説明

細胞の培養及び増殖方法

本発明は、実質的に重ね合わされ、互いに連結されており、それらの層の間にフロースルー可能な空間が形成される、少なくとも2つの多孔性材料層、又は材料層の少なくとも2つの重ね合わされた断面の間にフロースルー可能な空間が形成されるように、その形状を維持しながら、それ自体の上に配置された又は折りたたまれた少なくとも1つの多孔性材料層から成る、層状構造を有する炭素ベースの基質を製造する工程を含む、細胞培養方法に関する。前記方法は、さらに、前記基質に生存及び/又は増殖している生物材料を負荷すること及び前記負荷した基質を液体培地と接触させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本的に互いの上層に配置された少なくとも2つの多孔性材料層であって、その層の間にフロースルー可能な空間が存在する前記材料層、又はその形状を維持しながら、それ自体が巻き上げられている又は互いの上層にある材料層の少なくとも2つの断面の間にフロースルー可能な空間が存在するように配置された、少なくとも1つの多孔性材料層を含む、層状構造を有する炭素ベースの支持体/基質を提供すること及び前記支持体に、生存している及び/又は増殖することができる(生存可能な)生物材料を負荷すること及び前記負荷した支持体を液体培地と接触させること、の工程を含む、細胞を培養するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオリアクタープロセステクノロジーにおいて、現在のところ、表面積を上昇させるために基質材料を使用することは確立された慣例となっている。これまで使用可能であったシステムは、使用される材料が主にセラミック又はポリマーから作られる、顆粒、フロック、ウェハー(wafer)又はディスク、毛細管、メッシュ、ビーズ等の形態の不規則構造を主に使用してきた。これらのシステムは通常、大きな圧力損失と容積収率にとって限られた表面積を有する。ここでもやはり、成形体の大きさにはしばしば制限があり(圧力損失、重量、コスト、包装変更等)、プロセスの規模拡大を技術的に困難にしている。加えて、ポリマーは使用又は滅菌の間に化学的又は物理的変化を受けやすい。さらに、不規則パッキングが存在するときは、同一の均一な栄養供給及び再現可能な充填が必ずしも確保できない。デッドスペース及び容器壁に沿った好ましい流れは、感受性タンパク質の生成物特性、例えばそれらの折りたたみ、に影響を及ぼしうる種々の代謝条件を導く。
【0003】
工業規模での反応は高流量を必要とし、経済的因子に左右される。代謝産物を細胞混合物からより良好に分離することができるように又はその後それらを再利用できるように、細胞又は細胞培養物を固体基質に固定する。これは、例えばせん断力に感受性である細胞からの周囲培地の分離を生じさせる。例えば膜を成形体の壁として使用し、クロスジオメトリー(cross geometry)を用いる場合、これは、気泡を伴わずに連続的に気体代謝産物を細胞にもたらす及び/又は所望代謝産物を膜の一方の側に蓄積する可能性をもたらす。これは、栄養供給、代謝産物の交換及びプロセスパラメータの測定を容易にし、プロセスの有意の強化を導く。細胞培養物の固定化はまた、連続供給と生成物の収集を伴う連続的なプロセス管理も可能にする。
【0004】
加えて、固定化細胞培養による方法は高い細胞密度を可能にするので、比較的高い反応速度及びそれ故より小さな寸法のシステムが可能であり、収率を劇的に上昇させることができる。例えば発酵プロセスのための、遺伝子操作された哺乳動物細胞系からの固定化細胞培養によって、懸濁細胞培養よりも高い反応速度が達成される。
【0005】
特に「生存可能触媒単位」に関して、基質は生体適合性であり、容易に滅菌でき、細胞のための良好な接着基剤を提供し、固定化工程が細胞を保護するように生じることを可能にすることに留意することが重要である。さらに、基質は種々の細胞培養物又は細胞の要求に適合しなければならない。これに関しては、孔径及び基質組成物がある役割を果たす。細胞培養物又は細胞を固定化するいくつかの方法が既に存在する。
【0006】
例えばドイツ特許第DE 693 11 134号には、細菌を多孔性基質に適用する、固定化乳酸菌によるバイオリアクターが記載されている。前記基質は、複数の緩やかに結合された微粒子又は微細繊維のマトリックスから成る。セルロース又はレーヨン及びそれらの誘導体が好ましい。ポリスチレンに関しては、好ましくは凝集を実施する。
国際特許第WO01/19972号には、細胞培養物をポリマー前駆体と結合し、その後ポリマーの架橋によって固定化する、固定化プロセスが記載されている。
【0007】
細胞培養物はまた、国際特許第WO94/10095号に述べられているように開気孔「ミネラル」バルク材料上にも固定化しうる。例としては、膨張粘土、膨張頁岩、溶岩、軽石、真珠岩及びレンガチッピングが挙げられる。
【0008】
さらに、国際特許第WO00/06711号には、基質材料として珪藻土への細胞培養物又は酵素の固定化が記載されている。
【0009】
欧州特許第1270533号には、顆粒及びディスクの形態の無定形ポリアニオン性粒界相と混合した結晶性オキシドセラミックの使用が記載されている。
【0010】
上述した方法はいくつかの難点を有する。例えば基質マトリックスは所望するように改変することができず、又は基質材料は低い生体適合性を有し、又は固定化は高い損失を伴う。
【0011】
ポリマー前駆体/細胞混合物を架橋することによるポリマーマトリックス内での細胞培養物の固定化は、しばしば高分子反応の間に、例えば毒性反応産物又は抽出物、例えば架橋剤のゆえに、多くの細胞培養物の死滅を生じさせる。さらに、架橋性ポリマーはしばしば膨張性であり、それ故寸法安定性を欠き、流動条件の変化を引き起こし、そのため細胞に機械的ストレスをもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、生存可能(生存)及び/又は繁殖可能(増殖することができる)な生物材料を固定化するために標的とする方法で特定適用に適合させうる、高度に生体適合性で、柔軟に使用しうる基質を入手可能にすることである。さらに、本発明のもう1つの目的は、前記基質を使用した細胞培養法を提供することである。この方法は、好ましくは実験室規模及び/又は工業規模での使用に適する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要約
上記で定義した問題は、独立請求項の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、従属項(subclaims)に記載されている特徴との組合せから導かれる。
【0014】
最も一般的な態様では、本発明は、化学及び/又は生物反応のための生物材料を固定化するための多孔性炭素ベース支持体の使用を述べる。このために、生物材料を負荷した多孔性支持体/基質材料を使用する、細胞培養法を説明する。生物材料を負荷した適切な炭素ベース支持体/基質も本発明を通して使用可能となる。
【0015】
本発明による前記問題の解決法は、好都合には負荷特異的圧力損失を伴う、細胞培養物を通過する液体の標的フローによる順序正しい炭素パッキングで細胞培養物を培養するための方法を含む。本発明の基質の定序パッキングは、一方では細胞培養物への栄養供給のために最も高い表面積対容積比で均一な流動条件を、他方ではまた、コンパートメントを細胞培養と培地に好都合に分離することを提供する。基質は、好ましくは一方が他方の上に配置された材料の層の間に又はそれらの個々の断面の間にチャネル様構造を有する。フローチャネルの直径及びチャネルの壁の厚さ及び/又は材料層の厚さを変化させることにより、各々の適用ケースに合わせて本発明による柔軟な方法において基質の最適条件を確立することができる。流量比は、必要な培養条件に合わせて調整するように、例えば流動方向のチャネル形状を変化させることによって(例えば波形チャネル)、直径の変化及び炭素表面の表面特性の変化、例えば膜特性、粗さ、多孔度、親水性、疎水性、親油性、疎油性、pH、有効成分及び/又は触媒による含浸等の変化によって、確立しうる。
【0016】
基質材料の規定された均一な供給条件並びに基質条件は、それ故、細胞培養物が、非常に高い細胞密度で常にそれらの最適増殖条件を確立できるように、2つの材料層又はそれらの断面の間の中間領域内で及び/又は本発明の基質のフローチャネル内で確保される。本発明の基質はまた、ハウジング又は容器内に容易に据え付けることができ、細胞培養及び増殖(breeding)の方法のための工業用反応器又は実験室規模の反応器において個別に又はいくつかを組み合わせて、カートリッジとしてこの形態で使用できる。本発明によれば、同じようにして生産される各々のカートリッジに関してフロー及び基質条件の絶対的再現性が確保され、これは、例えば製薬部門における認可手続きのために非常に大きな簡素化となる。
