説明

細胞の入れ子式カプセル封入

本発明は、生細胞および標識をカプセル封入するための方法、ならびにカプセル封入されて標識された細胞およびそのようなカプセル封入を実施するためのキットに関する。カプセル封入された細胞は、複数の平行組織培養実験において有用であり、このとき各マイクロカプセルにおける標識は、一連の培養ステップを通して細胞経路を解読するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の入れ子式マイクロカプセル内へ細胞をカプセル封入するための方法に関する。各マイクロカプセル内に標識を組み入れることができ、これによりカプセル封入または細胞培養プロトコルにしたがって様々な細胞集団の同定が可能になる。さらに、本発明は、複数のマイクロカプセル封入層を含むマイクロカプセル封入細胞およびマイクロカプセル封入された標識の検出に基づいて細胞を追跡または同定する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
細胞のマイクロカプセル封入は、当分野において1960年代以降提案されてきた。概説は、「Cell encapsulation:Promise and progress」,Nature Medicine 9,104−107(2003)に提供されている。科学文献は、様々なカプセル封入技術および様々なカプセル封入材料を網羅している。
【0003】
例えば、医療用途におけるマイクロカプセル封入細胞の使用は、1964年に最初に提案された。内分泌細胞、島細胞、および肝細胞をアルギネート/カルシウム錯体によって形成されるマイクロスフェアによってカプセル封入することが提案された;例えば、Chang,T.M.S.,Artificial Cells,1972,Springfield,Ill.Charles C.Thomasを参照されたい。1980年代には、ランゲルハンス島細胞がアルギネート−ポリ−L−リジンアルギネートカプセル内に封入された(Lim,F.and A.M.Sun,Microencapsulated islets as bioartificial endocrine pancreas.Science,1980.210:p.908)。より純粋なアルギネートおよびより粘性のアルギネート溶液を使用することによって、研究者らは、正常血清免疫グロブリンに対しては不透過性であるマイクロカプセルであって(Goosen,M.F.A.,et al.,Optimization of microencapsulation parameters:Semipermeable microcapsules as a bioartificial pancreas.Biotech.Bioeng.,1985.27:p.146)、これにより
該細胞を身体の免疫応答から隔離するマイクロカプセルを入手した。さらに、例えば米国特許第4,353,888号明細書も参照されたい。
【0004】
Walsh et al.の米国特許第6,649,384号明細書は、移植のために島細胞などの細胞をカプセル封入するための回転ディスク型アトマイザーの使用について記載している。この特許、ならびに他の公表された文献および特許文献は、主として、取扱い中の、または免疫系からの攻撃による物理的損傷から細胞を保護するためのカプセル封入について扱っていると思われる。
【0005】
細胞を培養するための技術ならびに成長、分化、代謝活性、および表現型発現などの細胞プロセスを調節するための技術を見いだして実行するための方法は、本発明者らの国際公開第2004/031369号に提示されている。その中に記載された手順によると、例えば多孔質ビーズ上の、培養された1つ以上の細胞を含む細胞の「単位」が、その中の様々な細胞単位(cell unit)を様々な培養条件に曝露させるために、細胞培養の反復スプリット(分割)および再プーリングを包含する組み合わせスプリット−プール手順で様々な成長条件にかけられる。
【0006】
極めて多数の細胞単位を取り扱う場合は、それらの同一性および/または細胞培養歴(例えば、任意の1つの群または単位が曝露されていた可能性のある一連の培養条件の時間順序および正確な性質)が混乱する可能性がある。国際公開第2004/031369号は、細胞単位の同一性および/または細胞培養歴を決定するための改良された方法について記載している。
【0007】
国際公開第2007/063316号では、本発明者らは、スプリット−プール手順を使用して、細胞に対して機能する作用物質の活性を決定する方法について記載している。
【0008】
国際公開第2007/023297号では、本発明者らは、細胞が特定状態に達するように曝露されていた試薬および栄養素をより明確に決定するために、スプリット−プール細胞培養実験において細胞を標識化(タグ付け)するためのさらに改良された方法について記載している。
【0009】
生細胞のカプセル封入は当分野において公知であり、移植細胞の免疫保護のために開拓されてきた。一般に、当分野において公知であるような免疫保護目的で細胞をカプセル封入するために有用なポリマーは、本発明において有用である。例えば、Orive et al.,(2203)Nature Medicine 9:104−107、およびその中に言及された参考文献を参照されたい。
【0010】
生体材料のカプセル封入は、ジェッティングカプセル封入技術を使用するものとして説明されてきた。多数のそのような技術、例えばバイオエレクトロスプレー・ジェッティング法、空気力学支援バイオジェッティング法および圧力支援セル・ジェッティング法は、当分野において公知である。これらの技術各々は、生体細胞をカプセル封入するために有用であると記載されてきた。ジェッティングテクノロジーの一般的概説については、Jayasinghe,S.,(2008)Regen.Med.3:49−61、ならびに米国特許第6,649,384号明細書、米国特許出願公開第2006/0051329号明細書および米国特許第4,353,888号明細書を参照されたい。
【0011】
細胞のカプセル封入についてはさらに、レイヤー・バイ・レイヤー(LbL)技術を使用して記載されてきた。この技術は、コーティングされる表面上および相互への複数の高分子電解質層の吸着を包含する。カチオン性およびアニオン性高分子電解質の連続層が多層構造を形成するために使用される。例えば、Peyratout and Daehne,(2004)Angew.Chem.Int.ed.43:3762−3783を参照されたい。細胞をカプセル封入するためのLbLの適用は、例えばLeung et al.,(2009)J Biomed Mater Res A 88:226−37によって記載されてきた。Leung et al.は、細胞を取り囲むためにアルギネート/ポリ−L−オルニチン膜を使用し、この膜をスルホン酸ポリスチレンおよび塩酸ポリアリルアミンの連続層でコーティングする。カプセル封入細胞は、長期移植片移植のために有用であると指摘されている。
【0012】
単細胞または細胞集塊をカプセル封入するためのマイクロ流体素子の使用を包含する、なおさらなるカプセル封入技術が記載されてきた。例えば、米国特許出願公開第2006/0051329号明細書を参照されたい。
【0013】
スプリット−プール培養技術、または相違する培地中での反復ラウンドの培養に関する他の技術に曝露される細胞を標識するステップは、様々な相違する培地への曝露に依存して、細胞に様々な標識が付着可能かどうかに依存する。これは、特に細胞集団が極めて多数の相違する試薬の組み合わせをサンプリングするために、相違する集団内へ繰り返してプールおよび再分割されるスプリット−プール技術においては、極めて骨の折れる可能性がある。さらに、多数の可能性のある反応条件の組み合わせを通して任意の単細胞の経過を追跡することは極めて困難な可能性がある。
【0014】
綿密に検討すると実層ではなく、コーティングであることが判明する、複数のマイクロカプセル「層」を取り扱っている多数の特許および特許出願が公表されている。これらのコーティングされたカプセル封入は、新規の層を作製するために実際の再カプセル封入によるのではなく、化学的に作り出される。例えば、米国特許第5,620,883号明細書を参照されたい。これらの方法はいずれも細胞標識化に適合するとは提案されていない。
【発明の概要】
【0015】
1つの態様では、本発明は、細胞または細胞群を標識するための方法であって、結果として生じるマイクロカプセルが1つ以上の標識を含むように該細胞をマイクロカプセル封入するステップによる方法を提供する。したがって、生細胞および標識を含むマイクロカプセルが提供される。
【0016】
本マイクロカプセルは、好ましくは細胞の機能消失を伴わずに、生細胞をカプセル封入するために使用できる任意のマイクロカプセルであり得る。例えば、本マイクロカプセルは、例えばマイクロ流体カプセル封入もしくはエレクトロスプレー法によって形成されるアルギネートビーズ、または高分子電解質層を含む多層状マイクロカプセルであり得る。
【0017】
標識は、生細胞を標識するために適切である任意の標識であり得る。以下では、標識の例について記載する。好ましくは、標識は、細胞カプセル封入中に加えられる。有益には、標識は、マイクロカプセル層内に組み込まれる。
【0018】
細胞は、単細胞、または細胞群であり得る。好ましくは、細胞は、細胞単位である。
【0019】
好ましい実施形態では、生細胞および複数の標識を含むマイクロカプセルであって、該細胞は2つ以上のカプセル層内にカプセル封入され、少なくとも1つの標識は前記マイクロカプセル層の2つ以上と結び付いているマイクロカプセルが提供される。
【0020】
この実施形態では、例えば、1つ以上の標識は、各マイクロカプセル層が加えられるときに加えることができるので、該マイクロカプセルを標識する。標識は、マイクロカプセルの材料自体内に組み込むことができる、または該細胞と一緒に該マイクロカプセル内に封入することができる。好ましくは、各標識は、検出可能である。好ましくは、各標識は、同時に検出できるので、複数の標識が記録対象の標識された細胞を標識することを可能にする。
【0021】
また別の態様では、本発明は、細胞単位を標識するための方法であって、
(a)各々が1つ以上の細胞を含む1つ以上の細胞単位を提供するステップと、
(b)前記細胞単位を1つ以上の第1標識と一緒にマイクロカプセル封入するステップ
とを含む方法を提供する。
【0022】
1つの実施形態では、本方法は、
(c)第2標識と一緒に(b)のマイクロカプセル封入するステップを繰り返すステップをさらに含んでいる。
【0023】
ステップ(c)では、ステップ(b)で得られたマイクロカプセルは、それ自体がカプセル封入される。1つ以上の第2標識は、この段階で加えることができるが、標識は、同一または相違することができる。さらに、第2標識および第1標識も、同一または相違することができる。
【0024】
このため、各マイクロカプセルは、特に、1つの標識を含有することができる。この様式で、細胞は各回が相違する標識を組み込むことで多数回にわたり連続的にカプセル封入することができるので、それが曝露されていたカプセル封入事象歴を保持することができる。
【0025】
本発明の方法は、複数の培養条件への細胞の曝露を包含する細胞培養プロトコルに適用された場合に特に有益である。カプセル封入事象が同定された試薬への曝露と関連する場合は、細胞が曝露されていた一連の試薬を決定することができる。
