびに
該デジタルカメラから該デジタル画像を獲得するように該顕微鏡に結合されたコンピュータであって、該コンピュータは、プロセッサ、データ保存システム、入力デバイス、および出力デバイスを備え、該コンピュータは、
a)垂直顕微鏡または倒立顕微鏡を使用して、
i)該組織サンプルの焦点内の高解像度の画像を得る工程であって、該画像が、各ピクセル位置について焦点内の画像強度値を有する複数のピクセル位置を含む、工程;および
ii)該組織サンプルの焦点外の高解像度の画像を得る工程であって、該画像が、各ピクセル位置についての焦点外強度値を有する複数のピクセル位置を含む、工程;ならびに
b)各ピクセル位置についての該焦点外強度値を、該ピクセル位置における該焦点内強度値から減算する工程;
を包含し、これによって、バックグラウンドに対して補正された最適化された画像を得る方法を実施するためのものである、コンピュータ;
を備える、システム。
【請求項19】
コンピュータ読み出し可能保存媒体であって、
a)垂直顕微鏡または倒立顕微鏡を使用して、
i)該組織サンプルの焦点内の高解像度の画像を得る工程であって、該画像が、各ピクセル位置について焦点内の画像強度値を有する複数のピクセル位置を含む、工程;および
ii)該組織サンプルの焦点外の高解像度の画像を得る工程であって、該画像が、各ピクセル位置についての焦点外強度値を有する複数のピクセル位置を含む、工程;ならびに
b)各ピクセル位置についての該焦点外強度値を、該ピクセル位置における該焦点内強度値から減算する工程;
を包含し、これによって、バックグラウンドに対して補正された最適化された画像を得る、方法を実施するための指示を有する、コンピュータ読み出し可能保存媒体。
【請求項20】
染色された組織マイクロアレイの画像中の複数のヒストスポットの各々について、位置を同定するための、コンピュータにより実行される方法であって、
a)該画像から、異常なサイズおよび形状を有するヒストスポットのいずれかを除去する工程;
b)該複数のスポット内の代表的なスポットに特徴的なサイズおよび形状を有する仮想的マスクを適用して、該画像の他のピクセル強度領域より高いピクセル強度領域を有する画像の領域を覆う工程;
c)該マスクの下の領域の画像の強度を、一時的に0に設定する工程;
d)どの領域もヒストスポットとみなされるために充分な強度を有さないと同定されるまで、工程(b)および工程(c)を繰り返す工程;
e)該ヒストスポットの各々の参照点を同定する工程;ならびに
f)各スポットの各々の参照点を、最も近く隣接するヒストスポットまたは該画像の縁部のいずれかにつなげる工程;
を包含し、これによって、該画像中の複数のヒストスポットの各々についての位置を同定する、方法。
【請求項21】
前記複数のヒストスポットが、組織マイクロアレイ中に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組織マイクロアレイが固定されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組織マイクロアレイがパラフィン包埋されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記異常なサイズおよび形状を有するスポットが、融合したスポットまたは破片の画像である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記染色された組織が、発蛍光団を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
光学画像化デバイスを使用して前記画像を得る工程をさらに包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記画像化デバイスが顕微鏡である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記顕微鏡が、垂直光学顕微鏡または倒立光学顕微鏡である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記顕微鏡が蛍光顕微鏡である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
コンピュータ読み出し可能保存媒体であって、
i)垂直顕微鏡または倒立顕微鏡を使用して、
a)第1の染色の第1の画像;
b)第2の染色の第2の画像;および
c)第3の染色の第3の画像、
を得るように、該組織サンプル中の第1の染色、第2の染色および第3の染色の各々の画像を得る工程;
ii)該第1の細胞下区画、第2の細胞下区画、またはいずれでもない細胞下区画に対して、該第1の画像および第2の画像中の各ピクセル位置を、該ピクセル位置における第2の染色に対する第1の染色の強度値に基づいて割り当てるように、該第1の画像および第2の画像中の各ピクセル位置を分析する工程;
iii)該第3の染色の存在を示す強度値を有するピクセル位置を同定するように、工程(ii)において該第1の細胞下区画または第2の細胞下区画に対して割り当てられたピクセル位置を、該第3の画像において分析し、該ピクセル位置において、第3の染色の合計強度値を決定する工程、
を包含し;
これによって、該組織サンプル中に存在するバイオマーカーを局在化および定量する方法を実施するための指示を有する、コンピュータ読み出し可能保存媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−139322(P2008−139322A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78(P2008−78)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【分割の表示】特願2002−583976(P2002−583976)の分割
【原出願日】平成14年4月19日(2002.4.19)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティ (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】