【0017】
本発明の基質及びその上に容易に固定化される細胞培養物と、例えば培地との相互作用は、本発明の方法においていくつかのやり方で、例えば、
−培地の移動による(例えばピストン、圧、ポンプ等によって)基質/カートリッジを通過する培地の流れ、
−培地内での基質/カートリッジの移動、
−対応するラインを通しての培地と基質/カートリッジの移動(例えば静水圧によって)
によって実現できる。
【0018】
炭素の高い化学的及び物理的安定性のおかげで、当業者が一般に精通する従来の滅菌法による本発明の基質の滅菌に関しては全く問題がない。これは、例えば、細胞が基質の炭素表面上に速やかに及び密着及び/又は接着してコロニーを形成し、それ故コンパートメントを形成するという意味で周囲の培地から基本的に分離されうるので、細胞培養物の最適増殖を可能にする。これにより、均一で制御可能な栄養供給及び改善された代謝産物の処分及び細胞培養産物の収集と共に、極めて高い細胞密度を達成することが可能となる。
【0019】
プロセス態様によれば、本発明は、それ故、以下の工程、
a)i)基本的に互いの上層に配置された少なくとも2つの多孔性材料層であって、その層の間にフロースルー可能な空間が存在する前記材料層、又は
ii)その形状を維持しながら、それ自体が巻き上げられた又は互いの上層にある材料層の少なくとも2つの断面の間にフロースルー可能な空間が存在するように配置された、少なくとも1つの多孔性材料層、
を含む、層状構造を有する炭素ベースの支持体/基質を提供すること及び
b)前記支持体に、生存している及び/又は増殖することができる生物材料を負荷すること、
c)前記負荷した支持体を液体培地と接触させること
を含む、細胞を培養するための方法に関する。
【0020】
生成物に関して、前記問題に対する本発明の解決法は、
i)基本的に互いの上層に配置された少なくとも2つの多孔性材料層であって、その層の間にフロースルー可能な空間が存在する前記材料層、又は
ii)その形状を維持しながら、それ自体が巻き上げられた又は互いの上層にある材料層の少なくとも2つの断面の間にフロースルー可能な空間が存在するように配置された、少なくとも1つの多孔性材料層、
を含み、生存している(生存可能な)及び/又は増殖することができる(繁殖可能な)固定化された生物材料を含む、層状構造を有する多孔性炭素ベースの支持体/基質を包含する。
【0021】
図1は、層状構造を有する本発明の支持体/基質の実施形態を示す。図1Aの透視図に示す基質1は、一方が他方の上に配列された多数の交互に並ぶ材料層2、3を含み、第一材料層2は、そこを通って流れが平行に通過することができる複数のチャネル4を含み、空間が材料層2と3の間に形成されるようにその上に配置されている、場合により構造化された、例えば波形又はひだ状の材料層3に結合している。最も単純な空間では、図1Aの基質は波形段ボールの積み重ねとしてイメージしうる。構造化材料層が互いに対して例えば90°の角度分枝で交互に配置されている場合、その結果は、流れがチャネル4、4’内を交差パターンで通過することができる、図1Bに示すような基質である。この基質はその末端正面で基本的に開いており、波形構造層の十字状配置のゆえに互いに対して基質分枝を通る2つの可能な方向の流れを有する。構造化材料層の代替物として、2又はそれ以上の基本的に扁平な材料層2、3も、図1Cに示すように、本発明に従って互いの上層に配置することができ、これらの層の2つは、材料層2、3の間の空間に流れが通過する複数のチャネル4が提供されるように、スペーサーエレメント5によって一緒に連結される。
【0022】
図2は、本発明の支持体/基質の別の実施形態を示す。図2Aの円柱状基質6の上面図は、らせん形に巻き上げられた波形材料層7を示す。この渦巻きは、断面8と8’の間に中間チャネル9が形成されるように、材料層7上のもう1つの断面8’が次の屈曲内で材料層の断面8の上に載ることで複数の領域をもたらす。図2Bに示すように、基質6は、波形構造を有する平らなシートが渦巻きになっている又は巻き上げられているという事実のゆえに円柱状構造を有する。例えば円柱成形体を形成するように波形段ボールを巻き上げることによって、対応する基質を巻き上げることができる。生じた波形段ボール材料を炭化することにより、円柱の高さの方向にそれらを通過する複数のチャネル9を有する、円柱状成形体6を形成することができる。これは、それを通って流れが基本的に一方向に通過することができる円形末端正面を備えた円柱状基質7を生じる(図2A)。
【0023】
図3は、本発明に従った細胞培養法を実施するための装置及び/又は反応器10の好ましい実施形態の概要図を示す。例えば図2に例示するような円柱又は図1に例示するようなブロックの形態の、支持体/基質11は、反応容器13内で適切なホルダー12、例えば穴の開いたプレート上に載っている。この反応容器13は、均等化ライン14によって液体培地16、例えば培養培地を含む均等化及び貯蔵容器15に接続されている。反応容器13は、適切な装置17によって均等化容器15に対して上下に移動しうる。反応容器13の下方移動時には、貯蔵容器15における液体レベルに対する反応容器13の垂直方向整列に依存して、基質11が部分的に又は完全に培養培地中に液浸するように、培地16が貯蔵容器15から流れ出て、ライン4を通って反応容器13内に入る。反応容器13を規則正しく上下運動させることにより、基質11は周期的に培養培地16に液浸し、それによって基質11は、自らを通して培地16を流動させる。反応容器13は、場合により密封気密されていてもよく、また反応容器13内の培地の上部の気体空間は場合により不活性ガスで満たすことができ、その場合は場合により圧均等化装置を備えうる。反応容器を上下移動させることにより、培地16は、微生物又は細胞又は細胞組織への水分、栄養素等の均一供給を可能にするように、基質11のフローチャネル内へと移動する。同時に、基質11上に固定された微生物、細胞又は他の生物材料によって作り出される代謝産物は、培地16によって基質11から運び出すことができる。これらの代謝産物は培地16中に蓄積し、均等化ライン14又は貯蔵容器15によって連続的に又は断続的に、例えば抽出又は同様の分離方法によって、培地16から除去されうる。
【0024】
図4は、交流圧(alternating pressure)原理によって働く本発明の細胞培養法を実施するための装置18の別の実施形態を示す。例えば図2に示すような基質の円柱断面の形態又は図1に示すようなブロック形態の、本発明の支持体/基質22は、一方が他方の上部に配置された2つのチャンバー20、21を備える反応容器19内に位置する。この基質22は、差圧入力部23を通して圧縮空気を下部反応器チャンバー20内に位置する移動空間24内へと導入することができる放射状試錘孔(borehole)を有する。反応容器19の2つのチャンバー20、21は、例えば基質22がその上に載っている穴のあいた底部でありうる、透過性反応隔壁25によって互いに分離されている。反応器の操作のために、液体レベルが反応隔壁25より下のままであるように、下部反応器チャンバー20は液体培地26、例えば微生物又は細胞のための液体培養培地で満たされている。圧縮空気が差圧入力部23を通して移動室24内に導入される場合、液体培養培地26の一部は、沈鐘(immersion bell)原理に従って下部反応器チャンバー20へと移動し、反応隔壁25を通して上方へ押し上げられて、その結果基質22が液体培養培地26と接触する。上部反応器チャンバー内に広がる過剰の圧は、上部反応器チャンバー21内の圧均等化開口部27を通して放出される。下部反応器チャンバー20に対して規則的又は不規則に圧をかけ、その後差圧入力部23を通して圧を移動空間24内に放出することにより、基質22は液体培養培地26で洗い流される。そうするときに、基質22が完全に又は部分的に培地26中に液浸されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
支持体/基質
本発明の炭素ベースの支持体/基質は、細胞培養物又は細胞のための支持体/基質材料として使用するとき、優れた生体適合性を有する。それらは、毒性放出がなく、寸法安定性を有し、設計に関して、例えば孔径、内部構造及び外部形状に関して極めて融通性が効く。
【0026】
さらに、本発明の多孔体は容易に滅菌され、一般に微生物、細胞培養物及び細胞並びに生存可能及び/又は増殖可能生物材料のための良好な接着基質を提供する。これらの特性のゆえに、炭素に基づくこれらの多孔体は、様々な適用の要求を満たすようにあつらえることができる。多孔性基質は、好ましくは主として無定形及び/又は熱分解性及び/又はガラス状炭素から成り、好ましくは活性炭、焼結活性炭、無定形結晶性又は部分結晶性炭素、黒鉛、熱分解性炭素質材料、炭素繊維又は炭化物、カルボニトリド、金属又は非金属のオキシカーバイド又はオキシカルボニトリド並びにそれらの混合物又は同様の炭素ベースの材料から選択される。本発明の多孔性支持体/基質は、特に好ましくは基本的に炭素から成る熱分解性材料である。