【0026】
このため、1つの態様では、細胞群を複数の標識を用いて標識するための方法であって、
(a)各々が1つ以上の細胞を含む1つ以上の細胞単位を提供するステップと、
(b)前記細胞単位を第1識別標識と一緒にマイクロカプセル封入するステップと、
(c)任意選択的に、該細胞単位を第2識別標識とともにマイクロカプセル封入された1つ以上の細胞単位と混合するステップと、
(d)ステップ(b)を、任意選択的に第3識別標識を用いて繰り返すステップと
を含む方法が提供される。
【0027】
第1、第2および第3識別標識は、同一または相違することができる。好ましくは、それらは、相違するカプセル封入事象が特異的標識と関連するように相違する。
【0028】
細胞単位は、個別に、または群でマイクロカプセル封入することができる。言い換えると、マイクロカプセルは、単一細胞単位、または複数の細胞単位を含有することができる。例えば、マイクロカプセルは、2、3、4、5、6以上の細胞単位を含有することができる。
【0029】
各細胞単位自体をマイクロカプセル封入することができる。したがって、各マイクロカプセルは、その各々が複数の細胞単位を含有することのできる複数のマイクロカプセルを含有することができる。または、各マイクロカプセルは、その各々が単一細胞単位を含む複数のマイクロカプセルを含有することができる。
【0030】
マイクロカプセル内の細胞単位(またはマイクロカプセル)の数の分布は、有益には均質であるが、ある程度の変動が発生し得ることは予測されている。
【0031】
有益には、本発明の方法は、スプリット−プール手順の状況において使用される。そのような手順では、細胞は、最大数の可能性のある条件をサンプリングするために、様々な培養条件に曝露させ、プールされ、分割され、および任意で再プールされることができる。
【0032】
そのような実施形態では、本発明は、複数の培養条件に曝露されていた細胞群を標識するための方法であって:
(a)各々が1つ以上の細胞を含む第1セットの細胞単位群を提供し、前記群を所望の培養条件に曝露させるステップと;
(b)前記細胞単位を1つの識別標識と一緒にマイクロカプセル封入するステップと、
(c)少なくとも1つのプールを形成するために2つ以上の前記群をプールするステップと、
(d)さらなるセットの細胞単位群を作製するために前記プールを再分割するステップと、
(d)前記さらなる群を所望の培養条件に曝露させるステップと、
(e)ステップ(b)〜(d)を繰り返すステップと
を含む方法を提供する。
【0033】
細胞単位は、例えばマイクロスフェアまたは微小孔性マイクロキャリアに付着した単細胞、または細胞群であり得る。
【0034】
マイクロカプセル封入は、ジェッティング手順によって実施することができる。好ましい技術には、バイオエレクトロスプレー・ジェッティング法、空気力学支援バイオジェッティング法および圧力支援セル・ジェッティング法が含まれる。エレクトロスプレー・ジェッティング法は、特に好ましい。代替手順には、高分子電解質のLbL吸着法およびマイクロ流体カプセル封入法が含まれる。
【0035】
本発明は、細胞単位を使用する。そのような単位は単細胞であり得るが、有益には、それらがスプリット−プール手順中にさえ崩壊に対して耐性であるような形態で配列される2つ以上の細胞のコロニーである。例えば、細胞は、以下でより詳細に記載するように、ビーズのような固体基板上で培養することができる。
【0036】
典型的に、使用される細胞単位は、本明細書に記載したジェッティング法によってカプセル封入されるのに十分に小さいマイクロキャリアであるので、そのようなマイクロキャリアもまた細胞単位の任意の事前の崩壊を伴わずに高スループットスクリーニング(HTS)のための細胞の使用を可能にする。
【0037】
標識化は、細胞が曝露されていた培養条件を追跡することを可能にし、したがって、任意の所定の細胞単位は、どのように細胞がスターター細胞プールまたは培養から引き出されていたかを決定するために読み取られる標識を有することができる。標識化は、核酸標識、高周波コード化タグ、マイクロスフェアタグ、バーコード化タグおよびマイクロスフェアタグを含む任意の様々な形態を取ることができる。マイクロスフェアは、特に好ましい。
【0038】
標識は、ウイルス、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛍光化合物、第2級アミン、ハロカーボン、安定同位体の混合物、バーコード、光学タグ、ビーズ、量子ドットおよび高周波コード化タグからなる群から選択することができる。この群から2つ以上の標識、例えば蛍光化合物を含むビーズおよび/または量子ドットを選択し、細胞単位を標識するために組み合わせて使用することさえできる。細胞単位とともに使用できる標識化および特異的標識については、本発明者らの同時係属出願であり、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/023297号の中でさらに考察されている。
【0039】
細胞は、各細胞単位が1つ以上の細胞を含む細胞単位で培養することができる。また別の実施形態では、細胞単位は単細胞である。細胞単位は、固体基板に付着している、または固体基板に結合されている1つ以上の細胞を含むことができる。さらなる実施形態では、固体基板は、マイクロキャリアまたはビーズである。
【0040】
1つの実施形態では、培養条件には、細胞が単離および操作される任意の物理的または化学的溶媒が含まれるが、適切には、反応条件は、細胞が曝露される培養条件である。培養条件には、成長培地、温度管理、基板、大気条件、物理的細胞取り扱いなどが含まれる。成長培地には、基底培地、成長因子、栄養物、バッファー、化学薬品、薬物などを含むがそれらに限定されない、細胞に栄養分を与えて影響を及ぼす天然および合成物質が含まれる。反応条件は、細胞シグナリング経路の潜在的モデュレータのスクリーンを含むことさえできる。
【0041】
第2態様では、本発明は、第1マイクロカプセル内に第1識別標識と一緒にカプセル封入された少なくとも1つの細胞単位を含むマイクロカプセル封入細胞単位であって、前記カプセル封入細胞単位はそれ自体が第2マイクロカプセル内に第2識別標識と一緒にカプセル封入されたマイクロカプセル封入細胞単位に関する。
【0042】
上述したように、各マイクロカプセルは、単一細胞単位、または複数の細胞単位を含むことができる。このため1つの実施形態では、第2マイクロカプセルは、その各々が個別にマイクロカプセル封入されることができる、または他の細胞単位とともにカプセル封入されることができる複数のマイクロカプセル封入細胞単位を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1Aおよび図1Bは、マイクロカプセル内にカプセル封入された2つの相違するマイクロキャリアを示している顕微鏡写真である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、図1に示したマイクロキャリアに類似するが、各マイクロカプセルに2つのマイクロキャリアとともにカプセル封入されたマイクロキャリアを示している顕微鏡写真である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、マイクロカプセル1個に付き3つのマイクロキャリアを示している顕微鏡写真である。
【図4】それ自体が第2マイクロカプセル内にカプセル封入された、第1マイクロカプセル内にカプセル封入されたマイクロキャリアを示している顕微鏡写真である。
【図5】図5Aは、第2マイクロカプセル内にカプセル封入された蛍光マイクロカプセルを示している顕微鏡写真である。図5Bは、さらなるマイクロカプセル内に各々カプセル封入された2つの蛍光マイクロカプセルを示している顕微鏡写真である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、2つのマイクロ流体法によるマイクロカプセルの形成を示す略図である。
【図7】マイクロカプセル内への細胞単位および標識のマイクロカプセル封入の概略図である。
【図8】図8Aは、2つの層状スフェア内にカプセル封入された青色蛍光を発するタグを示している顕微鏡写真である。図8Bは、2つの層状スフェア内にカプセル封入された赤色蛍光を発するタグを示している顕微鏡写真である。図8Cは、2つの層状スフェア内にカプセル封入されたタグを示している顕微鏡写真であり、結合画像が示されている。図8Dは、2つの層状スフェア内にカプセル封入されたタグを示している明視野顕微鏡写真である。赤色蛍光画像は、Cy5.5光学フィルターを使用して記録した(励起=650/45nm、発光=710/50nm)。青色蛍光画像は、DAPI光学フィルターを使用して記録した(励起=360/40nm、発光=460/50nm)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
<用語の定義>
本明細書で使用する用語「培養条件」は、細胞が、前記細胞の成長または分化を促進するために、その中に配置される、または曝露される環境に関する。したがって、この用語は、細胞の成長および/または分化に影響を及ぼすことができる培地、温度、大気条件、基板、攪拌条件などに関する。より詳細には、この用語は、培養培地中に組み込むことのできる、および細胞の成長および/または分化に影響を及ぼすことのできる特異的作用物質に関する。
【0045】
本明細書で言及する「細胞」は、独立して機能することのできる生物の最小構造単位、または全部が半透過性細胞膜もしくは細胞壁によって取り囲まれている1つ以上の核、細胞質、および様々な細胞小器官からなる単細胞生物であると規定されている。細胞は、原核生物、真核生物、動物もしくは植物、または古細菌であり得る。
【0046】
例えば、細胞は、真核細胞であり得る。哺乳動物細胞が好ましく、特にヒト細胞である。細胞は、天然であり得、または所望の特性を達成するために、遺伝子操作または継代培養などによって修飾されることができる。幹細胞については以下でより詳細に規定するが、1つを超える分化された細胞型を生じさせることのできる分化全能性、多能性または多分化能性細胞である。幹細胞は、インビトロで分化されて、それら自体が多能性である可能性がある、または最終的に分化することのできる分化細胞を生じさせることができる。インビトロで分化された細胞は、細胞分化を促進する1つ以上の作用物質へ幹細胞を曝露させることによって人工的に作製されている細胞である。
【0047】
「細胞単位」は、細胞の群であり、1つの細胞の群であり得る。細胞単位の群またはプールは、細胞単位が細胞のコロニーとして挙動し、細胞単位内の各細胞は同一培養条件に曝露されるように、実質的に細胞単位自体を解離させることなく分類、再分割および取り扱うことができる。例えば、細胞単位は、それに細胞群が付着しているビーズ、または例えば島細胞構造もしくは胚様体などの細胞集塊体、または例えば所定の血液細胞などの非接着細胞の集合を含むことができる。
【0048】
細胞単位(または細胞)の「群」は、相互に連結していない複数のそのような単位である。例えば、細胞単位は細胞群ではなく、1つの単一単位に一緒に集団化した1つ以上の細胞である。単細胞、および個別細胞単位は、細胞または細胞単位の群を形成するためにプールすることができる。群は、該群を2つ以上の細胞または細胞単位の群に分けることによって分割することができる。