【0027】
多孔性支持体/基質は、場合により、特に好ましくは無酸素雰囲気中高温下で上述した炭素ベース材料に変換される出発物質の熱分解/炭化によって生産される。本発明の基質の炭化のための適切な出発物質は、例えばポリマー、ポリマーフィルム、紙、含浸又は被覆紙、織物、不織布、被覆セラミックディスク、精製綿(cotton batting)、中綿棒(batting rod)、中綿ペレット(batting pellet)、セルロース材料又は、例えばマメ類、例えば落花生、レンズマメ、マメ(bean)等又は堅果、乾果等、並びにこれらの材料に基づいて生産されるグリーンウエアを含む。
【0028】
本発明に関して使用する「炭素ベース」という用語は、1重量%以上、特に50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、例えば80重量%以上、特に90重量%以上の炭素含量(金属による修飾の前に)を有するすべての材料を指すと理解される。特に好ましい実施形態では、本発明の炭素ベースの支持体/基質は、95〜100重量%、特に95〜99重量%の炭素含量を有する。
【0029】
支持体/基質は、各々がそれを通って流れが通過することができる空間を形成する、一方の上に他方が配置された複数の材料層を有することが好ましい。好ましくは、各々の空間はチャネル様構造、例えば基本的に平行に、交差して又は網状に配置された複数のチャネルを含む。チャネル様構造は、距離が確保されるように基質材料の層の上に備えられた複数のスペーサーエレメントにより、互いに距離を置いて配置されうる。チャネル、すなわちチャネル様構造は、好ましくは約1nm〜約1m、特に約1nm〜約10cm、好ましくは10nm〜10mm、最も好ましくは50nm〜1mmの範囲内の平均チャネル直径を有する。2つの隣接材料層の間の距離は、基本的に同じ寸法を有する。
【0030】
本発明の支持体/基質は、特に好ましくは、全体として基質が、流れが好ましい方向に通過することができるチャネル層を有するように、第一と第二材料層の間のチャネル及び第二と第三材料層の間の隣接層内のチャネルが基本的に同じ方向に配置されるように設計される。あるいは、基質はまた、第一と第二材料層の間の互いに対する角度によって交互に分枝されたチャネル層を有するように設計してもよく、第二材料層と第三材料層の間の隣接層内のチャネルに対して、0°以上90°まで、好ましくは30°〜90°、および特に好ましくは45°〜90°の角度に分枝して配置される。
【0031】
本発明の基質におけるチャネル、すなわちチャネル様構造は、本発明の支持体全体がサンドイッチ構造、すなわち多孔性材料と空間の交互の層の層状設計、好ましくはそれらの間を流れが通過することができるチャネル層のタイプを有するように、基本的にチャネルの両端で開いている。チャネル、すなわちチャネル様構造は、本発明に従ってそれらの長手方向に直線状の広がり(linear extent)を有しうるか又は波状、曲がりくねっている又はジグザグパターンを有し、平行に走るか又は2つの材料層の間の空間内で互いに交差しうる。
【0032】
本発明の支持体/基質の外側形態及び寸法は、個々の意図する適用に従って選択し、適合させることができる。支持体/基質は、例えば細長い形状、例えば円柱状、多角形柱形状、例えば三角柱形状又は棒状形状から選択される外部形状を有しうるか、あるいはシート又は多角形形状、例えば正方形、立方体、四面体、錐体、八面体、十二面体、二十面体、長斜方形、角柱又は球状、中空球状又は円柱状、レンズ状又は円板形又は輪形の形態でありうる。
【0033】
本発明の基質は、意図する用途に対して適切な方法で寸法をとることができ、例えば1mm3、好ましくは約10mm3〜1m3の範囲内の支持体/基質容積にすることができる。所望する場合は、基質はまた、はるかに大きな寸法又はより小さなミクロ寸法にすることもでき、本発明は基質の一定寸法に限定されない。基質は、約1nm〜1000m、好ましくは約0.5cm〜50m、特に好ましくは約1cm〜5mの範囲内の最長外側寸法を有しうる。
【0034】
そうするために、波形材料層を、例えば円柱体を形成するように渦巻きパターンで巻き上げてもよい。そのような基質は、場合によりその形状を保持する方法で波形、エンボス加工又はその他の方法で構造化された、1つの材料層がらせん形に配置されて、好ましくは複数のチャネル様構造及び/又はチャネルを有する、中間領域を通って流れが通過できるように、一方が他方の上に配置された材料層の少なくとも2つの部分の間に中間領域を形成するように設計される。
【0035】
一方が他方の上に配置された幾つかの材料層を、それらを巻き上げることによってそのような円柱状支持体/基質を形成するように成形することができる。
【0036】
本発明の支持体/基質の多孔性材料層及び/又はチャネル壁及び/又は材料層の間のスペーサーエレメントは、約1nm〜10cm、好ましくは10nm〜10mm、および特に好ましくは50nm〜1mmの範囲内の平均孔径を有しうる。多孔性材料層は、場合により半透性であり、一般に3Å〜10cm、好ましくは1nm〜100mm、最も好ましくは10nm〜10μmの厚さを有する。場合により半透性の、多孔層の平均孔径は、0.1Å〜1mm、好ましくは1Å〜100μm、最も好ましくは3Å〜10μmである。
【0037】
本発明の支持体/基質の好ましい実施形態では、支持体/基質の材料層は、一方の側又は両側で、好ましくは両側で、構造化されている。材料層の好ましい構造化は、エンボス加工した溝パターン又はさもなければ、材料層の表面全体にわたって基本的に互いから等距離に配置された溝及び/又はチャネル様くぼみで導入されるパターンの形状から成る。溝パターンは、材料層の外側の縁に対して平行に走るか又はそれに対していかなる角度も配置されていてもよく、又はジグザグパターン又は波形パターンを有しうる。さらに材料層は、両側で構造化されている場合、両側に同じ溝パターンを有するか又は異なる溝パターンを有していてもよい。多孔性材料層は、それらが2つの側で一様に補足的であるように、すなわち材料の一方の側の溝のくぼみが材料層の他方の側の側面の対応する突起(elevation)に符合するように構造化されていることが好ましい。材料層は、好ましくは、2つの隣接材料層の溝パターンが基本的に互いに平行に走るように基質内に配置される。
【0038】
さらに、材料層は、2つの隣接材料層の溝パターンが、材料層を一方が他方の上に積み重ねたとき、隣接材料層の溝構造の交差する突起端の箇所で、隣接材料層の間に複数の接触点を生じるような角度で交差するように配置しうる。これは、交差する溝パターンの接触点に応じた多くの点での連結のおかげで、明確に高い機械的安定性を有する基質を生じる。溝構造は、特に、2つの材料層が一方が他方の上に配置されているとき、2つの隣接材料層の間の中間領域内にチャネル様又は網目構造が形成されるように選択され、複数のチャネル又はチューブに対応し、支持体/基質における適切な流動抵抗、好ましくは可能な最小流動抵抗を確保する。当業者は、いかにして溝パターン及び寸法を適切に選択するかを熟知している。本発明の支持体/基質では、エンボス加工した材料層における従来の溝構造は、断面積を特定の意図する目的に適合させうる中間空間内のチャネル様構造及び/又は管状構造を導く。
【0039】
溝又はチャネルのエンボス加工に代わるものとして、材料層はまた、前成形された波形を有するか又はアコーディオンプリーツを有しうる。複数のそのような材料層を互いの上層に平たく配置するとき、その結果は、チャネル構造として材料層の水平面の方向に走る、支持体/基質の末端正面から見えるようなハチの巣構造である。そのような前成形された材料層を巻き上げるとき、その結果は、横断面が、円柱の長手寸法に沿って延びる、らせん形に配置された複数のチャネルを有する円柱状基質である。そのような円柱/円板は、基本的に両端の横断面で開いている。
【0040】
加えて、選択的に又は付加的に、材料層の間にスペーサーエレメントも備えうる及び/又は導入しうる。対応するスペーサーエレメントは、その中をチャネルが走り、且つモジュールの適切な低流動抵抗を確保する、材料層の間の十分に大きい空間を確保するのに役立つ。対応するスペーサーエレメントは、材料層の間に一定の最小距離を確保する、中間層、網状構造又は材料層の中心又は端に配置されたスペーサーの形態の多孔性開放孔扁平シートでありうる。
【0041】
本発明の支持体/基質は、基本的にチャネル及び/又は層の両端で開いている中間層及び/又はチャネル及び/又はチャネル層を有する。本発明の基質は、材料層の末端及び縁で及び/又はチャネルの入口又は出口で、液体に対して密閉又は閉じられていない。
【0042】
互いに対する材料層の間隔は、特に好ましくは、適切に寸法付けられた溝エンボス加工、プリーツ又は波形及び2つの隣接材料層の溝パターン、プリーツパターン又は波形パターンの一定角度での交差によって、構造の交差突起端の点で隣接材料層の間に複数の接触点が得られるという事実によって確保される。これは、複数のチャネル様構造の形態の空間が材料層のくぼみに沿って形成されることを確実にする。同様に、これはまた、異なる幅の材料層の交互の折りたたみ又は波形を通しても達成しうる。
さらに、材料層はまた、交互に異なる深さの溝エンボス化又はプリーツ化及び/又は波形が材料層上に提供され、溝構造、波形構造又はプリーツ構造の交差端の点における隣接材料層の間の接触点の数が、使用可能な溝の縁の総数に比べて全体として適切に少なくなるように、異なる高さの個々の溝縁の上昇を導くように距離をおいて配置しうる。これらの点で材料層を連結することにより、支持体/基質の適切な強度が確保され、良好な流動抵抗が確保される。
【0043】
多孔性支持体/基質として使用するモジュール構造は、この構造が、繊維、紙、織物又はポリマー材料に基づく、場合により構造化された、エンボス加工された、前処理およびプリーツ化されたシート材料の炭化によって創造されることが特に好ましい。従って、本発明による支持体/基質は、場合により炭素質出発材料の熱分解によって生産される炭素複合材料及び基本的に炭素セラミック及び/又は炭素ベースのセラミックのタイプにも対応する、炭素ベースの材料から成る。そのような材料は、例えば高温での熱分解及び/又は炭化によって紙様出発材料から出発して、生産することができる。対応する生産工程、特に炭素複合材料のための生産工程も、国際特許出願第WO01/80981号、特に14ページ10行目から18ページ14行目までに記載されており、本発明の場合に適用できる。本発明の炭素ベース基質はまた、国際特許出願第WO02/32558号、特に6ページ5行目から24ページ9行目までに記載されている方法に従って生産しうる。これらの国際特許出願の開示は、全体が参照してここに組み込まれる。
【0044】
本発明の基質はまた、適切な既製ポリマーフィルム及び/又は、開示内容全体が参照してここに組み込まれる、ドイツ特許第DE103 22 182号に記載されているような3次元配置された又は折りたたまれたポリマーフィルムパケットの熱分解によっても入手できる。
【0045】
本発明の支持体/基質の特に好ましい実施形態は、特に、前述した特許出願に記載されている熱分解法に従って波形段ボールの炭化によって生産することができ、それにより、波形段ボール層は炭化の前に適切に1つに固着されて、流れを通過させることが可能な開放体を生じる。
【0046】
加えて、好ましい基質はまた、紙又はポリマーフィルムの層あるいは紙又はポリマーフィルムの積み重ねを巻き上げて又は渦巻きにして、平行に又は交差流のために配置された円柱体、チューブ又はロッドを形成すること及び技術水準の上記方法に従ったその後の熱分解によって、円柱状形態で得られる。最も単純な場合のこれらの「コイル体」は、このシート状前駆体を巻き上げることによって円柱を形成するようにコイルされ、巻き上げた後炭化される、溝付き、エンボス化、プリーツ化又は波形化多孔性材料層を包含する。生じる円柱状支持体/基質は、横断面でらせん形に又はウォームギアのように巻き上げられた多孔性材料の層、基本的に支持体/基質の屈曲の間を円柱の高さの方向に伸びる空間及び/又はチャネルを含み、断面は、最小流動抵抗を有する対向フロー領域として働く。同様に、一方が他方の上に配置された2又はそれ以上の材料層前駆体も、巻き上げ、その後炭化して、支持体/基質を形成することができる。一方が波形層であり、他方が基本的に平らである(カバー層)、一方が他方の上に交互に配置された少なくとも2つの材料層も特に好ましい。これは、巻き上げて円柱を形成するときに波形及び/又は溝が互いの中に滑り込むのを防ぎ、それ故チャネル様構造を形成する空間が開いたままに保持される。以下の実施例1ではそのような円柱状成形体について述べる。
【0047】
本発明の支持体/基質は、場合により物理的及び/又は化学生物学的特性を意図する適用に適合するように修飾しうる。炭素ベースの材料は、基本的に、細胞、微生物又は組織のための理想的基質を形成する高度に生体適合性の物質である。本発明の基質は、例えばフッ化、パリレネーション(parylenation)によって、微生物増殖を促進する物質、培養培地、ポリマー等を支持体/基質に被覆する又は含浸することによって、少なくとも部分的に親水性、疎水性、親油性又は疎油性であるようにそれらの内側及び/又は外側表面で修飾しうる。
【0048】
支持体/基質の特性は、特に好ましくは、有機及び無機物質又は化合物から選択される他の物質で修飾されうる。好ましい物質は、鉄、コバルト、銅、亜鉛、マンガン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、硫黄又はリンの化合物である。これらの付加的な化合物の組込みは、例えば基質上でのある種の微生物又は細胞の増殖を促進するために使用しうる。さらに、炭水化物、脂質、プリン、ピロミジン、ピリミジン、ビタミン、タンパク質、増殖因子、アミノ酸及び/又は硫黄源又は窒素源による支持体/基質の含浸又は被覆も、増殖を促進するのに適する。さらに、以下の物質が細胞増殖を刺激するために使用しうる:ビスホスホネート(例えばリセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、ゾレドロン酸、クロドロン酸、エチドロン酸、アレンドロン酸、チルドロン酸)、フルオリド(フルオロリン酸二ナトリウム、フッ化ナトリウム);カルシトニン、ジヒドロタキスチレン並びにすべての増殖因子及びサイトカイン(上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子b(TGF−b)、トランスフォーミング増殖因子a(TGF−a)、エリスロポエチン(Epo)、インスリン様増殖因子I(IGF−I)、インスリン様増殖因子II(IGF−II)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)、腫瘍壊死因子a(TNF−a)、腫瘍壊死因子b(TNF−b)、インターフェロンg(INF−g)、単球走化性タンパク質、線維芽細胞刺激因子1、ヒスタミン、フィブリン又はフィブリノーゲン、エンドセリン1、アンギオテンシンII、コラーゲン、ブロモクリプチン、メチセルジド、メトトレキサート、四塩化炭素、チオアセトアミド、エタノール)。
【0049】
支持体/基質における流動条件は、例えば空間又はチャネルの形状を流れの方向に変化させることによって(例えば波形チャネル)、直径及び場合により炭素表面の表面特性、例えば膜特性、粗さ、多孔度、親水性、疎水性、親油性、疎油性、pH、有効成分及び/又は触媒による含浸等も変化させることによって、必要な培養条件に調節することができる。
【0050】
負荷及び細胞培養
本発明に従った方法により、支持体/基質に生存可能及び/又は増殖可能な生物材料を負荷する。生物材料は、好ましくは単細胞又は多細胞微生物、真菌、胞子、ウイルス、植物細胞、細胞培養又は組織又は動物又はヒト細胞、細胞培養物又は組織、又はそれらの混合物を含む。負荷は、好ましくは生物材料の広汎な固定化を導く。
【0051】
負荷は、好ましくは組織形成性又は非組織形成性哺乳動物細胞、藻類、細菌、特に有効成分を生産する遺伝的に改変された細菌、一次細胞培養、例えば真核生物組織、例えば骨、軟骨、肝臓、腎臓並びに外因性、同種異系、同系又は自己由来細胞及び細胞型及び場合により遺伝的に改変された細胞系、特に神経組織で実施される。
【0052】
生物学的方法は、従来の方法によって支持体/基質に適用することができる。例は、細胞材料の溶液/懸濁液への支持体/基質の液浸、細胞材料溶液又は懸濁液による支持体/基質の噴霧、支持体/基質と接触する液体培地の接種等を含む。固定化生物材料を支持体/基質に完全に浸透させるために、場合により、負荷後にインキュベーション時間が必要である。
【0053】
炭素ベースの基質は、すべてのタイプの微生物及び組織培養、特に細胞組織を固定化し、増殖させるのに特に適する。これらの工程では、微生物及び/又は細胞培養物は基質上にコロニーを形成し、フロースルー中間層及び/又は中間層内のフローチャネルを通して液体又は気体栄養素の供給を受けることができ、一方代謝産物は、支持体/基質を通過する液体の流れと共に容易に除去されうる。さらに、主として支持体/基質上に固定された微生物及び細胞は、排出されること及び起こりうる有害な環境的影響、例えば機械的ストレスから保護されうる。
【0054】