【0049】
「全能性」細胞は、生物内で見いだされる体細胞または胚細胞のいずれかの型に分化する能力を備える細胞である。したがって、任意の所望の細胞は、何らかの手段によって、全能性細胞から引き出すことができる。
【0050】
「多能性」細胞は、1つを超える、しかし全部ではない細胞型に分化できる細胞である。
【0051】
本明細書で使用する「標識」または「タグ」は、細胞単位を同定するため、および/またはそれに細胞単位が曝露されていた培養条件、または一連の培養条件を決定するための手段である。したがって、標識は、各々が特定培養ステップで加えられる1群の標識;または開始時、またはそれに細胞単位が曝露される培養ステップにしたがって修飾される、または培養ステップ中に追跡される実験で加えられる標識;または単純に、使用された培養ステップを推測することを可能にする位置参照であり得る。標識またはタグは、さらにまたいずれかの1つの時点に細胞単位の場所または同一性を報告もしくは記録する、または該細胞単位に一意の識別子を指定する素子であり得る。標識またはタグの例は、特異な配列、構造または塊の分子;または例えばビーズなどの蛍光分子もしくは物体;または高周波およびその他のトランスポンダー;または特異なマーキングもしくは形状を備える物体である。
【0052】
「識別標識」は、それに付着している細胞単位の性質を決定することを可能にする標識である。これは、様々な培養条件への細胞単位の曝露を記録することを、各曝露時に識別標識を添加し、引き続いて該標識の分析によってデコンボリューションすることによって可能にする。
【0053】
細胞は、細胞が培地と接触して配置される場合に、または、1つ以上の細胞プロセス、例えば細胞の成長、分化、または代謝状態に影響を及ぼす条件下で成長させられる場合に、「培養条件に曝露」される。
【0054】
したがって、培養条件が細胞を培地中において培養することを含む場合は、該細胞は、1つの作用を有するために十分な期間にわたって培地中に配置される。同様に、条件が温度条件である場合は、細胞は、所望の温度で培養される。
【0055】
細胞単位の1つ以上の群の「プーリング」は、1つを超える背景、つまり1つを超える相違するステップの培養条件に曝露されていた細胞単位を含む単一群またはプールを作製するために群の混合物を包含している。プールは、無作為または非無作為のいずれかでさらに群内に再分割することができ、そのような群は、それら自体は本発明の目的には「プール」ではないが、それら自体は、例えば相違するセットの培養条件へ曝露させた後に、組み合わせによってプールすることができる。
【0056】
「細胞成長」および「細胞増殖」は、本明細書では互換的に、相違する細胞型もしくは系統に分化することのない細胞数の繁殖を意味するために使用される。これを言い換えると、これらの用語は、生存細胞数の増加を意味する。好ましくは、増殖には表現型または遺伝子型における感知可能な変化は付随しない。
【0057】
「細胞分化」は、1つの細胞型からの相違する細胞型の発生である。例えば、両能性、多能性または分化全能性細胞は、神経細胞に分化することができる。分化には増殖が付随することができる、または増殖とは関係しなくてもよい。用語「分化」は、一般には発生的にはまだ規定されていない細胞型、例えばニューロン、またはリンパ球からの成熟細胞型の表現型の獲得を意味するが、分化転換を排除しないので、それにより1つの成熟細胞型はまた別の成熟細胞型へ、例えばニューロンからリンパ球へ転換することができる。
【0058】
細胞の「分化状態」は、細胞が特定経路または系統に沿って分化しているレベルである。
【0059】
「マイクロカプセル」は、細胞単位を取り囲む保護バリアである。この用語は、一般には当分野において半透過性または不透過性構造を意味するために使用されるが、本発明の状況においては、マイクロカプセルは半透過性であり、増殖培地および他の試薬の成分の通過を許容するが、細胞単位の同定を可能にするために標識およびタグを保持する。マイクロカプセル封入、またはカプセル封入は、マイクロカプセル内への細胞単位の封入である。
【0060】
マイクロカプセル内の細胞単位、またはマイクロカプセル内のマイクロカプセルの数の分布について言及する場合、「実質的に」は、記載した分布の大多数が表示したパラメータを付与することを意味するために使用される;したがって、実質的に各マイクロカプセルが単一細胞単位を含有する場合は、得られたマイクロカプセルの大多数が単一細胞単位を含むと予想される。一部のものは、2、3以上を含む可能性があるが、しかし、これらは比較的まれである。細胞単位が封入されていないマイクロカプセルは、この分布の一部であるとは見なされない。用語「複数」は、1つを超えること意味する。標識の状況では、複数は、複数のカプセル封入細胞単位を1回のカプセル封入当たり少なくとも1つの標識で標識できるように、各カプセル封入が少なくとももう1つの標識が加えられる事実を記載している。マイクロカプセル内の細胞単位の状況では、2、3、4、5、6個以上の細胞単位を単一マイクロカプセル内に含むことができる。
【0061】
カプセル封入
カプセル封入は、任意の適切な技術を使用して実施することができる。マイクロカプセル技術は、例えば、特にエマルジョンマイクロカプセル封入技術について記載しているが、さらにまた少なくともそれらのうちの一部が生細胞をカプセル封入するために適切な他のマイクロカプセル封入方法についても規定している米国特許第6,808,882号明細書および同第7,138,233号明細書に記載されている。
【0062】
生細胞をカプセル封入するための特定方法は、移植細胞の免疫保護のために記載されている。例えば、Orive et al.,(2203)Nature Medicine 9:104−107、およびその中に言及された参考文献を参照されたい。
【0063】
生細胞をカプセル封入するために適切な1つの方法は、高分子電解質層のレイヤー・バイ・レイヤー(LbL)添加である。そのような方法では、細胞は最初に例えばアルギネートビーズなどのマイクロカプセル内にカプセル封入され、引き続いて交互に帯電した高分子電解質の層が加えられる。標識は、層内に包埋することができる、または層自体を標識化することができる。
【0064】
高分子電解質には、例えば、スルホン酸ポリスチレン、ポリアリルアミン、ポリ塩化ジアリルメチルアンモニウム、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸およびナフィオン(Nafion)が含まれる。
【0065】
高分子電解質の層は、コーティングされる細胞または他の表面を、前記表面上に飽和層を形成するために十分な濃度にある高分子電解質の溶液中に懸濁させることによって加えられる。過剰の高分子電解質が使用される場合は、溶液中での錯体形成を回避するためにその後の高分子電解質を加える前に除去されなければならない。
【0066】
高分子電解質が完全層を形成するために必要とされる濃度で連続的に加えられると、所望のマイクロカプセルを迅速に形成することができるが、それは高分子電解質が数分以内に吸着され、洗浄サイクルが必要とされないためである。しかし、溶液および細胞集塊体中での遊離高分子電解質錯体を形成する危険性が増加する。この危険性は、高度に希釈された細胞懸濁液を使用することによって、または細胞を十分にコーティングするために必要とされる高分子電解質の正確な量を精密に決定することによって低下させることができる。
【0067】
このため、1つの実施形態では、細胞に過剰の高分子電解質が加えられる。各高分子電解質層の吸着後、過剰の高分子電解質は、細胞に逆帯電した高分子電解質を加える前に溶液から除去される。この過剰は、例えばPBSを用いて、少なくとも3回の洗浄サイクルを実施することによって除去される。溶液からの細胞の分離は、遠心分離によって、または好ましくは濾過によって実施することができ、粒子は過剰の高分子電解質から細胞物質を保持するように設計された目の粗いフィルターに通して濾過される。
【0068】
1つの実施形態では、高分子電解質であるアルギネートおよびポリ−L−リジンを使用できる。アルギネートおよびPLLは各々負および正に帯電している。細胞をカプセル封入するために有用な他の高分子電解質には、スルホン酸ポリスチレンおよびポリアリルアミン塩酸塩が含まれる。例えば、Peyratout and Daehne,(2004)Angew.Chem.Int.ed.43:3762−3783の表2、ならびにLeung et al.,(2009)J Biomed Mater Res A 88:226−37を参照されたい。標識またはタグもまた帯電させることができる;例えば、負に帯電した標識は、正に帯電した高分子電解質とともに使用できる。
【0069】
1つの実施形態では、細胞は、本明細書に記載したように、または当分野において報告されているようにアルギネートを用いてコーティングし、引き続いて洗浄し、そして帯電標識を含む溶液中に懸濁させることができる。アルギネートは負に帯電しているので、正に帯電した標識はアルギネートと結び付くことになる。
【0070】
または、もしくは加えて、細胞は正に帯電した高分子電解質、例えばそれ自体を標識化できるポリ−L−リジン(PLL)を含む溶液中に懸濁させることができる、または例えばアルギネートもしくはPLLと各々結び付く正または負に帯電した標識と一緒にPLLなどの高分子電解質の溶液中に懸濁させることができる。懸濁時間の変更は、層の厚さに影響を及ぼす;1分間から1時間までの時間が考えられるが、0.05〜0.1重量%のPLLを使用して、5〜10分間の時間がより一般的である。
【0071】
結果として生じるビーズは、例えばPBS中で洗浄し、次に、任意で標識化されているアルギネート中に懸濁させる。さらに、典型的に、5〜10分間にわたり0.05〜0.1重量%の溶液が使用される。
【0072】
カプセル封入後、ビーズを洗浄し、次に必要に応じてさらなるコーティングを加えるために再懸濁させる。
【0073】
1つの実施形態では、高分子電解質層自体が検出可能な可能性がある。例えば、蛍光またはカラーコード化された高分子電解質を使用できる。Strand et al.,Biotechnol Bioeng(2003)82:386−94を参照されたい。
【0074】
さらなる実施形態では、カプセル封入は、マイクロ流体制御下で実施することができる。マイクロ流体システム内での細胞を含有する液滴の形成は広範に証明されていて、高スループットの液滴ベースアッセイ(J.Clausell−Tormos,et al.,Chemistry and Biology,2008,15,5,427)および細胞選別(J−C.Baret,et al.,Lab Chip,2009,9,1850)のために使用されてきた。これらの実施例では、細胞は油相によって分離された水滴内にカプセル封入される。水滴は、界面活性剤層によって安定化される。
【0075】
さらに、ヒドロゲルカプセル封入細胞の形成についても、数種の方法を使用して証明されてきた。これらには、アルギネート/細胞水滴および油相内のCaCl含有水滴の両方の形成が含まれる。2つのタイプの液滴が一緒に融合すると、細胞含有架橋ヒドロゲルビーズが、本明細書の図6Aに複製したH.Shintaku,et al.,Microsystems Technology,2007,13,951の図1に示されたように形成される。以下では、この方法についてより十分に記載する。
【0076】
このプロセスには、図6Aに示したように、2つの段階(液滴形成、およびヒドロゲルを形成するための液滴の合体)が存在する。液滴形成のためには、最初に細胞を含有するアルギン酸ナトリウム溶液の液滴が、マイクロチャネル内の油に水相を導入することによって使用されるマイクロチャネルの上流に位置するノズルから形成される。アルギネート液滴は、連続液相の流れにしたがって主チャネル内を下流に流れる。第2に、アルギネート液滴は、下流に位置する第2ノズルから形成される塩化カルシウム溶液の液滴と融合する。
【0077】
直径が300μmより小さいヒドロゲルビーズを生成するために、チャネル深さは好ましくは約50μmであり、ノズルおよび主チャネルのために好ましい直径は各々50μmおよび200μmである。
【0078】
アルギン酸ナトリウム溶液は、好ましくは1.5重量%の濃度で使用され、細胞はアルギネート中に10cells/mLの濃度で分散させられる。塩化カルシウムは、好ましくは0.1Mの濃度で提供される。例えばヒマワリ油などの植物油を油相として使用できる。
【0079】
第2プロトコルは、Workman,et al.,Macromolecular Rapid Communications,2008,29,165によって記載されてきた。この方法では、シールド接合部がアルギネートマイクロスフェアを生成するために使用される(例えば、本明細書に図6Bとして複製したWorkman et al.における図1を参照されたい)。CaCOおよび細胞と混合したアルギン酸ナトリウム水溶液が中央チャネル内に導入される。酢酸と混合したヒマワリ油は最も外側のチャネル(A)に供給される。ヒマワリ油は、アルギネート溶液が酸化油流と接触することを防止するシールドとして機能するために中間チャネル(B)に供給される。チャネルBとAとの間には、2つの油が層状法で流動し、保護的ヒマワリ油内へのHの最小の拡散が生じる。接合部で液滴が形成された後、Hはアルギネート液滴内に拡散し、そしてCa2+をCaCOから遊離させ、これはアルギネートのゲル化を誘発する。接合部前のチャネルは、好ましくは約500μm、接合部後のチャネルは好ましくは約1,000μmの断面積を有する。
【0080】
カプセル封入は、さらにジェッティングカプセル封入技術を使用して実施することができる。多数のそのような技術は、当分野において公知である;好ましいのは、バイオエレクトロスプレー・ジェッティング法、空気力学支援バイオジェッティング法および圧力支援セル・ジェッティング法である。
【0081】
エレクトロスプレー法は、バイオエレクトロスプレー法またはエレクトロハイドロダイナミック・ジェッティング法としても公知であり、規定サイズの液滴を生成するためにスプレーノズルもしくはニードルと接地電極との間の電位差に依存している。
【0082】
培地は、ニードルから出た培地がその中を通過させられる外部電場を樹立している電極より高い電位で保持される導電性ニードルを通過させられる。ニードルは中空であり、0.2〜2mmの内径、および平坦または面取りをした縁形状のいずれかを有する。ニードルは、相違する流体を同一ニードルから同時に噴霧できるように、同軸であり得る。液滴の形成は、ニードルと電極との電位差(電圧における差)、培地の流量および例えば粘度、表面張力、導電性および比誘電率などの相対的特徴によって決定される。電圧および間隔は、電場が両方の変量に依存するので関連している。通常、カプセル封入はおよそ5〜10kVの電圧を用いて1または2cmの間隔で実施される。ジェットが安定性であれば、ほぼ単一分布の液滴サイズを達成できる。生細胞は、この技術を用いてカプセル封入することができる(Jayasinghe et al.,(2006)Small 2,216−219;および(2006)Biotechnol.J.1:86−94)。初期の実験は幅広い分散の液滴サイズを伴う不安定なジェットを生じさせたが、これはアウタージェット内で噴霧されるマイクロカプセル封入材料およびインナージェットでは生体材料を備える安定性ジェッティング(Jayasinghe et al.,(2006)Lab Chip 6:1086−1090)を作り出すために同軸ジェッティングニードルを使用して改善された。
【0083】
空気力学支援ジェッティング法は、圧力勾配に依存している。圧力は、ジェットを作り出すための引込み効果を提供する周囲大気に対してチャンバ内で作り出される。生細胞は、この方法でカプセル封入することができる(Arumuganathar et al.,(2007)Biomed.Mat 2:158−168)。
【0084】
圧力支援ジェッティング法は、1つの開口部が培地をジェット噴出するために使用され、第2の開口部は適用される圧力のための導管として機能する、同軸ニードルを使用する。空気力学支援ジェッティング法とは相違して、加圧チャンバは存在しない。
【0085】
ジェッティングテクノロジーの一般的概説については、Jayasinghe,S.,(2008)Regen.Med.3:49−61、ならびに米国特許第6,649,384号明細書、米国特許出願公開第2006/0051329号および米国特許第4,353,888号明細書を参照されたい。
【0086】
カプセル封入される細胞は、裸の個別細胞であり得る、または例えば本明細書に記載したような、スフェアもしくは多孔質マイクロキャリアなどのマイクロキャリア内に組み込むことができる。
【0087】
カプセル封入のための細胞単位を調製するために、1つの実施形態では、個別細胞であり得る細胞単位はPBSなどの適切な水性バッファー中で洗浄され、カプセル封入ポリマーを含むバッファー中で沈降させて再懸濁させられる。
【0088】
カプセル封入材料は、任意の適切なポリマー材料であり得る。最初のカプセル封入技術は、カプセル封入材料としてポリ−ジメチルシロキサンを使用した。好ましいのはヒドロゲル、特にアルギネートである。ポリマーは、所望の特性を有する膜を形成するために容易に固化することができなければならず、生理的pHで水または食塩液中で不溶性でなければならない。所望の特性には、インビボでの栄養分透過性が含まれ、典型的に該ポリマーがある程度の極性を有することを必要とする。ポリマー膜は、典型的に20〜90%の水を平衡状態で含有することができる。ポリマーは、溶液中の細胞にとって非毒性でなければならない。適切なポリマーの例には、ポリアクリレートおよびアクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸およびそのエステル、セルロース系ポリマー、アクリルアミドを含有するコポリマー、N−ビニルピロリドン、スルホン酸スチレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、アリルアルコールなどが含まれる。適切なポリマーは、少量の第4級アンモニウム基を備える、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマーである。さらに、米国特許第6,281,241号明細書;およびDesai,2002 Exp.Opin.Biol.Ther.2:633−646を参照されたい。一般に、当分野において公知であるような免疫保護目的で細胞をカプセル封入するために有用なポリマーは、本発明において有用である。例えば、Orive et al.,(2003)Nature Medicine 9:104−107、およびその中に言及された参考文献を参照されたい。
【0089】
カプセル封入ポリマーは、好ましくはカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンが欠如するPBSバッファーである(これはカプセル封入ポリマーの早期の凝固を防止する)。
【0090】
典型的に、バッファーは、1〜5重量%のアルギネートを含んでいる。マイクロキャリアをベースとする1gの細胞単位をカプセル封入するためには、PBS中のおよそ20mLの3%アルギネート溶液が必要とされる。
【0091】
標識またはタグは、カプセル封入ポリマー溶液へ、またはPBSからの沈降の前または後に細胞単位へ加えることができる。
【0092】
ポリマーのためのゲル化剤は、以下の3つの様式の中の1つで導入することができる:(1)第2液滴集団が生成され、細胞カプセルと融合するように誘導される;(2)細胞液滴は、油相と平行して確立された重合剤を含有する水相流内へ抽出される;または(3)ゲル化剤は、油相内に直接的に溶解される。
【0093】
好ましくは、Ca2+、Sr2+またはBa2+イオンがアルギネートを凝固するために使用される。CaCl、または各SrもしくはBa化合物は、10mM〜1Mの濃度で水中に溶解される。Ca、SrおよびBaの組み合わせは、最適ビーズ特性を達成するために1つの成分が1mMという少量で使用できる。この溶液は、好ましくは、エレクトロスプレー装置の電極に配置されている収集容器内に保持される。アルギネート溶液中に懸濁された細胞単位は、液滴が凝固液またはゲル化液を保持する容器内に収集されるように、スプレー装置を通過させられる。カプセル封入されたビーズは、スプレー後に容器の底部から回収することができる。
【0094】
再カプセル封入のために、細胞単位は、本手順の開始時に既にカプセル封入される。カプセル封入された細胞単位は、有益にはPBS中で洗浄され、沈降される。好ましくは約2重量%の濃度で、上述したように調製した5mLのアルギネート溶液は、上述したように液体を除去した各1mL量の細胞単位に対して使用する。標識またはタグもまた加えることができる。これらの単位はゲル化剤を含有する容器内にジェット噴出し、再カプセル封入した単位を容器の底部で収集する。有益には、生体材料の増加したサイズを補償するために、わずかに大きな直径、例えば0.9mmのニードルを使用する。一部の実施形態では、一次カプセル封入手順におけるものより高い流量および低い電界強度を使用できる。
【0095】
代替構成では、同軸スプレーニードルを使用することができ、インナーニードル内に細胞懸濁液をジェット噴出し、アウターニードル内でポリマー溶液をカプセル封入する。この配置は、生細胞をカプセル封入するためにより安定性のジェッティング法を達成できることが証明されている(Jayasinghe & Townsend−Nicholson,(2006)Lab Chip 6:1086−1090)。
【0096】
<タグまたは標識>
上述したように、タグは標識として使用できる。先行技術の方法では、タグは、マイクロキャリアまたは細胞単位とコンジュゲートされていて、このアプローチは本発明による入れ子式カプセル封入の最初に適用することができ、この場合にはタグは細胞単位と直接接触させることができる。しかしその後のカプセル封入では、タグは細胞単位内のマイクロキャリアとは接触していないので、それらと錯体を形成しない。
【0097】
様々な分子または高分子タグを使用できる。タグは、典型的に独特の形状の物体、またはマーキングおよび/または着色および/または蛍光化合物を用いて修飾された物体を含んでいる。
【0098】
1つの実施形態では、タグは、以下の性質の1つ以上(好ましくは全部)を有する。