さらに、本発明によれば、種々の微生物、細胞培養又は組織培養を有するいくつかの基質を、例えば反応培地及び場合により抽出物を含む、反応混合物中に液浸し、それにより、主として基質上に固定されている微生物、細胞又は組織の混合を生じさせることなく反応培地にそれらを通過させることが可能である。
【0055】
種々の微生物又は場合により種々の細胞培養を負荷したカートリッジシステムを形成するように、場合により適切なハウジング内に据え付けられた、対応する支持体/基質を、繁殖又は有効成分の生産のために単一培養培地中に液浸してもよく、そして一定期間後、収集のための及びこのために開放されている個々のカートリッジとして培養培地から取り出すか又は生成物を連続的に取り出しうる。基質又はハウジング及び/又は基質を含むカートリッジはまた、場合により、有効成分を放出するために破壊しなければならないか又は可逆的手順で開閉しうるように設計してもよい。カートリッジは、好ましくは可逆的に開放され、再閉鎖されるように設計される。
【0056】
本発明によれば、支持体/基質は、場合により化学又は生物反応のための反応器、例えばフラスコ、ボトル、特に細胞培養フラスコ、ローラーボトル、スピナーボトル、培養チューブ、細胞培養チャンバー、細胞培養ディッシュ、培養プレート、ピペットキャップ、スナップカバーディッシュ、クライオチューブ、攪拌式反応器、固定床反応器、管型反応器等、から選択される適切なハウジング内あるいは適切な容器内又は容器上に配置されうる。
【0057】
生物材料を負荷する前、負荷中又は負荷後に、支持体/基質を液体培地に接触させる。液体培地は、場合により負荷後には負荷前と異なる培地であってもよい。「液体培地」という用語は、いかなる流体、気体、固体又は液体、例えば水、有機溶媒、無機溶媒、超臨界気体、従来の基質ガス、固体又は気体物質の溶液又は懸濁液、乳濁液等も包含する。培地は、好ましくは液体又は気体、溶媒、水、気体又は液体又は固体反応抽出物及び/又は生成物、酵素、細胞及び組織のための液体培養培地、それらの混合物等から選択される。
【0058】
液体培養培地の例には、例えばCell ConceptsからのRPMI1640、GIBCOからのPFHM II、ハイブリドーマSFM及び/又はCDハイブリドーマ等が含まれる。これらは、血清、例えばL−グルタミンなどのアミノ酸を添加した又は添加していないウシ胎仔血清と共に又は血清なしで使用しうる。液体培地はまた、例えば支持体/基質に接種するために、生物材料と混合してもよい。
【0059】
接触は、支持体/基質又はそれを保持するハウジング/容器を完全に又は部分的に液体培地中に液浸することによって達成しうる。基質はまた、液体培地がそれらを通って流れることができるように適切な反応容器内に固定してもよい。ここでの重要な判定基準は、基質材料からの閉じ込められた気泡の湿潤性と除去性である。排気、脱気及び/又は洗い流し操作がここで必要な場合があり、必要に応じて使用しうる。
【0060】
支持体/基質と液体培地の最初の接触後、好ましくは、生物材料を、すなわち通常は液体形態で、例えば溶液、懸濁液、乳濁液等として、特に好ましくは液体培地自体の中に、通常は無菌条件下で、添加する。本発明の基質に関しては、通常、細胞のためにある程度の不透明度を有する培地環境の清澄化が存在し、通常は数時間後に、しばしば約2時間後に清澄化する。
【0061】
支持体/基質は、好ましくは生物材料を含む溶液、乳濁液又は懸濁液中に1秒から1000日までの期間液浸するか又は、場合により無菌条件下で、それを接種して、材料が多孔体内に拡散して、そこでコロニーを形成する機会を与えてもよい。接種はまた、噴霧法等によっても実施しうる。
【0062】
可能な限り最も均一な生存環境及び微生物への栄養素の供給を確実にするために、液体培地、例えば培養培地を揺り動かすか又は攪拌しうる。これは、上記で述べたような様々な方法を通して、例えば培地中で支持体/基質を動かすこと又は支持体/基質を通して培地を移動させることによって達成しうる。これは通常、生物材料の増殖、繁殖又は適切な代謝活動を可能にするために十分な時間実施する。
【0063】
次に代謝産物、すなわち増殖した細胞を収集する。細胞と周囲培地がこのようにして互いに容易に分離できるので、この支持体/基質表面での固定培養は望ましい簡略化である。細胞は支持体/基質に良好に接着しており、培地を洗い流した後適切な手段によって取り出すことができ、場合により適切な手段で流し出すことができる。
【0064】
例えば培地からの抽出により、代謝産物を収集した後、所望する場合又は必要な場合は、同じか又は異なる生物材料を再負荷するために支持体/基質を精製し、滅菌して、再利用しうる。負荷した基質をその後再利用するために、それらを生物材料と共に凍結保存によって保存してもよい。
【0065】
バイオリアクター
本発明の方法は、好ましくは、生物材料の負荷前又は負荷後に適切なハウジング、容器又は反応器又は反応器システムに導入される1つ(又はそれ以上)の基質によって実施される。当該基質を、好ましくは、ハウジング、容器又は反応器及び/又は反応器システムを少なくとも部分的に満たすことによってハウジング、容器又は反応器又は反応器システム中で液体培地と接触させる。
【0066】
培地との接触は、1つの実施形態では、好ましくは基質が連続的又は断続的にハウジング、容器又は反応器及び/又は反応器システム内の培地と共に運動するように実施される。そうするために、容器は通常、フィード機構によって培地で満たされた貯蔵容器に接続されており、必要に応じて、培地を連続的又は断続的に容器内へと運搬して、容器を通過させるための付加的な除去機構を備える。代替法として、支持体/基質も、適切な装置によって液体培地で部分的に又は完全に満たされたハウジング、容器又は反応器及び/又は反応器システム内で適切な装置によって運動させうる。
【0067】
さらに、支持体/基質は、連続的又は断続的に、液体培地がそれを通って流れることができるように、場合により完全に又は部分的にハウジング、容器又は反応器及び/又は反応器システムに液浸されうる。そうする場合、支持体/基質を通る液体培地の流れは、培地中で支持体/基質を動かすことによって達成されうる。あるいは、支持体/基質を通る液体培地の流れは、例えば適切な攪拌機構、ポンプシステム、空気圧式培地リフティング装置(pneumatic medium lifting devices)等によって、支持体/基質中の培地を運動させることによって達成されうる。支持体/基質に生物材料を負荷した後、好ましくは栄養素を添加する及び/又は好ましくは代謝産物を生物材料と共に連続的又は断続的に取り出す。
【0068】
本発明に従った方法では、支持体/基質に、意図する目的に対応する適切な量の生物材料を負荷する及び/又は接種する。材料は、好ましくは支持体/基質が、負荷した支持体/基質の総重量に基づき、10-5重量%〜99重量%、好ましくは10-2重量%〜80重量%、少なくとも好ましくは1重量%〜50重量%の細胞を含むように負荷及び/又は接種される。支持体/基質は、特に好ましくは、それ自体だけの重量の106倍までの量の細胞培養物を含み、並びに支持体/基質容積mL当り1〜1023細胞の細胞密度を有する。
【0069】
本発明の方法は、神経組織を培養する及び場合により再生するために特に適する。本発明の炭素ベースの基質が、支持体の伝導率を調節すること及び培養神経組織へのパルス電流の適用の容易さの故に、特に適合可能であり、適切であることが、ここでは特に好都合である。
本発明によれば、基質は、従来のバイオリアクターシステム、例えば連続的な調節技術を伴わない受動的システム、例えば組織プレート、組織ボトル、ローラーボトル並びにガスの注入及びパラメータ(酸性度、温度)の自動調節を伴う能動的システム、すなわち最も広い意味で測定及び制御テクノロジーを備えた反応器システム、における培養に使用しうる。
【0070】
さらに、本発明のビヒクル体はまた、適切な装置、例えば、特に対応する一連の反応器システム及び組織培養のモジュラーデザインも含む、培養培地の灌流及びガス交換のための連結部、を提供することにより、反応器システムとしても操作することができる。
【0071】
本発明によれば、上述したような少なくとも1つの支持体/基質を含む反応器及び/又は反応器システムによって細胞培養方法を実施することが好ましく、該反応器及び/又は反応器システムは、フラスコ、ボトル、特に細胞培養ボトル、ローラーボトル、スピナー(spinner)ボトル、培養チューブ、細胞培養チャンバー、細胞培養ディッシュ、培養ディッシュ、クライオチューブ、攪拌式反応器、固定床反応器、管型反応器等から選択される。本発明の支持体/基質を含むローラーボトル又はハウジング内に本発明の支持体/基質を含むカートリッジが特に好ましい。
【0072】
加えて、本発明の基質はまた、器官形成を促進するために、例えばプロテオグリカン、コラーゲン、組織塩、例えばヒドロキシルアパタイト等によって、特に上述した生分解性及び/又は吸収性ポリマーで、適切に修飾しうる。本発明の基質はさらに、好ましくは増殖因子、サイトカイン、インターフェロン及び/又は付加因子の含浸及び/又は吸着によっても修飾される。適切な増殖因子の例としては、PDGF、EGF、TGF−α、GFG、NGF、エリスロポエチン、TGF−β、IGF−I及びIGF−IIがある。適切なサイトカインは、例えばIL−1−α及びIL−1−β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13が含まれる。適切なインターフェロンは、例えばINF−α及びINF−β、INF−γが含まれる。適切な接着因子の例には、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フェチュイン、ポリ−D−リシン等が含まれる。
【0073】
本発明の支持体/基質の細胞密度は、容積mL当り、特に反応器容積mL当り1〜1023細胞、特に102まで、好ましくは105、特に109細胞/mLまでの範囲内でありうる。
【0074】
反応器及び/又は反応器システムは、連続的に又はバッチで操作しうる。本発明の支持体/基質は、これらのシステム内に半透性分離層を有しうる。半透性分離層のない基質は、好ましくは半透性分離層を含む、反応器内の容器に据え付けてもよい。そのような場合は、好ましくは反応器内の液体培地と容器の内部の間での質量交換が半透性分離層を通して制御されるように容器を設計する。半透性分離層は、多孔性支持体/基質の外側表面と接触する半透性分離層と同じ分離特性を有しうる。
【0075】
抽出物と反応培地に関してのみ物質交換を可能にする、半透性分離層を有する基質又は半透性分離層を有する容器内にある基質の使用のためには、本発明の基質のための分離層を持たない場合と同様に、バッチで操作される攪拌式容器反応器が好ましい。これらの攪拌式容器反応器は、通常、攪拌機及び場合により連続抽出物供給機構を備える。基質は、場合により半透性分離層を有する、容器の内部の液体培地に場合により液浸されている。比較的小さな支持体/基質を使用する場合、それらは、好ましくは、培地に液浸するとき容器又はハウジング内に収容される。容器は、場合により半透性分離層を通して培地と接触するが、反応器内での基質の制御されない分布を防ぐ。
【0076】
反応空間内の流れは、好ましくは乱流であり、層流境界膜は、好ましくはできる限り薄い。勾配を維持するために、良好な流動効果が必要である。抽出物は常に十分な量で供給されねばならない。当業者は、良好で十分な流動を導く手段が本発明にも適することを認識する。
【0077】
当業者は、乱流の上昇(レイノルズ(Re)数の上昇)に伴って拡散経路の縮小の故に物質輸送がより速やかになることを認識する。拡散経路がより短く且つ濃度勾配が大きいほど、内部空間と外部空間の間の物質輸送がより速くなる。当業者は、大部分の反応の速度は物質輸送によって決定され、反応速度によって決定されるのではないこと、そしてそれ故反応速度は物質輸送に直接依存することを認識する。例外的な場合にのみ、反応速度自体が物質輸送よりも遅く、そのため反応速度が物質輸送によってではなく実際の反応によって制限される。
【0078】
あるいは、連続処理工程も使用しうる。連続処理工程は、抽出物を液体培地と共に連続的又は断続的に供給することができ及び生成物を連続的又は断続的に除去できるという利点を提供する。この実施形態に関しては、半透性分離層を持たない支持体/基質が好ましい。半透性分離層を有する基質に代わるものとして、半透性分離層を持たない基質を、半透性分離層を有する反応器に導入するとき容器又はハウジング内に固定化する方法も使用しうる。好ましい反応器は、連続的に操作される攪拌式容器反応器、管型反応器及び場合により流動床反応器も包含する。
【0079】
反応器滞留時間は、反応に依存して異なり、生物学的反応の速度に依存する。当業者は、個々の反応に従って滞留時間を調整する。抽出物流は、好ましくは循環中で運搬され、例えば温度、pH、培地中の栄養素濃度又は抽出物濃度を制御するために適切な測定及び管理装置が提供される。生成物は、連続的又は断続的に循環流から取り出すことができる。
【0080】
本発明の支持体/基質は、攪拌式容器又は管型容器内にしっかりと固定しうるか又は培地中で緩やかに浮動しうるか又は反応培地中に液浸された容器又はハウジング内に含まれうる。支持体が培地中を自由に浮動する場合は、これらの支持体が反応器から出て行けないことを確実にするための手段を反応器出口に備えていなければならない。例えばスクリーンを出口に取り付けうる。本発明の支持体/基質は、好ましくは、反応混合物中に液浸するための、場合により半透性分離層を備えた、多孔性容器又はハウジング内に配置される。この実施形態はまた、他の反応のために攪拌式容器が必要であるとき又は補充が必要である場合に基質を容易に除去できるという利点を提供する。
【0081】
本発明のもう1つの実施形態では、反応器を管型反応器として設計する。この実施形態では、好ましくは細長いデザインを有する基質、特に実施例1で示すような渦巻き状円柱体が使用される。これらの基質は、管型反応器内で自由に配置されるか又は容器内で束ねられる(bundled)。管型反応器に一方の端で、抽出物−反応培地混合物が導入され、管型反応器の他方の端で、基本的に生成物−反応培地混合物が除去される。培地が管型反応器を通って流動している間、支持体/基質を通る培地の連続的な流れが生じる。管型反応器の長さ及び液体培地の流速及び関連滞留時間は、生じる反応に応じて当業者によって調整される。当業者は、管型反応器が、乱流を導入するためのバッフルを付加的に備えうることを認識する。連続操作攪拌式反応に関して上記で説明したように、可能な最も高いレイノルズ(Re)数を有する流れが、層流境界層を最小限に抑え、拡散経路を低下させるために望ましい。バッフルは、場合により特殊形態の多孔性支持体/基質でありうる。代替法として、バッフルとして使用するために付加的な成形体を導入してもよい。
【0082】
当業者は、上述した基本的なタイプの反応器に加えて、改変されたタイプの反応器も、本発明の範囲を超えることなく本発明の細胞培養法のために使用しうることを認識する。
【0083】
ここで、本発明を、個々の好ましい態様において図解に基づき以下でさらに詳細に説明する。これらは、本発明を一定の形態又は配置に限定するものではない。
【0084】
ここで、本発明を以下の実施例に基づいてさらに説明するが、これらは制限的と解釈されるべきではない。
(実施例)
【実施例1】
【0085】
本発明の細胞培養工程における支持体/基質材料としての意図する適用のために、天然繊維を含み、100g/m2の単位面積当り重量及び110μmの乾燥層厚さを有するポリマー複合体を巻き上げて、長さ150mm及び直径70mmの寸法を有する支持体形状を形成した。約8mの長さの平らな材料から波形を成形することにより、3mmの平均チャネル径を有する放射状に閉じたフローチャネルを生成し、次にこの単層波形構造を逆方向に巻き上げてこの形態を堅固にした。これらの成形体を、多孔度を調節するために末端に向けて空気を添加しながら、窒素雰囲気中800℃で48時間炭化した。61重量%の重量損失が起こった。生じた材料は、水中で7.4のpH及び弱酸性範囲内の緩衝範囲を有していた。この炭化材料から切り出した、各々直径60mm、厚さ20mmのディスクは以下の性質を有していた。
表面積対容積比1700m2/m3、自由流動横断面0.6m2/m3;開放構造及び20mmのフローチャネル長の故に、実験条件下で材料を通過する水の流れにおいて測定可能な圧低下は検出できなかった。
【0086】
これらのディスクを、培養培地500mL及び細胞懸濁液150mLが無菌条件下で各々のディスクを通って流れることができるように、図4に従って交互加圧装置内に据え付けた。細胞懸濁液は、懸濁液中での非付着性、非接着性増殖で知られる、シガ毒素に対するハイブリドーマFLT2 MABを産生する細胞系を含んだ。
【0087】
比較のために、基質を含まない及び炭素材料を含まない、対応するユニットを、それ以外は同じ条件及び同じ供給速度及び/又は負荷の下で使用した。液体培地を30秒サイクルでカートリッジに通した、すなわち液体培地を循環させた、すなわち支持体を30秒ごとに液体培地中に液浸した。
【0088】
基質を伴う試料は、細胞の自発的な定量的固定化を生じ(それまでの混濁上清が約4時間後に透明になった)、その後懸濁液の混濁は検出できなかった。7日間のインキュベーション時間内に、細胞密度は7倍の1.8×107細胞/mLに上昇していた。MAB産生は、最初の50μg/mLから、タンパク質分解の徴候を伴わずに350μL/mLの平均培養寿命に上昇した。25日後に、12の試料のうち12がまだ生存可能であり、その後工程を終了した。これは、本発明の支持体/基質が、より高い細胞密度にもかかわらず、接触阻害の中断を導くことを示す。凍結保存と解凍後であっても、新鮮培養培地の添加後自発的にMAB産生が再開した。