i.それらは、それらが標識化する細胞単位と比較してサイズが小さい。
ii.それらはタグの固有の性質を混乱させない条件下で細胞単位から分離可能である。このとき、タグは細胞単位と直接接触しておらず、例えばそれらが外側マイクロカプセル層内にある場合は、この特徴はより広範囲のタグの化学的性質によってより容易に達成できる。
iii.それらは細胞単位の生物学的性質に実質的には影響を及ぼさない、そして順に細胞単位またはそれらの生物学的性質によって影響を受けない1つ以上の不活性物質から作製される。さらに、これは外側マイクロカプセル層内のより広範囲のタグを用いるとより容易に達成できる可能性がある。
iv.それらは多数入手でき、かつ、さらに関連し、しかし適切な技術を用いて容易に識別可能な別個の多数の変種として入手できる。
v.それらは、便宜的で高度に信頼性の、そして例えばFACSによって自動化できる方法によって識別可能である。
【0099】
1つの実施形態では、タグは、マイクロスフェア、例えば蛍光および/または着色マイクロスフェアである。2,000種を超える、エマルジョンもしくは懸濁重合、沈降などによって作製される、そしてポリスチレン、他のポリマー、コポリマー、ターポリマーおよび/またはシリカなどから構成されるマイクロスフェアを入手できる。マイクロスフェアは、例えばBangs Laboratories社(米国インディアナ州フィッシャーズ)によって様々なサイズ、密度、色などで製造される。
【0100】
一般的タイプのマイクロスフェアは、ポリスチレン(PS)およびスチレン/ジビニルベンゼンコポリマー(S/DVB)マイクロスフェアである。他のポリマーには、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエン(PVT)、スチレン/ブタジエン(S/B)コポリマー、およびスチレン/ビニルトルエン(S/VT)コポリマーが含まれる。適切には、マイクロスフェアは、親水性マイクロスフェアである。より適切には、マイクロスフェアは、ポリスチレンマイクロスフェアである。最も適切には、マイクロスフェアは、表面改質マイクロスフェア、例えばカルボキシレート改質マイクロスフェアである。
【0101】
これらのマイクロスフェアの多数は、例えばCMLマイクロスフェアにおけるようなカルボキシル基によって、または第1級、第2級、第3級および第4級脂肪族アミン、芳香族アミン、およびピリジンのような、COOHビーズへ交互カップリング反応を提供するアミノ官能化もしくは窒素含有化合物によって官能化することができる。
【0102】
CMLマイクロスフェアは、共重合プロセスから引き出される高度に帯電したカルボキシル基の表面層を有する。この表面はある程度多孔性で相当に親水性であるが、全面的に疎水性の特性を保持する。これらの粒子の電荷密度は1カルボキシル基当たり約10〜125Åの範囲におよび、それらは高濃度の電解質に対して安定性である(−1Mまでの一価塩)。CMLラテックスは、タンパク質および他の生体分子を吸着するが、その強度は疎水性マイクロスフェアよりはるかに低い。
【0103】
一部の実施形態では、マイクロスフェアおよびタンパク質、例えばストレプトアビジンのコンジュゲートが調製される。
【0104】
例えば、CMLマイクロスフェアとのコンジュゲートは、以下のとおりに調製できる。CMLマイクロスフェアは、カルボキシル基をカップリングされるタンパク質上の第1級アミンと反応性にさせる水溶性カルボジイミド試薬を使用して活性化することができる。50mM反応バッファーは、pH6.0で調製される。酢酸ナトリウムまたは2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)は、適切なバッファーである。このタンパク質は、10mg/mLの濃度で反応バッファー中に溶解させられる。マイクロスフェアの1(w/v)%懸濁液を反応バッファー中で調製する。1容積のタンパク質溶液対10容積のマイクロスフェア懸濁液を調製し、この混合液を20分間にわたり室温でインキュベートさせる。脱イオン水中の10mg/mL(52μMol/mL)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)溶液を調製し、直ちに使用する。計算量のEDAC溶液をマイクロスフェア懸濁液に加え、反応混合液のpHは0.1NのNaOHを用いて6.5±0.2へ調整する。この混合液は、室温で2時間にわたりロッカーまたは混合ホイール上でインキュベートする。未結合タンパク質を除去し、保存バッファー中に保存する。
【0105】
有益には、CMLおよび他のマイクロスフェアは、様々なフォーマット、例えば様々な色(例えば、青色、赤色、緑色、黄色、黒色)、様々なフルオロフォア(例えば、フルオレセイン(緑色)、フルオレセイン(赤色)またはフルオレセインおよびローダミン(赤色および緑色)ならびに様々なサイズ(例えば、5.4μm(1.14×1010個(ビーズ)/g)、および7.6μm(4.10×10個(ビーズ)/g)で得ることができる。
【0106】
CMLおよびその他のマイクロスフェアは、それらに1つ以上の可視色素および/またはフルオロフォアを負荷できるように調製することができる。
【0107】
一部の実施形態では、マイクロスフェアなどのタグは、タンパク質でコーティングされない。作製プロセスにおける様々なパラメータを変化させることによって、商業的マイクロスフェア供給業者、例えばBangs Laboratories社は、相違するサイズに基づいて識別できるビーズセット(例えば、直径4.4μmおよび5.5μmのビーズセット)を製造することができる。さらに、各サイズ群内のビーズは、単一蛍光色素を用いた示差的負荷のおかげで相違する蛍光強度に基づいて相互から識別することができる。本明細書に記載したマイクロキャリアに付着させることができる、相違する吸光または発光特性を備える多数の相違する色素を使用することが可能である。したがって、タグ多様性は、様々なタグサイズおよび/またはフルオロフォア負荷(蛍光体強度)および/またはフルオロフォア同一性/組み合わせを変化させる結果として生じる可能性がある。特に、タグ多様性は、それらが有するフルオロフォアのタイプ(例えば、ビーズにはUV2 5またはStarfire Redのどちらかを付加することができる);サイズ(例えば、各フルオロフォアに対して5種のビーズサイズ:1.87、4.41、5.78、5.37および9.77ミクロン)および/またはそれらが有するフルオロフォアの量(各色素の5種の強度を利用できる)から生じる可能性がある。その他のフルオロフォア、例えばTRITCを使用できる。
【0108】
次に、任意の所定のビーズ上の少なくとも4種の色素を検出するために、例えばNikon社からのTRITC可視化のためのTRITCフィルター(ex 540/25;dm 565;ba 605/55);Nikon社からのUV2可視化のためのDAPIフィルター(ex 340〜380;dm 400;ba 435〜485);Nikon社からのFITC可視化のためのGFP−Bフィルター(ex 460〜500;dm 505;ba 510〜560)およびStrarfire Red可視化のためのCy5フィルターセット(製品番号4t008:Chroma Technology社)を使用できる。
【0109】
マイクロスフェアは、可視または蛍光色素を用いて内部的または外部的に染色することができる。内部染色は、色素がマイクロスフェア塊内に、典型的に該マイクロスフェアを色素またはフルオロフォアを含有する溶液中に浸漬することによって統合されると発生する。外部修飾は、色素がマイクロスフェアの表面にコンジュゲート化された場合、例えば本明細書に記載したようにCMLマイクロスフェアがイソチオシアネート誘導体により修飾された場合に発生する。
【0110】
したがって、一部の実施形態では、マイクロスフェアは、可視または蛍光色素を用いて、内部的または外部的に染色することができる。
【0111】
さらに、便宜的に読み取ることのできる極めて多数の相違する蛍光標識を得るために「量子ドット」を使用することが可能である。したがって本発明のまた別の実施形態では、量子ドットはフルオロフォアの代わりに使用される。所定の実施形態では、量子ドットは、それらが光線に曝露されたときにフェーディング(光退色)しないという事実のために好ましい。例えば、フルオロフォアFITCは光退色することが公知であり、FITCを含有するタグを用いて処置された細胞単位は、理想的には暗所で取り扱われ、確実に分析するのは困難である。量子ドットは、ポリスチレンを重合させる時点にマイクロスフェア内に組み込むことができ、結果として均一なタグの負荷が生じる。量子ドットは多数の色で入手することができ、それらは同一波長で励起することができるので、カラーCCDカメラを使用することによって、フィルターを使用せずに多数の色の可視化が可能になる。量子ドットに関するさらなる背景情報は、米国特許第6,322,901号明細書、同第6,576,291号明細書、米国特許出願公開第2003/0017264号明細書、米国特許第6,423,551号明細書、同第6,251,303号明細書、同第6,319,426号明細書、同第6,426,513号明細書、同第6,444,143号明細書、米国特許出願公開第2002/0045045号明細書、米国特許第5,990,479号明細書、同第6,207,392号明細書、同第6,251,303号明細書、同第6,319,426号明細書、同第6,426,513号明細書および同第6,444,143号明細書から得ることができる。タグの検出は、当業者であれば習熟している様々な方法によって遂行できる。方法には、質量分析法、核磁気共鳴法、シーケンシング法、ハイブリダイゼーション法、抗原検出法、電気泳動法、分光法、顕微鏡検査法、画像分析法、蛍光検出法などが含まれる。一部の実施形態では、タグは典型的に色またはフルオロフォアを含有するので、顕微鏡検査、分光法、画像分析および/または蛍光検出が使用される。
【0112】
タグの検出はインサイチューで、つまりカプセル封入された細胞の構造を混乱させることなく実施できる、またはカプセルからタグを単離した後に実施することができる。
【0113】
インサイチューでタグを検出する利点は、組み合わせタグ付け戦略を利用することが可能であることにある。例えば、タグA、BおよびCを使用した場合は、タグA、BおよびCだけを含有する層に加えて、固有のタグの組み合わせAB、ACおよびBCを含有する相違するカプセル封入層を作製することも可能になる。1つの実施形態では、層はさらに第2の容易に検出される差別因子、例えば、相違する層を判別することを追加して可能にする色素を含有している。
【0114】
1つの実施形態では、タグのカプセル封入は、空間的にコードされたポリマーマトリックスを生じさせることができる;例えば、米国特許出願公開第20060127369号明細書を参照されたい。
【0115】
混合物中の所定の細胞単位の同一性を決定するため、または混合物中に含まれる相違する細胞単位の同一性を推測するために、複数の変形のタグ付け戦略を考案することができる。例えば、相違する形状の物体、図形的にコードされた物体または相違する色がサンプルの同一性を示すタグ付けの光学または視覚的方法が記載されている(例えば、Guiles et al,1998,Angew.Chem.Intl Ed Engl,vol.37,p926;Luminex Corp,Austin TX,USA;BCPbiosciences;Memobead Technologies,Ghent,Belgiumを参照されたい)。