【0089】
比較実験では、6つの培養物のうち1つだけが11日目まで生存した。
【実施例2】
【0090】
横断形態
細胞培養システムのための支持体/基質材料としての意図する適用のために、天然繊維を含み、100g/m2の重量及び110μmの乾燥層厚さを有するポリマー複合体を、長さ300mm、幅150mm及び高さ50mmの寸法を有する支持体に成形し、その形態で接着させた。これは、平らな材料の波形とこれらの単層波形構造の積層により、3mmの平均チャネル径を有するフローチャネルを生成し、次にそれらを各々90°に分枝して、放射状に閉じたフローチャネルを生成した。これらの成形体を、多孔度を調節するために末端に向けて空気を添加しながら、窒素雰囲気中800℃で48時間炭化した。61重量%の重量損失が起こった。生じた材料は、水中で7.4のpH及び弱酸の緩衝範囲を有していた。
【0091】
ウォータージェット切断を使用して、以下の性質を備えた、35mmの直径と40mmの厚さの寸法を有するこの炭素質材料の円柱状基質を生産した。
表面積対容積比1700m2/m3、自由流動横断面0.6m2/m3;開放構造及び20mmのフローチャネル長の故に、実験条件下で支持体/基質を通過する水の流れにおいて測定可能な圧低下は検出できなかった。
【0092】
これらのディスクを、放射線架橋保護殻(protective shell)に入れ、連結して長さ160mmの鎖を形成した。これらの鎖の各々を従来の2リットルローラーボトルに挿入し、無菌条件下で液体培養培地500mL及び細胞懸濁液150mLを充填した。細胞懸濁液は、懸濁液中での非付着性、非接着性増殖で知られる、シガ毒素に対するハイブリドーマFLT2 MABを産生する細胞系を含んだ。
【0093】
比較のために、炭素材料を含まない対応するローラーボトルを、それ以外は同じ条件及び負荷の下で使用した。
【0094】
ローラーボトルをローラーボトル装置で回転させた。
支持体/基質を伴う試料は、細胞の自発的な定量的固定化を示し(それまでの混濁上清が約4時間後に透明になった)、その後懸濁液の混濁は検出できなかった。7日間のインキュベーション時間内に、細胞密度は7倍の1.8×107細胞/mLに上昇していた。MAB産生は、最初の50μg/mLから、タンパク質分解の徴候を伴わずに350μL/mLの平均培養寿命に上昇した。25日後に、12の試料のうち12がまだ生存可能であり、その後実験を終了した。これは、本発明の基質が、より高い細胞密度にもかかわらず、接触阻害の中断を導くことを示す。凍結保存と解凍後であっても、新鮮培養培地の添加後自発的にMAB産生が再開した。
【0095】
比較実験では、6つの培養物のうち1つだけが11日目まで生存した。
【実施例3】
【0096】
細胞培養システムのための支持体/基質材料としての意図する適用のために、天然繊維を含み、100g/m2の重量及び110μmの乾燥層厚さを有するポリマー複合体を巻き上げることにより、長さ150mm及び直径70mmの寸法を有する支持体に成形した。そうするために、平らな材料にエンボス加工し、次に波形をつけることにより、あらかじめ放射状に閉じた、S字形又は波形形状及び3mmの平均チャネル径を有するフローチャネルを生成し、次にこの単層波形構造を巻き上げた(実施例1参照)。これらの成形体を、多孔度を調節するために末端に向けて空気を添加しながら、窒素雰囲気中800℃で48時間炭化した。61重量%の重量損失が起こった。生じた材料は、水中で7.4のpH及び弱酸の緩衝範囲を有していた。
【0097】
この炭素質材料の直径60mm、厚さ20mmのディスクは以下の性質を有する。
表面積対容積比2500m2/m3、自由流動横断面0.3m2/m3;開放構造及び20mmのフローチャネル長の故に、実験条件下で支持体/基質を通過する水の流れにおいて測定可能な圧低下は検出できなかった。
【0098】
これらのディスクを、培養培地500mL及び細胞懸濁液150mLが無菌条件下で各々を通って流れることができるように、図3に従った装置内に据え付けた。細胞懸濁液は、懸濁液中での非付着性、非接着性増殖で知られる、シガ毒素に対するハイブリドーマFLT2 MABを産生する細胞系を含んだ。
【0099】
比較のために、基質を含まない及び炭素材料を含まない、対応するユニットを、それ以外は同じ条件及び同じ供給速度及び/又は負荷の下で使用した。
【0100】
液体培地を30秒サイクルでカートリッジに通した、すなわち液体培地を循環させた、すなわち支持体を30秒ごとに液体培地中に液浸した。
【0101】
支持体/基質を伴う試料は、細胞の自発的な定量的固定化を生じ(それまでの混濁上清が約4時間後に透明になった)、その後懸濁液の混濁は検出できなかった。7日間のインキュベーション時間内に、細胞密度は7倍の1.8×107細胞/mLに上昇していた。MAB産生は、最初の50μg/mLから、タンパク質分解の徴候を伴わずに350μL/mLの平均培養寿命に上昇した。25日後に、12の試料のうち12がまだ生存可能であり、その後工程を終了した。これは、本発明の基質が、より高い細胞密度にもかかわらず、接触阻害の中断を導くことを示す。凍結保存と解凍後であっても、新鮮培養培地の添加後自発的にMAB産生が再開した。
【実施例4】
【0102】
実施例1からのディスクを、炭化後に10%ポリビニルピロリドンを含む水溶液に浸し、その後再び乾燥した。次に実施例1に従ってカートリッジを装置内に据え付け、培養培地及び細胞と共にインキュベートした。わずか2時間後に、カートリッジの湿潤化行動(wetting behavior)が改善し、細胞が固定化されたこと(それまでの混濁上清の清澄化)が認められた。
【実施例5】
【0103】
実施例1からのディスクを、底部の中心で対応するラインによって相互接続された2つの容器を含む、図3に従った装置内に据え付けた。
【0104】
この容器システムを、実施例1に従って培養培地及び細胞と共にインキュベートした。容器の配置は、静止位置で炭素ディスクがまだ液体で覆われているように選択した。細胞が完全に固定化するまで待った後、液体が対応するラインを通って第二液体容器内に流れ込むことができ、炭素ディスクがもはや液体中に浸されていない程度まで、炭素ディスクと共に容器を機械的に持ち上げた。その後容器を再び静止位置まで下げた。工程全体の周期時間は30秒であった。この循環の利点は、培地を動かすために必要な力がカートリッジを上下することによって費やされ、培地との接触が必要ないということであった。
【0105】
7日間のインキュベーション時間内に、細胞密度は7倍の1.8×107細胞/mLに上昇していた。MAB産生は、最初の50μg/mLから、タンパク質分解の徴候を伴わずに350μL/mLの平均培養寿命に上昇した。25日後に、12の試料のうち12がまだ生存可能であり、その後実験を終了した。これは、本発明の支持体/基質が、より高い細胞密度にもかかわらず、接触阻害の中断を導くことを示す。凍結保存と解凍後であっても、新鮮培養培地の添加後自発的にMAB産生が再開した。
【実施例6】
【0106】
実施例1からのディスクを、底部中心で対応するラインによって相互接続された2つの容器を含む、図3に従った装置内に据え付けた。
【0107】
この容器システムを、実施例1に従って培養培地及び細胞と共にインキュベートした。容器の配置は、炭素ディスクが静止位置でちょうど液体で覆われるように選択した。細胞が完全に固定化するまで待った後、液体が対応するラインを通って第二液体容器からあふれ出し、炭素ディスクを通って流れることができるように、炭素ディスクと共に容器を機械的に下降させた。その後容器を再び静止位置まで上昇させた。工程全体の周期時間は30秒であった。この循環の利点は、培地を動かすために必要な力がカートリッジを上下することによって費やされ、培地との接触が必要ないということであった。
【0108】
7日間のインキュベーション時間内に、細胞密度は7倍の1.8×107細胞/mLに上昇していた。MAB産生は、最初の50μg/mLから、タンパク質分解の徴候を伴わずに350μL/mLの平均培養寿命に上昇した。25日後に、12の試料のうち12がまだ生存可能であり、その後実験を終了した。これは、本発明の支持体/基質が、より高い細胞密度にもかかわらず、接触阻害の中断を導くことを示す。凍結保存と解凍後であっても、新鮮培養培地の添加後自発的にMAB産生が再開した。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、層状構造を有する本発明の基質の実施形態を図式的に示す。
【図2】図2は、円形対向(oncoming)フロー領域を有する本発明の円柱状基質の実施形態を図式的に示す。