【0116】
さらなる実施形態では、タグは、棒状の粒子である。適切には、棒状のタグは、ナノワイヤである。ナノワイヤは、例えばアルミニウムなどの様々な金属を含む、様々な金属からなる、様々な金属から本質的になる可能性がある。ナノワイヤは、例えば銀および/または金などの様々な金属でコーティングすることができる。適切には、ナノワイヤは、直径が約1μM以下および/または長さが約10μM以下である。
【0117】
ナノワイヤは、Science,vol 294,p.137−141(2001)に記載されたナノワイヤであり得る。手短には、ナノワイヤは、サブマイクロメータのストライプで本質的にコードされる多金属マイクロロッドである。複雑なパターンは、均一なサイズの孔を備えるテンプレート上に金属イオンの連続的電気化学的蒸着によって生成することができる。有益には、ナノワイヤは、各分割後に加えることができるタグとして使用するのに十分小さい。
【0118】
ナノワイヤなどの棒状の粒子についてのパラメータには、サイズ、光学特性および/または金属組成が含まれるがそれらに限定されない。1つの実施形態では、光学特性は:光反射性、例えば特定波長の光反射性、色、蛍光発光波長および蛍光発光強度からなる群から選択される。
【0119】
一部の実施形態では、ナノワイヤなどの棒状の粒子は、外部的に染色される。
【0120】
棒状タグは、球状タグに比して好ましい可能性があるが、それはより高い表面積対容積比がマイクロカプセル層内での優れた保持を生じさせるからである。したがって、ナノワイヤの結合は、例えばマイクロスフェアタグの結合より良好である可能性があり、高レベルのタグ付けを生じさせる。
【0121】
一部の実施形態のためには、タグはDNAタグではない。
【0122】
一部の実施形態では、タグは外部から染色されたタグである。
【0123】
さらなる実施形態では、タグは、REIDタグにおけるように、情報を伝達するために電波を使用する。RFIDは、一般にトランスポンダー(RFタグ)、アンテナおよびリーダーを使用する。RFタグは、通常はガラスまたはプラスチック内に包み込まれた小型電子回路であり、その最も単純な形状では、適切な電子機器によって、接触または透視線を使用せずに「読み取る」ことができる固有の識別コードへのアクセスを提供する。タグは、接触または透視線を使用せずに、使用者が生成する情報もまた蓄積することができる。「リーダー」は、1つ以上のタグ(用語「リーダー」は、リードオンリーおよびリード/ライト装置両方を意味するために互換的に使用されることに留意されたい)へ、および1つ以上のタグから情報を伝達する電子装置である。リーダーのサイズおよび機能は相当に様々である可能性があり、分離して機能できる、または遠隔コンピュータシステムに接続することができる。アンテナは、リーダーからタグへ情報を伝達するために、およびRFタグによって送信される情報を受信するために使用される。アンテナのサイズおよびフォーマットは特定の用途を反映し、小さな円形コイルから大きな平面構造までの範囲に及ぶことができる。RFIDシステムは、分離して機能できる、またはタグから引き出される識別および関連するデータのより包括的な解釈および操作のために遠隔コンピュータに接続することができる。1つのRFID戦略は、Nicolaou et al(1995,Angew Chem Intl Ed Engl,vol.34,p.2289)に記載されていて:(i)合成基板および半導体タグを含有する多孔質エンクロージャ;(ii)固相合成樹脂;(iii)高周波シグナルを受信、蓄積および発信することのできるガラスケースで覆われた単一または複数アドレス可能高周波タグ半導体装置を含んでいる。類似のデバイスは、固相合成樹脂を組織培養マイクロキャリアまたは適切な細胞単位と単純に置換することによって細胞単位を成長および追跡するために適応させることができる。その上で細胞が直接成長させられる(コーティングされた、またはコーティングされていない)RFタグ、または細胞単位もしくは生物内に植え込まれたRFタグを含むがそれらに限定されないこれのより多くの変形を想定することができる。
【0124】
<標識されたマイクロカプセル壁>
代替の、もしくは補完的な標識戦略では、標識はそれからマイクロカプセルの壁が構築される材料内に組み込むことができる。例えば、蛍光標識ポリマーは、細胞をコーティングするために使用できる。ポリマーがアルギネートである場合、例えば、フルオレシナミン(fluorescinamine)(C2013NO)などの標識は、アルギネート上のカルボキシル基を曝露させることによってアルギネートと反応させることができる。ポリ−L−リジン(PLL)は、Molecular Probes社(オランダ国ライデン)からのAlexa(登録商標)546タンパク質標識キットなどの市販のタンパク質標識試薬を使用して標識することができる。例えば、Strand et al.,Biotechnol Bioeng(2003)82:386−94を参照されたい。
【0125】
蛍光色素を使用すると、例えばLbLカプセル封入において使用されるような高分子電解質を標識することができる。例えば、ポリアリルアミン(PAH)を標識するためにフルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートおよびCY5の誘導体が使用される、米国特許出願公開第2006/0105335号明細書を参照されたい。一般に、高分子電解質は、標識タンパク質についての一般的プロトコルにしたがって標識される。
【0126】
<マイクロキャリア>
形状およびサイズに及ぶ、そして様々な材料から作製される様々なマイクロキャリアが使用可能である。マイクロキャリアは、多孔性、マクロ多孔性、微孔性または固体であり得る。例えば、マイクロキャリアは、Cultispherマイクロキャリア、Cultispher−Gマイクロキャリア、Cultispher−GLマイクロキャリア、Cultispher−Sマイクロキャリア、Informatrixマイクロキャリア、マイクロスフェア・マイクロキャリア、シラン・マイクロキャリア、FibraCel(登録商標)Disksマイクロキャリア、Cytolineマイクロキャリア(例えば、Cytoline1マイクロキャリアもしくはCytoline2マイクロキャリア)、Cytodexマイクロキャリア(例えば、Cytodex1、Cytodex2もしくはCytodex3マイクロキャリア)、Cytoporeマイクロキャリア(例えば、Cytopore1マイクロキャリアもしくはCytopore2マイクロキャリア)、Biosilonマイクロキャリア、Bioglassマイクロキャリア、FACT IIIマイクロキャリア、コラーゲンCマイクロキャリア、HillexIIマイクロキャリア、ProNectinFマイクロキャリア、Plasticeマイクロキャリア、Plastic Plusマイクロキャリア、Nunc 2D MicroHex(商標)マイクロキャリア、ガラスマイクロキャリア(Sigma Aldrich社)、DE 52/53マイクロキャリアまたはそれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロキャリアであり得る。
【0127】
<細胞および細胞単位>
細胞の細胞単位内への組み込みは、様々な条件下の細胞培養中での細胞群(細胞コロニー)の成長を促進する実体の形成、ならびに混乱させられた場合や他のコロニーと混合された場合に、様々な条件下での細胞群の完全性の保持をもたらす。そのような群またはコロニーを本明細書では細胞単位と称する。細胞単位の形成は、例えば、担体などの固体基板上の付着培養として細胞を成長させることによって達成できる。細胞増殖が担体上での播種後に発生する場合は、娘細胞は同一担体上で付着し、同一コロニーの一部を形成する。一般に、付着性生細胞はそれらの成長基板から容易には解離しないので、細胞コロニーの完全性は担体の任意の機械的操作、培養培地の攪拌、またはまた別の組織培養系内への移動にもかかわらず存続する。同様に、常に複数担体が同一容器内に配置される(例えば、ビーズがプールされる)場合は、1つのビーズから他のビーズへの細胞の実質的移動は発生しない。
【0128】
細胞単位が固体基板上で形成されると、該基板、したがって連関のために付着した細胞は、本明細書に記載したように標識することができる。細胞が成長したより小さな担体は、懸濁培養として処置することができる。小さな担体上で細胞を成長させる一般的方法は、マイクロキャリア細胞培養と呼ばれる(全体として参照により本明細書に組み込まれる「Microcarrier cell culture」,Principles and Methods’,Edition AA,available from Amersham Biosciences(18−1140−62)を参照されたい)。マイクロキャリア培養は、4,000リットルまでの発酵槽内での抗体およびインターフェロン生成のために商業的に使用される。
【0129】
細胞単位をカプセル封入する利点は、これが1つの単位から他の単位への細胞(またはタグ)の何らかの移動を有意に減少させることにある。
【0130】
担体の物理的特性は周知であるので、実験において使用される担体数を計算することは容易である。担体は、正確に計量でき、引き続いて液体培地中で膨潤させることによって調製できる乾燥製品として入手できる。さらに、マイクロキャリア培養に植菌するために使用される細胞数を算出し、変化させることができる。
【0131】
本明細書に記載したマイクロキャリア上で成長させた細胞の採取、または必要な場合にマイクロキャリアからの標識の分離は、細胞の酵素的剥離によって、および/または本明細書に記載したように適合する場合は担体の消化によって達成できる。
【0132】
一部の実施形態では、タグは、ポリスチレンを含む、ポリスチレンからなる、またはポリスチレンから本質的になる、マイクロスフェアなどのスフェアである。
【0133】
細胞は、多能性または分化全能性のいずれであっても、分化細胞、前駆細胞または幹細胞を含む任意の細胞であり得る。1つの実施形態では、ヒト胚幹細胞は除外される。カプセル封入できる細胞のタイプは、その各々が参照して本明細書に組み込まれる国際公開第2004/031369号、同第2007/063316号および同第2007/023297号に記載されている。
【0134】
<キット>
さらに、本発明は、細胞カプセル封入のためのキットに関する。そのようなキットは、少なくともアルギン酸ナトリウム、1つ以上のマイクロキャリアおよび1つ以上の検出可能なタグを含んでいる。アルギネートは、固体または溶液形であり得、その溶液は、そのまま使用できる、または希釈することを意図できる。マイクロキャリアおよびタグは、上に記載したものから選択することができる。
【0135】
キットは、例えば、本明細書に記載したように細胞のカプセル封入のために適合するマイクロ流体ノズルもしくはジェッティングニードル、カプセル封入ポリマー、例えば上に記載したようにジェッティング法のために適合する高分子電解質もしくはポリマー、および典型的にカルシウム、ストロンチウムもしくはバリウムイオンであるゲル化剤もまた含むことができる。
【0136】
さらに、カプセル封入するための細胞は、DMEMまたはPBSなどの培地と同様に、キットの一部として含まれることができる。
【0137】
特異的キットは、LbL、エレクトロスプレーまたはマイクロエマルジョン技術によるカプセル封入のために設計することができる。各キットは、好ましくはアルギネート、マーカーおよびマイクロキャリアを含んでいる;しかし、ポリマーおよび培地は用途毎に相違することができる。例えば、エレクトロスプレーカプセル封入のために設計されたキットは、アルギネート、タグおよびマイクロキャリアに加えて、ポリアクリレートおよびアクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸およびそのエステル、セルロース系ポリマー、アクリルアミドを含有するコポリマー、N−ビニルピロリドン、スルホン酸スチレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、アリルアルコールおよびアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマーから選択される1つ以上の成分を少量の第4級アンモニウム基とともに含むことができる。本キットは、好ましくはCa2+、Sr2+またはBa2+イオンを含むゲル化剤を含むことができる。さらに包含されるのは、有益には0.2〜2mmの内径、および平坦または面取りをした縁形状のいずれかを有する1本以上のジェッティングニードルであり得る。
【0138】
LbLのために設計されたキットは、例えば、アルギネート、タグおよびマイクロキャリアに加えて1つ以上の高分子電解質溶液を含むことができる。
【0139】
<細胞の組み合わせ連続培養>
<スプリット−プール細胞培養>
さらに、各細胞単位は様々な細胞培養条件に曝露させることのできる容易に取り扱える単位を構成するので、細胞単位(特に顕微鏡的細胞単位)を形成することは、複数の組織培養条件をサンプリングするために有用である。本発明によると、典型的に細胞群は、細胞をマイクロキャリア培養中で成長させることによって生成され、用語「細胞単位」、「細胞群」、「コロニー」および「ビーズ」は、マイクロキャリア細胞培養の成分を記載するために使用される。多数の細胞培養条件をサンプリングするために特に効率的な方法は、組み合わせ細胞培養またはスプリット−プール細胞培養と呼ばれ、1つの実施形態では、細胞培養条件の複数の組み合わせをサンプリングするために、細胞単位の連続再分割および群の結合を包含している。本発明の1つの態様では、本方法は、各々が相違する培養条件下で個別に成長させられる複数のビーズ(群/コロニー/担体)を含有するX1数のアリコートに、細胞単位の初期スターター培養(または相違するスターター培養)を分割することによって機能する。所定時間にわたる細胞培養後、細胞単位は特異的標識とともにカプセル封入することができ、その後に相違するアリコートからのビーズを結合して混合することによってプールすることができる。このプールは再び、X2数のアリコートに分割することができ、その各々はある期間にわたって相違する条件下で培養され、また別の特異的標識(同一、または好ましくは相違することができる)とともにカプセル封入され、引き続いて同様にプールされる。細胞単位を分割する、培養する、カプセル封入する、およびプールする(またはサイクルに進入する場所に依存してプールする、分割する、および培養する)反復手順は、細胞培養条件の多数の様々な組み合わせの系統的サンプリングを可能にする。実験の複雑さ、または言い換えると試験される細胞培養条件の様々な組み合わせの数は、各ラウンドでサンプリングされる相違する条件の数の積(X1×X2×...Xn)と同等である。その後の分割に先行する全細胞単位をプールするステップが最適となる可能性があることに留意されたい;限定数の細胞単位がプールされるステップは同一作用を有する可能性がある。このため本発明は、細胞単位の群がバルクで取り扱われる細胞培養条件の複数の組み合わせを系統的にサンプリングする多数の関連方法を具体化する。
【0140】
各ラウンドの細胞培養後、または規定数のラウンド後、細胞単位は、増加した細胞増殖または特定表現型もしくは遺伝子型を提示するメンバーが存在するかどうかを決定するためにアッセイできる。これは、様々な技術によって、例えば顕微鏡下で細胞単位の視覚的検査によって、または細胞に特徴的なマーカー生成物を定量することによって達成できる。これは、内因性マーカー、例えば特定DNA配列、またはリガンドもしくは抗体によって検出できる細胞タンパク質であり得る。または、外因性マーカー、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)は、リアルタイムで(生)細胞の特異的読出しを提供するためにアッセイされる細胞単位内に導入することができる。これとは反対に、死細胞は、様々な方法、例えばヨウ化プロピジウムを使用して標識することができる。さらに、標識された細胞単位は、未標識細胞単位から、手動式および自動式両方の、蛍光活性化ソーティングを含む、例えばCOPAS機器(Union Biometrica社)を使用する様々な技術によって分離することができる。
【0141】
スプリット−プール(およびスプリット−スプリット)培養プロトコルのさらなる例は、その各々が参照して本明細書に組み込まれる国際公開第2004/031369号、同第2007/063316号および同第2007/023297号の中に見いだすことができる。
【実施例】
【0142】
以下の実施例では、例示するために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0143】
[実施例1]
<アルギネート溶液の調製>
粉末形にあるアルギネートを、脱イオン水またはCaもしくはMgイオンを伴わないPBS溶液であるリン酸緩衝食塩液−CaCl−MgCl(PBS−−)中に混合して、1〜5重量%のアルギネート混合物を得る。約20mLの、PBS中に溶解させたマイクロキャリア1g当たり3%の溶液を使用する。この混合液は、完全に溶解するまで攪拌するに任せる。
【0144】
次にこの溶液を、溶液が無菌であることを保証するために、オートクレーブまたは滅菌濾過する。
【0145】
<凝固溶液の調製>
Ca2+、Sr2+またはBa2+イオンはアルギネート溶液をヒドロゲルに架橋結合させる。凝固溶液は、200mMの濃度でCaClを水中に溶解させることによって作製する。この溶液は、完全に溶解するまでマグネチック・スターラーを用いて攪拌する。
【0146】
<カプセル封入装置の調製>
カプセル封入は、NISCOカプセル封入装置(NISCO Engineering社、スイス国)を使用して実施する。事前に実施していない場合は、機械および全構成部品は、新規のシリコーンパイプを使用して清潔にして消毒する。
【0147】
0.8mmの内径および(面取りした面とは対照的に)平坦な縁の形状を有するニードルを選択し、スプレー装置のルアーロック内に挿入し、手で締め付ける。
【0148】
接地電極をアセンブリ内に挿入し、スクリューを締め付け、接地電極のケーブルを接続する。または、電極を充電し、ニードルをアースすることができる。
【0149】
ニードルチップから電極までの距離は2cmに設定し、7kVの電圧を使用する。
【0150】
CaCl溶液は、ニードルの下方で、磁気攪拌棒を含む小さなビーカー内に配置する。内蔵型マグネチック・スターラーを30%に設定し、このポイントでスイッチを入れる。アセンブリからの接地電極棒は液体中に伸びるので、液体が帯電して液滴をはじくのを防止するために、それをアースする。
【0151】
懸濁液の調製
先行カプセル封入ステップからのマイクロキャリア、細胞(集合または分散している)またはビーズであるカプセル封入する単位をPBS中で洗浄し、液体を取り除き、アルギネート溶液中に再懸濁させる。
【0152】
この懸濁液1mLをシリンジに取り出し、カプセル封入装置のパイプ内へ直接注入する。これを行うことにより、シリンジ内のビーズ/マイクロキャリアの沈降が回避される。
【0153】
<噴霧の調製>
第2シリンジに、カプセル封入する材料を押し出すために単純アルギネートを充填し、シリンジポンプへ接続する。
【0154】
シリンジポンプの流量を5mL/hに設定する。約1〜20mL/hの範囲内の流量を使用できる。
【0155】
<噴霧>
液滴を噴霧するために、装置の取扱説明書にしたがってニードルおよび電極に圧力をかける。この手順は、さらなる材料をカプセル封入するために、より多くのビーズを調製し、それらを機械に注入することによって繰り返すことができる。
【0156】
<ビーズの回収>
加工処理が終了した時点に、シリンジポンプ、電圧およびマグネット・スターラーのスイッチを切り、架橋結合溶液およびカプセル封入物を含有する収集ビーカーを取り外す。カプセル封入物はビーカーの底部に沈降し、ファルコンチューブまたは他の容器内へ取り除くことができる。
【0157】
ビーズはPBSを用いて数回洗浄し、所望の溶液(PBS、DMEMなど)中に再懸濁させる。結果は、図1〜4に示した。
【0158】
<装置の設定および変量>
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
[実施例2]
細胞単位を実施例1にしたがってアルギネートでコーティングし、引き続いて以下のようにLbLアプローチを使用して高分子電解質でコーティングする。
【0161】
高分子電解質、本実施例ではアルギネートおよびPLLは、各々負および正に帯電している。本質的に、実施例1は、以下の4つのステップを提供する:
1.細胞を含むアルギネート懸濁液を調製する
2.スプレー装置を用意する
3.塩基性アルギネートビーズを作製する
4.ビーズを洗浄する
【0162】
次にビーズは、PLL溶液中に懸濁させることによってPLLでコーティングする。電荷差は、PLLをアルギネートに引き付ける。任意で、帯電したタグがアルギネートに付着させられ、第1カプセル封入を標識するステップを含むことができる。
【0163】
5.ポリ−L−リジン(PLL)を含有する溶液中に懸濁させる
a.30秒間という短時間にわたり使用される0.1%の溶液は、既にアルギネートビーズの表面上に極めて薄いフィルムを作製する所望の作用を生じさせる。この溶液中にビーズを懸濁させる濃度または時間を変化させると、吸着速度が変化するが、層はこの濃度で1分間未満後には飽和するので十分であると思われる。正確な厚さは公知ではないが、光学顕微鏡上で視認できないほど十分に薄い。
b.好ましい設定は、30秒間にわたり1%である。設定は、1分間未満から数時間までの間に、食塩液中で0.05〜0.1重量%のPLLで変動できる。およそ5〜10分間の時間が好ましい。
6.PBS(−−)を用いて洗浄する
a.過剰のPLLを除去するためには、細胞ストレーナー内でビーズを数回洗浄することが必要である
7.蛍光標識したタグとともに懸濁させる
a.タグを加えて溶液を攪拌する場合、液体をピペッティングすることによって最も容易に実施でき、負に荷電したタグはアルギネート−PLLビーズの表面に付着する。
8.PBS(−−)を用いて過剰なタグを洗い流す
a.再び、付着していないタグを洗浄しながら、ビーズを保持するために細胞ストレーナー(70μm)内で実施する