【図3】図3は、好ましい実施形態に従って本発明の細胞培養法を実施するための装置を図式的に示す。
【図4】図4は、選択的な好ましい実施形態に従って本発明の細胞培養法を実施するための別の装置を図式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、
a)i)基本的に互いの上層に配置された少なくとも2つの多孔性材料層であって、その層の間にフロースルー可能な空間が存在する前記材料層、又は
ii)その形状を維持しながら、それ自体が巻き上げられた、又は互いの上層にある材料層の少なくとも2つの断面の間にフロースルー可能な空間が存在するように配置された、少なくとも1つの多孔性材料層、
を含む、層状構造を有する炭素ベースの支持体を提供すること及び
b)前記支持体に、生存している及び/又は増殖することができる生物材料を負荷すること、
c)前記負荷した支持体を液体培地と接触させること
を含む、細胞を培養するための方法。
【請求項2】
前記支持体が多数の材料層を含むこと、及び各々が互いの上層に配置された2つの材料層の間に少なくとも1つの空間が存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各々2つの材料層の間の又は1つの巻き上げられた材料層の各々2つの断面の間の空間が、基本的に互いに平行して走る多数のチャネルを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各々基本的に互いに平行して配置されたチャネルが、約1nm〜約1m、特に約1nm〜約10cm、好ましくは10nm〜10mm、および特に好ましくは50nm〜1mmの範囲内の平均チャネル直径を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記支持体が、互いに対して交互に角度的に分枝された(angularly offset)チャネル層を示すように、各々第一と第二材料層の間のチャネルが、前記第二材料層と第三材料層の間の隣接層内のチャネルに対して、0°以上90°まで、好ましくは30〜90°、および特に好ましくは45〜90°の角度で、角度分枝して配置されていることを特徴とする、請求項3又は4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
基本的に平行に走るチャネルが、層内で線状、波状、曲がりくねっている又はジグザグであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔性材料層及び/又はチャネル壁が、約1nm〜10cm、好ましくは10nm〜10mm、および特に好ましくは50nm〜1mmの範囲内の平均孔径を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
多孔性支持体として、繊維、紙、織物又は高分子材料に基づく、場合により構造化された、巻き上げられた、エンボス加工した、前処理した及び/又は折りたたんだシート材料の炭化によって生産されるモジュラー構造を使用することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生物材料が、単細胞又は多細胞微生物、真菌、酵母、胞子、植物細胞、細胞培養又は組織又は動物及び/又はヒト細胞、細胞培養物又は組織、又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持体の負荷が、支持体内及び/又は支持体上への実質的に広汎な前記生物材料の固定化を導くことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記培地が、液体又は気体、溶媒、水、気体又は液体又は固体反応抽出物及び/又は生成物、酵素、細胞及び組織のための液体培養培地、それらの混合物等から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記支持体が、化学又は生物反応のための反応器、例えばフラスコ、ボトル、特に細胞培養ボトル、ローラーボトル、スピナー(spinner)ボトル、培養チューブ、細胞培養チャンバー、細胞培養ディッシュ、培養プレート、ピペットキャップ、スナップカバーガラス、クライオチューブ、攪拌式反応器、固定床反応器、管型反応器等、から選択されるハウジング内あるいは適切な容器内又は容器上に配置されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記支持体を、前記容器を少なくとも部分的に満たすことによって前記液体培地と接触させることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記支持体を容器内の培地中で動かすことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記容器が、フィード機構によって培地で満たされた供給容器に連結されていること、及び場合により、培地が連続的に又は断続的に容器内へと及び容器内を通って通過するための除去機構も備えられていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
液体培地が、場合により容器内に液浸されている、支持体を通って連続的に又は断続的に流れることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
支持体を通る液体培地の流れが、支持体を培地中で動かすことによって達成されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
支持体を通る液体培地の流れが、支持体内で培地を移動させることによって達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
連続的に又は断続的に、栄養素が前記培地と共に供給される及び/又は代謝産物が前記培地と共に除去されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
生存している及び/又は増殖することができる固定化された生物材料を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の多孔性炭素ベースの支持体。
【請求項21】
前記生物材料が、単細胞又は多細胞微生物、酵母、真菌、胞子、植物細胞、細胞培養物又は組織又は動物及び/又はヒト細胞、細胞培養物又は組織、又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の支持体。
【請求項22】
活性炭、焼結活性炭、無定形、結晶性又は部分結晶性炭素、黒鉛、熱分解性炭素質材料、炭素繊維又は炭化物、カルボニトリド、金属又は非金属のオキシカーバイド及び/又はオキシカルボニトリド並びにそれらの混合物を含む、請求項20又は21に記載の支持体。
【請求項23】
負荷した支持体の総重量に基づき、10-5重量%〜99重量%、好ましくは10-2重量%〜80重量%、最も好ましくは1重量%〜50重量%の細胞を含むことを特徴とする、請求項20から22のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項24】
請求項20から23に記載の1又はそれ以上の支持体を含む、細胞を培養するための反応器。
【請求項25】
化学又は生物反応のための反応器、例えばフラスコ、ボトル、特に細胞培養フラスコ、ローラーボトル、スピナーボトル、培養チューブ、細胞培養チャンバー、細胞培養ディッシュ、培養プレート、ピペットキャップ、スナップカバーガラス、クライオチューブ、攪拌式反応器、固定床反応器及び管型反応器から選択される、請求項24に記載の反応器。
【請求項26】
請求項20から23のいずれか一項に記載の支持体を含むローラーボトル。
【請求項27】
ハウジング内に請求項20から26のいずれか一項に記載の支持体を含むカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500505(P2007−500505A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521553(P2006−521553)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008642
【国際公開番号】WO2005/012504
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505257349)ブルー メンブレーンス ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】