9.また別のアニオン性高分子電解質の調製した溶液中にビーズを懸濁させる。
a.これはアルギネート中で実施できる。10分間にわたる0.05〜1%などの数値が一般的であると思われる(例えば、(Strand et al.,2003))。しかし、層は厚く、非均一になる可能性がある(これは、相違するアルギネートを使用することによって、またはそれを修飾する[より短い鎖長もしくはより低分子量を使用するなど]ことによって避けることが可能である)。
b.PLLの周囲に第2層を形成するために、類似の曝露時間および濃度を用いて、ポリ(スルホン酸スチレンナトリウム)(PSS)を含有する溶液を使用する。
c.この第2層は、タグを固定し、また別のタグセットを用いてプロセスを繰り返すために、その上に第1高分子電解質(カチオン性物質)を翌週に再び加えることのできるまた別の逆極性の層を加えるためである。
10.過剰な高分子電解質を除去するためにPBS(−−)を用いて洗浄する。
11.実験の次のスプリット−プール段階まで細胞培地中に懸濁させる。
12.ビーズがタグ付けされる次のスプリット−プール段階には、追加の層を加えるために必要に応じてステップ3〜10を繰り返す。
【0164】
図8は、相違する蛍光タグを備える2つの層を加えた後のビーズの実施例を示している。最初に、プロトコルは青色蛍光タグを用いて実施し、引き続いてタグを含有する第2層を加えるために赤色蛍光タグを用いてステップ3〜10を繰り返した。
【0165】
このプロトコルは、以下のとおりであった:
最初のアルギネートビーズ:6.5kV、10mL/h、1cm間隔、0.5mmニードル。
第1層:
PLL 0.1%、120秒間
およそ25mLのPBS−−を用いて細胞ストレーナー中で洗浄する
青色蛍光タグ
およそ10mLのPBS−−を用いて細胞ストレーナー中で洗浄する
アルギネート0.5%、120秒間
およそ25mLのPBS−−を用いて細胞ストレーナー中で洗浄する
第2層:
PLL 0.1%、120秒間
およそ25mLのPBS−−を用いて細胞ストレーナー中で洗浄する
赤色蛍光タグ
およそ10mLのPBS−−を用いて細胞ストレーナー中で洗浄する
アルギネート0.5%、120秒間
およそ25mLのPBS−−を用いて細胞ストレーナー中で洗浄する
【0166】
図8Aは、赤色フィルター(Cy5.5光学フィルター、励起=650/45nm、発光=710/50nm)単独下の結果を示している。図8Bは、青色フィルター(DAPI光学フィルター、励起=360/40nm、発光=460/50nm)下の同一ビーズを示している。図8CおよびDは、タグ付け多層ビーズの蛍光および明視野画像各々の合成画像を示している。
【0167】
上記の明細書で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の上述した態様および実施形態の様々な修飾および変形は、本発明の範囲から逸脱せずに当業者には明白になる。本発明は特定の好ましい実施形態と結び付けて記載してきたが、本明細書で主張した本発明は、そのような特定実施形態に過度に限定すべきではないと理解すべきである。実際に、当業者には明白である本発明を実施するための上述した様式の様々な修飾は、下記の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞および標識を含むマイクロカプセル。
【請求項2】
細胞単位を含む、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
前記標識は、RFID標識である、請求項1または請求項2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
2つ以上のカプセル層を含む、請求項1または請求項2に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
前記2つ以上のカプセル層は、各々が1つ以上の標識を含む、請求項4に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
前記マイクロカプセルは、高分子電解質カプセルのレイヤー・バイ・レイヤー添加によって形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
前記マイクロカプセルは、ジェッティングカプセル封入法によって形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
前記マイクロカプセルは、マイクロ流体カプセル封入法によって形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
前記マイクロカプセルは、ポリマーから構成され、前記カプセル層を含む前記ポリマーは、蛍光色素を組み込むことによって標識される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
細胞単位を標識するための方法であって、
(a)各々が1つ以上の細胞を含む1つ以上の細胞単位を提供するステップと、
(b)前記細胞単位を1つ以上の第1標識と一緒にマイクロカプセル封入するステップと
を含む方法。
【請求項11】
(c)第2標識と一緒に(b)のマイクロカプセル封入するステップを繰り返すステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1標識および第2標識は、相違する、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞群を複数の標識を用いて標識するための方法であって、
(a)各々が1つ以上の細胞を含む1つ以上の細胞単位の第1群を提供するステップと、
(b)前記細胞単位を第1識別標識と一緒にマイクロカプセル封入するステップと、
(c)任意選択的に、第2群を形成するために、前記細胞単位を第2識別標識とともにマイクロカプセル封入された1つ以上の細胞単位と混合するステップと、
(d)前記第2群を用いてステップ(b)を、第3識別標識を使用して繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記第1標識、第2標識および第3標識のうちの少なくとも2つは相違する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞単位の前記第1群は、ステップ(c)の前または後に2つ以上の群に分割される、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞単位の群は、相違する培養条件に曝露される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複数の培養条件に曝露されていた細胞群を標識するための方法であって、
(a)各々が1つ以上の細胞を含む第1セットの細胞単位群を提供し、前記群を所望の培養条件に曝露させるステップと、
(b)前記細胞単位を1つの識別標識と一緒にマイクロカプセル封入するステップと、
(c)少なくとも1つのプールを形成するために2つ以上の前記群をプールするステップと、
(d)さらなるセットの細胞単位群を作製するために前記プールを再分割するステップと、
(d)前記さらなる群を所望の培養条件に曝露させるステップと、
(e)ステップ(b)〜(d)を繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記マイクロカプセル封入は、バイオエレクトロスプレージェッティング法、空気力学支援バイオジェッティング法および圧力支援細胞ジェッティング法からなる群から任意に選択されるジェッティング手順によって実施される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロカプセル封入は、高分子電解質のレイヤー・バイ・レイヤー添加によって実施される、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞単位は、少なくとも1つのマイクロキャリアと、1つ以上の細胞とを含む、請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記標識は、蛍光化合物、第2級アミン、安定性同位体の混合物、バーコード、光学タグ、ビーズ、量子ドットおよび高周波コード化タグからなる群から選択される、請求項10〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記標識はマイクロスフェアである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記培養条件は、成長培地、温度管理、基板、大気条件および物理的細胞取扱いからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
各マイクロカプセルは実質的に、単一細胞単位を含有する、請求項10〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
各マイクロカプセルは実質的に、複数の細胞単位を含有する、請求項10〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
各マイクロカプセルは、複数の細胞単位を含有し、各細胞単位自体が個別にマイクロカプセル封入された、請求項10〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第1マイクロカプセル内にカプセル封入された少なくとも1つの細胞単位を第1識別標識と一緒に含むマイクロカプセル封入細胞単位であって、前記カプセル封入細胞単位はそれ自体が第2マイクロカプセル内に第2識別標識と一緒にカプセル封入されている、マイクロカプセル封入細胞単位。
【請求項28】
前記第2マイクロカプセルは、複数のマイクロカプセル封入細胞単位を含む、請求項27に記載のマイクロカプセル封入細胞単位。
【請求項29】
細胞単位をカプセル封入するためのキットであって、
(a)マイクロキャリアと、
(b)検出可能なタグと、
(c)アルギン酸ナトリウムと、任意選択的に、
(d)高分子電解質と
を含むキット。

【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−512660(P2013−512660A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534582(P2012−534582)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006459
【国際公開番号】WO2011/047870
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(511193640)プラスティセル リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Plasticell Limited
【住所又は居所原語表記】The London Bioscience Innovation Centre, 2 Royal College Street, London, NW1 0NH, United Kingdom
【Fターム(参考)】